特許無効審判
2015-800226
抗ウイルス剤
- 審判番号
- 2015-800226
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2009-057635
- 登録番号
- 特許第5207392号(P5207392)
- 請求日
- 2015年12月17日
- 審決日
- 2017年08月08日
- 公報発行日
- 2018年12月28日
- 結論
- 請求成立(無効)
- 当事者
- 【請求人】MSD 株式会社
- 【請求人代理人】窪田 英一郎
- 【請求人代理人】乾 裕介
- 【請求人代理人】今井 優仁
- 【請求人代理人】中岡 起代子
- 【請求人代理人】矢野 恵美子
- 【被請求人】塩野義製薬 株式会社
- 【被請求人代理人】岩崎 光隆
- 【被請求人代理人】田村 啓
- 【被請求人代理人】品川 永敏
- 【被請求人代理人】落合 康
- 【被請求人代理人】稲井 史生
- 【被請求人代理人】牧野 知彦
- 【被請求人代理人】堀籠 佳典
- 【被請求人代理人】加治 梓子
- 審判長/審判官
- 審判長 村上 騎見高
- 審判官 蔵野 雅昭
- 審判官 前田 佳与子
- 分類
- P1113.536-ZAA(C07D) / P1113.537-ZAA(C07D) / P1113.55 -ZAA(C07D) / P1113.16 -ZAA(C07D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第9項、特許法第126条第5項、特許法第134条の2第1項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条の2、特許法第123条第1項第4号、特許法第36条第6項第1号、特許法第134条の2第1項第4号、特許法第134条の2第6項、特許法第123条第1項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第123条第1項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
上記当事者間の特許第5207392号発明「抗ウイルス剤」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第5207392号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3について訂正することを認める。
特許第5207392号の請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本件無効審判請求に係る特許第5207392号は、平成14年8月8日(優先日:2001年8月10日、2001年12月5日、2002年6月28日)を国際出願日とする特許出願である特願2003-521202号の一部を、平成21年3月11日に新たな特許出願とした特願2009-57635号に係るものであって、平成24年4月3日受付け手続補正書、及び、同年8月9日受付け手続補正書が提出された後、平成25年3月1日に設定登録がなされたものである。
また、本件無効審判請求以後の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成27年12月27日 審判請求書提出
平成28年 2月16日 請求人より補正書提出
同 年 4月22日 被請求人より答弁書及び訂正請求書提出
同 年同 月25日 被請求人より補正書提出
同 年 6月23日 請求人より弁駁書提出
同 年 7月29日付け 通知書 (審理事項通知書)
同 年 9月20日 請求人より口頭審理陳述要領書及び上申書提出
同 年同 月同 日 被請求人より口頭審理陳述要領書提出
同 年10月 4日 第1回口頭審理
同 年同 月同 日 被請求人より上申書提出
同 年11月 8日 被請求人より上申書(2)提出
同 年12月13日 請求人より上申書(2)提出
平成29年 1月30日 被請求人より上申書(3)提出
同 年 2月 3日付け 審決の予告
同 年 4月13日 被請求人より訂正請求書及び上申書(4)提出
同 年 5月31日 請求人より弁駁書(2)提出
同 年 7月19日付け 補正の許否の決定
同 年同 月同 日 通知書(審理終結通知書)
第2.訂正請求について
1.訂正請求の趣旨
被請求人が平成29年4月13日付けで提出した訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)による訂正請求(以下、「本件訂正」という。)は、特許第5207392号の願書に添付した特許請求の範囲について、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを求めるものである。
なお、平成28年4月22日付けで提出した訂正請求書による訂正請求は、特許法第134条の2第6項の規定により取り下げられたものとみなされた。
2.訂正の内容
訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1において、
「 (式中、Z1及びZ3はそれぞれ独立して単結合又は炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキレン;Z2は単結合、-S-、-SO-、-NHSO2-、-O-又は-NHCO-;R1は置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよい5~8員の芳香族複素環式基、置換されていてもよい炭素数3~6のシクロアルキル又は置換されていてもよいヘテロサイクル(「置換されていてもよい」の各置換基は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル、ハロゲンおよびアルコキシから選択される))で示される基;
Yはヒドロキシ;
Zは酸素原子;
RC及びRDは一緒になって隣接する炭素原子と共に5員又は6員のヘテロ原子を含んでいてもよい環を形成し、該環はベンゼン環との縮合環であってもよい;
RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されていてもよく;」
とあるのを、
「 (式中、式:-Z1-Z2-Z3-R1で示される基は、4-フルオロベンジル);
Yはヒドロキシ;
Zは酸素原子;
RC及びRDは一緒になって隣接する炭素原子と共に5員又は6員のヘテロ原子を含んでいてもよい環を形成し、該環はベンゼン環との縮合環であってもよい;
RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1及びZ3はそれぞれ独立して単結合又は炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキレン;Z2は単結合、-S-、-SO-、-NHSO2-、-O-又は-NHCO-;R1は置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよい5~8員の芳香族複素環式基、置換されていてもよい炭素数3~6のシクロアルキル又は置換されていてもよいヘテロサイクル(「置換されていてもよい」の各置換基は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル、ハロゲンおよびアルコキシから選択される))で示される基で置換されていてもよく;」
と訂正する。
訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1において、
「さらに、RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されている以外の位置で、」
とあるのを、
「さらに、RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されている以外の位置で、かつ、=Zが結合している炭素原子の隣接位で」
と訂正する。
訂正事項1-3
特許請求の範囲の請求項1において、
「アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル及びアルケニルからなる群から選択される置換基により置換されていてもよい。)」
とあるのを、
「アルキルにより置換されていてもよい。)」
と訂正する。
訂正事項2-1
特許請求の範囲の請求項2において、
「RC及びRDは一緒になって隣接する炭素原子と共に5員又は6員のN原子を含む環を形成する、請求項1記載の医薬組成物。」
とあるのを、
「式(I):
【化1】
(式中、
RAは式:
【化3】
(式中、Z1及びZ3はそれぞれ独立して単結合又は炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキレン;Z2は単結合、-S-、-SO-、-NHSO2-、-O-又は-NHCO-;R1は置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよい5~8員の芳香族複素環式基、置換されていてもよい炭素数3~6のシクロアルキル又は置換されていてもよいヘテロサイクル(「置換されていてもよい」の各置換基は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル、ハロゲンおよびアルコキシから選択される))で示される基;
Yはヒドロキシ;
Zは酸素原子;
RC及びRDは一緒になって隣接する炭素原子と共に5員又は6員のN原子を含む環を形成し;
RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されていてもよく;
さらに、RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されている以外の位置で、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル及びアルケニルからなる群から選択される置換基により置換されていてもよい。)
で示される化合物、その製薬上許容される塩又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、インテグラーゼ阻害剤である医薬組成物。 」
と訂正する。
訂正事項2-2
上記訂正事項2-1で訂正した記載のうち、
「 (式中、Z1及びZ3はそれぞれ独立して単結合又は炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキレン;Z2は単結合、-S-、-SO-、-NHSO2-、-O-又は-NHCO-;R1は置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよい5~8員の芳香族複素環式基、置換されていてもよい炭素数3~6のシクロアルキル又は置換されていてもよいヘテロサイクル(「置換されていてもよい」の各置換基は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル、ハロゲンおよびアルコキシから選択される))で示される基;
Yはヒドロキシ;
Zは酸素原子;
RC及びRDは一緒になって隣接する炭素原子と共に5員又は6員のN原子を含む環を形成し;
RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されていてもよく; 」
とあるのを、
「(式中、式:-Z1-Z2-Z3-R1で示される基は、4-フルオロベンジル);
Yはヒドロキシ;
Zは酸素原子;
RC及びRDは一緒になって隣接する炭素原子と共に5員又は6員のN原子を含む環を形成し;
RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1及びZ3はそれぞれ独立して単結合又は炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキレン;Z2は単結合、-S-、-SO-、-NHSO2-、-O-又は-NHCO-;R1は置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよい5~8員の芳香族複素環式基、置換されていてもよい炭素数3~6のシクロアルキル又は置換されていてもよいヘテロサイクル(「置換されていてもよい」の各置換基は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル、ハロゲンおよびアルコキシから選択される))で示される基で置換されていてもよく;」
と訂正する。
訂正事項2-3
上記訂正事項2-1で訂正した記載のうち、
「さらに、RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されている以外の位置で、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル及びアルケニルからなる群から選択される置換基により置換されていてもよい。) 」
とあるのを、
「さらに、RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されている以外の位置で、アルキルにより置換されていてもよい。」
と訂正する。
訂正事項3-1
特許請求の範囲の請求項3において、
「 RC及びRDは一緒になって隣接する炭素原子と共に6員のヘテロ原子を含む環を形成する、請求項1記載の医薬組成物。」
とあるのを、
「式(I):
【化1】
(式中、
RAは式:
【化3】
(式中、Z1及びZ3はそれぞれ独立して単結合又は炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキレン;Z2は単結合、-S-、-SO-、-NHSO2-、-O-又は-NHCO-;R1は置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよい5~8員の芳香族複素環式基、置換されていてもよい炭素数3~6のシクロアルキル又は置換されていてもよいヘテロサイクル(「置換されていてもよい」の各置換基は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル、ハロゲンおよびアルコキシから選択される))で示される基;
Yはヒドロキシ;
Zは酸素原子;
RC及びRDは一緒になって隣接する炭素原子と共に6員のヘテロ原子を含む環を形成し;
RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されていてもよく;
さらに、RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されている以外の位置で、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル及びアルケニルからなる群から選択される置換基により置換されていてもよい。)
で示される化合物、その製薬上許容される塩又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、インテグラーゼ阻害剤である医薬組成物。 」
と訂正する。
訂正事項3-2
上記訂正事項3-1で訂正した記載のうち、
「 (式中、Z1及びZ3はそれぞれ独立して単結合又は炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキレン;Z2は単結合、-S-、-SO-、-NHSO2-、-O-又は-NHCO-;R1は置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよい5~8員の芳香族複素環式基、置換されていてもよい炭素数3~6のシクロアルキル又は置換されていてもよいヘテロサイクル(「置換されていてもよい」の各置換基は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル、ハロゲンおよびアルコキシから選択される))で示される基;
Yはヒドロキシ;
Zは酸素原子;
RC及びRDは一緒になって隣接する炭素原子と共に6員のヘテロ原子を含む環を形成し;
RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されていてもよく; 」
とあるのを、
「(式中、式:-Z1-Z2-Z3-R1で示される基は、4-フルオロベンジル);
Yはヒドロキシ;
Zは酸素原子;
RC及びRDは一緒になって隣接する炭素原子と共に6員のヘテロ原子を含む環を形成し;
RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1及びZ3はそれぞれ独立して単結合又は炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキレン;Z2は単結合、-S-、-SO-、-NHSO2-、-O-又は-NHCO-;R1は置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよい5~8員の芳香族複素環式基、置換されていてもよい炭素数3~6のシクロアルキル又は置換されていてもよいヘテロサイクル(「置換されていてもよい」の各置換基は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル、ハロゲンおよびアルコキシから選択される))で示される基で置換されていてもよく;」
と訂正する。
訂正事項3-3
上記訂正事項3-2で訂正した記載のうち、
「RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1及びZ3はそれぞれ独立して単結合又は炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキレン;Z2は単結合、-S-、-SO-、-NHSO2-、-O-又は-NHCO-;R1は置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよい5~8員の芳香族複素環式基、置換されていてもよい炭素数3~6のシクロアルキル又は置換されていてもよいヘテロサイクル 」
とあるのを、
「RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1及びZ3はそれぞれ独立して単結合又は炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキレン;Z2は単結合、-S-、-SO-、-NHSO2-、-O-又は-NHCO-;R1は置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよい5~8員の芳香族複素環式基、又は置換されていてもよい炭素数3~6のシクロアルキル」
と訂正する。
訂正事項3-4
上記訂正事項3-2で訂正した記載のうち、
「(「置換されていてもよい」の各置換基は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル、ハロゲンおよびアルコキシから選択される)」
とあるのを、
「(「置換されていてもよい」の各置換基は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル、ハロゲンおよびアルコキシから選択される);ただし、ただし、Z1、Z2及びZ3は、同時に単結合ではない)」
と訂正する。
訂正事項3-5
上記訂正事項3-2で訂正した記載のうち、
「で示される基で置換されていてもよく;」
とあるのを、
「で示される基で、=Zが結合している炭素原子を1位とした場合の3位で置換されていてもよく;」」
と訂正する。
訂正事項3-6
上記訂正事項3-1で訂正した記載のうち、
「さらに、RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されている以外の位置で、」
とあるのを、
「さらに、RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されている以外の位置で、かつ、=Zが結合している炭素原子の隣接位で」
と訂正する。
訂正事項3-7
上記訂正事項3-1で訂正した記載のうち、
「アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル及びアルケニルからなる群から選択される置換基により置換されていてもよい。) 」
とあるのを、
「アルキルにより置換されていてもよい。)」
と訂正する。
訂正事項3-8
上記訂正事項3-1で訂正した記載のうち、
「で示される化合物、その製薬上許容される塩又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、」
とあるのを、
「で示される化合物(ただし、N-(4-フルオロベンジル)-5-ヒドロキシ-1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリミジン-4-カルボキサミドを除く)、その製薬上許容される塩又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、」
と訂正する。
3.訂正の適否の判断
訂正事項1-1は、RA中の「式:-Z1-Z2-Z3-R1」で示される基を「4-フルオロベンジル」とすることを目的とするものである。
また、RC及びRDが形成する環が置換されていてもよい「式:-Z1-Z2-Z3-R1」の説明箇所において、RA中の「式:-Z1-Z2-Z3-R1」で示される基についての説明を引用し「前記と同意義である」としていたものを、上記訂正に伴い、「前記と同意義」の内容を具体的に記載するものである。
したがって、訂正事項1-1は、特許法第134条の2第1項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び、同法同条同項第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、発明の詳細な説明の段落【0018】において、RA中の「式:-Z1-Z2-Z3-R1」で示される基として「4-フルオロベンジル」が、記載され、また、実施例の記載において化合物A-7などの、RA中の「式:-Z1-Z2-Z3-R1」で示される基が「4-フルオロベンジル」である化合物が記載されているから、訂正事項1-1は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項1-1は、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
訂正事項1-2は、RC及びRDが形成する環が置換されていてもよい「アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル及びアルケニルからなる群から選択される置換基」が置換する位置について「式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されている以外の位置で」としていたものを、上記訂正に伴い、「式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されている以外の位置で、かつ、=Zが結合している炭素原子の隣接位で」とするものである。
したがって、訂正事項1-2は、特許法第134条の2第1項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、発明の詳細な説明の段落【0006】~【0009】、【0020】における一般的な記載に加え、実施例の記載において化合物A-7などの、「アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル及びアルケニルからなる群から選択される置換基」が「式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されている以外の位置で、かつ、=Zが結合している炭素原子の隣接位で」置換している化合物が記載されているから、訂正事項1-2は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項1-2は、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
訂正事項1-3は、RC及びRDが形成する環が置換されていてもよい「アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル及びアルケニルからなる群から選択される置換基」を「アルキル」とするものである。
したがって、訂正事項1-3は、特許法第134条の2第1項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、発明の詳細な説明の段落【0021】における一般的な記載に加え、実施例の記載において化合物A-7などの、「アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル及びアルケニルからなる群から選択される置換基」が「アルキル」である化合物が記載されているから、訂正事項1-3は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項1-3は、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
訂正事項2-1は、本件訂正前の請求項2が請求項1を引用する記載となっていたのものを、請求項1を引用しない記載とするものである。
したがって、訂正事項2-1は、特許法第134条の2第1項第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項2-1は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項2-1は、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
訂正事項2-2は、訂正事項2-1で訂正後の請求項2において、さらに、RA中の「式:-Z1-Z2-Z3-R1」で示される基を「4-フルオロベンジル」とするものであり、
RC及びRDが形成する環が置換されていてもよい「式:-Z1-Z2-Z3-R1」の説明箇所において、RA中の「式:-Z1-Z2-Z3-R1」で示される基についての説明を引用し「前記と同意義である」としていたものを、上記訂正に伴い、「前記と同意義」の内容を具体的に記載するものである。
したがって、訂正事項2-2は、特許法第134条の2第1項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び、同法同条同項第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項2-2は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項2-2は、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
訂正事項2-3は、訂正事項2-1で訂正後の請求項2において、さらに、RC及びRDが形成する環が置換されていてもよい「アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル及びアルケニルからなる群から選択される置換基」を「アルキル」とするものである。
したがって、訂正事項2-3は、特許法第134条の2第1項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2-3は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項2-3は、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
訂正事項3-1は、本件訂正前の請求項3が請求項1を引用する記載となっていたのものを、請求項1を引用しない記載とするものである。
したがって、訂正事項3-1は、特許法第134条の2第1項第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項3-1は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項3-1は、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
訂正事項3-2は、訂正事項3-1で訂正後の請求項3において、さらに、RA中の「式:-Z1-Z2-Z3-R1」で示される基を「4-フルオロベンジル」とするものであり、
RC及びRDが形成する環が置換されていてもよい「式:-Z1-Z2-Z3-R1」の説明箇所において、RA中の「式:-Z1-Z2-Z3-R1」で示される基についての説明を引用し「前記と同意義である」としていたものを、上記訂正に伴い、「前記と同意義」の内容を具体的に記載するものである。
したがって、訂正事項3-2は、特許法第134条の2第1項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び、同法同条同項第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3-2は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項3-2は、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
訂正事項3-3は、訂正事項3-1で訂正後の請求項3において、さらに、「RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1及びZ3はそれぞれ独立して単結合又は炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキレン;Z2は単結合、-S-、-SO-、-NHSO2-、-O-又は-NHCO-;R1は置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよい5~8員の芳香族複素環式基、置換されていてもよい炭素数3~6のシクロアルキル又は置換されていてもよいヘテロサイクル」を「RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1及びZ3はそれぞれ独立して単結合又は炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキレン;Z2は単結合、-S-、-SO-、-NHSO2-、-O-又は-NHCO-;R1は置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよい5~8員の芳香族複素環式基、又は置換されていてもよい炭素数3~6のシクロアルキル」とするものである。
したがって、訂正事項3-3は、特許法第134条の2第1項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3-3は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項3-3は、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
訂正事項3-4は、訂正事項3-1で訂正後の請求項3において、さらに、「(「置換されていてもよい」の各置換基は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル、ハロゲンおよびアルコキシから選択される)」を「(「置換されていてもよい」の各置換基は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル、ハロゲンおよびアルコキシから選択される);ただし、Z1、Z2及びZ3は、同時に単結合ではない)」とするものである。
したがって、訂正事項3-4は、特許法第134条の2第1項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3-4は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項3-4は、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
訂正事項3-5は、訂正事項3-2で訂正後の請求項3において、「で示される基で置換されていてもよく;」を「で示される基で、=Zが結合している炭素原子を1位とした場合の3位で置換されていてもよく;」とするものである。
したがって、訂正事項3-5は、特許法第134条の2第1項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3-5は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項3-5は、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
訂正事項3-6は、訂正事項3-1で訂正後の請求項3において、さらに、「さらに、RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されている以外の位置で」を「さらに、RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されている以外の位置で、かつ、=Zが結合している炭素原子の隣接位で」とするものである。
したがって、訂正事項3-6は、特許法第134条の2第1項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3-6は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項3-6は、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
訂正事項3-7は、訂正事項3-1で訂正後の請求項3において、さらに、「アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル及びアルケニルからなる群から選択される置換基により置換されていてもよい。)」を「アルキルにより置換されていてもよい。)」とするものである。
したがって、訂正事項3-7は、特許法第134条の2第1項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3-7は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項3-7は、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
訂正事項3-8は、訂正事項3-1で訂正後の請求項3において、さらに、「で示される化合物、その製薬上許容される塩又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、」を「で示される化合物(ただし、N-(4-フルオロベンジル)-5-ヒドロキシ-1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-4-カルボキサミドを除く)、その製薬上許容される塩又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、」とするものである。
したがって、訂正事項3-8は、特許法第134条の2第1項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3-8は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項3-8は、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
そうすると、訂正事項1-1~3-8からなる本件訂正請求による訂正は、特許法第134条の2第1項第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とし、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものであるので、訂正後の請求項1、2、3について訂正を認める。
