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特許拒絶査定不服審判

2015-018049

カリウム・セシウム・タングステンブロンズ粒子

審判番号
2015-018049
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2012-519581外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2015年10月02日
審決日
2018年02月19日
公報発行日
2018年04月27日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
審判長/審判官
分類
P18 .113-WY (C01G) / P18 .121-WY (C01G) / P18 .537-WY (C01G) / P18 .65 -WY (C01G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第37条、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2012-519581「カリウム・セシウム・タングステンブロンズ粒子」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月13日国際公開、WO2011/005631、平成24年12月20日国内公表、特表2012-532822、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1.手続の経緯 本願は、平成22年6月30日(優先権主張 平成21年7月7日 米国)を国際出願日とする出願であって、原審にて、平成27年5月28日付けの拒絶査定がされ、これを不服として同年10月2日に本件審判が請求されると同時に手続補正がされ、当審にて、平成29年1月25日付けの拒絶理由を通知したところ、同年7月21日に誤訳訂正がされ、さらに同年9月19日付けの拒絶理由を通知したところ、同年11月28日に手続補正がされたものである。なお、当審にて計4回の刊行物提出もなされている。 第2.本願発明の認定 本願の請求項1~14に係る発明は、平成29年11月28日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定される次のとおりものと認められる。 【請求項1】 化学式KxCsyWOzで表わされるカリウム・セシウム・タングステンブロンズ固溶体粒子であって、 式中、x+y≦0.6および2.9≦ z ≦ 3であり、 走査電子顕微鏡法による測定で200 nm未満の平均粒径を有し、及び 六方晶相を含む、ことを特徴とするカリウム・セシウム・タングステンブロンズ固溶体粒子。 【請求項2】 その最長半径が5nm~10μmである粒子が個数で90パーセントを超える請求項1に記載のタングステンブロンズ粒子。 【請求項3】 xが0.05から0.55であり、yが0.55から0.05である、請求項1に記載のタングステンブロンズ粒子。 【請求項4】 六方晶として存在する、請求項1に記載のタングステンブロンズ粒子。 【請求項5】 請求項1に記載のカリウム・セシウム・タングステンブロンズ固溶体粒子を調合するためのプロセスであって、適切なタングステン・ソースをカリウム塩およびセシウム塩と混ぜ合わせて粉末混合物を形成し、還元雰囲気下でプラズマトーチに粉末混合物を露出することを含む、プロセス。 【請求項6】 前記還元雰囲気が水素/希ガス混合物から成るシースガスによって供給される、請求項5に記載のプロセス。 【請求項7】 タングステン・ソースがタングステン酸、タングステン酸化物、タングステン地金、タングステン・ハライドおよびタングステン・アルコキシドから選択され、カリウム塩およびセシウム塩が炭酸塩、ハライド、アセテート、ホルマート、クエン酸塩または硝酸塩である、請求項5又は6に記載のプロセス。 【請求項8】 タングステン・ソースがモノタングステン酸アンモニウム、ヘキサタングステン酸アンモニウム、ドデカタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウム(APT)、メタタングステン酸アンモニウムおよびこれらの水和物から選択される、請求項に記載のプロセス。 【請求項9】 前記粉末混合物が1モルのタングステン基準で0.05~5モルのカリウムと、0.05モル~0.5モルのセシウムとを含む、請求項5又は6に記載のプロセス。 【請求項10】 有機または無機の基材を含み、請求項1に記載のカリウム・セシウム・タングステンブロンズ固溶体粒子を組み入れた有機または無機の組成物であって、前記基材は、コーティング、プラスチック、インキ、接着剤、セラミック、ガラスまたはエナメルである、組成物。 【請求項11】 前記基材が、近赤外線(NIR)硬化性コーティング組成物である、請求項10に記載の組成物。 【請求項12】 板、シートまたはフィルムの形態のプラスチック組成物であり、前記基材は、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレン-アクリロニトリル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、およびこれらの合金または混合物から選択される、請求項10に記載の組成物。 【請求項13】 有機リン安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン、ヒンダードアミン系光安定剤、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールから選択される添加剤、またはヒドロキシフェニルトリアジン紫外線吸収剤および更なる無機または有機のNIR吸収剤を更に含む、請求項10に記載の組成物。 【請求項14】 近赤外線(NIR)吸収剤および/または熱遮断添加剤としての請求項1に記載のカリウム・セシウム・タングステンブロンズ粒子の使用。 第3.原査定及び当審の拒絶理由 原査定の拒絶理由1~4、及び、当審で通知した拒絶理由5~7の要旨は、次のとおりである。 理由1(特許法第37条) 原査定時の請求項1~5に係る発明は、理由2に示すとおり特別な技術的特徴を有しないから、請求項1~15に係る発明は、発明の単一性の要件を満たさない。 理由2(特許法第29条第1項第3号) 原査定時の請求項1~5に係る発明は、下記引用例1に記載された発明である。 理由3(特許法第29条第2項) 原査定時の請求項6~10に係る製法発明は、下記引用例1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 理由4(特許法第36条第6項第2号) 原査定時の請求項2に記載された「90パーセントを超える」の判断基準が明確でない。 理由5(特許法第36条第6項第2号) 審判請求時の請求項5記載の「立方パイロクロア相として存在する」は、同請求項が引用する請求項1の「六方晶を含む」と矛盾し、また、請求項11記載の「基板は、コーティング・・・である」は技術的に理解できない。理由6(特許法第29条第2項) 審判請求時の請求項1~15に係る発明は、下記引用例3~5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 理由7(特許法第36条第6項第1号) 誤訳訂正後の請求項10~13に係る組成物発明は、本願明細書に実質的な開示のない0.6<x+yである固溶体粒子を含むことを特定している。 