特許拒絶査定不服審判
2015-009410
石炭燃焼公共施設のためのアンモニア酸化触媒
- 審判番号
- 2015-009410
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-124666
- 請求日
- 2015年05月21日
- 審決日
- 2016年12月26日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ビーエーエスエフ、カタリスツ、エルエルシー
- 【請求人代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 【請求人代理人】前川 純一
- 【請求人代理人】二宮 浩康
- 【請求人代理人】上島 類
- 審判長/審判官
- 審判長 新居田 知生
- 審判官 瀧口 博史
- 審判官 後藤 政博
- 分類
- P18 .121-Z (B01D) / P18 .575-Z (B01D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-124666「石炭燃焼公共施設のためのアンモニア酸化触媒」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月 5日出願公開、特開2013-173147〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2006年1月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年2月16日、米国)を国際出願日とする特願2007-556157号の一部を平成25年6月13日に新たな特許出願としたものであって、平成26年1月31日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年6月20日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年1月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年5月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである(なお、平成28年8月3日付け上申書は、手続不備により返戻された。)。
第2 平成27年5月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年5月21日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)請求項1の補正
本件補正は、請求項1を下記のとおりに補正するものである。なお、補正部分に下線を付した。
ア (補正前)
「a.アンモニアを石炭の燃焼から得られる煙道ガスに、存在する窒素酸化物と完全に反応するのに必要とされる化学量論量の過剰量で、添加しそして一次触媒の存在下に窒素酸化物を還元して、NOx含量が該煙道ガス以下となった未反応のアンモニアを含んでなる、処理した煙道ガスを生成させ;
b.該処理した煙道ガスを二次アンモニア酸化触媒と接触させてアンモニアの量を減じる、但し該二次触媒が貴金属及びバナジアをチタニア、アルミナ、シリカ、アルミナ-シリカ、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化ハフニウム及び酸化ランタンから選ばれる金属酸化物担体上に含んでなり、該貴金属が該金属酸化物担体に対して0.7-1.5重量%の量で存在する、
工程を含んでなる、アンモニアを選択的触媒還元剤として窒素酸化物を還元するための一次触媒と共に使用する石炭燃焼発電所からの煙道ガス中のアンモニアの除去法。」
イ (補正後)
「a.アンモニアを石炭の燃焼から得られる煙道ガスに、存在する窒素酸化物と完全に反応するのに必要とされる化学量論量の過剰量で、添加しそして一次触媒の存在下に窒素酸化物を還元して、NOx含量が該煙道ガス以下となった未反応のアンモニアを含んでなる、処理した煙道ガスを生成させ;
b.該処理した煙道ガスを焼成した二次アンモニア酸化触媒と接触させてアンモニアの量を減じる、但し該二次触媒が金属酸化物担体に含浸された貴金属及びバナジアを含んでなり、該金属酸化物担体がチタニア、アルミナ、シリカ、アルミナ-シリカ、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化ハフニウム及び酸化ランタンから選ばれ、該貴金属が該金属酸化物担体に対して0.7-1.5重量%の量で存在する、
