特許拒絶査定不服審判
2016-007969
情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
- 審判番号
- 2016-007969
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-253602外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年05月31日
- 審決日
- 2017年08月18日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】富士通クラウドテクノロジーズ株式会社
- 【請求人代理人】平川 明
- 【請求人代理人】高田 大輔
- 分類
- P18 .121-WY (G06F) / P18 .537-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-253602「情報処理装置,情報処理方法及び情報処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月 5日出願公開,特開2014-102643,請求項の数(9)〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は,特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本願は,平成24年11月19日の出願であって,平成27年11月27日付けで拒絶理由が通知され,平成28年2月8日付けで意見書と共に手続補正がされ,平成28年2月26日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成28年5月31日付けで拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,当審により平成29年5月19日付けで拒絶理由(以下,これを「当審拒絶理由」という。)が通知され,これに対して,平成29年6月23日付けで意見書と共に手続補正が提出され,平成29年7月10日付けで手続補正が提出されたものである。
第2.本願発明
本願請求項1~9に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」~「本願発明9」という。)は,平成29年7月10日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される,以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
個人と対応付けられた複数の項目を含む対象データを受信するデータ受付部と,
前記対象データ中の項目の値である語を抽象化した語に替えて抽象化候補データを生成する抽象化部と,
前記抽象化候補データに含まれる語の価値を受信し,前記抽象化候補データに含まれる語の価値に基づいて当該抽象化候補データの第1の価値を求める価値判定部と,
前記抽象化候補データのうち,前記第1の価値の高い所定割合の前記抽象化候補データ又は前記第1の価値の高い順に一部の前記抽象化候補データについて,一個人と対応する項目の値の組み合わせが,当該抽象化候補データ中で単一でないことを条件として検定する検定部と,
前記検定の条件を満たした抽象化候補データに含まれる語の価値に当該語を属性値として持つ人数を乗じて合計した第2の価値に基づいて抽象化候補データを選択する選択部とを備える情報処理装置。
【請求項2】
個人と対応付けられた複数の項目を含む対象データを受信するデータ受付部と,
前記対象データ中の項目の値である語について抽象化した語がデータベースに存在しない場合には,当該抽象化した語が存在しない対象データ中の語を未知語とし,当該未知語を外部の装置である検索エンジンで検索し,検索結果としてウェブページを取得して,当該ウェブページで共起した語を自然語解析することにより前記未知語を抽象化した語を求め,前記抽象化した語が前記データベースに存在する場合には前記データベースから抽象化した語を取得して前記対象データ中の語を抽象化した語に替えて抽象化候補データを生成する抽象化部と,
前記抽象化候補データに含まれる語の価値を受信し,前記抽象化候補データに含まれる語の価値に基づいて当該抽象化候補データの価値を求める価値判定部と,
前記抽象化候補データの一個人と対応する項目の値の組み合わせが,当該抽象化候補データ中で単一でないことを条件として検定する検定部と,
前記検定の条件を満たした抽象化候補データの価値に基づいて抽象化候補データを選択する選択部と
