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特許拒絶査定不服審判

2015-005907

単結晶シリコンウェハ

審判番号
2015-005907
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2012-030935
請求日
2015年03月31日
審決日
2017年09月28日
公報発行日
2017年11月24日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
  • 【請求人】インフィネオン テクノロジーズ オーストリア アクチエンゲゼルシャフト
  • 【請求人代理人】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審判長/審判官
  • 審判長 矢頭 尚之
  • 審判官 鈴木 匡明
  • 審判官 加藤 浩一
分類
P18 .113-WY (H01L) / P18 .121-WY (H01L) / P18 .537-WY (H01L) / P18 .538-WY (H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2012- 30935「単結晶シリコンウェハ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月19日出願公開,特開2012-138592,請求項の数(8)〕について,次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は,平成20年2月25日(パリ条約による優先権主張2007年2月26日,ドイツ連邦共和国)に出願した特願2008-42602号(本願のもととなる出願)の一部を平成24年2月15日に新たな特許出願としたものであって,平成24年2月15日に上申書が提出され,平成25年10月21日付けで拒絶理由が通知がされ,平成26年1月29日に意見書と手続補正書が提出され,同年5月30日に最後の拒絶理由が通知され,同年9月3日に意見書と手続補正書が提出され,同年11月28日付けで同年9月3日付け手続補正書でした補正が却下されるとともに拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成27年3月31日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され,当審は,平成28年7月12日付けで平成27年3月31日付けの手続補正を却下するとともに,拒絶理由(当審拒絶理由1)を通知し,同年10月17日に意見書と手続補正書が提出され,平成29年1月27日付けで拒絶理由(当審拒絶理由2)を通知し,同年4月28日に意見書と手続補正書が提出され,平成29年5月25日付けで最後の拒絶理由(当審拒絶理由3)を通知し,同年8月10日に意見書と手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし8に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は,平成29年8月10日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1ないし本願発明8は以下のとおりである。 「【請求項1】 単結晶シリコンウェハ(2,10,100)であって, 上面に形成され,析出物を含まないか,または,1立方センチメートル当り104未満の酸素析出物濃度で酸素析出物をわずかに含む第1の領域(10a1,100a1)と, 下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物(P1,P11)を含み,半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した,第2の領域(10c,100c)と,を有し, 下面に機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さいことを特徴とする,単結晶シリコンウェハ(2,10,100)。 【請求項2】 上記第1の領域(10a1,100a1)は,少なくとも1μmの層厚(D7)を有することを特徴とする,請求項1に記載の単結晶シリコンウェハ(2,10,100)。 【請求項3】 上記第1の領域(10a1,100a1)は,少なくとも10μmの層厚(D7)を有することを特徴とする,請求項1または2に記載の単結晶シリコンウェハ(2,10,100)。 【請求項4】 上記第1の領域(10a1,100a1)は,少なくとも50μmの層厚(D7)を有することを特徴とする,請求項1または2に記載の単結晶シリコンウェハ(2,10,100)。 【請求項5】 上記第2の領域(10c,100c)は,上記単結晶シリコンウェハ(2,10,100)の層厚(D1b,D5b)の少なくとも3分の1の層厚を有するか,または,少なくとも150マイクロメートルの層厚を有することを特徴とする,請求項1または2に記載の単結晶シリコンウェハ(2,10,100)。 【請求項6】 上記第2の領域(10c,100c)は,上記単結晶シリコンウェハ(2,10,100)の層厚(D1b,D5b)の10分の1よりも薄いか,または,75マイクロメートルよりも薄いことを特徴とする,請求項1または2に記載の単結晶シリコンウェハ(2,10,100)。 【請求項7】 上記第1の領域は,空格子点を含まないか,または,1立方センチメートル当り1012未満の空格子点密度または1011未満の空格子点密度で空格子点をわずかに含むことを特徴とする,請求項1または2に記載の単結晶シリコンウェハ(2,10,100)。 【請求項8】 単結晶シリコンウェハ(2,10,100)は,1立方センチメートル当りの原子が5×1015未満の濃度または5×1016未満の濃度の炭素を含むことを特徴とする,請求項1または2に記載の単結晶シリコンウェハ(2,10,100)。」 第3 引用文献,引用発明等 1 引用文献1について 当審拒絶理由2に引用された引用文献1(国際公開2006/137146号)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審において付与した。以下同じ。) ・「[0005]ところで,チョクラルスキー法を用いて生産されたシリコンウエハには,炭素不純物及び酸素不純物が,故意にこれらを添加していない場合には,夫々1013~1015cm-3,1017~1018cm-3程度含まれている。この濃度の酸素は半導体装置の製造工程の熱処理において過飽和状態にある。このため,その後の熱処理によって炭素を核として酸素が凝集し,酸素析出物とよばれる結晶欠陥の一種が発生する。この酸素析出物は,熱処理装置からウエハの表面に飛来するFe,Cu,Ni及びCr等の重金属元素を捕獲する特性を具えていることが知られている。そして,この特性はゲッタリング技術として広く工業的に応用されている。 [0006]この応用のために,例えば,酸素析出物の存在に伴うリーク電流の影響が大きい表層部(表面から10μm程度の深さまでの領域)に酸素析出物が発生せず,それよりも深い領域(バルク部)に例えば107cm-3以上の酸素析出物が発生するように,投入ウエハの酸素濃度や各工程の熱処理条件等が決定されている。これらの処理は,シリコン結晶における炭素の拡散定数が,例えば1000℃では酸素の1/10程度とかなり小さく(非特許文献2),表層部から酸素のみが外方拡散しやすいという性質を用いている。」 したがって,上記引用文献1には,次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「酸素析出物が発生しない表層部(表面から10μm程度の深さまでの領域)と, それよりも深い領域(バルク部)であって,107cm-3以上の酸素析出物が発生する領域と, を含むチョクラルスキー法を用いて生産されたシリコンウエハであって, 前記酸素析出物が前記所定の濃度で発生するように,投入ウエハの酸素濃度や各工程の熱処理条件等が決定されており,当該酸素析出物は,熱処理装置からウエハの表面に飛来するFe,Cu,Ni及びCr等の重金属元素を捕獲するという特性を具えていることが知られており,この特性はゲッタリング技術として広く工業的に応用されている,シリコンウエハ。」 2 引用文献2について 当審拒絶理由2に引用された引用文献2(特開平8-8263号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 ・「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は半導体基板に関し,より詳細にはLSI等の集積回路形成用の基板として用いられる単結晶シリコン(Si)の半導体基板に関する。」 ・「【0004】一方,例えばLSI製造時の代表的熱処理温度である1000℃では,単結晶Si中の酸素の固溶度は約3×1017個/cm3 であり,1000℃以下ではさらに小さい値となっており,したがって単結晶Si内に含有された酸素は常に過飽和状態になっている。このため,LSI製造における熱処理時には酸素が単結晶Si半導体基板(以下,単に半導体基板と記す)内に析出し,SiOX 構造に変化する。すると,体積が膨張してこの周囲に歪みが生じる場合があり,歪みが生じると転位ループや結晶欠陥等の微小欠陥が発生する。 【0005】これらの微小欠陥が前記半導体基板の表面から数μmの範囲(LSI素子の活性領域)に存在する場合,酸化膜耐圧の低下やリーク電流の発生等が生じ,LSIにとって有害となる。他方,前記半導体基板の表面から十分離れた内部のみに存在する場合,この微小欠陥がFe(鉄),Ni(ニッケル),Cu(銅)等の重金属の汚染物質を吸着し,この汚染物質を前記素子の活性領域から除去するいわゆるゲッタリング作用が働くため,高品位のLSIを製造する上で有用となる。 【0006】上記の理由により,酸素濃度が(15~20)×1017個/cm3 である前記半導体基板では,その表面に前記微小欠陥が存在しない無欠陥層(以下,DZ(Denuded Zone)層と記す)を形成するとともに,その内部に前記微小欠陥が存在する欠陥層(以下,IG(Intrinsic gettering)層と記す)を形成するための熱処理が施されている。具体的には,例えば前記半導体基板に窒素雰囲気中1100~1200℃で4時間程度の熱処理を施し,酸素を外方に拡散させることにより表面近傍における酸素濃度を低下させ(DZ層の形成),次いで窒素雰囲気中約700℃で4時間程度の熱処理を施し,前記半導体基板の内部に前記酸素析出物を高密度に生成させる。この後,LSI製造時における酸素雰囲気中約1000℃で16時間程度の酸化処理の際,前記酸素析出物から前記微小欠陥を発生させる(IG層の形成)。」 ・「【0025】 【実施例及び比較例】以下,本発明に係る半導体基板の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る半導体基板の実施例(1)を模式的に示した断面図であり,図中10は10×1017個/cm3 の酸素濃度を有する半導体基板を示している。