特許拒絶査定不服審判
2016-006021
無人搬送車の駆動システム
- 審判番号
- 2016-006021
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-286307外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年04月22日
- 審決日
- 2017年02月27日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社豊田自動織機
- 【請求人代理人】恩田 誠
- 【請求人代理人】恩田 博宣
- 分類
- P18 .121-WY (B60K) / P18 .537-WY (B60K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-286307「無人搬送車の駆動システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月10日出願公開、特開2014-128983、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件出願は、平成24年12月27日の出願であって、平成27年11月2日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成27年12月24日に意見書が提出されたが、平成28年1月25日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して平成28年4月22日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において平成28年12月14日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、これに対して平成29年1月18日に意見書が提出されるとともに同日に明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本件出願の請求項1及び2に係る発明(以下、順に「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、平成29年1月18日に提出された手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認める。
「 【請求項1】
エンジン、前記エンジンの駆動力で発電可能であるとともに、前記エンジンを回転させる第1発電電動機、走行に用いられるとともに、回生制動を行うことにより発電可能な第2発電電動機、及び前記第1発電電動機と前記第2発電電動機に電力を供給可能であるとともに前記第2発電電動機にて発生し得る回生電力により充電可能な蓄電装置を有する無人搬送車の駆動システムであって、
前記無人搬送車の始動時に、前記蓄電装置の内部抵抗を導出する内部抵抗導出部と、
前記無人搬送車の積載重量を把握する重量把握部と、
前記無人搬送車の走行パターンを把握する走行パターン把握部と、
前記積載重量及び前記走行パターンに基づいて、予め定められた特定区間における前記蓄電装置の電力変動量を推定する推定部と、
前記推定部により推定された前記電力変動量と前記蓄電装置の内部抵抗とに基づいて、前記蓄電装置の電圧の変動量を算出する電圧変動量算出部と、
前記無人搬送車が前記特定区間に到達する前に、前記蓄電装置の電圧を、前記電圧変動量算出部により算出された前記蓄電装置の電圧の変動量と前記蓄電装置の電圧の許容範囲とに基づいて設定される目標電圧に近づけるように調整する電圧調整部と、
を備えていることを特徴とする無人搬送車の駆動システム。
【請求項2】
前記第1発電電動機は、前記蓄電装置の電力を用いて前記エンジンを回転可能に構成されており、
前記内部抵抗導出部は、前記エンジンの回転が調整されることにより生じる前記蓄電装置の電流の変動に対する前記蓄電装置の電圧の変動を測定し、その測定結果から前記蓄電装置の内部抵抗を導出する請求項1に記載の無人搬送車の駆動システム。」
第3 原査定の理由について
1 原査定の理由
(1)平成27年11月2日付けで通知した拒絶理由の内容
平成27年11月2日付けで通知した拒絶理由の内容は、次のとおりである。
「この出願は、次の理由によって拒絶をすべきものです。これについて意見がありましたら、この通知書の発送の日から60日以内に意見書を提出してください。
理由
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1
・引用文献等 1,2
・備考
引用文献1には、無人搬送車の駆動システムの構成、特に走行パターンと積載荷重とを考慮しつつ充放電を制御することにより蓄電装置のSOCを所定のレベルに調整することが開示若しくは示唆されている(例えば段落[0024],[0030],[0034],図3,6,7等参照)。蓄電装置のSOCは蓄電装置の電圧と相関するものである。
引用文献2には、電圧が電力と蓄電装置の内部抵抗から求められることが開示若しくは示唆されている(例えば段落[0021]-[0023]等参照)。
したがって、引用文献1に記載の無人搬送車の駆動システムにおいて、SOCに代えて電圧を調整し、その際に引用文献2に記載の技術事項を参照して、前記電圧を電力と内部抵抗から求める構成とすることに格別の困難性があるとは認められない。
よって、請求項1に係る発明は、引用文献1,2に記載の技術事項から当業者が容易になし得たもので得ある。
・請求項 2
・引用文献等 1,2
・備考
引用文献1,2の認定については、上記記載を参照のこと。
