特許拒絶査定不服審判
2016-009821
車両用シートおよび車両用シートの製造方法
- 審判番号
- 2016-009821
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-016951外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年06月30日
- 審決日
- 2017年01月23日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社タチエス
- 【請求人代理人】ポレール特許業務法人
- 分類
- P18 .121-Z (B60N) / P18 .575-Z (B60N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014- 16951「車両用シートおよび車両用シートの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月 6日出願公開、特開2015-143067〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年1月31日の出願であって、原審において同年9月4日付け、平成28年4月4日付けで手続補正がなされ、同年4月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月30日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
第2 平成28年6月30日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、平成28年4月4日付けで提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1を、下記(2)に示す特許請求の範囲の請求項1へと補正することを含むものである。
(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「シートの座面部となるシートクッションと、
シートの背もたれ部となるシートバックと、
乗員の頭部および頸部を保護するヘッドレストと、を有する車両用シートであって、
前記シートクッションおよび前記シートバックのうち、少なくとも一方において、その表面に、表皮材、クッション材、熱収縮材を含む生地により形成されたカバーを備え、
前記カバーの表面にステッチ糸により規則性のある立体的な幾何学模様が形成されていることを特徴とする車両用シート。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「シートの座面部となるシートクッションと、
シートの背もたれ部となるシートバックと、
乗員の頭部および頸部を保護するヘッドレストと、を有する車両用シートであって、
前記シートクッションおよび前記シートバックのうち、少なくとも一方において、表面側から表皮材、クッション材、加熱されて熱収縮した裏地を積層した生地からなるカバーを備え、
前記カバーの表面にステッチ糸により規則性のある立体的な幾何学模様が形成されていることを特徴とする車両用シート。」(下線は審決で付した。以下同じ。)
2 補正目的について
本件補正により、本件補正前の請求項1の「その表面に、表皮材、クッション材、熱収縮材を含む生地により形成されたカバーを備え」ることに関して、「表面側から表皮材、クッション材、加熱されて熱収縮した裏地を積層した生地からなるカバーを備え」と補正する事項(以下「補正事項」という。)が追加されたものである。
上記補正事項は、本件補正前の請求項1の「車両用シート」における「その表面に、表皮材、クッション材、熱収縮材を含む生地により形成されたカバーを備え」ることに関して、「表面側から表皮材、クッション材、加熱されて熱収縮した裏地を積層した生地からなるカバーを備え」と具体的に特定したものであるから、上記補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に係る「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、上記補正事項1及び2は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。
3 独立特許要件について
そこで,本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明は、平成28年6月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1」に記載したとおりのものと認める。
(2)引用刊行物
ア 本願の出願日前の昭和59年8月29日に頒布された実願昭57-167231号(実開昭59-128270号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「(考案の内容)
本考案は、自動車内装部品、たとえば座席、ドアー等を被覆するカバー材に関し、詳しくは、表面材、クッション材及び裏面材が接着剤により一体とされた積層物において、クッション材を完全に圧縮して表面材と裏面材とを密着させた部分と、前記の密着した部分間においてクッション材の圧縮程度を連続的に変化させ、上に弧状の凹溝部分を形成し、この密着部分と、上に弧状の凹溝部分とにより、起伏に変化を有するとともに鮮明な模様を形成した、凹凸模様を付したクッション性を有するカバー材に関する。」(1頁14行~2頁5行)
(イ)「(考案の目的)
