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特許拒絶査定不服審判

2016-006033

シャント抵抗器およびその実装方法

審判番号
2016-006033
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2012-223753外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年04月22日
審決日
2017年03月27日
公報発行日
2017年05月26日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H01C) / P18 .537-WY (H01C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2012-223753「シャント抵抗器およびその実装方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月 1日出願公開、特開2014- 78538、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成24年10月8日の出願であって、平成27年8月20日付け拒絶理由通知に対して同年10月22日付けで手続補正がなされたが、平成28年2月4日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、同年4月22日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、同年11月25日付け当審の拒絶理由通知に対して平成29年1月12日付けで手続補正がなされた。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし7に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年1月12日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 電気的に分離された2つの接続対象(21,30)を電気的に接続する抵抗体(11)を有し、 該抵抗体が、 一方の前記接続対象(30)と接続される第1接続部(13)、および、他方の前記接続対象(21)と接続される第2接続部(14)と、 前記第1接続部および前記第2接続部から離れて形成される架橋部(15)と、 前記第1接続部と前記架橋部とを連結する第1連結部(16)、および、前記第2接続部と前記架橋部とを連結する第2連結部(17)、とを有するシャント抵抗器であって、 前記抵抗体の表面における、前記第1接続部、前記第2接続部、前記架橋部、前記第1連結部および前記第2連結部における両面の全面に、アモルファスNi-P合金のメッキ層(12)が形成され、 はんだを介して前記接続対象に接続される前記第1接続部の接続面(13a)と、前記第1連結部のうち、前記第1接続部の接続面と連続する第1内面(16a)との成す角(X)が、90度より大きく、且つ100度以下とされ、 はんだを介して前記接続対象に接続される前記第2接続部の接続面(14a)と、前記第2連結部のうち、前記第2接続部の接続面と連続する第2内面(17a)との成す角(Y)が、90度より大きく、且つ100度以下とされることを特徴とするシャント抵抗器。 【請求項2】 前記第1内面が、第1壁面(16b)と、該第1壁面よりも前記第1接続部側に位置する第2壁面(16c)と、前記第1壁面と前記第2壁面とを連結する第1連結面(16d)と、を有し、前記第1連結面は、前記第1接続部の接続面に沿う方向に長さを有するとともに、前記架橋部のうち、前記第1内面と連続する下面(15a)に対向するように設けられ、 前記第2内面が、第3壁面(17b)と、該第3壁面よりも前記第2接続部側に位置する第4壁面(17c)と、前記第3壁面と前記第4壁面とを連結する第2連結面(17d)と、を有し、前記第2連結面は、前記第2接続部の接続面に沿う方向に長さを有するとともに、前記架橋部のうち、前記第2内面と連続する下面に対向するように設けられることを特徴とする請求項1に記載のシャント抵抗器。 【請求項3】 前記抵抗体は屈曲した状態であり、 前記第1接続部、前記第1連結部、前記架橋部、前記第2連結部、および、前記第2接続部が、一体的に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシャント抵抗器。 【請求項4】 前記抵抗体は、Fe-Cr合金、Cu-Ni合金およびCu-Mn-Ni合金のいずれかであることを特徴とする請求項3に記載のシャント抵抗器。 【請求項5】 前記第1接続部および前記第2接続部は、前記接続対象に沿って延設され、 前記第1接続部の接続面と反対の面(13b)、および、前記第2接続部の接続面と反対の面(14b)に、前記メッキ層が形成され、 第1センスボンディングワイヤ(50)が、前記第1接続部の接続面と反対の面に、電気的に接続され、 第2センスボンディングワイヤ(51)が、前記第2接続部の接続面と反対の面に、電気的に接続されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のシャント抵抗器。 【請求項6】 前記第1センスボンディングワイヤおよび第2センスボンディングワイヤは、AlまたはAl合金からなることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のシャント抵抗器。 