を備える情報処理装置。
【請求項3】
前記検定部は,前記抽象化候補データの一個人と対応付けられた異なる項目の値の組み合わせが前記抽象化候補データ中で単一でないことを条件として匿名性を検定する請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記検定部は,前記抽象化候補データの一個人と対応付けられた同じ項目の値の組み合わせが前記抽象化候補データ中で単一でないことを条件として多様性を検定する請求項1~3の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記語の価値が,ウェブサイト上で使用された語の統計情報に基づく値である請求項1から4の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
個人と対応付けられた複数の項目を含む対象データを受信するステップと,
前記対象データ中の項目の値である語を抽象化した語に替えて抽象化候補データを生成するステップと,
前記抽象化候補データに含まれる語の価値を受信し,前記抽象化候補データに含まれる語の価値に基づいて当該抽象化候補データの第1の価値を求めるステップと,
前記抽象化候補データのうち,前記第1の価値の高い所定割合の前記抽象化候補データ又は前記第1の価値の高い順に一部の前記抽象化候補データについて,一個人と対応する項目の値の組み合わせが,当該抽象化候補データ中で単一でないことを条件として検定するステップと,
前記検定の条件を満たした抽象化候補データに含まれる語の価値に当該語を属性値として持つ人数を乗じて合計した第2の価値に基づいて抽象化候補データを選択するステップと
をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項7】
個人と対応付けられた複数の項目を含む対象データを受信するステップと,
前記対象データ中の項目の値である語について抽象化した語がデータベースに存在しない場合には,当該抽象化した語が存在しない対象データ中の語を未知語とし,当該未知語を外部の装置である検索エンジンで検索し,検索結果としてウェブページを取得して,当該ウェブページで共起した語を自然語解析することにより前記未知語を抽象化した語を求め,前記抽象化した語が前記データベースに存在する場合には前記データベースから抽象化した語を取得して前記対象データ中の語を抽象化した語に替えて抽象化候補データを生成するステップと,
前記抽象化候補データに含まれる語の価値を受信し,前記抽象化候補データに含まれる語の価値に基づいて当該抽象化候補データの価値を求めるステップと,
前記抽象化候補データの一個人と対応する項目の値の組み合わせが,当該抽象化候補データ中で単一でないことを条件として検定するステップと,
前記検定の条件を満たした抽象化候補データの価値に基づいて抽象化候補データを選択するステップと
をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項8】
個人と対応付けられた複数の項目を含む対象データを受信するステップと,
前記対象データ中の項目の値である語を抽象化した語に替えて抽象化候補データを生成するステップと,
前記抽象化候補データに含まれる語の価値を受信し,前記抽象化候補データに含まれる語の価値に基づいて当該抽象化候補データの第1の価値を求めるステップと,
前記抽象化候補データのうち,前記第1の価値の高い所定割合の前記抽象化候補データ又は前記第1の価値の高い順に一部の前記抽象化候補データについて,一個人と対応する項目の値の組み合わせが,当該抽象化候補データ中で単一でないことを条件として検定するステップと,
前記検定の条件を満たした抽象化候補データに含まれる語の価値に当該語を属性値として持つ人数を乗じて合計した第2の価値に基づいて抽象化候補データを選択するステップ
とをコンピュータに実行させるための情報処理プログラム。
【請求項9】
個人と対応付けられた複数の項目を含む対象データを受信するステップと,
前記対象データ中の項目の値である語について抽象化した語がデータベースに存在しない場合には,当該抽象化した語が存在しない対象データ中の語を未知語とし,当該未知語を外部の装置である検索エンジンで検索し,検索結果としてウェブページを取得して,当該ウェブページで共起した語を自然語解析することにより前記未知語を抽象化した語を求め,前記抽象化した語が前記データベースに存在する場合には前記データベースから抽象化した語を取得して前記対象データ中の語を抽象化した語に替えて抽象化候補データを生成するステップと,
