特許拒絶査定不服審判
2016-004049
排気システム
- 審判番号
- 2016-004049
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-530758外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年03月16日
- 審決日
- 2017年01月23日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .121-Z (F01N) / P18 .575-Z (F01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-530758「排気システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月 5日国際公開、WO2012/042031、平成25年12月 5日国内公表、特表2013-543554〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2011年9月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年10月1日 ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成25年3月22日に国内書面が提出され、平成25年5月22日に明細書、請求の範囲及び要約書の日本語による翻訳文が提出され、平成27年5月26日付けで拒絶理由が通知されたのに対し、平成27年7月22日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年11月5日付けで拒絶査定がされ、平成28年3月16日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、平成28年5月2日に審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書(方式)が提出されたものである。
第2 平成28年3月16日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年3月16日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正
(1)本件補正の内容
平成28年3月16日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関しては、本件補正前の(すなわち、平成27年7月22日提出の手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1の下記(ア)の記載を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の下記(イ)の記載へと補正するものである。
(ア)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
少なくとも1つの排ガス浄化コンポーネント(2)を有し、少なくとも1つの排気ライン(3)を有し、排気システム(1)を自動車(6)の内燃機関(5)に接続するための少なくとも1つの接続デバイス(4)を有し、前記排気システム(1)を前記自動車(6)にさらに固定するための少なくとも1つの固定エレメント(7)を有する排気システム(1)であって、
前記少なくとも1つの排ガス浄化コンポーネント(2)は、固定された状態において、300Hz未満の第1の共振振動数範囲を有する振動を実行するように刺激されることができ、
前記少なくとも1つの排ガス浄化コンポーネント(2)は、500Hzを超える第2の共振振動数範囲を有する少なくとも1つの部分(8)を有し、
前記少なくとも1つの排ガス浄化コンポーネント(2)は、前記第2の共振振動数範囲の振動数を有する振動を実行するために前記排ガス浄化コンポーネント(2)を刺激することのできる振動エレメント(9)を与えられる、
排気システム(1)。」
(イ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
少なくとも1つの排ガス浄化コンポーネント(2)を有し、少なくとも1つの排気ライン(3)を有し、排気システム(1)を自動車(6)の内燃機関(5)に接続するための少なくとも1つの接続デバイス(4)を有し、前記排気システム(1)を前記自動車(6)にさらに固定するための少なくとも1つの固定エレメント(7)を有する排気システム(1)であって、
前記少なくとも1つの排ガス浄化コンポーネント(2)は、固定された状態において、300Hz未満の第1の共振振動数範囲を有する振動を実行するように刺激されることができ、
前記少なくとも1つの排ガス浄化コンポーネント(2)は、そのダクト(11)において配置される、500Hzを超える第2の共振振動数範囲を有する少なくとも1つの部分(8)を有し、
前記少なくとも1つの排ガス浄化コンポーネント(2)は、前記第2の共振振動数範囲の振動数を有する振動を実行するために前記排ガス浄化コンポーネント(2)を刺激することのできる振動エレメント(9)を与えられる、
