特許拒絶査定不服審判
2016-009481
メモリサブシステム、コンピュータ・システム
- 審判番号
- 2016-009481
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-160933外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年06月25日
- 審決日
- 2017年06月26日
- 公報発行日
- 2017年08月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
- 【請求人代理人】上野 剛史
- 【請求人代理人】太佐 種一
- 【請求人代理人】小池 文雄
- 分類
- P18 .121-WY (G06F) / P18 .537-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-160933「メモリサブシステム、コンピュータ・システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月 3日出願公開、特開2014- 21785、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年7月19日の出願であって、平成28年2月2日付けで拒絶理由通知がされ、同年3月4日付けで手続補正がされ、同年5月25日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年6月25日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成29年2月23日付けで当審から拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、同年3月25日付けで手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成28年5月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1、5に係る発明は、以下の引用文献Aに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
A.特開2005-258533号公報
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由通知の概要は次のとおりである。
理由1)
本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない
理由2)
本願請求項1-3、5-7に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由3)
請求項2、4、6、8に係る発明は不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
引用文献等一覧
1.特開2000-276436号公報 (当審において新たに引用された文献)
2.特開2008-305349号公報 (当審において新たに引用された文献)
3.国際公開第2007/046448号 (当審において新たに引用された文献)
第4 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、平成29年3月25日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-6は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
システムバスを介して相互に通信可能に接続されたCPUとメモリサブシステムを含むコンピュータ・システムであって、
システムバスに接続され、CPUからメモリサブシステムへのアクセスリクエストの頻度を監視するバスモニタと、
バスモニタから受信した前記アクセスリクエストの頻度に応じて、メモリサブシステムに対して、前記アクセスリクエストのレイテンシを可変するための制御信号を送る、レイテンシ可変手段と、を備え、
前記バスモニタは、前記アクセスリクエストの数と前記CPUからのアクセスリクエスト以外のアクセスリクエストの数とを計数するアップダウン・カウンタを含み、
前記レイテンシ可変手段は、レジスタと、アップダウン・カウンタによる計数値をレジスタに格納された所定のしきい値と比較するための比較器とを含み、
前記アップダウン・カウンタは、前記システムバスからサイクルエンド信号を受けた後に、前記アクセスリクエストをプラス1(+1)として、前記CPUからのアクセスリクエスト以外のアクセスリクエストおよび前記システムバスのアイドル状態をマイナス1(-1)として計数を行う、コンピュータ・システム。