前記抽象化候補データに含まれる語の価値を受信し,前記抽象化候補データに含まれる語の価値に基づいて当該抽象化候補データの価値を求めるステップと,
前記抽象化候補データの一個人と対応する項目の値の組み合わせが,当該抽象化候補データ中で単一でないことを条件として検定するステップと,
前記検定の条件を満たした抽象化候補データの価値に基づいて抽象化候補データを選択するステップと
をコンピュータに実行させるための情報処理プログラム。」
第3.引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布され又は公衆通信回線を用いて閲覧可能となった,小栗秀暢,松井くにお,データの安全性と事業性の評価を行うプラットフォームの提案,電子情報通信学会技術研究報告,一般社団法人電子通信学会,2012年11月15日発行,Vol.112,No313,17頁~20頁(以下,「引用文献1」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。
A.『4.データ評価の過去研究
(中略)
特にモラルのラインは,社会の状況や他社の不祥事などにも関係するため,定量的に評価することが難しい。そのため,本稿では,技術的に数値化が出来る部分,つまりは技術的な安全性と有益性,経済性の関係について,これら複雑な指標を単純化し,データ利用の中で一番多く使われるであろう,マーケティングの分野における価値として標準化し,プラットフォーム化することを提案する。
特に,定性的なマーケティングの世界は,検索エンジンマーケティング(SEM)が標準として確立されていることもあり,選択肢をk匿名化で抽象化することで,マーケティング的な価値にどれだけの変化が発生するのか,具体的な減損レベルを計測できる。』(18頁右欄15行~19頁左欄26行)
B.『5.選択肢の価値評価の試み
まず,k匿名性を確認するため,各選択肢について何人の情報が含まれているかを確認する。
選択項目Sに回答したユーザ全員に広告を打つと想定すると,そのデータにおける選択肢(s1,s2…sn)のマーケティング価値は【各選択肢の人数×各選択肢の広告単価】となる。
広告単価をSEMツールから取得し,各選択肢毎に人数と単価を掛け,合計したものを選択項目Sの広告価値と考える。
実際には,一人のユーザに対して,複数の属性が存在するため,それら複数の広告的な価値を足すことによって,元データの価値と,匿名後の価値変化を確認する。だが,k匿名化を行う元になったデータは,抽象化の段階を踏むことによって,価値が再発見される場合がある。
例えば,ユーザの年齢だけのデータがあった場合,そのデータ自体は変化しない。だが,k匿名化を行うことで「年代」に抽象化した場合,「19歳」などの詳細年齢よりも「10代」の方がマーケティング的に価値がある場合がある。この匿名化によって,デニタの総価値は【年齢+年代】の両方の価値を持つようになる。k匿名化による広告価値の減損率は,その両方を足したものと匿名化後のデータを比較することとする。』(19頁左欄下10~右欄14行)
C.『6.実データによるk匿名化データ評価
上記の手法について,実際に業務で利用した個人情報データをk匿名化して個人特定できない状態に変換し,価値変化を確認する実験を行った。実データのプロパティは図10の通り。
検索広告の単価調査にはgoogleのSEMツールを利用した。(2012年10月19日実施)
○匿名化の手順
1.現状の選択肢群,及び匿名化候補となる選択肢群をSEMツールに入れ込み,広告価値を算出する。
2.kの値が大きく,広告価値の高い順に匿名化の優先度を定める。(元データ×k値の最大値の順)
3.優先度の高い順に組み合わせていき,その都度k匿名検定を行う。
kが1になった場合,出現数が少ないものを抽象化する作業を行う。
4.抽象化した項目について価値を再評価する。
5.匿名化できる限界点(z一匿名状態)まで実施し,総広告価値の比較を行う。』(19頁右欄下18行~下1行)
2.引用文献2
原査定の拒絶査定に引用され,本願出願前に頒布され又は公衆通信回線を用いて閲覧可能となった,特開平3-186094号公報(平成3年8月14日公開以下,「引用文献2」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。
D.「必要とするデータが内部データベースに存在しない場合には,LANアクセス用交換アダプタを起動して公衆網上の外部データベースにアクセスし,ユーザの要求するデータを取得して同様に音声またはデータとして提供する」(2頁右下欄3行~7行)
3.引用発明
