特許拒絶査定不服審判
2016-012930
試験測定機器及びその動作方法
- 審判番号
- 2016-012930
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-187237外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年08月26日
- 審決日
- 2017年05月30日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】テクトロニクス・インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人山口国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (G01R) / P18 .55 -WY (G01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011-187237「試験測定機器及びその動作方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月12日出願公開、特開2012- 73240、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許出願: 平成23年8月30日
(パリ条約による優先権主張2010年9月28日、米国)
拒絶査定: 平成28年4月20日(送達日:同年同月26日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成28年8月26日
手続補正: 平成28年8月26日
第2 原査定の概要
原査定(平成28年4月20日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-2に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2008-128967号公報
第3 本願発明
本願請求項1-2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明2」という。)は、平成28年8月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
入力信号を受ける入力ポートと、
上記入力信号をデジタル化してデジタル化済み入力信号を発生するデジタイザと、
上記デジタイザに結合され、上記デジタル化済み入力信号をデシメーションして、上記入力信号を表す周波数シフトの無いデシメーション済み入力信号を発生するデシメータと、
上記デジタイザに結合され、上記デジタル化済み入力信号を周波数シフトして、周波数シフト済み入力信号を発生するデジタル・ダウンコンバータと、
上記デシメーション済み入力信号及び上記周波数シフト済み入力信号を蓄積するメモリと、
ユーザ・インタフェースと、
上記ユーザ・インタフェースを介して上記デシメーション済み入力信号及び上記周波数シフト済み入力信号を表示する制御器とを具え、
上記ユーザ・インタフェースは、時間領域制御部及び周波数領域制御部を有し、
上記制御器は、上記時間領域制御部に応答して上記デシメータのパラメータを調整すると共に、上記周波数領域制御部に応答して上記デジタル・ダウンコンバータのパラメータを調整する試験測定機器。
【請求項2】
入力信号をデジタル化してデジタル化済み入力信号を発生する処理と、
上記デジタル化済み入力信号をデシメーションして、上記入力信号を表す周波数シフトの無いデシメーション済み入力信号を発生する処理と、
上記デジタル化済み入力信号を周波数シフトして、周波数シフト済み入力信号を発生する処理と、
上記デシメーション済み入力信号及び上記周波数シフト済み入力信号をメモリに蓄積する処理と、
ユーザ・インタフェースを介して上記デシメーション済み入力信号及び上記周波数シフト済み入力信号を表示する処理と、
上記ユーザ・インタフェースの時間領域制御部に応答して上記デジタル化済み入力信号のデシメーションを調整する処理と、
上記ユーザ・インタフェースの周波数領域制御部に応答して上記入力信号の周波数シフトを調整する処理と
を具える試験測定機器の動作方法。」
第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審による。)
「【0001】
本発明は、シグナル・アナライザに関し、被測定信号の周波数領域又は時間領域に関する第1解析範囲に対して、その所望部分を拡大した第2解析範囲を表示するためのデータを別途並行して取得し、第1及び第2解析範囲の同時に更新しながら表示するためのデータ生成を行うシグナル・アナライザに関する。」