排気システム(1)。」
(なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)
(2)本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1における発明特定事項である「500Hzを超える第2の共振振動数範囲を有する少なくとも1つの部分(8)」について、「そのダクト(11)において配置される」という事項を付加して限定することにより、請求項1に記載された発明の発明特定事項を限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に関しては、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
2 独立特許要件についての判断
本件補正における特許請求の範囲の請求項1に関する補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。
2-1 引用文献
2-1-1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平10-159540号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「ディーゼル機関の排気浄化装置」に関し、図面とともに、次のような記載がある。なお、下線は、理解の一助のため当審で付したものである。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ディーゼル機関の排気浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ディーゼル機関の排気ガス中にはカーボンを主成分とする排気微粒子(パティキュレート)が比較的多く含まれており、これが環境汚染を引き起こすために排気ガスを大気に放出する以前に除去されることが好ましく、そのために、ディーゼル機関の排気通路内にはパティキュレートを捕集するためのフィルタが配置されている。
【0003】ディーゼル機関の使用に伴いフィルタにおけるパティキュレート捕集量が増加すると排気抵抗が増大して機関性能を低下させるために、捕集されたパティキュレートは定期的に燃焼させられ、フィルタが再生されるようになっている。
【0004】ディーゼル機関の燃焼に際して、燃料だけでなく気筒内へ侵入したエンジンオイルも燃焼するために、その成分であるカルシウム及びリン等の酸化物及び硫化物等が生成される。通常、パティキュレートはこれらを成分として有している。カルシウム又はリンの酸化物又は硫化物は非常に燃焼し難く、前述のフィルタ再生において、アッシュとしてフィルタ内に残留し、フィルタを通して排気下流側に排出されることはないために、フィルタ内に堆積して排気抵抗を増加させる。
【0005】従って、このようなアッシュは、フィルタ排気上流側に排出させ、再びフィルタへ流入することがないようにしなければならない。実開昭58-149511号公報には、排気通路のフィルタ排気上流側近傍に凹状のアッシュ収容部を形成して、フィルタの排気上流側に排出されたアッシュを、このアッシュ収容部に収容することが提案されている。アッシュ収容部の容量は有限であり、アッシュ収容部に収容されたアッシュは、定期的に排出しなければならない。」(段落【0001】ないし【0005】)
(イ)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】アッシュは、その成分として硫酸カルシウムを多く含んでいる。前述の従来技術においては、機関停止後に排気系の温度が低下すると、排気系内の排気ガス中に含まれる水蒸気が排気系内壁面に結露し、凹状のアッシュ収容部には、アッシュ収容部内壁面で結露した水に加えて、排気通路内壁面で結露した水の一部が流入する。前述の硫酸カルシウムは石膏の原料であるために、硫酸カルシウムを多く含むアッシュは、このようにしてアッシュ収容部内に多量の水が存在すると、アッシュ収容部内で固着し、アッシュ収容部からの排出が困難になる。
【0007】従って、本発明の目的は、常に、アッシュ収容部に収容されたアッシュを容易に排出可能な状態に維持することができるディーゼル機関の排気浄化装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明による請求項1に記載のディーゼル機関の排気浄化装置は、機関排気通路に配置されたパティキュレート捕集用のフィルタと、前記フィルタの排気上流側近傍において前記機関排気通路への開口部を有する凹状のアッシュ収容部とを具備し、前記アッシュ収容部の前記開口部回りに堰を設けたことを特徴とする。」(段落【0006】ないし【0008】)
(ウ)「【0013】
【発明の実施の形態】図1は、本発明によるディーゼル機関の排気浄化装置の第1実施形態を示す機関排気系の一部の概略縦断面図である。同図において、1はパティキュレート捕集用のフィルタである。2はフィルタ1の排気下流側に接続された第1フランジ管であり、3はフィルタ1の排気上流側に接続された第2フランジ管である。第1フランジ管2は、ターボチャージャのタービンを介して下流排気管に接続される。
