特許拒絶査定不服審判
2016-011311
ソフト・テキスチャー有するペット・フード組成物
- 審判番号
- 2016-011311
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-544717外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年07月28日
- 審決日
- 2017年12月04日
- 公報発行日
- 2018年01月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ヒルズ・ペット・ニュートリシャン・インコーポレーテッド
- 【請求人代理人】村井 康司
- 【請求人代理人】堀川 かおり
- 分類
- P18 .121-WY (A23K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-544717「ソフト・テキスチャー有するペット・フード組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月20日国際公開、WO2013/089722、平成27年 2月12日国内公表、特表2015-504311、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)12月15日を国際出願日とする出願であって、平成26年5月28日に手続補正書が提出され、平成27年7月22日付けで拒絶理由が通知され、同年10月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年3月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成28年3月23日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願の請求項1ないし16に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である以下の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開昭58-043750号公報
引用文献2:特表昭59-501492号公報
引用文献3:特開2001-161258号公報
第3 本願発明
本願の請求項1ないし14に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明14」という。)は、平成28年7月28日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願発明1は以下のとおりである。
「 【請求項1】
乾燥材料基準でタンパク質10%~60%、
乾燥材料基準で脂肪5%~40%、および
乾燥材料基準で炭水化物30%~65%、および
温度不安定性アミラーゼである少なくとも1つのアミラーゼを含有するペット・フード組成物であり、
該組成物は、ソフト・テクスチャーを有し、
添加アミラーゼのないペット・フード組成物の侵入力(penetrating force)の10%~80%である侵入力を有するとともに、3回の凍結/解凍サイクル後の添加アミラーゼのないペット・フード組成物の侵入力の10%~80%である侵入力を有し、および、
酵素活発アミラーゼを実質上含まず、
水40%~80%を含むウェット・ペット・フード組成物であることを特徴とするレトルトのペット・フード組成物。」
なお、本願発明2ないし14の概要は、以下のとおりである。
本願発明2ないし9は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明10ないし13は、それぞれ本願発明1ないし4に対応する製造方法の発明であり、本願発明1ないし4とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
本願発明14は、本願発明10を減縮した発明である。
第4 引用文献の記載事項
1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である上記引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加した。)。
(引1-ア)第2頁左下欄9~11行
「 本発明はドッグフード、更に詳しくは、穀粉およびタンパク質材料を含有するドッグフードの味覚(嗜好性)の改良に関するものである。」
(引1-イ)第3頁右上欄下から3行~左下欄下から3行