また、訂正後の請求項2、3に係る訂正事項2-1、3-1は、引用関係の解消を目的とする訂正であって、その訂正は認められるものである。そして、特許権者から、訂正後の請求項2、3について訂正が認められるときは請求項1とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項2、3について請求項ごとに訂正することを認める。
第3.本件特許発明
上記訂正の結果、特許第5207392号の特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明3」といい、まとめて「本件特許発明」という場合がある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、
RAは式:
【化3】
(式中、式:-Z1-Z2-Z3-R1で示される基は、4-フルオロベンジル);
Yはヒドロキシ;
Zは酸素原子;
RC及びRDは一緒になって隣接する炭素原子と共に5員又は6員のヘテロ原子を含んでいてもよい環を形成し、該環はベンゼン環との縮合環であってもよい;
RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1及びZ3はそれぞれ独立して単結合又は炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキレン;Z2は単結合、-S-、-SO-、-NHSO2-、-O-又は-NHCO-;R1は置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよい5~8員の芳香族複素環式基、置換されていてもよい炭素数3~6のシクロアルキル又は置換されていてもよいヘテロサイクル(「置換されていてもよい」の各置換基は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル、ハロゲンおよびアルコキシから選択される))で示される基で置換されていてもよく;
さらに、RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されている以外の位置で、かつ、=Zが結合している炭素原子の隣接位でアルキルにより置換されていてもよい。)
で示される化合物、その製薬上許容される塩又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、インテグラーゼ阻害剤である医薬組成物。
【請求項2】
式(I):
【化1】
(式中、
RAは式:
【化3】
(式中、式:-Z1-Z2-Z3-R1で示される基は、4-フルオロベンジル);
Yはヒドロキシ;
Zは酸素原子;
RC及びRDは一緒になって隣接する炭素原子と共に5員又は6員のN原子を含む環を形成し;
RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1及びZ3はそれぞれ独立して単結合又は炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキレン;Z2は単結合、-S-、-SO-、-NHSO2-、-O-又は-NHCO-;R1は置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよい5~8員の芳香族複素環式基、置換されていてもよい炭素数3~6のシクロアルキル又は置換されていてもよいヘテロサイクル(「置換されていてもよい」の各置換基は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル、ハロゲンおよびアルコキシから選択される))で示される基で置換されていてもよく;
さらに、RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されている以外の位置で、アルキルにより置換されていてもよい。)
で示される化合物、その製薬上許容される塩又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、インテグラーゼ阻害剤である医薬組成物。
【請求項3】
式(I):
【化1】
(式中、
RAは式:
【化3】
(式中、式:-Z1-Z2-Z3-R1で示される基は、4-フルオロベンジル);
Yはヒドロキシ;
Zは酸素原子;
RC及びRDは一緒になって隣接する炭素原子と共に6員のヘテロ原子を含む環を形成し;
RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1及びZ3はそれぞれ独立して単結合又は炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキレン;Z2は単結合、-S-、-SO-、-NHSO2-、-O-又は-NHCO-;R1は置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよい5~8員の芳香族複素環式基、又は置換されていてもよい炭素数3~6のシクロアルキル(「置換されていてもよい」の各置換基は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル、ハロゲンおよびアルコキシから選択される);ただし、ただし、Z1、Z2及びZ3は、同時に単結合ではない)で示される基で、=Zが結合している炭素原子を1位とした場合の3位で置換されていてもよく;
さらに、RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されている以外の位置で、かつ、=Zが結合している炭素原子の隣接位でアルキルにより置換されていてもよい。)
で示される化合物(ただし、N-(4-フルオロベンジル)-5-ヒドロキシ-1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリミジン-4-カルボキサミドを除く)、その製薬上許容される塩又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、インテグラーゼ阻害剤である医薬組成物。 」
第4.請求人の主張
請求人は、審判請求書において、「特許第5207392号発明の特許請求の範囲の請求項1、2および3に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求める。」と主張しているところ、当該無効理由の概要は、審判請求書に記載された事項からみて、以下の無効理由1~4である。
また、証拠方法として以下の甲第1~28号証を提出している。
(1)無効理由
無効理由1
本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明1~3に係る化合物がインテグラーゼ阻害活性を有することの薬理試験結果が記載されていないから、また実際に、本件特許発明1~3に係る化合物はインテグラーゼ阻害活性を有さないことが明らかな化合物を包含しているから、発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1~3を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
したがって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。(以下、「無効理由1」という。)
なお、本件特許は、特願2003-521202号(以下、「原出願」という。)の一部を新たな特許出願としたものに係ることから、特許法第36条第4項第1号についての判断の基準日は、原出願の出願日とみなされる、原出願の国際出願日である2002年8月8日(以下、「本件出願時」という。)である。
また、請求人は、無効理由1について、以下の主張をしている。
(請求人の主張1)
「本件特許発明に係る明細書には、本件特許発明がインテグラーゼ阻害活性を有することの薬理試験結果が記載されていない。よって、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明を実施できる程度に、明確かつ十分に記載するものではない。」(請求書3頁7~11行)
(請求人の主張2)
「本件特許化合物が2メタルキレータータイプのインテグラーゼ阻害剤であることは本件明細書等に記載も示唆もされていないし、Jay A. Grobler博士の宣誓書(甲第10号証)において証明されているとおり、そもそも、2メタルキレーター構造と末端に環構造を有する置換基との特徴を備える化合物でもインテグラーゼ阻害活性を有さないものは多数存在するので、本件特許化合物が2メタルキレータータイプのインテグラーゼ阻害剤として機能しないから、本件明細書の記載から本件特許化合物を含む本件発明化合物がインテグラーゼ阻害活性を有する2メタルキレータータイプの阻害剤であると当業者は理解することができない。」(弁駁書18頁13行~20頁18行)
(請求人の主張3)
「本件優先日当時には、少なくとも、HIVのインテグラーゼの活性部位の構造、位置、形状が必ずしも他のインテグラーゼの活性部位の構造、位置、形状と同一か、または同じ特徴を有するとは、当業者は認識しなかった。とりわけ、HIVのインテグラーゼの結晶構造は本件優先日当時には不明であった。したがって、トリ肉腫ウイルスのインテグラーゼの活性部位に2つの金属イオンが存在しているからHIVのインテグラーゼも同様である、と本件優先日当時の当業者が認識し得たとする被請求人の主張は根拠を欠く。」(弁駁書34頁9~18行)
(請求人の主張4)
「酵素アッセイは、試験の対象となる化合物をふるいにかけるための使い勝手の良い出発点に過ぎず、同化合物の阻害活性の可能性を調べる上では十分とは到底いえないが、本件明細書には酵素アッセイが行われたことは記載されているものの進んで細胞アッセイが行われたことは全く示されていないため、本件明細書に接した当業者は、細胞アッセイが実施されていない本件特許化合物を含めた本件発明化合物が実際にインテグラーゼ阻害剤である医薬組成物として効果を有するのか判断することもできない。」(弁駁書37頁19行~42頁4行)
(請求人の主張5)
「しかし、一般に明細書に薬理試験結果等が記載されており、その補充等のために、出願後に意見書や薬理試験結果等を提出することが許される場合はあるにしても、当該明細書に薬理試験結果等の客観的な裏付けとなる記載が全くないような場合にまで、出願後に提出した薬理試験結果等を考慮することは、特許発明の内容を公開したことの代償として独占権を付与するという特許制度の趣旨に反するものであり、許されないというべきである(知財高判平成28年3月31日(平成27年(行ケ)第10052号等参照)。」(弁駁書44頁3~9行)
(請求人の主張6)
「被請求人の反論および証拠を最大限被請求人に有利に考慮しても、本件優先日当時の技術常識としては以下の事項が挙げられるに過ぎない。
1. キレーター構造を有する化合物はインテグラーゼ阻害剤として有望である。
2. インテグラーゼ阻害活性を有すると見られていた「ある種の化合物」は、そのキレーター構造がインテグラーゼの活性部位に存在する2価の金属イオンにキレートすることによって、インテグラーゼ阻害活性を発現している可能性がある。
3. HIVのインテグラーゼの活性部位に存在する金属イオンの数は2つである可能性がある。」(口頭審理陳述要領書に添付された技術説明資料の4頁上欄)
(請求人の主張7)
「以下の事項も本件優先日当時技術常識であった。
4. ある化合物が、キレーター構造を有したり、末端に環構造を有している置換基を備えていたりしても、インテグラーゼ阻害活性を示さないことが多い。
5. ある化合物がインテグラーゼ阻害活性を示し、またインテグラーゼ阻害剤として機能したとしても、同化合物と化学構造が類似している化合物がインテグラーゼ阻害活性を示さず、またインテグラーゼ阻害剤として機能しないことは多々あること。わずかに1個の原子の違いによっても、インテグラーゼ阻害活性の有無に繋がり得る。
6. インテグラーゼ阻害剤となり得る候補は多数あっても、実際にインテグラーゼ阻害剤として有効な化合物はほとんど存在しなかった。」(口頭審理陳述要領書に添付された技術説明資料の4頁下欄)
(請求人の主張7-1)
「したがって、アミドと1,3,4-オキサジアゾールとが「バイオアイソスター」という一般論があったとしても(請求人としてはそのような一般論を認めるものではないが)、かかる一般論や化合物C-26がインテグラーゼ阻害活性を有しているとされていることに基づき、化合物C-71は化合物C-26と同様にインテグラーゼ阻害活性を有する等と当業者が理解したり推測したりすることはあり得ない。
・・
しかし、同宣誓書における試験においても確かめられているとおり、Merck #11は、そのIC50の値は100000nMを超えており、インテグラーゼ阻害活性を有していないのに対し、化合物D-9は、そのIC50の値が16160nMに押さえられている。」(弁駁書(2)の20頁10-25行)
無効理由2
本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明1~3に係る化合物がインテグラーゼ阻害活性を有することの薬理試験結果が記載されていないから、また実際に、本件特許発明1~3に係る化合物はインテグラーゼ阻害活性を有さないことが明らかな化合物を包含しているから、本件特許発明1~3は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。(以下、「無効理由2」という。
また、請求人は、無効理由2について、以下の主張をしている。
(請求人の主張8)
「無効理由1と同様の理由により、本件明細書は本件特許発明を記載したものとはいえない。」(請求書12頁14~17行、弁駁書45頁1~4行)
無効理由3
本件特許発明1~3は、その優先権主張(2001年8月10日、2001年12月5日、2002年6月28日)がいずれも認められないので、特許要件の判断基準日は、2002年8月8日(原出願の国際出願日)である。
そして、本件特許発明1~3は、甲第3号証に係る出願(特願2003-537644号 国際出願日 2002年10月21日 優先権主張 2001年10月26日 2002年3月6日 国際公開 2003年5月1日)の願書に最初に添付した明細書に記載された発明と同一であるから、本件特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (以下、「無効理由3」という。)
また、請求人は、無効理由3について、以下の主張をしている。
(請求人の主張9)
本件特許は、3件の特許出願を基礎とする国内優先権の主張を伴うものであるが、特許法第29条の2に規定する特許要件の判断にあたり国内優先権の主張が認められる発明は、その国内優先権の主張の基礎となった出願に係る当初明細書等に記載された発明に限られるところ、いずれの基礎出願の当初明細書等にも、「化合物C-71」を含め、本件特許発明のようなRAの部分がNHCO基である構成を有する発明は、薬理試験結果はもとより、その製造方法すらも記載されていないから、本件特許発明は基礎出願の当初明細書等に記載されていたものではない。
したがって、本件特許発明の特許要件の判断基準日は、原出願日の2002年8月8日である。」(請求書13頁3~23行)
(請求人の主張10)
「甲第3号証に係る出願(特願2003-537644号)の願書に最初に添付した明細書には、下記の化合物(以下、「化合物18」という。)、
及び、化合物18がインテグラーゼ阻害剤であることが記載されているから、化合物18を有効成分とするインテグラーゼ阻害剤である医薬組成物の発明(以下、「化合物18に係る発明」という。)が記載されている。
また、化合物18は、特許明細書の請求項1に記載の式(I)で表される化合物に該当する。
したがって、化合物18に係る発明は、本件特許発明と同一である。」(請求書12頁19行~25頁下から3行)
(請求人の主張11)
「甲第3号証に係る出願(特願2003-537644号)の願書に最初に添付した明細書には、「化合物49」、「化合物32」、「化合物40」、「化合物41」、「化合物52」(化学構造式の記載を省略。)、及び、これらの化合物がインテグラーゼ阻害剤であることが記載されているから、これらの化合物を有効成分とするインテグラーゼ阻害剤である医薬組成物の発明(以下、「化合物49等に係る発明」という。)が記載されている。
また、これらの化合物は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項3に記載の式(I)で表される化合物に該当する。
したがって、化合物49等に係る発明は、本件特許発明3と同一である。」(弁駁書4頁18行~17頁3行)
無効理由4
平成24年4月3日受付け手続補正書による手続補正は、請求項1~3に係る化合物を、インテグラーゼ阻害活性を有することの薬理試験結果が記載されていない化合物のみに限定するものであるから、本件特許に係る出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものではない。
したがって、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものであり、特許法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。(以下、「無効理由4」という。)
また、請求人は、無効理由4について、以下の主張をしている。
(請求人の主張12)
「マーカッシュ形式等、当初明細書等に化学物質が多数の選択肢群の組み合わせの形で記載されている場合に、補正によって選択肢を削除した結果として、特定の選択肢の組み合わせが請求項に残り、その選択肢が唯一となることがあるが、そのような特定の選択肢の組み合わせを採用することが当初明細書等に記載されていない場合は、当初明細書の記載はかかる特定の選択肢の組み合わせの採用を意味していたとは認められないため、その補正は新規事項の追加として許されないところ、これを本件特許に当てはめると、本件明細書に単にNHCO基の構成を有する化合物が開示されているだけでは、補正は許されず、NHCO基の構成を有する化合物が「インテグラーゼ阻害剤」として本件明細書中に記載されていなければならない。そして、特定の化合物からなる医薬発明が明細書に記載されていると認められるためには、当該医薬発明が化合物として明細書に形式的に記載されているのみでは足りず、少なくとも、薬理試験結果等、当該医薬発明が医薬用途を実現するものであることを示す実施例が挙げられていなければならない。」(請求書26頁2行~28頁25行)