半導体基板10の厚みtは約640μmであり,半導体基板10の裏面10bから300μm(約1/2 t)までの全領域10cには,イオン注入法により注入されたCを1×1017個/cm3 (分母は注入領域の単位体積)の濃度で含有している。このものを製造する場合,窒素雰囲気中1100~1200℃,4時間程度の熱処理及び窒素雰囲気中約700℃,4時間程度の熱処理は施さない。」 ・「【0030】これらの結果から明らかなように,実施例(1)に係る半導体基板10では,酸素含有量が少ないため,窒素雰囲気中1100~1200℃で4時間程度の高温(酸素外方拡散)熱処理を施すことなく,表面10aから半導体基板10の厚みtの約1/2までの領域にDZ層を形成することができ,この結果,ピットの発生や酸化膜の耐圧不良の発生を防止することができる。一方,所定濃度のC含有領域に自由体積 3/2Vを形成することができ,酸素濃度が低い10×1017個/cm3 の場合でも酸素析出反応を進行させることができる。このためLSI製造時に行われる約1000℃で16時間程度の熱処理の際,同時に裏面10bから半導体基板10の厚みtの略1/2までの領域に酸素析出物を形成することができ,微小欠陥を発生させてIG層を形成することができる。したがって,Fe等により半導体基板10が汚染された場合でもFe等をこのIG層に吸着させることができ,積層欠陥の発生を防止することができ,この結果,積層欠陥の発生に伴うリーク電流の増大を防止することができる。」 したがって,上記引用文献2には,次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「表面から半導体基板の厚みtの約1/2までの領域に微小欠陥が存在しない無欠陥層(以下,DZ(Denuded Zone)層と記す)を形成し, 裏面から半導体基板の厚みtの略1/2までの領域に酸素析出物を形成し,微小欠陥を発生させて微小欠陥が存在する欠陥層(以下,IG(Intrinsic gettering)層と記す)を形成した単結晶シリコン(Si)の半導体基板であって, 前記半導体基板の厚みtは約640μmであり,半導体基板の裏面から300μm(約1/2 t)までの全領域には,イオン注入法により注入されたCを1×1017個/cm3 (分母は注入領域の単位体積)の濃度で含有しており,LSI製造時に行われる約1000℃で16時間程度の熱処理の際,同時に裏面から半導体基板の厚みtの略1/2までの領域に酸素析出物を形成して,微小欠陥を発生させてIG層を形成することができる単結晶シリコン(Si)の半導体基板。」 3 引用文献3について 当審拒絶理由2に引用された引用文献3(特開平9-17800号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 ・「【請求項5】請求項1に記載の製造方法によって製造したシリコンウエーハにおいて,20nm以上の酸素析出物(BMD)密度が103 個/cm3 以下である無欠陥層(DZ層)をウエーハ表面から少なくとも10μmの肉厚で形成し,その内側のバルク部のBMD密度を1×103 個/cm3 以上かつexp{9.21×10-18 ×[Oi]+3.224}個/cm3 以下にしたことを特徴とするシリコンウエーハ。」 ・「【0046】測定結果及び熱処理条件を表1及び表2に示す。また,図2は,初期酸素濃度とBMD密度の関係を示すグラフである。なお,表中の注1は,ウエーハ表面から最初に大きさ20nm以上のBMDが観察されるまでの深さである(DZ層内には大きさ20nm以上のBMDは無い)。」 したがって,上記引用文献3には,DZ層が,析出物を含まないか,あるいは,104cm-3未満程度にわずかに含むものであるという技術的事項が記載されていると認められる。 4 引用文献4について 当審拒絶理由2に引用された引用文献4(特開平5-74784号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 ・「【0009】 【実施例】以下,本発明に係るシリコン基板の製造方法の実施例について,図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施例に係るシリコン基板の製造方法の工程を示す断面図である。 【0010】図1(a),(b)に示すように,まず,7.5×1017atoms/cm3(JEIDA)の格子間酸素を含んだ単結晶シリコン基板1を準備し,この単結晶シリコン基板1の裏面(図中の上面)に,例えばSiH4ガスを用い620℃の温度にて通常のCVD法によって,多結晶シリコン膜2を1.5μmの厚さに被着し,シリコン基板3を得る。 【0011】このようにして準備したシリコン基板3に,例えば1200℃,1時間の高温熱処理を施す(図1(c))。次に,このシリコン基板3に例えば550℃,48時間の低温熱処理を加える(図1(d))。この結果,単結晶シリコン基板1内部に,酸素析出物の核4(図1(d)中×印)が成長する。そして,多結晶シリコン膜2と単結晶シリコン基板1との界面近傍においては,酸素析出物の発生量が多くなる。次に,析出物を顕在化させるために,1000℃,24時間の熱処理を施す。そして,表1は,光顕微鏡の観察により求めた酸素析出物の密度を示している。酸素濃度の同じ単結晶シリコン基板に,多結晶シリコン膜2を被着した場合と,被着しない場合とを比較して示している。」 ・【0012】の【表1】から,「多結晶シリコン膜2有」の条件における,「裏面側」の酸素析出物の密度が,8.2×107個/cm3であることが読み取れる。 ・「【0013】この表より,低酸素濃度のシリコン基板にあっても,多結晶シリコン膜をその裏面に形成することにより,そのシリコン基板の内部に形成される酸素析出物の核の成長が助長されることがわかる。すなわち,十分な量のゲッタリング源をシリコン基板の内部に確保することができる。この場合,この酸素析出物の周囲に形成される歪はゲッタリング源として機能することとなる。すなわち,このシリコン基板3は十分なIG効果を有することとなる。例えば,その後のデバイス形成工程において,これらの歪に重金属等が析出される結果となる。 【0014】また,このシリコン基板3にあっては,多結晶シリコン膜2の結晶粒界はEG(エクストリンシック・ゲッタリング)源として作用する。なお,この多結晶シリコン膜2は,デバイス形成工程にあって酸化工程等を繰り返すと,それの一部が酸化により消費されたり,多結晶シリコンの再結晶化が起こる。しかし,多結晶シリコン膜2のこの様な変化が起きても,上記酸素析出物の成長に起因して,積層欠陥などの二次欠陥がこの酸素析出物の近傍に高密度に発生し,これが強力なゲッター源として作用し,不純物等を析出させる。つまり,ゲッター効果が強力で長持ちし,クリーンである。 【0015】さらに,出発原料の単結晶シリコン基板1の酸素濃度が,従来のIG効果を有する高酸素シリコン基板より低いので,より完全なDZ(無欠陥層)5をシリコン基板3の表面(デバイス活性領域)に実現できる。また,不純物等のゲッタリング源も,酸素析出物の周囲の歪,多結晶シリコン膜の結晶粒界,積層欠陥等で,IG効果に加え,強力で長持ちするEG効果を得ることができる。以上の結果,デバイス特性の劣化,製品の歩留りの低下をなくすことができる。」 したがって,上記引用文献4には,次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。 「7.5×1017atoms/cm3の格子間酸素を含んだ単結晶シリコン基板の裏面に,多結晶シリコン膜を1.5μmの厚さに被着し,熱処理を加えて,前記多結晶シリコン膜と前記単結晶シリコン基板との界面近傍に多くの酸素析出物を発生させた単結晶シリコン基板であって, 単結晶シリコン基板の裏面側(多結晶シリコン膜と単結晶シリコン基板との界面側)の酸素析出物の密度が,8.2×107個/cm3であり,この酸素析出物の周囲に形成される歪はゲッタリング源として機能して,例えば,その後のデバイス形成工程において,これらの歪に重金属等が析出される結果となるものであり, さらに,出発原料の単結晶シリコン基板の酸素濃度が,従来のIG効果を有する高酸素シリコン基板より低いので,より完全なDZ(無欠陥層)を単結晶シリコン基板の表面(デバイス活性領域)に実現できる, 単結晶シリコン基板。」 5 引用文献5について 当審拒絶理由2に引用された引用文献5(特開平5-144824号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 ・「【0019】 【実施例】以下,この発明の一実施例を図を用いて説明する。 【0020】図1は,この発明の第1の実施例によるシリコンウェーハ(半導体基板)1の断面構造図である。シリコンウェーハ1は膜厚T1 が約100μm,酸素濃度が2~3×101 7 atoms/cm3 のDZ層7aと,膜厚T2 が約430μm,酸素濃度が16~17×101 7 atoms/cm3 のIG層8aの積層体から構成される。DZ層7aは欠陥や酸素析出物の発生がなく,その層の厚みはウェーハ面内で均一に形成されている。図16に示されるように,DZ層7aおよびIG層8aの酸素濃度は基板深さ方向に沿って各々平坦に分布し,DZ層7aとIG層8aとの境界面付近で急峻に変化する分布となっている。 【0021】次に,図1に示すシリコンウェーハ1の製造方法について説明する。図2ないし図4はその製造方法を順に示した断面図である。 【0022】まず,図2に示すように,2つの単結晶シリコンウェーハ7,8を用意する。第1の単結晶シリコンウェーハ7はMCZ(Magnetic field applied Czochralski)法により形成された,面方位(100),酸素濃度が2~3×101 7 atoms/cm3 のシリコンウェーハである。また,第2の単結晶シリコンウェーハ8はCZ(Czochralski)法により製造された,面方位(100),酸素濃度が16~18×101 7 atoms/cm3 のシリコンウェーハである。第1単結晶シリコンウェーハ7と第2単結晶シリコンウェーハ8の接合面9,9は,まずメカノケミカルポリシング法を用いて鏡面研磨される。メカノケミカルポリシング法は,研磨剤として100~500ÅのSiO2 微粒子を主成分としたpH9~12のコロイダルシリカ溶液を用い,研磨布として,不織布にポリウレタンを含浸させた人工皮革を用い,一定温度下でウェーハに加圧して摺動させる方法である。鏡面研磨が施された後,ウェーハ表面を洗浄しパーティクルを除去した後,親水性処理を行なう。パーティクル除去の洗浄にはNH4 OH+H2 O2 +H2 O混合液が用いられる。鏡面研磨加工が施されたウェーハをこの混合液に浸しパーティクルを除去した後,乾燥処理する。混合液中に含まれるH2 O2 はウェーハの表面を親水性にする作用があり,これによりウェーハの表面には-OHが付着する。 【0023】次に,図3に示すように,親水性処理が行なわれた第1単結晶シリコンウェーハ7と第2単結晶シリコンウェーハ8の各々の接合面9,9同士を互いの結晶軸を揃えて重ね合わせる。