「 本発明によつて、脂肪、タンパク質、ビタミンおよびミネラルからなる栄養の均衡のとれたドッグフード製造の改良法およびその方法による改良製品が提供された。本発明の本質はペット食品の穀粉成分が、その味覚を改良するためプロテアーゼおよびアミラーゼ両酵素により処理されることを必要とする。この方法により得られた製品は本発明で処理されなかつた同一ドッグフード製剤より著しく改良されている。
“味覚(または嗜好性)”の用語は広義であり消費する犬により感じられ飼料の全体的受容性を決定するドッグフードの種々の性質を包含する。これらの性質は組織、風味および香気である。本発明は概して主として食品の風味を改良することにより味覚を向上させると考えられる。しかしながら、反応生成物は成形に先立ち、反応生成物は均一に混合することによりドッグフード中に配合される本発明の態様においてドッグフードのテクスチャーの改質が行われることは明白である。いずれにせよ、これらの組織上の変化がそれ自体どの程度に行われるかは知られていない。」
(引1-ウ)第3頁左下欄下から2行~右下欄3行
「 本発明の方法は少なくとも1成分の穀粉と少くとも1成分のタンパク質とを含有するドッグフードの味覚を実際に改良するのに使用できる。故に本方法は乾燥、中間水分またはカン入りドッグフードの製造に使用できる。」
(引1-エ)第3頁右下欄13~14行
「カン入ドッグフードは50%以上代表的には70%以上の水分含量を有する。」
(引1-オ)第4頁左下欄12行~右下欄15行
「 本発明により処理できるカン入りドッグフードの典型的なものはタンパク質肉材料および穀粉材料の両者からなる肉ボールを含有するものである。典型的にはタンパク質および穀粉材料は成形されその成形物を熱処理してついで肉汁中に包装する。本発明の方法はこのタイプのドッグフードに対し乾燥および中間水分の種類と同様な方法で実施される。
従つて本発明はこれらの形態のいずれか1種類に関して詳細に記載することにより通常の当業者には十分に開示されたものと考える。故に、本発明は下記に中間水分の製品代表的場合を記載するが、その教示は乾燥およびカン製品に十分応用できる。
いずれの具体的タイプ方法および製品にも限定されることなく、栄養が最高に重要であることを当業者は認識している。各ドッグフードは栄養的に完全であることが重要である。これが実施されると犬の所有者は異なる食品の量の均衡を図る必要はない。故に犬の栄養の摂取は最低量の食品を取る限り保証される。栄養的に均衡のとれた食品は飼育試験により確立された適当な成長と維持に十分な量のタンパク質、含水炭素、脂肪、ビタミンおよびミネラルを含有する。」
(引1-カ)第6頁右下欄15行~第7頁右上欄8行
「 一般に、本発明の方法は水および穀粉材料からなる穀粉スラーリーを製造し、穀粉スラリー中の穀粉材料をその少なくとも1部が単量体1-10単位の範囲のオリゴ糖の混合物に変換する条件の下でアミラーゼおよびプロテアーゼ酸素と処理することにより穀粉反応生成物を生成し;水およびタンパク質材料とからなるタンパク質スラリーを製造し、タンパク質スラリ中のタンパク質材料をその少なくとも1部が単量体2-300単位の範囲の大きさのペプチドに有効に変換する条件のもとにプロテアーゼ酵素と処理することによりタンパク質反応生成物を生成し、穀粉およびタンパク質反応生成物をドッグフードの味覚の著しい向上を効果的に犬に与える量でドッグフード中に配合する工程を包含する。タンパク質材料の1部を単量体2-50単位の範囲の大きさのペプチドに変換するのが更に好ましい。
好ましい方法は、水および穀粉材料とからなる穀粉スラリーを製造し、穀粉スラリー中の穀粉材料をその少なくとも1部が単量体1-10単位の範囲の大きさのオリゴ糖の混合物に有効に変換する条件のもとでアミラーゼ酵素と処理することにより穀粉反応生成物を生成し;穀粉材料(当審注:混合スラリーにはタンパク質材料が含まれている必要があることから、「穀粉材料」は「タンパク質材料」の誤記と認める。)を前記の穀粉スラリーと混合して混合スラリーを製造し;混合スラリーを少なくとも1部のタンパク質材料が、単量体2-300単位の範囲の大きさのペプチドに有効に変換する条件のもとでタンパク分解酵素で処理することにより反応生成物を生成し、かつ組合せスラリーの反応生成物をドッグフードの味覚の著しい向上を犬に効果的に与える量でドッグフード中に配合することを特徴としている。タンパク質材料の1部が単量体2-50単位の範囲の大きさのペプチドに変換されることは更に好ましい。」
(引1-キ)第7頁左下欄2~7行
「 スラリー中に使用される穀粉材料はドッグフード自体に使用されるものであつてよく、もし所望ならば穀粉成分の主要な部分と異なる材料であつてよい。典型的には処理される穀粉材料はドッグフードに使用した穀粉材料の全重量の約5%-約25%の量である。」
