特許拒絶査定不服審判
2016-010361
車体構造
- 審判番号
- 2016-010361
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-102924外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年07月08日
- 審決日
- 2017年06月26日
- 公報発行日
- 2017年08月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (B62D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-102924号「車体構造」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月14日出願公開、特開2013-230726号、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年4月27日の出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
平成28年 1月 5日付け 拒絶理由通知
3月 8日 意見書の提出
4月 5日付け 拒絶査定
7月 8日 審判請求書及び手続補正書の提出
平成29年 3月 6日付け 補正の却下の決定、拒絶理由通知
(平成28年7月8日の手続補正は却下された)
4月28日 意見書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
[原査定の概要]
本願の請求項1~3に係る発明は、以下の引用文献A、Bに記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献A:特開2011-25827号公報
引用文献B:特開2000-85620号公報
第3 当審の拒絶理由の概要
平成29年3月6日付けで当審において通知した拒絶理由の概要は次のとおりである。
[当審の拒絶理由の概要]
本願の請求項1~3に係る発明は、以下の引用文献1、2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2011-25827号公報(原査定の引用文献A)
引用文献2:特開2012-40910号公報(当審において新たに引用した文献)
第4 本願発明
本願の請求項1~3に係る発明(以下、「本願発明1~3」という。)は、平成29年4月28日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
レインフォースが内部に設けられたピラーを含む車体の側部と、
シートバックフレームと、
前記シートバックフレームに設けられた、側面衝突による前記車体の側部の車室への移動時に前記車体の側部と当接して衝撃荷重を受ける荷重受け部材と、を備えており、
前記車体の側部には、前記レインフォースによって高強度に補強された高強度部位が形成されると共に、前記高強度部位の下方に、前記レインフォースによって前記高強度部位よりも低強度に補強された低強度部位が形成され、かつ、前記低強度部位の下方に、前記レインフォースによって補強されない下方部位が形成されており、
前記車体の側部の前記低強度部位の強度が、前記レインフォースによって補強されることで前記車体の側部の前記下方部位の強度より高くされており、
前記高強度部位の下端と接する前記低強度部位の上端が、前記荷重受け部材の側方に配置されていることを特徴とする車体構造。
【請求項2】
前記荷重受け部材の車幅方向外側の端部を前記シートバックフレームよりも前記車体の側部に近い位置に設定したことを特徴とする請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
前記車体の側部は上下方向に延設されるピラーであることを特徴とする請求項1または2に記載の車体構造。」
第5 引用文献
1.引用文献1に記載された事項及び引用発明
当審の拒絶理由通知において引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付したものである。以下同様。)
ア
「【請求項1】
