特許拒絶査定不服審判
2015-008434
光学ガラス
- 審判番号
- 2015-008434
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-233297外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年05月07日
- 審決日
- 2018年03月12日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .537-WY (C03C) / P18 .536-WY (C03C) / P18 .4 -WY (C03C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第39条第2項、特許法第36条第6項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-233297「光学ガラス」拒絶査定不服審判事件〔平成25年2月7日出願公開、特開2013-28532、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本願は、平成20年1月31日に出願した特願2008-21643号の一部を平成24年10月22日に新たな特許出願としたものであって、平成24年12月19日付けで手続補正がされ、平成26年4月30日付けで拒絶理由通知がされ、平成26年7月7日付けで手続補正がされ、この手続補正に対して、平成27年1月29日付けで補正却下の決定がなされると同時に拒絶査定(原査定)がされ、これに対して、平成27年5月7日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成28年3月10日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知1」という。)がされ、平成28年5月11日付けで手続補正がされ、平成28年6月28日付けで本件審判の請求は成り立たないとの審決(以下、「一次審決」という。)がされ、これに対して、平成28年8月10日に審決取消訴訟(平成28年(行ケ)第10189号)が提起され、平成29年10月25日付けで一次審決を取り消すとの判決がされ、平成29年11月29日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知2」という。)がされ、平成30年1月22日付けで手続補正がされたものである。
なお、平成29年12月22日付けで刊行物等提出書が提出されている。
2 原査定の概要
原査定(平成27年1月29日付け拒絶査定)は、平成24年12月19日付けで手続補正された特許請求の範囲の記載は、その請求項1~11に係る発明の範囲まで、明細書に開示された内容を拡張又は一般化できないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしてないというものである。
3 本願発明及び本願明細書の記載事項
(1)本願発明について
本願請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明5」といい、まとめて「本願発明」という。)は、平成30年1月22日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
「屈折率(nd)が1.78以上1.90以下、アッベ数(νd)が22以上28以下、部分分散比(θg,F)が0.602以上0.620以下の範囲の光学定数を有し、
質量%の比率で
SiO2を10%以上30%以下、
Nb2O5を40%超65%以下、
ZrO2を0.1%以上15%以下、
TiO2を1%以上9%以下
含有し、
B2O3の含有量が0~20%、
GeO2の含有量が0~5%、
Al2O3の含有量が0~5%、
WO3の含有量が0~15%、
ZnOの含有量が0~15%、
SrOの含有量が0~15%、
Li2Oの含有量が0~4.90%、
Na2Oの含有量が0~20%、
Sb2O3の含有量が0~1%
であり、
TiO2/(ZrO2+Nb2O5)が0.20以下であり、
SiO2、B2O3、TiO2、ZrO2、Nb2O5、WO3、ZnO、SrO、Li2O、Na2Oの合計含有量が90%超であることを特徴とする光学ガラス。」
ここで、「屈折率(nd)が1.78以上1.90以下、アッベ数(νd)が22以上28以下、部分分散比(θg,F)が0.602以上0.620以下の範囲の光学定数を有」することを「本願物性要件」、「質量%の比率でSiO2を10%以上30%以下、Nb2O5を40%超65%以下、ZrO2を0.1%以上15%以下、TiO2を1%以上9%以下含有し、B2O3の含有量が0~20%、GeO2の含有量が0~5%、Al2O3の含有量が0~5%、WO3の含有量が0~15%、ZnOの含有量が0~15%、SrOの含有量が0~15%、Li2Oの含有量が0~4.90%、Na2Oの含有量が0~20%、Sb2O3の含有量が0~1%であり、TiO2/(ZrO2+Nb2O5)が0.20以下であり、SiO2、B2O3、TiO2、ZrO2、Nb2O5、WO3、ZnO、SrO、Li2O、Na2Oの合計含有量が90%超である」ことを「本願組成要件」という。
(2)本願明細書の記載事項
本願明細書の発明の詳細な説明には、次の記載はある。
ア 「【背景技術】
【0002】
