特許拒絶査定不服審判
2016-012842
通信システム
- 審判番号
- 2016-012842
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-212989外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年08月25日
- 審決日
- 2017年08月25日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (H04L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-212989「通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月17日出願公開、特開2014- 68259、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年9月26日の出願であって、平成28年2月26日付けで拒絶理由が通知され、同年4月27日付けで手続補正がされ、同年7月5日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年8月25日に拒絶査定不服審判の請求がされ、平成29年6月8日付けで拒絶理由(以下、当審拒絶理由」という。)が通知され、同年6月28日付けで手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成28年7月5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-8に係る発明は、以下の引用文献Aに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
A.特開2012-044579号公報
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
本願請求項1-4、7、8に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.村山純一(NTT)「広域ルータシステムの提案」信学技報IN95-66(Vol.95 NO.295)1頁~8頁(1995年10月18日)
第4 本願発明
本願請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、平成29年6月28日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-7は以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
通信網の状態を示す網情報を取得する取得部と、
前記網情報に基づいて前記通信網における複数の通信フローそれぞれの通信状況を推定する推定部と、
前記複数の通信フローそれぞれの通信状況が所定の条件を満たす場合に、前記複数の通信フローのうち一部の通信フローそれぞれの優先度を変更する変更部と、
を備え、
前記変更部は、前記通信網内における一部の区間において前記一部の通信フローそれぞれの優先度を変更し、
前記優先度を変更するに際して、前記複数の通信フローのうち、
相対的に優先順位が低い通信フロー、
優先度を下げる通信フロー数が最小で、他の通信フローの品質を守れる通信フロー、
最も帯域が大きな又は小さな通信フロー、
開始時刻が最も早い又は遅い通信フロー、および
ランダムに選択したいずれか単数又は複数の通信フロー、
のいずれかの優先度を低下させ、
前記通信網内における前記一部の区間以外の区間において前記一部の通信フローそれぞれの優先度を変更しない、
通信システム。
【請求項2】
通信網の状態を示す網情報を取得する取得部と、
前記網情報に基づいて前記通信網における複数の通信フローそれぞれの通信状況を推定する推定部と、
前記複数の通信フローそれぞれの通信状況が所定の条件を満たす場合に、前記複数の通信フローのうち一部の通信フローそれぞれの優先度を変更する変更部と、
を備え、
前記変更部は、前記通信網内における一部の区間において前記一部の通信フローそれぞれの優先度を変更し、
前記優先度を変更するに際して、前記複数の通信フローのうち、
相対的に優先順位が高い通信フロー、
優先度を上げる通信フロー数が最小で、他の通信フローの品質を守れる通信フロー、
最も帯域が大きな又は小さな通信フロー、
開始時刻が最も早い又は遅い通信フロー、および
ランダムに選択したいずれか単数又は複数の通信フロー、
のいずれかの優先度を上昇させ、
前記通信網内における前記一部の区間以外の区間において前記一部の通信フローそれぞれの優先度を変更しない、
通信システム。
【請求項3】
前記変更部は、前記通信網内の一部の区間において通信フロー転送の優先度が異なる複数のトンネルが構築されている場合、当該複数のトンネルの間で前記一部の通信フローそれぞれの転送に使用されるトンネルを変更することによって、前記一部の通信フローそれぞれの優先度を変更する、