あ.上記Aには「選択肢をk匿名化で抽象化することで,マーケティング的な価値にどれだけの変化が発生するのか,具体的な減損レベルを計測できる」と記載され,上記Bには「一人のユーザに対して,複数の属性が存在するため,それら複数の広告的な価値を足すことによって,元データの価値と,匿名後の価値変化を確認する」と記載され,上記Cには「匿名化の手順」が記載されていることから,引用文献1には“一人のユーザに対して複数の属性が存在する選択肢をk匿名化で抽象化することで,広告的な価値変化を確認する匿名化の手順”が記載されているといえる。
い.上記Cには「実際に業務で利用した個人情報データをk匿名化して個人特定できない状態に変換」と記載されていることから,引用文献1には“個人情報データをk匿名化して個人特定できない状態に変換する手段”が記載されているといえる。
う.上記Cには「現状の選択肢群,及び匿名化候補となる選択肢群をSEMツールに入れ込み」と記載されていることから,引用文献1には“現状の選択肢群及び匿名化候補となる選択肢群をSEMツールに入れ込む手段”が記載されているといえる。
え.上記Bには「k匿名性を確認するため,各選択肢について何人の情報が含まれているかを確認する(中略)広告単価をSEMツールから取得」と記載されていることから,引用文献1には“各選択肢に何人の情報が含まれているかk匿名性を確認する手段と,SEMツールから広告単価を取得する手段”が記載されているといえる。
お.上記Bには「各選択肢毎に人数と単価を掛け,合計したものを選択項目Sの広告価値と考える」と記載され,上記Cには「広告価値を算出する」と記載さていることから,引用文献1には“広告価値を算出する手段”が記載されているといえる。引用文献1には“各選択肢毎に人数と広告単価を掛け,合計したものを選択項目の広告価値を算出する手段”が記載されているといえる。
か.上記Cには「kの値が大きく,広告価値の高い順に匿名化の優先度を定める」と記載されていることから,引用文献1には“k値が大きく,広告価値の高い順に匿名化の優先度を定める手段”が記載されているといえる。
き.上記Cには「優先度の高い順に組み合わせていき,その都度k匿名検定を行う」と記載されていることから,引用文献1には“優先度の高い順に組み合わせていき,k匿名検定を行う手段”が記載されているといえる。
く.上記Cには「kが1になった場合,出現数が少ないものを抽象化する作業を行う」と記載されていることから,引用文献1には“kが1になった場合,出現数が少ないものを抽象化する手段”が記載されているといえる。
け.上記Cには「抽象化した項目について価値を再評価する」と記載され,価値を再評価するには,広告価値を算出する必要があり,広告価値を算出することは,上記お.で言及したとおり,“各選択肢毎に人数と広告単価を掛け”,算出した“広告価値”を再評価していると解せるので,引用文献1には“抽象化した項目について,各選択肢毎に人数と広告単価を掛け,算出した広告価値を再評価する手段”が記載されているといえる。
こ.上記Cには「匿名化できる限界点(z一匿名状態)まで実施」と記載されていることから,引用文献1には“匿名化できる限界点まで実施する手段”が記載されているといえる。
さ.上記Cには「総広告価値の比較を行う」と記載されていることから,引用文献1には,“総広告価値を比較する手段”が記載されているといえる。
し.上記あ乃至さの検討より,引用文献1には次の発明(以下,これを「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「一人のユーザに対して複数の属性が存在する選択肢をk匿名化で抽象化することで,広告的な価値変化を確認する匿名化の手順であって,
個人情報データをk匿名化して個人特定できない状態に変換する手段と,
現状の選択肢群及び匿名化候補となる選択肢群をSEMツールに入れ込む手段と,
各選択肢に何人の情報が含まれているかk匿名性を確認する手段と,
SEMツールから広告単価を取得する手段と,
各選択肢毎に人数と広告単価を掛け,合計したものを選択項目の広告価値を算出する手段と,
k値が大きく,広告価値の高い順に匿名化の優先度を定める手段と,
優先度の高い順に組み合わせていき,k匿名検定を行う手段と,
kが1になった場合,出現数が少ないものを抽象化する手段と,
抽象化した項目について,各選択肢毎に人数と広告単価を掛け,算出した広告価値を再評価する手段と,
匿名化できる限界点まで実施する手段と,
総広告価値を比較する手段と,
を含むことを特徴とする手順」
第4.対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,