シート・バック・フレームがフレーム・トップ、インナーおよびアウター・フレーム・サイド、およびフレーム・ボトムで一体的に枠組みされるメイン・バック・フレームと、コンソールの上面よりも高い自動車の側面衝突時の衝撃荷重を受ける位置でそのアウター・フレーム・サイドから車体側壁に向けて突き出され、そして、そのアウター・フレーム・サイドに固定的に取り付けられる側突衝撃荷重受け箱と、ビーム途中で傾斜ビーム部分と水平ビーム部分とに鈍角曲げされ、その傾斜ビーム部分の先端部分をそのアウター・フレーム・サイドに通し、その側突衝撃荷重受け箱内に伸長させてその箱にその傾斜ビーム部分のその先端部分を固定的に結合し、また、そのコンソールのその上面よりも低い位置でその水平ビーム部分の先端をそのインナー・フレーム・サイドに通してそのインナー・フレーム・サイドにその水平ビーム部分のその先端を固定的に結合してそのインナーおよびアウター・フレーム・サイド間に固定的に渡され、そして、その自動車の側面衝突時、その箱からそのコンソールに衝撃荷重を伝達可能にする補強クロス・ビームとを含み、そして、インナーおよびアウター・リクライニング・デバイスでシート・クッション・フレームの後端間にヒンジ結合されるところの自動車シート。」
イ
「【0001】
この発明は、自動車シートに関し、詳細には、自動車の側面衝突時、乗員に生存空間を確保可能にするところの自動車のフロント・シートに関する。」
ウ
「【0010】
以下、特定されて図示された具体例に基づいて、この発明の自動車シートを説明するに、図1ないし図4は、この発明の自動車シートの具体例10として具体化されたところの乗用車のフロント・シート、すなわち、ドライバー・シート(図示せず)およびパセンジャー・シート10を示し、そのパセンジャー・シート10およびドライバー・シートは、シート・クッション11、シート・バック12、およびヘッドレスト13などから組み立てられ、そして、コンソール41の左右に対称的に並べられてシート・トラック(図示せず)でその乗用車のフロア40の前方部分に前後調整可能に据え付けられる。
そのパセンジャー・シート10およびドライバー・シートでは、シート・バック・フレーム15のメイン・バック・フレーム18に側突衝撃荷重受け箱23および補強クロス・ビーム24を対称的に組み合わせる一体化構造が採られる。・・・
【0011】
このパセンジャー・シート10では、そのシート・バック・フレーム15がフレーム・トップ19、インナーおよびアウター・フレーム・サイド20、21、およびフレーム・ボトム22で一体的に枠組みされるメイン・バック・フレーム18と、そのコンソール41の上面よりも高いその乗用車の側面衝突時の衝撃荷重を受ける位置でそのアウター・フレーム・サイド21から車体側壁に向けて突き出され、そして、そのアウター・フレーム・サイド21に固定的に取り付けられる側突衝撃荷重受け箱23と、ビーム途中で傾斜ビーム部分32と水平ビーム部分33とに鈍角曲げされ、その傾斜ビーム部分32の先端部分をそのアウター・フレーム・サイド21に通し、その側突衝撃荷重受け箱23内に伸長させてその箱23にその傾斜ビーム部分32のその先端部分を固定的に結合し、また、そのコンソール41のその上面よりも低い位置でその水平ビーム部分33の先端をそのインナー・フレーム・サイド20に通してそのインナー・フレーム・サイド20にその水平ビーム部分33のその先端を固定的に結合してそのインナーおよびアウター・フレーム・サイド20、21間に固定的に渡され、そして、その乗用車の側面衝突時、その箱23からそのコンソール41に衝撃荷重を伝達可能にするその補強クロス・ビーム24とを含む。」
エ
「【0014】
その側突衝撃荷重受け箱23は、長方形鋼板ブランクの上下端および先端に長い外周フランジを折り曲げた箱型プレート30と、別の長方形鋼板ブランクの上下端および先端に短い外周フランジを折り曲げた蓋形プレート31とにより、その箱形プレート30にその蓋形プレート31を被せ、双方の外周フランジを溶接してその箱形プレート30とその蓋形プレート31とを一体的に結合することにより根元端を開放した鋼板製箱に組み立てられる。そして、この側突衝撃荷重受け箱23は、その開放された根元端をそのメイン・バック・フレーム18のそのアウター・フレーム・サイド21の外側面に突き合わせ状態で溶接してそのアウター・フレーム・サイド21からその車体側壁に向けて近接して突き出され、そして、その乗用車その側面衝突時、その車体側壁から衝撃荷重を受けてその衝撃荷重をその補強クロス・ビーム24に伝達可能にしている。