【請求項7】 請求項5に記載のシャント抵抗器の実装方法であって、 所定形状を有する前記シャント抵抗器を、前記接続対象にリフローはんだ付けするはんだ付け工程と、 該はんだ付け工程の後に、前記第1センスボンディングワイヤおよび前記第2センスボンディングワイヤを前記シャント抵抗器に電気的に接続するボンディング工程と、を有し、 該ボンディング工程は、 前記第1接続部における接続面と反対の面のうち、前記第1センスボンディングワイヤが接続される第1座標を決定するための原点を決定する原点決定工程と、 該原点決定工程の後、前記原点に基づいて、前記第1座標を決定する第1座標決定工程と、 該第1座標決定工程の後、前記第1座標から所定距離を有し、第2センスボンディングワイヤが接続される第2座標を決定する第2座標決定工程と、 該第2座標決定工程の後、前記第1座標の位置に、前記第1センスボンディングワイヤを接続し、前記第2座標に前記第2センスボンディングワイヤを接続するワイヤ接続工程と、を備えることを特徴とするシャント抵抗器の実装方法。」 第3 当審の拒絶理由通知について 1.平成28年11月25日付け当審の拒絶理由の概要 本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 ・請求項 1-7 ・備考 本願の図1、図3、図6、図9、図12やそれに関連する発明の詳細な説明を参照すると、シャント抵抗器の抵抗温度係数(TCR)を減少させるために、抵抗体の表面にTCRが負の値を有する「NiとPを含むアモルファスの合金(Ni-P系合金)」からなるメッキ層を形成することが本願発明の要旨と認められる。しかしながら、請求項1には、「Ni-P系メッキ層」は記載されているものの、どのようなNi-P系メッキ層であるのか記載がなく、TCRを減少させることができるものであるとは限定されていない。 また、請求項1の「前記抵抗体の表面における接続対象が対向する側の面および反対の面の全面にNi-P系メッキ層が形成され」における「接続対象」と接続されるのは第1接続部および第2接続部であるから(請求項1の4~5行目を参照。)、この請求項1の記載では、Ni-P系メッキ層が形成される範囲として「架橋部、第1連結部および第2連結部」が含まれないものと認められる。そうすると、メッキ層の形成範囲が本願明細書および図面に記載されたものと異なる。 よって、請求項1ないし7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて請求するものであるから、発明の詳細な説明に記載したものではない。 2.当審の拒絶理由通知に対する判断 当審の拒絶理由通知に対して、平成29年1月12日付けの手続補正により特許請求の範囲が補正された。(上記「第2 本願発明」における請求項1の下線部が補正箇所を示す。) 請求項1において、抵抗体の表面に形成するメッキ層の材料を「Ni-P系」から「アモルファスNi-P系合金」に補正した。これにより、抵抗体表面にTCRが負の値を有するメッキ層が形成されることが明確になったので、拒絶の理由は解消された。 また、請求項1において、メッキ層が形成される抵抗体の箇所を「接続対象に対向する側の面およびその反対の面の全面」から「第1接続部、第2接続部、架橋部、第1連結部および第2連結部における両側の全面」に補正した。これにより、抵抗体の全ての表面にメッキ層が形成されることが明確になったので、拒絶の理由は解消された。 したがって、当審の拒絶理由で指摘した不備な点は全て解消され、本願発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているものと認められる。 第4 原査定の理由について 1.原査定の理由の概要 請求項1、3-7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項 1、3-7 ・引用例 1-5 引用例1:特開2001-168267号公報 引用例2:特開2002-057009号公報 引用例3:特開2011-249475号公報 引用例4:特開2002-208501号公報 引用例5:特開2001-028421号公報 2.原査定の理由に対する当審の判断 (1)引用例1の記載事項 「【0016】この一方の配線パターン11aと他方の配線パターン11bとの間に、サイリスタのメイン電流または電圧を検出するためのシャント抵抗14が跨って配設されている。このシャント抵抗14は、銅を主成分としてその抵抗値に応じて所定の金属成分を添加した合金製の帯状金属板であり、その両端部をほぼ直角に同一方向に折り曲げ、さらに、ほぼ直角に外側に折り曲げた形状を有する。このシャント抵抗14の一端を一方の配線パターン11aに半田付けして半導体チップ1のカソード電極と電気的に接続し、シャント抵抗14の他端を他方の配線パターン11bに半田付けして外部リード線12と電気的に接続する。」 引用例1には、上記段落【0016】の記載および図2によれば、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「一方の配線パターンと他方の配線パターンとの間に跨がって配設されているシャント抵抗であって、前記シャント抵抗は、その両端部をほぼ直角に同一方向に折り曲げ、さらに、ほぼ直角に外側に折り曲げた形状を有し、前記シャント抵抗の一端を前記一方の配線パターンに半田付けし、前記シャント抵抗の他端を前記他方の配線パターンに半田付けしているシャント抵抗。」 (2)対比 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と引用発明とを対比する。 ア.引用発明の「一方の配線パターン」及び「他方の配線パターン」は、本願発明1の「接続対象」に相当し、互いに電気的に分離しているものである。