高屈折率高分散ガラスは、各種レンズなどの光学素子用材料として非常に需要が多く、屈折率(nd)が1.78以上、アッベ数(νd)が30以下である光学ガラス・・・が知られている。
【0003】
これら光学ガラスが使用される光学系はデジタルカメラなどの光学製品に搭載されるが、色収差を改善するためには、高屈折率高分散領域の光学ガラスに部分分散比が小さいことが望まれている。
【0004】
以上の理由より、光学設計上の有用性という観点で従来から高屈折率高分散を有し、部分分散比が小さい光学ガラスが強く求められている。
【0005】
特に、屈折率(nd)が1.78以上、アッベ数(νd)が30以下の範囲の光学定数を有する高屈折率高分散の光学ガラスが強く求められている。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、前記背景技術に記載した光学ガラスに見られる諸欠点を総合的に解消し、前記の光学定数を有し、部分分散比が小さい光学ガラスを提供することにある。」
ウ 「【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意試験研究を重ねた結果、特定量のSiO2、Nb2O5及びZrO2を含有し、且つ、TiO2/(ZrO2+Nb2O5)の比率と、SiO2、B2O3、TiO2、ZrO2、Nb2O5、WO3、ZnO、SrO、Li2O、Na2Oの合計含有量を所定の範囲内にすることにより、前記の光学定数を有し、部分分散比が小さい光学ガラスが得られた。
【0012】
本発明の第1の構成は、屈折率(nd)が1.78以上、アッベ数(νd)が30以下、部分分散比(θg,F)が0.620以下の範囲の光学定数を有し、必須成分としてSiO2、Nb2O5を含有し、質量%の比率でNb2O5が40%より多いことを特徴とする光学ガラスである。
【0013】
本発明の第2の構成は、酸化物基準の質量%の比率でK2Oが2%未満、TiO2/(ZrO2+Nb2O5)が0.32未満、かつSiO2、B2O3、TiO2、ZrO2、Nb2O5、WO3、ZnO、SrO、Li2O、Na2Oの合計含有量が90%より多いことを特徴とする前記構成1に記載の光学ガラスである。
【0014】
本発明の第3の構成は、酸化物基準の質量%で、
SiO2 10~40%、
Nb2O5 40%より多く65%以下、
並びに
B2O3 0~20%及び/又は
GeO2 0~10%及び/又は
Al2O3 0~10%及び/又は
TiO2 0~15%及び/又は
ZrO2 0~15%及び/又は
WO3 0~15%及び/又は
ZnO 0~15%及び/又は
SrO 0~15%及び/又は
Li2O 0~15%及び/又は
Na2O 0~20%及び/又は
Sb2O3 0~1%
の各成分を含有することを特徴とする前記構成1~2に記載の光学ガラスである。」
エ 「【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の光学ガラスの各成分について説明する。以下、特に断らない限り各成分の含有率は酸化物基準の質量%を意味する。
【0021】
SiO2成分は、本発明の光学ガラスにおいて、ガラス形成酸化物成分として欠かすことのできない成分であり、ガラスの粘度を高め、耐失透性および化学的耐久性を向上させるのに有効である。しかし、その量が少なすぎるとその効果が不十分であり、多すぎると逆に耐失透性、溶融性が悪化しやすくなる。従って、好ましくは10%、より好ましくは12%、最も好ましくは14%を下限として含有することができ、好ましくは40%、より好ましくは35%、最も好ましくは30%を上限として含有することができる。
・・・
【0023】
B2O3成分は、ガラス形成酸化物として作用する任意成分であり、ガラス転移点(Tg)を下げるのに有効である。しかし、その量が多すぎると化学的耐久性が悪化しやすくなる。従って、好ましくは20%、より好ましくは15%、最も好ましくは10%を上限として含有することができる。
・・・
【0025】
GeO2成分は、屈折率を高め、耐失透性を向上させる効果を有する任意成分であり、ガラス形成酸化物として作用する。しかし、その量が多すぎると原料が非常に高価であるため、コストが高くなる。従って、好ましくは10%、より好ましくは5%、最も好ましくは3%を上限として含有することができる。
・・・
【0027】
Al2O3成分は、化学的耐久性の改善に有効な任意成分である。しかし、その量が多すぎると耐失透性が悪化しやすくなる。従って、好ましくは10%、より好ましくは5%、最も好ましくは3%を上限として含有することができる。
・・・
【0029】
TiO2成分は、屈折率を高め、分散を大きくする効果がある。しかし、その量が多すぎると可視光短波長域の透過率を悪化させ、部分分散比も大きくなる。従って、好ましくは15%、より好ましくは12%、最も好ましくは9%を上限として含有することができる。なお、TiO2は任意成分であるため、含有しなくとも本発明のガラスを製造することは可能であるが、前記効果を発揮させやすくするためにも、好ましくは0%を超え、より好ましくは0.1%、最も好ましくは1%を下限とする。
・・・
【0031】
ZrO2成分は、屈折率を高め、部分分散比を小さくし、化学的耐久性を向上させる効果がある。しかし、その量が多すぎると逆に耐失透性が悪化しやすくなる。従って、好ましくは15%、より好ましくは13%、最も好ましくは12%を上限として含有することができる。なお、ZrO2は任意成分であるため、含有しなくとも本発明のガラスを製造することは可能であるが、前記効果を発揮させやすくするためにも、好ましくは0%を超え、より好ましくは0.1%、最も好ましくは1%を下限とする。