工程を含んでなる、アンモニアを選択的触媒還元剤として窒素酸化物を還元するための一次触媒と共に使用する石炭燃焼発電所からの煙道ガス中のアンモニアの除去法。」
(2)補正の目的
上記補正事項は、補正前に貴金属及びバナジアをチタニア、アルミナ、シリカ、アルミナ-シリカ、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化ハフニウム及び酸化ランタンから選ばれる金属酸化物担体上に含んでなることが特定された二次アンモニア酸化触媒について、焼成したものであること、及び、貴金属及びバナジアが、金属酸化物担体に含浸されたものであることの限定を付加するものであって、発明の属する技術分野、解決しようとする課題を変更するものでないから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
2 本件補正発明の独立特許要件についての検討
上記補正後の本願請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明1」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものかを以下に検討する。
刊行物1:特開2004-237244号公報(以下、「引用刊行物1」という。)
周知例1:特開平8-131832号公報
(1)刊行物1~2の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用刊行物1には、以下の事項が記載されている。
(ア) 「【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に係る排ガス中の水銀除去システムの具体的な実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
排ガス中の水銀除去方法
本発明の排ガス中の水銀除去方法では、石炭焚きボイラーより排出された排ガスが脱硝触媒に送られ、脱硝工程が行われる。脱硝工程では、脱硝触媒の前流にて、還元剤としてアンモニアNH3が添加される。よって、脱硝処理後の排ガス中には、添加した過剰のNH3が多く含まれている。このNH3は、後流の水銀酸化反応(水銀酸化工程)を阻害するとともに、低温水銀酸化触媒の場合には触媒上で硫安や酸性硫安として付着し、触媒性能を著しく低下させて、触媒を閉塞させる可能性がある。
【0013】
このことから本発明では、脱硝工程から流下する排ガスについて、水銀酸化触媒の前流にて、水銀酸化反応(水銀酸化工程)を阻害するNH3を除去する。そのために、脱硝触媒の後流直後にはNH3分解触媒を設置する。このNH3分解触媒上で、脱硝触媒から後流に送られた過剰のNH3は分解除去されて、排ガス中から除かれる。
次いで、本発明では、NH3分解工程を経てNH3が除去された排ガス中から水銀を除去する。そのために先ず、排ガス中の水銀を水銀酸化触媒の存在下、水銀酸化工程によって、排ガス中に多く含まれている塩化水素と酸化反応させて塩化水銀に変換する。次いで、この塩化水銀を含む排ガスを、後流の湿式脱硫装置を通すことによって、排ガス中の水銀成分は湿式脱硫工程に用いるアルカリ吸収液中に吸収、除去させる。」
(イ) 「【0020】
脱硝装置(SCR)2の後流には、NH3分解触媒3が設けられる。
本発明で用いるNH3分解触媒3としては、TiO2,SiO2,ZrO2,Al2O3およびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも1種類を担体として、該担体上にPt,Ru,Rh,Pd,Ir,V,W,Mo,Ni,Co,Fe,Cr,CuおよびMnからなる群より選ばれる少なくとも1種類を活性成分として担持した触媒が挙げられる。ここで、排ガス中に含まれる硫黄酸化物に対する耐久性の点から、担体としては、特にチタン酸化物やケイ素酸化物を用いるのが好ましく、TiO2やSiO2を含む複合酸化物を担体として、バナジウム、タングステン又はモリブデンなどの酸化物を活性金属種として担持させた触媒の活性が良好である。」
(ウ) 「【0024】