特に、その箱形プレート30は、プレス成形で底壁を内側に隆起させて曲げ剛性を高めている。
【0015】
その補強クロス・ビーム24は、所定の外径、肉厚の太くて長い鋼管から所定の長さのブランクに切断され、ビーム途中に相当するブランク途中でそのブランクを傾斜ビーム部分32と水平ビーム部分33とに鈍角曲げされ、その傾斜ビーム部分32の先端部分を潰してその先端部分をそのアウター・フレーム・サイド21に通し、その側突衝撃荷重受け箱23の内部に伸長させてその側突衝撃荷重受け箱23にその傾斜ビーム部分32のその先端部分を溶接し、また、そのコンソール41のその上面よりも低い位置でその水平ビーム部分33の先端をそのインナー・フレーム・サイド20に通してそのインナー・フレーム・サイド20にその水平ビーム部分33のその先端を溶接してそのインナーおよびアウター・フレーム・サイド20、21の間に固定的に渡され、そして、その乗用車の側面衝突時、その側突衝撃荷重受け箱23からそのコンソール41に衝撃荷重を伝達可能にする。
この補強クロス・ビーム24は、さらに、鋼板製補助プレート34でそのビーム途中の鈍角曲げ箇所をそのメイン・バック・フレーム18のそのフレーム・ボトム22に溶接してその補助プレート34で曲げ剛性を高めている。
【0016】
したがって、このパセンジャー・シート10では、その乗用車が側面衝突されると、車体側壁が衝撃荷重で内側に、すなわち、車室内に張り出して変形され、その側突衝撃加重受け箱23に押し付けられ、その衝撃荷重がそのシート・バック・フレーム15のその側突衝撃荷重受け箱23、アウター・フレーム・サイド21、補強クロス・ビーム24、およびインターロック・シャフト37を経てそのシート・バック・フレーム15のそのインナー・フレーム・サイド20に伝達され、さらに、そのコンソール41および他方のドライバー・シートを経て他方の車体側壁に効果的に伝達され、すなわち、そのようにしてその他方の車体側壁に効果的に伝達され、すなわち、反対側のドアやピラーから車体全体へ逃がし、衝撃荷重、すなわち、衝撃エネルギーを車体全体に分散、吸収させ、その乗用車の側面衝突時、乗員の生存空間が確実に確保され、乗員の安全性が向上され、そして、過度の大型化や重量増加が避けられる。・・・」
上記「エ」段落【0014】の「・・・その乗用車その側面衝突時、その車体側壁から衝撃荷重を受けて・・・」との記載からすると、引用文献1には、自動車シート(パッセンジャーシート10)に対向する車体側壁も記載されているといえ、実質的に自動車シートと車体側壁とからなる「車体構造」が記載されていると認められる。
そうすると、引用文献1には、以上の記載内容及び【図1】~【図4】の記載、並びに上記認定事項からみて次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
〔引用発明〕
「シート・バック・フレーム15がフレーム・トップ19、インナーおよびアウター・フレーム・サイド20、21、およびフレーム・ボトム22で一体的に枠組みされるメイン・バック・フレーム18と、
コンソール41の上面よりも高い自動車の側面衝突時の衝撃荷重を受ける位置でそのアウター・フレーム・サイド21から車体側壁に向けて突き出され、そして、そのアウター・フレーム・サイド21に固定的に取り付けられる側突衝撃荷重受け箱23と、
ビーム途中で傾斜ビーム部分32と水平ビーム部分33とに鈍角曲げされ、その傾斜ビーム部分32の先端部分をそのアウター・フレーム・サイド21に通し、その側突衝撃荷重受け箱23内に伸長させてその箱にその傾斜ビーム部分32のその先端部分を固定的に結合し、また、そのコンソール41のその上面よりも低い位置でその水平ビーム部分33の先端をそのインナー・フレーム・サイド20に通してそのインナー・フレーム・サイド20にその水平ビーム部分33のその先端を固定的に結合してそのインナーおよびアウター・フレーム・サイド20、21間に固定的に渡され、そして、その自動車の側面衝突時、その箱からそのコンソール41に衝撃荷重を伝達可能にする補強クロス・ビーム24とを含んだ、自動車シートと、
車体側壁とからなる、車体構造。」
2.引用文献2に記載された事項
当審の拒絶理由通知において引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
オ
「【0023】