・・・
【0033】
Nb2O5成分は、屈折率を高め、分散を大きくしつつ部分分散比を小さくし、化学的耐久性及び耐失透性を改善するのに有効な必須の成分である。しかし、その量が少なすぎるとその効果が不十分となり、多すぎると逆に耐失透性が悪くなり、可視光短波長域の透過率も悪化しやすくなる。従って、好ましくは40%より多く、より好ましくは41%、最も好ましくは42%を下限として含有することができ、好ましくは65%、より好ましくは60%、最も好ましくは56%を上限として含有することができる。
・・・
【0035】
Sb2O3成分は、ガラス溶融時の脱泡のために任意に添加しうるが、その量が多すぎると可視光領域の短波長領域における透過率が悪化しやすくなる。従って、好ましくは1%、より好ましくは0.5%、最も好ましくは0.2%を上限として含有できる。
・・・
【0038】
WO3成分は、光学定数を調整し、耐失透性を改善する効果がある。しかし、その量が多すぎると逆に耐失透性や可視光領域の短波長域の光線透過率が悪くなる上、部分分散比が大きくなる。従って、好ましくは15%、より好ましくは12%、最も好ましくは10%を上限として含有することができる。
・・・
【0048】
ZnO成分は、ガラス転移温度(Tg)を低くし、化学的耐久性を改善する効果がある。しかし、その量が多すぎると耐失透性が悪化しやすくなる。従って、好ましくは15%、より好ましくは10%、最も好ましくは5%を上限として含有することができる。
・・・
【0054】
SrO成分は光学定数の調整に有効である。しかし、その量が多すぎると耐失透性が悪化しやすくなる。従って、好ましくは15%、より好ましくは10%、最も好ましくは5%を上限として含有することができる。
・・・
【0056】
BaO成分は光学定数の調整に有効である。しかし、その量が多すぎると耐失透性が悪化しやすくなる。従って、好ましくは15%、より好ましくは10%、最も好ましくは5%を上限として含有することができる。
・・・
【0058】
Li2O成分は、部分分散比を小さくし、ガラス転移温度(Tg)を大幅に下げ、かつ、混合したガラス原料の溶融を促進する効果があり、本発明の組成系においてはリヒートプレス成形時の失透を抑制する効果がある。しかし、その量が多すぎると耐失透性が急激に悪化しやすくなる。従って、好ましくは15%、より好ましくは13%、最も好ましくは11%を上限として含有することができる。なお、Li2Oは任意成分であるため、含有しなくとも本発明のガラスを製造することは可能であるが、前記効果を発揮させやすくするためにも、好ましくは0%を超え、より好ましくは0.1%、最も好ましくは1%を下限とする。
・・・
【0060】
Na2O成分は、ガラス転移温度(Tg)を下げ、混合したガラス原料の溶融を促進する効果がある。しかし、その量が多すぎると耐失透性が急激に悪化しやすくなる。従って、好ましくは20%、より好ましくは15%、最も好ましくは13%を上限として含有することができる。なお、Na2Oは任意成分であるため、含有しなくとも本発明のガラスを製造することは可能であるが、前記効果を発揮させやすくするためにも、好ましくは0%を超え、より好ましくは0.1%、最も好ましくは4%を下限とする。」
オ 「【0073】
本発明者は、前記範囲内の光学定数において、TiO2成分の含有量とZrO2成分、Nb2O5成分の合計含有量の比を所定の値に調節することにより、部分分散比(θg,F)が小さいガラスが得られることを見出した。すなわちTiO2/(ZrO2+Nb2O5)の値が、好ましくは0.32未満、より好ましくは0.2、最も好ましくは0.15を上限とすることができる。
【0074】
また、本発明者は、SiO2、B2O3、TiO2、ZrO2、Nb2O5、WO3、ZnO、SrO、Li2O、Na2Oの各成分の合計含有量を調節することにより、高屈折率高分散特性を有し、部分分散比が小さく、リヒートプレス成形時の失透を抑制したガラスが得られることを見出した。すなわちSiO2、B2O3、TiO2、ZrO2、Nb2O5、WO3、ZnO、SrO、Li2O、Na2Oの合計含有量の値が、好ましくは90%より多く、より好ましくは91%、最も好ましくは94%を下限とすることができる。
【0075】
さらに、所望の光学定数を維持し、部分分散比(θg,F)が小さく、かつ安価なガラスを得るためには、TiO2/(ZrO2+Nb2O5)の値、およびSiO2、B2O3、TiO2、ZrO2、Nb2O5、WO3、ZnO、SrO、Li2O、Na2Oの合計含有量の値を同時に上記所定の好ましい範囲内にするほうがよい。」
カ 「【0083】
次に本発明の光学ガラスの物性について説明する。
前述のとおり、本発明の光学ガラスは光学設計上の有用性の観点から、屈折率(nd)が好ましくは1.78、より好ましくは1.8、最も好ましくは1.82を下限とし、好ましくは1.95、より好ましくは1.92、最も好ましくは1.9を上限とする。
【0084】
また、本発明の光学ガラスは光学設計上の有用性の観点から、アッベ数(νd)が好ましくは18、より好ましくは20、最も好ましくは22を下限とし、好ましくは30、より好ましくは28、最も好ましくは27を上限とする。
【0085】