なお、引用文献1,2に記載の事項からみて、「無人搬送車の始動時に、前記蓄電装置の内部抵抗を導出する内部抵抗導出部を備えている」とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。
・請求項 3
・引用文献等 1,2
・備考
引用文献1,2の認定については、上記記載を参照のこと。
なお、引用文献2に、内部抵抗が電流、電圧のそれぞれの変動から求めている例が開示若しくは示唆されている(例えば段落[0022]参照)以上、「エンジンの回転が調整されることにより生じる前記蓄電装置の電流の変動に対する前記蓄電装置の電圧の変動を測定し、その測定結果から前記蓄電装置の内部抵抗を導出する」とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項であるといえる。
<引用文献等一覧>
1.特開2004-153938号公報
2.特開2006-049198号公報」
(2)原査定の内容
原査定の内容は、次のとおりである。
「この出願については、平成27年11月 2日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。
備考
●理由(特許法第29条第2項)について
・請求項 1
・引用文献等 1-4
引用文献1には、本願の「無人搬送車の駆動システム」に相当するものの基本構成、具体的には、ハイブリッド車両からなる無人搬送車の駆動システムにおいて、走行パターン(加速、減速、定速走行)と積載重量(空車、積車)とを考慮して所定の電力を供給し、この電力を時間積算し充放電量(SOCの変動量)を算出し、当該充放電量が残容量(いわゆるSOCの下限値)を下回る場合にはバッテリからの電力アシストを停止しエンジンの回転数を制御して発電機からの発電電力のみで走行し、その走行中又は停車中に発電機からの電力で回復充電をかけ、充放電量が残容量を下回っていない場合にはバッテリからの放電電力のみによって走行させることが開示若しくは示唆されている(請求項1,2,段落[0024],[0030]-[0034],図3,6,7等参照)。なお、上記それぞれの走行パターンで走行する区間が、本願の「特定区間」に対応する。また上記SOCの変動量は、本願の「電圧の変動量」に対応する。
ハイブリッド車両の技術分野において、バッテリのSOC(電圧に相関するもの)が適切な範囲(上限値と下限値の間)となるよう、エンジンや発電機の運転が制御されることは、一般的に知られており、また一般的に行われていることでもある(文献を示すまでもなく技術常識であると思量するが、必要であれば、新たに追加する引用文献3の段落[0011]-[0037]、新たに追加する引用文献4の段落[0009]-[0039]等参照)。
引用文献1には、バッテリのSOCの下限値についてしか明示的に記載されていないものの、上記技術常識に照らせば、引用文献1に記載の「無人搬送車の駆動システム」においても、当然、バッテリの上限値は存在し、バッテリのSOCが適切な運転範囲となるよう、エンジン及び発電機が制御されているというのが相当である。
そして引用文献2には、電圧が電力と蓄電装置の内部抵抗から求められることが開示若しくは示唆されている(例えば段落[0021]-[0023]等参照)。
引用文献1,2に記載のものは、ハイブリッド車両という同一の技術分野に属し、当該技術分野において、バッテリのSOC(電圧に相関するもの)が適切な範囲(上限値と下限値の間)となるよう、エンジンや発電機の運転が制御されることは、上記のとおり、技術常識であるから、引用文献1に記載の無人搬送車の駆動システムにおいて、無人搬送車が特定区間に到達する前に蓄電装置の電圧を調整し、その際に引用文献2に記載の技術事項を参照して、電圧を電力と内部抵抗から求める構成とすることに格別の困難性があるとは認められない。
ところで出願人は、上記意見書において、「引用文献1において、走行パターン及び積載荷重を考慮している対象は、SOCではなく所要電力であり、バッテリ13のSOCの制御については、最低限の充放電量を確保するために、走行パターンと積載荷重とに関わらず、充放電量が下限値を下回った場合には放電を停止し充電を行うという技術が開示されているのみです。このため、引用文献1には、走行パターンと積載荷重とを考慮して蓄電装置の電圧を調整することが開示若しくは示唆されているとは言えません。」と述べている。
しかしながら、上記のとおり、走行パターン及び積載荷重を考慮した所要電力を時間積算したものがバッテリの充放電量(SOCの変動量)であり、しかもSOCは電圧と相関するものであるから、バッテリの電圧の制御において走行パターン及び積載荷重が全く無関係であるとはいえない。したがって出願人の上記意見書による主張は適切であるとはいえず採用できない。
よって、請求項1に係る発明は、引用文献1,2に記載の技術事項から当業者が容易になし得たものであるといわざるを得ない。
・請求項 2,3
・引用文献等 1-4
上記と、上記拒絶理由通知書で通知した理由を参照されたい。
<引用文献等一覧>
1.特開2004-153938号公報
2.特開2006-049198号公報
3.特開平07-131905号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
4.特開平08-126116号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)」
2 原査定の理由についての判断
2-1 引用刊行物
(1)刊行物1