「【0003】
図1は、現在知られているシグナル・アナライザのハードウェア主要部のブロック図である。これは、信号解析ブロック10とパソコン・ブロック30から構成される。パソコン・ブロック30は、汎用のパソコンと同等であり、マルチ・ウィンドウによるマルチ・タスクを実現するOSが採用されている。
【0004】
入力信号(被測定信号)は、入力減衰回路12で適切なレベルに調整され、アナログ・ダウン・コンバータ14に供給されて、アナログ的に周波数変換(ダウン・コンバート)され、中間周波数(IF)信号に変換される。アナログ・デジタル変換回路(ADC)16は、アナログのIF信号を時間領域のデジタル・データに変換する。デジタル・ダウン・コンバータ18は、例えば、FPGAで実現され、ユーザが設定する中心周波数に応じた局部発振(LO)周波数の正弦波及び余弦波データと時間領域データをデジタル演算で乗算し、IQ分離を行うと共に周波数をダウン・コンバートする。間引きフィルタ20は、デジタル・ダウン・コンバートされたIFデータを、ユーザが設定する周波数スパンに応じて適当なデータ数に間引きし、データをデータ・メモリ22に供給する。トリガ検出回路24は、ADC16からの時間領域データから、時間領域に関して設定されたトリガ条件を満たすトリガ点を検出する。メモリ制御回路26は、検出されたトリガ点を基準にして、データ・メモリ22に残すデータを制御する。なお、後述する周波数領域データに関してトリガ条件が設定され、これに応じてデータ・メモリ22に残すデータを制御することもある。ローカル制御回路29は、ローカル・バス28、バス・ブリッジ38及びバス40を介してCPU32からの制御を受けて、信号解析ブロック10の各ブロックの動作を制御する。データ・メモリ22が保持するデータは、ローカル・バス28を介してパソコン・ブロック30に供給される。
【0005】
パソコン・ブロック30では、データ・メモリ22からの時間領域データをメモリ(RAM)42で一時的に保持し、CPU32が高速フーリエ変換(FFT)演算を行って、周波数領域データを生成する。時間領域データや周波数領域データは、ユーザの設定に応じて、表示装置36において、波形や数値などで表示される。ユーザは、操作パネル34を介してシグナル・アナライザに、中心周波数、周波数スパン等の所望の設定を行う。このとき、入出力ポート46を介して接続されたマウス48やキーボード49を使用しても良い。生成されたデータは、ハード・ディスク・ドライブ(HDD)44に記録され、過去のデータを読み出して表示できる。HDD44は、パソコンで一般的なマルチ・ウィンドウ型の基本ソフト(OS)のほか、信号解析に必要なアプリケーション・ソフトウェアも記憶する。これらブロックは、バス40を介して互いに接続される。」
「【0009】
特許文献1及び2に記載の発明では、拡大表示する第2周波数解析範囲のデータはいずれも一旦記憶されたデータから後処理で生成したものである。よって、入力される被測定信号が時々刻々と変化した場合に、第1及び第2解析範囲のデータを並行して更新しながら観測することはできない。また、第2解析範囲のデータは、一旦記憶されたデータであるから、データ取得時におけるデータ取得時間の長さに応じた分解能までしか周波数分解能を高めることはできない。」
「【0015】
図3は、本発明によるシグナル・アナライザの機能ブロック図である。図1と機能的に対応するブロックには、同じ符号を付して説明する。ただし、機能ブロック図なので、ハードウェアの構成要素とは、必ずしも一致しない。例えば、CPU32が提供する演算機能は、演算ブロック33として描かれている。以下では、入力減衰回路12、アナログ・ダウン・コンバータ14、ADC16及びパソコン・ブロック30は、図1で説明したものと同様であるため、説明は省略する。また、トリガ検出に関する機能も従来と同様に用意されている。
【0016】
図4は、周波数領域データをスペクトラム波形として表示装置36の画面上に表示した例である。第1スタート周波数及び第1ストップ周波数で定まる第1周波数解析範囲の第1スペクトラム波形に対し、ユーザは、例えば、操作パネル34やマウス48を使用してカーソル70及び72を動かし、第2スタート周波数及び第2ストップ周波数を指定することで、拡大(ズーム)表示したい部分(第2周波数解析範囲)を設定できる。設定方法はこれに限らず、スタート周波数、ストップ周波数、中心周波数及び周波数スパンは連動するので、これらの内の2つを指定すれば、他の2つは自動的に設定される。後述の如く生成される第2周波数解析範囲の第2スペクトラム波形(図示せず)は、第1スペクトラム波形とは別の表示領域に、より高い周波数分解能で表示される。被測定信号の入力に応じて、第1及び第2スペクトラム波形は並行して更新される。