また、本発明の光学ガラスは光学設計上の有用性の観点から、部分分散比(θg,F)が好ましくは0.598、より好ましくは0.600、最も好ましくは0.602を下限とし、好ましくは0.620、より好ましくは0.619、最も好ましくは0.618を上限とする。」
キ 「【実施例】
【0090】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0091】
本発明のガラスの実施例(No.1~No.66)の組成を、これらのガラスの屈折率(nd)、アッベ数(νd)、部分分散比(θg,F)、ガラス転移温度(Tg)、屈伏点(At)および失透試験と共に表1~表9に示した。このうち、実施例(No.1~No.7、No.10~No.20、No.22、No.23、No.42、No.43、No.46、No.47、No.58、No.59)は、本発明の参考例である。表中、各成分の組成は質量%で表示するものとする。
【0092】
また、比較例のガラス(No.A~No.C)の組成を、これらのガラスの屈折率(nd)、アッベ数(νd)、部分分散比(θg,F)、ガラス転移温度(Tg)、屈伏点(At)および失透試験と共に表10に示した。表中、各成分の組成は質量%で表示するものとする。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】
【表7】
【0100】
【表8】
【0101】
【表9】
【0102】
【表10】
【0103】
表1~表9に示した本発明の実施例の光学ガラス(No.1~No.66)は、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等の通常の光学ガラス用原料を表1~表9に示した各実施例の組成の割合となるように秤量し、混合し、白金るつぼに投入し、組成による溶融性に応じて、1100~1400℃で、3~5時間溶融、清澄、攪拌して均質化した後、金型等に鋳込み徐冷することにより得ることができた。
【0104】
屈折率(nd)及びアッベ数(νd)は徐冷降温速度を-25℃/時にして得られた光学ガラスについて測定した。
【0105】
部分分散比(θg,F)は、徐冷降温速度を-25℃/時にして得られた光学ガラスについてCライン(波長 656.27nm)における屈折率(nC)、Fライン(波長 486.13nm)における屈折率(nF)、gライン(波長 435.835nm)における屈折率(ng)を測定し、θg,F=(ng-nF)/(nF-nC)による式にて算出した。
・・・
【0108】
失透試験は、10~40mmの大きさにガラス塊を切断したものをガラス試料とし、電気炉内で所定の温度まで1~3時間で昇温し、所定の温度で30分間保持した後、炉内で放冷した。その後、ガラス試料を2面研磨して目視および顕微鏡にてガラス中の失透を観察した。観察の結果、失透のないものを○、失透のあるものを×として表記した。
【0109】
表1~表9に見られる通り、本発明の実施例の光学ガラス(No.1~No.66)はすべて、前記範囲内の光学定数(屈折率(nd)及びアッベ数(νd))を有し、部分分散比(θg,F)が0.620以下であり、660℃の失透試験でガラス内部に失透が発生していない。また、ガラス転移温度(Tg)が650℃以下であるため、精密モールドプレス成形に適している。
【0110】
これに対し、表10に示す組成の比較例A~Cの各試料について、上記実施例と同じ条件にてガラスを作製し、同一の評価方法により、作製したガラスを評価した。比較例A~Bに見られる通り、質量%の比率でK2Oが2%未満、の範囲外にあるため、失透試験で失透が発生している。また、比較例Cに見られる通り、TiO2/(ZrO2+Nb2O5)が0.32未満、かつSiO2、B2O3、TiO2、ZrO2、Nb2O5、WO3、ZnO、SrO、Li2O、Na2Oの合計含有量が90%より多い、の範囲外にあるため、部分分散比(θg,F)が0.620以下を満足しない。従って、工業的に利用できない。」
ク 「【産業上の利用可能性】
【0111】
以上、述べたとおり、本発明の光学ガラスは、組成がSiO2-Nb2O5系であり、かつ、質量%の比率でNb2O5が40%より多いガラスであって、屈折率(nd)が1.78以上、アッベ数(νd)が30以下、部分分散比(θg,F)が0.620以下の範囲の光学定数を有しているから、光学設計上、非常に有用であり、また、転移温度(Tg)が650℃以下であるから、精密モールドプレス成形に適しており、産業上非常に有用である。」
4 サポート要件の検討
(1)特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かについては、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきと解される。
(2)これを本願発明についてみると、上記3(2)ア及びイによれば、本願発明の課題は、「高屈折率高分散であって、かつ、部分分散比が小さい光学ガラスを提供する」ことであるところ、本願発明1は、上記3(1)のとおり、「光学ガラス」を本願物性要件と本願組成要件によって特定するものであり、このうち、本願物性要件は、本願発明の課題を、「屈折率(nd)が1.78以上1.90以下、アッベ数(νd)が22以上28以下、部分分散比(θg,F)が0.602以上0.620以下」という光学定数により定量的に表現するものであって、本願組成要件で特定される光学ガラスを、本願発明の課題を解決できるものに限定するための要件ということができる。