次に、車体側部構造の主要構成を図1~図12で説明する。
車体側部構造は、車室22の左の側壁をなす左のサイドボデー13、右の側壁をなす右のサイドボデーを配置し、これらの下端をなすサイドシル27の中央部41同士を左右に延びるフロントフロアクロスメンバ15で接合し、中央部41に立設したセンタピラー31の上端42同士を左右に延びるルーフアーチ16で接合している。
【0024】
ルーフアーチ16、センタピラー31のセンタピラースチフナー43(図1)のうち上部センタピラースチフナー44、サイドシル27のサイドシルスチフナー45、フロントフロアクロスメンバ15のフロントフロアクロスメンバスチフナー46は、鋼板を加熱して金型で塑性加工すると同時に金型に接触して冷却することによって焼き入れを行うダイクエンチ(日本工業規格(JIS)参照)を用いて成形されている。
【0025】
センタピラースチフナー43の残りの部位である下部センタピラースチフナー47は、ダイクエンチで得られる強度より強度が小さい鋼板を用いて冷間プレス成形されている。
そして、車室22の正面視(図3の視点)で、フロントフロアクロスメンバスチフナー46、左右の下部センタピラースチフナー47、左右の上部センタピラースチフナー44、ルーフアーチ16を環状に配置している。
【0026】
ダイクエンチ(ホットスタンプともいう)は、日本工業規格(JIS)で定義されている既存の処理である。
ダイクエンチ(ホットスタンプ)は鋼板を加熱し、加熱した鋼板をプレス装置に取付けた金型で塑性加工すると同時に、金型との接触によって焼き入れ(冷却)を行う。
このダイクエンチ(ホットスタンプ)によって得られた成形品(ホットスタンプ材)は、引っ張り強さが、980MPa以上の超ハイテンである。下部センタピラースチフナー47、センタピラーインナ48、フロントフロアクロスメンバ15、サイドシルインナ54の引っ張り強さ(例えば、590MPa)に比べ、大きいものである。」
カ
「【0050】
次に、車体側部構造の作用を説明する(図1~図12を参照)。
まず、側面衝突などの衝撃荷重に対する強度向上の機構を説明する。また、その衝撃を吸収する機構を説明する。
・・・
【0052】
左のサイドボデー13のセンタピラー31は、外から荷重が矢印a1のように入力されると、センタピラースチフナー43に設けた、ダイクエンチで得られる強度より強度が小さい下部センタピラースチフナー47が変形の起点となり、優先して変形し始め、荷重を吸収する。
【0053】
この下部センタピラースチフナー47に連続する上部センタピラースチフナー44はダイクエンチ(ホットスタンプ)によって得られた部材(ホットスタンプ材)である。この上部センタピラースチフナー44は高張力鋼製(下部センタピラースチフナー)に比べ、引っ張り強さが大きいので、曲がり難い。
・・・
【0056】
一方、上部センタピラースチフナー44は、荷重(矢印a1)が入力されると、曲がって車室22へ押し込まれるが、曲げ変形量が小さい。この上部センタピラースチフナー44はダイクエンチ(ホットスタンプ)によって得られた部材(ホットスタンプ材)なので、高張力鋼製に比べ、引っ張り強さが大きいので、曲がり難い。
・・・
【0059】
このように、車体側部構造は、下部センタピラースチフナー47を除いてホットスタンプ材を環状に配置したことによって、車両11の正面、車両11の後面、車両11の側面からの荷重に対する車体12の強度を向上させることができる。
【0060】
さらに詳しく説明する。
下部センタピラースチフナー47は、連続する部位(上部センタピラースチフナー44、サイドシルスチフナー45)に比べ、引っ張り強さが小さいので、荷重(矢印a1)が入力されると、前部座席24の乗員着座部(シートクッション)52へ向かって変形し始める。
【0061】
そして、さらに変形し押し込まれると、乗員着座部(シートクッション)52の下方へ向かって(矢印a3の方向)変形する。
つまり、下部センタピラースチフナー47を乗員着座部(シートクッション)52の下方へ向かって変形させることができる。」
3.引用文献Bに記載された事項
原査定の拒絶理由に引用された引用文献Bには、図面とともに次の事項が記載されている。
キ
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車のフロントドア開口の後縁部を形成するセンタピラーの補強構造に関し、詳細には側面衝突時のセンタピラーの折れ曲がりモードの改善に関する。」