ア.引用発明の「一人のユーザに対して複数の属性が存在する選択肢」は,個人と対応付けられた複数の項目と含むことは明らかなので,本願発明1の「個人と対応付けられた複数の項目を含む対象データ」に相当するといえる。そうすると,引用発明の「一人のユーザに対して複数の属性が存在する選択肢をk匿名化で抽象化すること」は,「一人のユーザに対して複数の属性が存在する選択肢」(個人と対応付けられた複数の項目を含む対象データ)を抽象化するために取得(受信)しているといえるので,本願発明1の「個人と対応付けられた複数の項目を含む対象データを受信するデータ受信部」を含んでいるといえる。
イ.引用発明の「個人情報データをk匿名化して個人特定できない状態に変換する手段」は,抽象化データを生成しているといえるので,本願発明1の「前記対象データ中の項目の値である語を抽象化した語に替えて抽象化候補データを生成する抽象化部」に相当する。
ウ.引用発明の「各選択肢に何人の情報が含まれているかk匿名性を確認する手段と,SEMツールから広告単価を取得する手段と,各選択肢毎に人数と広告単価を掛け,合計したものを選択項目の広告価値を算出する手段」と,本願発明1の「前記抽象化候補データに含まれる語の価値を受信し,前記抽象化候補データに含まれる語の価値に基づいて当該抽象化候補データの第1の価値を求める価値判定部」とを対比すると,
引用発明の「SEMツールから広告単価を取得する手段」は,各選択肢の広告単価(語の価値)を取得(受信)するといえるので,本願発明1の「抽象化候補データに含まれる語の価値を受信」することに相当し,引用発明の「広告単価を掛け,合計したものを選択項目の広告価値を算出する手段」は,抽象化候補データに含まれる価値に基づいて抽象化候補データの価値を求めているといえるので,両者が後記する点で相違するものの,
“前記抽象化候補データに含まれる語の価値を受信し,前記抽象化候補データに含まれる語の価値に基づいて当該抽象化候補データの価値を求める価値判定部”という点で一致する。
エ.引用発明の「k値が大きく,広告価値の高い順に匿名化の優先度を定める手段と,優先度の高い順に組み合わせていき,k匿名検定を行う手段と,
kが1になった場合,出現数が少ないものを抽象化する手段」と,本願発明1の「前記抽象化候補データのうち,前記第1の価値の高い所定割合の前記抽象化候補データ又は前記第1の価値の高い順に一部の前記抽象化候補データについて,一個人と対応する項目の値の組み合わせが,当該抽象化候補データ中で単一でないことを条件として検定する検定部」とを対比すると,
引用発明の「k値が大きく,広告価値の高い順に匿名化の優先度を定める手段」は,抽象化候補データのうち,価値の高い順に優先度を定めているといえ,引用発明の「優先度の高い順に組み合わせていき,k匿名検定を行う手段」は,優先度が高い順,即ち,価値の高い順に検定するといえ,引用発明の「kが1になった場合,出現数が少ないものを抽象化する手段」は,kが1になった場合,即ち,一個人と対応する項目の値の組合せが,当該抽象化候補データ中で単一となった場合に検定を行わず更に抽象化していると解せるので,一個人と対応する項目の値の組合せが,当該抽象化候補データ中で単一でないことを条件として検定しているといえる。そうすると,両者が後記する点で相違するものの,
“前記抽象化データのうち,価値の高い順に抽象化候補データについて,一個人と対応する項目の組み合わせが,当該抽象化候補データ中で単一でないことを条件として検定する検定部”という点で一致する。
オ.引用発明の「抽象化した項目について,各選択肢毎に人数と広告単価を掛け,算出した広告価値を再評価する手段」,「総広告価値を比較する手段」と,本願発明1の「前記検定の条件を満たした抽象化候補データに含まれる語の価値に当該語を属性値として持つ人数を乗じて合計した第2の価値に基づいて抽象化候補データを選択する選択部」とを対比すると,
引用発明の「抽象化した項目について,各選択肢毎に人数と広告単価を掛け,算出した広告価値を再評価する手段」は,抽象化候補データに含まれる語の価値に当該語を属性値として持つ人数を乗じて合計した価値を求めているといえ,引用発明の「総広告価値を比較する手段」は,算出した広告価値に基づいて比較(処理)しているといえるので,両者は後記する点で相違するものの,
“前記検定の条件を満たした抽象化データに含まれる語の価値に当該語を属性値として持つ人数を乗じて合計した価値に基づいて処理する手段”という点で一致する。
カ.引用発明の「広告的な価値変化を確認する匿名化の手順」は,SEMツールを利用することから,引用発明の各手段はコンピュータが実行する「情報処理装置」に備えられることは明らかである。
キ.上記ア乃至カで検討より,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
