特許拒絶査定不服審判
2016-010558
選択プログラム、選択方法及び選択装置
- 審判番号
- 2016-010558
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-057905外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年07月12日
- 審決日
- 2017年05月22日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】富士通株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人酒井国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012- 57905「選択プログラム、選択方法及び選択装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月26日出願公開、特開2013-191099、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成24年3月14日の出願であって,平成27年9月4日付けで拒絶理由通知がなされ,同年11月5日付けで手続補正がなされたが,平成28年4月5日付けで拒絶査定(原査定)がなされ,これに対し,同年7月12日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ,同年10月4日付けで上申書が提出されたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成28年4月5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
請求項1-6に係る発明は,引用文献1に記載された発明及び引用文献2,3に記載された周知技術に基づいて,当業者であれば容易になし得たものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献等一覧
1.特開2006-85645号公報
2.特開2010-108078号公報
3.特開2011-95946号公報
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
すなわち,審判請求時の補正によって補正後の請求項1,4,5(補正前の請求項1,5,6)に「前記売上実績データに基づいて,前記商品の売上数が大きいほど特定の期間を短く設定し」という事項を追加する補正は,「特定の期間」を限定するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また,上記事項は,当初明細書の段落【0052】に記載されているから,当該補正は新規事項を追加するものではない。
また,請求項2に係る補正は,「前記選択する処理は,前記複数種類のパラメータから,前記特性のうちの売上数量が多い商品ほど短期間における売上予測データと売上実績データとの誤差が最も小さいパラメータを選択し,売上数量が少ない商品ほど長期間における売上予測データと売上実績データとの誤差が最も小さいパラメータを選択する」の記載を,「前記パラメータの選択は,前記特定の期間における,前記売上実績データと前記複数の売上予測データとの差が小さいパラメータを選択する」に補正するものであるが,当該補正は,請求項1に上記事項を追加して減縮したことに伴い,当該事項と重複する記載を請求項2から削除するための補正であり,特許請求の範囲の減縮を目的とする。
また,請求項3に係る補正は,「前記選択する処理は,前記複数種類のパラメータから,前記特性のうちの売上数量及び利益金額が多い商品ほど短期間における売上予測データと売上実績データとの誤差が最も小さいパラメータを選択し,売上数量及び利益金額が少ない商品ほど長期間における売上予測データと売上実績データとの誤差が最も小さいパラメータを選択する」を「前記特定の期間は,前記商品の売上利益が大きいほど短く設定される」に補正するものであるが,当該補正も,請求項1に上記事項を追加して減縮したことに伴い,当該事項と重複する記載を請求項3から削除するための補正であり,特許請求の範囲の減縮を目的とする。
また,補正前の請求項4を削除する補正は,請求項の削除を目的とする。
そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1~5に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願請求項1~5に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」~「本願発明5」という。)は,平成28年7月12日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
コンピュータに,
商品の売上数量の変化を示す売上実績データを記憶する記憶部から,特定の商品の売上実績データを読み出し,
複数の予測モデルのうち,読み出した前記売上実績データの特性に対応する予測モデルについて,異なる複数種類のパラメータを適用して,複数の売上予測データを生成し,
前記売上実績データに基づいて,前記商品の売上数が大きいほど特定の期間を短く設定し,
前記特定の商品の売上実績データのうち前記特定の期間における,売上実績データと前記複数の売上予測データとに基づいて,前記複数種類のパラメータのうちいずれかのパラメータを前記予測モデルに適用するパラメータとして選択する,
各処理を実行させることを特徴とする選択プログラム。
【請求項2】
前記パラメータの選択は,前記特定の期間における,前記売上実績データと前記複数の売上予測データとの差が小さいパラメータを選択する,ことを特徴とする請求項1に記載の選択プログラム。
【請求項3】
前記特定の期間は,前記商品の売上利益が大きいほど短く設定される,ことを特徴とする請求項1に記載の選択プログラム。
【請求項4】
コンピュータによって実行される選択方法であって,
コンピュータが,
商品の売上数量の変化を示す売上実績データを記憶する記憶部から,特定の商品の売上実績データを読み出し,
複数の予測モデルのうち,読み出した前記売上実績データの特性に対応する予測モデルについて,異なる複数種類のパラメータを適用して,複数の売上予測データを生成し,
前記売上実績データに基づいて,前記商品の売上数が大きいほど特定の期間を短く設定し,
前記特定の商品の売上実績データのうち前記特定の期間における,売上実績データと前記複数の売上予測データとに基づいて,前記複数種類のパラメータのうちいずれかのパラメータを前記予測モデルに適用するパラメータとして選択する,
各処理を実行することを特徴とする選択方法。
【請求項5】
商品の売上数量の変化を示す売上実績データを記憶する記憶部から,特定の商品の売上実績データを読み出し,複数の予測モデルのうち,読み出した前記売上実績データの特性に対応する予測モデルについて,異なる複数種類のパラメータを適用して,複数の売上予測データを生成する生成部と,
前記売上実績データに基づいて,前記商品の売上数が大きいほど特定の期間を短く設定し,前記特定の商品の売上実績データのうち前記特定の期間における,売上実績データと前記複数の売上予測データとに基づいて,前記複数種類のパラメータのうちいずれかのパラメータを前記予測モデルに適用するパラメータとして選択する選択部と,
を有することを特徴とする選択装置。」
第5 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。
ア.「【0025】
・・・(中略)・・・本実施形態に係るデータ予測装置は,データベース100と,マスタ情報設定部110と,グループ分け実行部120と,需要予測実行部130とを備える。
【0026】
データベース(DB)100には,アイテムマスタ101,需要実績DB102,需要予測履歴DB103,統計値DB104,及びグループマスタ105が備わっている。アイテムマスタ101には,商品等の各種アイテムに関する属性値等の情報が記憶されている。需要実績DB102には,過去の商品別・期間別の需要実績値が蓄積されている。」
イ.「【0028】
図2は,本発明の一実施形態に係るデータ予測装置を実現する情報処理装置(コンピュータ)の細部構成を示すブロック図である。・・・(中略)・・・
【0030】
・・・(中略)・・・ 本実施形態における処理は,CPU201により外部メモリ209に記録されているプログラムが必要に応じてRAM202にロードされ,該プログラムの制御に基づき,CPU201によって実行されるものとする。」
ウ.「【0043】
例えば,本実施形態に係るグループ付与条件設定画面では,分類タイプをG1からG4まで設定することができる。それぞれの分類タイプが表す意味は,拠点コードがK1のアイテムで出庫頻度(実際に出庫があったサイクル数)が15サイクル未満のアイテムは,出庫頻度が少ない需要特性として分類タイプをG1に分類する。また,G1の条件にあわなかったアイテムの内,拠点コードがK1のアイテムで相関係数が0.8より大きいアイテムは,季節性がある需要特性としてG2に分類する。さらに,G1とG2の条件にあわなかったアイテムの内,拠点コードがK1のアイテムで変動係数が0.3より小さいアイテムは,変動が小さい需要特性としてG3に分類する。そして,それ以外の需要特性を持つアイテムはG4に分類する。」