【0014】図示したように、フィルタ1は排気上流側を下にして斜め配置されており、第2フランジ管3の下側には、フィルタ1の排気上流側端面の垂直投影面にほぼ対向して開口する凹状のアッシュ収容部30が形成されている。図2は図1における断面A-Aを示している。これらの図に示すように、アッシュ収容部30の各側壁は、第2フランジ管3内へ突出し、アッシュ収容部30の開口部回りに堰30aを形成している。
【0015】フィルタ1は、一般的なものであり、例えば、多孔性物質からなるハニカム状の隔壁を備えたハニカム状フィルタで、隔壁で囲まれた通路の隣接する二つにおいて、一方が排気上流側を、他方が排気下流側をセラミック製の閉塞材によって閉塞されているものである。それにより、排気ガスは隔壁を通過し、その際に多孔性物質からなる隔壁によってパティキュレートが捕集されるようになっている。また、フィルタ1には、電気ヒータが配置されている。
【0016】フィルタ1へのパティキュレートの捕集量がかなり増加すると排気抵抗が大幅に増大するために、この時には電気ヒータを通電発熱させ、パティキュレートを定期的に燃焼させるようになっている。もちろん、電気ヒータに代えて、又は電気ヒータに加えて、燃料及び二次空気をパティキュレート捕集用フィルタへ供給するような他のパティキュレート燃焼手段を設けることも可能である。
【0017】このようなパティキュレート燃焼手段によって、パティキュレートの可燃成分はフィルタから除去されるが、パティキュレートの成分として含まれるカルシウム又はリンの酸化物又は硫化物等は、燃焼せずにアッシュとしてパティキュレート捕集用フィルタに堆積する。」(段落【0013】ないし【0017】)
(エ)「【0018】このようなアッシュは、フィルタ1が排気上流側を下にして斜め配置されているために、始動時又は運転時の機関振動によってフィルタ1の排気上流側に排出され、アッシュ収容部30内に収容される。機関振動によるアッシュの排出が不十分な場合には、フィルタに加振装置又は任意のアッシュ排出手段を設けるようにしても良い。アッシュ収容部の容量は有限であり、定期的にアッシュ収容部からアッシュを排出することが必要とされる。
【0019】排気ガスは水蒸気を含んでいる。それにより、機関停止後において、機関排気系の温度が低下すると、排気系内の排気ガス中の水蒸気は排気系内壁面で結露する。第2フランジ管3内壁面で結露した水の一部は、内壁面に沿って下側に位置するアッシュ収容部30へ向かう。
【0020】アッシュは、その成分として硫酸カルシウムを多く含んでいる。硫酸カルシウムは石膏の原料であるために、アッシュ収容部30内に多量の水が存在すると、硫酸カルシウムを多く含むアッシュは、アッシュ収容部内で十分に固着し、アッシュ収容部からの排出が困難になる。
【0021】本実施形態の構造によれば、第2フランジ管3の内壁面に沿ってアッシュ収容部30へ向かう水は、アッシュ収容部30の開口部回りに形成された堰30aによってアッシュ収容部30への流入が防止される。それにより、アッシュ収容部30内には、アッシュ収容部30内で結露した水しか存在しないために、アッシュがアッシュ収容部30内で十分に固着することはなく、アッシュをアッシュ収容部30から容易に排出することができる。」(段落【0018】ないし【0021】)
(オ)「【0043】前述した全ての実施形態において、パティキュレート捕集用のフィルタは、機関振動によりアッシュをフィルタ排気上流側に排出するために、排気上流側を下に斜めに配置されているが、これは、本発明を限定するものではなく、選択した任意のアッシュ排出手段によってアッシュがフィルタの排気上流側に排出されるように配置可能である。」(段落【0043】)
(2)引用文献1の記載から分かること
上記(1)及び図1ないし13の記載から、引用文献1には、次の事項が記載されていることが分かる。
(カ)上記(1)(ア)ないし(オ)及び図1ないし13の記載から、引用文献1には、ディーゼル機関の排気浄化装置が記載されていることが分かる。
(キ)上記(1)(ア)ないし(オ)及び図1ないし13の記載から、引用文献1に記載されたディーゼル機関の排気浄化装置は、機関排気通路に配置されたパティキュレート捕集用のフィルタと、前記フィルタの排気上流側近傍において前記機関排気通路への開口部を有する凹状のアッシュ収容部とを具備することが分かる。
(ク)上記(1)(ア)ないし(オ)(特に、段落【0017】)及び図1ないし13の記載から、引用文献1に記載されたディーゼル機関の排気浄化装置においては、パティキュレート燃焼手段によって、パティキュレートの可燃成分はフィルタから除去されるが、パティキュレートの成分として含まれるカルシウム又はリンの酸化物又は硫化物等は、燃焼せずにアッシュとしてパティキュレート捕集用フィルタに堆積することが分かる。
(ケ)上記(1)(ア)ないし(オ)(特に、段落【0018】及び【0043】)及び図1ないし13の記載から、引用文献1に記載されたディーゼル機関の排気浄化装置において、アッシュは、フィルタ1が排気上流側を下にして斜め配置されているために、始動時又は運転時の機関振動によってフィルタ1の排気上流側に排出され、アッシュ収容部30内に収容されることが分かる。