<一致点>
個人と対応付けられた複数の項目を含む対象データを受信するデータ受信部と,
前記対象データの項目の値である語を抽象化した語に替えて抽象化候補データを生成する抽象化部と,
前記抽象化候補データに含まれる語の価値を受信し,前記抽象化候補データに含まれる語の価値に基づいて当該抽象化候補データの価値を求める価値判定部と,
前記抽象化データのうち,価値の高い順に抽象化候補データについて,一個人と対応する項目の組み合わせが,当該抽象化候補データ中で単一でないことを条件として検定する検定部と,
前記検定の条件を満たした抽象化データに含まれる語の価値に当該語を属性値として持つ人数を乗じて合計した価値に基づいて抽象化候補データを求める手段を備える情報処理装置。
<相違点1>
本願発明1では「第1の価値を求める価値判定部」と「第1の価値の高い所定の割合の抽象化データ又は前記第1の価値の高い順」に「検定する検定部」と「抽象化候補データに含まれる語の価値に当該語を属性として持つ人数を乗じて合計した第2の価値に基づいて抽象化候補データを選択する選択部」を備えているのに対して,引用発明では「各選択肢毎に人数と広告単価を掛け,合計したものを選択項目の広告価値を算出」し「広告価値」を求めており「第2の価値」に相当する態様はあり,広告価値に基づいた処理(比較)をしているものの,「広告価値」以外の価値(第1の価値)の概念がなく,そのように特定されていない点。
(2)相違点1についての判断
本願発明1の「第1の価値を求める価値判定部」と,「第1の価値の高い所定の割合の抽象化データ又は前記第1の価値のの高い順」に「検定する検定部」を備えることにより,「第2の価値(各選択肢の人数と各選択肢の広告価値の積)」を求めずに「第1の価値」に基づいて,「抽象化候補データに含まれる語の価値に当該語を属性として持つ人数を乗じて合計した第2の価値」を算出する検定数を削減し,処理時間の短縮化を図ることが可能になるという顕著な効果が認められる。また,引用発明では「匿名化できる限界点まで実施する」ことから,検定数を削減するという動機付けがなく,相違点1に係る構成を備えることは,当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
2.本願発明2について
(1)対比
本願発明2と引用発明とを対比すると,
ア.引用発明の「一人のユーザに対して複数の属性が存在する選択肢」は,個人と対応付けられた複数の項目と含むことは明らかなので,本願発明2の「個人と対応付けられた複数の項目を含む対象データ」に相当し,引用発明の「一人のユーザに対して複数の属性が存在する選択肢をk匿名化で抽象化すること」は,個人と対応付けられた複数の項目を含む対象データを抽象化するために取得(受信)しているといえるので,本願発明2の「個人と対応付けられた複数の項目を含む対象データを受信するデータ受信部」を含んでいるといえる。
イ.引用発明の「個人情報データをk匿名化して個人特定できない状態に変換する手段」と,本願発明2の「前記対象データ中の項目の値である語について抽象化した語がデータベースに存在しない場合には,当該抽象化した語が存在しない対象データ中の語を未知語とし,当該未知語を外部の装置である検索エンジンで検索し,検索結果としてウェブページを取得して,当該ウェブページで共起した語を自然語解析することにより前記未知語を抽象化した語を求め,前記抽象化した語が前記データベースに存在する場合には前記データベースから抽象化した語を取得して前記対象データ中の語を抽象化した語に替えて抽象化候補データを生成する抽象化部」とを対比すると,
引用発明の「個人情報データをk匿名化して個人特定できない状態に変換する手段」は,前記対象データ中の項目の値である語について,対象データ中の語を抽象化した語に替えて抽象化候補データを生成するといえるので,両者は後記する点で相違するものの,
“前記対象データ中の項目の値である語について,対象データ中の語を抽象化した語に替えて抽象化候補データを生成する抽象化部”という点で一致する。
ウ.引用発明の「各選択肢に何人の情報が含まれているかk匿名性を確認する手段と,SEMツールから広告単価を取得する手段と,各選択肢毎に人数と広告単価を掛け,合計したものを選択項目の広告価値を算出する手段」と本願発明2の「前記抽象化候補データに含まれる語の価値を受信し,前記抽象化候補データに含まれる語の価値に基づいて当該抽象化候補データの価値を求める価値判定部」とを対比すると,