エ.「【0047】
その後,データ予測装置のCPU201は,ステップS402で設定されたデータを取得し,モデル設定処理が行われる(ステップS403)。ここで,モデル設定処理とは,分類タイプ毎に使用する予測モデル,及び予測モデルのパラメータを設定(追加,変更,或いは削除)する処理を意味する。・・・(中略)・・・
【0048】
図9は,データ予測装置の画面上に表示されるモデル設定画面の一例を示す図である。尚,ユーザは,その際に,分類タイプ,予測モデル,予測モデルパラメータを入力する。また,この際に登録可能な予測モデル数は,複数であっても単一であってもよいものとする。ここで,予測モデルパラメータとは,予測モデルを制御する固有のパラメータを意味する。
【0049】
例えば,図9では,分類タイプがG1に属するアイテムは,モデルM1を使用する。また,分類タイプがG2に属するアイテムは,モデルM2及びM3を使用する。さらに,分類タイプがG3に属するアイテムは,モデルM4及びM5を使用する。さらにまた,分類タイプがG4に属するアイテムは,モデルM6を使用することを意味する。
【0050】
ステップS403で設定されたモデルの設定情報は,図10に示すモデルDBに登録される。」
オ.「【0059】
そして,ステップS302の処理の後,分類タイプ毎に登録されている予測モデル群を用いて各アイテムの予測をする(ステップS303)。図16を参照して,ステップS303の処理を詳細に説明する。
【0060】
図16は,図3に示すフローチャートにおける予測実行処理(ステップS303)の詳細を説明するためのフローチャートである。この処理はデータ予測装置のCPU201により行われる,図1に示す需要予測実行部130の処理である。まず,予測モデルのCPU201は,各アイテムについて,分類タイプ毎に登録されている予測モデルm(m=1~M)から任意の予測モデルmを取得を取得する(ステップS1601)。次に,取得された予測モデルmについて,将来の予測結果を算出する(ステップS1602)。尚,このとき将来の予測結果はDBに登録してもよいし,しなくてもよい。そして,上記ステップS1601とステップS1602の処理を全ての予測モデルmに対して行う(ステップS1603)。
【0061】
次に,任意の予測モデルmについて算出された過去の予測結果と,需要実績データとを取得する(ステップS1604)。その際,過去の予測結果がない場合は,ローリング予測実行を行って過去の予測結果を算出し,取得しておく。そして,取得した過去の予測結果と需要実績データとを基にして評価値を算出する(ステップS1605)。そして,上記ステップS1604とステップS1605の処理を全ての予測モデルmに対して行う(ステップS1606)。
【0062】
その後,使用した全ての予測モデルのうち,予測モデルの評価値が一番よい予測モデルを選択し,選択した予測モデルで算出した予測結果を将来の予測結果として採用する(ステップS1607)。尚,予測の際に使用される評価値は特に限定されるものではないが,例えば,以下に示すような予測誤差の平均,標準誤差,或いは標準誤差率等を使用することができる。」
カ.「【0064】
図17は,図12に示す需要実績から算出した将来の予測結果を評価値とともに記述した図である。すなわち,図17では,図13に示すアイテムコードA001からA004に対して図9で設定した予測モデルを使用して,図12の需要実績から将来の予測をした結果と評価期間を6月として各予測モデルの評価値を算出した結果とを併記している。ここでは予測期間を6か月とし,評価値には予測誤差率を使用している。」
前記ア.~カ.によれば,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。
<引用発明>
「分類タイプ毎に登録されている予測モデル群を用いて各アイテムの需要予測をする処理であって(【0059】),
この処理はプログラムの制御の基づき,コンピュータであるデータ予測装置のCPU201により行われ(【0060】【0028】【0030】),
データ予測装置は,需要実績DBを備え,需要実績DBには過去の商品別・期間別の需要実績値が蓄積され(【0026】),