無効理由5
平成29年4月13日付け訂正請求書による訂正後の特許請求の範囲の請求項1には、「式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)」との記載があるが、この記載より前に「式:-Z1-Z2-Z3-R1」という記載が2箇所有り、かつ、それぞれの式中の、Z1、Z2、Z3及びR1の意味する内容が異なっている。
そうすると、上記記載における「前記」が、この記載より前のいずれの記載を意味するのかに応じて、上記記載の意味する内容が異なるものになるところ、「前記」が、この記載より前のいずれの記載を意味するのかが明確ではない。
請求項2及び3の記載についても同様である。
したがって、平成29年4月13日付け訂正請求書による訂正後の特許請求の範囲の記載は、明確ではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。(以下、「無効理由5」という。)
なお、無効理由5は、平成29年5月31日付け弁駁書(2)で請求の理由に新たに追加されたものであるから、請求の理由の要旨を変更するものであるが、上述のとおり、無効理由5は、平成29年4月13日付け訂正請求により特許請求の範囲が訂正されたことにより新たに生じた無効理由について、請求の理由を補正する必要が生じたものであり、かつ、審理を不当に遅延させるおそれがないことが明らかなものであるから、特許法第131条の2第2項の規定により、合議体は、平成29年7月○○日付けの補正の許否の決定において、無効理由5を追加する補正を認める決定をした。
(2)証拠方法
甲第1号証:国際特許出願PCT/GB/2002/004753号に係る優先権証明書(添付書類である米国特許出願60/339,568の明細書の写しを含む。)
甲第2号証:国際公開第2003/35077号
甲第3号証:特表2005-511543号公報
甲第4号証:本件特許に係る2012年(平成24年)4月3日付け手続補正書
甲第5号証:本件特許に係る願書に最初に添付した特許請求の範囲
甲第6号証:本件特許に係る願書に最初に添付した当初明細書
甲第7号証:国際公開第2002/30930号
甲第8号証:本件特許に係る2012年4月18日付け拒絶査定
甲第9号証:本件特許に係る2012年8月6日付け審判請求書
甲第10号証:2014年1月27日付けJay A.Grobler博士の宣誓書
甲第11号証:本件特許に係る優先権証明書(特願2001-245071号)
甲第12号証:本件特許に係る優先権証明書(特願2001-370860号)
甲第13号証:本件特許に係る優先権証明書(特願2002-191483号)
甲第14号証:Nouri Neamati教授の報告書(2016年8月15日付け)
甲第15号証:佐藤彰彦の「あたらしい抗ウイルス薬ができるまで」と題するスライド(作成日不明)
甲第16号証:藤田稔夫ほか「薬物の構造活性相関-ドラッグデザインと作用機作研究への指針」、株式会社南江堂、1979年1月10日、p1~3
甲第17号証:C.G.Wermuth編集「最新 創薬化学 上巻」,株式会社テクノミック、1998年8月15日、p211~225
甲第18号証:Y.Pommierほか、「INHIBITORS OF HUMAN IMMUNODEFICIENCY VIRUS INTEGRASE」Advances in Virus Research,1999 Vol.52 p427~458
甲第19号証:J.Waiほか、「4-Alyl-2,4-dioxobutanoic Acid Inhibitors of HIV-1 Integrase and Viral Replication in Cells」、Journal of Medicinal Chemistry 2000 Vol.43 No.26 p4923~4926
甲第20号証:D.Hazudaほか「Discovery and Analysis of Inhibitors of Human Immunodeficiency Integrase」Drug Design and Discovery 1997 15(1) p17~24
甲第21号証:2016年8月3日付け被請求人作成の準備書面(原告その2)
(当審注:「原告」とは塩野義製薬株式会社であり、本件審判に係る被請求人である。)
甲第22号証:2015年8月14日付けNouri Neamati教授の報告書
甲第23号証:2016年7月29日付けZeger Debyser教授の報告書
甲第24号証:A.Paniほか「Anti-HIV-1 Integrase Drugs: How Far from the Shelf」 Current Pharmaceutical Design,2000 6 p569~584
甲第25号証:本件特許に関連する欧州における訴訟において、Armold J裁判官が下した2015年11月5日付け指示命令第7項に基づき作成された技術的手引書
甲第26号証:本件特許に関連する欧州における訴訟に関する、2016年11月25日付け、イギリス高等法院衡平法部特許裁判所、事件番号HP-2015-000040判決
甲第27号証:本件特許に関連する欧州における訴訟に関する、2016年10月6日付け、ドイツデュッセルドルフ地方裁判所の決定(事件番号不明。なお、EP特許第1422218号に関する塩野義vsMerck Sharp & Dohmeの事件)
甲第28号証:平成29年4月26日付け被請求人作成の準備書面(原告その9)
(当審注:「原告」とは塩野義製薬株式会社であり、本件審判に係る被請求人である。)
第5.被請求人の主張
被請求人は、平成28年 4月22日付けの答弁書において、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と主張するとともに、請求人が主張する無効理由1~4のそれぞれに対し、下記の主張をしている。
また、証拠方法として以下の乙第1の1から1の16号証、2~20号証、20の1から20の2号証、21~68号証と、甲第26号証訳文、及び、甲第27号証訳文を提出している。
(1)無効理由に対する主張
無効理由1に対する主張
(被請求人の主張1)
「請求人は、特許法第36条違反など種々の無効理由を主張するが、その主たる根拠は本件特許の特許請求の範囲に記載された化合物(以下「本件特許化合物」と称する)の薬理データが本件明細書中に記載されていないことにある。
しかしながら、出願当初の明細書には、本件特許化合物を含む包括的な化合物(以下、「本件発明化合物」と称する)が記載されているところ、本件技術分野における当業者には、本件発明化合物がインテグラーゼの活性中心に存在する2つの金属イオンに配位結合することによりインテグラーゼ活性を阻害する2核架橋型3座配位子(2メタルキレーター)タイプの阻害剤であることが明らかである。そして、本件明細書には、本件発明化合物について薬理データが豊富に存在しており、これらの薬理データが明示されている化合物と同様、本件特許化合物もインテグラーゼ阻害作用を有することは当業者が容易に理解し得るところである。」(答弁書5頁16行~6頁7行)
(被請求人の主張2)
「インテグラーゼは、活性中心に金属イオンを有し、これを活性発現の必須因子とする酵素(金属酵素)であることが知られていた(乙第1号証の5)」(答弁書11頁11~13行)
(被請求人の主張3)
「キレートを形成する多座配位子をキレート配位子(以下、「キレーター」と称する)」(答弁書12頁9~10行)
(被請求人の主張4)
「本件優先日(2001年8月)当時、インテグラーゼの阻害剤として、キレータータイプの阻害剤が有力な阻害剤の候補となっていた(乙第1号証の6)。活性が確認されたキレータータイプのインテグラーゼ阻害剤としては、例えば、以下のものが知られていた(詳細は、乙第1号証の1(小池教授意見書)の別紙1、乙第1号証の7~11参照)。・・また、これらの阻害剤の多くでは、キレーター部分に加えて、末端に環構造を有する置換基を有していた(下図5及び下図6の青破線)。」(答弁書13頁3~7行)
(被請求人の主張5)
「本発明者らは・・比較的優れたインテグラーゼ阻害作用を示す鎖状化合物は、共通して2核架橋型3座配位子構造と末端に環構造を有する置換基(上記図5及び図6の青破線)を有することを見出した。一方で、HIVと同様にインテグラーゼを有するトリ肉腫ウイルスのインテグラーゼの活性中心に2つの金属イオンが存在していることから、HIVのインテグラーゼの活性中心に存在する金属イオンの数も、1つではなく、2つであるとの考え方が有力となってきていた(乙第1号証の12~15)。これらの知見をもとに、キレーター部分構造として、背面の環状構造によって配位原子が同方向に連立した2メタルキレータータイプ構造(下図7参照、図中の記号は上記参照)を採用し、末端に環構造を有する置換基と組み合わせることにより、本件発明注3を完成するに至った。本件発明の化合物には、大きく分けて下図7に示す2つの基本構造注4が含まれるが、以下に詳述するとおり、これらの化合物は2つの金属イオンにキレートする2核架橋型3座配位子(以下、「2メタルキレーター」と称する)としての特徴的な構造(赤実線)と、末端に環構造を有する置換基(-Z1-Z2-Z3-R1;青破線)を持つという共通点を有する。」(答弁書15頁5~23行)
(被請求人の主張6)
「以下に述べるとおり、この特徴的な構造である2メタルキレーター部分が本件発明に係る化合物が有するインテグラーゼ阻害作用の根幹を成している。
・・・
(1)本件発明化合物の基本となるキレーター部分構造・・・この3つの官能基が、インテグラーゼ酵素に配位した2つの2価金属イオン(M2+)とキレートを形成することで、インテグラーゼの酵素活性を失活させることができる。
図8
(2)本件発明化合物の重要な特徴は、上記部分構造にある1つ目のカルボニル基の炭素原子とβ位の炭素原子とが、キレートを形成し得る部分構造の背面で5~6員の環状構造を形成する点にある。・・・この3つの配位原子の同方向への連立効果については、後に学術論文で実証されている(乙第3号証)。
(3)また、本件発明化合物は、後述するとおり、末端に環構造を有する置換基(-Z1-Z2-Z3-R1)が上記図8の背面の環状構造、C環またはRBの少なくとも1つに置換することも特徴としているが、この置換基は、従来のインテグラーゼ阻害剤にもみられ、2メタルキレーター構造に加えてそのような置換基を有することで、より良好な活性を示すことになる。
(4)本件発明の化合物によるインテグラーゼ阻害作用のメカニズムを、実施例の化合物A-7を例として図示すれば、以下のとおりとなる。(乙第1号証の1)。
図9
」(答弁書16頁1行~18頁)
(被請求人の主張7)
「当時の技術常識を参酌すれば、本件明細書全体の記載と薬理データから、本件特許化合物がインテグラーゼ阻害作用を有することを当業者が理解できる」(答弁書23頁3~5行)
(被請求人の主張8)
「イ 本件優先日当時の技術常識について
前記第3、2および3に記載したとおり、2001年8月(本件優先日)当時、インテグラーゼは、活性中心に金属イオンを有する酵素であることが知られており(乙第1号証の5)、キレータータイプの阻害剤が有力な阻害剤の候補となっていた(乙第1号証の1(小池教授意見書)の別紙1)。
また、前記第4、1に記載したとおり、2001年8月当時には、インテグラーゼの活性中心に存在する金属イオンの数としては、1つではなく、2つであるとの考え方が有力となってきていた(乙第1号証の12~15)。」(答弁書24頁17~23行)
(被請求人の主張9)
「 本件明細書(甲第6号証注6)には、本件発明化合物の特徴(1)~(4)(当審注:原文では○で囲んだ数字で表記されている。以下、同様。)が以下のとおり記載されており、この特徴(1)~(4)の記載は、上記イのような技術常識を持つ当業者にとって、2メタルキレーター化合物であるインテグラーゼ阻害剤を意識した表記になっている。
(1)下式(I)の基本骨格を持ち、
(2)Z、YがO、OH等であると共に(段落0018、項目2)、3))、RAが置換基の結合手に隣接して非置換の窒素を持つ含窒素環状構造:
又は、置換基の結合手に隣接してC=X基(XはO等)を持つ置換基C(=X)RB:
であり(同段落項目4)~6))、
(3)RC、RDが隣接する炭素原子とともに環状構造を形成し(同段落項目1))、
(4)-Z1-Z2-Z3-R1がRC/RD環、C環又はRBの少なくとも1つに置換すること(同段落項目8))、
すなわち、上記の特徴(1)、(2)については、Zと、Yと、RA中のN又はC=Xとが作る部分構造が、インテグラーゼの活性中心に存在する2つの金属イオンに配位結合する3座配位子(2メタルキレート)構造であることが当業者には明らかである。本件明細書には、上記部分構造がキレーター部分であることは明記されていないが、=OやOHにおけるO、-SHにおけるS、-NHや芳香族複素環における非置換のNが非共有電子対を有する配位原子であることは2001年8月以前からの技術常識であるから、当業者であれば、上記部分構造が3座配位子特有の構造であり、インテグラーゼの活性中心に存在する2つの金属イオンに対するキレート能を有することを理解できる(乙1号証の1:小池教授意見書)
上記特徴(3)については、RC、RDが隣接する炭素原子とともに平面の環状構造を形成し、3座配位子部分(2メタルキレーター部分)の背面にあって、その立体配置の自由度を規制していることから、当業者であれば、2メタルキレーター部分の配位原子の方向制御に寄与していることを理解できる(乙第1号証の1:小池教授意見書)。
上記特徴(4)の置換基(-Z1-Z2-Z3-R1)は、末端に環構造を有することが特徴であり、従来のインテグラーゼ阻害剤にも見られる(乙第1号証の1(小池教授意見書)の別紙1)。本件発明化合物は、2メタルキレーター構造に加えてそのような置換基を有することで、より良好な活性を示すことになる(乙第1号証の1:小池教授意見書)。
したがって、当業者が本件明細書を読めば、本件発明化合物が、キレーター構造と、末端に環構造を有する置換基(上記特徴(4))との組み合わせにおいて、背面の環状構造によって配位原子が同方向に連立した2メタルキレーター構造(上記特徴(1)~(3))を採用した点に特徴があることを理解できる。
また、本件明細書には、(2)の含窒素環状構造およびRB、ならびに(3)のRC/RD環として多種多様な構造が実施例として記載されており、特にRBについては、極めて多様な構造の置換基でありうることが開示されている(段落0018、項目7)、10))。」(答弁書25頁3行~27頁7行)
(被請求人の主張10)
「本件特許化合物のインテグラーゼ阻害作用は、本件特許出願後の薬理試験データによっても裏付けられる。
本件出願の審査において、本件特許化合物に含まれる4つの化合物について、薬理データが提出されており(乙第9号証:意見書)、さらに、12個の化合物について、実際にインテグラーゼ阻害作用が確認されている(乙第10号証:吉永報告書)。これらの薬理データによれば、本件特許化合物が現にインテグラーゼ阻害作用を有することは明らかであり、本件特許が実施可能要件を充足することは十分に裏付けられている。」(答弁書33頁8~16行)
(被請求人の主張11)
「この点は、合議体が指摘されるように、本件発明に係るインテグラーゼ阻害剤の技術分野についても同様に妥当する。具体的には、答弁書に詳述したとおり、本件発明のインテグラーゼ阻害剤の場合、(1)背面の環状構造によって配位原子が同方向に連立した2メタルキレーター構造および(2)末端に環構造を有する置換基が作用機序に影響する部分構造であり、これらが共通していれば、その余の構造が変わってもインテグラーゼ阻害作用を有すると考えることができる。とりわけ、後で説明する乙第21号証の1(訴訟甲30の1)(広島大学大学院 小池教授の意見書:小池意見書2)で述べられているとおり、キレート型配位結合の結合力は強力であることは技術常識であるから、上記部分構造(1)、(2)(とくに2メタルキレーター構造である部分構造(1)を保持する限り、他の構造の異同に関わらずインテグラーゼ阻害作用を有すると合理的に期待することができる。
一方、化合物全体の化学構造が一見類似していても、上記部分構造(1)、(2)が異なるものとなった場合は、インテグラーゼ阻害作用が大きく低下する場合がある。請求人が提出した甲第10号証(Grobler宣誓書)は、まさにそのような例に相当する。(口頭審理陳述要領書7頁下から2行~8頁13行)
(被請求人の主張12)
「本件優先日当時の技術常識
(1)(当審注:原文では○で囲んだ数字で表記されている。以下、同様。)HIVインテグラーゼの活性中心に金属イオンを有し、その金属イオンの数は2個であるとの考えが広く知られていた。
(2)インテグラーゼ阻害剤としてキレータータイプが有望であった。
(3)キレータータイプのインテグラーゼ阻害剤の多くは、キレーター部分に加えて、末端に環構造を有する置換基(Z1-Z2-Z3-R1)を有していた。
(4) (1)(2)の前提として、キレートに関する以下の技術常識があった。
・キレート化合物の典型構造
・キレート結合は共有結合に匹敵する程度の強力な結合力を有すること」(平成28年10月4日付け上申書に添付された技術説明資料の17欄)
(被請求人の主張13)
「本件発明化合物の特徴(a)~(d)
(a)式(I)の基本骨格を持ち、
(b)Z、YがO、OHなどであるとともに、RAが
又は
(c)RC、RDが隣接する炭素原子とともに環状構造を形成
(d)-Z1-Z2-Z3-R1がRC/RD環、C環又はRBの少なくとも1つに置換する」(平成28年10月4日付け上申書に添付された技術説明資料の25欄)
(被請求人の主張14)
「技術常識(1)~(4)を考慮すれば、明細書に記載された本件発明化合物の特徴(a)~(d)を有する多種多様な化合物がインテグラーゼ阻害作用を有し、本件特許化合物はその例示であることを理解でき、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。