【請求項2】
前記メモリサブシステムは、システムバスに接続するメモリコントローラと、DDR―PHYインターフェース(DFI)を介してメモリコントローラに接続するDDRメモリとを含み、
前記レイテンシ可変手段は、前記比較器による比較結果に応じて、(i)メモリコントローラへの動作クロックを間引くためのクロックゲート信号を生成する、(ii)DDRメモリへの動作クロックを間引くためのCKEゲート信号を生成する、および(iii)メモリコントローラへの前記システムバスの応答を遅らせるためのダミーサイクル信号を生成する、の少なくともいずれか1つを実行する、請求項1のコンピュータ・システム。
【請求項3】
前記比較器は、入力された前記計数値が、所定のしきい値よりも小さい場合に出力信号としてハイ(H)信号を出力し、しきい値以上の場合にロー(L)信号を出力する、請求項1のコンピュータ・システム。
【請求項4】
システムバスを介してCPUと相互に通信可能なメモリサブシステムであって、
システムバスに接続するメモリコントローラと、
DDR―PHYインターフェース(DFI)を介してメモリコントローラに接続するDDRメモリと、
システムバスに接続され、CPUからのアクセスリクエストの頻度を監視するバスモニタと、
バスモニタから受信した前記アクセスリクエストの頻度に応じて、メモリコントローラまたはDDRメモリに対して、前記アクセスリクエストのレイテンシを可変するための制御信号を送る、レイテンシ可変手段と、を備え、
前記バスモニタは、前記アクセスリクエストの数と前記CPUからのアクセスリクエスト以外のアクセスリクエストの数とを計数するアップダウン・カウンタを含み、
前記レイテンシ可変手段は、レジスタと、アップダウン・カウンタによる計数値をレジスタに格納された所定のしきい値と比較するための比較器とを含み、
前記アップダウン・カウンタは、前記システムバスからサイクルエンド信号を受けた後に、前記アクセスリクエストをプラス1(+1)として、前記CPUからのアクセスリクエスト以外のアクセスリクエストおよび前記システムバスのアイドル状態をマイナス1(-1)として計数を行う、メモリサブシステム。
【請求項5】
前記レイテンシ可変手段は、前記比較器による比較結果に応じて、(i)メモリコントローラへの動作クロックを間引くためのクロックゲート信号を生成する、(ii)DDRメモリへの動作クロックを間引くためのCKEゲート信号を生成する、および(iii)メモリコントローラへの前記システムバスの応答を遅らせるためのダミーサイクル信号を生成する、の少なくともいずれか1つを実行する、請求項4のメモリサブシステム。
【請求項6】
前記比較器は、入力された前記計数値が所定のしきい値よりも小さい場合に、出力信号としてハイ(H)信号を出力し、しきい値以上の場合にロー(L)信号を出力する、請求項4のメモリサブシステム。」
第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
当審拒絶理由通知に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
(a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、低消費電力化を図った直接メモリアクセス制御(以下、「DMA制御」ともいう)装置に関する。さらに詳細には、共有バスに接続された複数のデバイスによる共有バスの使用割合に応じて低消費電力モードへの移行を実行するようにしたDMA制御装置に関するものである。例えば、複写機のように、CPUと他のデバイス(スキャナ、プリンタ等)とでバスを共用する機器に用いて好適なものである。」(2頁1欄)
(b)「【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明のDMA制御装置を具体化した実施の形態について図面に基づいて詳細に説明する。本実施の形態は、複写機における各デバイスのバスへのアクセスを制御するDMA制御装置である。
【0021】(第1の実施の形態)まず、第1の実施の形態について説明する。このDMA制御装置10は、図1に示すように、DRAMを備えるメモリ7と、各DMA制御部1,2,3、およびアクセス制御部4と、バスモニタ部8とを有し、DMA制御部1~3、およびアクセス制御部4が共用のバス5を介してメモリ7にアクセスするものである。そして、バスモニタ部8の算出するバス5の使用割合に応じて各DMA制御部1~3、およびアクセス制御部4からバス5へのアクセスを調停するバス調停部6が設けられている。また、DMA制御部1にはプリンタ装置11が接続され、DMA制御部2にはスキャナ装置12が接続され、DMA制御部3にはハードディスク13が接続され、アクセス制御部4にはCPU14が接続されている。CPU14は、このシステムを含めた複写機全体の制御を統括するものである。なお、プリンタ装置11、スキャナ装置12、およびハードディスク13はそれぞれDMA制御部1,2、および3によりCPU14を介さずメモリ7に直接アクセスできるようになっている。