そして、このような本願発明に係る特許請求の範囲の構成からすれば、その記載がサポート要件に適合するものといえるためには、本願組成要件で特定される光学ガラスが発明の詳細な説明に記載されていることに加え、本願組成要件で特定される光学ガラスが高い蓋然性をもって本願物性要件を満たしていることを、発明の詳細な説明の記載や示唆又は本願出願時の技術常識から当業者が認識できることが必要というべきである。
(3)上記観点から、本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識に基づき、サポート要件を検討する。
発明の詳細な説明には、上記3(2)ウ及びエによれば、光学ガラスの組成について、本願組成要件に規定される各成分を、その規定に係る数値範囲で含有することが記載され、また、上記3(2)オによれば、「TiO2/(ZrO2+Nb2O5)の値」及び「SiO2、B2O3、TiO2、ZrO2、Nb2O5、WO3、ZnO、SrO、Li2O、Na2Oの合計含有量」を本願組成要件に規定される数値範囲とすることが記載されている。そして、発明の詳細な説明には、上記3(2)キのとおり、実施例(No.8、9、21、24~38、41、44、45、48~57、60~66)として、本願組成要件を満たす具体的な組成物も記載されている。
また、上記(2)のとおり、本願発明の課題は、「高屈折率高分散であって、かつ、部分分散比が小さい光学ガラスを提供する」ことであり、本願物性要件は、これを光学定数により定量的に表現するものであるところ、発明の詳細な説明には、上記3(2)エ及びオによれば、本願発明の課題解決手段として、本願組成要件を満たすものとすべき理由が説明されており、Nb2O5成分は、屈折率を高め、分散を大きくしつつ部分分散比を小さくし、化学的耐久性及び耐失透性を改善するのに有効な必須成分であること(上記3(2)エの段落【0033】)から、本願組成要件において、その含有量が40%超65%以下とされ、組成物中で最も多い成分とされていることが理解でき、さらに、ZrO2成分は、屈折率を高め、部分分散比を小さくする効果があり(同段落【0031】)、他方、TiO2成分は、屈折率を高め、分散を大きくする効果がある反面、その量が多すぎると部分分散比が大きくなること(同段落【0029】)から、「部分分散比が小さい光学ガラス」を得るためには、ZrO2及びNb2O5の含有量に対してTiO2の含有量が多くなりすぎることを避ける必要があり、そのためにTiO2/(ZrO2+Nb2O5)の値を一定以下とするものであること(上記3(2)オの段落【0073】)が理解でき、これが、本願組成要件において、各成分の含有量とともに規定される「TiO2/(ZrO2+Nb2O5)を0.2以下」との特定に反映され、本願発明の課題の解決にとって重要な構成となっていることが理解できる。
一方、発明の詳細な説明における実施例には、本願組成要件を満たす実施例(No.8、9、21、24~38、41、44、45、48~57、60~66)に係る組成物が、本願物性要件の全てを満たすことが示されているが、これら組成物の組成は、本願組成要件に規定された各成分の含有比率、「TiO2/(ZrO2+Nb2O5)の値」及び「SiO2、B2O3、TiO2、ZrO2、Nb2O5、WO3、ZnO、SrO、Li2O、Na2Oの合計含有量」の各数値範囲の一部のものでしかなく、上限から下限までの数値範囲を網羅するものでない。そのため、本願組成要件で特定される光学ガラスのうち、実施例に示された数値範囲を超える組成に係る光学ガラスについても、本願物性要件を満たし得るものであることを当業者が高い蓋然性をもって認識できることが必要である。
(4)そこで検討するに、まず、光学ガラスの製造に関して、ガラスの物性が多くの成分の総合的な作用により決定されるものであるため、ターゲットとされる物性を有する光学ガラスを製造するにあたり、既知の光学ガラスの配合組成を基本にして、その成分の一部を、当該物性に寄与することが知られている成分に置き換える作業を行い、ターゲットでない他の物性に支障がでないように複数の成分の混合比を変更するなどして試行錯誤を繰り返すことで当該配合組成を見出すのが通常行われる手順であり、このことは、本願出願時において、光学ガラスの技術分野の技術常識であったものと認められる。
そして、このような技術常識からすれば、光学ガラス分野の当業者であれば、発明の詳細な説明の実施例に示された組成物を基本にして、特定の成分の含有量をある程度変化させた場合であっても、これに応じて他の成分を適宜増減させることにより、当該特定の成分の増減による物性の変化を調整して、もとの組成物と同様に本願物性要件を満たす光学ガラスを得ることも可能であることを理解できる。さらに、上記(3)のとおり、当業者は、発明の詳細な説明の記載から、本願物性要件を満たす光学ガラスを得るためには、「Nb2O5成分」の含有比率、及び、「TiO2/(ZrO2+Nb2O5)の値」を一定以下とすることが特に重要であることを理解できるから、これらの条件を維持しながら、光学ガラスの製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で上記のような成分調整を行うことにより、高い蓋然性をもって本願物性要件を満たす光学ガラスを得られることが可能であることも認識できる。
(5)そこで、本願物性要件を満たす光学ガラスを得ることができることを認識し得る範囲が、本願組成要件に規定された各成分における数値範囲の全体に及ぶものかについて更に検討する。
ア TiO2/(ZrO2+Nb2O5)について