本考案は、起伏に変化を持ち、かつ鮮明さを併せ持つ凹凸模様を付したクッション性を有するカバー材を提供するものである。」(3頁6~9行)
(ウ)「(考案の内容)
第1図は、本考案の凹凸模様を付したクッション性を有するカバー材(以下カバー材と記す。)の一実施例の斜視図、第2図は、第1図の切断線I-I線により切断した端部断面図である。
カバー材1は、表面材2、クッション材3a、3b、裏面材4とが柔軟性を有する接着剤により一体にされたものである。
表面材および裏面材はファブリック、合成樹脂シートが用いられ、特に、表面材としては起毛処理が施されたファブリック、裏面材としては綿布が、外観の装飾性および自動車内装部品への装着性において適している。
クッション材は、軟質ポリウレタンフォームより成り、一種類あるいは、硬度等の物性及び厚み等の異なる数種類が組み合わされて構成される。」(3頁10行~4頁5行)
(エ)「第5図は、本考案のカバー材1を装着した座席シート斜視図である。」(6頁4~5行)
(オ)第1図から、カバー材1は、表面側から表面材2、クッション材3a、3b、裏面材4を積層したもので、凹凸模様を付したカバー材1の表面に規則性のある立体的な幾何学模様が形成されていることが看取できる。
(カ)第5図から、シートの座面部となるシートクッションと、シートの背もたれ部となるシートバックと、乗員の頭部および頸部を保護するヘッドレストと、を有するカバー材1を装着した座席シートが看取できる。
そうすると、上記(ア)乃至(カ)の記載事項から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「シートの座面部となるシートクッションと、シートの背もたれ部となるシートバックと、乗員の頭部および頸部を保護するヘッドレストと、を有するカバー材1を装着した自動車内装部品である座席シートであって、
カバー材1は、表面側から表面材2、クッション材3a、3b、裏面材4を積層したものが柔軟性を有する接着剤により一体にされたものであり、
カバー材1の表面に規則性のある立体的な幾何学模様が形成されている自動車内装部品である座席シート。」
イ 本願の出願日前の平成1年12月14日に頒布された特開平1-310689号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「2 特許請求の範囲
1 表地と裏地のあいだに中綿を挟んだのち、縫製して一体化してなるキルティング生地であって、裏地として熱収縮性基布を使用し、縫製して一体化したのちに熱処理を施して前記熱収縮性基布を収縮せしめたことを特徴とするキルティング生地。」(1頁左欄4~10行)
(イ)「【産業上の利用分野】
本発明はキルティング生地に関する。さらに詳しくは、本発明は表面に顕著な凹凸形状を有し、しかも該凹凸形状の保形性にすぐれたキルティング生地に関する。」(1頁左欄)12~16行)
(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者らは前記従来技術に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、目的とする縫製形状および顕著な凹凸形状を有することは勿論のこと、さらにすぐれた風合をも有するまったく新しいキルティング生地を初めて見出し、本発明を完成するにいたった。」(1頁右欄18行~2頁左上欄4行)
(エ)「かかる収縮率を有する熱収縮性基布を中綿および表地と一体化し、熱処理を施してキルティング生地としたばあいには、該キルティング生地の収縮率は、中綿の厚さ、表地の種類、キルティングのパターンなどによって異なるが、10~60%、なかんづく15~60%程度となる。
前記熱収縮性基布の厚さおよび目付についてはとくに限定はないが、通常厚さは0.15~1.0mm、なかんづく0.2~0.7mm、また目付は10~100g/m2、なかんづく20~50g/m2程度であることが望ましい。
前記表地と裏地のあいだに前記中綿を挟んだのち縫製されるが、かかる縫製の手段については本発明においては別段制限はなく、通常行なわれているミシンなどがあげられる。かかる縫製形状については本発明においてはとくに限定はなく、目的とするキルティング生地の縫製模様に応じて適宜調整するのが好ましい。
縫製一体化されたキルティング生地にはつぎに熱処理が施され、前記熱収縮性基布が熱収縮されるが、かかる熱収縮させる際の条件としては、たとえば90~150℃程度の空気や水蒸気を含有した空気などを用いて30秒~10分間加熱するなどがあげられる。
かくして表地、中綿および熱収縮性基布が縫製一体化されたキルティング生地に熱処理を施すことにより熱収縮性基布が熱収縮し、表地の凹凸形状がさらに一層顕著となるのである。さらに熱収縮性基布が熱収縮により中綿が表地の方向に押し上げられ、表地の凸部に中綿が充填されるので、押圧されても元の形状に復元するのである。」(3頁右下欄1行~4頁左上欄12行)
(オ)「たとえばシートの表地や服地などとして好適に使用しうるものである。」(5頁左上欄1~2行)
そうすると、上記(ア)乃至(オ)の記載事項から、刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「表地と裏地のあいだに中綿を挟んだのち、縫製して一体化してなるキルティング生地であって、裏地として熱収縮性基布を使用し、縫製して一体化したのちに熱処理を施して前記熱収縮性基布を収縮せしめた、シートの表地として使用しうるキルティング生地。」
(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比すると、