ア 刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物であって、本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-153938号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る大型運搬車両の一実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。本実施形態の大型運搬車両は、前記従来例で挙げたものと同じ型のキャリヤであり、図1及び図2は、その側面図又は平面図を示したものである。本実施形態のキャリヤ1も、荷台2が10機の走行装置3にジャッキアップ機構を備えた多軸の大型運搬車両であり、アクセペダルや昇降レバーなどの操作によって、荷台2の昇降や走行モータ5の駆動による前進・後退などが行われる。
【0017】
次に図3は、本実施形態のキャリヤ1における駆動システムを示したブロック図である。このキャリヤ1でも、エンジン11と発電機12とが機械的に直結され、その4極のブラシレス交流発電機から発生する電力によって走行モータ5及び操舵モータ6を駆動させるよう構成されている。しかし、本実施形態では、発電機から得られる電力のみによって走行モータなどを駆動させていた従来のものとは異なり、バッテリ13を備えることによって充電電力を利用して発電機12をアシストするようにしたハイブリッド式のキャリヤを構成している。
【0018】
すなわち、図3に示す本実施形態の駆動システムでは、エンジン11の駆動による機械エネルギーから発電機12が電気エネルギーを発生し、この電気エネルギーをパワーアシストコンバータ14及びインバータ15を介して走行モータ5及び操舵モータ6へ送り、そこで機械エネルギーに変換して車両を駆動させるシリーズハイブリッドを構成している。発電機12に接続されたパワーアシストコンバータ14は、交流電力を直流電力に変換し、そのパワーアシストコンバータ14に接続されたインバータ15が直流電力を交流電力に変換して電力を走行モータ5及び操舵モータ6に供給するようにしている。
【0019】
こうして発電機12からの交流電力を一旦パワーアシストコンバータ14で直流電力に変換し、これをインバータ15に送って再び交流電力に変換する構成をとっているのは、パワーアシストコンバータ14で変換した直流電力をインバータ15によって目的とする周波数及び電圧の交流電力に変換することによって、最終的な出力を発電機出力電圧と周波数に依存しなくするためである。ここでパワーアシストコンバータ14は、AC220~440VをDC280V~380Vに変換する機能をもつものであり、具体的には、図4にブロック図で示すような構成をしている。
【0020】
パワーアシストコンバータ14は、交流電力を直流電力に変換する前記変換機能をもったコンバータ21を備えており、そのコンバータ21が、キャリヤコントローラ16からの指令信号によって駆動制御するための制御回路22に接続されている。また、パワーアシストコンバータ14は、制御回路22からの制御信号によって駆動するゲート23を有し、発電機12で発電された電力と走行モータ5を発電機12として機能させて得られる回生電力とを充電できるように、そのパワーアシストコンバータ14にはゲート23を介してバッテリ13が接続されている。
【0021】
図3に戻って、発電機12には、走行装置3の油圧シリンダなどに作動油を送り込む油圧ポンプ駆動用モータ17が接続されている。そしてエンジン11には、その回転数の調整を行うガバナ18が接続されており、また発電機12は、界磁電流19によって界磁巻線を可変励磁することによって出力電圧が調整される。発電機12は界磁電流を一定とし、その出力(電圧、周波数)が回転数によって変化するようになっており、本実施形態では1500rpmで発電機出力が最大となるように界磁電流が調整されている。
【0022】
パワーアシストコンバータ14の入力範囲は、図5に示すように、その発電機12によってエンジン11の回転数750rpmで発生する周波数25Hz、電圧220Vの出力から、その回転数1500rpmで出力される周波数50Hz、電圧440Vの出力の間である。
一方、アクセルペダル20の踏み込み量や、ハンドルの回転に応答して各種制御指令信号を送信するキャリヤコントローラ16が、前述したようにパワーアシストコンバータ14に接続され、さらにインバータ15やガバナ18にも接続されている。
」(段落【0016】ないし【0022】)
(イ)「【0023】
次に、本実施形態におけるキャリヤ1の走行について説明する。本実施形態のキャリヤ1は、発電機12で発電された電力に加え、適宜バッテリ13からの放電電力を利用して効率の良い走行を可能としたものである。そこで、キャリヤ1が製鉄所構内において荷物を運搬する場合について、例えば図6に示すように積車状態と空車状態とで往復する運転パターンを想定し、このときの所要電力をシュミレーションして、本実施形態のキャリヤ1と従来のキャリヤ100とのバッテリ消費量や燃料消費量について確認を行った。
【0024】
図6に示すキャリヤ1の運転パターンは、加速後、定速走行し、そして減速するという走行を繰り返すことにより所定の区間を往復する場合を想定している。また、キャリヤ1の定速走行時の速度は、大型運搬物を載せて走行する車両であるためその安定を図る必要から、空車状態でも時速25kmであり、積載時には時速15kmと更に速度を落として一定速度走行を行う。
【0025】
そして本実施形態のキャリヤ1では、先ず負荷のかかる加速時には発電機12で発電された電力に加えてバッテリ13から供給される放電電力のアシストを行う一方、減速時には走行モータ5からの回生エネルギをバッテリ13に送って充電を行うようにしている。そして、定速走行時には、積車状態と空車状態などの違いにより、発電機12で発電した電力のみによって走行する場合と、発電機12で発電した電力によって走行しながらその電力をバッテリ13へ充電する場合、更にバッテリ13からの放電電力のみで走行を行う場合とに分けている。