(引1-ク)第7頁右下欄6~16行
「 本発明により使用されるアミラーゼ酵素は少なくとも1部の穀粉材料が単量体1-10単位の範囲の大きさのオリゴ糖混合物に有効に変換できる量で添加すべきである。再現性と工程制御を与えるために、熱に不安定な酵素を使用することが望ましく、それによつて目的に有効な温度に単に加熱することにより失活できる。適当な酵素は植物動物または微生物から誘導されたアルフアーアミラーゼである。好適には熱安定性のない細菌性アルフアアミラーゼおよび真菌性アルフアアミラーゼを約等量および混合して使用する。」
(引1-ケ)第11頁左上欄7行~右下欄8行
「実施例 1.(当審注:原文では「実施例 1.」に下線が付してある。)
この実施例は次の配合から2種の本質的に同一の製品の製造が記載され、僅かの差異は1方が別個に製造したアミロース分解酵素による分解穀粉およびタンパク分解酵素による分解タンパク質スラリーを混合することにより製造した対照製品であり、他方は混合し酵素的に改質した穀粉およびタンパク質成分を利用する本発明の製品であることである。両者に対する配合は次の通りである。
成 分 重量部
(当審注:原文では「成分」及び「重量部」に下線が付してある。)
全粒磨砕とうもろこし 27.4
大豆ひき割り、44%タンパク質 17.7
全粒磨砕小麦 15.0
肉および骨ひき割り 12.0
牛肉トリム 10.0
コーンシロップ 8.0
1,2-プロパンジオール 3.0
グリセリン 2.0
ビタミンおよびミネラル プレミックス 2.9
液体植物由来プロテアーゼ 0.2
細菌アミラーゼ 0.002
真菌由来アミラーゼ 0.002
色素系 0.03
液体コーティング 5.0
米国20メッシュふるいを85%通過するように磨砕した全粒磨砕とうもろこし5ポンド(2.27Kg)を5ポンド(2.27Kg)の水、真菌アミラーゼ、細菌アミラーゼに攪拌混合器中で添加した。反応混合物を140°F(60℃)に加熱し約30分間その温度に保持した。この穀粉反応スラリーにプロピレングリコール、トリムおよび6ポンド(2.72Kg)の肉および骨ひき割りを添加した。得られた反応混合スラリーを140°F(60℃)に加熱し液体植物由来プロテアーゼの半量を次に添加した。約20分間反応後液体植物プロテアーゼの他の半量および肉および骨のひき割りを140°F(60℃)で約20分の第2反応時間に添加した。その後反応混合物を170°F(76.7℃)に加熱しその温度に約3時間保持し酵素を失活させた。この段階でコーンシロップおよび高フルクトースコーンシロップを添加し水分含量29%を有する反応混合スラリー生成物を得た。
得られた混合した反応スラリーは次に予備調質機に供給し、そこで全粒磨砕とうもろこしの残部を除いてすべての他の成分と混合した。予備調質機中で約130°F(約54.4℃)の温度で約45秒滞留した後、予備調質した成分はアンダーソン膨張機に供給され、残りの全粒磨砕とうもろこしが供給される。アンダーソン膨張機内ですべての成分が熱圧力のもとに機械的に加工され均一な押出性物質を得た。膨張機内の温度は約265°F(129.4℃)に維持され、ダイ板中の3/8インチ(0.95cm)の穴を通して押出され、押出機を離れる際ダイオリフイスの直径の丁度2倍以下に膨張した。ダイ板から約3/16インチ(0.48cm)の間隔をおいた刃は間けつ的にダイ板の口を通過し裂開作用により製品を切断して切片とする。生成物はほぼ周囲温度に冷却し漂白極上牛脂および脂肪分解された牛脂からなる約5%の液状コーテイングでコートし、防湿袋中に包装した。製品は約18%の水分含量と約0.860のawを有する。これを製品Aと称した。」
2 引用文献1に記載された発明の認定
(1)(引1-カ)に記載された「混合スラリー」と「組合せスラリー」とは、前後の文脈から見て同じスラリーを意味するものと認められる。
(2)アミラーゼ酵素に関する(引1-ク)の「再現性と工程制御を与えるために、熱に不安定な酵素を使用することが望ましく、それによつて目的に有効な温度に単に加熱することにより失活できる。」との記載から、アミラーゼ酵素として熱に不安定な酵素を使用し、加熱により失活させる態様が読み取れる。
上記(1)及び(2)を踏まえると、(引1-ア)ないし(引1-ク)の記載から、引用文献1には、
「 適当な成長と維持に十分な量のタンパク質、含水炭素、脂肪、ビタミンおよびミネラルを含有し、50%以上の水分含量を有するカン入りドッグフード組成物であって、