本発明で用いられる触媒の組成比は特に限定されるものではないが、一例として、一種の酸化物又は複合酸化物からなる担体100重量部に対して、活性成分がV,W,Mo,Ni,Co,Fe,Cr,CuおよびMnなどの卑金属系元素ではその酸化物として、0.5~20重量部の組成が、またPt,Ru,Rh,Pd,Irの貴金属系元素では、その金属として0.01~1重量部の組成が好適に挙げられる。より具体的には、水銀酸化触媒10の場合には、TiO2-SiO2の複合酸化物担体100重量部に対して、活性成分が五酸化バナジウム1.2重量部とタングステン酸化物(WO3)9重量部の組成物や、Pt0.05重量部、タングステン酸化物(WO3)9重量部の組成物などが挙げられる。また、NH3分解触媒3の場合には、TiO2担体100重量部に対して、活性成分が五酸化バナジウム4~10重量部の組成物や、Pt0.5重量部、五酸化バナジウム0.6重量部、タングステン酸化物(WO3)9重量部の組成物などが挙げられる。」
(エ) 「【0028】
…脱硫吸収塔7では、排ガス中のSO2の除去と同時にHgCl2の除去が行われる。…」
(オ) 「【0031】
本発明で対象とする排ガスは、例えば石炭、重質油等の硫黄や水銀を含む燃料を燃焼する火力発電所、工場等のボイラー排ガス、あるいは、金属工場、石油精製所、石油化学工場等の加熱炉排ガスであり、二酸化炭素、酸素、SOx、ばい塵又は水分を含む排出量の多いものである。…」
イ 原査定の拒絶の理由に、二次触媒のバナジア量に関する技術的事項に関連して引用された周知例1には、以下の事項が記載されている。
(ア) 「【請求項1】 チタン酸化物担体上に、バナジウム、タングステン及びモリブデンよりなる群から選ばれた元素の酸化物の少なくとも1種以上と白金及び/又はイリジウムを担持させてなることを特徴とするアンモニア分解触媒。」
(イ) 「【0008】
【作用】前記触媒は必要によりチタニアゾル、アルミナゾル、シリカゾルなどのバインダ成分やコージェライト等の基材を使用し、ウォッシュコート法又はソリッド法によりハニカム化して使用するのが好ましい。アンモニアを含有するガスを、100~600℃の温度で前記触媒に接触させることにより、ガス中のアンモニアは主に窒素に分解される。この分解反応は選択的に進行し、NO、NO2、N2O等の有害ガスはほとんど副生しない。さらに、本触媒はSO2が共存する排ガスにおいても、アンモニア分解活性が低下することなく安定なアンモニア分解性能を保つ。また、SO2をSO3へ酸化させる能力は低いため酸性硫酸アンモニウム生成の不具合点も見られない。」
(ウ) 「【0010】(例1)チタニア(TiO2)担体にメタバナジン酸アンモニウム(NH4VO3)、パラタングステン酸アンモニウム{(NH4)10H10W12O46・6H2O}を各々10%メチルアミン水溶液で溶かし、V2O5で4wt%、WO3で8wt%を含浸法により担持させ、蒸発・乾固して500℃×6時間焼成して粉末触媒を得た。さらに、この粉末触媒に塩化イリジウム(IrCl4・H2O)水溶液に含浸させIrを0.5wt%担持させ、蒸発・乾固後、500℃、6時間焼成して粉末触媒1を得た。
【0011】得られた粉末触媒100部に対してバインダとしてチタニアゾル40部(TiO2:20wt%)及び水200部を加え、スラリとして7.6mmピッチ、壁厚コージェライトハニカム基材にウォッシュコートして、基材表面積当り200g/m2のコート量を担持した。得られた触媒をハニカム触媒1とする。」
(エ) 「【0014】さらに、上記ハニカム触媒1の調製法で塩化イリジウム水溶液の代わりに塩化白金酸を用い白金担持量(Pt)で0.05wt%担持させた他は例1と同様な方法で調製してハニカム触媒4を得た。」
(2)引用刊行物1に記載の発明
上記(1)ア(ア)に記載された事項によれば、引用刊行物1には、
石炭焚きボイラーより排出された排ガスが脱硝触媒に送られ、脱硝工程が行われ、
脱硝工程では、脱硝触媒の前流にて、還元剤としてアンモニアNH3が添加され、
脱硝処理後の排ガス中には、添加した過剰のNH3が多く含まれており、
脱硝触媒の後流直後にはNH3分解触媒を設置し、このNH3分解触媒上で、脱硝触媒から後流に送られた過剰のNH3は分解除去されて、排ガス中から除かれることが記載されている。
また、上記(1)ア(イ)に、「脱硝装置(SCR)」と記載されている。
さらに、上記(1)ア(オ)に記載された「本発明で対象とする排ガスは、例えば石炭、重質油等の硫黄や水銀を含む燃料を燃焼する火力発電所、工場等のボイラー排ガス…」との事項によれば、火力発電所のボイラーの排ガスを対象とすることが記載されていると認められる。