【0026】
図7は、こうした本実施形態のハイブリッド式のキャリヤ1における所要電力チャートを示した図であり、同じように従来の電動式のキャリヤ100における所要電力チャートを図8に示した。そこで、以下にこれらを比較しながら説明する。
ハイブリッド式のキャリヤ1と電動式のキャリヤ100は、ともに図8に示すように、加速時に105kWの電力を必要とし、定速走行時には、積車状態で102kW、空車状態では43kWの電力を必要とする。この場合の消費電力は、走行モータ5の駆動に消費だけでなく、操舵モータ6の駆動やその他の制御系消費電力も含まれている。
【0027】
電動式のキャリヤ100のように発電機106に直接インバータ131を接続する場合(図11参照)、走行モータ5などへ出力される電力の電圧・周波数が発電機出力電圧と周波数に依存するため、図8に示すように加速、定速そして減速のいずれの走行状態であってもエンジン11の回転数を常に1500rpm又は1800rpmに維持しなければならない。そして、これはキャリヤが積車状態であっても空車状態であっても変わることはない。
【0028】
これに対して本実施形態のハイブリッド式のキャリヤ1では、図7に示すように、例えば加速時には、発電機12側からの57kWの電力とバッテリ13からの48kWの電力で所要電力を得るようにしている。これはキャリヤコントローラ16からパワーアシストコンバータ14に対してバッテリ許容放電量が予め設定され、加速時に必要な所要電力の105kWからバッテリ許容放電電力分の48kWを差し引いた電力、すなわち57kWの電力を発電機12が発電するように、エンジン11の回転数がキャリヤコントローラ16からガバナ18へ送られる指令信号によって制御される。
【0029】
エンジン11の回転数を調整するガバナ18への指令信号は、キャリヤコントローラ16内に回転数-出力特性マップを有しており、加速時には860rpmの回転数でエンジン11を回転させる指令信号が選択され、その指令信号がキャリヤコントローラ16からガバナ18へと送られる。
一方、インバータ15へは、アクセルペダル20の踏み込み量に応じたトルク指令信号がキャリヤコントローラ16から出力され、予めトルク指令に対応した速度マップの参照速度とインバータ15からの実速度情報が平衡したポイントで、各種トルク指令出力が保持される。
【0030】
走行に必要な電力は積載荷重によって異なるが、ここでは単に積車と空車の区別のみによって判別している。これは、負荷の違いによってインバータ15への供給電力が異なるからであり、積車状態では102kW、空車状態では43kWの電力を要する。
【0031】
キャリヤコントローラ16は、パワーアシストコンバータ14内の制御回路22を通してバッテリ電流信号を検出し、これを時間積分することによってバッテリ充放電量を算出する。そのため任意に設定された残容量レベルを下回った場合には、バッテリ13からの電力アシストを停止して発電機12からの発電電力のみによって走行し、その走行中又は停止中に発電機12からの電力によって回復充電をかける。そのため、例えば積車状態で定速走行するときに充放電量が残容量レベルを下回っている場合には、図7に示すようにエンジン11の回転数をパワーアシストコンバータ14の入力範囲上限の1500rpmまで上げ、発電機12のみから102kWの所要電力を得る。
【0032】
一方、空車状態のときであって、充放電量が残容量レベルを下回っていない場合には、パワーアシストコンバータ14の入力範囲を下回る650rpmにエンジン11の回転数に落としてアイドリング状態にし、バッテリ13からの放電電力のみによって走行させるようにもする。
更には、空車状態のときであって、充放電量が残容量レベルを下回っている場合には、充電しながら走行すべくエンジン11の回転数を1200rpmまで上げ、発電機12からの発電電力を走行に使用するとともに、バッテリ13への充電を行うようにもする。
【0033】
そして次に、減速時には走行モータ5への電力供給が必要なくなるので、操舵モータ6の駆動やその他の制御系消費電力にはバッテリ13の放電電力が使用される。そのため、減速時にはエンジン11は回転数を650rpmにまで落としてアイドリング状態にする。なお、キャリヤ1を一旦停止させた場合も同様にエンジン11はアイドリング状態にする。
そして、減速時にブレーキ力を電力に回生して蓄電すべく、回生制動時は、走行モータ5に発生した制動電力をインバータ15を介して、パワーアシストコンバータ14からバッテリ13に回生する。
【0034】
従って、従来は、ある決まった周波数の交流電力を出力するためには、発電機の極数とエンジン回転数が限定されていたため運転効率が悪かったが、本実施形態では、図7に示すようにバッテリ13からの放電電力を利用し、また適宜充電を行いながらエンジンを効率の最も高い点で運転することによって、エンジンの燃費を大きく向上させることができるようになった。具体的には、電動式のキャリヤ100とハイブリッド式のキャリヤ1との比較すると、10パーセント以上の燃費向上が可能となる結果が得られた。
【0035】
また、キャリヤ1では、バッテリ13からの放電電力によって走行する場合には、エンジン11の回転数を650rpmにまで落としたアイドリング状態にすることができるため、特に建家のように閉じられた空間内では、エンジン11の回転数を落として騒音や排ガスを抑えた走行が可能になる。
更に、発電機の出力を大きく取りたい場合は、極数が限定されるため、従来のキャリヤ100ではエンジンの排気量や発電機容量の大きなものが設置され、そのエンジン・発電機が大型化・高重量化する傾向にあったが、本実施形態では、バッテリからの電力アシストによって所要の電力を得ることができるため、コンパクト化が可能になった。具体的には、エンジン排気量で25パーセント、発電機容量で40パーセントの削減になった。」(段落【0023】ないし【0035】)