水および穀粉材料とからなる穀粉スラリーを製造し、穀粉スラリー中の穀粉材料をその少なくとも1部が単量体1-10単位の範囲の大きさのオリゴ糖の混合物に有効に変換する条件のもとでアミラーゼ酵素と処理することにより穀粉反応生成物を生成し、ここで、スラリー中に使用される処理される穀粉材料はドッグフードに使用する穀粉材料の全重量の約5%-約25%の量であり、
タンパク質材料を前記の穀粉スラリーと混合して混合スラリーを製造し、
前記混合スラリーを少なくとも1部のタンパク質材料が、単量体2-300単位の範囲の大きさのペプチドに有効に変換する条件のもとでタンパク分解酵素で処理することにより反応生成物を生成し、
前記混合スラリーの反応生成物をドッグフードの味覚の著しい向上を犬に効果的に与える量でドッグフード中に配合し、タンパク質及び穀粉材料は成形されその成形物を熱処理してついで肉汁中に包装されたものであり、
前記アミラーゼ酵素は熱に不安定な酵素であり、加熱することにより失活しており、ドッグフードのテクスチャーの改質が行われている、カン入りドッグフード組成物。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
3 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である上記引用文献2及び3は、デンプンを含む食品にアミラーゼを添加することにより柔らかなテクスチャーが生じるという技術常識を示すために引用されたものである。
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「タンパク質」、「脂肪」及び「含水炭素」は、それぞれ本願発明1の「タンパク質」、「脂肪」及び「炭水化物」に相当する。
イ 引用発明の「熱に不安定な酵素であ」る「アミラーゼ酵素」は、本願発明1の「温度不安定性アミラーゼである少なくとも1つのアミラーゼ」に相当する。
ウ 引用発明において「アミラーゼ酵素」が「加熱することにより失活して」いることは、本願発明1において「酵素活発アミラーゼを実質上含ま」ないことに相当する。
エ
(ア)引用発明の「50%以上の水分含量を有する」ことと、本願発明1の「水40%~80%を含む」こととは、「水50%~80%を含む」ことにおいて重複している。
(イ)引用発明のドッグフード組成物は、50%以上の水分含量を有することから、ウェットタイプのドッグフード組成物であるといえる。
(ウ))引用発明のドッグフード組成物は「カン入り」であるところ、技術常識からみて加熱による殺菌を行うことは明らかであるから、レトルトのドッグフード組成物であるといえる。
(エ)引用発明の「ドッグフード組成物」は、本願発明1の「ペット・フード組成物」に相当する。
(オ)上記(ア)ないし(エ)を踏まえると、引用発明の「50%以上の水分含量を有するカン入りドッグフード組成物」は、本願発明1の「水40%~80%を含むウェット・ペット・フード組成物である」「レトルトのペット・フード組成物」に相当する。
(2)一致点及び相違点
よって、本願発明1と引用発明とは、
「 タンパク質、脂肪、炭水化物、及び温度不安定性アミラーゼである少なくとも1つのアミラーゼを含有するペット・フード組成物であり、
酵素活発アミラーゼを実質上含まず、
水40%~80%を含むウェット・ペット・フード組成物である、レトルトのペット・フード組成物。」
の発明である点で一致し、次の3点で相違する。
(相違点1)
タンパク質、脂肪及び炭水化物の含有量に関して、本願発明1においては、「それぞれ乾燥材料基準で10%~60%、5%~40%及び30%~65%」に特定されているのに対し、引用発明においては、そのような特定はされていない点。
(相違点2)
ペット・フード組成物が、本願発明1においては、「ソフト・テクスチャーを有」するのに対し、引用発明においては、「ドッグフードのテクスチャーの改質が行われている」ものの、ソフト・テクスチャーを有するかは不明である点。
(相違点3)
本願発明1は、「添加アミラーゼのないペット・フード組成物の侵入力(penetrating force)の10%~80%である侵入力を有するとともに、3回の凍結/解凍サイクル後の添加アミラーゼのないペット・フード組成物の侵入力の10%~80%である侵入力を有」するのに対し、引用発明においては、そのような特定はされていない点。
(3)当審の判断
ア 事案に鑑み、最初に上記相違点3について検討する。
イ 引用発明において、アミラーゼ酵素の使用量は明らかではない。
そこで、(引1-オ)に、カン入りドッグフードに関して「本発明の方法はこのタイプのドッグフードに対し乾燥および中間水分の種類と同様な方法で実施される」こと、「本発明は下記に中間水分の製品代表的場合を記載するが、その教示は乾燥およびカン製品に十分応用できる」ことが記載されていることから、ウェットタイプである缶入りドッグフードに近い中間水分の製品に関する実施例に相当する(引1-ケ)の実施例1の記載を参酌する。