CPU201は,各アイテムについて,分類タイプ毎に登録されている予測モデルm(m=1~M)から任意の予測モデルmを取得し(ステップS1601,【0060】),
次に,取得された予測モデルmについて,将来の予測結果を算出し(ステップS1602,【0060】)
上記ステップS1601とステップS1602の処理を全ての予測モデルmに対して行い(ステップS1603,【0060】),
次に,任意の予測モデルmについて算出された過去の予測結果と,需要実績データとを取得し(ステップS1604),その際,過去の予測結果がない場合は,ローリング予測実行を行って過去の予測結果を算出して取得し(【0061】),
取得した過去の予測結果と需要実績データとを基にして評価値を算出し(ステップS1605,【0061】),
上記ステップS1604とステップS1605の処理を全ての予測モデルmに対して行い(ステップS1606,【0061】),
その後,使用した全ての予測モデルのうち,予測モデルの評価値が一番よい予測モデルを選択し,選択した予測モデルで算出した予測結果を将来の予測結果として採用し(ステップS1607,【0062】),
上記評価値は,例えば,予測誤差の平均,標準誤差,或いは標準誤差率等を使用することができ(【0062】),評価値を算出する評価期間は6月とし(【0064】),
例えば,分類タイプはG1からG4まで設定でき,拠点コードがK1のアイテムで出庫頻度が15サイクル未満のアイテムは,出庫頻度が少ない需要特性として分類タイプをG1に分類し,G1の条件にあわなかったアイテムの内,拠点コードがK1のアイテムで相関係数が0.8より大きいアイテムは,季節性がある需要特性としてG2に分類し,G1とG2の条件にあわなかったアイテムの内,拠点コードがK1のアイテムで変動係数が0.3より小さいアイテムは,変動が小さい需要特性としてG3に分類し,それ以外の需要特性を持つアイテムはG4に分類し(【0043】),
モデルDBには,分類タイプ毎に使用する予測モデル及び予測モデルのパラメータが登録され(【0047】【0050】),例えば,分類タイプがG1に属するアイテムは,モデルM1を使用し,分類タイプがG2に属するアイテムは,モデルM2及びM3を使用し,分類タイプがG3に属するアイテムは,モデルM4及びM5を使用し,分類タイプがG4に属するアイテムは,モデルM6を使用することが登録される(【0049】),需要予測処理。」
2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。
「【0065】
図12は,需要予測装置1で行われる予測処理を詳細に示すフローチャートである。このフローチャートで示す部分は,図11のステップS14からステップS17までが該当する。
【0066】
需要予測装置1は予測処理を開始すると(ステップS21),まず,選択した予測モデル,予測対象製品の販売実績値及び販売開始日を基に,予測モデルのパラメータを推定する(ステップS22)。なお,本例では,「改良逆指数モデル」が選択されているものとし,販売実績は10日分あるものとする。販売開始日は,販売実績の先頭日(t=1)である。予測期間は販売開始後,第11日目から第100日目まで(90日間)が選択されている。
【0067】
以下,需要予測装置1は,準ニュートン法を用いてパラメータ推定を行う。
まず,需要予測装置1は,パラメータ値の初期セットを生成する(ステップS23)。
パラメータの初期セット例は,次の通りである。
λ=0.1, b=100, τ=3, N=10000
λ=0.2, b=80, τ=2, N=15000
λ=0.15, b=90, τ=5, N=8000
初期セットは複数のパラメータ値の組(λ,τ,b,N)からなる。この初期セットは3組生成されている。
【0068】
需要予測装置1は,初期セットからパラメータ値の組を1つ任意に選択する(ステップ24)。そこで,組(λ=0.1,τ=3,b=100,N=10000)が選択されたとする。需要予測装置1は,選択したパラメータ値を予測モデルに代入して,販売実績が存在する期間(t=1から10)の予測モデル値m(t)=10000×(1-exp(-0.1×(t-3)))+100 (t=1,…,10)を計算する。
【0069】
そして,次式のように,販売実績値と予測モデルとの適合誤差Eを計算する(ステップS25)。なお,式(11)のaiは時刻t=iでの累積販売実績値である。
【0070】
【数11】
【0071】
需要予測装置1は,適合誤差Eがこれまで選択したパラメータ値の組の中で最小か否かを判断する(ステップS26)。