ク
「【0021】上記センタピラー10は横断面ハット状のピラーアウタ10aとピラーインナ10bとの前縁部同士,後縁部同士を接合して矩形閉断面を形成した構造のものであり、該センタピラー10内にはピラーリインホース12が配設されている。このピラーリインホース12は横断面ハット状のもので、これの前縁部12a,及び後縁部12bは上記センタピラー10の接合部に重ね合わせて接合され、上端部12c,及び下端部12dはそれぞれ上記ルーフサイドレール11のルーフリインホース11a,ロッカパネル8のロッカリインホース8aに接合されている。
【0022】上記ピラーリインホース12は、厚板部t1とこれより板厚の小さい薄板部t2とを結合してなる差厚結合鋼板により形成されたものである。具体的には、板厚2mm程度の厚板鋼板と、板厚1mm程度の薄板鋼板とを溶接により一体化して差厚結合鋼板を形成し、これを金型によりプレス成形して製造されたものである。
【0023】上記厚板部t1はピラーリインホース12の上端から下部に渡る長さとなっており、残りの下端部が薄板部t2となっている。この厚板部t1と薄板部t2との結合部tは上記ベルトラインLより低所の乗員の着座部に臨む高さに位置している。
【0024】そして上記ピラーリインホース12の薄板部t2の上記結合部t近傍部分に上記インパクトビーム5の後端部5bが位置している。これによりインパクトビーム5に作用する荷重は固定ブラケット6bを介して薄板部t2に伝達されることとなる。
【0025】次に本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態のセンタピラー補強構造によれば、差厚結合鋼板により形成したピラーリインホース12の薄板部t2をベルトラインLより下方の乗員の着座部に臨む部分に位置させ、インパクトビーム5の後端部5bを該薄板部t2と略同じ高さ位置となるように配置したので、図4に示すように、側面衝突時にドア7aに作用する荷重aがインパクトビーム5を介して薄板部t2に伝達されることから、センタピラー12は薄板部t2付近から確実に折れ曲がることとなり、安定した折れ曲がりモードが得られる。その結果、ベルトラインLの車室内への膨出量を抑制でき、乗員の胸部への影響を回避できる。」
第6 当審の拒絶理由について
1.本願発明1
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
後者の「車体側壁」は、前者の「レインフォースが内部に設けられたピラーを含む車体の側部」と、「車体の側部」である限りにおいて一致する。
後者の「自動車の側面衝突時の衝撃荷重を受ける位置でそのアウター・フレーム・サイド21から車体側壁に向けて突き出され、そして、そのアウター・フレーム・サイド21に固定的に取り付けられる側突衝撃荷重受け箱23」及び「ビーム途中で傾斜ビーム部分32と水平ビーム部分33とに鈍角曲げされ、その傾斜ビーム部分32の先端部分をそのアウター・フレーム・サイド21に通し、その側突衝撃荷重受け箱23内に伸長させてその箱にその傾斜ビーム部分32のその先端部分を固定的に結合し、また、そのコンソール41のその上面よりも低い位置でその水平ビーム部分33の先端をそのインナー・フレーム・サイド20に通してそのインナー・フレーム・サイド20にその水平ビーム部分33のその先端を固定的に結合してそのインナーおよびアウター・フレーム・サイド20、21間に固定的に渡され、そして、その自動車の側面衝突時、その箱からそのコンソール41に衝撃荷重を伝達可能にする補強クロス・ビーム24」は、前者の「側面衝突による車体の側部の車室への移動時に車体の側部と当接して衝撃荷重を受ける荷重受け部材」に相当する。
後者の「シート・バック・フレーム15」は、前者の「シートバックフレーム」に相当する。
そして、後者の上記「側突衝撃荷重受け箱23」及び「補強クロス・ビーム24」は、「シート・バック・フレーム15」に設けられることは明らかであるから、前者の「シートバックフレームに設けられた」「荷重受け部材」に相当する。
後者の「車体構造」は、前者の「車体構造」に相当する。
そうすると、両者は、
〔一致点〕
「車体の側部と、
シートバックフレームと、
前記シートバックフレームに設けられた、側面衝突による前記車体の側部の車室への移動時に前記車体の側部と当接して衝撃荷重を受ける荷重受け部材と、を備えた、