請求項1または2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記変更部は、前記一部の区間への突入時に通信フローに付加され、前記一部の区間からの脱出時に当該通信フローから取り除かれる所定のタグが存在する場合、変更後の優先度を前記一部の通信フローそれぞれの当該所定のタグに設定することにより、前記一部の通信フローそれぞれの優先度を変更する、
請求項1または2に記載の通信システム。
【請求項5】
前記取得部は、他の装置から前記網情報を取得することにより、または、前記通信網の状態を自ら検出することにより、前記網情報を取得する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項6】
前記通信システムは、
前記網情報に基づいて前記通信網の有効性を判断する判断部と、
前記判断部による判断結果に基づいて、前記通信網における複数の通信フローそれぞれの経路を選択する経路選択部と、
をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項7】
前記変更部は、SDN(Software Defined Network)の機能を用いて、前記一部の通信フローそれぞれの優先度を変更する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の通信システム。」
第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
当審拒絶理由に引用された「村山純一(NTT)「広域ルータシステムの提案」信学技報IN95-66(Vol.95 NO.295)1頁~8頁(1995年10月18日)」(以下、「引用文献1」という。)には、図面(特に、図4)とともに次の事項が記載されている。(当審注:下線部は当審で付与した。)
(ア)「また、パケットの品質制御機能に関して、入力側IWUでは、ユーザパケットをカプセル化する際に、要求品質・コストの解析を行い、解析結果からパケット中継レイヤの選択を行う。・・・(略)・・・出力側IWUでは、受信パケットの品質を観測し、その結果を入力側IWUへフィードバックする。入力側IWUは、この情報を基にパケットに付与する優先順位を上下させる。・・・(略)・・・要求品質を満足するSVCが直接設定され、これを用いてパケット転送が行われる。」(6頁左欄)
(イ)「(2)パケットカプセル化
入力側IWUは、出力側IWUの特定後、パケットを内部転送用のプロトコル・フレームにカプセル化し、CLSへ転送する。」(6頁右欄)
(ウ)「広域ルータシステムは、特定IWUから入力されたパケットを宛先インタネットアドレスの内容に応じて特定IWUから出力する。基本的にシステム内部では、次のようなシーケンスでパケットの到達性に関する処理が行われる。」(6頁右欄)
(エ)「(4)パケットデカプセル化
出力側IWUでは、パケットのデカプセル化を行い、抽出したパケットをユーザシステムへ送出する。」(7頁左欄)
(オ)「(1)優先順位付与処理
入力側IWUでは、入力されたパケットストリームの要求品質に基づき、適切な優先順位を、カプセル化したパケットに付与する。
(2)優先送信処理
CLSでは、パケット転送処理中に競合が発生した場合、パケットの優先順位が高いものから順に処理する。
(3)品質観測処理
出力側IWUでは、出力するパケットストリームの品質を観測して要求品質と比較し、その結果を入力側IWUへフィードバックする。
(4)優先順位調整処理
入力側IWUでは、出力側IWUの通知情報に基づき、カプセル化されたパケットに付与する優先順位を動的に変更する。品質過剰の場合は優先順位を低下させ、品質不足の場合は優先順位を向上させる。」(7頁左欄)
摘記事項(ア)~(オ)の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
(引用発明)
「広域ルータシステムと出力するパケットストリームの品質を観測する出力側IWUと、前記出力するパケットストリームの品質が品質過剰の場合、カプセル化されたパケットに付与する優先順位を低下させ、品質不足の場合は、前記優先順位を向上させる入力側IWUとを備え、
前記入力側IWUでは、前記パケットのカプセル化を行い、前記出力側IWUでは、前記パケット化されたパケットのデカプセル化を行う
広域ルータシステムを含むネットワーク。」
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「広域ルータシステムを含むネットワーク」、「出力するパケットストリーム」は、それぞれ、本願発明1における「通信網」、「通信フロー」に含まれる。
引用発明の「出力するパケットストリーム」に関し、引用文献に「パケット転送処理中に競合が発生した場合」の記載(摘記事項(オ)の「(2)優先送信処理」)があるように「出力するパケットストリーム」が「複数」あることを前提としていることは自明である。
本願発明の「通信ネットワークの通信状況」について、明細書(【0047】)に「例えば、通信品質であってもよい。」と記載されていることから、引用発明の「出力するパケットストリームの品質」は、本願発明1の「通信フローの通信状況」に含まれる。