このような場合、実験成績証明書により、主張を裏付けることが認められている。」(平成28年10月4日付け上申書に添付された技術説明資料の39欄)
(被請求人の主張15)
「(ア)本件発明において、上記のような多種多様な構造が共通してインテグラーゼ阻害作用を奏する理由は、キレーター構造という作用機序の中心的構造が定まっているからに他ならず、それゆえ、本件発明化合物のような2メタルキレーター構造を有する限りにおいて、キレーター効果によるインテグラーゼ阻害作用をまったく示さない(効果が「0」である。)ことは理論上も考えにくい。この点は、上述の乙第21号証の1で説明されているとおりである。」 (平成28年9月20日付け口頭審理陳述要領書31頁下から6~4行)
(被請求人の主張16)
「(イ)上記のとおり、2メタルキレーター構造を有する限りにおいて、客観的事実としてキレーター効果によるインテグラーゼ阻害作用をまったく示さない(効果が「0」である。)ことは理論上考え難いものである。
そのうえ、本件発明化合物は、2メタルキレーター構造のみではなく、さらに、(1)背面環2メタルキレーター構造と、(2)末端に環構造を有する置換基という構造的特徴を備えることによって、実際上のインテグラーゼ阻害作用を担保しているのである。本件発明の出願後には、インテグラーゼの活性中心の構造が明らかとなり、その結果、上記(1)および(2)に基づく本件発明のインテグラーゼ阻害作用のメカニズムが証明されている。」 (平成28年9月20日付け口頭審理陳述要領書33頁下から5行~34頁4行)
(被請求人の主張17)
「 このように、IC50が100μMを超えたとしても、そのことは活性が相対的に低いことを示すだけであって、活性がないことを意味するものではない。
また、Grobler博士による酵素阻害試験におけるIC50が100μM(100000nM)を超えたというのは、濃度が100μMになっても50%阻害が達成できなかったため、これを超える濃度での実験は実施しなかったという意味であり、100μMを超えていくら濃度を上げても50%阻害が達成できなかったという意味ではない。ちなみに、上記にグラフを引用した乙第31号証(訴訟甲35)の例では、1000μMまで測定している。
以上のとおり、Grobler博士の宣誓書(甲第10号証)に記載のIC50の値に基づいて、17種類の化合物の活性がないとする請求人の主張は、明らかに根拠がない。」(平成28年9月20日付け口頭審理陳述要領書42頁3~14行)
(被請求人の主張18)
「本件明細書を理解するにあたって、技術常識(1)および(2)が科学的に実証されていることまでは必要とされず、当業者が十分な合理性を持って理解していれば足りる。すなわち、本件明細書には、典型的な2メタルキレーター構造が必須の構造として明記されており、2メタルキレーター構造として一見して理解できる具体的な化合物が豊富に記載されているから、HIVインテグラーゼの活性中心に存在する金属イオンの数が2個であるとのモデルが広く知られ、従来の有望なインテグラーゼ阻害剤が2価金属イオンへのキレートによって阻害作用を発現しているであろうことを当業者が理解していれば、構造の異なる種々の化合物について十分な薬理データが得られている理由が、本件発明化合物が2メタルキレーターとしてインテグラーゼ阻害作用を発揮していることにあることを当業者は十分に理解できる。このことは、金属イオンの数が2個であるとのモデルや、インテグラーゼ阻害剤が現にインテグラーゼの活性中心にキレートしていることが実証されているか否かによって左右されない。」 (平成28年11月8日付け上申書(2)9頁1~13行)
(被請求人の主張19)
「一方、請求人も認めるとおり、本件優先日当時の当業者は本件明細書および技術常識に基づいて本件発明化合物が2メタルキレーター構造を有していることを認識するのであるから、上記薬理データを見た当業者は、本件発明化合物のRA置換基において、インテグラーゼ阻害活性に寄与している部位はキレート配位子となる非置換窒素原子または酸素原子(上図矢印」であって、それが維持されている限り、それ以外の部分にはある程度の構造的な自由度があることを理解する。」 (平成28年11月8日付け上申書(2)20頁末行~21頁5行)
(被請求人の主張20)
「本件発明化合物について、本件明細書に27個の化合物について薬理データが記載されていることに加え、製造例が記載されている膨大な数の化合物についても、インテグラーゼ阻害作用があることが確認されている(乙第8号証)。」(答弁書30頁3~末行)
(被請求人の主張21)
「本件明細書に製造例が記載されている化合物とは異なる120個の化合物についての薬理データを乙第28号証として提出する。
合計で383個の本件発明化合物が、いずれも活性を示し、かつ、背面環2メタルキレーター構造と末端に環構造を有する置換基を有する点で共通の構造を有する他は極めてバラエティーに富む構造を有することから、本件明細書に記載された特徴を備えていれば、多種多様の構造の化合物について共通して活性が得られることが明らかである。」(平成28年9月20日付け口頭審理陳述要領書28頁15~25行)
(被請求人の主張21-1)
「本件訂正発明化合物1の化学構造は、一見して明らかなとおり、本件明細書に薬理データが記載された27個の化合物と極めて類似した構造を有している。
・・
したがって、本件訂正発明の構造が、薬理データが記載された化合物と異なるのは、RAが置換基部分(図中、青線)が前者ではアミドであるのに対して、後者では、含窒素ヘテロ環、アリールケトン、ヘテロアリールケトンである点である。」(上申書(3)10頁11行~13頁9行)
(被請求人の主張21-2)
「以上のことから、來海教授は、薬理データが記載されたA~M群の27個の化合物から以下に引用する事項が認識できたとしている。
(ア)母核自体の自由度は高く、5員又は6員のヘテロ原子を含んでいても良い環や、それらの環とベンゼン環との縮合環は、母核として使用出来る。
(イ)母核上のオキソ基、その隣接位のヒドロキシ基、さらにその隣接位の-C(=O)-RBまたは含窒素芳香族複素環(非置換窒素原子は結合手を有する原子に隣接する位置)の酸素原子や非置換窒素原子のおおよその位置が27個の化合物で共通している。
(ウ)-C(=O)-RBのRB自体は、上記の重ね合わせた図からの考察により、環に限定されるものではなく、他の基でもインテグラーゼ阻害作用を有する。
(エ)4-フルオロベンジル基などがRC及びRDが形成する環、C環又はRBの少なくとも1つに置換しているという点は、27個の化合物で共通している。」(上申書(3)20頁21行~21頁7行)
(被請求人の主張21-3)
「また、本件訂正発明化合物1は、請求人が活性を奏しないと主張した化合物(甲第10号証)を含まない範囲に限定されている。」(上申書(3)23頁6~7行)
(被請求人の主張21-4)
「(1) 審決の予告では、本件明細書を理解する前提として被請求人が主張した技術常識がすべて否定されたが、少なくとも以下の事項は、インテグラーゼ阻害剤の研究開発に従事する当業者であれば当然に知っており、このことは請求人も争っていない(平成28年9月20日請求人上申書(1)第5頁1行~第8頁末行)。
(1)インテグラーゼは、その酵素活性の中心的役割を果たす活性中心に2価金属イオンを有すること(乙第23号証、乙第24号証)。
(2)インテグラーゼ阻害剤の阻害活性発現のメカニズムとしてインテグラーゼの活性中心にある2価金属イオンへのキレート結合が提唱されていたこと(乙第1号証の6、乙第1号証の7、乙第24号証、乙第25号証、乙第26号証)。
・・・
その一方で、インテグラーゼの活性中心の金属イオンの数が2個であるとのモデルが、総説を集めた書籍(乙第23号証)やウィルス研究に関する書籍(乙第24号証)に明記されており、そのことを当時の当業者は当然に知っていた。したがって、本件訂正発明化合物1において2個の金属イオンにキレート結合する三座配位子として機能し得る構造が必須とされていることは、総説などに記載されたモデルに符合するものとして当業者には合理的に理解できる。」(上申書(3)26頁25行~30頁下から6行)
(被請求人の主張21-5)
「ここで、アミドと1,3,4-オキサジアゾールは、いわゆるバイオアイソスター(生物学的等価体)として等価であることは、総説論文である乙第65号証に記載されているとおり、当業者にはよく知られている。」(上申書(3)35頁1~3行)
無効理由2に対する主張
(被請求人の主張22)
「無効理由1に対する反論と同様の理由により、本件明細書は本件特許発明を記載したものであることは明らかである。」(答弁書39頁6~15行)
無効理由3に対する主張
(被請求人の主張23)
「当業者は、本件第一基礎出願時の技術常識と本件第一基礎出願明細書の記載に基づいて本件特許化合物を製造することができ、本件特許化合物が薬理活性を有することも理解できるから、本件特許は、第一基礎出願(出願日:2001年8月10日)の優先権を享受できるものである。」(答弁書40頁17~21行)
(被請求人の主張24)
「本件特許は、第一基礎出願に基づく優先権の利益を享受でき、本件特許発明の特許要件の判断基準日は、第一基礎出願の出願日である2001年8月10日であるから、2001年10月26日に出願された米国568出願明細書(甲第1号証)は、拡大先願の規定(特許法第184条の13第1項、特許法第29条の2)に基づく先願としての適格性を有しない。」(答弁書44頁18~17行)
無効理由4に対する主張
(被請求人の主張25)
「請求人が、新規事項追加であると主張する実体的な理由は、本件特許化合物の薬理試験データが本件明細書中に記載されていない点のみである。
しかしながら、薬理試験データは、実施可能要件の問題として議論される場合があるとしても、薬理試験データそのものを補正した場合を除いて、新規事項追加となるか否かに関わる問題ではない。」(答弁書45頁16~25行)
(被請求人の主張26)
「補正が新規事項追加に当たるか否かは、当該補正が新たな技術的事項を導入するか否かで判断されるべきものであるところ、補正前後の化合物は、インテグラーゼ阻害剤としての特徴部分が同一であることから、本件補正が新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかである。」(答弁書46頁7~20行)
(2)証拠方法
乙第1号証の1:平成28年2月22日作成、小池透博士(広島大学大学院教授)意見書
乙第1号証の2:中原昭次、柴田村治編、株式会社南江堂、化学の領域 増刊90号,昭和45年5月30日発行、p101~138(乙1号証の1添付資料1)
乙第1号証の3:A. Scozzafava、C. T. Supuran、J. Med. Chem. 2000 43 p3677~3687(2000年10月5日発行、乙1号証の1添付資料2)
乙第1号証の4:M. Cheng他、J. Med. Chem. 2000 43 p369~380(2000年2月10日発行、乙1号証の1添付資料3)
乙第1号証の5:F. Dyda他、Science 1994 Vol.266 p1981~1985(乙1号証の1添付資料4)
乙第1号証の6:Y. Pommier他、Antiviral Res.,2000 47 p139~148(2000年9月発行、乙1号証の1添付資料5)
乙第1号証の7:N. Neamati他、J. Med. Chem. 1998 41 p3202~3209(乙1号証の1添付資料6)
乙第1号証の8:国際公開第 99/50245 号(乙1号証の1添付資料7)
乙第1号証の9:D. J. Hazuda 他、Science 2000 Vol.287 p646~650(2000年1月28日発行、乙1号証の1添付資料8)
乙第1号証の10:国際公開第 00/39086号(2000 年7月6日発行、乙1号証の1添付資料9)
乙第1号証の11:国際公開第 01/017968 号(2001年3月15日発行、乙1号証の1添付資料10)
乙第1号証の12:G. Bujacz他、THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,1997 Vol. 272,p18161~18168(乙1号証の1添付資料11)
乙第1号証の13:J. Lubkowski他、THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,1998 Vol. 273 p32685~32689(乙1号証の1添付資料12)
乙第1号証の14:A. B. Hickman他、Molecular Cell,2000 5 p1025~1034(2000年6月1日発行、乙1号証の1添付資料13)
乙第1号証の15:P. A. Rice、T. A. baker、Nature Structural Biology 2001 8 p302~307 (2001年4月発行、乙1号証の1添付資料14)
乙第1号証の16:T. A. Steitz、J. A. Steitz、Proc. Natl. Acad. Sci. 1993 90 p6498~6502(乙1号証の1添付資料15)
乙第2号証:黒田六郎他、分析化学 1993年10月30日発行、p88~91
乙第3号証:T. Kawasuji他、Biooroganic & Medicinal Chemistry 2007 14 p5487~5492(2007年8月15日発行)
乙第4号証:本件特許に係る特願2009-57635号の原出願(特願2003-521202号)の審査に係る平成21年3月31日付け拒絶理由通知書
乙第5号証:本件特許に係る特願2009-57635号の原出願(特願2003-521202号)の審査に係る平成21年5月15日付け手続補正書
乙第6号証:本件特許に係る平成24年8月9日付け手続補正書
乙第7号証:佐々木正、作用分子設計、株式会社南江堂、1974年5月1日発行、p9
乙第8号証:平成28年2月22日作成、吉永智一博士報告書(1)
乙第9号証:本件特許に係る平成24年4月3日付け意見書
乙第10号証:平成28年2月22日作成、吉永智一博士報告書(2)
乙第11号証:Case Law of The Boards of Appeal of the European Patent Office、欧州特許庁、2013年9月発行(欧州特許庁審決の動向 第7版(第II章、C「開示の十分性」)
乙第12号証:Manual of PATENT EXAMINING PROCEDURE(MPEP)(§2164.05)2100章、米国特許商標庁、2015年11月発行
乙第13号証:本件特許に係る特願2009-57635号に対応する欧州特許出願第02749384.0号に係る異議の審査手続における2015年3月31日付け中間決定書
乙第14号証:本件特許に係る特願2009-57635号に対応する欧州特許出願第02749384.0号に係る異議の審査手続における2015年3月12日付け補正後のクレーム
乙第15号証:K. P. C. Vollhardt、N. E. Schore、「ボルハルト・ショアー 現代有機化学(下)」、株式会社化学同人発行、1996年8月10日、p811~825
乙第16号証:Z. D. Liu他、Bioorganic & Medicinal Chemistry 2001 9(3) p563~573(2001年3月発行)
乙第17号証:R. W. Taft他、Journal of the American Chemical Society 1963 85(20) p3146~3156
乙第18号証:T. W. Greene、P. G. M. Wuts、 「Protective Groups in Organic Chemistry Third Edition」John Wiley & Sons, Inc. 1999年発行、p266~269
乙第19号証:Sing-Yuen Sit他、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 1996 6(5) p499~504
乙第20号証:V. L. Gein他(ロシア文字による論文のタイトルの記載を省略)、Zhurnal Obshchei Khimii 1993 63(10) p2324~2328
乙第21号証の1:小池透博士(広島大学大学院教授)、意見書、平成28年7月20日作成(小池意見書2)
乙第21号証の2:長瀬博、山本尚編、創薬 薬物分子設計のこつ、エルゼビア・サイエンス株式会社 ミクス、2001年(平成13年)4月25日発行 p143~147(乙第21号証の1添付資料1)
乙第22号証:Takashi Kawasuji他、Journal of Medicinal Chemistry 2012 55 p8735~8744
乙第23号証:L. Haren他、ANUAL REVIEW OF MICROBIOLOGY 1999 Vol.53 p245~281
乙第24号証:Yves Pommier他、Advances in Virus Reserch 1999 Vol. 52 p427~458
乙第25号証:本件特許に係る特願2009-57635号に対応する欧州特許出願第02749384.0号に係る異議の審査手続において提出された2015年8月14日付けのNouri Neamati博士の宣誓書
乙第26号証:Nouri Neamati , Expert Oponion on Investigational Drugs 2001 Vol.10 No.2 p281~296
乙第27号証:Victor I. Ovcharenko他、Polyhedron 1997 Vol.16 No.8 p1279~1289
乙第28号証:平成28年7月29日付けの塩野義製薬株式会社(被請求人)の吉永智一の報告書(吉永報告書3)
乙第29号証:Arpita Agrawal 他、PNAS, 2012 Vol.109 No. 7 p2251~2256
乙第30号証:「IC50」に関するウィキペディアの記載、[online]インターネット<URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/IC50>
乙第31号証:He Zhao他、Journal of Medicinal Chemistry 1997 Vol.40 No.8 p1186~1194