(コ)上記(1)(ア)ないし(オ)(特に、段落【0018】)及び図1ないし13の記載から、引用文献1に記載されたディーゼル機関の排気浄化装置において、機関振動によるアッシュの排出が不十分な場合には、フィルタに加振装置又は任意のアッシュ排出手段を設けるようにしても良いことが分かる。
(サ)(1)(ア)ないし(オ)、上記(カ)ないし(コ)(特に、(ケ)及び(コ))及び図1ないし13の記載から、引用文献1に記載されたディーゼル機関の排気浄化装置において、少なくとも1つのフィルタ1は、固定された状態において、始動時の機関振動により刺激されることができ、前記少なくとも1つのフィルタ1は、前記フィルタ1を刺激することのできる加振装置を設けられるといえる。
(シ)上記(1)(ア)ないし(オ)及び図1ないし13の記載から、引用文献1に記載されたディーゼル機関の排気浄化装置には、ディーゼル機関の排気が流入するのであるから、該排気浄化装置は少なくとも1つの接続部を介してディーゼル機関に接続されていることが明らかである。
(3)引用発明
上記(1)及び(2)並びに図1ないし13の記載から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「少なくとも1つのフィルタ1を有し、少なくとも1つの機関排気通路を有し、排気浄化装置をディーゼル機関に接続するための少なくとも1つの接続部を有する、前記排気浄化装置であって、
前記少なくとも1つのフィルタ1は、固定された状態において、始動時の機関振動により刺激されることができ、
前記少なくとも1つのフィルタ1は、前記フィルタ1を刺激することのできる加振装置を設けられる、
排気浄化装置。」
2-1-2 引用文献2
(1)引用文献2の記載
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平4-252732号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「車両用排気管の支持方法とそれを実施するための構造」に関し、図面とともに、次のような記載がある。なお、下線は、理解の一助のため当審で付したものである。
(ア)「【0011】先ず、図1には、本発明に従う構造とされたエンジン排気管の車両ボデーに対する支持構造の一具体例が、モデル的に示されている。かかる図において、10は、排気管であって、公知の如く、自動車の車両ボデー12の下側において、車両前後方向(図1中、左右方向)に延びるように配されている。また、かかる排気管10には、中間よりやや前方に位置して、触媒14が設けられている一方、その後方端部には、メインマフラ16が設けられている。そして、このような排気管10は、その前方端部において、図示しないエンジンのエキゾーストマニホールド18に接続されて装着されることにより、エンジンからの排気音を消音すると共に、排気ガスを浄化して後方に排出するようになっているのである。
【0012】また、かかる排気管10は、触媒14の前方と、メインマフラ16の前方とにおいて、それぞれ分断されて三分割構造とされていると共に、可撓性ジョイント20,22によって連結されており、それによって、それら触媒14の前方とメインマフラ16の前方との二箇所において、それぞれ屈曲乃至は湾曲可能とされている。なお、本実施例では、かかる可撓性ジョイント20,22として、何れも、図2に示されている如く、ベローズ形の金属管24が、その両端部において、排気管10の切断開口部に対して溶着されると共に、該金属管24の外側が、ワイヤメッシュからなる保護材26にて覆われてなる構造のものが用いられており、排気管10の連結部位における気密性を確保しつつ、可撓性が発揮され得るようになっている。なお、図2中、28は、保護材26を取り付けるためのバンドである。
【0013】さらに、このように三分割構造とされた排気管10にあっては、その前側部分30がエンジン側に取り付けられている一方、中間部分32および後側部分34が、それぞれ、マフラサポート36,38および40,42を介して、車両ボデー12に対して懸吊支持せしめられている。また、排気管10の中間部分32および後側部分34を車両ボデー12に対して懸吊支持するマフラサポート36,38および40,42としては、従来から公知の弾性支持体(実開昭56-70425号公報等参照)が用いられている。
【0014】すなわち、それによって排気管10の後側部分34は、車両ボデー12に対して弾性支持せしめられているのであり、しかも、可撓性ジョイント22により、中間部分32とは独立して、車両ボデー12に対して揺動可能とされているのである。換言すれば、かかる後側部分34は、それ自体の質量をマスとし、マフラサポート40,42および可撓性ジョイント22による支持系をバネとする、一つの振動系を構成しているのである。」(段落【0011】ないし【0014】)
(イ)「【0015】そして、このような排気管10にあっては、車両ボデー10に対する装着状態下、その中間部分32と後側部分34とを連結する可撓性ジョイント22が、該車両ボデー10における一次固有振動モードの節目に相当する後輪車軸付近に位置せしめられることとなる。即ち、自動車のアイドリング時や走行時において、車両ボデー10には、駆動系や懸架系から加振力が及ぼされることにより、振動が惹起されることとなるが、その一次固有振動は、図3に仮想線で示されている如く、前後輪の車軸付近にそれぞれ節目を有する振動モードをもって生ぜしめられる。
