特許拒絶査定不服審判
2016-006169
ワイヤハーネス用固定具および当該ワイヤハーネス用固定具を備えたワイヤハーネス
- 審判番号
- 2016-006169
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-060607外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年04月26日
- 審決日
- 2017年03月22日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (H02G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011- 60607「ワイヤハーネス用固定具および当該ワイヤハーネス用固定具を備えたワイヤハーネス」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月18日出願公開、特開2012-200033、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成23年3月18日の出願であって,平成27年12月22付けで拒絶理由通知がされ,平成28年2月9日付けで手続補正がされ,平成28年3月8日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成28年4月26日に拒絶査定不服審判の請求がされ,平成28年10月18日付けで拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)がされ,平成28年12月2日付けで手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成28年3月8日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
請求項1-3に係る発明は,引用文献A-Cに記載された発明に基づいて,当業者であれば容易になし得たものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
A.特開昭61-161913号公報
B.特開平10-321069号公報
C.実願昭55-020753号(実開昭56-122877号)のマイクロフィルム
第3 当審拒絶理由通知の概要
当審拒絶理由通知の概要は次のとおりである。
請求項1-3に係る発明は,引用文献1-2に記載された発明に基づいて,当業者であれば容易になし得たものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.実願昭55-20753号(実開昭56-122877号)のマイクロフィルム(拒絶査定時の引用文献C)
2.特開昭61-161913号公報 (拒絶査定時の引用文献A)
第4 本願発明
本願請求項1-3に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は,平成28年12月2日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1-3は以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
パネルに配索される1本の電線と,前記電線の外周面に被覆され当該電線に固定された板状の固定部と,前記固定部から立設され前記パネルの取付孔に係止される係止部と,前記固定部の前記電線の長手方向の一端から当該電線の長手方向に沿って延長されるとともに前記固定部よりも幅が狭い延長部と,を備え,
前記電線と前記固定部とは,一体的に形成されていることを特徴とするワイヤハーネス用固定具。
【請求項2】
前記延長部が,平板状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス用固定具。
【請求項3】
パネルに配索される複数本の電線が束ねられた電線束と,請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネス用固定具と,を備え,
前記電線束と前記ワイヤハーネス用固定具とが結束されていることを特徴とするワイヤハーネス。」
第5 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
平成28年10月18日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「図中,1は車体等の取付面Fに対しワイヤーハーネスWを固定するための留め具であって,合成樹脂,合成ゴム等よりなり,図示逆T字状をなす留め具本体2の水平片2a下面には,前記取付面Fに穿設された取付孔F1に対し係脱可能に係合する1対の弾性係止片3aと3bとを備えた係止部3が一体に形成されている。
上記留め具本体2の鉛直片2b上端には,ワイヤーハーネスWを構成する電線W2~W2のうち所定(本実施例では1本)の電線W1を嵌着するための円筒状の嵌着部4が一体に形成されている。この嵌着部4の内孔4aの直径は,前記電線W1の外径とほぼ同径又は若干大径に形成されており,電線W1に対し移動可能に嵌着される。」(2頁11行~3頁4行)
イ 「この留め具1の移動に際し,所定ピッチで設けられた留具用の治具を用いて正確に移動調整した後,前記電線W1と他の複数本の電線W2~W2とを第2図および第3図に示すようにテープTによって収束することにより,ワイヤーハーネスWが形成されるとともに同ワイヤーハーネスWに対し留め具1が同時に固定される。
その後,留め具1の係止部3を,車体等の取付面Fに穿設された取付孔F1に対し圧挿することによってワイヤーハーネスWが前記取付面Fに沿って固定される。」(3頁12行~4頁2行)
ウ 「次に,嵌着部4の別例を説明すると,