そして,たとえば1100℃程度の高温で熱処理し,両者の接合界面10の酸素を拡散させる。これにより,2つの単結晶シリコンウェーハ7,8が接合される。 【0024】その後,図4に示されるように,第1単結晶シリコンウェーハ7および第2単結晶シリコンウェーハ8を所望の厚さに研削し,さらに表面を研磨してDZ層7aとIG層8aを形成する。この後,半導体素子の製造プロセスに投入される。 【0025】上記のような製造工程により形成されるシリコンウェーハ1は,DZ層7aとして予め低酸素濃度のウェーハが使用されるため,従来のIG法に比べて,DZ層形成のための酸素の外方拡散のための高温熱処理を行なう必要がない。このため,熱応力によるウェーハのそりやスリップ転位の発生を防ぐことができる。また,高温熱処理のためのアニール工程などで生じる二次汚染による欠陥の発生を防ぐことができる。また,IG層8aとして予め高酸素濃度のウェーハを使用しているため,上記の製造工程の段階で酸素析出核の成長のための低温熱処理を行なう必要がない。あるいは,必要であっても比較的短時間の熱処理で酸素析出核を成長させることができる。そして,半導体装置の製造プロセスに投入された後,製造工程での熱処理を受けてIG層8aに酸素析出物が形成される。そして,これがゲッタリング効果を生じさせる。」 したがって,上記引用文献5には,次の発明(以下「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。 「MCZ(Magnetic field applied Czochralski)法により形成された面方位(100),酸素濃度が2~3×101 7 atoms/cm3 のシリコンウェーハである第1の単結晶シリコンウェーハ7と,CZ(Czochralski)法により製造された,面方位(100),酸素濃度が16~18×101 7 atoms/cm3 のシリコンウェーハである第2の単結晶シリコンウェーハ8の各々の接合面9,9同士を互いの結晶軸を揃えて重ね合わせ,1100℃程度の高温で熱処理し,両者の接合界面10の酸素を拡散し,これにより,2つの単結晶シリコンウェーハ7,8を接合し,その後,第1単結晶シリコンウェーハ7および第2単結晶シリコンウェーハ8を所望の厚さに研削・研磨して形成した,DZ層7aとIG層8aとを有するシリコンウェーハ1であって, 前記シリコンウェーハ(半導体基板)1は,膜厚T1 が約100μm,酸素濃度が2~3×101 7 atoms/cm3 のDZ層7aと,膜厚T2 が約430μm,酸素濃度が16~17×101 7 atoms/cm3 のIG層8aの積層体から構成されるものであるシリコンウェーハ1。」 6 引用文献6について 当審拒絶理由2に引用された引用文献6(特開平10-50715号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 ・「【請求項1】CZ法にて育成されたシリコン単結晶であり,酸素濃度が12~27×1017atoms/cm3,炭素濃度が0.5~32×1016atoms/cm3の各範囲にあり,EG効果が期待できる処理が全く施されていないウェーハの表面にエピタキシャル膜が成膜されたシリコンウェーハ。」 ・「【0010】昨今,デバイスの高集積度化が進むにつれて,この炭素濃度Cs低減化対策が非常に重要視されており,酸素濃度Oi及び炭素濃度Csを低く抑制させることによって表面完全性を向上させ,強いてはデバイス不良の原因となる表面及び表面近傍に存在するBMD(Bulk-micro‐defects)及びそれに伴って発生する二次欠陥,例えばOSF(Oxidation-Induced-StackingFault)等の発生量を抑制させる方法が提案されている。 【0011】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら,従来からのかかる酸素並びに炭素濃度の低減化による方法のみでは,今後の更なる高集積,微細化されるデバイス構造に対して対応できなくなることが十分予測される。そこで,最近ではエピ・ウェーハがD‐RAM等半導体用ウェーハとして多く用いられる傾向にある。 【0012】すなわち,エピ・ウェーハの場合,エピタキシャル層中には酸素が,例えば0.1×1017atoms/cm3未満(SIMSによる測定)程度とほとんど存在しないためにデバイス特性に悪影響を及ぼすBMD等の欠陥が発生できる状況になく,エピタキシャル層内中における結晶の完全性が極めて高い。また,デバイス特性を左右する,例えば酸化膜耐圧特性のような電気的特性評価についても,エピタキシャル層無しの状態に比べ大幅に電気的特性,例えば酸化膜耐圧特性値が向上することが一般的に知られている。」 ・「【0017】同様に,例えば,ウェーハ中にP(リン)やBを含む通常抵抗品(数~数十Ω・cm)の場合において,エピタキシャル成長を施すことによりウェーハ内部に存在していたBMDなどの酸素折出物が激減してしまう・・・」 ・「【0019】 【課題を解決するための手段】発明者は,ウェーハに切り出し成形後のEG効果が期待できる処理を一切施すことなく,ウェーハのゲッタリング能の向上させ得る方法を目的に,引き上げたままのシリコンウェーハ自体にゲッタリング能の付与することを検討した結果,酸素濃度を比較的高く,かつ意図的に炭素濃度を高くするようにCZ法にて育成されたシリコン単結晶は,EG処理を施すことなく,ウェーハ自体に優れたゲッタリング能が発揮されることを知見し,この発明を完成した。」 ・「【0026】この発明において,前述したように酸素濃度Oiと炭素濃度Csを増加させることは,BMD等の発生を促すためであり,言い換えれば表面及び表面近傍の完全性を劣化させることでもある。」 したがって,上記引用文献6には,次の発明(以下「引用発明6」という。)が記載されていると認められる。 「CZ法にて育成されたシリコン単結晶であり,酸素濃度が12~27×1017atoms/cm3,炭素濃度が0.5~32×1016atoms/cm3の各範囲にあり,EG効果が期待できる処理が全く施されていないウェーハの表面にエピタキシャル膜が成膜されたシリコンウェーハであって, 前記エピタキシャル膜は,その中に酸素が,例えば0.1×1017atoms/cm3未満(SIMSによる測定)程度とほとんど存在しないためにデバイス特性に悪影響を及ぼすBMD等の欠陥が発生できる状況にないものであり, 前記酸素濃度を比較的高く,かつ意図的に炭素濃度を高くするようにCZ法にて育成されたシリコン単結晶のウェーハは,酸素濃度Oiと炭素濃度Csを増加させたことで,BMD等の発生が促されて,ウェーハ自体に優れたゲッタリング能が発揮されるものである, シリコンウェーハ。」 7 引用文献7について 当審拒絶理由2に引用された引用文献7(特開平4-144235号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 ・「(3)シリコン単結晶ウェーハの二つの表面のうち,デバイス形成を行わない面全体を低温源に接触せしめ,デバイス形成を行う面側を連続的もしくはパルス的に高温で加熱すると同時に,格子間酸素振動波長近傍の光ビーム照射することを,不活性ガス雰囲気中で行うことにより,前記デバイス形成を行う面の表面近傍から格子間酸素を外方拡散させてデヌーデッドゾーンを形成すると同時に,前記ウェーハ内部にゲッタリングサイトに成長する析出核を多数生成せしめることを特徴とする半導体ウェーハの製造方法。」(特許請求の範囲) ・「すなわち,第1a図に模式的に示すように,本発明の半導体ウェーハ10は,デバイス形成面12から断面深さ方向(厚さ方向)の所定のデバイス形成領域14では酸素濃度が低く,例えば,5×1017atoms/cm3以下であり,格子欠陥の存在しないデヌーデット領域(DZ)が形成され,デバイス形成領域14の内側からデバイス非形成面16近辺までのゲッタリング領域18では,酸素濃度が高く,例えば,1.4×1018atoms/cm3以上であり,デバイス形成中にウェーハ内に誘起もしくは存在する有害な不純物や欠陥を吸収して取り除くすなわちゲッタリングのためのゲッターサイトに成長する析出核(格子欠陥)20が多数存在する。」(第3ページ左上欄第11行-同ページ右上欄第5行) したがって,上記引用文献7には,次の発明(以下「引用発明7」という。)が記載されていると認められる。 「シリコン単結晶ウェーハの二つの表面のうち,デバイス形成を行わない面全体を低温源に接触せしめ,デバイス形成を行う面側を連続的もしくはパルス的に高温で加熱すると同時に,格子間酸素振動波長近傍の光ビーム照射することを,不活性ガス雰囲気中で行うことにより,前記デバイス形成を行う面の表面近傍から格子間酸素を外方拡散させてデヌーデッドゾーンを形成すると同時に,前記ウェーハ内部にゲッタリングサイトに成長する析出核を多数生成せしめる方法で作製された半導体ウェーハであって, 前記半導体ウェーハは,デバイス形成面から断面深さ方向(厚さ方向)の所定のデバイス形成領域に,酸素濃度が低く,格子欠陥の存在しないデヌーデット領域(DZ)が形成され, デバイス形成領域の内側からデバイス非形成面近辺までのゲッタリング領域には,デバイス形成中にウェーハ内に誘起もしくは存在する有害な不純物や欠陥を吸収して取り除くすなわちゲッタリングのためのゲッターサイトに成長する析出核(格子欠陥)が多数存在するものである, 半導体ウェーハ。」 8 引用文献8について 当審拒絶理由2に引用された引用文献8(特開平2-164040号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 ・「2.特許請求の範囲 シリコン半導体基板の一面の全面もしくは一部分にシリコン酸化膜を形成後,さらに同面の全面にシリコン窒化膜を被着させる第1工程と,前記工程後のシリコン半導体基板を高温熱処理し,シリコン窒化膜を被着していない他面において,一定の深さまで過飽和酸素を外部拡散により除去する第2工程と,前記シリコン窒化膜の全部あるいは一部を除去する第3工程と,前記シリコン半導体基板を1000℃より低い温度で熱処理し,基板内に酸素析出核を形成する第4工程とを含むことを特徴とするシリコン半導体基板の処理方法。」 ・「次に第2図は第2工程を示すもので,シリコン半導体基板1を,5%の酸素を含む窒素雰囲気中で1100℃,2時間の熱処理を施し,これによってシリコン半導体基板1の内部にほぼ一様に分布している格子間酸素の,シリコン酸化膜2およびシリコン窒化膜3によってマスクされていない方の表面から外部拡散4が起き,その結果,この表面付近の領域では格子間酸素濃度は低くなる。この領域が素子活性領域として用いられる。またこの際,シリコン窒化膜3による応力はシリコン酸化膜2によって緩和され,シリコン半導体基板lの変形はおこらない。 続いて,このシリコン半導体基板lからシリコン酸化膜2およびシリコン窒化膜3を除去する第3工程後,第4工程として第3図に示すように,窒素ふんい気中で650℃,4時間の熱処理を施し,シリコン半導体基板lの内部の,格子間酸素濃度の高い領域に酸素析出核5を成長させる。