車体構造。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
〔相違点〕
本願発明1は、「車体の側部」が「レインフォースが内部に設けられたピラーを含む」ものであり、「前記車体の側部には、前記レインフォースによって高強度に補強された高強度部位が形成されると共に、前記高強度部位の下方に、前記レインフォースによって前記高強度部位よりも低強度に補強された低強度部位が形成され、かつ、前記低強度部位の下方に、前記レインフォースによって補強されない下方部位が形成されており、前記車体の側部の前記低強度部位の強度が、前記レインフォースによって補強されることで前記車体の側部の前記下方部位の強度より高くされており、前記高強度部位の下端と接する前記低強度部位の上端が、前記荷重受け部材の側方に配置されている」との事項を有しているのに対して、引用発明は、「車体の側部」は「車体側壁」として構成されているものの、前記のように構造が特定されていない点。
(2)判断
引用文献2には、
・ダイクエンチを用いて成形された上部センタピラースチフナー44と、ダイクエンチで得られる強度より強度が小さい鋼板を用いて冷間プレス成形された下部センタピラースチフナー47とからセンタピラー31を構成し(上記「第5 2.オ」の段落【0023】~【0026】参照)、
・側面衝突時には、相対的に強度の小さい下部センタピラースチフナー47が変形の起点となり、優先して変形し荷重を吸収し(上記「第5 2.カ」の段落【0050】、【0052】参照)、下部センタピラースチフナー47は前部座席24の乗員着座部52の下方へ向かって変形する(上記「第5 2.カ」の段落【0061】参照)、
ことが記載されている。
引用文献2には、センタピラーを強度が大きい部分と小さい部分とで形成し、衝撃を受けた際に強度の境界で変形させることが記載されているといえるものの、相違点に係る本願発明1の構成のうちの「レインフォースによって高強度に補強された高強度部位が形成されると共に、高強度部位の下方に、レインフォースによって高強度部位よりも低強度に補強された低強度部位が形成され、かつ、低強度部位の下方に、前記レインフォースによって補強されない下方部位が形成され」ることは記載されていないといえる。
本願の明細書(段落【0029】~【0031】)の記載を【図3】と併せみれば、本願発明1は、
ア 相違点に係る本願発明1の、「車体の側部」の「高強度部位の下端と接する低強度部位の上端が、荷重受け部材の側方に配置されている」との構成により、「センタピラー9が、衝撃荷重を受けて車室39側に向かって移動するときに、補強部材37の高強度部位Dに対応する部位が荷重伝達部品25に当接して受け止められる。これにより、センタピラー9の車室39内への進入を効果的に抑制することができる。」(上記段落【0029参照】)ものであり、
イ 相違点に係る本願発明1の、「車体の側部」が「レインフォースによって高強度に補強された高強度部位が形成されると共に、高強度部位の下方に、レインフォースによって高強度部位よりも低強度に補強された低強度部位が形成され、かつ、低強度部位の下方に、レインフォースによって補強されない下方部位が形成され」るとの構成により、「高強度部位Dが荷重伝達部品25に当接して受け止められることから、それより下方の補強部材37の傾斜面37dに対応する部位付近が、車室39内に最も進入する最大進入位置となる。」(上記段落【0030】参照)、「この車室39内に最も進入するセンタピラー9の最大進入位置は、シート5に着座した乗員の腰の位置に対応しており、この腰部周辺のシート5を側方から押し付けてシート全体を車室39の内側に移動させることで、乗員の頭部とセンタピラー9との間隔を確保して乗員を保護する。」(上記段落【0031】参照)ものであり、
ウ 本願発明1は、「車体の側部」の「高強度部位」より下方の「低強度部位」及び「下方部位」により、車室内に最も侵入する最大侵入位置を形成するものと理解できる。
引用発明に、引用文献2に記載された事項を適用し、センタピラーの強度の境界が側突衝撃荷重受け箱23に当接するように構成できたとしても、当接位置から下方のセンタピラーにさらに強度の大小を設けることが当業者にとって容易想到とはいえず、本願発明1の「低強度部位」及び「下方部位」を構成することは容易想到とはいえない。
