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特許拒絶査定不服審判

2016-004356

アルブミン変異体

審判番号
2016-004356
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2012-535864外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年03月23日
審決日
2016年11月09日
公報発行日
2017年05月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (C12N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

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特願2012-535864「アルブミン変異体」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 5月 5日国際公開、WO2011/051489、平成25年 3月14日国内公表、特表2013-509170〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯、本願発明 本願は、平成22年11月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年10月30日 欧州、2010年4月23日、2010年5月25日 いずれも米国、2010年8月26日 欧州)を国際出願日とする出願であって、平成27年11月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成28年3月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同日付け手続補正がなされ、さらに同日付けで早期審理に関する事情説明書が提出され、同年6月30日付けで当審より拒絶理由が通知され、同年10月4日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 本願の請求項1~17に係る発明は、平成28年10月4日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、請求項2に記載される以下のとおりのものである。 「【請求項2】  アルブミンの変異体、少なくとも400アミノ酸を有するその断片、又は、前記アルブミンの変異体又はその断片を含む融合ポリペプチドであって、親アルブミン、少なくとも400アミノ酸を有するその断片、又は、前記親アルブミン又はその断片を含む融合ポリペプチドと比べて、延長された血漿中半減期、及び、増強された酸性pH下でのFcRnへの親和性を有し、且つ、配列番号2に対して少なくとも98%の配列同一性を有すると共に、配列番号2の位置に対応する置換:K573A,C,D,F,G,H,I,L,M,N,P,R,S,V,W,Yに対応する置換を有する、アルブミンの変異体、その断片、又は、前記アルブミンの変異体又はその断片を含む融合ポリペプチド。」 第2 平成28年6月30日付け拒絶理由 平成28年6月30日付け拒絶理由は、本願の請求項1~21に係る発明は、その優先日前に頒布された刊行物である引用例1及び引用例2の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(D.理由3)、という理由を含むものである。 第3 当審の判断 1.引用例 (1)引用例1 本願優先日前に頒布された刊行物であるBiochimica et Biophysica Acta, 2007, Vol.1774, p.1582-1590(以下、「引用例1」という)には、以下の事項が記載されている。 なお、翻訳は当審によるものであり、下線は当審が付与したものである。以下、同様である。 (1-ア)「17種のヒト血清アルブミンの一残基変異体と通常アルブミンの薬物動態特性は、ハツカネズミで研究が行われた。すべてのケースで、血漿中半減期は、影響を受けたが、チャージが+2変化した遺伝的バリアントだけは、血漿中半減期が長くなった。その一方で、疎水性が変化したものは、血漿中半減期が減少した。ドメインIおよびIIIとドメインIIにおけるα-ヘリックス構造変化と、血漿中半減期の変化の間に相関関係が見いだされた。変異のタイプやΔHvに象徴される熱安定性の変化に相関関係はなかった。」(1582頁、要約1行目~5行目まで) (1-イ)「この研究で使用された17種のHSAの遺伝多型(バリアント)は、最初にキャリアーが見つけ出された場所にちなんで命名された。バリアントは、一残基置換をもち、その変異の位置は、図1中に示される。一つを除いた、すべてのバリアントは、生理的なpHで正常なHSAと異なる電荷がある。