【0022】バス調停部6は、図2に示すように、各DMA制御部1~3からそれぞれリクエスト信号req1,req2,req3が出力されると、各DMA制御部1~3に対して適宜、バス使用許可信号ack1,ack2,ack3を返信するものである。また、バス調停部6は、バス5の使用割合に応じて低消費電力モードに移行させるためのモード移行信号LWSをCPU14に対して発するものでもある。
【0023】このバス調停部6には、図3に示すように、各DMA制御部1~3のリクエスト信号req1~req3が入力されるリクエスト入力レジスタ15と、バス5へアクセスする優先順位が記憶された優先順位テーブルTと、バス使用許可信号ackを返信するバス応答制御部17と、後述するバスモニタ部8で算出されるバス5の占有率Sに基づき、低消費電力モードに移行するためのモード移行信号LWSを発する低消費電力モード移行判定部18とが備わっている。そして、バス調停部6から発せられるバス使用許可信号がアクティブである期間中だけ、バス使用許可信号が返信された制御部がバス5にアクセスできるようになっている。なお、各DMA制御部1~3、およびアクセス制御部4が同時にリクエスト信号req1,req2,req3,req4を出力した場合には、予め決められた優先順位を記録した優先順位テーブルT(図9参照)に基づいてバス5へのアクセスが調停されるようになっている。
【0024】続いてバスモニタ部8は、図4に示すように、バス調停部6から出力されるバス使用許可信号ack1,ack2,ack3のアクティブ期間をカウントしバス占有率Sを算出して、それを低消費電力モード移行判定部18に入力するものである。そして、このバスモニタ部8は、カウンタ21,22,23と、遅延形フリップフロップ(Delay Flip-Flop、以下「DFF」ともいう)31,32,33と、加算器25と、比較器26とを有する。カウンタ21の端子ENにはバス使用許可信号ack1が入力され、端子CLKにはクロック信号CSが入力され、端子CLRにはカウンタクリア信号CCSが入力されている。一方、端子Qからはカウンタ21におけるカウント値C1が出力され、これがDFF31の端子INに入力されている。また、DFF31の端子CLKには占有率セット信号SSSが入力され、端子OUTからは占有率S1が出力され、これが加算器25に入力されている。
【0025】カウンタ21は、端子CLKに入力されているクロック信号CSの立ち上がりで、端子ENに入力されているバス使用許可信号ack1がアクティブであればカウントアップを行うとともに、そのカウント値C1を端子Qから出力してDFF31の端子INに入力するものである。そして所定周期ごとに発信されるカウンタクリア信号CCSが端子CLKに入力されると、カウント値C1をリセットするようになっている。なお、カウンタ22,23も同様の作用をするものである。
【0026】DFF31は、所定周期ごとに発信される占有率セット信号SSSが端子CLKに入力されると、カウンタ21から入力されているカウント値C1を端子OUTから出力するものである。すなわち、DFF31は占有率セット信号SSSの入力周期におけるバス使用許可信号ack1の発生割合、つまりDMA制御部1のバス使用割合を算出しているのである。なお、DFF32,33も同様の作用をするものであり、DFF32がDMA制御部2のバス使用割合を算出し、DFF33がDMA制御部3のバス使用割合を算出するようになっている。また、加算器25は、DFF31~33が算出したバス占有率S1~S3の和、つまりバス占有率Sを算出し、低消費電力モード移行判定部18に入力するものである。なお、クロック信号CS、カウンタクリア信号CCS、および占有率セット信号SSSは、すべてバスモニタ8の内部で生成されるものである。」(4頁5欄-5頁7欄)
(c)「【0031】(第2の実施の形態)次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態に係るDMA制御装置は、第1の実施の形態に係るDMA制御装置とその構成をほぼ同じくするが、バス調停部に低消費電力モード移行判定部18の代わりにクロック低減判定部318を備え、新たにクロック低減部310を有する点が異なる。すなわち、バス調停部6は、図5に示すように、バス5へのアクセスを調停するとともに、バス5のバス占有率Sに応じてシステムクロックの周波数を低減させるためのクロック低減信号LCSをクロック低減部310に対し発するものである。また、クロック低減部310は、クロック発生部320で生成されるシステムクロックの周波数を低くし、それをCPU14およびメモリ7に対しそれぞれ供給するものである。なお、CPU14およびメモリ7への供給クロックの周波数は同じでも良いし、異なっていても良い。