乙第32号証:Mario Sechi他、Antiviral Chemistry & Chemotherapy 2005 16 p41~64
乙第33号証:Reveendra Dayam他、Journal of Medicinal Chemistry 2008 Vol.51 No.5 p1136~1144
乙第34号証:本件特許に係る特願2009-57635号に対応する欧州特許出願第02749384.0号に係る異議の審査手続において、2015年(平成27年)2月12日付けでMerck(請求人のグループ会社)が提出した書面
乙第35号証:吉田広志(北海道大学大学院法学研究科 教授)の平成28年7月28日付けの意見書
乙第36号証:平成19年10月10日言い渡しの平成18年(行ケ)第10232号の判決
乙第37号証:欧州特許庁審査ガイドライン(2015年11月版)、欧州特許庁、Part F - Chapter III-3 5.1 Only variants of the invention are incapable of being performed の項
乙第38号証:報告者木山竜一及び冨士雅弘(いずれも、被請求人塩野義製薬株式会社の社員)による「月間研究概要報告(4月)」と題する2001年4月26日付けの書類
乙第39号証:Tomokazu Yoshinaga他、Antimicrobial Agents and Chemotherapy 2015 Vol. 59 No. 1 p397~406
乙第40号証:TIVICAY (dolutegravir)に関するPrescribing Information(2015年8月改訂)、ViiV Healthcare作成、Highlights of Prescribing Information及びFull Prescribing Informationの項
乙第41号証:ISENTRESS (raltegravir)に関するPrescribing Information(2011年2月改訂)、ViiV Healthcare作成、Highlights of Prescribing Information及びFull Prescribing Informationの項
乙第42号証:STRIBILD (elvitegravir)に関するPrescribing Information(2012年8月作成)、ViiV Healthcare作成、Highlights of Prescribing Information及びFull Prescribing Informationの項
乙第43号証:国際公開第01/09114号
乙第44号証:国際公開第01/98248号
乙第45号証:「Recognizing our Heroes of Chemistry」と題するAmerican Chemical Societyの公式ホームページに記載の記事、[online]インターネット<URL:https://www.acs.org/content/acs /en/funding-and-awards/awards/industry/heroes.html>
乙第46号証:Akiko Kawashima 他、Eur. J. Biochem. 1998 vol.255 p12~23
乙第47号証:Joseph A. Ippolite 他、Int. J. Biol. Macromol. 1992 vol. 14 August p193~197
乙第48号証:S. M. N. Efange他、J. Med. Chem. 1990 33 p3133~3138
乙第49号証:Subramaniam Ananthan 他、J. Med. Chem. 1993 36 p479~490
乙第50号証:Zongchao Jia 他、The Journal of Biological Chemistry 1995 vol. 270 No.10 p5527~5533
乙第51号証:Tsantrizos教授(マギル大学化学部)の作成した「Second Expert Report of Professor Youla Stratigoula Tsatrizos」と題する2016年10月3日付けの報告書、
乙第52号証:Ralph J. Fessenden他著、(株)化学同人、基礎有機化学第1版第2刷、1995年5月20日発行、p324~339
乙第53号証:被請求人塩野義製薬株式会社の社員である森岡裕典の2016年10月28日付けの陳述書
乙第54号証:Michel Meyer他、Journal of the American Chemical Society 1997 vol. 119 No. 42 p10093~10103
乙第55号証:R. E. Bowman他、Journal of the Chemical Society 1957 p1583~1588
乙第56号証:特表2001-508811号公報、公表日2001年7月3日
乙第57号証: R. Richard Goehring 他、Journal of Medicinal Chemistry 1990 Vol. 33 No.3 p926~931
甲第26号証訳文
甲第27号証訳文
乙第58号証:首藤紘一 編集、分子設計、株式会社廣川書店、平成2年6月25日発行 p7~8
乙第59号証:來海教授(武庫川女子大学薬学部教授。)による意見書、平成29年4月10日作成
乙第60号証:国際公開第 00/39086号
乙第61号証:国際公開第 99/50245号
乙第62号証:国際公開第 02/36734号(2002 年5月10日発行)
乙第63号証:国際公開第 02/30930号(2002 年4月18日発行)
乙第64号証:国際公開第 01/17968号(2001 年3月15日発行)
乙第65号証:Chem. Rev. 1996 96 p3147~3176
乙第66号証:国際公開第 99/62513号
乙第67号証:国際公開第 01/00578号(2001 年1月4 日発行)
乙第68号証:国際公開第 02/30931号(2002 年4月18日発行)
第6.判断
1.無効理由1について
本件特許発明は、上述のとおり、医薬組成物の発明であるから、特許法第2条第3項第1号にいう物の発明である。また、物の発明における実施には、その物の使用をする行為が含まれる。そして、本件特許発明におけるその物の使用とは、後に摘示する本件特許明細書の(イ)の記載からみて、上記医薬組成物をHIVなどのウイルスに感染した患者に投与し、かつ、該患者に対してインテグラーゼ阻害作用を発揮してウイルスに起因する各種疾患を予防、治療するという薬理作用をもたらすことにほかならない。そして、一般に、化合物の化学構造から、該化合物がいかなる薬理作用を発揮し、いかなる医薬として有用であるかを予測することは困難であることを考慮すると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件特許発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものといえるためには、上記医薬組成物が上記患者に上記薬理作用をもたらす、という本件特許発明の発明者の見解や、上記医薬組成物を上記患者に投与する際に必要な投与量、投与方法、製剤化方法に加え、上記医薬組成物が上記薬理作用を示すことを当業者が認識できるに足る記載がなされている必要がある。
そこで、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を検討するに、該発明の詳細な説明には、上記医薬組成物を上記患者に投与し、かつ、上記患者に対してインテグラーゼ阻害作用を発揮してウイルスに起因する各種疾患を予防、治療するという薬理作用をもたらすことに関して、以下の(ア)~(エ)の記載がある。
なお、頁行は、対応する特許公報による。
(ア :2頁32行~5頁19行)
「【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、抗ウイルス剤に関する。特に、α-ヒドロキシ-α,β不飽和ケトンを部分構造として有する化合物、及びそれらを含有するインテグラーゼ阻害剤として使用する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
ウイルスのなかでも、レトロウイルスの一種であるヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency virus, 以下HIVと略す)は、後天性免疫不全症候群(Acquired immnodeficiency syndrome, 以下エイズと略す)の原因となることが知られている。そのエイズの治療薬としては、これまでのところ逆転写酵素阻害剤(AZT、3TC等)とプロテアーゼ阻害剤(インディナビル等)が主流であるが、腎臓障害等の副作用や耐性ウイルスの出現等の問題が判明しており、それらとは異なる作用メカニズムを有する抗HIV薬の開発が期待されている。
インテグラーゼ阻害剤としては、例えば、WO99/50245、WO99/62520、WO99/62897、WO99/62513、WO00/39086、WO01/00578に記載の1,3-ジオキソブタン酸類、1,3-プロパンジオン類等がある。また別のインテグラーゼ阻害剤としては、WO01/17968に記載のアクリル酸誘導体がある。
最近報告されたインテグラーゼ阻害剤としては、例えば、WO2002/30426、WO2002/30930、WO2002/30931、WO2002/36734に記載のアザまたはポリアザナフタレニルカルボキサミド誘導体等がある。
なお、本発明化合物に近い構造の化合物としては、Eur. J. Med. Chemical-Chim. Ther. (1979), 14(2), 189-190に、抗炎症作用を有するN-置換-3-カルボキサミド-4-ヒドロキシ-5-オキソ-3-ピロリン誘導体が開示されている。また、Pharmazie (1997), 52(4), 276-278に、1-メチル-4-アリールカルバミド-2,3-ジオキソピロリジン誘導体が合成中間体として開示されている。WO92/06954に、アルドース還元酵素の阻害作用を有するピロリジンジオン誘導体が開示されている。J. Med. Chemical (1976), 19(1), 172-173には、抗炎症作用を有するN-置換-4,5-ジオキソピロリジン-3-カルボキシアニリド誘導体が開示されている。
また、Journal of Physical Chemistry A (2002), 106(11), 2497-2504には、ピリミジン誘導体が開示されているが、医薬用途に関しては記載がない。
一方、T'ai-wan K'o Hsueh (1997), 31(3-4), 130-135に、3-ヒドロキシ-7-(フェニルメトキシ)-2-(2-キノリニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オンが開示されている。また、4H-1-ベンゾピラン-4-オン構造を有する化合物として、[1]J. Nat. Prod. (2001), 64(4), 546-548,[2]Anticancer Res. (2000), 20(4), 2525-2536,[3]WO98/11889,[4]Pharmazie (1998), 53(8), 512-517に、抗HIV活性を有するフラボノイド誘導体が開示されているが、作用メカニズムについては記載されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の状況下、新規なインテグラーゼ阻害剤の開発が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは鋭意、研究した結果、新規な抗ウイルス剤を見出した。すなわち式(I):
【化1】
(式中、RC及びRDは一緒になって隣接する炭素原子と共に環を形成し、該環は縮合環であってもよい。Yはヒドロキシ、メルカプト又はアミノであり;Zは酸素原子、硫黄原子又はNHであり;RAは式:
【化2】
(式中、C環は、結合手を有する原子に隣接する原子のうち、少なくとも一つの原子が非置換の窒素原子である含窒素芳香族複素環である。破線は結合の存在又は非存在を表わす。)で示される基又は式:
【化3】
(式中、Xは酸素原子、硫黄原子又はNH;RBは置換基群Aから選択される置換基である。)で示される基であり;
RC及びRDが形成する環、C環又はRBの少なくとも一つが、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1及びZ3はそれぞれ独立して単結合、置換されていてもよいアルキレン又は置換されていてもよいアルケニレン;Z2は単結合、置換されていてもよいアルキレン、置換されていてもよいアルケニレン、-CH(OH)-、-S-、-SO-、-SO2-、-SO2NR2-、-NR2SO2-、-O-、-NR2-、-NR2CO-、-CONR2-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-又は-CO-;R2は水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいヘテロアリール;R1は置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいシクロアルケニル又は置換されていてもよいヘテロサイクル)で示される基で置換されており;さらに、
RC及びRDが形成する環、C環又はRBが、上記式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されている以外の位置で、非妨害性置換基により置換されていてもよい。
【0005】
置換基群A:水素、ハロゲン、アルコキシカルボニル、カルボキシ、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ニトロ、ヒドロキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルスルホニル、置換されていてもよいアミノ、アルキルチオ、アルキルチオアルキル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ハロアルコキシアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいシクロアルケニル、置換されていてもよいヘテロサイクル、ニトロソ、アジド、アミジノ、グアニジノ、シアノ、イソシアノ、メルカプト、置換されていてもよいカルバモイル、スルファモイル、スルホアミノ、ホルミル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、ヒドラジノ、モルホリノ、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアラルキル、置換されていてもよいヘテロアリールアルキル、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいヘテロアリールオキシ、置換されていてもよいアリールチオ、置換されていてもよいヘテロアリールチオ、置換されていてもよいアラルキルオキシ、置換されていてもよいヘテロアリールアルキルオキシ、置換されていてもよいアラルキルチオ、置換されていてもよいヘテロアリールアルキルチオ、置換されていてもよいアリールオキシアルキル、置換されていてもよいヘテロアリールオキシアルキル、置換されていてもよいアリールチオアルキル、置換されていてもよいヘテロアリールチオアルキル、置換されていてもよいアリールスルホニル、置換されていてもよいヘテロアリールスルホニル、置換されていてもよいアラルキルスルホニル及び置換されていてもよいヘテロアリールアルキルスルホニルからなる群。)で示される化合物(以下、「本発明化合物」という)、そのプロドラッグ、それらの製薬上許容される塩又はそれらの溶媒和物が、インテグラーゼの阻害活性を有することを見出した。
さらに、本発明化合物及びそれらを含有する医薬が、抗ウイルス薬、抗レトロウイルス薬、抗HIV薬、抗HTLV-1(Human T cell leukemia virus type 1:ヒトT細胞白血病ウイルス1型)薬、抗FIV(Feline immunodeficiency virus : ネコエイズウイルス)薬、抗SIV(Simian immunodeficiency virus : サルエイズウイルス)薬、特に抗HIV薬、インテグラーゼ阻害剤として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、本発明化合物、そのプロドラッグ、それらの製薬上許容される塩又はそれらの溶媒和物、それらを有効成分として含有する医薬組成物、抗ウイルス薬、抗HIV薬、インテグラーゼ阻害剤、抗HIV用合剤を提供するものであるが、これらは、抗HIV薬としてのみならず、抗AIDS薬、すなわち、エイズ及びその関連臨床的症状、例えばエイズ関連合併症(ARC)、進行性全身化リンパ節症(PGL)、カポジ肉種、カリニ肺炎、突発性血小板減少性紫斑病、エイズ関連神経学的症状、例えば、エイズ痴呆症合併症、エイズ脳症、多発性硬化症又は熱帯性不全対麻痺、並びにまた無症候患者におけるものを含めた抗HIV抗体陽性及びHIV陽性症状の治療に特に有用である。」
(イ :90頁46行~92頁8行)
「【0034】
次に本発明化合物の使用方法について説明する。
本発明化合物は、例えば抗ウイルス薬等の医薬として有用である。本発明化合物は、ウイルスのインテグラーゼに対して顕著な阻害作用を有する。よって本発明化合物は、動物細胞内で感染時に少なくともインテグラーゼを産出して増殖するウイルスに起因する各種疾患に対して、予防又は治療効果が期待でき、例えば、レトロウイルス(例、HIV-1、HIV-2、HTLV-1、SIV、FIV等)に対するインテグラーゼ阻害剤として有用であり、抗HIV薬等として有用である。
また、本発明化合物は、逆転写酵素阻害剤および/又はプロテアーゼ阻害剤等の異なる作用メカニズムを有する抗HIV薬と組み合わせて併用療法に用いることもできる。特に現在、抗インテグラーゼ阻害剤は上市されておらず、本発明化合物と逆転写酵素阻害剤および/又はプロテアーゼ阻害剤とを組み合わせて併用療法に用いることは有用である。