(ウ)「【0036】
以上、大型搬送車両の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、大型搬送車両の一実施形態としてキャリヤを示して説明したが、本発明はこの他にも自動で搬送を行うAGVなどへの応用も可能である。」(段落【0036】)
イ 上記ア及び図面の記載から分かること
上記ア及び図1ないし7の記載から次のことが分かる。
(ア)上記ア(ア)ないし(ウ)並びに図1ないし7の記載によれば、刊行物1には、AGVの駆動システムが記載されていることが分かる。
(イ)上記ア(ア)(特に、段落【0017】、【0018】及び【0020】)並びに図3及び4の記載によれば、AGVの駆動システムは、エンジン11、前記エンジン11の駆動力で発電可能である発電機12、走行に用いられるとともに、回生制動を行うことにより発電可能な走行モータ5、及び前記走行モータ5に電力を供給可能であるとともに前記走行モータ5にて発生し得る回生電力により充電可能なバッテリ13を有することが分かる。
(ウ)上記ア(イ)(特に、段落【0023】ないし【0025】及び【0030】ないし【0032】)及び図3の記載によれば、AGVの駆動システムは、AGVの積車状態と空車状態のいずれかの状態を把握するキャリヤコントローラ16における積載状態の把握部を備えることが分かる。
(エ)上記ア(イ)(特に、段落【0023】ないし【0026】)並びに図6及び7の記載によれば、AGVの駆動システムは、AGVの運転パターンを把握するキャリヤコントローラ16における運転パターンの把握部を備えることが分かる。
(オ)上記ア(イ)(特に、段落【0023】ないし【0026】)並びに図6及び7の記載によれば、AGVの駆動システムは、AGVの積車状態と空車状態のいずれかの状態及び運転パターンに基づいて、予め定められた特定区間における所要電力をシュミレーションするキャリヤコントローラ16におけるシュミレーション部を備えることが分かる。
(カ)上記ア(イ)(特に、段落【0023】ないし【0033】)及び図3ないし7の記載によれば、AGVの駆動システムは、予め定められた特定区間における所要電力を得るように、パワーアシストコンバータ14に対してバッテリ許容放電量を予め設定するとともに、発電機12の発電電力を制御し、また、算出したバッテリ充放電量が任意に設定された残容量レベルを下回っている場合には、前記発電機12からの発電電力によって走行モーター5への電力供給を行うとともに、バッテリ13への充電を行い、さらに、回生制動時は、前記走行モータ5に発生した制動電力をインバータ15を介して、前記パワーアシストコンバータ14から前記バッテリ13に回生するように制御するキャリヤコントローラ16における制御部を備えることが分かる。
ウ 引用発明
上記ア及びイを総合して、本願発明1の表現に倣って整理すると、刊行物1には、次の事項からなる発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「エンジン11、前記エンジン11の駆動力で発電可能である発電機12、走行に用いられるとともに、回生制動を行うことにより発電可能な走行モータ5、及び前記走行モータ5に電力を供給可能であるとともに前記走行モータ5にて発生し得る回生電力により充電可能なバッテリ13を有するAGVの駆動システムであって、
前記AGVの積車状態と空車状態のいずれかの状態を把握するキャリヤコントローラ16における積載状態の把握部と、
前記AGVの運転パターンを把握するキャリヤコントローラ16における運転パターンの把握部と、
前記AGVの積車状態と空車状態のいずれかの状態及び前記運転パターンに基づいて、予め定められた特定区間における所要電力をシュミレーションするキャリヤコントローラ16におけるシュミレーション部と、
前記予め定められた特定区間における所要電力を得るように、パワーアシストコンバータ14に対してバッテリ許容放電量を予め設定するとともに、前記発電機12の発電電力を制御し、また、算出したバッテリ充放電量が任意に設定された残容量レベルを下回っている場合には、前記発電機12からの発電電力によって前記走行モーター5への電力供給を行うとともに、前記バッテリ13への充電を行い、さらに、回生制動時は、前記走行モータ5に発生した制動電力をインバータ15を介して、前記パワーアシストコンバータ14から前記バッテリ13に回生するように制御するキャリヤコントローラ16における制御部と、
を備えているAGVの駆動システム。」
(2)刊行物2
ア 刊行物2の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された刊行物であって、本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-49198号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0021】
ステップS60では、車両走行時の目標発電電圧Vrunを設定する。この目標発電電圧Vrunは、車両走行時に、エンジン10の駆動力とともに、モータ5の駆動力が必要となって、組電池1の放電が行われた場合でも、各セルの電圧をバイパス作動電圧Vbpsより高い電圧に維持できるための電圧であり、バイパス作動電圧Vbpsに対して十分高い電圧に設定する。この目標発電電圧Vrunに対応する目標発電電力を以下の手順により演算する。すなわち、目標発電電力を演算する時点の組電池1のSOCに対応する開放電圧値Voと、目標電圧値Vrunとに基づいて、目標上昇電圧Vup=Vrun-Voを算出する。組電池1の内部抵抗をRとすると、電圧Vupおよび内部抵抗Rに基づいて決定される電流Iupは、Iup=Vup/Rとなる。