【0032】そして、バス調停部6には、図6に示すように、各DMA制御部1~3のリクエスト信号req1~req3が入力されるリクエスト入力レジスタ15と、バス5へアクセスする優先順位が記憶された優先順位テーブルTと、バス使用許可信号ackを返信するバス応答制御部17と、バスモニタ部8で算出されるバス5の占有率Sに基づき、クロック低減信号LCSを発するクロック低減判定部318とが備わっている。ここで、クロック低減判定部318においては、バス5の占有率Sが判定値「10(%)」よりも小さい場合に、クロック低減信号LCSがクロック低減部310に対し発せられるようになっている。
【0033】このように構成されたDMA制御装置は、次のように動作する。まず、バスモニタ部8により、バス使用許可信号ack1~ack3に基づきバス5のバス占有率Sが算出される。このバス占有率Sは、クロック低減判定部318に入力される。すると、クロック低減判定部18において、バス占有率Sが判定値「10(%)」よりも小さいか否かが判定される。そして、バス占有率Sが判定値「10(%)」よりも小さい場合には、クロック低減信号LCSがクロック低減部310に対し出力される。
【0034】クロック低減判定部318から出力されたクロック低減信号LCSをクロック低減部310が受信すると、クロック低減部310はクロック発生部320から入力されているシステムクロックの周波数を低くし、それをCPU14およびメモリ7に対しそれぞれのクロックとして入力する。このようにシステムクロックの周波数を低くできるのは、DMA制御部1~3がほとんど作動していない場合にはデータの高速処理が要求されないため、CPU14およびメモリ7の処理速度を遅くすることができるからである。これにより、CPU14およびメモリ7における消費電力が低減されるため、低消費電力化が図られる。なお、バスモニタ部8が算出するバス占有率Sが判定値「10(%)」よりも大きい場合には、クロック低減信号LCSは出力されず、システムクロックの周波数の低減は行われない。
【0035】そして、一旦クロック低減部310によるシステムクロックの周波数の低減が行われた後に、バス占有率Sが判定値「10(%)」を越えれば、クロック低減部310からCPU14およびメモリ7に対して、通常の周波数のシステムクロックが供給される。このようなシステムクロックの周波数の低減が、バス占有率Sに応じて行われることにより、効果的に消費電力を低く押さえることができる。」(5頁8欄-6頁9欄)
・上記(c)の段落【0031】の記載によれば、「第2の実施の形態」のDMA制御装置は、「第1の実施の形態」のDMA制御装置において、バス調停部に低消費電力モード移行判定部18の代わりにクロック低減判定部318を備え、新たにクロック低減部310を有する点で異なるものである。
・上記(b)の段落【0021】、(c)の段落【0031】、図5の記載によれば、引用文献1には、DRAMを備えるメモリ7と、各DMA制御部1,2,3、およびアクセス制御部4と、バス5と、バス調停部6と、バスモニタ部8と、クロック低減部310と、クロック発生部320とを有し、前記DMA制御部1~3、および前記アクセス制御部4が共用の前記バス5を介してメモリ7にアクセスするDMA制御装置10が記載されている。
・上記(b)の段落【0021】によれば、前記DMA制御部1にはプリンタ装置11が接続され、前記DMA制御部2にはスキャナ装置12が接続され、前記DMA制御部3にはハードディスク13が接続され、前記アクセス制御部4にはCPU14が接続されている。
・上記(b)の段落【0022】の記載によれば、バス調停部6は、各DMA制御部1~3からそれぞれリクエスト信号req1,req2,req3が出力されると、各DMA制御部1~3に対して適宜、バス使用許可信号ack1,ack2,ack3を返信するものである。
・上記(b)の段落【0024】、(c)の段落【0033】の記載によれば、バスモニタ部8は、バス調停部6から出力されるバス使用許可信号ack1,ack2,ack3のアクティブ期間をカウントしバス占有率Sを算出するものである。