TiO2/(ZrO2+Nb2O5)の上限値(0.20)について検討すると、実施例中最多の値は0.14(実施例65)であるところ、比較例Bにおいて、TiO2/(ZrO2+Nb2O5)が0.30である場合にも本願物性要件を満足する光学ガラスが得られていることから、当業者であれば、0.14と0.30の中間の数値である0.20(上限値)においても、本願物性要件を満足する光学ガラスが得られることが可能であると高い蓋然性をもって認識できる。
イ Nb2O5、ZrO2及びTiO2の含有量について
Nb2O5、ZrO2及びTiO2は、上記(3)で検討したとおり屈折率、分散及び部分分散比の光学定数に影響する成分であるから、当業者であれば、本願物性要件に関係するTiO2/(ZrO2+Nb2O5)の値を0.2以下とする条件を維持するように、Nb2O5、TiO2及びZrO2の含有量を調整するとともに、本願組成要件を満たすように、上記3(2)エに記載された上記光学定数に影響しない成分によって、全体組成を100%になるように調整を行うものといえる。
そこで、Nb2O5の上限値(65%)について検討すると、例えば、実施例中最多の含有量(54.11%)を有する実施例60において、TiO2/(ZrO2+Nb2O5)を0.10に維持するように、Nb2O5を54.11%から65%(変化量+10.89%)、ZrO2を1.87%から0.1%(同-1.77%)、TiO2を5.61%から6.51%(同+0.90%)とするとともに、これら成分の増加分(+10.02%)を、光学定数に影響しないSiO2を14.95%から10%(同-4.95%)、B2O3を9.35%から4.28%(同-5.07%)とするように調整することで、本願物性要件及び本願組成要件を満たす光学ガラスが得られることを当業者であれば認識できる。また、Nb2O5の下限値(40%)について検討すると、例えば、実施例中最少の含有量(43.71%)を有する実施例24において、Nb2O5を43.71%から40%(変化量-3.71%)とし、ZrO2を10.48%から14.19%(同+3.71%)とするように調整することで、TiO2/(ZrO2+Nb2O5)を0.12に維持し、本願物性要件及び本願組成要件を満たす光学ガラスが得られることを当業者であれば認識できる。
次に、ZrO2の上限値(15%)について検討すると、例えば、実施例中最多の含有量(10.68%)を有する実施例38において、ZrO2を10.68%から15%(変化量+4.32%)とし、Nb2O5を47.48%から43.16%(同-4.32%)とするように調整することで、TiO2/(ZrO2+Nb2O5)を0.03に維持し、本願物性要件及び本願組成要件を満たす光学ガラスが得られることを当業者であれば認識できる。また、ZrO2の下限値(0.1%)について検討すると、例えば、実施例中最少の含有量(1.85%)を有する実施例50において、ZrO2を1.85%から0.1%(変化量-1.75%)とし、Nb2O5を53.61%から55.36%(同+1.75%)とするように調整することで、TiO2/(ZrO2+Nb2O5)を0.12に維持し、本願物性要件及び本願組成要件を満たす光学ガラスが得られることを当業者であれば認識できる。
さらに、TiO2の上限値(9%)について検討すると、例えば、実施例中最多の含有量(7.89%)を有する実施例65において、TiO2/(ZrO2+Nb2O5)を0.14に維持するように、TiO2を7.89%から9%(変化量+1.11%)、Nb2O5を50.79%から59.03%(同+8.24%)、ZrO2を5.26%のまま(同±0%)とするとともに、これら成分の増加分(+9.35%)を、光学定数に影響しないSiO2を22.81%から13.46%(同-9.35%)、あるいは、Na2Oを11.40%から2.05%(同-9.35%)とするように調整することで、本願物性要件及び本願組成要件を満たす光学ガラスが得られることを当業者であれば認識できる。また、TiO2の下限値(1%)について検討すると、例えば、実施例中最少の含有量(1.94%)を有する実施例37において、TiO2を1.94%から1%(変化量-0.94%)、Nb2O5を47.48%から40.01%(同-7.47%)、ZrO2を10.68%から0.1%(同-10.58%)として、TiO2/(ZrO2+Nb2O5)を0.025とするとともに、これら成分の減少分(-18.99%)を、光学定数に影響しないSiO2を15.53%から30%(同+14.47%)、B2O3を9.71%から14.23%(同+4.52%)とするように調整することで、本願物性要件及び本願組成要件を満たす光学ガラスが得られることを当業者であれば認識できる。
ウ SiO2の含有量について
必須成分であるSiO2の上限値(30%)について検討すると、SiO2は、上記光学定数に影響しない成分であるから、例えば、実施例中最多の含有量(25.49%)を有する実施例8において、SiO2を25.49%から30%(変化量+4.51%)とし、この増加分を、光学定数に影響しないNa2Oを9.80%から5.29%(同-4.51%)とすることで、本願物性要件及び本願組成要件を満たす光学ガラスが得られることを当業者であれば認識できる。また、SiO2の下限値(10%)について検討すると、例えば、実施例中最少の含有量(14.16%)を有する実施例49において、SiO2を14.16%から10%(変化量-4.16%)とし、この増加分を、光学定数に影響しないB2O3を8.85%から13.01%(同+4.16%)、あるいは、Na2Oを11.50%から15.66%(同+4.16%)とすることで、本願物性要件及び本願組成要件を満たす光学ガラスが得られることを当業者であれば認識できる。