【0017】
図3を参照すると、本発明によるシグナル・アナライザの好適な実施例では、第1及び第2信号パス171及び172が設けられ、夫々が第1及び第2周波数解析範囲のための第1及び第2時間領域データを生成する。第1信号パス171の第1デジタル・ダウン・コンバータ(DDC)181は、ADC16からの時間領域データに対して、デジタル演算によってIQ分離及びダウン・コンバートを行う。このデジタル演算では、ユーザが設定する第1周波数解析範囲の第1中心周波数fC1に応じて定まる第1局部発振(LO)周波数fLO1の正弦波及び余弦波データと時間領域データ乗算し、必要な周波数成分を抽出する。同様に、第2信号パス172の第2DDC182も、第2周波数解析範囲の第2中心周波数fC2に応じて定まる第2局部発振(LO)周波数fLO2の正弦波及び余弦波データを用いて、ADC16からの時間領域データをIQ分離及びダウン・コンバートを行う。このとき、第1及び第2LO周波数fLO1及びfLO2の周波数差は、第1中心周波数fC1及び第2中心周波数fC2の周波数差である。即ち、第1及び第2信号パス間で、周波数変換における周波数シフト量に差が設けられる。
【0018】
第1及び第2間引きフィルタ201及び202は、夫々間引き率KDF1及びKDF2に従って、第1及び第2DDC181及び182からの周波数変換された時間領域データを間引き処理する。これら間引き率の間には、次の関係がある。
KDF2=KDF1*FS1/FS2
第2周波数スパンFS2は、第1周波数スパンFS1に比べて狭いため、第2信号パスのデータ生成レートは第1信号パスと比較して低くなる。即ち、第2信号パスの間引き率KDF2は、第1信号パスのKDF1より高くなる。このとき、一般に間引き率が高いほど、間引きフィルタでの間引き処理に時間がかかるので、第2間引きフィルタ202が出力するデータは、時間的に対応する第1間引きフィルタ201の出力データに対して遅延する。そこで、第1信号パスに第1FIFO211が設けられ、これが第1及び第2間引きフィルタ間での間引き処理時間の差を補い、第1及び第2信号パス間の時間的に対応するデータが並行して夫々第1及び第2データ・メモリ221及び222に送られる。また、第2信号パスは、データ生成レートが低くなる分だけ長時間のデータを取得でき、結果として、周波数分解能を高くできる。なお、好適な実施例では、後述の如く、第2信号パスにも第2FIFO212が設けられる。
【0019】
第1及び第2データ・メモリ221及び222で一旦保持されたデータは、パソコン・ブロック30へ送られ、従来と同様にCPU32によって、高速フーリエ変換(FFT)演算され、第1及び第2周波数解析範囲に関する第1及び第2周波数領域データが夫々生成される。第1及び第2周波数領域データを用いて、第1及び第2周波数解析範囲夫々に関するスペクトラム波形が表示装置36に表示される。第1及び第2周波数領域データは、被測定信号の入力に応じて並行してデータが生成され更新される。よって、ユーザは、時々刻々変化する被測定信号を、異なる周波数スパン及び異なる周波数分解能で同時に観測できる。
【0020】
本発明のシグナル・アナライザの応用として、ハードウェアの構成はそのままに、周波数領域だけでなく、時間領域データの表示についても、所望部分を拡大表示できる。図5は、ユーザが設定した第1時間解析範囲に関して時間領域データを波形(以下、時間波形と呼ぶ)として表示し、ここから拡大(ズーム)範囲(第2時間解析範囲)を設定する方法を説明する図である。第1及び第2時間解析範囲は、夫々のスタート時点及びストップ時点で定められる。これら時点は、トリガ点を0として、トリガ点からの時間差(オフセット)で指定される。ユーザは、操作パネル34やカーソル74及び76をマウスを操作して、これら時間解析範囲を設定する。時間波形には、時間領域データから生成される時間対電力波形、時間対I/Q電圧波形などが含まれる。第1及び第2DDC181及び182に設定される第1及び第2LO周波数fLO1及びfLO2は、同一に設定される。第2間引きフィルタ202に設定される間引き率KDF2は、上述の周波数解析とは逆に、KDF1よりも低く設定され、よって第2信号パスのデータ生成レートは第1信号パスよりも高くなる。これは、次の関係で示される。
KDF2=KDF1*TS2/TS1
ここで、TS1及びTS2は、夫々第1及び第2時間解析範囲の第1及び第2時間スパンである。
【0021】