・上記(c)の段落【0031】、【0033】、【0034】の記載によれば、バス調停部6のクロック低減判定部318は、前記バス占有率Sが入力され、バス占有率Sが判定値「10(%)」よりも小さい場合には、クロック低減信号LCSをクロック低減部310に対し出力し、クロック低減部310は、クロック発生部320で生成されるシステムクロックの周波数を低くし、それをCPU14およびメモリ7に対しそれぞれ供給するものである。
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「DRAMを備えるメモリ7と、各DMA制御部1,2,3、およびアクセス制御部4と、バス5と、バス調停部6と、バスモニタ部8と、クロック低減部310と、クロック発生部320とを有し、前記DMA制御部1~3、および前記アクセス制御部4が共用の前記バス5を介してメモリ7にアクセスするDMA制御装置10において、
前記DMA制御部1にはプリンタ装置11が接続され、前記DMA制御部2にはスキャナ装置12が接続され、前記DMA制御部3にはハードディスク13が接続され、前記アクセス制御部4にはCPU14が接続されており、
前記バス調停部6は、各DMA制御部1~3からそれぞれリクエスト信号req1,req2,req3が出力されると、各DMA制御部1~3に対して適宜、バス使用許可信号ack1,ack2,ack3を返信するものであって、
前記バスモニタ部8は、バス調停部6から出力されるバス使用許可信号ack1,ack2,ack3のアクティブ期間をカウントしバス占有率Sを算出し、
前記バス調停部6のクロック低減判定部318は、前記バス占有率Sが入力され、バス占有率Sが判定値「10(%)」よりも小さい場合には、クロック低減信号LCSをクロック低減部310に対し出力し、
前記クロック低減部310は、クロック発生部320で生成されるシステムクロックの周波数を低くし、それをCPU14およびメモリ7に対しそれぞれ供給する、
DMA制御装置10。」
2.引用文献2について
当審拒絶理由通知に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(a)「【0002】
近年、たとえば電子機器であるデジタルカメラ及びデジタルビデオカメラ等の撮像装置では、高速レスポンス、高速連写性能、長時間動画撮影など、高いパフォーマンスを必要とする機能が必要不可欠になりつつある。これに伴い、使用するクロック信号の高速化や、高速なメモリアクセスが可能なDouble-Data-Rate(以下、DDRと略す)タイプのメモリの搭載等により、必要なパフォーマンスが達成されている。」(3頁)
(b)「【0012】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るリード側のメモリコントローラの概略構成を示すブロック図である。図1において、メモリコントローラ110は、クロック制御回路111、クロック発生回路112、DLL回路113、フリップフロップ(以下、FFと略す)114、115を備える。メモリコントローラ110はまた、インバータバッファ116、出力インタフェースバッファ151、152、入力インタフェースバッファ153、154を備える。
【0013】
141、142、143、144、及び145は、メモリコントローラ110がDLL回路非搭載のメモリモジュール130に入力する信号MEMCLK、MEMCLK_L、DQS、DQ、及びCMDの信号線を示す。それらの信号は、それぞれクロック信号とその反転クロック信号、双方向のデータストローブ信号、双方向のデータ信号である。またCMDは、メモリモジュール130に入力するアドレス、バンクアドレス、RAS、CAS、WE、CKE、CS等のすべてを含む制御信号である。本実施形態では、CMDの制御回路と出力インタフェースバッファの説明は省略する。
【0014】
尚、メモリモジュール130は、MobileDDR-SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)からなる。本実施形態において、メモリモジュール130は、MobileDDR-SDRAMとして説明するが、これに限るわけではない。
【0015】
以下、メモリコントローラ110が、クロック信号MEMCLKと反転クロック信号MEMCLK_Lに同期してメモリモジュール130から供給されるデータストローブ信号DQSとデータ信号DQを受信する構成について説明する。」(4-5頁)
3.引用文献3について
当審拒絶理由通知に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
(a)「[0063] なお、本実施の形態1において、周波数切替回路108によるメモリの動作クロック周波数の変更(切替)は、クロック生成回路106よりのクロックを、間引くことにより行うようにしてもよい。