【0016】従って、排気管10の可撓性ジョイント22を、かかる車両ボデー10における一次固有振動モードの節目:a近くに位置せしめることにより、該可撓性ジョイント22よりも後方に位置せしめられる、前記排気管10の後側部分34にて構成された振動系に対して、車両ボデー10に惹起される一次固有振動が、加振力として、有利に及ぼされ得ることとなるのである。そして、この後側部分34にて構成された振動系にあっては、車両ボデー10に対して弾性支持されていることから、該車両ボデー10(主振動系)に対する副振動系と見なすことができるのである。
【0017】それ故、この副振動系を構成する排気管10の後側部分34における質量およびマフラサポート40,42および可撓性ジョイント22による支持系におけるバネ定数を調節せしめて、かかる副振動系における固有振動数を、前記車両ボデー10における一次固有振動数にチューニングせしめることによって、該副振動系を、車両ボデー10に対する動的吸振器(ダイナミックダンパ)として機能せしめることが可能となるのであり、それによって車両ボデー10における振動が有利に低減され得ることとなるのである。
【0018】なお、かかる副振動系のチューニングは、下記(1式)にて示される副振動系の固有振動数:fを、車両ボデー10における一次固有振動数:f0に、略一致させることによって、行なわれる。また、そこにおいて、車両ボデー10における一次固有振動数:f0は、車両によって異なるが、一般に、10~30Hz程度である。
f=(1/2π)(ΣK/M)12 ・・・(1式)
但し、ΣK:副振動系におけるバネ系のばね定数であって、本実施例では、マフラサポート40,42および可撓性ジョイント22のバネ定数を、それぞれk1,k2,k3とすると、ΣK=(k1+k2+k3)となる。
M:排気管10における後側部分34の質量」(段落【0015】ないし【0018】)
(2)引用文献2の記載から分かること
上記(1)及び図1ないし3の記載から、引用文献2には、次の事項が記載されていることが分かる。
(カ)上記(1)及び図1ないし3の記載から、引用文献2には、排気システムを自動車の内燃機関に接続するための少なくとも1つの接続デバイスを有し、排気システムを自動車にさらに固定するためのマフラサポート36、38、40(固定エレメント)を有する排気システムであって、触媒14(排ガス浄化コンポーネント)は、固定された状態において、自動車のアイドリング時や走行時において、マフラサポート36、38、40(固定エレメント)と、排気管10(排気ライン)の後側部分における固有振動数を、一般的な自動車の車両ボディにおける一次固有振動数(10Hz-30Hz)に略一致させて設計したものが記載されていることが分かる。
(3)引用文献2記載の技術
上記(1)及び(2)並びに図1ないし3の記載から、引用文献2には、次の技術が記載されているといえる。
「排気システムを自動車の内燃機関に接続するための少なくとも1つの接続デバイスを有し、排気システムを自動車にさらに固定するためのマフラサポート36、38、40(固定エレメント)を有する排気システムの技術。」(以下、「引用文献2記載の技術1」という。)
「排気システムにおいて、触媒14(排ガス浄化コンポーネント)は、固定された状態において、自動車のアイドリング時や走行時において、マフラサポート36、38、40(固定エレメント)と、排気管10(排気ライン)の後側部分における固有振動数を、一般的な自動車の車両ボディにおける一次固有振動数(10Hz-30Hz)に略一致させて設計した技術。」(以下、「引用文献2記載の技術2」という。)
2-2 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「フィルタ1」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願補正発明における「排ガス浄化コンポーネント(2)」に相当し、以下同様に、「機関排気通路」は「排気ライン(3)」に、「排気浄化装置」は「排気システム(1)」に、「ディーゼル機関」は「自動車(6)の内燃機関(5)」に、「接続部」は「接続デバイス(4)」に、「加振装置」は「振動エレメント(9)」に、それぞれ、相当する。
また、引用発明における「始動時の機関振動により刺激されることができ」は、「低い振動数範囲を有する振動を実行するように刺激されることができ」という限りにおいて、本願補正発明における「300Hz未満の第1の共振振動数範囲を有する振動を実行するように刺激されることができ」に相当する。
また、引用発明における「前記少なくとも1つのフィルタ1は、前記フィルタ1を刺激することのできる加振装置を設けられる」は、「前記少なくとも1つの排ガス浄化コンポーネントは、振動を実行するために前記排ガス浄化コンポーネントを刺激することのできる振動エレメントを与えられる」という限りにおいて、本願補正発明における「前記少なくとも1つの排ガス浄化コンポーネント(2)は、そのダクト(11)において配置される、500Hzを超える第2の共振振動数範囲を有する少なくとも1つの部分(8)を有し、前記少なくとも1つの排ガス浄化コンポーネント(2)は、前記第2の共振振動数範囲の振動数を有する振動を実行するために前記排ガス浄化コンポーネント(2)を刺激することのできる振動エレメント(9)を与えられる」に相当する。