・・・Alb Kashmir(501 Glu→Lys),Alb Verona(570 Glu→Lys)は、すべて+2の電荷、・・・(中略)・・・Alb Milano Fast(573 Lys→Glu)は、-2の電荷がある。・・・(中略)・・・ほとんどの置換は、すなわち9種がドメインII(200-391残基)にある。ドメインI(1-199残基)とドメインIII(392-585残基)は、それぞれ3種および5種の実例が示されている。」(1584頁左欄3行~18行) (1-ウ)「図1 HSAの結晶構造は、この研究で使用した17種のバリアントの一残基変異体の位置を示す。NとCは、それぞれ、N末端及びC末端を示す。 」(1583頁) 「図2 マウスにおける静脈注射実施後の111In標識したバリアントとアルブミンA(通常)の血漿中の総量比較。111Inアルブミンは、尾静脈にボーラス投与で注射された。総量比較は、注射後の時間に対してプロットされる。各ポイントは、3-6尾のマウスの平均値(±S.D.)を表す。白丸と黒丸は、それぞれバリアント及び正常アルブミンを表す。 」(1584頁)、 「表1 マウスにおける111In標識したバリアントとアルブミンA(通常)の半減期および臓器取込クリアランス 」(1585頁)、 「表2 マウスにおけるHSAバリアントの半減期と臓器取込クリアランスの変化 」(1586頁)。 (1-エ)「最近、HSAサイトーシスの別のタイプは、実質的にすべての核のある細胞のタンパク質の再利用に起因することが確認された。ピノサイトーシスの後に、アルブミンは、細胞内のFcRn受容体にpH依存的な方法で結合する。それによって、タンパク質は、リソソームの分解経路から外れ、血漿中半減期が増大したそのままの形態で、循環するためエンドサイトーシスに戻る。Chaudhuryらは、細胞内のHSAとFcRnの結合が、受容体におけるヒスチジン残基とアルブミンのドメインIIIにおけるヒスチジン残基の間で相互作用により引き起こされると提案している。Andersenらは、FcRnが、負の電荷と、HSAのドメインIII上の残基が接する表面で相互作用すると提案している。 このように、特にドメインIIIの置換を伴ったバリアント(遺伝多型)は、修飾したHSA-FcRn再生利用プロセスのため血漿中半減期に変化を起こす可能性がある。 結論において、HSAの血漿中半減期は、一残基変異体の表面上の一残基によって変化させることができる。変異体のタイプに関する明確な関係は存在しない。しかし、+2のバリアントは半減期が増大するが、一方、疎水性が増加したものは、半減期が減少する。 もしドメインIあるいはIIIの位置でタンパク質のα-ヘリックス構造の変化が起きた場合は、半減期にポジティブ効果を与える。一方、ドメインII場合、ネガティブ効果を与える。」(1589頁左欄55行~右欄19行目) (2)引用例2 本願優先日前に頒布された刊行物であるBiochemistry, 2006, Vol.45, p.4983-4990(以下、「引用例2」という)には、以下の事項が記載されている。 (2-ア)「3つの組換えアルブミンドメインに対するFcRnへの結合を測定する実験では、アルブミンD-IIIだけがFcRnに結合するために必要かつ十分であると証明する。固定されたshFcRnに結合するのが3つのドメインのうちのD-IIIのみであるばかりでなく、D-IIIの結合は、HSAの結合と等モルである。shFcRn(データ提示なし)を結合することが示された異なる種(ネズミ、牛、マウス、人間)からのアルブミンのD-IIIのアミノ酸配列アライメントは、D-III(H440、H464、H510、H535)の中の4つのヒスチジンのうち、3が保持される(H464、H510、H535)ことを明らかにする。H464は、アルブミンのN-B推移の間じゅう、pH5.0とpH7.0の間でpH依存によるプロトン化を経ることが示され、FcRnとのヒスチジンを媒介としたpH依存的な相互作用の可能性を示唆している。」(4989頁右欄37行~50行) 2.引用発明 引用例1の(1-ア)、(1-イ)には、Alb Milano Fast(573 Lys→Glu)がヒト血清アルブミンの一残基変異体であること、同(1-ウ)の表1及び表2には、Alb Milano Fast(573 Lys→Glu)の血漿中半減期が増加することがそれぞれ記載されていることから、引用例1には、「増加した血漿中半減期を有する、ヒト血清アルブミンのK573においてEへの一残基変異を有する、ヒト血清アルブミンの変異体」に関する発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (なお、アミノ酸の表記について、Lysは、リジンの三文字略号であり、対応する一文字略号は「K」である。同様にグルタミン酸(Glu)の一文字略号は「E」である。) 3.