【0022】
なお、組電池1の内部抵抗Rは、様々な方法により算出することができるが、電圧の変化分ΔVおよび電流の変化分ΔIを求めることにより、次式(1)にて算出することができる。式(1)にて算出される内部抵抗Rは、組電池1の温度および組電池1の劣化を考慮した値、すなわち、組電池の温度および劣化度合いに基づいて補正された値となっている。
R=ΔV/ΔI …(1)
【0023】
組電池1の電圧をVup上昇させるのに必要な目標発電電力Pupは、Pup=Vup×Iupとなる。上述したように、内部抵抗Rは、組電池1の温度および劣化を考慮した値になっているため、目標発電電力Pupも組電池1の温度および劣化を考慮した値となっている。」(段落【0021】ないし【0023】)
イ 刊行物2記載の技術事項
上記アの記載によれば、刊行物2には、次の技術事項(以下、「刊行物2記載の技術事項」という。)が記載されていると認める。
「組電池1の上昇電圧Vupを、目標発電電力Pupと組電池1の内部抵抗Rとに基づいて算出できること。」(なお、Vup=(Pup*R)1/2 で表せる。)
2-2 対比
本願発明1と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・引用発明における「エンジン11」は、本願発明1における「エンジン」に相当し、以下同様に、「走行モータ5」は「第2発電電動機」に、「バッテリ13」は「蓄電装置」に、「AGVの積車状態と空車状態のいずれかの状態」は「積載重量」に、「キャリヤコントローラ16における積載状態の把握部」は「重量把握部」に、「AGVの運転パターン」は「走行パターン」に、「キャリヤコントローラ16における運転パターンの把握部」は「走行パターン把握部」に、「シュミレーションする」は「推定する」に、「キャリヤコントローラ16におけるシュミレーション部」は「推定部」に、それぞれ相当する。
・引用発明における「AGV」は、Automatic Guided Vehicleの略称で、無人走行する搬送用台車を意味することから、本願発明1における「無人搬送車」に相当する。
・引用発明における「エンジン11の駆動力で発電可能である発電機12」は、本願発明1における「エンジンの駆動力で発電可能であるとともに、前記エンジンを回転させる第1発電電動機」に、「エンジンの駆動力で発電可能である第1の発電機」という限りにおいて一致する。
・引用発明における「前記走行モータ5に電力を供給可能であるとともに前記走行モータ5にて発生し得る回生電力により充電可能なバッテリ13」は、本願発明1における「前記第1発電電動機と前記第2発電電動機に電力を供給可能であるとともに前記第2発電電動機にて発生し得る回生電力により充電可能な蓄電装置」に、「前記第2発電電動機に電力を供給可能であるとともに前記第2発電電動機にて発生し得る回生電力により充電可能な蓄電装置」という限りにおいて一致する。
・引用発明における「前記AGVの積車状態と空車状態のいずれかの状態及び前記運転パターンに基づいて、予め定められた特定区間における所要電力をシュミレーションする」は、本願発明1における「前記積載重量及び前記走行パターンに基づいて、予め定められた特定区間における前記蓄電装置の電力変動量を推定する」に、「前記積載重量及び前記走行パターンに基づいて、予め定められた特定区間における所定の電力についての変量を推定する」という限りにおいて一致する。
そして、引用発明において、「前記AGVの積車状態と空車状態のいずれかの状態及び前記運転パターンに基づいて、予め定められた特定区間における所要電力をシュミレーションするキャリヤコントローラ16におけるシュミレーション部」と、「前記予め定められた特定区間における所要電力を得るように、パワーアシストコンバータ14に対してバッテリ許容放電量を予め設定するとともに、前記発電機12の発電電力を制御し、また、算出したバッテリ充放電量が任意に設定された残容量レベルを下回っている場合には、前記発電機12からの発電電力によって前記走行モーター5への電力供給を行うとともに、前記バッテリ13への充電を行い、さらに、回生制動時は、前記走行モータ5に発生した制動電力をインバータ15を介して、前記パワーアシストコンバータ14から前記バッテリ13に回生するように制御するキャリヤコントローラ16における制御部」と、を備えているは、本願発明1において、「前記無人搬送車の始動時に、前記蓄電装置の内部抵抗を導出する内部抵抗導出部」と、「前記積載重量及び前記走行パターンに基づいて、予め定められた特定区間における前記蓄電装置の電力変動量を推定する推定部」と、「前記推定部により推定された前記電力変動量と前記蓄電装置の内部抵抗とに基づいて、前記蓄電装置の電圧の変動量を算出する電圧変動量算出部」と、「前記無人搬送車が前記特定区間に到達する前に、前記蓄電装置の電圧を、前記電圧変動量算出部により算出された前記蓄電装置の電圧の変動量と前記蓄電装置の電圧の許容範囲とに基づいて設定される目標電圧に近づけるように調整する電圧調整部」とを、備えているに、「前記積載重量及び前記走行パターンに基づいて、予め定められた特定区間における所定の電力についての変量を推定する推定部」と、「前記推定部により推定された前記所定の電力についての変量に基づいて、所定の前記蓄電装置の放電又は充電についての電力制御をする制御部」と、を備えているという限りにおいて一致する。
したがって、両者は、
「エンジン、前記エンジンの駆動力で発電可能である第1の発電機、走行に用いられるとともに、回生制動を行うことにより発電可能な第2発電電動機、及び前記第2発電電動機に電力を供給可能であるとともに前記第2発電電動機にて発生し得る回生電力により充電可能な蓄電装置を有する無人搬送車の駆動システムであって、