引用発明の「SEMツールから広告単価を取得する手段」は,各選択肢の広告単価(語の価値)を取得(受信)するといえるので,本願発明2の「前記抽象化候補データに含まれる価値を受信」に相当し,引用発明の「広告単価」は,本願発明2の「抽象化候補データに含まれる語の価値」といえるので,引用発明の「各選択肢毎に人数と広告単価を掛け,合計したものを選択項目の広告価値を算出する手段」は,本願発明2の「前記抽象化候補データに含まれる語の価値に基づいて当該抽象化候補データの価値を求める価値判定部」に相当するといえる。そうすると,両者に実質的な差異は無い。
エ.引用発明の「k値が大きく,広告価値の高い順に匿名化の優先度を定める手段と,優先度の高い順に組み合わせていき,k匿名検定を行う手段と,
kが1になった場合,出現数が少ないものを抽象化する手段」と本願発明2の「前記抽象化候補データの一個人と対応する項目の値の組み合わせが,当該抽象化候補データ中で単一でないことを条件として検定する検定部」とを対比すると,
引用発明の「kが1になった場合,出現数が少ないものを抽象化する手段」は,kが1になった場合,即ち,一個人と対応する項目の値の組合せが,当該抽象化候補データ中で単一となった場合に検定を行わず更に抽象化していると解せるので,一個人と対応する項目の値の組合せが,当該抽象化候補データ中で単一でないことを条件として検定しているといえ,本願発明2の「前記抽象化候補データの一個人と対応する項目の値の組み合わせが,当該抽象化候補データ中で単一でないことを条件」に相当し,引用発明の態様は本願発明2の態様を含んでいるといえるので,実質的な差異は無い。
オ.引用発明の「抽象化した項目について,各選択肢毎に人数と広告単価を掛け,算出した広告価値を再評価する手段」「総広告価値を比較する手段」と本願発明2の「前記検定の条件を満たした抽象化候補データの価値に基づいて抽象化候補データを選択する選択部」とを対比すると,
引用発明の「抽象化した項目について,各選択肢毎に人数と広告単価を掛け,算出した広告価値を再評価する手段」は,検定条件を満たした抽象化候補データの価値を求めているといえ,引用発明の「総広告価値を比較する手段」は,算出した広告価値に基づいて比較(処理)しているといえるので,両者は後記する点で相違するものの,
“前記検定条件を満たした抽象化候補データの価値に基づいて抽象化候補データを処理する手段”の点で一致するといえる。
カ.引用発明の「広告的な価値変化を確認する匿名化の手順」は,SEMツールを利用することから,引用発明の各手段はコンピュータが実行する「情報処理装置」に備えられることは明らかである。
キ.上記ア乃至カで検討より,本願発明2と引用発明とには,次の一致点,相違点があるといえる。
<一致点>
個人と対応付けられた複数の項目を含む対象データを受信するデータ受付部と,
前記対象データ中の項目の値である語について,対象データ中の語を抽象化した語に替えて抽象化候補データを生成する抽象化部と,
前記抽象化候補データに含まれる価値を受信し,前記抽象化候補データに含まれる語の価値に基づいて当該抽象化候補データの価値を求める価値判定部と,
前記抽象化候補データの一個人と対応する項目の値の組み合わせが,当該抽象化データ中で単一でないことを条件に検定する検定部と,
前記検定条件を満たした抽象化候補データの価値に基づいて抽象化候補データを処理する手段と
を備える情報処理装置。
<相違点2>
本願発明2では「抽象化した語が存在しない場合には,当該抽象化した語が存在しない対象データ中の語を未知語とし,当該未知語を外部の装置である検索エンジンで検索し,検索結果としてウェブページを取得して,当該ウェブページで共起した語を自然語解析することにより前記未知語を抽象化した語を求め,前記抽象化した語が前記データベースに存在する場合には前記データベースから抽象化した語を取得して前記対象データ中の語を抽象化した語に替えて抽象化候補データを生成する抽象化部」と「前記検定の条件を満たした抽象化候補データの価値に基づいて抽象化候補データを選択する選択部」を備えているのに対して,引用発明では,そのように特定されていない点。
(2)相違点2についての判断
引用文献2(上記D参照)には「必要とするデータが内部データベースに存在しない場合には,LANアクセス用交換アダプタを起動して公衆網上の外部データベースにアクセスし,ユーザの要求するデータを取得して同様に音声またはデータとして提供する」と記載されているように,必要なデータが内部データベースに存在しない場合,外部の装置にアクセスし検索することは周知技術であるといえるものの,本願発明2の「抽象化した語がデータベースに存在しない場合には,当該抽象化した語が存在しない対象データ中の語を未知語とし,当該未知語を外部の装置である検索エンジンで検索し,検索結果としてウェブページを取得して,当該ウェブページで共起した語を自然語解析することにより前記未知語を抽象化した語を求め」る構成は,単に外部の装置にアクセスし検索しているものではなく,周知技術とはいえず,これにより,抽象化した語がデータベースに存在しな場合でも,存在しない抽象化した語を未知語とし,検索エンジンで検索した検索結果としてウェブページを取得して,当該ウェブページから共起した語を自然語解析して,未知語を抽象化した語を求めることが可能になるという顕著な効果が認められ,引用発明から当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