次に,このシリコン半導体基板lを乾燥酸素ふんい気中で1000℃,16時間の熱処理を行なうと,第4図に示すように酸素析出核5が形成されている領域に酸素析出物6が成長する。また最初にシリコン酸化膜2およびシリコン窒化膜3でマスクされていた方の表面付近には酸素析出核5が高密度に存在しているので,この表面には,酸素析出物6の成長に伴い,積層欠陥7が高密度に発生し,これが強力なEG源として作用する。」(第2ページ右下欄第11行-第3ページ左上欄第18行) したがって,上記引用文献8には,次の発明(以下「引用発明8」という。)が記載されていると認められる。 「シリコン半導体基板の一面の全面もしくは一部分にシリコン酸化膜を形成後,さらに同面の全面にシリコン窒化膜を被着させる第1工程と,前記工程後のシリコン半導体基板を高温熱処理し,シリコン窒化膜を被着していない他面において,一定の深さまで過飽和酸素を外部拡散により除去する第2工程と,前記シリコン窒化膜の全部あるいは一部を除去する第3工程と,前記シリコン半導体基板を1000℃より低い温度で熱処理し,基板内に酸素析出核を形成する第4工程とを含む方法で作製されたシリコン半導体基板であって, 前記シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜によってマスクされていない方の表面は,熱処理によって格子間酸素の外部拡散が起き,その結果,この表面付近の領域では格子間酸素濃度が低くなり,この領域は素子活性領域として用いられるものであり, 前記最初にシリコン酸化膜およびシリコン窒化膜でマスクされていた方の表面付近は,酸素析出核が高密度に存在しており,この表面には,酸素析出物の成長に伴い,積層欠陥が高密度に発生し,これが強力なEG源として作用するものである, シリコン半導体基板。」 9 引用文献9について 当審拒絶理由2に引用された引用文献9(特開昭64-12537号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 ・「2.特許請求の範囲 半導体基板を1050℃より高い温度で30分間以上熱処理する工程と,この半導体基板を1000℃より低い温度で2時間以上熱処理する工程と,半導体基板の内部に形成された欠陥層を表面に露出させる工程とを有することを特徴とする半導体基板の欠陥層形成方法。」 ・「[作用] 本発明においては,先ず,半導体基板を1050℃より高い温度で30分間以上熱処理して基板の表面近傍の領域の格子間酸素を外部へ拡散させる。これにより,この領域の酸素濃度が低下する。 次いで,半導体基板を1000℃より低い温度で2時間以上熱処理して,格子間酸素濃度が高い内部領域に酸素析出核を成長させる。 その後,例えば,基板表面を研磨するか,又は基板の中心を切断することにより,内部欠陥層を表面に露出させる。これにより,イントリンシック・ゲッタリングに加えて,エクストリンシック・ゲッタリング源となる欠陥層が形成される。」(第2ページ左下欄第12行-同ページ右下欄第4行) したがって,上記引用文献9には,次の発明(以下「引用発明9」という。)が記載されていると認められる。 「半導体基板を1050℃より高い温度で30分間以上熱処理する工程と,この半導体基板を1000℃より低い温度で2時間以上熱処理する工程と,半導体基板の内部に形成された欠陥層を表面に露出させる工程とを有する方法によって作製された半導体基板であって, 前記半導体基板の,研磨又は中心の切断が行われない側の表面は,格子間酸素が外部へ拡散し,この領域の酸素濃度が低下したものであり, 前記半導体基板の,研磨又は中心の切断が行われる側の表面は,内部欠陥層が表面に露出し,これにより,イントリンシック・ゲッタリングに加えて,エクストリンシック・ゲッタリング源となる欠陥層が形成されるものである, 半導体基板。」 10 引用文献10について 当審拒絶理由2に引用された引用文献10(特開昭62-119929号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 ・「2.特許請求の範囲 イントリンシツクゲツタリング処理として,半導体基板を電解還元し,表面付近の溶存酸素を除いたことを特徴とするゲツタリング能力をもたせた半導体基板の作製方法。」 ・「第2図は本実施例によって作製した半導体基板1の模式的な断面図である。従来法によるものと異なり,無欠陥層8は半導体基板1の片側表面だけに形成され,この領域の完全性も非常に高い。内部は酸素がのこっているから,その後の熱処理により欠陥領域9となり,ゲッタリングセンタ7を有する。 なお,本実施例は半導体基板としてシリコンを用いたものを示したが,他の半導体についても同様に応用することができる。」(第2ページ左下欄第18行-同ページ右下欄第7行) したがって,上記引用文献10には,次の発明(以下「引用発明10」という。)が記載されていると認められる。 「イントリンシツクゲツタリング処理として,半導体基板を電解還元し,表面付近の溶存酸素を除いた,ゲツタリング能力をもたせた半導体基板であって, 前記半導体基板の片側表面だけに無欠陥層が形成され,この領域の完全性は非常に高く, 内部は酸素がのこっているから,その後の熱処理により欠陥領域となり,ゲッタリングセンタを有するものとなり, 前記半導体基板がシリコンである, ゲツタリング能力をもたせた半導体基板。」 11 引用文献11について 当審拒絶理由2に引用された引用文献11(特開2006-344823号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 ・「【0011】 上記のシリコンウェーハの製造方法によれば,格子間酸素濃度が7×1017atoms/cm3以下のシリコンインゴットを用いることで,IGBT製造工程での酸素析出物(BMD)の生成による再結合ライフタイムの低下,及び,酸素ドナー形成による抵抗率変化を防止できる。 また,シリコンインゴットに中性子を照射することによりシリコン原子の一部をリンに変換させ,これによりシリコンインゴットにリンを均一にドープさせることが可能となり,抵抗率が均一なウェーハが得られる。更に,ウェーハに対して上記式(1)の条件で酸素雰囲気中アニールを行うことにより,シリコンウェーハの表面に酸化シリコン層を形成させ,これに伴って格子間シリコンがウェーハ内部にあるCOP内部に注入されてCOPを完全に埋め込み,COPを完全に消滅させることが可能になる。」 したがって,上記引用文献11には,格子間シリコンをウェーハ内部にあるCOP内部に注入することでCOPを完全に埋め込み,COPを完全に消滅させることが可能になるという技術的事項が記載されていると認められる。 12 引用文献12について 当審拒絶理由2に引用された引用文献12(特表2002-524844号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 ・「【請求項14】凝集した空孔欠陥を溶解させ,かつ後の熱処理工程において単結晶シリコンウエハ中の酸素の析出挙動を変化させるために,単結晶シリコンウエハを熱処理する方法であって, 単結晶シリコンウエハが,一方がウエハの前表面であり,他方がウエハの後表面である2つのほぼ平行な主表面,前表面と後表面との間にある中央面,前表面および後表面を結ぶ周囲縁,前表面から前記中央面に向かって測定されたときに前表面から距離Dsまで伸びる領域層,少なくとも一部が前記領域層と同様の広がりを有し,かつ前表面から前記中央面に向かって測定されたときに前表面と距離Dとの間にあるウエハ領域を含む表面層,および前記中央面と前記表面層との間にあるウエハ領域を含むバルク層を有する単結晶シリコンウエハであり, 前記ウエハを雰囲気中で熱アニーリング処理して,前記領域層に以前から存在する凝集した空孔欠陥を溶解させること; 前記アニーリング処理ウエハを熱処理して,結晶格子の空孔を前記表面層および前記バルク層に形成させること;および 前記熱処理ウエハの冷却速度を制御して,ピーク密度が前記中央面またはその付近にあり,濃度が前記ウエハの前表面の方向でほぼ低下する空孔濃度プロファイルであり,前記表面層および前記バルク層における空孔の濃度差が,750℃を超える温度での前記ウエハの熱処理により,デニューデッドゾーンを前記表面層に形成させることができ,かつ酸素クラスターまたは酸素析出物を前記バルク層に形成させることができ,そして前記バルク層における酸素クラスターまたは酸素析出物の濃度が主として空孔濃度に依存するという空孔濃度プロファイルを有するウエハを製造すること を含んでなる方法。」 したがって,上記引用文献12には,ウエハを雰囲気中で熱アニーリング処理することで,凝集した空孔欠陥を溶解することができるという技術的事項が記載されていると認められる。 第4 対比・判断 ・引用文献1を主引例とした検討 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1とを対比すると,次のことがいえる。 ア 引用発明1の「チョクラルスキー法を用いて生産されたシリコンウエハ」,「酸素析出物が発生しない表層部(表面から10μm程度の深さまでの領域)」は,それぞれ,本願発明1の「単結晶シリコンウェハ」,「上面に形成され,析出物を含まないか,または,1立方センチメートル当り104未満の酸素析出物濃度で酸素析出物をわずかに含む第1の領域」に相当する。 イ 引用発明1の「『それよりも深い領域(バルク部)であって,107cm-3以上の酸素析出物が発生する領域』であって『前記酸素析出物が前記所定の濃度で発生するように,投入ウエハの酸素濃度や各工程の熱処理条件等が決定されており,当該酸素析出物は,熱処理装置からウエハの表面に飛来するFe,Cu,Ni及びCr等の重金属元素を捕獲するという特性を具えていることが知られており,この特性はゲッタリング技術として広く工業的に応用されている』領域」と,本願発明1の「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含み,半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した,第2の領域』であって,かつ,前記下面が,『下面に機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』もの」とは,「半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域」である点で一致する。 したがって,本願発明1と引用発明1との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「単結晶シリコンウェハであって, 上面に形成され,析出物を含まないか,または,1立方センチメートル当り104未満の酸素析出物濃度で酸素析出物をわずかに含む第1の領域と, 半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した,第2の領域と, を有する単結晶シリコンウェハ。」 (相違点) 半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域が,本願発明1では,「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成を備えたものであるのに対し,引用発明1は,このような構成を備えていない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討すると,相違点に係る本願発明1の「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成は,上記引用文献1ないし12のいずれにも記載されておらず,本願のもととなる出願の優先日前において周知技術であるともいえない。 したがって,本願発明1は,当業者であっても引用発明1,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし8について 本願発明2ないし8は,いずれも本願発明1の,半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域が,「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明1,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 ・引用文献2を主引例とした検討 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明2とを対比すると,次のことがいえる。 ア 引用発明2の「単結晶シリコン(Si)の半導体基板」は,本願発明1の「単結晶シリコンウェハ」に相当する。また,引用文献3に記載された,DZ層は,析出物を含まないか,あるいは,104cm-3未満程度にわずかに含むものであるという技術常識に照らして,引用発明2の「微小欠陥が存在しない無欠陥層(以下,DZ(Denuded Zone)層と記す)」は,本願発明1の「上面に形成され,析出物を含まないか,または,1立方センチメートル当り104未満の酸素析出物濃度で酸素析出物をわずかに含む第1の領域」に相当する。 イ 引用発明2の「『裏面から半導体基板の厚みtの略1/2までの領域に酸素析出物を形成し,微小欠陥を発生させて微小欠陥が存在する欠陥層(以下,IG(Intrinsic gettering)層と記す)』であって,『半導体基板の裏面から300μm(約1/2 t)までの全領域には,イオン注入法により注入されたCを1×1017個/cm3 (分母は注入領域の単位体積)の濃度で含有しており,LSI製造時に行われる約1000℃で16時間程度の熱処理の際,同時に裏面から半導体基板の厚みtの略1/2までの領域に酸素析出物を形成して,微小欠陥を発生させてIG層を形成することができる』領域」と,本願発明1の「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含み,半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した,第2の領域』であって,かつ,前記下面が,『下面に機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』もの」とは,「半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域」である点で一致する。 したがって,本願発明1と引用発明2との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「単結晶シリコンウェハであって, 上面に形成され,析出物を含まないか,または,1立方センチメートル当り104未満の酸素析出物濃度で酸素析出物をわずかに含む第1の領域と, 半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した,第2の領域と, を有する単結晶シリコンウェハ。」 (相違点) 半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域が,本願発明1では,「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成を備えたものであるのに対し,引用発明2は,このような構成を備えていない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討すると,相違点に係る本願発明1の「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成は,上記引用文献1ないし12のいずれにも記載されておらず,本願のもととなる出願の優先日前において周知技術であるともいえない。 したがって,本願発明1は,当業者であっても引用発明2,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし8について 本願発明2ないし8は,いずれも本願発明1の,半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域が,「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明2,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 ・引用文献4を主引例とした検討 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明4とを対比すると,次のことがいえる。 ア 引用発明4の「単結晶シリコン基板」,「『単結晶シリコン基板の表面(デバイス活性領域)に実現できる』『より完全なDZ(無欠陥層)』」は,それぞれ,本願発明1の「単結晶シリコンウェハ」,「上面に形成され,析出物を含まないか,または,1立方センチメートル当り104未満の酸素析出物濃度で酸素析出物をわずかに含む第1の領域」に相当する。 イ 引用発明4の「『7.5×1017atoms/cm3の格子間酸素を含んだ単結晶シリコン基板の裏面に,多結晶シリコン膜を1.5μmの厚さに被着し,熱処理を加えて,前記多結晶シリコン膜と前記単結晶シリコン基板との界面近傍に多くの酸素析出物を発生させた』領域であって,『この酸素析出物の周囲に形成される歪』が『ゲッタリング源として機能して,例えば,その後のデバイス形成工程において,これらの歪に重金属等が析出される結果となる』『酸素析出物の密度が,8.2×107個/cm3であ』る『単結晶シリコン基板の裏面側(多結晶シリコン膜と単結晶シリコン基板との界面側)』の領域」と,本願発明1の「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含み,半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した,第2の領域』であって,かつ,前記下面が,『下面に機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』もの」とは,「半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域」である点で一致する。 したがって,本願発明1と引用発明4との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「単結晶シリコンウェハであって, 上面に形成され,析出物を含まないか,または,1立方センチメートル当り104未満の酸素析出物濃度で酸素析出物をわずかに含む第1の領域と, 半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した,第2の領域と, を有する単結晶シリコンウェハ。」 (相違点) 半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域が,本願発明1では,「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成を備えたものであるのに対し,引用発明4は,このような構成を備えていない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討すると,相違点に係る本願発明1の「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成は,上記引用文献1ないし12のいずれにも記載されておらず,本願のもととなる出願の優先日前において周知技術であるともいえない。 したがって,本願発明1は,当業者であっても引用発明4,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし8について 本願発明2ないし8は,いずれも本願発明1の,半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域が,「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明4,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 ・引用文献5を主引例とした検討 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明5とを対比すると,次のことがいえる。 ア 引用発明5の「シリコンウェーハ1」,「膜厚T1 が約100μm,酸素濃度が2~3×101 7 atoms/cm3 のDZ層7a」は,それぞれ,本願発明1の「単結晶シリコンウェハ」,「上面に形成され,析出物を含まないか,または,1立方センチメートル当り104未満の酸素析出物濃度で酸素析出物をわずかに含む第1の領域」に相当する。 イ 引用発明5の「膜厚T2 が約430μm,酸素濃度が16~17×101 7 atoms/cm3 のIG層8a」と,本願発明1の「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含み,半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した,第2の領域』であって,かつ,前記下面が,『下面に機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』もの」とは,「半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域」である点で一致する。 したがって,本願発明1と引用発明5との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「単結晶シリコンウェハであって, 上面に形成され,析出物を含まないか,または,1立方センチメートル当り104未満の酸素析出物濃度で酸素析出物をわずかに含む第1の領域と, 半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した,第2の領域と, を有する単結晶シリコンウェハ。」 (相違点) 半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域が,本願発明1では,「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成を備えたものであるのに対し,引用発明5は,このような構成を備えていない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討すると,相違点に係る本願発明1の「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成は,上記引用文献1ないし12のいずれにも記載されておらず,本願のもととなる出願の優先日前において周知技術であるともいえない。 したがって,本願発明1は,当業者であっても引用発明5,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし8について 本願発明2ないし8は,いずれも本願発明1の,半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域が,「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明5,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 ・引用文献6を主引例とした検討 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明6とを対比すると,次のことがいえる。 ア 引用発明6の「『CZ法にて育成されたシリコン単結晶』と,その表面に成膜された『エピタキシャル膜』とからなる『シリコンウェーハ』」,「『その中に酸素が,例えば0.1×1017atoms/cm3未満(SIMSによる測定)程度とほとんど存在しないためにデバイス特性に悪影響を及ぼすBMD等の欠陥が発生できる状況にないものであ』る『エピタキシャル膜』」は,それぞれ,本願発明1の「単結晶シリコンウェハ」,「上面に形成され,析出物を含まないか,または,1立方センチメートル当り104未満の酸素析出物濃度で酸素析出物をわずかに含む第1の領域」に相当する。 イ 引用発明6の「『酸素濃度Oiと炭素濃度Csを増加させたことで,BMD等の発生が促されて,ウェーハ自体に優れたゲッタリング能が発揮されるものである』『CZ法にて育成されたシリコン単結晶のウェーハ』によって構成される領域」と,本願発明1の「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含み,半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した,第2の領域』であって,かつ,前記下面が,『下面に機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』もの」とは,「半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域」である点で一致する。 したがって,本願発明1と引用発明6との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「単結晶シリコンウェハであって, 上面に形成され,析出物を含まないか,または,1立方センチメートル当り104未満の酸素析出物濃度で酸素析出物をわずかに含む第1の領域と, 半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した,第2の領域と, を有する単結晶シリコンウェハ。」 (相違点) 半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域が,本願発明1では,「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成を備えたものであるのに対し,引用発明6は,このような構成を備えていない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討すると,相違点に係る本願発明1の「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成は,上記引用文献1ないし12のいずれにも記載されておらず,本願のもととなる出願の優先日前において周知技術であるともいえない。 したがって,本願発明1は,当業者であっても引用発明6,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし8について 本願発明2ないし8は,いずれも本願発明1の,半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域が,「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明6,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 ・引用文献7を主引例とした検討 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明7とを対比すると,次のことがいえる。 ア 引用発明7の「『シリコン単結晶ウェーハ』である『半導体ウェーハ』」,「『デバイス形成面から断面深さ方向(厚さ方向)の所定のデバイス形成領域に』形成された『酸素濃度が低く,格子欠陥の存在しないデヌーデット領域(DZ)』であって,『デバイス形成を行う面側を連続的もしくはパルス的に高温で加熱すると同時に,格子間酸素振動波長近傍の光ビーム照射することを,不活性ガス雰囲気中で行うことにより,前記デバイス形成を行う面の表面近傍から格子間酸素を外方拡散させて』形成した『デヌーデッドゾーン』」は,それぞれ,本願発明1の「単結晶シリコンウェハ」,「上面に形成され,析出物を含まないか,または,1立方センチメートル当り104未満の酸素析出物濃度で酸素析出物をわずかに含む第1の領域」に相当する。 イ 引用発明7の「『デバイス形成領域の内側からデバイス非形成面近辺までのゲッタリング領域』であって,『デバイス形成中にウェーハ内に誘起もしくは存在する有害な不純物や欠陥を吸収して取り除くすなわちゲッタリングのためのゲッターサイトに成長する析出核(格子欠陥)が多数存在する』領域」と,本願発明1の「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含み,半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した,第2の領域』であって,かつ,前記下面が,『下面に機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』もの」とは,「半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域」である点で一致する。 したがって,本願発明1と引用発明7との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「単結晶シリコンウェハであって, 上面に形成され,析出物を含まないか,または,1立方センチメートル当り104未満の酸素析出物濃度で酸素析出物をわずかに含む第1の領域と, 半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した,第2の領域と, を有する単結晶シリコンウェハ。」 (相違点) 半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域が,本願発明1では,「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成を備えたものであるのに対し,引用発明7は,このような構成を備えていない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討すると,相違点に係る本願発明1の「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成は,上記引用文献1ないし12のいずれにも記載されておらず,本願のもととなる出願の優先日前において周知技術であるともいえない。 したがって,本願発明1は,当業者であっても引用発明7,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし8について 本願発明2ないし8は,いずれも本願発明1の,半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域が,「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明7,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 ・引用文献8を主引例とした検討 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明8とを対比すると,次のことがいえる。 ア 引用発明8の「シリコン半導体基板」,「『シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜によってマスクされていない方の表面』であって,『熱処理によって格子間酸素の外部拡散が起き,その結果,この表面付近の領域では格子間酸素濃度が低くなり,この領域は素子活性領域として用いられる』領域」は,技術常識に照らして,それぞれ,本願発明1の「単結晶シリコンウェハ」,「上面に形成され,析出物を含まないか,または,1立方センチメートル当り104未満の酸素析出物濃度で酸素析出物をわずかに含む第1の領域」に相当する。 イ 引用発明8の「『最初にシリコン酸化膜およびシリコン窒化膜でマスクされていた方の表面付近』であって,『酸素析出核が高密度に存在しており,この表面には,酸素析出物の成長に伴い,積層欠陥が高密度に発生し,これが強力なEG源として作用するものである』領域」と,本願発明1の「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含み,半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した,第2の領域』であって,かつ,前記下面が,『下面に機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』もの」とは,「半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域」である点で一致する。 したがって,本願発明1と引用発明8との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「単結晶シリコンウェハであって, 上面に形成され,析出物を含まないか,または,1立方センチメートル当り104未満の酸素析出物濃度で酸素析出物をわずかに含む第1の領域と, 半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した,第2の領域と, を有する単結晶シリコンウェハ。」 (相違点) 半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域が,本願発明1では,「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成を備えたものであるのに対し,引用発明8は,このような構成を備えていない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討すると,相違点に係る本願発明1の「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成は,上記引用文献1ないし12のいずれにも記載されておらず,本願のもととなる出願の優先日前において周知技術であるともいえない。 したがって,本願発明1は,当業者であっても引用発明8,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし8について 本願発明2ないし8は,いずれも本願発明1の,半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域が,「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明8,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 ・引用文献9を主引例とした検討 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明9とを対比すると,次のことがいえる。 ア 引用発明9の「半導体基板」,「『研磨又は中心の切断が行われない側の表面』であって,『格子間酸素が外部へ拡散し,この領域の酸素濃度が低下した』領域」は,技術常識に照らして,それぞれ,本願発明1の「単結晶シリコンウェハ」,「上面に形成され,析出物を含まないか,または,1立方センチメートル当り104未満の酸素析出物濃度で酸素析出物をわずかに含む第1の領域」に相当する。 イ 引用発明9の「『研磨又は中心の切断が行われる側の表面』であって,『内部欠陥層が表面に露出し,これにより,イントリンシック・ゲッタリングに加えて,エクストリンシック・ゲッタリング源となる欠陥層が形成される』領域」と,本願発明1の「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含み,半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した,第2の領域』であって,かつ,前記下面が,『下面に機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』もの」とは,「半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域」である点で一致する。 したがって,本願発明1と引用発明9との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「単結晶シリコンウェハであって, 上面に形成され,析出物を含まないか,または,1立方センチメートル当り104未満の酸素析出物濃度で酸素析出物をわずかに含む第1の領域と, 半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した,第2の領域と, を有する単結晶シリコンウェハ。」 (相違点) 半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域が,本願発明1では,「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成を備えたものであるのに対し,引用発明9は,このような構成を備えていない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討すると,相違点に係る本願発明1の「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成は,上記引用文献1ないし12のいずれにも記載されておらず,本願のもととなる出願の優先日前において周知技術であるともいえない。 したがって,本願発明1は,当業者であっても引用発明9,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし8について 本願発明2ないし8は,いずれも本願発明1の,半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域が,「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明9,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 ・引用文献10を主引例とした検討 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明10とを対比すると,次のことがいえる。 ア 引用発明10の「『シリコンである』『半導体基板』」,「『半導体基板の片側表面だけに』形成された『無欠陥層』」は,それぞれ,本願発明1の「単結晶シリコンウェハ」,「上面に形成され,析出物を含まないか,または,1立方センチメートル当り104未満の酸素析出物濃度で酸素析出物をわずかに含む第1の領域」に相当する。 イ 引用発明10の「『その後の熱処理により欠陥領域となり,ゲッタリングセンタを有するものとな』る『内部』」と,本願発明1の「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含み,半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した,第2の領域』であって,かつ,前記下面が,『下面に機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』もの」とは,「半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域」である点で一致する。 したがって,本願発明1と引用発明10との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「単結晶シリコンウェハであって, 上面に形成され,析出物を含まないか,または,1立方センチメートル当り104未満の酸素析出物濃度で酸素析出物をわずかに含む第1の領域と, 半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した,第2の領域と, を有する単結晶シリコンウェハ。」 (相違点) 半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域が,本願発明1では,「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成を備えたものであるのに対し,引用発明10は,このような構成を備えていない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討すると,相違点に係る本願発明1の「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成は,上記引用文献1ないし12のいずれにも記載されておらず,本願のもととなる出願の優先日前において周知技術であるともいえない。 したがって,本願発明1は,当業者であっても引用発明10,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし8について 本願発明2ないし8は,いずれも本願発明1の,半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域が,「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明10,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第5 当審拒絶理由2について 1 特許法第36条第6項第1号について 当審では,「出願時の技術常識に照らしても,『半導体材料ウェハ』が,『単結晶シリコンウェハ』以外の材料からなる『半導体材料ウェハ』である場合にまで,特許請求の範囲に記載された発明特定事項を満たすことで,『半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングする』ことに適したという効果を奏するとは認められない。したがって,本願の請求項1-10に係る発明の範囲まで,発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから,本願の請求項1-10に記載された発明は,発明の詳細な説明に記載されたものとは認められない。」との拒絶の理由を通知しているが,平成29年4月28日付けの補正において,補正後の請求項1が,「単結晶シリコンウェハ・・・」と補正された結果,本願発明1ないし8は,いずれも,「単結晶シリコンウェハ」を発明特定事項とするから,この拒絶の理由は解消した。 2 特許法第36条第4項第1号について 当審では,「発明の詳細な説明には,『半導体材料ウェハ』が,『単結晶シリコンウェハ』以外の場合,すなわち,『半導体材料ウェハ』が,『単結晶以外のシリコンウェハ』,あるいは,『ゲルマニウム原子,ガリウム砒素,インジウムリン,または炭化ケイ素等からなるウェハ』である場合に,『上面に形成され,析出物を含まないか,または,1立方センチメートル当り104未満の酸素析出物濃度で酸素析出物をわずかに含む第1の領域と,下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』む第2の領域とを有する半導体材料ウェハを作製する方法が記載されておらず,また,出願の技術常識から,当該構成を備えた半導体材料ウェハを作製する方法が周知であったとも認められない。・・・したがって,発明の詳細な説明の記載は,当業者が,特許請求の範囲に記載された発明を実施することができる程度に明確かつ十分なものとは認められない。」との拒絶の理由を通知しているが,平成29年4月28日付けの補正において,補正後の請求項1が,「単結晶シリコンウェハ・・・」と補正された結果,本願発明1ないし8は,いずれも,「単結晶シリコンウェハ」を発明特定事項とするから,この拒絶の理由は解消した。 3 特許法第29条第1項第3号及び同条第2項について 当審では,請求項1ないし10に係る発明は,上記引用文献1,2,及び,引用文献4ないし10に記載された発明であるか,上記引用文献1ないし12に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,あるいは,同条第2項の規定により特許を受けることができないとの拒絶の理由を通知した。 