(引1-ケ)から、実施例1では、細菌アミラーゼ0.002重量部及び真菌由来アミラーゼ0.002重量部が用いられていることから、引用発明において、アミラーゼ酵素0.004重量部を使用した場合を想定する。
ウ 本願の発明の詳細な説明に記載された、浸入に必要な力を示す実施例6(以下「本願実施例」という。)の表10によれば、アミラーゼ酵素0.004重量部に近い条件であるα-アミラーゼ0.005%を使用した場合の2週間硬化後の浸入に必要な力は、α-アミラーゼを使用しないコントロールと比較して、13%の低下にとどまっている。
エ 引用発明と本願実施例とは、炭水化物の含有量及びアミラーゼの種類等の条件が必ずしも一致するものとはいえないことから、引用発明における浸入に必要な力の低下量が本願実施例と同程度であると直ちに認定することはできない。
しかしながら、引用発明において、アミラーゼ酵素処理される穀粉材料はドッグフードに使用する穀粉材料の全重量の約5%-約25%の量であることを考慮すると、アミラーゼ酵素により分解される炭水化物(含水炭素)の量は、最大でも穀粉材料全体の量の1/4程度であり、炭水化物の分解による浸入に必要な力の低下量は、抑制されているとみるのが相当である。
してみると、引用発明が、アミラーゼ酵素を添加しないカン入りドッグフード組成物の侵入力(penetrating force)の10%~80%である侵入力を有する蓋然性が高いとはいえない。
オ また、(引1-ア)の「本発明はドッグフード・・・の味覚(嗜好性)の改良に関するものである。」、(引1-イ)の「“味覚(または嗜好性)”の用語は広義であり消費する犬により感じられ飼料の全体的受容性を決定するドッグフードの種々の性質を包含する。これらの性質は組織、風味および香気である。本発明は概して主として食品の風味を改良することにより味覚を向上させると考えられる。」との記載から、引用発明は、風味を改良することにより味覚を向上させることを目的とするものと認められ、組織の改良、すなわちテクスチャーの改質は、二次的な効果にすぎず、直接的な目的であるとは認められない。
してみると、風味の改良を目的とする引用発明において、風味に与える影響を無視してアミラーゼ酵素による処理条件を変更し、20%以上の浸入力の低下が生じるような処理条件を選択しようとする動機付けがあるとはいえない。
カ したがって、引用文献1ないし3に接した当業者といえども、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想起することはできない。
キ よって、上記相違点1及び2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明並びに引用文献2及び3に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2 本願発明2ないし9について
本願発明2ないし9も、本願発明1の「添加アミラーゼのないペット・フード組成物の侵入力(penetrating force)の10%~80%である侵入力を有するとともに、3回の凍結/解凍サイクル後の添加アミラーゼのないペット・フード組成物の侵入力の10%~80%である侵入力を有」することと同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明並びに引用文献2及び3に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
3 本願発明10ないし14について
本願発明10ないし13は、それぞれ本願発明1ないし4に対応する製造方法の発明であり、本願発明14は、本願発明10を減縮した発明であり、いずれも本願発明1の「添加アミラーゼのないペット・フード組成物の侵入力(penetrating force)の10%~80%である侵入力を有するとともに、3回の凍結/解凍サイクル後の添加アミラーゼのないペット・フード組成物の侵入力の10%~80%である侵入力を有」することに対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明並びに引用文献2及び3に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし14は、引用発明並びに引用文献2及び3に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-011311