また、引用発明の「シャント抵抗」は、本願発明1の「抵抗体/シャント抵抗器」に相当する。 よって、引用発明の「一方の配線パターンと他方の配線パターンとの間に跨がって配設されているシャント抵抗」は、本願発明1の「電気的に分離された2つの接続対象を電気的に接続する抵抗体」に相当する。 イ.引用発明の「前記シャント抵抗の一端を前記一方の配線パターンに半田付けし、前記シャント抵抗の他端を前記他方の配線パターンに半田付けしている」ことは、シャント抵抗が配線パターンに接続される部分を当然に備えているから、本願発明1の「一方の前記接続対象と接続される第1接続部、および、他方の前記接続対象と接続される第2接続部」を有していることに相当する。 ウ.シャント抵抗体の表面において、本願発明1は「前記第1接続部、前記第2接続部、前記架橋部、前記第1連結部および前記第2連結部における両面の全面に、アモルファスNi-P合金のメッキ層が形成され」ているのに対し、引用発明は、その旨の特定がされていない。 エ.引用発明の「前記シャント抵抗は、その両端部をほぼ直角に同一方向に折り曲げ、さらに、ほぼ直角に外側に折り曲げた形状を有し」は、引用例1の図2を参照すると、本願発明1の「前記第1接続部および前記第2接続部から離れて形成される架橋部と、前記第1接続部と前記架橋部とを連結する第1連結部、および、前記第2接続部と前記架橋部とを連結する第2連結部、とを有する」に相当する。 ただし、シャント抵抗体の形状として、本願発明1は、「はんだを介して前記接続対象に接続される前記第1接続部の接続面と、前記第1連結部のうち、前記第1接続部の接続面と連続する第1内面との成す角が、90度より大きく、且つ100度以下とされ、はんだを介して前記接続対象に接続される前記第2接続部の接続面と、前記第2連結部のうち、前記第2接続部の接続面と連続する第2内面との成す角が、90度より大きく、且つ100度以下とされ」ているのに対し、引用発明は、ほぼ直角で折り曲げられたとあるだけで具体的な角度が特定されていない。 そうすると、本願発明1と引用発明とは以下の点で一致ないし相違する。 <一致点> 「電気的に分離された2つの接続対象を電気的に接続する抵抗体を有し、 該抵抗体が、 一方の前記接続対象と接続される第1接続部、および、他方の前記接続対象と接続される第2接続部と、 前記第1接続部および前記第2接続部から離れて形成される架橋部と、 前記第1接続部と前記架橋部とを連結する第1連結部、および、前記第2接続部と前記架橋部とを連結する第2連結部、とを有するシャント抵抗器。」 <相違点1> シャント抵抗体の表面において、本願発明1は「前記第1接続部、前記第2接続部、前記架橋部、前記第1連結部および前記第2連結部における両面の全面に、アモルファスNi-P合金のメッキ層が形成され」ているのに対し、引用発明は、その旨の特定がされていない。 <相違点2> シャント抵抗体の形状として、本願発明1は、「はんだを介して前記接続対象に接続される前記第1接続部の接続面と、前記第1連結部のうち、前記第1接続部の接続面と連続する第1内面との成す角が、90度より大きく、且つ100度以下とされ、はんだを介して前記接続対象に接続される前記第2接続部の接続面と、前記第2連結部のうち、前記第2接続部の接続面と連続する第2内面との成す角が、90度より大きく、且つ100度以下とされ」ているのに対し、引用発明は、ほぼ直角で折り曲げられたとあるだけで具体的な角度が特定されていない。 (3)判断 そこで、相違点1について検討する。 原査定で引用された引用例2ないし5には、以下の技術事項が記載されている。 引用例2(段落【0003】を参照。)には、シャント抵抗器は、金属製の抵抗部および2つの電極部から構成され、抵抗部は、Cu-Ni合金などの金属合金が用いられ、電極には、はんだ付け性を考慮してはんだめっきが施されていることが記載されている。 引用例3(段落【0053】を参照。)には、電力半導体装置におけるチップ抵抗の端面電極は、はんだ接合に適するNi-Pめっき層からなることが好ましいことが記載されている。しかしながら、Ni-Pめっき層が、アモルファス合金(負のTCR)のものであるかは記載がない。 引用例4(段落【0028】ないし【0041】を参照。)には、抵抗体の下面にはんだ材の膜、上面にはボンディング電極を形成することが記載されている。 引用例5(段落【0003】、図2(b)を参照。)には、絶縁基板に固着された銅回路に分流器(抵抗体に相当。)の両端がはんだ付けされていること、また、分流器の形状が記載されている。 しかしながら、引用例2ないし5には、TCRを低減することを目的として、シャント抵抗体の両面全体にメッキ層を形成すること、及びメッキとしてアモルファスNi-P合金を使用することは何ら記載されておらず、また、示唆する記載もない。 そうすると、引用発明に引用例2ないし5の技術事項を適用したとしても、相違点1の構成とすることは容易とはいえない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 そして、本願発明1は、シャント抵抗器全体のTCRを所望の値に調節することができるという効果を奏するものである。 また、請求項2ないし7は、請求項1をさらに限定した発明であるから、本願の請求項2ないし7に係る発明も、本願発明1(請求項1)と同様に、引用例1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、本願の請求項1ないし7に係る発明は、引用例1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-006033

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