その後,平成29年4月28日付けの手続補正書により,請求項1ないし8は,それぞれ,半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域が,「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成を備えるものと補正された。 そして,上記第4のとおり,本願発明1ないし8は,上記引用文献1,2,及び,引用文献4ないし10に記載された発明とはいうことができず,また,請求項1ないし10に係る発明は,上記引用文献1ないし12に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものともいえない。 したがって,特許法第29条第1項第3号に該当し,あるいは,同条第2項の規定により特許を受けることができないとの拒絶の理由は解消した。 第6 当審拒絶理由3について 1 特許法第36条第6項第2号について(1) 当審では,「請求項1の『表面粗度』は,定義が明確でない不明瞭な記載である。」との拒絶の理由を通知しているが,平成29年8月10日付けの補正において,補正後の請求項1が,「・・・表面粗さ・・・」と補正されるとともに,同日付けの意見書において「請求項1記載の『表面粗度』を技術用語として明確な『表面粗さ』に補正しました。また,拒絶理由通知において,『「表面粗度(表面粗さ)」が,「Ra」(算術平均粗さ),「Rq」(二乗平均平方根高さ),「Rz」(最大高さ)等のいずれのパラメータを特定しようとしているのか不明である』旨ご指摘されております。本発明の技術分野に限らず,『表面粗さ』のパラメータとして,算術平均高さRaが広く使われております。本発明の技術分野においても同様に,表面粗さのパラメータは算術平均粗さRaが使われます。それゆえ,請求項1記載の『表面粗さ』は,本発明の技術常識から『算術平均粗さRa』のことであることは明らかです。」との主張がされたことから,この拒絶の理由は解消した。 2 特許法第36条第6項第2号について(2) 当審では,請求項9及び請求項10について,「請求項9,請求項10の『請求項1~8の何れか1項に記載の単結晶シリコンウェハ(2,10,100)を材料とする半導体基板を有する・・・』は不明瞭な記載である。」との拒絶の理由を通知しているが,平成29年8月10日付けの補正において,請求項9及び請求項10が削除されたことから,この拒絶の理由は解消した。 3 特許法第29条第1項第3号及び同条第2項について 当審では,請求項9及び請求項10に係る発明は,前記した引用文献1ないし12に記載された発明であり,また,前記引用文献1ないし12に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,あるいは,同条第2項の規定により特許を受けることができないとの拒絶の理由を通知しているが,平成29年8月10日付けの補正において,請求項9及び請求項10が削除されたことから,この拒絶の理由は解消した。 第7 当審拒絶理由1について 1 特許法第36条第6項第2号について 当審では,「請求項1には,『半導体材料ウェハ』の製造方法が記載されているといえる。・・・したがって,請求項1に係る発明は明確でない。また,同様の理由によって,請求項1を引用する請求項2ないし12に係る発明も明確でない。」との拒絶の理由を通知しているが,平成28年10月17日付けの補正において,補正後の請求項から,製造方法に係る「・・・工程・・・」等の記載が削除され,本願の請求項1ないし8には,もはや製造方法が記載されていないから,この拒絶の理由は解消した。 2 特許法第29条第2項について ア 当審では,請求項1ないし12に係る発明は,以下の引用文献13ないし20(当審拒絶理由1の引例1ないし8)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとの拒絶の理由を通知している。 イ そして,引用文献13ないし20には,それぞれ,以下の技術的事項が開示されている。 ・引用文献13の【0011】には,「シリコンウェーハの表面に酸化シリコン層を形成させ,これに伴って格子間シリコンがウェーハ内部にあるCOP内部に注入されてCOPを完全に埋め込み,COPを完全に消滅させる」工程が,また,【0018】には,「サンドブラスト法などによって,ウェーハ裏面に歪み層を形成してもよい。」ことが,さらに,【0012】には,「一面上にゲッタリング層としての・・・歪み層が形成されているので,IGBT製造工程における重金属汚染を除去することができる」ことが記載されている。 ・引用文献14の【0007】には,「また,高濃度層の最高酸素析出物濃度が3.5×109cm-3以上としたのは,この値未満では十分なゲッタリング効果を得ることができないためである。」ことが記載されている。 ・引用文献15には,酸素注入によって,半導体材料内に欠陥を形成する工程と,その後,上記半導体材料の熱処理を行うことにより,上記欠陥が形成された欠陥領域内に,上記半導体材料内において溶融される材料が上記欠陥に析出した材料析出物を生成する工程とを含む材料析出物生成方法によって製造された半導体材料ウェハが記載されている。 ・引用文献16には,酸素のイオン注入によって,半導体材料内に欠陥を形成する工程と,その後,上記半導体材料の熱処理を行うことにより,上記欠陥が形成された欠陥領域内に,上記半導体材料内において溶融される材料が上記欠陥に析出した材料析出物を生成する工程とを含む材料析出物生成方法によって製造された半導体材料ウェハが記載されている。 また,【0025】には,「酸素のイオン注入は表面・裏面いずれから行ってもよい。」ことが記載されている。 ・引用文献17の第5頁左下欄第3-6行等には,酸素のイオン注入によって,半導体材料内に欠陥を形成する工程と,その後,上記半導体材料の熱処理を行うことにより,上記欠陥が形成された欠陥領域内に,上記半導体材料内において溶融される材料が上記欠陥に析出した材料析出物を生成する工程とを含む材料析出物生成方法によって製造された半導体材料ウェハにおいて,前記酸素と同時に炭素を注入することによって,前記半導体材料ウェハが,炭素を含むものとすることが記載されている。 ・引用文献18の第3頁左上欄第13-20行等には,酸素のイオン注入によって,半導体材料内に欠陥を形成する工程と,その後,上記半導体材料の熱処理を行うことにより,上記欠陥が形成された欠陥領域内に,上記半導体材料内において溶融される材料が上記欠陥に析出した材料析出物を生成する工程とを含む材料析出物生成方法によって製造された半導体材料ウェハにおいて,析出物を含まない第1の領域の厚さを,少なくとも15μm以上とすることが記載されている。 ・引用文献19の請求項8には,1立方センチメートル当り4×1010よりも高い材料析出物濃度で析出物を含む領域と,層厚が15μm以上の析出物を含まないか,または,わずかに含む領域を有する半導体材料ウェハが記載されている。 また,【0022】-【0023】には,原子空孔に起因する欠陥が,DZ層に存在することが望ましくないことが示唆されている。 ・引用文献20の【0051】には,炭素が酸素析出核形成中心の生成の触媒作用を果たすため,単結晶シリコンが,1立方センチメートル当りの原子が5×1015以下の濃度または5×1016以下の濃度の炭素を含むことが望ましいことが記載されている。 また,【0053】には,「ウエハ1を包み込む表面酸化物層9を成長させるために,工程S1において酸素含有雰囲気中でウエハ1を熱処理する。」ことが,【0060】には,「工程S2が終了すると,・・・空孔は酸化物層へ拡散してから消滅し」と記載されている。 ウ 一方,本願発明1ないし8は,それぞれ,半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域が,「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成を備えた発明である。 エ そして,前記「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成は,引用文献13ないし20のいずれにも記載されておらず,また,本願のもととなる出願の優先日前において周知技術であるともいえない。 オ したがって,本願発明1ないし8は,当業者であっても引用文献13ないし20に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえないから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとの拒絶の理由は解消した。 引 用 文 献 等 一 覧 13.特開2006-344823号公報 14.特開2003-7711号公報 15.特開平1-307232号公報 16.特開平4-368131号公報 17.特開昭60-42839号公報 18.特開平4-134830号公報 19.特開2002-134515号公報 20.特表2004-533125号公報 第8 原査定の概要及び原査定についての判断 ア 原査定は,請求項1ないし12に係る発明は,以下の引用文献21ないし24に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 イ 一方,本願発明1ないし8は,それぞれ,半導体材料ウェハの加工時に重金属イオンをゲッタリングすることに適した領域が,「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成を備えた発明である。 ウ そして,前記「『下面に形成され,1立方センチメートル当り107よりも高い酸素析出物濃度で酸素析出物を含』むものであり,かつ,前記第2の領域が形成される下面が,『機械的欠陥領域が形成され,この機械的欠陥領域の表面粗さが,1マイクロメートル以上であり,10マイクロメートルよりも小さい』」という構成は,以下の引用文献21ないし24のいずれにも記載されておらず,また,本願のもととなる出願の優先日前において周知技術であるともいえない。 エ したがって,本願発明1ないし8は,当業者であっても引用文献21ないし24に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものではない。 したがって,原査定を維持することはできない。 引 用 文 献 等 一 覧 21.特開平08-008263号公報(引用文献2と同一文献) 22.特開2006-344823号公報(引用文献11と同一文献) 23.特開2002-134515号公報(引用文献19と同一文献) 24.特表2004-533125号公報(引用文献20と同一文献) 第9 むすび 以上のとおり,本願発明1ないし8は,当業者が引用文献21ないし引用文献24に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。

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2015-005907

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