引用発明の「出力するパケットストリームの品質が品質過剰の場合、カプセル化されたパケットに付与する優先度を低下させ、品質不足の場合は前記優先順位を向上させる。」ことは、「出力するパケットストリームの品質」が、「品質過剰」という条件、あるいは、「品質不足」という条件を満たす場合に優先順位を変更し、上記条件が満たされない場合、「優先順位」は、変更されないことは明らかである。したがって、引用発明の「出力するパケットストリームの品質が品質過剰の場合、カプセル化されたパケットに付与する優先順位を低下させ、品質不足の場合は、前記優先順位を向上させる」は、本願発明1の「前記複数の通信フローそれぞれの通信状況が所定の条件を満たす場合に、前記複数の通信フローのうち一部の通信フローそれぞれの優先度を変更する」ことに含まれる。
引用発明の「入力側IWU」と「出力側IWU」との間は、本願発明1の「前記通信網内における一部の区間」に含まれる。
引用発明の「前記入力側IWUが前記パケットのカプセル化を行い、前記出力側IWUでは、前記パケット化されたパケットのデカプセル化を行う」ことにより、「入力側IWU」と「出力側IWU」との間のみ、カプセル化に伴う「優先順位」による転送を行うことは明らかである。
してみると、引用発明の「前記入力側IWUでは、前記パケットのカプセル化を行い、前記出力側IWUでは、前記パケット化されたパケットのデカプセル化を行う」は、本願発明の「前記通信網内における前記一部の区間以外の区間において前記一部の通信フローそれぞれの優先度を変更しない」に含まれる。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「通信網における複数の通信フローそれぞれの通信状況を求め、
前記複数の通信フローそれぞれの通信状況が所定の条件を満たす場合に、前記複数の通信フローのうち一部の通信フローそれぞれの優先度を変更する変更部と、
を備え、
前記変更部は、前記通信網内における一部の区間において前記一部の通信フローそれぞれの優先度を変更し、
前記通信網内における前記一部の区間以外の区間において前記一部の通信フローそれぞれの優先度を変更しない、
通信システム。」
(相違点)
(相違点1)
一致点の「通信状況を求め」に関し、本願発明1では、「網情報に基づいて」、「通信状況を推定する推定部」を備えているのに対して、引用発明では、「出力するパケットストリームを観測」している点。それに伴い、本願発明1は、「通信網の状態を示す網情報を取得する取得部」を備えるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。
(相違点2)
一致点の「通信フローのそれぞれの優先度を変更し、」に関して、本願発明1は、「前記優先度を変更するに際して、前記複数の通信フローのうち、
相対的に優先順位が低い通信フロー、
優先度を下げる通信フロー数が最小で、他の通信フローの品質を守れる通信フロー、
最も帯域が大きな又は小さな通信フロー、
開始時刻が最も早い又は遅い通信フロー、および
ランダムに選択したいずれか単数又は複数の通信フロー、
のいずれかの優先度を低下させ、」という構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、(相違点2)について検討する。
引用発明の「優先順位」について、引用文献の摘記事項(エ)、(カ)によれば、「入力されたパケットストリームの要求品質」と「出力するパケットストリームの品質」との「比較」による「通知情報」に基づいて「優先順位」を「変更」するものであり、本願発明の(相違点2)に係る構成のように、「複数の通信フロー」内での相対的な関係で「変更」するものではない点で、技術的思想を異にしている。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2ないし本願発明7について
本願発明2-7も、本願発明1の「前記優先度を変更するに際して、前記複数の通信フローのうち、相対的に優先順位が低い通信フロー、優先度を下げる通信フロー数が最小で、他の通信フローの品質を守れる通信フロー、最も帯域が大きな又は小さな通信フロー、開始時刻が最も早い又は遅い通信フロー、およびランダムに選択したいずれか単数又は複数の通信フロー、のいずれかの優先度を低下させ、」と同一の発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定についての判断
本願発明の「優先度の変更」の対象となる「一部の通信フロー」は、「複数の通信フロー」に属するものであり、「複数の通信フロー」は、それぞれ「通信状況」を有すること、すなわち、既に通信している状況にあることを前提(明細書【0017】、【0020】参照)とするものであるが、原査定における引用文献Aにはそのような前提となる構成が記載も示唆もされていない。
よって、本願発明1-7は、当業者であっても、原査定における引用文献Aに基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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