以上から、本願補正発明と引用発明は、
「少なくとも1つの排ガス浄化コンポーネントを有し、少なくとも1つの排気ラインを有し、排気システムを自動車の内燃機関に接続するための少なくとも1つの接続デバイスを有する、前記排気システムであって、
前記少なくとも1つの排ガス浄化コンポーネントは、固定された状態において、低い振動数範囲を有する振動を実行するように刺激されることができ、
前記少なくとも1つの排ガス浄化コンポーネントは、振動を実行するために前記排ガス浄化コンポーネントを刺激することのできる振動エレメントを与えられる、
排気システム。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点>
(ア)本願補正発明においては、「排気システムを自動車にさらに固定するための少なくとも1つの固定エレメントを有する」のに対し、引用発明においては、そのような固定エレメントを有するか否か明らかでない点(以下、「相違点1」という。)。
(イ)「低い振動数範囲を有する振動を実行するように刺激されることができ」に関して、本願補正発明においては、「300Hz未満の第1の共振振動数範囲を有する振動を実行するように刺激されることができ」るのに対し、引用発明においては、「始動時の機関振動により刺激されることができ」る点(以下、「相違点2」という。)。
(ウ)「前記少なくとも1つの排ガス浄化コンポーネントは、振動を実行するために前記排ガス浄化コンポーネントを刺激することのできる振動エレメントを与えられる」に関して、本願補正発明においては、「前記少なくとも1つの排ガス浄化コンポーネントは、そのダクトにおいて配置される、500Hzを超える第2の共振振動数範囲を有する少なくとも1つの部分を有し、前記少なくとも1つの排ガス浄化コンポーネントは、前記第2の共振振動数範囲の振動数を有する振動を実行するために前記排ガス浄化コンポーネントを刺激することのできる振動エレメントを与えられる」のに対し、引用発明においては、「前記少なくとも1つのフィルタ1は、前記フィルタ1を刺激することのできる加振装置を設けられる」点(以下、「相違点3」という。)。
2-3 判断
(ア)相違点1について
引用文献2には、「排気システムを自動車の内燃機関に接続するための少なくとも1つの接続デバイスを有し、排気システムを自動車にさらに固定するためのマフラサポート36、38、40(固定エレメント)を有する排気システムの技術。」(引用文献2記載の技術1)が記載されており、このように、排気システムを自動車の内燃機関に接続するための少なくとも1つの接続デバイスを有し、排気システムを自動車にさらに固定するための固定エレメントを有することは、排気システムの技術分野における周知技術でもある。
してみれば、引用発明において、引用文献2記載の技術1を適用することにより、相違点1に係る発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到できたことである。
(イ)相違点2について
排気システムの技術分野において、排ガス浄化コンポーネントを、固定された状態において、300Hz未満の共振振動数範囲を有する振動ないしアイドル運転時の振動を実行するように刺激されることは、本願出願前に周知の技術(以下、「周知技術1」という。例えば、上記引用文献2記載の技術2、特表2003-536010号公報(特に、段落【0016】ないし【0018】及び図1を参照。)及び特開2001-280116号公報(特に、段落【0015】、【0019】及び図1ないし11を参照。)等を参照。)である。
してみれば、引用発明において、周知技術1を適用することにより、相違点2に係る発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到できたことである。
(ウ)相違点3について
まず、本願補正発明における「そのダクトにおいて配置される、少なくとも1つの部分(8)」の意味について検討する。
本願の明細書の「排気システムのさらに有利な改良において、少なくとも1つの排ガス浄化コンポーネントは、500Hzを超える、好ましくは800Hzを超える、特に好ましくは1000Hzを超える第2の共振振動数範囲を有する少なくとも1つの部分を有する。排気システムにおいて固定された排ガス浄化コンポーネントのふるまいを特徴づける第1の共振振動数範囲とは反対に、第2の共振振動数範囲は、排ガス浄化コンポーネント自体の部分を特徴づける。少なくとも1つの排ガス浄化コンポーネントの部分は、特に、ダクト(特にフィルタ材料)の構造および/または壁である。第2の共振振動数範囲は、したがって、内燃機関によって通常発生する振動周波数の外側に位置する。排ガス浄化コンポーネントの部分は、したがって、内燃機関単独で(すなわち、特に、前記範囲における排気ラインの対応する共振振動なしで)振動を実行するように刺激されることができない。それによって、旅行の間、振動を実行する部分の望まれない刺激は、回避される。」(段落【0018】。なお、下線は当審で付した。)という記載及び図面の記載からみて、「そのダクトにおいて配置される、少なくとも1つの部分(8)」とは、「ダクト(特にフィルタ材料)の構造および/または壁である」ことが分かる。