[0064] また、同じく周波数切替回路108によるメモリの動作クロック周波数の変更 (切替)は、アクセスイネーブル信号(AE)のネゲート期間等から得たアクセスの頻度に応じて、段階的に変更するようにしても良い。例えば、アクセスィネーブル信号(AE)のネゲート期間が、10クロック、20クロック、30クロックと増加するに従い、周波数を3/4、1/2、1/4と段階的に切り替えてもよい。このように段階的に周波数を切り替えることにより、より制御範囲を広げて、より効果的な低消費電力化を行うことが可能になる。」 (13頁28行-14頁9行)
第6 対比・判断
1.理由1)、理由2)について
(1)本願発明1について
A 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
(a)引用発明の「バス」、「CPU」、及び「メモリ」は、本願発明1の「システムバス」、「CPU」、及び「メモリサブシステム」に相当する。
また、引用発明の「DMA制御装置10」は、「CPU14」が接続される「アクセス制御部4」が「バス5を介してメモリ7にアクセスする」ものであるから、引用発明の「DMA制御装置10」は、本願発明1の「システムバスを介して相互に通信可能に接続されたCPUとメモリサブシステムを含むコンピュータ・システム」に含まれるものである。
(b)引用発明の「バスモニタ部8」は、「バス使用許可信号ack1,ack2,ack3のアクティブ期間をカウントしバス占有率Sを算出する」ものであって、ここで、「バス使用許可信号ack1,ack2,ack3」は、「プリンタ装置11」、「スキャナ装置12」、「ハードディスク13」がそれぞれ接続される「DMA制御部1~3から」メモリへの「リクエスト信号req1,req2,req3」に対するものであり、さらに、「バス占有率S」とリクエストの頻度は比例関係にあるから、引用発明の「バスモニタ部8」と、本願発明1の「システムバスに接続され、CPUからメモリサブシステムへのアクセスリクエストの頻度を監視するバスモニタ」とは、「システムバスに接続され、システムバスに接続されるデバイスからのメモリサブシステムへのアクセスリクエストの頻度を監視するバスモニタ」の点では共通する。
(c)引用発明の「バス調停部6のクロック低減判定部318」は、「バス5の前記バス占有率Sが入力され、バス占有率Sが判定値「10(%)」よりも小さい場合には、クロック低減信号LCSをクロック低減部310に対し出力」するものであって、そして、該出力によって「システムクロックの周波数を低くし、それをCPU14およびメモリ7に対しそれぞれ供給する」ものであり、「メモリ7」に供給される「システムクロックの周波数を低く」すれば、メモリへのリクエストのレイテンシが変化することは明らかであるから、引用発明の「バス調停部6」は、本願発明1の「バスモニタから受信した前記アクセスリクエストの頻度に応じて、メモリサブシステムに対して、前記アクセスリクエストのレイテンシを可変するための制御信号を送る、レイテンシ可変手段」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「システムバスを介して相互に通信可能に接続されたCPUとメモリサブシステムを含むコンピュータ・システムであって、
システムバスに接続され、メモリサブシステムへのアクセスリクエストの頻度を監視するバスモニタと、
バスモニタから受信した前記アクセスリクエストの頻度に応じて、メモリサブシステムに対して、前記アクセスリクエストのレイテンシを可変するための制御信号を送る、レイテンシ可変手段と、を備えた、
コンピュータ・システム。」
(相違点1)
上記「アクセスリクエスト」が、本願発明1では、「CPUからメモリサブシステムへのアクセスリクエスト」であるのに対して、引用発明では、CPUからではなく、それぞれプリンタ装置、スキャナ装置、ハードディスクが接続されたDMA制御部1~3からのメモリへのアクセスリクエストである点。
(相違点2)
本願発明1では、「前記バスモニタは、前記アクセスリクエストの数と前記CPUからのアクセスリクエスト以外のアクセスリクエストの数とを計数するアップダウン・カウンタを含み」、「前記アップダウン・カウンタは、前記システムバスからサイクルエンド信号を受けた後に、前記アクセスリクエストをプラス1(+1)として、前記CPUからのアクセスリクエスト以外のアクセスリクエストおよび前記システムバスのアイドル状態をマイナス1(-1)として計数を行」い、また、「前記レイテンシ可変手段は、レジスタと、アップダウン・カウンタによる計数値をレジスタに格納された所定のしきい値と比較するための比較器とを含」むのに対して、引用発明では、バスモニタ部8は、そのようなアップダウン・カウンタを含んでいないので、そのような計数は行わず、また、バス調停部6は、そのような比較器を含んでいない点。