【0072】
最小であれば(ステップS26のYes),そのパラメータの組をメモリ上に保持する(ステップS27)。最小でなければ保持せず,次のステップへ進む。
【0073】
以上のステップS24からステップS27を初期セットで生成したすべての組について行い,適合誤差Eが最小となるパラメータ値の組(λm,τm,bm,Nm)を特定する。
このように,すべてのセットについて処理を終了したか否かを判断する(ステップS28)。終了していない場合(ステップS28のNo),ステップS24以下の処理を繰り返す。終了した場合(ステップS28のYes),次のステップ(ステップS29)へ進む。
【0074】
需要予測装置1は,パラメータ値の組(λm,τm,bm,Nm)を予測モデルに代入し,予測期間における予測値を計算する(ステップS29)。」
したがって,引用文献2には次の事項が記載されている。
<引用文献2の記載事項>
「需要予測装置で行われる予測処理であって,
予測処理を開始すると(ステップS21),
選択した予測モデル,予測対象製品の販売実績値及び販売開始日を基に,予測モデルのパラメータを推定し(ステップS22),
パラメータ値の初期セットを生成し,初期セットは複数のパラメータ値の組からなり,この初期セットは3組生成され(ステップS23),
初期セットからパラメータ値の組を1つ任意に選択し,選択したパラメータ値を予測モデルに代入して,販売実績が存在する期間の予測モデル値を計算し(ステップ24),
販売実績値と予測モデルとの適合誤差Eを計算し(ステップS25),
適合誤差Eがこれまで選択したパラメータ値の組の中で最小か否かを判断し(ステップS26),
最小であれば,そのパラメータの組をメモリ上に保持し(ステップS27),最小でなければ保持せず,次のステップへ進み,
以上のステップS24からステップS27を初期セットで生成したすべての組について行い,適合誤差Eが最小となるパラメータ値の組を特定し,すべてのセットについて処理を終了したか否かを判断し(ステップS28),
終了した場合,パラメータ値の組を予測モデルに代入し,予測期間における予測値を計算する(ステップS29),予測処理。」
3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。
ア.「【0001】
本発明は,予測誤差評価装置及び予測誤差評価方法及び予測誤差評価プログラムに関するものである。」
イ.「【0016】
記憶装置は,誤差データを,所定の現象(例えば,電力消費)の属性値(例えば,日付や日時等の時刻)と対応付けて予め記憶する。誤差データは,予測値と実測値との誤差(誤差量,予測誤差,予測誤差量ともいう)を示すデータである。予測値とは,上記現象の属性値ごとに,上記現象を観測して得られると予測された値(例えば,ある日付における電力消費量を予測した値)をいう。実測値とは,上記現象の属性値が変化する度に,上記現象を実際に観測して得られた値(例えば,ある日付における電力消費量を実測した値)
をいう。記憶装置は,誤差データと対応付けて,上記現象のパラメータ値も記憶する。パラメータ値とは,上記現象の属性値とは異なる種類の属性値であり,上記現象を観測したときの属性値(例えば,曜日,気温)をいう。」
ウ.「【0033】
・・・(中略)・・・つまり,誤差データ抽出条件は,特定の処理対象系列,特定のパラメータ値を指定して,抽出する誤差データを決めるものである。」
エ.「【0038】
一方,図5(b)は,本実施の形態に係る時系列的な誤差分布評価において提示されるグラフの例を示している。この例では,日付を軸として(即ち,時系列軸により)連続的に算出された誤差分布を示している。これにより,誤差分布そのものの変化の様子が時系列的に把握できる。この例のように,誤差分布の時系列変化を比較対照することで,誤差分布の持つ妥当性や信頼性について,予測結果の利用者が自ら判断することが可能となる。
【0039】
例えば,予測対象日を軸として選択し,誤差分布を求める区間を窓幅1ヵ月間の移動窓とすることで,過去1ヵ月の予測誤差の推移を評価することが可能である。このような評価を行うことで,予測対象日の直近における誤差分布の変化傾向が把握可能であり,誤差分布の傾向に基づいた誤差の評価が可能となる。また,これらの傾向から予測モデルの妥当性を評価し,誤差が拡大傾向にあれば予測モデルの見直しを行う等の対策が可能となる。
【0040】