ところで、排ガス浄化コンポーネントの一部分(すなわち、ダクト構造、壁やフィルタ自体)の共振振動数範囲を、内燃機関によって通常発生する振動周波数とすると、排ガス浄化コンポーネントの一部分が内燃機関の振動によって破壊されるおそれがあることから、(この破壊を回避する目的で、)排ガス浄化コンポーネントの一部分の共振振動数範囲を、500Hzを超える共振振動数範囲とすることは、排気システムの技術分野における周知技術(以下、「周知技術2」という。例えば、特開平7-259543号公報(特に、段落【0036】)、特開平8-103664号公報(特に、段落【0076】)、特開平6-320014号公報(特に、段落【0060】)等の記載を参照。)である。
また、振動エレメントの振動数を、排ガス浄化コンポーネントの一部分の共振振動数範囲とすることにより、ダクトの構造または壁が大きく振動し、振動による効果が大きいことは、技術常識(以下、「技術常識」という。必要であれば、特開平8-177462号公報(特に、特許請求の範囲の請求項5及び段落【0014】)の記載を参照。)である。
なお、引用発明にも記載されているが、排ガス浄化コンポーネントは、前記排ガス浄化コンポーネントの一部分を刺激することのできる振動エレメントを与えられることも、周知技術(例えば、実願平2-116489号(実開平4-71723号)のマイクロフィルム(特に、実用新案登録請求の範囲、明細書第7ページ第5ないし8行、同第8ページ第13ないし16行及び第1図)、再公表特許第01/073271号(特に、特許請求の範囲の請求項20、明細書第28ページ第19行ないし第29ページ第8行並びに図21及び22)及び特表2005-533963号公報(特に、特許請求の範囲の請求項52、明細書の段落【0056】及び図18)等の記載を参照。)である。
してみれば、引用発明において、周知技術2を適用して、排ガス浄化コンポーネントの一部分(すなわち、ダクト構造、壁やフィルタ自体)の共振振動数範囲を、500Hzを超える共振振動数範囲とし、技術常識を考慮して、振動エレメントの振動数を、排ガス浄化コンポーネントの部分の共振振動数範囲とすることにより、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到できたことである。
(エ)効果について
そして、本願補正発明は、全体として検討しても、引用発明、引用文献2記載の技術1、周知技術1及び2並びに技術常識から予測される以上の格別の効果を奏すると認めることはできず、本願補正発明は、引用発明、引用文献2記載の技術1、周知技術1及び2並びに技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 むすび
したがって、上記2において検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
上記のとおり、平成28年3月16日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成27年7月22日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲及び平成25年5月22日に提出された明細書の翻訳文並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)(ア)【請求項1】のとおりのものである。
2 引用文献及び引用発明
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平10-159540号公報)及び引用発明は、前記第2[理由]2-1-1に記載したとおりである。
また、本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平4-252732号公報)及び引用文献2記載の技術1及び2は、前記第2[理由]2-1-2に記載したとおりである。
3 対比・判断
前記第2[理由]1(2)で検討したとおり、本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明、すなわち本願発明の発明特定事項をさらに限定するものであるから、本願発明は、実質的に本願補正発明における発明特定事項の一部を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記第2[理由]2-2に記載したとおり、引用発明、引用文献2記載の技術1、周知技術1及び2並びに技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用文献2記載の技術1、周知技術1及び2並びに技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2記載の技術1、周知技術1及び2並びに技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第4 むすび
上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-004049