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特許無効審判

2011-800001

審判番号
2011-800001
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願平10-227203
登録番号
特許第3709914号(P3709914)
請求日
2010年12月28日
審決日
2011年10月18日
公報発行日
2018年02月23日
結論
訂正認容・請求不成立
当事者
  • 【請求人】三星電機株式会社
  • 【請求人代理人】龍華 明裕
  • 【請求人代理人】東山 忠義
  • 【請求人代理人】明石 英也
  • 【請求人代理人】高田 学
  • 【請求人代理人】城山 康文
  • 【請求人代理人】篠森 重樹
  • 【請求人代理人】龍華国際特許業務法人
  • 【請求人代理人】山内 真之
  • 【請求人代理人】齋藤 宙治
  • 【請求人代理人】木村 晋朗
  • 【被請求人】株式会社村田製作所
  • 【被請求人代理人】岩坪 哲
  • 【被請求人代理人】速見 禎祥
審判長/審判官
  • 審判長 北島 健次
  • 審判官 加藤 浩一
  • 審判官 小川 将之
分類
P1113.121-YA (H01G) / P1113.536-YA (H01G) / P1113.537-YA (H01G) / P1113.841-YA (H01G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項、特許法第134条の2第1項、特許法第29条第2項、特許法第123条第1項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第134条の2第5項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項、特許法第134条の2、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

上記当事者間の特許第3709914号発明「積層セラミックコンデンサ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