引用例1:DROBASHEVA, T. I. et al, Potassium tungstate-cesium tungstate-tungsten(VI) oxide system,DATABASE CA, [Online],米国, CHEMICAL ABSTRACTS SERVICE,1977年,XP002691758, retrieved from STN Database accession no. 1977:491481 引用例2:特開平02-006339号公報 引用例3:特許第4096205号公報 引用例4:国際公開第2009/059901号 引用例5:国際公開第2009/059900号 第4,記載要件違反(理由4,5,7)について 1.理由4,5,7について 請求項2には「個数で90パーセントを超える」と記載されており、「90パーセントを超える」の判断基準は明確である。 そして、審判請求時の請求項5は削除され、「基板」との用語は「基材」に訂正されている。 また、請求項10~13に係る組成物発明は、請求項1を引用し、パイロクロア相のみの固溶体粒子を含まないものとなった。 よって、理由4,5,7には理由がない。 2.刊行物提出について 記載要件に関し、本願公開公報等を刊行物として提出して、プラズマを用いた合成法では、WやWO3等の不純物が生じるから、実施例で確認された作用効果がKxCsyWOz粒子のものとはいえないこと、また、実施例のK0.24Cs0.15WO3粒子の作用効果が、請求項1で特定する組成範囲において生じると認めることはできない旨の主張がなされている。 しかしながら、本願明細書【0186】には、実施例において90重量%以上の粒子がKxCsyWOz固溶体であったことが記載されているから、実施例で確認された作用効果は、KxCsyWOz粒子により奏せられたものと認識することができ、また、同【0018】には、本発明の作用効果が、化学式においてx+y≦0.6の範囲に存在する六方晶相と粒子径により奏せられることが説明されているから、実施例の作用効果が請求項1で特定する組成範囲においても生じると認識することができる。 したがって、上記主張は採用できない。 第5.新規性・進歩性・単一性要件違反(理由1~3,6)について 1.理由1,2について 引用例1には、タングステン酸カリウム-タングステン酸セシウム-酸化タングステンの酸化物三元系状態図においてKxCsyWO3ブロンズ相が形成されることが記載されているが、x+y≦0.6であって六方晶相を含むことや、200 nm未満の平均粒径を有する粒子を製造したことは記載されていないから、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、引用例1に記載された発明とはいえない。 したがって、請求項1及びこれを引用する請求項2~14に係る発明は、共通の特別な技術的特徴を有するから、発明の単一性の要件を満足する。 よって、理由1,2には理由がない。 2.理由3について 引用例2には、酸化タングステン粉をプラズマフレーム中に供給して超微粒子とすることが記載されているにすぎない。 したがって、請求項1を引用する請求項5~9に係る製法発明は、引用例1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 よって、理由3には理由がない。 3.理由6について (1)引用例3(【0046】~【0054】)には、一般式MxWyOzの複合タングステンブロンズ酸化物微粒子からなる赤外線遮蔽材料について、六方晶の場合に可視光透過と近赤外領域吸収が向上するため、元素Mとして、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちの1種類以上を添加し、z/y=3の時、x/yの値を0.33とするのが良く、粒子直径も、透明性を向上させるために100nm以下が良いことが記載されている。 してみると、引用例3には、一般式においてyを1とする次の複合タングステンブロンズ酸化物微粒子の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「化学式M0.33WO3(元素Mが、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちの1種類以上)で表される複合タングステンブロンズ酸化物微粒子であって、六方晶の結晶構造を有し、100nm以下の粒子直径を有する複合タングステンブロンズ酸化物微粒子。」 (2)本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明が、引用発明において、KとCsの組み合わせを元素Mとして選択した点で相違する。 そこで検討するに、引用例3には、引用発明に関し、KとCsを個別に元素Mとして選択した例しか記載されておらず、また、引用例4,5には、タングステンブロンズ粒子をプラズマトーチを用いて製造することが記載されているにすぎない。 これに対し、本願明細書(【0187】~【0189】)には、本願発明のK/Csブロンズ粒子が、Kブロンズ粒子及びCsブロンズ粒子のいずれと比較しても、可視光域(600nm)で吸光度が低く、また、明度、彩度、及びコントラスト値が高いことが記載されている。 してみると、本願発明は、引用例3~5の記載からは予期し得ない顕著な作用効果を奏するものと認められる。 したがって、本願発明は、引用例3~5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 請求項1を引用する請求項2~14に係る発明も同様である。 よって、理由6には理由がない。 4.刊行物提出について 進歩性要件に関し、CsxWO3粒子の吸光特性が記載された先行技術文献("Near Infrared Absorption of Tungsten Oxide Nanoparticle Dispersions",Journal of the American Ceramic Society Vol.90,No.12,p.4059-4061)等を提出して、Csブロンズ粒子の吸光特性は本願明細書に比較例として記載されたものより優れており、本願発明の実施例の作用効果は顕著とはいえないこと、また、引用例3に記載されたCs0.33WO3粒子を赤外線遮蔽機能をもたせるためにKを含むガラス原料に加えれば、KxCsyWOz固溶体粒子が析出する旨の主張がなされている。 しかしながら、上記文献に記載されたCsxWO3粒子は、原料を液相混合後、乾燥、焼成、粉砕を経て製造されたものであって、原料を固相混合後、プラズマ合成により製造された本願明細書記載の実施例・比較例とは、粒子径や不純物量等も異なるものと認められ、さらに吸光特性の測定条件も同等とはいえないから、その特性を比較して作用効果を判断するのは妥当でない。また、ガラスの製造工程において、成分中のKのみがCs0.33WO3粒子と反応して固溶体粒子を形成するとは認められない。 したがって、上記主張は採用できない。 第6.むすび 以上のとおり、本願については、原査定及び当審の拒絶理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2015-018049

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