対比 本願発明のうち、「アルブミンの変異体であって、親アルブミンと比べて、延長された血漿中半減期、及び、増強された酸性pH下でのFcRnへの親和性を有し、且つ、配列番号2に対して少なくとも98%の配列同一性を有すると共に、配列番号2の位置に対応する置換:K573A,C,D,F,G,H,I,L,M,N,P,R,S,V,W,Yに対応する置換を有する、アルブミンの変異体。」と引用発明を対比する。 引用発明のヒト血清アルブミンは配列番号2を有すると認められるから、引用発明の「ヒト血清アルブミンのK573において・・・一残基変異を有する、ヒト血清アルブミンの変異体」は、本願発明の「アルブミンの変異体であって、配列番号2に対して少なくとも98%の配列同一性を有すると共に、配列番号2の位置に対応する置換:K573・・・に対応する置換を有する、アルブミンの変異体」に相当する。 また、引用発明の「増加した血漿中半減期を有する」は、本願発明の「延長された血漿中半減期・・・を有し」に相当する。 したがって、両者は、「アルブミンの変異体であって、親アルブミンと比べて、延長された血漿中半減期を有し、且つ、配列番号2に対して少なくとも98%の配列同一性を有すると共に、配列番号2の位置に対応する置換:K573に対応する置換を有する、アルブミンの変異体」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1:K573に対応する置換について、本願発明は、「A,C,D,F,G,H,I,L,M,N,P,R,S,V,W,Y」であるのに対して、引用発明は、「E」である点。 相違点2:本願発明は、親アルブミンと比べて、増強された酸性pH下でのFcRnへの親和性を有するのに対して、引用発明には明記されていない点。 4.当審の判断 以下、相違点1~2について、検討する。 相違点1について 引用例1には、K573Eのアルブミンの一残基変異体の血漿中半減期が増大することが示されているから、当業者はK573のアミノ酸の置換は血漿中半減期に影響を与えるアミノ酸位置であることを理解するといえる。 そうすると、同じK573においてE以外のアミノ酸に置換し、その血漿中半減期が延長されたものを選択することは、当業者が通常行うことに過ぎない。 そして、本願明細書の表14の「HSA K573一点変異体の動態」を参酌すると、引用発明のK573Eは、KD値が322nMであるのに対して、K573Dは518nM、K573Lは451nM、K573Rは353nMを示しており、いずれも、K573Eより大きいKD値、すなわち、K573Eよりも低い血漿中半減期であることが明らかである。 そうすると、K573に対応する置換アミノ酸を特定したことにより、そのすべてにおいて、当業者の予測を超えた格段に優れた血漿中半減期の増加を示しているわけではない。 相違点2について 本願明細書の段落【0051】によればアルブミンのFcRnに対する親和性向上と血漿中半減期の延長とは相関するものであることが記載され、K573のアルブミン変異体におけるFcRnに対する親和性向上については、本願明細書の表14(結合定数KD)及び図12及び13(pH5.5とpH7.4におけるアルブミン変異体の親和性)に示されている。 そして、上記相違点1について検討したとおり、血漿中半減期の延長されたK753に置換を有するアルブミン変異体を選択することは、当業者が容易に行い得ることである。 そうすると、選択されたものは、FcRnへの親和性も高いと推認される。 したがって、相違点2も、同様に当業者であれば容易に行い得ることである。 また、引用例2には、アルブミンに3つあるドメインのうち、ドメインIIIとFcRnが結合し、その結合は、pH5.0とpH7.0の間でpH依存的であることが記載されており、アルブミンとFcRnがpH依存的に結合する(親和性を有する)ことは、本願発明の優先日前に当業者に公知である。 そうであれば、引用発明において、引用例2の記載に基づいて、酸性pH下でのFcRnへの親和性を確認することは、当業者が容易に行い得ることである。 以上のとおり、上記本願発明は、引用例1および引用例2の記載に基づき当業者が容易に発明できたものである。 5.審判請求人の主張について 審判請求人は、平成28年10月4日付け意見書において引用例1及び引用例2に基づいて位置573における変異に着目することは困難である旨主張している。 しかし、上記のとおり、引用例1には、K573Eの一残置変異体の血漿中半減期が増加することが記載されている以上、その記載に基づき位置573におけるアミノ酸置換に着目することは、当業者が容易に行い得ることであり、そのことによる効果についても、上記のとおり、特定されたアミノ酸すべてが予想外の格別顕著な効果を奏していると認められないから、審判請求人の主張は採用できない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第2 9条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-004356

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