そして、本願発明1の「低強度部位」及び「下方部位」により形成される車室内に侵入する部位は、引用発明に引用文献2に記載の事項を適用したものにおいて形成される車室内に侵入する部位と、構造上の差異に基づき車室内に侵入した際の形状、態様も異なるものになることは明らかといえる。
よって、引用発明を相違点に係る本願発明1の構成とすることは、引用文献2から当業者が容易に想到し得るということはできない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
2.本願発明2、3
本願発明2、3は本願発明1の発明特定事項の全てを含みさらに限定されたものであり、本願発明1と同様に上記「1.(1)」で挙げた相違点を有するものといえるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
第7 原査定の拒絶理由について
1.本願発明1
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、上記「第6 1.(1)」で述べたとおりの〔一致点〕、〔相違点〕を有する。
(2)判断
引用文献Bには、
・センタピラー10内にはピラーリインホース12が配設され、ピラーリインホース12は、厚板部t1とこれより板厚の小さい薄板部t2とを結合してなる差厚結合鋼板により形成され、厚板部t1はピラーリインホース12の上端から下部に渡る長さとなっており、残りの下端部が薄板部t2となっており、厚板部t1と薄板部t2との結合部tは上記ベルトラインLより低所の乗員の着座部に臨む高さに位置しており(上記「第5 3.ク」の段落【0021】~【0023】参照)、
・側面衝突時にドア7aに作用する荷重aがインパクトビーム5を介して薄板部t2に伝達されることから、センタピラー12は薄板部t2付近から確実に折れ曲がる(上記「第5 3.ク」の段落【0025】参照)、
ことが記載されている。
引用文献Bには、センタピラーを強度が大きい部分と小さい部分とで形成し、衝撃を受けた際に強度の小さい箇所で変形させることが記載されているといえるものの、相違点に係る本願発明1の構成のうちの「レインフォースによって高強度に補強された高強度部位が形成されると共に、高強度部位の下方に、レインフォースによって高強度部位よりも低強度に補強された低強度部位が形成され、かつ、低強度部位の下方に、前記レインフォースによって補強されない下方部位が形成され」ることは記載されていないといえる。
引用発明に、引用文献Bに記載された事項を適用し、センタピラーの強度の境界が側突衝撃荷重受け箱23に当接するように構成できたとしても、当接位置から下方のセンタピラーにさらに強度の大小を設けることが当業者にとって容易想到とはいえず、本願発明1の「低強度部位」及び「下方部位」を構成することは容易想到とはいえない。
そして、本願発明1の「低強度部位」及び「下方部位」により形成される車室内に侵入する部位は、引用発明に引用文献Bに記載の事項を適用したものにおいて形成される車室内に侵入する部位と、構造上の差異に基づき車室内に侵入した際の形状、態様も異なるものになることは明らかといえる。
よって、引用発明を相違点に係る本願発明1の構成とすることは、引用文献Bから当業者が容易に想到し得るということはできない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献Bに記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
2.本願発明2、3
本願発明2、3は本願発明1の発明特定事項の全てを含みさらに限定されたものであり、本願発明1と同様に上記「1.(1)」で挙げた相違点を有するものといえるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献Bに記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
第8 むすび
以上のとおり、本願発明1~3は、当業者が引用発明及び引用文献2または引用文献Bに記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由及び当審において通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-010361