B 相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討すると、相違点2に係る本願発明1の構成は、上記引用文献1-3には記載されておらず、本願出願日前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明と同一ではなく、また、当業者であっても引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
(2)本願発明2、3について
本願発明2、3も、本願発明1の「前記バスモニタは、前記アクセスリクエストの数と前記CPUからのアクセスリクエスト以外のアクセスリクエストの数とを計数するアップダウン・カウンタを含み、前記レイテンシ可変手段は、レジスタと、アップダウン・カウンタによる計数値をレジスタに格納された所定のしきい値と比較するための比較器とを含み、前記アップダウン・カウンタは、前記システムバスからサイクルエンド信号を受けた後に、前記アクセスリクエストをプラス1(+1)として、前記CPUからのアクセスリクエスト以外のアクセスリクエストおよび前記システムバスのアイドル状態をマイナス1(-1)として計数を行う」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
(3)本願発明4について
本願発明4は、本願発明1の「コンピュータ・システム」を「メモリサブシステム」とし、「メモリサブシステム」が「バスモニタ」と「レイテンシ可変手段」を有するものとしたものであって、請求項1の「前記バスモニタは、前記アクセスリクエストの数と前記CPUからのアクセスリクエスト以外のアクセスリクエストの数とを計数するアップダウン・カウンタを含み、前記レイテンシ可変手段は、レジスタと、アップダウン・カウンタによる計数値をレジスタに格納された所定のしきい値と比較するための比較器とを含み、前記アップダウン・カウンタは、前記システムバスからサイクルエンド信号を受けた後に、前記アクセスリクエストをプラス1(+1)として、前記CPUからのアクセスリクエスト以外のアクセスリクエストおよび前記システムバスのアイドル状態をマイナス1(-1)として計数を行う」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
(4)本願発明5、6について
本願発明5、6も、本願発明4の「前記バスモニタは、前記アクセスリクエストの数と前記CPUからのアクセスリクエスト以外のアクセスリクエストの数とを計数するアップダウン・カウンタを含み、前記レイテンシ可変手段は、レジスタと、アップダウン・カウンタによる計数値をレジスタに格納された所定のしきい値と比較するための比較器とを含み、前記アップダウン・カウンタは、前記システムバスからサイクルエンド信号を受けた後に、前記アクセスリクエストをプラス1(+1)として、前記CPUからのアクセスリクエスト以外のアクセスリクエストおよび前記システムバスのアイドル状態をマイナス1(-1)として計数を行う」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明4と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2.理由3)について
平成29年3月25日付けの補正により、解消した。
第7 原査定についての判断
平成29年3月25日付けの補正により、補正後の請求項1-6は、「前記バスモニタは、前記アクセスリクエストの数と前記CPUからのアクセスリクエスト以外のアクセスリクエストの数とを計数するアップダウン・カウンタを含み、前記レイテンシ可変手段は、レジスタと、アップダウン・カウンタによる計数値をレジスタに格納された所定のしきい値と比較するための比較器とを含み、前記アップダウン・カウンタは、前記システムバスからサイクルエンド信号を受けた後に、前記アクセスリクエストをプラス1(+1)として、前記CPUからのアクセスリクエスト以外のアクセスリクエストおよび前記システムバスのアイドル状態をマイナス1(-1)として計数を行う」という技術的事項を有するものとなった。当該技術的事項は、原査定における引用文献Aには記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1-6は、当業者であっても、原査定における引用文献Aに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2016-009481