してみると、引用刊行物1は、排ガス中の水銀除去方法およびそのシステムを主題とする公開特許公報であるものの、引用刊行物1には、本願補正発明1の記載ぶりに則して認定すると、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
「a.NH3を、石炭焚きボイラーより排出された排ガスに添加し、そして脱硝装置(SCR)の脱硝触媒で脱硝工程が行われ、過剰のNH3が多く含まれている脱硝処理後の排ガスを生成させ;
b.該過剰のNH3が多く含まれている脱硝処理後の排ガスを、NH3分解触媒と接触させて、脱硝触媒から後流に送られた過剰のNH3は分解除去されて、排ガス中から除かれる、
工程を含んでなる、NH3を還元剤として脱硝装置(SCR)の脱硝触媒と共に使用する火力発電所の石炭焚きボイラーより排出された排ガス中のNH3の除去法。」
(3)対比・判断
ア 一致点及び相違点について
本願補正発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「NH3」、「排ガス」、「火力発電所の石炭焚きボイラーより排出された」は、本願補正発明1の「アンモニア」、「煙道ガス」、「石炭燃焼発電所からの」に相当する。
また、本願補正発明1の一次触媒が窒素酸化物を還元するためのもの(【0031】)であることからみて、引用発明1の「脱硝触媒」は、本願補正発明1の「一次触媒」に相当する。
さらに、引用発明1の脱硝触媒で脱硝した後の排ガスには、過剰のNH3が含まれるところ、このNH3は脱硝触媒で反応しなかった未反応のものであることは明らかであるから、引用発明1の「該過剰のNH3が多く含まれている脱硝処理後の排ガス」は、本願補正発明1の「未反応のアンモニアを含んでなる、処理した煙道ガス」に相当する。
そして、脱硝処理後の排ガスにおける窒素酸化物(NOx)の含量が処理前以下であることは技術常識からみて明らかであるため、引用発明1においても「NOx含量が排ガス(煙道ガス)以下」であるといえるから、引用発明1の「(NH3を)添加し、そして脱硝触媒で脱硝工程が行われ、過剰のNH3が多く含まれている脱硝処理後の排ガスを生成させ」は、本願補正発明1の「(アンモニアを)添加しそして一次触媒の存在下に窒素酸化物を還元して、NOx含量が煙道ガス以下となった未反応のアンモニアを含んでなる、処理した煙道ガスを生成させ」に相当する。
また、引用発明1の(SCR)は、selective catalytic reduction、すなわち、選択的触媒還元の意味であるから、脱硝装置(SCR)での脱硝工程で脱硝触媒と共に使用される還元剤としてのNH3は、「選択的触媒還元剤」に相当する。
また、本願補正発明1の二次触媒がアンモニアを分解除去するためのもの(【0032】)であることからみて、引用発明1の「NH3分解触媒」は本願補正発明1の「二次触媒」に相当し、そして、技術常識を踏まえると「分解」は酸化反応によるものであるから、「二次アンモニア酸化触媒」に相当する。
すると、両者は、
「a.アンモニアを石炭の燃焼から得られる煙道ガスに、添加しそして一次触媒の存在下に窒素酸化物を還元して、NOx含量が煙道ガス以下となった未反応のアンモニアを含んでなる、処理した煙道ガスを生成させ;
b.該処理した煙道ガスを二次アンモニア酸化触媒と接触させてアンモニアの量を減じる、
工程を含んでなる、アンモニアを選択的触媒還元剤として窒素酸化物を還元するための一次触媒と共に使用する石炭燃焼発電所からの煙道ガス中のアンモニアの除去法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:本願補正発明1では、アンモニアを、完全に反応するのに必要とされる化学量論量の過剰量で添加するものであるのに対し、引用発明1では、脱硝処理後の排ガスに過剰のアンモニア(NH3)が多く含まれているものの、脱硝処理前の化学量論量との関係は不明である点。
相違点2:本願補正発明1では、二次触媒が、金属酸化物担体と貴金属及びバナジアを含んでなり、該金属酸化物担体がチタニア、アルミナ、シリカ、アルミナ-シリカ、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化ハフニウム及び酸化ランタンから選ばれ、該貴金属が該金属酸化物担体に対して0.7-1.5重量%の量で存在するものであるのに対し、引用発明1では、その点が特定されていない点。
相違点3:本願補正発明1では、二次触媒が、焼成したものであり、また、二次触媒の貴金属及びバナジアが金属酸化物担体に含浸されたものであるのに対し、引用発明1では、その点が不明な点。