この例では,誤差分布評価条件設定部100は,評価軸とする属性(次元)として日付を選択する。また,誤差分布評価条件設定部100は,○月×日の類似日(例えば,○月×日と同じ曜日)の系列から処理対象系列(例えば,○月×日を末尾とし,○月×日の3週間前の日を先頭とする部分系列,及び,当該部分系列を1週間ずつ前にずらしてできる複数の部分系列からなる)を設定する。誤差データ抽出条件設定部101は,誤差分布評価条件設定部100によって設定された条件に従って,処理対象系列ごとに誤差データ抽出条件を設定する。誤差データ抽出部102は,処理対象系列ごとに誤差データ抽出条件に従って,誤差データを抽出する。誤差分布評価部103は,処理対象系列ごとに,誤差データ抽出部102によって抽出された誤差データの平均及び分散(代表値の一例)を算出する。そして,誤差分布評価部103は,算出した値を基に,図5(b)に示したような平均,1σ,2σ,-1σ,-2σの近似曲線(分布の近似曲線の一例)を求める。例えば,平均の線が全体的に0より上にあれば,将来の予測値を低めに設定すればよいことが分かる。また,分散が小さければ,予測値の信頼度が高いことが分かる。
【0041】
ここで,図6を用いて,誤差分布評価条件設定部100にて窓関数を利用する効果について述べる。
【0042】
図6は,窓幅と誤差分布の関係を示している。窓幅を大きくとった場合(即ち,処理対象系列の長さを一定とし,1つの処理対象系列に含まれる属性値の数を多く設定した場合),誤差分布の長期的な傾向を把握することが可能である。一方,窓幅を小さくとった場合(即ち,処理対象系列の長さを一定とし,1つの処理対象系列に含まれる属性値の数を少なく設定した場合),短期的な傾向を把握することが可能である。最適な窓幅は誤差分布に依存するため,事前に決定することは困難である。また,数学的に最適な窓幅を選択することは可能であるが,これは特定のモデル下においてという意味であり,モデル化誤差を疑う立場である誤差分布の評価においては不可能である。このため,本実施の形態では,窓幅の設定は分析者が試行錯誤により判定するものとし,誤差分布評価条件設定部100にて自由に設定できるようにしている。」
前記ア.~エ.によれば,引用文献3には,次の事項が記載されている。
<引用文献3の記載事項>
「予測誤差評価方法であって(【0001】),
予測値は,例えば,ある日付における電力消費量を予測する値であり【0016】,
予測対象日を軸として選択し,誤差分布を求める区間を窓幅1ヵ月間の移動窓とすることで,過去1ヵ月の予測誤差の推移を評価し(【0039】),
誤差分布評価条件設定部100は,評価軸とする属性(次元)として日付を選択し,また,○月×日の類似日(例えば,○月×日と同じ曜日)の系列から処理対象系列,例えば,○月×日を末尾とし,○月×日の3週間前の日を先頭とする部分系列,及び,当該部分系列を1週間ずつ前にずらしてできる複数の部分系列からなるら処理対象系列を設定し,
誤差データ抽出条件設定部101は,誤差分布評価条件設定部100によって設定された条件に従って,処理対象系列ごとに誤差データ抽出条件を設定し(【0040】),当該誤差データ抽出条件は,特定の処理対象系列,特定のパラメータ値を指定して,抽出する誤差データを決めるものであり(【0033】),
誤差データ抽出部102は,処理対象系列ごとに誤差データ抽出条件に従って,誤差データを抽出し(【0040】),
誤差分布評価部103は,処理対象系列ごとに,誤差データ抽出部102によって抽出された誤差データの平均及び分散を算出し(【0040】),
誤差分布評価部103は,算出した値を基に,平均,1σ,2σ,-1σ,-2σの近似曲線を求め(【0040】),
日付を軸として連続的に算出された誤差分布をグラフとして提示し(【0038】),
例えば,平均の線が全体的に0より上にあれば,将来の予測値を低めに設定すればよいことが分かり,また,分散が小さければ,予測値の信頼度が高いことが分かり(【0040】),
窓幅を大きくとった場合,誤差分布の長期的な傾向を把握することが可能であり,一方,窓幅を小さくとった場合,短期的な傾向を把握することが可能であり,窓幅は分析者が自由に設定する(【0042】),予測誤差評価方法。」
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
・引用発明の需要実績DBは,「過去の商品別・期間別の需要実績値が蓄積され」ているから,本願発明1の「商品の売上数量の変化を示す売上実績データを記憶する記憶部」に相当する。
・引用発明の「需要実績データとを取得し(ステップS1604)」は,本願発明1の「商品の売上数量の変化を示す売上実績データを記憶する記憶部から,特定の商品の売上実績データを読み出し」に相当する。