ア 後者の「シート」、「座面部」、「シートクッション」、「背もたれ部」、「シートバック」、「乗員の頭部および頸部を保護するヘッドレスト」、「自動車内装部品である座席シート」、「表面材2」、「クッション材3a、3b」、「裏面材4」、「カバー材1」、及び「規則性のある立体的な幾何学模様」は、それぞれ、前者の「シート」、「座面部」、「シートクッション」、「背もたれ部」、「シートバック」、「乗員の頭部および頸部を保護するヘッドレスト」、「車両用シート」、「表皮材」、「クッション材」、「裏地」、「カバー」、及び「規則性のある立体的な幾何学模様」に相当する。
イ 後者の「カバー材1」は、「表面側から表面材2、クッション材3a、3b、裏面材4を積層したもの」であるから、「表面側から表皮材、クッション材、裏地を積層した生地からなるカバー」といえる。
したがって、両者は、
「シートの座面部となるシートクッションと、
シートの背もたれ部となるシートバックと、
乗員の頭部および頸部を保護するヘッドレストと、を有する車両用シートであって、
前記シートクッションおよび前記シートバックのうち、少なくとも一方において、表面側から表皮材、クッション材、裏地を積層した生地からなるカバーを備え、
前記カバーの表面に規則性のある立体的な幾何学模様が形成されている車両用シート。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
本願補正発明は、「加熱されて熱収縮した」裏地を積層したカバーを備え、カバーの表面に「ステッチ糸により」規則性のある立体的な幾何学模様が形成されているのに対し、引用発明1では、そのようなものでない点。
(4)判断
上記相違点について以下検討する。
引用発明2の「表地」、「裏地」、「中綿」、及び「キルティング生地」は、それぞれ、本願補正発明の「表皮材」、「裏地」、「クッション材」、及び「生地」に相当する。
そして、引用発明2の「キルティング生地」は、表地と裏地のあいだに中綿を挟んだのち、縫製して一体化してなるものであるから、本願補正発明の「カバー」に相当し、また、上記のキルティング生地は、表地と裏地のあいだに中綿を挟んだのち、縫製して一体化してなるものであるから、カバーの表面に「ステッチ糸により」立体的な模様が形成されている、といえる。
また、引用発明2の「裏地」は、「熱収縮性基布を使用し、縫製して一体化したのちに熱処理を施して前記熱収縮性基布を収縮せしめた」ものであるから、「加熱されて熱収縮した裏地」といえる。
そうすると、相違点に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明2に記載されている。
そして、引用発明1も引用発明2も、シートに用いる生地である点で技術分野が共通する。
また、引用発明1も引用発明2も、凹凸模様を付したカバー材を提供するという点で課題が共通する。
そうすると、引用発明1において、引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1において、引用発明2を適用することにより、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
そして、本願補正発明の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明1、及び引用発明2から、当業者が予測しうる範囲内のものである。
よって、本願補正発明は、引用発明1、及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることが出来ない。
(5)むすび
以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成28年4月4日付けの特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「シートの座面部となるシートクッションと、
シートの背もたれ部となるシートバックと、
乗員の頭部および頸部を保護するヘッドレストと、を有する車両用シートであって、
前記シートクッションおよび前記シートバックのうち、少なくとも一方において、その表面に、表皮材、クッション材、熱収縮材を含む生地により形成されたカバーを備え、
前記カバーの表面にステッチ糸により規則性のある立体的な幾何学模様が形成されていることを特徴とする車両用シート。」(以下「本願発明」という。)
2 引用刊行物
平成28年2月1日付けの拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載内容は上記「第2 3 (2)引用刊行物」に記載したとおりである。
3 対比・判断
本願発明は、実質的に、上記「第2 3 (1)本願補正発明」で検討した本願補正発明の「表面側から表皮材、クッション材、加熱されて熱収縮した裏地を積層した生地からなるカバーを備え」に関して、「表面側から」、及び「加熱されて熱収縮した裏地を積層した生地からなる」との限定を省き、「表面側に、」、及び「熱収縮材を含む生地により形成された」とするものである。
そうすると、本願発明と引用発明1とを対比した場合の相違点は、実質的に、上記「第2 3 (3)対比」で挙げた相違点となる。
そして、上記「第2 3 (4)判断」における検討内容を踏まえれば、本願発明は、引用発明1、及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1、及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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