イ 相違点1についての検討
引用発明1は、アンモニアの量を特定するものではないが、脱硝処理後の排ガスに過剰のアンモニア(NH3)が多く含まれているから、引用発明1も、「存在する窒素酸化物と完全に反応するのに必要とされる化学量論量の過剰量」で、アンモニアが添加されていると推認されるし、仮にそうでないとしても、引用発明1は、窒素酸化物(NOx)を分解するものである以上、その分解反応が確実に行われるように、還元剤であるアンモニアの量を窒素酸化物と完全に反応するのに必要とされる化学量論量の過剰量とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、相違点1は、実質的な差異ではないか、仮にそうでないとしても当業者が容易になし得たものである。
ウ 相違点2についての検討
引用刊行物1の上記(1)ア(ウ)には、「本発明で用いられる触媒の組成比は特に限定されるものではないが、一例として、一種の酸化物又は複合酸化物からなる担体100重量部に対して、活性成分がV,W,Mo,Ni,Co,Fe,Cr,CuおよびMnなどの卑金属系元素ではその酸化物として、0.5~20重量部の組成が、またPt,Ru,Rh,Pd,Irの貴金属系元素では、その金属として0.01~1重量部の組成が好適に挙げられる。」、「NH3分解触媒3の場合には、TiO2担体100重量部に対して、活性成分が五酸化バナジウム4~10重量部の組成物や、Pt0.5重量部、五酸化バナジウム0.6重量部、タングステン酸化物(WO3)9重量部の組成物などが挙げられる。」と記載されている。
そして、引用刊行物1の実施例1、2では、NH3分解触媒としてV2O5/TiO2-SiO2を用いるものの、上記(1)ア(ウ)の記載事項によれば、「活性成分が五酸化バナジウム4~10重量部の組成物」と同等に、「Pt0.5重量部、五酸化バナジウム0.6重量部、タングステン酸化物(WO3)9重量部の組成物」が記載されている。
してみると、引用刊行物1には、二次触媒であるアンモニア(NH3)分解触媒として、TiO2担体に対して、活性成分が、Pt0.5重量部、五酸化バナジウム0.6重量部、タングステン酸化物(WO3)9重量部の組成物であるものを用いることが実質的に開示され、また、貴金属系元素であるPtでは、その金属として0.01~1重量部の組成とすることが示唆されているといえる。
そして、本願の発明の詳細な説明において、貴金属とバナジアとを併用した場合に貴金属が担体に対して0.7~1.5重量%の量で存在することの技術的意義は記載されているといえないし、さらに、本件特許明細書の実施例における貴金属の量も不明であることに照らせば、引用発明1において、二次触媒を、チタニア担体と、0.7~1重量%のPt、0.6重量%の五酸化バナジウム、9重量%のタングステン酸化物(WO3)とすることに、格別の創意は見出せない。
よって、相違点2は、当業者が引用刊行物1に記載された技術的事項に基づいて容易になしえたものである。
エ 相違点3についての検討
周知例1(特に、上記(1)イ(ウ)、(エ))に例示されるように、含浸法・焼成は周知技術であると認められる。そして、当該周知技術によって当業者の予測を超える効果が奏されるものとは認められない。
してみると、相違点3は、単に周知技術を適用したものであって、仮にそうでないとしても、周知技術に基いて当業者が容易に想到し得たことである。
よって、相違点3は、実質的な差異ではないか、仮にそうでないとしても当業者が容易になし得たものである。
オ 効果についての検討
(ア) 本件特許明細書の【0024】に、「本発明の一つの観点は、石炭火力発電所からの飛灰を汚染しないであろう且つ石炭火力発電所及び他の炭化水素燃料を使用する工場における望ましくないアンモニア放出値を更に減じるであろう程度までアンモニア濃度を減ずる商業的に実行可能な方法を提供することである。」ことが記載されていること等からみて、本願補正発明1は、石炭火力発電所からの飛灰を汚染しないようにアンモニア濃度を減じる効果を有するものと認められる。
しかし、引用発明1は、「脱硝触媒から後流に送られた過剰のNH3は分解除去されて、排ガス中から除かれる」ものであり、また、石炭を用いる火力発電所からの排ガスが飛灰を含むことは周知の技術的事項であることを考慮すると、飛灰のアンモニア汚染が防がれることは、当業者にとって明らかである。