・引用発明のモデルDB登録されている予測モデルM1~M5は,本願発明1の「複数の予測モデル」に相当する。
・引用発明の「任意の予測モデルmについて算出された過去の予測結果と,需要実績データとを取得し(ステップS1604)」において,「任意の予測モデルm」は,取得した需要実績データに係るアイテムに使用される予測モデルといえる。例えば,取得された需要実績データが分類タイプG2に属するアイテムに関するものであれば,「任意の予測モデルm」は,その分類タイプG2に使用されるモデルM2及びM3に該当する。また,分類タイプは,出庫頻度が少ない需要特性などの,アイテムの需要特性を分類するものである。
したがって,上記「任意の予測モデルm」は,本願発明1の「複数の予測モデルのうち,読み出した前記売上実績データの特性に対応する予測モデル」に相当する。
・引用発明の「任意の予測モデルmについて算出された過去の予測結果と,需要実績データとを取得し(ステップS1604),その際,過去の予測結果がない場合は,ローリング予測実行を行って過去の予測結果を算出して取得し」,及び,「上記ステップS1604とステップS1605の処理を全ての予測モデルmに対して行い(ステップS1606)」は,複数の予測モデル(M1~M5)のうち,読み出した需要実績データの需要特性に対応する予測モデル(例えば,需要実績データが分類タイプG2に属するアイテムに関するものであれば,予測モデルM2,M3)について,パラメータを適用した複数の予測モデルを用いて,複数の需要予測データを生成することといえる。
一方,本願発明1の「複数の予測モデルのうち,読み出した前記売上実績データの特性に対応する予測モデルについて,異なる複数種類のパラメータを適用して,複数の売上予測データを生成し」は,売上実績データの特性に対応する予測モデルについて,異なる種類のパラメータを適用した複数の予測モデルを用いて,複数の売上予測データを生成するといえる。
したがって,引用発明の,全ての予測モデルmについて過去の予測結果を算出することと,本願発明1の「複数の予測モデルのうち,読み出した前記売上実績データの特性に対応する予測モデルについて,異なる複数種類のパラメータを適用して,複数の売上予測データを生成し」は,「複数の予測モデルのうち,読み出した前記売上実績データの特性に対応する予測モデルについて,パラメータを適用した複数の予測モデルを用いて,複数の売上予測データを生成し」の点で共通する。
・引用発明の「評価値を算出する評価期間は6月とし」は,6月の評価期間という「特定の期間」を設定することといえる。したがって,引用発明の上記構成と,本願発明1の「前記売上実績データに基づいて,前記商品の売上数が大きいほど特定の期間を短く設定し」は,「特定の期間を設定し」の点で共通する。
・引用発明の「取得した過去の予測結果と需要実績データとを基にして評価値を算出し(ステップS1605),上記ステップS1604とステップS1605の処理を全ての予測モデルmに対して行い(ステップS1606),その後,使用した全ての予測モデルのうち,予測モデルの評価値が一番よい予測モデルを選択し」は,特定の商品の需要実績データのうち評価期間における需要実績データと,予測結果とに基づいて,パラメータを適用した複数の予測モデルのうちから予測モデルを選択することといえる。
一方,本願発明1の「前記特定の商品の売上実績データのうち前記特定の期間における,売上実績データと前記複数の売上予測データとに基づいて,前記複数種類のパラメータのうちいずれかのパラメータを前記予測モデルに適用するパラメータとして選択する」において,いずれかのパラメータを前記予測モデルに適用するパラメータとして選択することは,異なる種類のパラメータを適用した複数の予測モデルから,いずれかの予測モデルを選択することといえる。
したがって,引用発明の上記構成と,本願発明1の上記構成は,「前記特定の商品の売上実績データのうち前記特定の期間における,売上実績データと前記複数の売上予測データとに基づいて,パラメータを適用した複数の予測モデルから,いずれかの予測モデルを選択する」の点で共通する。
・引用発明の「この処理はプログラムの制御の基づき,コンピュータであるデータ予測装置のCPU201により行われ」によれば,引用発明の「プログラム」は,「コンピュータ」に引用発明に係る処理を実行させるものである。
したがって,引用発明の「コンピュータ」は,本願発明1の「コンピュータ」に相当し,引用発明の「プログラム」は,本願発明1の,コンピュータに「各処理を実行させる」,「選択プログラム」に相当する。
したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
<一致点>
「コンピュータに,
商品の売上数量の変化を示す売上実績データを記憶する記憶部から,特定の商品の売上実績データを読み出し,
複数の予測モデルのうち,読み出した前記売上実績データの特性に対応する予測モデルについて,パラメータを適用した複数の予測モデルを用いて,複数の売上予測データを生成し,
特定の期間を設定し,
前記特定の商品の売上実績データのうち前記特定の期間における,売上実績データと前記複数の売上予測データとに基づいて,パラメータを適用した複数の予測モデルから,いずれかの予測モデルを選択する,
各処理を実行させることを特徴とする選択プログラム。」
<相違点1>
パラメータを適用した複数の予測モデルが,本願発明1では,「売上実績データの特性に対応する予測モデルについて,異なる複数種類のパラメータを適用」したものであるのに対し,引用発明では,需要実績データ(売上実績データ)の特性に対応する複数の予測モデルに,パラメータを適用したものである点。
<相違点2>
「パラメータを適用した複数の予測モデルから,いずれかの予測モデルを選択する」が,本願発明1では,「前記複数種類のパラメータのうちいずれかのパラメータを前記予測モデルに適用するパラメータとして選択する」であるのに対し,引用発明では,パラメータを適用した複数の予測モデルから,いずれかの予測モデルを選択する点。
<相違点3>
特定の期間を,本願発明1では,「前記売上実績データに基づいて,前記商品の売上数が大きいほど特定の期間を短く設定し」たのに対し,引用発明では,「6月」に設定した点。
(2)相違点についての判断
上記相違点3について検討する。
引用文献2には,「初期セットからパラメータ値の組を1つ任意に選択し,選択したパラメータ値を予測モデルに代入して,販売実績が存在する期間の予測モデル値を計算し(ステップ24),販売実績値と予測モデルとの適合誤差Eを計算し(ステップS25)」が記載されている。上記「販売実績が存在する期間」は,販売実績値と予測モデルとの適合誤差を計算するための期間であることから,引用発明の「評価値を算出する評価期間」に対応するが,この期間は,本願発明1のように,商品の売上数が大きいほど短く設定されるものではない。
また,引用文献3の「窓幅」は,予測誤差分布を求める期間であるだけで,この「窓幅」の期間における実績データと予測データとに基づいて,予測モデル(予測モデルに適用するパラメータ)を選択するものではなく,また,「窓幅」は,商品の売上数が大きいほど短く設定されるものでもない。
したがって,本願発明1に係る「前記売上実績データに基づいて,前記商品の売上数が大きいほど特定の期間を短く設定し」は,引用文献1~3に記載されておらず,本願出願前において周知技術であるともいえない。
したがって,本願発明1は,相違点1,2を検討するまでもなく,当業者が引用発明,引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2~5について
本願発明2,3も,本願発明1の「前記売上実績データに基づいて,前記商品の売上数が大きいほど特定の期間を短く設定し」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者が引用発明,引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
本願発明4,5は,本願発明1に対応する方法,装置の発明であり,本願発明1の「前記売上実績データに基づいて,前記商品の売上数が大きいほど特定の期間を短く設定し」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者が引用発明,引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定について
審判請求時の補正により,本願発明1~5は,「前記売上実績データに基づいて,前記商品の売上数が大きいほど特定の期間を短く設定し」という構成を備えるから,拒絶査定において引用された引用文献1~3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって,原査定の理由を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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2016-010558