前記無人搬送車の積載重量を把握する重量把握部と、
前記無人搬送車の走行パターンを把握する走行パターン把握部と、
前記積載重量及び前記走行パターンに基づいて、予め定められた特定区間における所定の電力についての変量を推定する推定部と、
前記推定部により推定された前記所定の電力についての変量に基づいて、所定の前記蓄電装置の放電又は充電についての電力制御をする制御部と、を備えている無人搬送車の駆動システム。」の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
「エンジンの駆動力で発電可能である第1の発電機」に関し、本願発明1においては、「エンジンの駆動力で発電可能であるとともに、前記エンジンを回転させる第1発電電動機」であるのに対して、引用発明においては、「エンジン11の駆動力で発電可能である発電機12」であるものの、エンジン11を回転させるものではない点(以下、「相違点1」という。)。
[相違点2]
「前記第2発電電動機に電力を供給可能であるとともに前記第2発電電動機にて発生し得る回生電力により充電可能な蓄電装置」に関し、本願発明1においては、「前記第1発電電動機と前記第2発電電動機に電力を供給可能であるとともに前記第2発電電動機にて発生し得る回生電力により充電可能な蓄電装置」であるのに対して、引用発明においては、「前記走行モータ5に電力を供給可能であるとともに前記走行モータ5にて発生し得る回生電力により充電可能なバッテリ13」であるものの、発電機12に電力を供給可能とはされていない点(以下、「相違点2」という。)。
[相違点3]
「前記積載重量及び前記走行パターンに基づいて、予め定められた特定区間における所定の電力についての変量を推定する推定部」と、「前記推定部により推定された前記所定の電力についての変量に基づいて、所定の前記蓄電装置の放電又は充電についての電力制御をする制御部」と、を備えているに関し、本願発明1においては、「前記無人搬送車の始動時に、前記蓄電装置の内部抵抗を導出する内部抵抗導出部」と、「前記積載重量及び前記走行パターンに基づいて、予め定められた特定区間における前記蓄電装置の電力変動量を推定する推定部」と、「前記推定部により推定された前記電力変動量と前記蓄電装置の内部抵抗とに基づいて、前記蓄電装置の電圧の変動量を算出する電圧変動量算出部」と、「前記無人搬送車が前記特定区間に到達する前に、前記蓄電装置の電圧を、前記電圧変動量算出部により算出された前記蓄電装置の電圧の変動量と前記蓄電装置の電圧の許容範囲とに基づいて設定される目標電圧に近づけるように調整する電圧調整部」とを、備えているのに対して、引用発明においては、「前記AGVの積車状態と空車状態のいずれかの状態及び前記運転パターンに基づいて、予め定められた特定区間における所要電力をシュミレーションするキャリヤコントローラ16におけるシュミレーション部」と、「前記予め定められた特定区間における所要電力を得るように、パワーアシストコンバータ14に対してバッテリ許容放電量を予め設定するとともに、前記発電機12の発電電力を制御し、また、算出したバッテリ充放電量が任意に設定された残容量レベルを下回っている場合には、前記発電機12からの発電電力によって前記走行モーター5への電力供給を行うとともに、前記バッテリ13への充電を行い、さらに、回生制動時は、前記走行モータ5に発生した制動電力をインバータ15を介して、前記パワーアシストコンバータ14から前記バッテリ13に回生するように制御するキャリヤコントローラ16における制御部」と、を備えている点(以下、「相違点3」という。)。
2-3 判断
(1)事案に鑑み、先ず相違点3について検討する。
相違点3の検討に先立ち、刊行物2記載の技術事項を本願発明1の用語又はその上位概念の用語で表現すると、刊行物2記載の技術における「組電池1の上昇電圧Vup」は本願発明1における「蓄電装置の電圧の変動量」に相当し、同様に、「目標発電電力Pup」は「電力変動量」に、「組電池1の内部抵抗R」は「蓄電装置の内部抵抗」に、それぞれ相当するから、「蓄電装置の電圧の変動量を、電力変動量と蓄電装置の内部抵抗とに基づいて算出できること。」ということができる。
また、エンジン、電動機(発電機)及び蓄電装置を備えたハイブリッド車両の駆動システムにおいて、蓄電装置の残容量(SOC)が適切な範囲となるように、また、回生電力が蓄電装置の充電許容レベルの範囲となるように、蓄電装置の放電及び充電を制御することは、本件出願の出願前に周知の技術(以下、「周知技術」という。必要であれば、原査定の理由において例示された特開平7-131905号公報(特に、段落【0011】ないし【0037】(とりわけ、段落【0016】ないし【0020】及び【0024】ないし【0027】)並びに図1及び2)及び特開平8-126116号公報(特に、段落【0009】ないし【0039】(とりわけ、段落【0024】ないし【0033】の特定区間に到達する前に蓄電装置の残容量(SOC)をスケジューリングされた目標値に調整するようにした記載)及び図1ないし6)を参照。)である。
しかしながら、引用発明において、これら刊行物2記載の技術事項及び周知技術を採用したとしても、直ちに、本願補正発明における「前記無人搬送車の始動時に、前記蓄電装置の内部抵抗を導出する内部抵抗導出部」と、「前記推定部により推定された前記電力変動量と前記蓄電装置の内部抵抗とに基づいて、前記蓄電装置の電圧の変動量を算出する電圧変動量算出部」及び「前記無人搬送車が前記特定区間に到達する前に、前記蓄電装置の電圧を、前記電圧変動量算出部により算出された前記蓄電装置の電圧の変動量と前記蓄電装置の電圧の許容範囲とに基づいて設定される目標電圧に近づけるように調整する電圧調整部」を、備えたものとはならない。