3.本願発明3~5について
本願発明3~5は,本願発明1又は2を減縮した発明であるから,上記1.又は2.で言及したとおり,本願発明1又は2と同様の理由により,当業者が容易になし得たとはいえない。
4.本願発明6,8について
本願発明6は,本願発明1に対応する方法の発明であり,本願発明8は,本願発明1に対応するプログラムの発明であるので,本願発明6,8は,上記1.で言及したとおり,本願発明1と同様の理由により,当業者が容易になし得たとはいえな。
5.本願発明7,9について
本願発明7は本願発明2に対応する方法の発明であり,本願発明9は本願発明2に対応するプログラムの発明であるので,本願発明7,9は,上記2.で言及したとおり,本願発明2と同様の理由により,当業者が容易になし得たとはいえない。
第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は,請求項1~9について上記引用文献1,2に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら,平成29年7月10日付けの手続補正により補正された請求項1~9は,それぞれ『「第1の価値を求める価値判定部」と「第1の価値の高い所定の割合の抽象化データ又は前記第1の価値の高い順」に「検定する検定部」と「抽象化候補データに含まれる語の価値に当該語を属性として持つ人数を乗じて合計した第2の価値に基づいて抽象化候補データを選択する選択部」』という構成,又は,「抽象化した語が存在しない場合には,当該抽象化した語が存在しない対象データ中の語を未知語とし,当該未知語を外部の装置である検索エンジンで検索し,検索結果としてウェブページを取得して,当該ウェブページで共起した語を自然語解析することにより前記未知語を抽象化した語を求め,前記抽象化した語が前記データベースに存在する場合には前記データベースから抽象化した語を取得して前記対象データ中の語を抽象化した語に替えて抽象化候補データを生成する抽象化部」という構成を有するものとなっており,上記「第4.対比・判断」で言及したとおり,本願発明1-9は,上記引用文献1に記載された発明および上記引用文献2に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。
第6 当審拒絶理由について
1.請求項1について
当審では,請求項1に係る発明の「抽象化候補データに含まれる語の価値に基づいて当該抽象化候補データの価値」と「抽象化候補データに含まれる語に当該語を属性」との違いが明確でないとの拒絶の理由を通知したが,平成29年7月10日付けの補正において「第1の価値」と「第2の価値」との違いを明確にする補正がされた結果,この拒絶の理由は解消した。
2.請求項2について
当審では,請求項2に係る発明の「前記未知語を抽象化した語に替えて抽象化候補データを生成する抽象化部」と特定されているところ,「未知語」を抽象化した語に替えて「抽象化候補データを生成する」ことが発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知したが,平成29年7月10日付けの補正において「抽象化した語が存在しない場合には,当該抽象化した語が存在しない対象データ中の語を未知語とし,当該未知語を外部の装置である検索エンジンで検索し,検索結果としてウェブページを取得して,当該ウェブページで共起した語を自然語解析することにより前記未知語を抽象化した語を求め」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。
第7 むすび
以上のとおり,本願発明1~9は,当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明することができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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2016-007969