さらに、上記の使用としては、抗HIV用合剤としてのみならず、カクテル療法等のように、他の抗HIV薬の抗HIV活性を上昇させるような併用剤としての使用も含まれる。
また、本発明化合物は、遺伝子治療の分野において、HIVやMLVをもとにしたレトロウイルスベクターを用いる際に、目的の組織以外にレトロウイルスベクターの感染が広がるのを防止するために使用することができる。特に、試験管内で細胞等にベクターを感染しておいてから体内にもどすような場合に、本発明化合物を事前に投与しておくと、体内での余計な感染を防ぐことができる。
本発明化合物は、経口的又は非経口的に投与することができる。経口投与による場合、本発明化合物は通常の製剤、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等の固形剤;水剤;油性懸濁剤;又はシロップ剤もしくはエリキシル剤等の液剤のいずれかの剤形としても用いることができる。非経口投与による場合、本発明化合物は、水性又は油性懸濁注射剤、点鼻液として用いることができる。その調製に際しては、慣用の賦形剤、結合剤、滑沢剤、水性溶剤、油性溶剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、安定剤等を任意に用いることができる。なお、抗HIV薬としては、特に経口剤が好ましい。
本発明の製剤は、治療有効量の本発明化合物を製薬上許容される担体又は希釈剤とともに組み合わせる(例えば混合する)ことによって製造される。本発明化合物の製剤は、周知の、容易に入手できる成分を用いて既知の方法により製造される。
本発明化合物の医薬組成物を製造する際、活性成分は担体と混合されるか又は担体で希釈されるか、カプセル、サッシェー、紙、あるいは他の容器の形態をしている担体中に入れられる。担体が希釈剤として働く時、担体は媒体として働く固体、半固体、又は液体の材料であり、それらは錠剤、丸剤、粉末剤、口中剤、エリキシル剤、懸濁剤、エマルジョン剤、溶液剤、シロップ剤、エアロゾル剤(液体媒質中の固体)、軟膏にすることができ、例えば、10%までの活性化合物を含む。本発明化合物は投与に先立ち、製剤化するのが好ましい。
当業者には公知の適当な担体はいずれもこの製剤のために使用できる。このような製剤では担体は、固体、液体、又は固体と液体の混合物である。例えば、静脈注射のために本発明化合物を2mg/mlの濃度になるよう、4%デキストロース/0.5%クエン酸ナトリウム水溶液中に溶解する。固形の製剤は粉末、錠剤およびカプセルを包含する。固形担体は、香料、滑沢剤、溶解剤、懸濁剤、結合剤、錠剤崩壊剤、カプセル剤にする材料としても役立つ1又はそれ以上の物質である。経口投与のための錠剤は、トウモロコシデンプン、アルギン酸などの崩壊剤、および/又はゼラチン、アカシアなどの結合剤、およびステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、滑石などの滑沢剤とともに炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムなどの適当な賦形剤を含む。
粉末剤では担体は細かく粉砕された活性成分と混合された、細かく粉砕された固体である。錠剤では活性成分は、適当な比率で、必要な結合性を持った担体と混合されており、所望の形と大きさに固められている。粉末剤および錠剤は約1~約99重量%の本発明の新規化合物である活性成分を含んでいる。適当な固形担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、滑石、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ワックス、ココアバターである。
液体製剤は懸濁剤、エマルジョン剤、シロップ剤、およびエリキシル剤を含む。活性成分は、滅菌水、滅菌有機溶媒、又は両者の混合物などの製薬上許容し得る担体中に溶解又は懸濁することができる。活性成分はしばしば適切な有機溶媒、例えばプロピレングリコ
ール水溶液中に溶解することができる。水性デンプン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液、又は適切な油中に細かく砕いた活性成分を散布することによってその他の組成物を製造することもできる。
本発明化合物の投与量は、投与方法、患者の年齢、体重、状態および疾患の種類によっても異なるが、通常、経口投与の場合、成人1日あたり約0.05mg~3000mg、好ましくは、約0.1mg~1000mgを、要すれば分割して投与すればよい。また、非経口投与の場合、成人1日あたり約0.01mg~1000mg、好ましくは、約0.05mg~500mgを投与する。」
(ウ :348頁5行~349頁29行)
「【0036】
試験例
本発明化合物のインテグラーゼ阻害作用を以下に示すアッセイ法に基づき調べた。
(1)DNA溶液の調製
アマシャムファルマシア社により合成された以下の各DNAを、KTEバッファー液(組成:100mM KCl, 1mM EDTA, 10mM Tris-塩酸 (pH 7.6)) に溶解させることにより、基質DNA溶液(2pmol/μl)およびターゲットDNA溶液(5pmol/μl)を調製した。各溶液は、一旦煮沸後、ゆるやかに温度を下げて相補鎖同士をアニーリングさせてから用いた。
(基質DNA配列)
5'- Biotin-ACC CTT TTA GTC AGT GTG GAA AAT CTC TAG CAG T-3'
3'- GAA AAT CAG TCA CAC CTT TTA GAG ATC GTC A-5'
(ターゲットDNA配列)
5'- TGA CCA AGG GCT AAT TCA CT-Dig-3'
3'-Dig-ACT GGT TCC CGA TTA AGT GA -5'
(2)阻害率(IC50値)の測定
Streptavidin(Vector Laboratories社製)を0.1M炭酸バッファー液(組成: 90mM Na2CO3, 10mM NaHCO3 )に溶かし、濃度を 40μg/mlにした。この溶液、各50μlをイムノプレート( NUNC社製)のウエルに加え、4℃で一夜静置、吸着させた。次に各ウエルをリン酸バッファー(組成: 13.7mM NaCl, 0.27mM KCl, 0.43mM Na2HPO4, 0.14mM KH2PO4)で2回洗浄後、1% スキムミルクを含むリン酸バッファー 300μlを加え、30分間ブロッキングした。さらに各ウエルをリン酸バッファーで2回洗浄後、NTEバッファー液(組成:1M NaCl, 10mM Tris-塩酸 (pH 8.0) ,1mM EDTA)で50倍希釈した基質DNA溶液(0.04pmol/μl) 50μlを加え、振盪下、室温で30 分間吸着させた後、リン酸バッファーで2回、次いで蒸留水で1回洗浄した。
次に上記方法で調製した各ウエルに、バッファー(組成:150mM MOPS (pH7.2), 75mM MnCl2, 50mM 2-mercaptoethanol, 25% glycerol, 500μg/ml bovine serum albumin -fraction V)12μl、ターゲットDNA (5pmol/μl)1μlおよび蒸留水32μlから調製した反応溶液45μlを加えた。さらに各ウエルに被検化合物のDMSO溶液6μlを加え、ポジティブコントロール(PC)としてのウエルには、DMSO6μlを加える。次にインテグラーゼ溶液(30 pmol/μl)9μlを加え、良く混合した。ネガティブコントロール(NC)としてのウエルには、酵素希釈液(組成: Hepes (pH 7.6), 400mM potassium glutamete, 1mM EDTA, 0.1% NP-40, 20% glycerol, 1mM DTT, 4M urea)9μlを加えた。
各プレートを30 ℃で1時間インキュベート後、反応液を捨て、リン酸バッファーで2回洗浄した。次にアルカリフォスファターゼ標識した抗ジゴキシゲニン抗体溶液(ヒツジFabフラグメント:ベーリンガー社製)を100μl加え、 30 ℃で1時間結合させた後、0.05 % Tween20を含むリン酸バッファーで2回、リン酸バッファーで1回、順次洗浄した。次に、アルカリフォスファターゼ呈色バッファー(組成:10mMパラニトロフェニルホスフェート(Vector Laboratories社製), 5mM MgCl2, 100mM NaCl, 100mM Tris-塩酸(pH 9.5))を150μl加えて30 ℃で2時間反応させ、各ウエルの吸光度(OD405nm)を測定し、以下の計算式に従い阻害率を求めた。
阻害率(%)=100[1-{(C abs.- NC abs.) / (PC abs.- NC abs.)}]
C abs.;化合物のウエルの吸光度
NC abs.:NCの吸光度
PC abs.:PCの吸光度
次にIC50値は、上記の阻害率を用いて以下の計算式で求められる。
すなわち阻害率50 %をはさむ2点の濃度において、xμg/mlの濃度で阻害率X %、yμg/mlの濃度で阻害率Y %をそれぞれ示す時、IC50(μg/ml)= x-{(X-50)(x-y)/(X-Y)}となる。
阻害率50%に相当する化合物濃度(IC50)を以下の表に示す。表中の化合物No.は実施例の化合物No.を示す。
【表1】
上記に示した化合物以外の本発明化合物も、上記同様、あるいはそれ以上のインテグラーゼ阻害活性を示した。
また、本発明化合物は、代謝に対する安定性が高く、優れたインテグラーゼ阻害剤である。」
(エ :頁行などは記載毎に表示)
「
」(92頁)
「(A-12-a) 4-[3-(4-フルオロベンジル)ベンゾイル]-3-ヒドロキシ-1-メチル-1,5-ジヒドロピロール-2-オン」(95頁30-31行)
「
」(96頁)
「(A-17-c) 1-ブチル-4-[5-(4-フルオロベンジル)フラン-2-カルボニル]-3-ヒドロキシ-1,5-ジヒドロピロール-2-オン」(98頁41-42行)
「
」(108頁)
「(A-141-k) 4-[5-(4-フルオロ-2-イソプロポキシベンジル)フラン-2-カルボニル]-3-ヒドロキシ-1-メチル-1,5-ジヒドロピロール-2-オン」(140頁43-44行)
「
」(145頁)
「(B-6-a) 3-ヒドロキシ-1-メチル-4-(6-フェネチルピリミジン-4-イル)-1,5-ジヒドロピロール-2-オン」(156頁13-14行)
「(B-6-d) 1-シクロヘキシル-3-ヒドロキシ-4-(6-フェネチルピリミジン-4-イル)-1,5-ジヒドロピロール-2-オン」(156頁37-38行)
「
」(158頁)
「 (B-12-b) 4-[6-(4-フルオロベンジロキシ)ピリミジン-4-イル]-3-ヒドロキシ-1-メチル-1,5-ジヒドロピロール-2-オン」(159頁32-33行)
「
」(167頁)
「
」(180頁)
「
」(198頁)
「
」(200頁)
「
」(204頁)
「
」(215頁)
「
」(218頁)
「
」(220頁)
「
」(233頁)
「
」(234頁)
「
」(236頁)
「
」(239頁)
「
」(241頁)
「
」(243頁)
「
」(244頁)
「
」(246頁)
(2)検討
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、上記(ア)の記載によれば、該(ア)に記載の式(I)で示される化合物が、インテグラーゼ阻害剤として有用であることを見出した、という本件特許発明の発明者の見解が記載され、上記(イ)の記載によれば、上記医薬組成物を上記患者に投与する際に必要な投与量、投与方法や製剤化方法が記載され、また、上記(ウ)の記載によれば、インテグラーゼ阻害作用をアッセイする薬理試験方法の説明が記載され、同じく上記(ウ)の【表1】の記載によれば、化合物No.A-7~M-6までの化合物について、インテグラーゼ阻害作用を示すIC50の値が記載されているが、これらの化合物は、上記(エ)の記載によれば、その化学構造上、本件特許発明の式(I)で示される化合物とは別異のものである。してみれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明の上記医薬組成物が上記薬理作用を示すことを当業者が認識できるに足る薬理試験結果の記載は見いだせない。また、上記化合物No.A-7~M-6までの化合物の薬理データは、上記(ウ)の【表1】の記載によれば、27個の化合物のものであるところ、これらの化合物は、上記(エ)の記載からみて、いずれも、本件特許明細書の上記(ア)に記載の式(I)で示される化合物の基-Z1-Z2-Z3-R1が4-フルオロベンジル基などわずかなものに限られ、また、置換基群Aの中のごく一部の基を有するものに限られるから、これらの化合物の薬理データから、広範かつ多彩な化合物を包含するものといえる上記(ア)に記載の式(I)で示される化合物のインテグラーゼ阻害作用が明らかにされているとはいえないし、その一部である本件特許発明の化合物のインテグラーゼ阻害作用が明らかにされているともいえない。
また、上記医薬組成物が上記薬理作用を示すことは本件特許発明の出願時の技術常識に属する事項であったというような、薬理試験結果の記載がなされていなくても上記医薬組成物が上記薬理作用を示すことを当業者が認識できるといえる、格別の事情も見いだせない。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明の上記医薬組成物が上記薬理作用を示すことを当業者が認識できるに足る記載がなされているとはいえない。
続いて、被請求人の主張について検討する。
(主張1)~(主張9)、(主張11)~(主張16)、(主張18)~(主張19)、(主張21-4)は、つまるところ、本件特許発明の出願当時、インテグラーゼの阻害剤としてキレータータイプの阻害剤が有力な候補となっていたなどの技術常識が存在し、この技術常識を参酌すれば、当業者には、本件発明化合物がインテグラーゼ活性を阻害する2核架橋型3座配位子タイプの阻害剤であることが明らかであって、インテグラーゼ阻害活性をまったく示さないことは考え難く、本件特許明細書記載の豊富な薬理データから、当業者は、本件特許発明の化合物がインテグラーゼ阻害作用を有すると理解できる、というものと解される。
しかしながら、上記技術常識の存在の証拠とされる乙第1号証の1~16によれば、まず乙第1号証の1は、一人の専門家の見解であって、これをもって直ちに、本件特許発明の出願当時に上記技術常識が存在したとはいえない。また、乙第1号証の2は、本件特許発明の出願当時に上記技術常識が存在したことに直接関連するものではないし、乙第1号証の3~16は、学術論文または特許公報であって、刊行時の最先端技術を開示することを目的とする文書であるから、そこに記載された内容が本件特許発明の出願当時公知のものであったとはいい得ても、本件特許発明の出願当時の技術常識となっていたとまではいえない。
また、「本件訂正発明化合物1において2個の金属イオンにキレート結合する三座配位子として機能し得る構造が必須とされていることは、総説などに記載されたモデルに符合する」という主張における「モデル」に対応する図とは、乙第24号証に記載の図14.3.(乙第23、24号証には、他に、該当する図が記載されていない。)を指すものと解される。
そして、図14.3.は、以下のものであるところ
「
」
「インテグラーゼの触媒コアにおけるヒドロキシル化芳香族化合物の仮想作用メカニズムおよび2価金属キレート化の想定される重要性。グラニュラチンを想定される例として示す。」との説明が付されたものであり、左右にある2つのベンゼン環が中央にある7員環を介して結合している構造を有するヒドロキシル化芳香族化合物と、「ME2+」と記載されている2つの2価金属が記載されている。また左側の2価金属は、左側のベンゼン環に結合しているヒドロキシ基及びカルボキシル基と水素結合を形成してキレート化しており、右側の2価金属は、右側のベンゼン環に結合しているカルボキシル基を構成している2つの酸素と水素結合を形成してキレート化している。
そうすると、この図におけるヒドロキシル化芳香族化合物は、1つの分子内に、1核2座タイプの配位子として機能する部分を2箇所(左右のベンゼン環に1つずつ)備える化合物(仮に、「1核2座*2タイプの配位子」という。)であって、2核架橋型3座配位子タイプの配位子ではないから、請求人の主張は、乙第23、24号証の記載を誤って理解したことに基づくものであると認められ、採用することができない。
したがって、被請求人の上記主張は採用できない。
また、(主張21-1)~(主張21-3)及び(主張21-5)は、本件特許発明1に係る化(I)で表される化合物について、その化学構造が、一見して、本件明細書に薬理データが記載された27個の化合物と類似していること、27個の化合物から認識できる(ア)~(エ)の事項を満足する化合物であること、請求人が活性を奏しないと主張した甲第10号証に記載されている化合物を含まないこと、27個の化合物との化学構造の相違点は、いわゆるバイオアイソスターとして等価であることから、本件特許発明1に係る化(I)で表される化合物と27個の化合物が等価であることを主張するものであると解される。
しかしながら、一般に、化学構造の類似性が非常に高い化合物であっても、特定の性質や物性が全く類似していない場合があること、また、この点は、本件発明に係るインテグラーゼ阻害剤の技術分野においても同様であることが、当業界における技術常識であることを勘案すると、本件特許発明1に係る化(I)で表される化合物の化学構造が、一見して、本件明細書に薬理データが記載された27個の化合物と類似しているとしても、直ちに本件特許発明1に係る化(I)で表される化合物がインテグラーゼ阻害剤であることを理解できるとはいえない。
現に、27個の化合物から認識できる(ア)~(エ)の事項を満足する化合物には、甲第10号証に記載のMerck#11(インテグラーゼ阻害活性を有さない化合物)が含まれているのであり、この事実は、上記の判断と整合するものである。
さらに、乙第65号証に基づく(主張21-5)は、以下の点でも採用できない。