(イ) 第4図に示すように嵌着部4の筒両端部に同嵌着部4の内孔とほぼ同径の内孔を有する挾持筒部5,5をそれぞれ同軸心に延出するとともに,この挾持筒部5,5の筒方向にスリット5a~5aを設けて弾性縮小可能に形成してもよい。この場合には,テープTの巻回による他の電線の圧力を受けて挾持筒部5,5の内径が縮小されるため,電線W1に対する嵌着力を増大させることができ,ワイヤーハースWに対し留め具1をより強固に固着することができる。」(4頁3~13行)
上記引用文献1の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると,上記引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「車体等の取付面に対しワイヤーハーネスを固定するための留め具であって,
留め具本体2の鉛直片2b上端には,ワイヤーハーネスWを構成する電線W2~W2のうち所定(本実施例では1本)の電線W1を嵌着するための円筒状の嵌着部4が一体に形成されており,留め具本体2の水平片2a下面には,前記取付面Fに穿設された取付孔F1に対し係脱可能に係合する1対の弾性係止片3aと3bとを備えた係止部3が一体に形成されており,
前記電線W1は前記円筒状の嵌着部4に嵌着される,
ワイヤーハーネスの留め具。」
2.引用文献2について
平成28年10月18日付けの拒絶の理由に引用された引用文献2の2頁左下欄12~19行及び第1,6図の記載からみて,当該引用文献2には,「ハイヤハーネスを配設するための結束固定具において,ワイヤハーネスの外周を覆うように一体的に接着剤(樹脂包括体)を設けることにより結束固定具をワイヤハーネスに固定する」という技術的事項が記載されていると認められる。
第6 当審の判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
・引用発明の「車体等の取付面」,「(1本の)電線W1」,「係止部3」は,それぞれ,本願発明1の「パネル」,「1本の電線」,「係止部」に相当する。
・引用発明の「ワイヤーハーネスWを構成する電線W2~W2のうち所定(本実施例では1本)の電線W1を嵌着するための円筒状の嵌着部4」と,本願発明1の「前記電線の外周面に被覆され当該電線に固定された板状の固定部」とは,「前記電線の外周面を覆うように設けられた電線保持部」である点で共通する。
・引用発明の「ワイヤーハーネスの留め具」は,後述する相違点を除き,本願発明1の「ワイヤハーネス用固定具」に相当する。
そうすると,両発明は以下の点で一致し,また,相違する。
(一致点)
「パネルに配索される1本の電線と,前記電線の外周面を覆うように設けられた電線保持部と,前記電線保持部から立設され前記パネルの取付孔に係止される係止部と,を備えたワイヤハーネス用固定具。」
(相違点1)
一致点の「前記電線の外周面を覆うように設けられた電線保持部」が,
本願発明1では「前記電線の外周面に被覆され当該電線に固定された板状の固定部」であるのに対し,
引用発明では「ワイヤーハーネスWを構成する電線W2~W2のうち所定(本実施例では1本)の電線W1を嵌着するための円筒状の嵌着部4」である点。
(相違点2)
本願発明1は「前記固定部の前記電線の長手方向の一端から当該電線の長手方向に沿って延長されるとともに前記固定部よりも幅が狭い延長部」を備えるのに対し,
引用発明はそのような構成を備えない点。
(相違点3)
本願発明1では「前記電線と前記固定部とは,一体的に形成されている」のに対し,
引用発明では「前記電線W1は前記円筒状の嵌着部4に嵌着される」点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑みて,上記(相違点2)について先に検討すると,(相違点2)に係る本願発明1の「前記固定部の前記電線の長手方向の一端から当該電線の長手方向に沿って延長されるとともに前記固定部よりも幅が狭い延長部」という構成に関連して,引用文献1には,「別例」として「嵌着部4の筒両端部に同嵌着部4の内孔とほぼ同径の内孔を有する挾持筒部5,5をそれぞれ同軸心に延出する」ことが記載されており(摘記事項ウ),該「挾持筒部5,5」は本願発明1の「前記固定部の前記電線の長手方向の一端から当該電線の長手方向に沿って延長され」た「延長部」に対応するものとはいえるが,引用文献1には「前記固定部よりも幅が狭い延長部」は記載されていない。
また,上記(相違点2)に係る本願発明1の構成は引用文献2にも記載されておらず,本願出願前において周知技術であるともいえない。
したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明,引用文献1,2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2,3について
本願発明2,3も,本願発明1の「前記固定部の前記電線の長手方向の一端から当該電線の長手方向に沿って延長されるとともに前記固定部よりも幅が狭い延長部」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献1,2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとは認められない。
第7 原査定についての判断
平成28年12月2日付けの補正により,補正後の請求項1~3は,「前記固定部の前記電線の長手方向の一端から当該電線の長手方向に沿って延長されるとともに前記固定部よりも幅が狭い延長部」という技術的事項を有するものとなった。当該「前記固定部の前記電線の長手方向の一端から当該電線の長手方向に沿って延長されるとともに前記固定部よりも幅が狭い延長部」は,原査定における引用文献A(当審拒絶理由における引用文献2),引用文献B,引用文献C(当審拒絶理由における引用文献1)には記載されておらず,本願出願前における周知技術でもないので,本願発明1-3は,当業者であっても,原査定における引用文献A-Cに基づいて容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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