エ 任意成分の含有量について
B2O3、GeO2、Al2O3、WO3、ZnO、SrO、Li2O、Na2O、Sb2O3は任意成分として特定されており、上記3(2)エによれば、Li2Oは部分分散比を小さくする成分であり、GeO2は屈折率を高める成分であり、WO3とSrOは光学定数を調整する成分であり、その他は上記光学定数に影響しない成分といえる。
まず、Li2Oの上限値(4.90%)について検討すると、当該上限値は、実施例8(Li2O含有量4.90%)によってサポートされている。また、Li2Oの下限値(0%)について検討すると、例えば、実施例中最少の含有量(1.72%)を有する実施例63において、Li2Oを1.72%から0%(変化量-1.72%)とし、部分分散比を小さくする成分であるZrO2を8.62%から10.34%(同+1.72%)とし、Nb2O5(49.91%)及びTiO2(6.03%)を変化せずに、あるいは、Nb2O5を49.91%から51.63%(同+1.72%)とし、ZrO2(8.62%)及びTiO2(6.03%)を変化せずに、TiO2/(ZrO2+Nb2O5)を0.10に調整することで、本願物性要件及び本願組成要件を満たす光学ガラスが得られることを当業者であれば認識できる。
次に、GeO2、WO3、SrOについて検討すると、それぞれが下限値(0%)の実施例が記載されているのみであるが、例えば、実施例60において、TiO2/(ZrO2+Nb2O5)を0.10に維持するように、GeO2を0.00%から上限値5%(変化量+5.00%)とし、屈折率を高める成分である、TiO2を5.61%から5.11%(同-0.50%)、Nb2O5を54.11から49.61%(同-4.50%)、ZrO2を1.87%のまま(同±0%)と調整すること、あるいは、WO3またはSrOを0.00%から上限値15%(同+15.00%)とし、光学定数に影響のある成分である、TiO2を5.61%から4.11%(同-1.50%)、Nb2O5を54.11から40.61%(同-13.50%)、ZrO2を1.87%のまま(同±0%)と調整することで、本願物性要件及び本願組成要件を満たす光学ガラスが得られることを当業者であれば認識できる。
さらに、光学定数に影響しないB2O3、Al2O3、ZnO、Na2O、Sb2O3について検討すると、例えば、実施例中最少のNa2O含有量(6.80%)を有する実施例32は、B2O3が0.00%、Al2O3が0.00%、ZnOが0.00%であり、B2O3、Al2O3、ZnOの下限値をサポートしている。さらに、Na2O及びSb2O3含有量の下限値について検討すると、例えば、同例において、TiO2/(ZrO2+Nb2O5)を変更せずに、Na2Oを6.80%から下限値0%(変化量-6.80%)とし、光学定数に影響しない成分であるB2O3を0.00%から6.80%(同+6.80%)に調整すること、あるいは、Sb2O3を0.10%から下限値0%(同-0.10%)とし、SiO2を24.24%から25.34%(同+0.10%)に調整することで、それぞれ、本願物性要件及び本願組成要件を満たす光学ガラスが得られることを当業者であれば認識できる。また、これら成分の上限値について検討すると、例えば、実施例最多のB2O3含有量(9.71%)及びNa2O含有量(12.62%)を有する実施例38において、TiO2/(ZrO2+Nb2O5)を変更せずに、B2O3を9.71%から上限値20%(変化量+10.29%)とし、Na2Oを12.62%から2.33%(同-10.29%)に調整すること、Al2O3を0.00%から上限値5%(同+5.00%)とし、Na2Oを12.62%から7.62%(同-5.00%)に調整すること、ZnOを0.00%から上限値15%(同+15.00%)とし、Na2Oを12.62%から2.62%(同-10.00%)、B2O3を9.71%から4.71%(同-5.00%)と調整すること、Na2Oを12.62%から上限値20%(同+7.38%)とし、B2O3を9.71%から2.33%(同-7.38%)と調整すること、あるいは、Sb2O3を0.10%から上限値1%(同+0.90%)とし、Na2Oを12.62%から11.72%(同-0.90%)に調整することで、それぞれ、本願物性要件及び本願組成要件を満たす光学ガラスが得られることを当業者であれば認識できる。
オ SiO2、B2O3、TiO2、ZrO2、Nb2O5、WO3、ZnO、SrO、Li2O、Na2Oの合計含有量について
当該合計含有量の下限値(90%)について検討すると、例えば、当該合計含有量が99.91%である実施例60において、上記エで検討しように、光学定数に影響するGeO2を0.00%から5%(変化量+5.00%)とし、TiO2/(ZrO2+Nb2O5)を0.10に維持するように、TiO2を5.61%から5.11%(同-0.50%)、Nb2O5を54.11から49.61%(同-4.50%)、ZrO2を1.87%のまま(同±0%)とし、さらに、光学定数に影響しないAl2O3を0.00%から4.91%(同+4.91%)とし、Na2Oを9.35%から4.44%(同-4.91%)にして、当該合計含有量を90%に調整することで、本願物性要件及び本願組成要件を満たす光学ガラスが得られることを当業者であれば認識できる。