また、結果として、第2間引きフィルタ202での間引き処理に必要な時間が、第1間引きフィルタ201でよりも早くなるため、第2FIFO212を設けてデータを必要に応じて遅延させ、第1及び第2信号パス間で時間的に対応するデータが並行して生成されるようにする。ただし、第1及び第2スタート時点間の時間オフセットTDがある分、第1信号パスのデータを遅延させる必要があるので、この点も考慮して、第1及び第2FIFO211及び212での遅延時間が調整される。
【0022】
図6は、本発明によるデータ生成方法によって、スペクトラム波形を表示する処理の流れを示すフローチャートである。ユーザが設定する第1周波数解析範囲について、上述の如く、第1信号パス171からの周波数変換された時間領域データを用いて、パソコン・ブロック30が周波数領域データを生成し、第1スペクトラム波形を表示する(ステップ82)。ユーザは、操作パネル34や表示画面上のカーソル70及び72をマウス48で操作するなどして、ズーム範囲(第2周波数解析範囲)を設定する(ステップ84)。第1及び第2中心周波数fC1及びfC2の差分だけ、第1DDC181に設定されている第1LO周波数fLO1と異なる周波数の第2LO周波数fLO2が第2DDC182に設定される(ステップ86)。第1及び第2周波数スパンの比に応じて間引き率が設定され(ステップ88)、間引き処理に伴う第1及び第2信号パス間の遅延差に応じて第1FIFO211の遅延量を設定する(ステップ90)。各信号パスで生成された周波数変換された時間領域データは、データ・メモリに一時的に保持された後、パソコン・ブロック30がFFT演算し(ステップ92)、表示装置36で第1及び第2スペクトラム波形を夫々異なる表示領域に表示する(ステップ94)。
【0023】
図7は、本発明によるデータ生成方法によって、時間波形を表示する処理の流れを示すフローチャートである。ユーザが設定する第1時間解析範囲について、上述の如く、第1信号パス171からの周波数変換された時間領域データを用いて、パソコン・ブロック30が必要な処理を行って、時間対電力波形、時間対I/Q電圧波形などの第1時間波形を表示する(ステップ102)。ユーザは、操作パネル34や表示画面上のカーソル74及び76をマウス48で操作するなどして、ズーム範囲(第2時間解析範囲)を設定する(ステップ104)。第1及び第2DDC181及び182に設定される第1及び第2LO周波数fLO1及び第2LO周波数fLO2は、同一に設定される(ステップ106)。第1及び第2時間スパンTS1及びTS2の比に応じて間引き率が設定され(ステップ108)、間引き処理に伴う第1及び第2信号パス間の遅延差及び時間オフセットTDに応じて第1及び第2FIFO211及び212の遅延量を設定する(ステップ110)。各信号パスで生成された周波数変換された時間領域データは、データ・メモリに一時的に保持された後、パソコン・ブロック30が必要な処理を行って、時間対電力波形などの第1及び第2時間波形を夫々異なる表示領域に表示する(ステップ114)。」
引用文献1のシグナル・アナライザにおいて、入力信号(被測定信号)が入力減衰回路12へ供給されている(【0004】)ことから、「入力信号を受ける入力ポート」を有することは明らかといえる。そうすると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。(各構成に対応する、引用文献1の段落番号を括弧書きで示す。)
「入力信号を受ける入力ポートと、
ADC16と、(【0015】)
ADC16からの時間領域データに対して、ユーザが設定する第1の周波数解析範囲の第1中心周波数fC1に応じて定まる第1局部発振(LO)周波数fLO1の正弦波及び余弦波データ時間領域データ乗算し、必要な周波数成分を抽出するデジタル演算によってIQ分離及びダウン・コンバートを行う、第1信号パス171の第1デジタル・ダウン・コンバータ(DDC)181(【0017】)と、第1DDC181からの周波数変換された時間領域データを、ユーザが設定する周波数スパンに応じて間引き処理する、第1間引きフィルタ201(【0004】、【0018】)と、
ADC16からの時間領域データを、第2周波数解析範囲の第2中心周波数fC2に応じて定まる第2局部発振(LO)周波数fLO2の正弦波及び余弦波データを用いて、IQ分離及びダウン・コンバートを行う、第2信号パス172の第2DDC182(【0017】)と、第2DDC182からの周波数変換された時間領域データを間引き処理する、第2間引きフィルタ202(【0018】)と、
第1及び第2信号パス間の時間的に対応するデータが並行して各々送られる、第1及び第2データ・メモリ221及び222と、(【0018】)