(イ) 本件特許明細書の【0025】に、「本発明の他の観点は、比較的二酸化硫黄酸化を起こさせないで、アンモニア及び一酸化炭素の両方を酸化する方法を提供することである。」ことが記載されていること等からみて、本願補正発明1は、比較的二酸化硫黄酸化を起こさないでアンモニアのほか一酸化炭素を酸化する効果を有するものと認められる。
しかし、白金は、一酸化炭素の酸化触媒として周知のものであり、上記(3)ウで検討した、チタニア担体と、0.7~1重量%のPt、0.6重量%の五酸化バナジウム、9重量%のタングステン酸化物(WO3)とした二次触媒において、一酸化炭素を酸化することは、当業者にとって明らかである。
また、本件特許明細書において、二酸化硫黄の酸化を比較的起こさせないことについて、実施例等による具体的な裏付けはなく、本願補正発明1においてそのような効果が顕著に奏されることは確認できない。さらに、引用発明1は、引用刊行物1の上記(1)ア(エ)に記載された事項によれば、排ガス中のSO2の除去を行う脱硫吸収塔7を用いるから、除去対象化合物であるSO2、すなわち、二酸化硫黄は、酸化反応による減少を避けて流下されなければ不合理であるし、周知例としてあげた周知例1の上記(1)イ(ア)、(イ)に記載されるように、上記(3)ウで検討した、チタニア担体と、0.7~1重量%のPt、0.6重量%の五酸化バナジウム、9重量%のタングステン酸化物(WO3)とした二次触媒のような、「チタン酸化物担体上に、バナジウム、タングステン及びモリブデンよりなる群から選ばれた元素の酸化物の少なくとも1種以上と白金及び/又はイリジウムを担持させてなることを特徴とするアンモニア分解触媒」においても、SO2、すなわち、二酸化硫黄を、SO3へ酸化させる能力が低いことは、当業者にとって既に知られているところであるから、以上の事項を総合的に判断すれば、比較的二酸化硫黄酸化を起こさないことは、顕著な効果とまではいえない。
カ 小括
したがって、本願補正発明1は、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 小括
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明
上記第2のとおり、平成27年5月21日にされた手続補正は却下されたので、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成26年6月20日にされた手続補正による、上記第2の1の(1)のア(補正前)に記載のとおりのものである。
第4 引用刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された、引用刊行物1には、上記第2の2の(1)のアに記載のとおりの事項が記載されている。
そして、引用刊行物1には、上記第2の2の(2)に記載のとおりの発明(以下、同様に「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
第5 対比・判断
本願発明1は、「焼成した」、「金属酸化物担体に含浸された」なる特定事項を含まない以外は、本願補正発明1と同じ発明特定事項を含むものであり、本願補正発明1を包含するところ、引用発明1と対比すると、上記第2の2の(3)に記載したのと同様の点で一致し、相違点1、2と同様の点(以下、「相違点1’」、「相違点2’」という。)で相違する。
そこで、相違点1’、2’については、上記第2の2の(3)に相違点1、2について記載した理由と同様の理由によって、相違点1’は、実質的な差異ではないか、仮にそうでないとしても当業者が容易になし得たものであり、相違点2’当業者が引用刊行物1に記載された技術的事項に基づいて容易になしえたものである。そして、本願発明1による効果については、上記第2の2の(3)のオに記載した理由と同様の理由により顕著な効果ということは出来ない。
よって、本願補正発明1が、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるのと同様に、本願発明1についても、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1は、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004-237244号公報(「引用刊行物1」)に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-009410