そうすると、引用発明において、刊行物2記載の技術事項及び周知技術に基づいて、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことではない。
(2)そして、本願発明1は、従来の無人搬送車において、「有人のハイブリッド車両と異なり、走行パターンが予め定められているとともに積載重量の変動幅が広いといった特性がある。そして、このような特性は、蓄電装置の電圧制御に影響を与える。・・・例えば、大型の無人搬送車においては、積載時と非積載時とで車両重量が約3~4倍異なる場合がある。すると、回生電力量等の変動幅が広くなり、その結果蓄電装置の電圧が許容範囲外となり、寿命が短くなるといった不都合が生じ得る。・・・また、蓄電装置の電圧が許容範囲外とならないように、蓄電装置の充放電を強制的に中断する構成にあっては、無人搬送車に搭載されているエンジンの負担が大きくなったり、取得可能な電力が取得できなかったりといった不都合が生じ得る。」(本件出願の明細書の段落【0004】ないし【0006】)ところ、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を備えることにより、「特定区間における蓄電装置の電圧を許容範囲内に収めることができる。これにより、蓄電装置の電圧制御を好適に行うことができる。」(本件出願の明細書の段落【0010】)、「内部抵抗のばらつきを把握することができる。これにより、内部抵抗のばらつきに起因する蓄電装置の電圧の変動を把握することを通じて、蓄電装置の電圧制御を、より好適に行うことができる。」(本件出願の明細書の段落【0012】)及び「特定区間において蓄電装置34の電圧が許容範囲外となることを抑制しつつ、減速区間Tdにおいては回生電力を全て充電に用いることができ、加速区間Taにおいては力行をアシストすることができる。よって、蓄電装置34の長寿命化及び燃費の向上等を図ることができる。」(本件出願の明細書の段落【0053】)といった、引用発明、刊行物2記載の技術事項及び周知技術から予測し得ない効果を奏するものである。
(3)したがって、本願発明1は、相違点1及び2について判断するまでもなく、引用発明、刊行物2記載の技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願発明2についても、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、引用発明、刊行物2記載の技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2-4 まとめ
上記2-3のとおりであるから、本願発明1及び2については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることはできない。
よって、原査定の理由によっては、本件出願を拒絶することはできない。
第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の内容
当審拒絶理由の内容は、次のとおりである。
「<理由1>
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記
本件出願の請求項1において、「前記推定部により推定された前記電力変動量と前記蓄電装置の内部抵抗とに基づいて、前記蓄電装置の電圧の変動量を算出する電圧変動量算出部」と記載されているが、蓄電装置の内部抵抗がどの時点のものであるのか不明である。そのため、算出する蓄電装置の電圧の変動量を特定できない。
そうすると、請求人が審判請求書で主張するように、本願発明が、「積載重量の変動幅が広く、且つ、蓄電装置の内部抵抗のばらつきが生じ得る場合であっても、エンジンの負担が大きくなったり取得可能な電力が取得できなかったりすることを抑制しつつ、電圧を許容範囲内に収めることができるという格別の技術的意義」を有しているものと認めることはできない。
よって、本件出願の請求項1ないし3に係る発明は明確でない。
<理由2>
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
本件出願の特許請求の範囲の請求項1において、「エンジンの駆動力で発電可能なものであって走行に用いられる発電電動部」という発明特定事項が記載されている。
しかしながら、本件出願の明細書における発明の詳細な説明及び図面には、エンジンの駆動力で発電可能であるとともに、エンジンを回転させる第1発電電動機32及び走行に用いられるとともに、回生制動を行うことにより発電可能な第2発電電動機36が記載されているものの(特に、段落【0020】及び【0021】並びに図3を参照。)、エンジンの駆動力で発電可能なものであって走行に用いられる発電電動部は記載も示唆もされていない。
よって、本件出願の請求項1ないし3に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。」
2 当審拒絶理由についての判断
平成29年1月18日に提出された手続補正書によって、本件出願の請求項1及び2は、上記第2に示すものに補正された。
このことにより、本願発明1及び2は、明確であり、また、発明の詳細な説明に記載したものとなった。
よって、当審拒絶理由は解消した。
第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本件出願を拒絶することはできない。
また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-006021