時間領域データや周波数領域データは、ユーザの設定に応じて、表示装置36において、波形や数値などで表示され、ユーザは、操作パネル34を介して中心周波数、周波数スパン等の所望の設定を行う、パソコン・ブロック30とを備え、(【0005】)
ア 周波数領域データの表示
時々刻々変化する被測定信号を、異なる周波数スパン及び異なる周波数分解能で同時に観測する場合(【0019】)、第1及び第2LO周波数fLO1及びfLO2の周波数差は、第1中心周波数fC1及び第2中心周波数fC2の周波数差とし(【0017】)、第2周波数スパンFS2は、第1周波数スパンFS1に比べて狭いため、第2信号パスの間引き率KDF2は、第1信号パスのKDF1より高くし、第2信号パスは、データ生成レートが低くなる分だけ長時間のデータを取得でき、結果として、周波数分解能を高くでき(【0018】)、第1及び第2データメモリ221及び222で一旦保持されたデータは、パソコン・ブロック30へ送られ、CPU32によって、高速フーリエ変換(FFT)演算され、第1及び第2周波数解析範囲各々に関するスペクトル波形が表示装置36に表示され(【0019】)、
イ 時間領域データの表示
時間領域データの表示については、ユーザが設定した第1時間解析範囲に関して時間領域データを波形(以下、時間波形と呼ぶ)として表示し、ここから拡大(ズーム)範囲(第2時間解析範囲)を設定するため、第1及び第2DDC181及び182に設定される第1及び第2LO周波数fLO1及びfLO2は、同一に設定され、第2間引きフィルタ202に設定される間引き率KDF2は、上記周波数解析とは逆に、KDF1よりも低く設定され、よって、第2信号のパスのデータ生成レートは第1パスよりも高くなり(【0020】)、各信号パスで生成された周波数変換された時間領域データは、データ・メモリに一時的にな保持された後、パソコン・ブロック30が必要な処理を行って、第1及び第2時間波形を各々異なる表示領域に表示する(【0023】)、
被測定信号の周波数領域又は時間領域に関する第1解析範囲に対して、その所望部分を拡大した第2解析範囲を表示するためのデータを別途並行して取得し、第1及び第2解析範囲を同時に更新しながら表示するためのデータ生成を行うシグナル・アナライザ(【0001】)。」
第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
まず、引用発明における「入力信号を受ける入力ポート」、「ADC16」及び「シグナル・アナライザ」は、それぞれ本願発明1の「入力信号を受ける入力ポート」、「上記入力信号をデジタル化してデジタル化済み入力信号を発生するデジタイザ」及び「試験測定機器」に相当する。
また、引用発明が「ADC16からの時間領域データに対して、デジタル演算によってIQ分離及びダウン・コンバートを行う、第1信号パス171の第1デジタル・ダウン・コンバータ(DDC)181と、第1DDC181からの周波数変換された時間領域データを、ユーザが設定する周波数スパンに応じて間引き処理する、第1間引きフィルタ201と」を備えることと、本願発明1が「上記デジタイザに結合され、上記デジタル化済み入力信号をデシメーションして、上記入力信号を表す周波数シフトの無いデシメーション済み入力信号を発生するデシメータ」を備えることとは、共に「上記デジタイザに結合され、上記デジタル化済み入力信号をデシメーションして、上記入力信号を表すデシメーション済み入力信号を発生するデシメータ」を備える点で共通する。
次に、引用発明が「ADC16からの時間領域データを、第2周波数解析範囲の第2中心周波数fC2に応じて定まる第2局部発振(LO)周波数fLO2の正弦波及び余弦波データを用いて、IQ分離及びダウン・コンバートを行う、第2信号パス172の第2DDC182と、第2DDC182からの周波数変換された時間領域データを間引き処理する、第2間引きフィルタ202と」を備えることは、本願発明1が「上記デジタイザに結合され、上記デジタル化済み入力信号を周波数シフトして、周波数シフト済み入力信号を発生するデジタル・ダウンコンバータ」を備えることに相当する。
さらに、引用発明の「第1及び第2信号パス間の時間的に対応するデータが並行して夫々送られる、第1及び第2データ・メモリ221及び222」は、本願発明1の「上記デシメーション済み入力信号及び上記周波数シフト済み入力信号を蓄積するメモリ」に相当する。
ここで、引用発明の「パソコン・ブロック30」は、「時間領域データや周波数領域データ」を表示する「表示装置36」と、ユーザが「中心周波数、周波数スパン等の所望の設定を行う」ための「操作パネル34」とを有しているものであるから、本願発明1の「ユーザ・インタフェースと、上記ユーザ・インタフェースを介して上記デシメーション済み入力信号及び上記周波数シフト済み入力信号を表示する制御器とを具え」る構成に相当するといえる。
してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「入力信号を受ける入力ポートと、
上記入力信号をデジタル化してデジタル化済み入力信号を発生するデジタイザと、
上記デジタイザに結合され、上記デジタル化済み入力信号をデシメーションして、上記入力信号を表すデシメーション済み入力信号を発生するデシメータと、
上記デジタイザに結合され、上記デジタル化済み入力信号を周波数シフトして、周波数シフト済み入力信号を発生するデジタル・ダウンコンバータと、
上記デシメーション済み入力信号及び上記周波数シフト済み入力信号を蓄積するメモリと、
ユーザ・インタフェースと、
上記ユーザ・インタフェースを介して上記デシメーション済み入力信号及び上記周波数シフト済み入力信号を表示する制御器とを具える、
試験測定機器。」
(相違点)
相違点1:本願発明1において、「デシメータ」は「入力信号を表す周波数シフトの無いデシメーション済み入力信号を発生する」とされているのに対し、引用発明において「第1間引きフィルタ201」は「第1DDC181からの周波数変換された時間領域データ」を間引き処理するものである点。
相違点2:本願発明1は、「上記ユーザ・インタフェースは、時間領域制御部及び周波数領域制御部を有し、上記制御器は、上記時間領域制御部に応答して上記デシメータのパラメータを調整すると共に、上記周波数領域制御部に応答して上記デジタル・ダウンコンバータのパラメータを調整する」とされているのに対し、引用発明においては「時間領域データや周波数領域データ」に関して、「パソコン・ブロック30」の「操作パネル34を介して」、ユーザーによる「中心周波数、周波数スパン等の所望の設定を行う」とされているものの、「時間領域制御部及び周波数領域制御部」を有するか否かが不明である点。
(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、引用発明において「第1信号パス171」に「第1デジタル・ダウン・コンバータ(DDC)181」及び「第1間引きフィルタ201」を備える理由は、
ア 「ア 周波数領域データの表示」においては、第1及び第2DDC181及び182の周波数を異ならせ、かつ、第2信号の間引き率KDF2を、第1信号の間引き率KDF1より高くすることで、時々刻々変化する被測定信号を、異なる周波数スパン及び異なる周波数分解能で同時に観測するためであり、
イ 「イ 時間領域データの表示」においては、第1及び第2DDC181及び182の周波数を同一にし、かつ、第2間引きフィルタ202に設定される間引き率KDF2を、上記周波数解析とは逆に、第1信号の間引き率KDF1よりも低く設定することで、第1時間解析範囲の第1時間波形、及びここから拡大(ズーム)範囲(第2時間解析範囲)の設定された第2時間波形を各々異なる表示領域に表示するためである。
よって、引用発明において、「第1信号パス171」から「第1デジタル・ダウン・コンバータ(DDC)181」を取り除き、「第1間引きフィルタ201」が周波数シフトの無い信号を間引くようにしたのでは、上記「ア 周波数領域データの表示」も、「イ 時間領域データの表示」も、どちらも不能となってしまうことは当業者にとって明らかである。
また、引用発明において、「第1信号パス171」からのデータにより、時間領域データの表示を行い「第2信号パス172」からのデータについて、FFT演算を行って、周波数領域データの表示を行うことは、第2間引きフィルタ202に設定される間引き率KDF2と、第1信号の間引き率KDF1との大小関係が、周波数領域データの表示と、時間領域データの表示とで真逆である点を考慮すれば、実施可能な表示形態として想定されていないものといえる。
よって、上記相違点1は、引用発明に基づいて当業者が容易になしえたこととはいえない。
したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2について
本願発明2は、本願発明1の試験測定機器の動作方法の発明であり、本願発明1の「入力信号を表す周波数シフトの無いデシメーション済み入力信号を発生する」ことに対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-2は「入力信号を表す周波数シフトの無いデシメーション済み入力信号を発生する」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-012930