(6)以上のとおり、本願組成要件に規定された数値範囲の全体にわたって、本願物性要件を満たす光学ガラスを得ることができることを当業者が認識し得るものといえる。
したがって、本願発明1及びこれを引用する本願発明2~5は、発明の詳細な説明に記載された発明といえ、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。
5 原査定についての判断
上記4で検討したとおり、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているから、原査定を維持することはできない。
6 当審拒絶理由について
当審拒絶理由通知1及び当審拒絶理由通知2で通知した拒絶理由について検討する。
(1)特許法第36条第6項1号について
平成27年5月7日付け、あるいは、平成28年5月11日付けで手続補正された特許請求の範囲の記載に関して、請求項1に記載された各成分含有量の数値範囲(以下、まとめて「補正前の本願組成要件」という。)の全体にわたって、請求項1に記載された屈折率、アッベ数及び部分分散比(以下、「補正前の本願物性要件」という。)を満たす光学ガラスを得ることを当業者が認識し得ないから、請求項1~5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明でないとの拒絶の理由を通知したが、上記4で検討したとおりであるから、この拒絶の理由は解消した。
(2)特許法第36条第4項第1号について
手続補正前の本願組成要件の全体にわたって、補正前の本願物性要件を満たす光学ガラスを得るためには、当業者に過度の試行錯誤を要求するものであるから、発明の詳細な説明には、当業者が請求項1~5に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないとの拒絶の理由を通知した。
しかしながら、上記4で検討したとおり、本願組成要件の数値範囲を満たす光学ガラスは、発明の詳細な説明に具体的に記載された実施例(No.8、9、21、24~38、41、44、45、48~57、60~66)、及び、光学ガラスの技術分野の技術常識を踏まえれば、本願物性要件を満足する光学ガラスとなると当業者が認識できるから、この拒絶の理由は解消した。
(3)特許法第36条第6項第2号について
平成27年5月7日付けで手続補正された特許請求の範囲の各成分含有量の数値範囲に関して、全体の組成が100%を超える場合があり、特許請求の範囲の記載が不明確であるとの拒絶の理由を通知した。
しかしながら、平成28年5月11日付けの手続補正によって、対象となる請求項1の「GeO2の含有量が0~10%」及び「Al2O3の含有量が0~10%」は、それぞれ、「GeO2の含有量が0~5%」及び「Al2O3の含有量が0~5%」と補正され、さらに対象となる請求項3及び4は削除され、特許請求の範囲の全体の組成が100%を超えることはなくなったため、この拒絶の理由は解消した。
(4)特許法第39条第2項について
当審拒絶理由通知1で通知した特許法第39条第2項の拒絶の理由は、平成28年5月11日付けの手続補正によって対象となる請求項が削除されたため、この拒絶の理由は解消した。
7 刊行物等提出書について
平成29年12月22日付けの刊行物等提出書において、刊行物1(国際公開第2004/110942号)及び刊行物2(特開2004-161598号公報)が提出されるとともに、刊行物1の実施例11及び18、並びに、刊行物2の実施例9の各光学ガラスの部分分散比に関する実験成績証明書1及び2が提出された。
しかしながら、刊行物1の実施例11のTiO2含有量(15.00%)、ZrO2含有量(0.00%)、及び、TiO2/(ZrO2+Nb2O5)の値(0.3363)は、本願組成要件を満たしておらず、部分分散比(0.6231)も、本願物性要件を満たしていないし、同実施例18のZrO2含有量(0.00%)、及び、SiO2、B2O3、TiO2、ZrO2、Nb2O5、WO3、ZnO、SrO、Li2O、Na2Oの合計含有量(85.00%)は、本願組成要件を満していないため、刊行物1には、本願物性要件及び本願組成要件を同時に満足する光学ガラスは実質的に記載されているといえない。
また、刊行物2の実施例9のLi2O含有量(5.0%)、及び、SiO2、B2O3、TiO2、ZrO2、Nb2O5、WO3、ZnO、SrO、Li2O、Na2Oの合計含有量(90.0%)は、本願物性要件を満たしておらず、同例のK2O含有量(8.0%)をNaO含有量に置換して、前記合計含有量を98.0%にできたとしても、前記Li2O含有量は依然として5.0%であるため、刊行物2にも、本願物性要件及び本願組成要件を同時に満足する光学ガラスは実質的に記載されているといえない。
しかも、刊行物1及び2には、高屈折率高分散の光学ガラスの部分分散比を小さくするとの課題も、当該課題を解決するための具体的な手段も記載されていない。
したがって、刊行物等提出書の刊行物1及び2を考慮しても、本件発明が新規性または進歩性を有さないとすることはできない。
8 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由及び当審からの拒絶理由のいずれによっても本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-008434