すなわち、被請求人のいう「アミドと1,3,4-オキサジアゾールは、いわゆるバイオアイソスター」であるとは、要するに、「アミド結合(-NHCO-)と1,3,4-オキサジアゾール結合(1,3,4-オキサジアゾールから水素を2個取り除いた2価の連結基)が、いわゆるバイオアイソスターである」という意味であると解される。
これに対し、乙第65号証において被請求人が指摘した箇所は、
「4. アミド基生物学的等価体
・・・1,2,4-オキサジアゾール(92)、164-1681,3,4-オキサジアゾール(93)、169-1711,2,4-トリアゾール(94)、172(図76)のような複素環式環も、アミドまたはエステル結合の代替物として使用されている。
」(乙第65号証抄訳)
というものであり、これらの化学構造式からみて、ここでいう1,3,4-オキサジアゾールは、2価の連結基ではなく、化合物の末端のアミド基(R-CONH2)かエステル基(R-COOR’)の置換物である、化合物の末端の環状基(上記の図に記載の各化学構造式において、「R」を取り除いた1価の基)であると解される。そうすると、上記箇所には被請求人が主張すると解される内容は記載されていない。
かえって、当該指摘した箇所の後に、「Table 48. Bioisosteres of the Amide Bond」(当審訳:表48.アミド結合のバイオアイソスター)と題する以下の表が記載されており、
「
」
当該表にアミド結合のバイオアイソスターの具体例として、「Amide (-NHCO-)」、「reversed amide(-CONH-)」、「thioamide(-NHCS-)」などが記載されているが、上記表には、1,3,4-オキサジアゾール結合は記載されていない。
してみると、(主張21-5)は、乙第65号証に対する誤解に基づくものであり、この点でも採用できない。
なお、被請求人が指摘した箇所(節)は、「B. Nonclassical Bioisosteric Replacements of Functional Groups」(3165頁)とのタイトルが付された章の中に含まれている記載であり、上記タイトルに続く、「In this section」で始まる段落には、「As can be the case for any bioisostere, not all of these replacements will necessarilly result in a compound with comparable biological activity to the template drug.」(当審訳:どのアイソスターの場合においても、アイソスターによる置換をして得られた化合物が、元になった医薬と同等の生物学的活性を有する化合物であるとは限らない。)と記載されている。
そうすると、仮に、乙第65号証に「アミドと1,3,4-オキサジアゾールは、いわゆるバイオアイソスター」である旨の記載があるとしても、当該記載は、「アイソスターによる置換をして得られた化合物が、元になった医薬と同等の生物学的活性を有する化合物であるとは限らない」ことを前提とするものであるから、本件特許発明1に係る化(I)で表される化合物と27個の化合物が等価であるとはいえない。
また、仮に、本件特許発明の出願当時に上記技術常識が存在していたとしても、そのことから、上記各乙号証に記載のない本件特許発明の化合物について、インテグラーゼ活性を阻害する2核架橋型3座配位子タイプの阻害剤であることや、インテグラーゼ阻害活性をまったく示さないことは考え難いことまでが、当業者にとって明らかであったとはいえないし、本件特許明細書記載の薬理データから、本件特許発明の化合物のインテグラーゼ阻害作用が明らかにされているともいえないことは、先に説示したとおりである。
したがって、被請求人の上記主張は、いずれも理由がない。
(主張10)及び(主張14)並びに(主張20)及び(主張21)は、技術常識及び本件特許明細書記載の薬理データを考慮すれば、当業者は、本件発明化合物や本件特許化合物がインテグラーゼ阻害作用を有することが理解できるから、本件特許発明の出願後に提出された乙第8、9、10、28号証の薬理データが参酌されるべきである、というものと解される。
しかしながら、上記薬理データは、本件特許明細書に何らの記載もないものであり、そのようなものが本件特許出願後に提出されることによって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たす、とすることは、いわゆる先願主義を採用する我が国の特許制度の趣旨に照らし、許されないというべきである。しかも、上記技術常識が存在したとはいえないことは先に説示したとおりであるし、仮に存在したとしても、本件発明化合物がインテグラーゼ阻害作用を有することを当業者が理解できたとはいえないことも、先に説示したとおりであるから、被請求人の上記主張は前提を欠くものである。
してみれば、上記薬理データを参酌することはできず、被請求人の(主張10)及び(主張14)並びに(主張20)及び(主張21)も採用できない。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。
以上のとおりであるから、本件特許発明の出願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
2.無効理由2について
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件、いわゆる明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、本件特許明細書のサポート要件の存在は、本件特許出願人すなわち被請求人が証明責任を負うと解するのが相当である。
ここで、本件特許発明は、上述のとおりの、インテグラーゼ阻害剤の医薬組成物の発明であるから、その課題は、ウイルスに感染した患者に対してインテグラーゼ阻害作用を発揮してウイルスに起因する各種疾患を予防、治療するという薬理作用をもたらすことにほかならない。
しかしながら、「1.無効理由1について」で説示したように、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、上記医薬組成物が上記薬理作用を示すことを当業者が認識できるに足る記載がなされているとはいえないし、上記医薬組成物が上記薬理作用を示すことは本件特許発明の出願時の技術常識に属する事項であったというような、薬理試験結果の記載がなされていなくても上記医薬組成物が上記薬理作用を示すことを当業者が認識できるといえる、格別の事情も見いだせない。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲や、その記載や示唆がなくとも当業者が本件特許出願時の技術常識に照らし本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲は存在しないものとするほかはないが、それにもかかわらず、本件特許明細書の特許請求の範囲には本件特許発明が記載されているから、本件特許明細書の特許請求の範囲の記載は、明細書のサポート要件に適合するものとはいえない。
以上のとおりであるから、本件特許発明の出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
3.無効理由3について
本件特許発明は、上記第3.本件特許発明に記載したとおりのものであるところ、本件特許発明は、優先権主張の基礎とされた特願2001-245071号(出願日、2001年8月10日)の願書に最初に添付した特許請求の範囲(甲第11号証参照。)の請求項1に記載の「式(I)」において、「RA」が「【化3】」である場合に包含されるものであって、具体的には、【化3】においてXが酸素原子、RBが式:-Z1-Z2-Z3-R1で示される基で置換されており、RBが置換基群Aから選択された置換基である「置換されていてもよいアミノ」である場合に該当する。
そうすると、本件特許発明の出願は、上記特願2001-245071号に基づく優先権の主張が認められるものであり、その優先日は、2001年8月10日である。
これに対し、甲第3号証に係る出願は、2001年10月26日の優先権を主張する出願であるから、本件特許出願に対して、特許法第29条の2に規定する先の出願に該当しない。
したがって、本件特許発明の特許を無効理由3によって無効にすることはできない。
4.無効理由4について
甲第4及び5号証によれば、本件特許発明の出願における平成24年4月3日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、本件補正前の特許請求の範囲に、
「【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、RC及びRDは一緒になって隣接する炭素原子と共に5員又は6員のヘテロ原子を含んでいてもよい環を形成し、該環はベンゼン環との縮合環であってもよい;Yはヒドロキシ;Zは酸素原子;
RAは式:
【化2】
(式中、C環は、結合手を有する原子に隣接する原子のうち、少なくとも一つの原子が非置換の窒素原子である5または6員の含窒素芳香族複素環である。破線は結合の存在又は非存在を表わす。)で示される基又は式:
【化3】
式中、Xは酸素原子;RBは置換基群A(:アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロサイクル)から選択される置換基である。)で示される基であり;
C環およびRBは、
式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1及びZ3はそれぞれ独立して単結合又は置換されていてもよいアルキレン;Z2は単結合、-S-、-SO-、-SO2-、-SO2NH-、-NHSO2-、-O-、-NH-、-NHCO-、-CONH-;R1は置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいシクロアルケニル又は置換されていてもよいヘテロサイクル)で示される基で置換されており;
RC及びRDが形成する環は、上記式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されていてもよく;
さらに、C環、RB、又はRC及びRDが形成する環は、上記式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されている以外の位置で、水素、ハロゲン、アルコキシカルボニル、カルボキシ、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ニトロ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルスルホニル、置換されていてもよいアミノ、アルキルチオ、アルキルチオアルキル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ハロアルコキシアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいシクロアルケニル、置換されていてもよいヘテロサイクル、オキソ、チオキソ、ニトロソ、アジド、アミジノ、グアニジノ、シアノ、イソシアノ、メルカプト、置換されていてもよいカルバモイル、スルファモイル、スルホアミノ、ホルミル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、ヒドラジノ、モルホリノ、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアラルキル、置換されていてもよいヘテロアリールアルキル、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいヘテロアリールオキシ、置換されていてもよいアリールチオ、置換されていてもよいヘテロアリールチオ、置換されていてもよいアラルキルオキシ、置換されていてもよいヘテロアリールアルキルオキシ、置換されていてもよいアラルキルチオ、置換されていてもよいヘテロアリールアルキルチオ、置換されていてもよいアリールオキシアルキル、置換されていてもよいヘテロアリールオキシアルキル、置換されていてもよいアリールチオアルキル、置換されていてもよいヘテロアリールチオアルキル、置換されていてもよいアリールスルホニル、置換されていてもよいヘテロアリールスルホニル、置換されていてもよいアラルキルスルホニル及び置換されていてもよいヘテロアリールアルキルスルホニルから選択される非妨害性置換基により置換されていてもよい。)
で示される化合物、その製薬上許容される塩又はそれらの溶媒和物。
【請求項2】
RC及びRDは一緒になって隣接する炭素原子と共に5員又は6員のヘテロ原子を含む環を形成する、請求項1記載の化合物、その製薬上許容される塩又はそれらの溶媒和物。
【請求項3】
RC及びRDは一緒になって隣接する炭素原子と共に5員又は6員のヘテロ原子を含む環を形成し、さらに該環はベンゼン環との縮合環である、請求項1記載の化合物、その製薬上許容される塩又はそれらの溶媒和物。
【請求項4】
非妨害性置換基が、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、およびアルケニルからなる群から選択される置換基である、請求項1記載の化合物、その製薬上許容される塩又はそれらの溶媒和物。
(中略)
【請求項23】
式(IX-2):
【化29】
(化学式の記載を省略)
(式中、Yはヒドロキシであり;Zは酸素原子であり;C環、Z1、Z2、Z3及びR1は請求項1と同意義であり;R9、R10、RF及びRGはそれぞれ独立して請求項1の非妨害性置換基である。ただし、RGが水素であり、RFがアルキルである場合、C環はジヒドロピリミジンではない)で示される請求項1記載の化合物、それらの製薬上許容される塩又はそれらの溶媒和物。」
と記載されていたものを、
「 【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、
RAは式:
【化3】
(式中、Z1及びZ3はそれぞれ独立して単結合又は炭素数1~6の直鎖状または分枝状のアルキレン;Z2は単結合、-S-、-SO-、-NHSO2-、-O-、または-NHCO-;R1は置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよい5~8員の芳香族複素環式基、置換されていてもよい炭素数3~6のシクロアルキル、又は置換されていてもよいヘテロサイクル(「置換されていてもよい」の各置換基は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル、ハロゲンおよびアルコキシから選択される))で示される基;
Yはヒドロキシ;
Zは酸素原子;
RC及びRDは一緒になって隣接する炭素原子と共に5員又は6員のヘテロ原子を含んでいてもよい環を形成し、該環はベンゼン環との縮合環であってもよい;
RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)で示される基で置換されていてもよく;
さらに、RC及びRDが形成する環は、式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1前記と同意義である)で示される基で置換されている以外の位置で、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、およびアルケニルからなる群から選択される置換基により置換されていてもよい。)で示される化合物、その製薬上許容される塩又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、インテグラーゼ阻害剤である医薬組成物。
【請求項2】
RC及びRDは一緒になって隣接する炭素原子と共に5員又は6員のN原子を含む環を形成する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
RC及びRDは一緒になって隣接する炭素原子と共に6員のヘテロ原子を含む環を形成する、請求項1記載の医薬組成物。」
と補正するものである。
そうすると、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された式(I)で示される化合物群の中の一部の化合物群を請求項1~3に残す補正といえるし、特定の選択肢の組合せ、すなわち、特定の化合物が請求項に残る補正ではないから、本件特許発明の出願の願書に最初に添付した明細書等に、対応する実施例の記載がなければ新たな技術的事項を導入するものではないとは認められない補正でもない。してみると、本件補正は、本件特許発明の出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。
したがって、本件特許発明の特許を無効理由4によって無効にすることはできない。
5.無効理由5について
請求項1の、「式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)」との記載は、「さらに、RC及びRDが形成する環は、」との記載に続けて記載されている。
そうすると、この記載は、「RC及びRDが形成する環」に関するものであるから、「式:-Z1-Z2-Z3-R1(式中、Z1、Z2、Z3及びR1は前記と同意義である)」との記載も「RC及びRDが形成する環」に関連するものであると認められる。
そうすると、この記載における「式:-Z1-Z2-Z3-R1で示される基」が、【化3】に含まれている基を意味するということはありえず、RC及びRDが形成する環に置換されていてもよい「式:-Z1-Z2-Z3-R1で示される基」を意味することが明らかである。
したがって、請求項1の記載は明確である。
請求項2、3の記載についても、同様に、明確である。
したがって、本件特許発明の特許を無効理由5によって無効にすることはできない。
第7.
以上のとおりであるので、本件特許発明1~3についての特許は、無効理由1、及び、2により、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担するものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2015-800226