第1.手続の経緯 本件特許3709914号(以下「本件特許」という。)は、株式会社村田製作所(以下「被請求人」という。)の特許であって、平成10年8月11日に特願平10-227203号として出願され(平成12年2月25日出願公開 特開2000-58378号)、平成17年8月19日に特許請求の範囲の請求項1~7に係る発明(以下「本件特許発明1~7」という。)について特許権の設定の登録がなされた。 これに対して、平成22年12月28日に、三星電機株式会社(以下「請求人」という。)から本件無効審判の請求がなされた。 その後の主な経緯は次のとおりである。 平成23年 2月10日:請求人 上申書提出 同年 4月 4日:被請求人 答弁書提出 同年 4月 4日:被請求人 訂正請求書提出 同年 5月31日:請求人 弁駁書提出 同年 7月 1日(同年6月29日付け):当審判合議体 審理事項通知書通知 同年 7月25日:被請求人 口頭審理陳述要領書提出 同年 7月26日:請求人 口頭審理陳述要領書提出 同年 8月 9日:被請求人 上申書提出 同年 8月 9日:口頭審理 同年 8月23日:請求人 上申書提出 また証拠方法として、請求人は甲第1号証~甲第19号証(以下「甲1~19」という。乙号証についても同じ。)を提出し、被請求人は乙1~4を提出しており、これらの証拠の成立について両当事者間に争いはない。 両当事者の各証拠方法は次のとおりである。 (請求人) 甲1:特開平8-31232号公報 甲2:特開平9-270366号公報 甲3:特開平6-318404号公報 甲4:Y.SAKABE,T.TAKAGI,K.WAKINO ’Dielectric Materials for Base-Metal Multilayer Ceramic Capacitors’ Advance in Ceramics(米国)American Ceramic Society Inc.1986年p.103~115 甲5:特開平6-227817号公報 甲6:特開平10-172857号公報 甲7:特開平9-171938号公報 甲8:特開平10-172856号公報 甲9:特開平3-226909号公報 甲10:本件特許の拒絶査定不服審判手続において、被請求人が平成16年2月10日に特許庁に提出した手続補正書 甲11の1:平成21年(ワ)第41569号 特許権侵害差止請求事件 原告準備書面(3) 甲11の2:平成21年(ワ)第41569号 特許権侵害差止請求事件 原告準備書面(4) 甲12:本件特許の審査手続において、特許庁審査官が平成14年11月19日付けで被請求人に通知した拒絶理由通知書 甲13:本件特許の審査手続において、被請求人が平成15年2月14日に特許庁審査官に提出した意見書 甲14:本件特許の拒絶査定不服審判手続において、特許庁が平成17年5月16日に作成した応対記録 甲15:特公昭57-42588号公報 甲16:株式会社村田製作所編 「セラミックコンデンサの基礎と応用」、1版7刷、株式会社オーム社、平成20年12月10日発行、p.23~98 甲17:一ノ瀬昇・山本孝編著 「積層セラミックス技術のすべて」、初版1刷、日刊工業新聞社、2008年8月24日発行、p.108-122 甲18:特開2006-321670号公報 甲19:特開平4-264305号公報 (被請求人) 乙1:(社)日本セラミックス協会編 「セラミック工学ハンドブック」、1版1刷、技報堂出版株式会社、1989年4月10日発行、p.1863-1868 乙2:野村武史、中野幸恵、出水由一 “Ni内部電極積層セラミックコンデンサの高温加速寿命に関する研究”、粉末および粉末冶金、42巻5号、1995年5月発行、p.557-566 乙第3号証:特許第3599646号公報 乙第4号証:特許第4382598号公報 第2.両当事者の主張 1.請求人の主張 請求人は、「特許第3709914の特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、本件特許は次の理由により無効とすべきものであると主張している。 (1)訂正を違法とする無効理由(以下「無効理由1」という。) 被請求人が平成23年4月4日に提出した訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件訂正による訂正後の請求項1~4に係る特許発明(以下「本件訂正発明1~4」という。)が焼結前の誘電体セラミック層の原料物質の組成を規定したものである場合には適法であるが、本件訂正発明1~4が焼結後の誘電体セラミック層の組成を規定したものである場合には、特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項の規定に適合しないものであるから、認められるべきではない。 そして、本件特許発明1~7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明1~7についての本件特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものであり、また、本件特許明細書は特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていないから、本件特許発明1~7についての本件特許は、同法123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 (2)訂正を適法とする無効理由 仮に本件訂正が適法になされたものであるとしても、本件特許は次の理由により無効とすべきものである。 (2-1)特許法第29条第2項を根拠とする無効理由(以下「無効理由2」という。) 本件訂正発明1~4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正発明1~4についての本件特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 具体的には、次のとおりである。 (2-1-1)甲1を主引用例とするもの(以下「無効理由2-1」という。) 本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲1を主引用例とするものであり、本件訂正発明1~4は、甲1に記載された発明(以下「甲1発明」という。他の各甲号証に記載された発明についても同じ。)に対し、甲2~9に記載された発明ないしは技術事項を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正発明1~4についての本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (2-1-2)甲2を主引用例とするもの(以下「無効理由2-2」という。) 甲2を主引用例とするものであり、本件訂正発明1~4は、甲2発明に対し、甲3~9に記載された発明ないしは技術事項を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正発明1~4についての本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (2-1-3)甲6を主引用例とするもの(以下「無効理由2-3」という。) 甲6を主引用例とするものであり、本件訂正発明1~4は、甲6発明に対し、甲3~5及び7~9に記載された発明ないしは技術事項を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正発明1~4についての本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (2-2)特許法第36条第4項及び第6項を根拠とする無効理由(以下「無効理由3」という。) 本件訂正による訂正後の特許明細書(以下「本件訂正明細書」という。)は特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていないから、本件訂正発明1~4についての本件特許は、同法第123条第1号第4号に該当し、無効とすべきものである。 具体的には、次のとおりである。 (2-2-1)特許法第36条第6項第1号を根拠とする無効理由(以下「無効理由3-1」という。) 本件訂正発明1~4は、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではなく、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1~4は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであるから、本件訂正発明1~4についての本件特許は、同法123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 (2-2-2)特許法第36条第4項を根拠とする無効理由(以下「無効理由3-2」という。) 本件訂正明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明1~4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではなく、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないものであるから、本件訂正発明1~4についての本件特許は、同法第123条第1号第4号に該当し、無効とすべきものである。 (2-2-3)特許法第36条第6項第2項を根拠とする無効理由(以下「無効理由3-3」という。) 本件訂正発明1~4は、明確ではなく、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1~4は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであるから、本件訂正発明1~4についての本件特許は、同法123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 2.被請求人の主張 被請求人は、「本件請求は成り立たない。」との審決を求め、請求人が主張する無効理由はいずれも存在しないと主張している。 また、それに関連して、本件特許発明1~7及び本件訂正発明1~4は、いずれも焼結後の誘電体セラミック層の組成を規定したものであると主張している。 第3.本件訂正についての検討 1.訂正事項 本件訂正による訂正事項を整理すると、次のとおりである。 (1)訂正事項a 訂正前の特許請求の範囲の請求項1の 「複数の誘電体セラミック層と、該誘電体セラミック層間に形成された内部電極と、該内部電極に電気的に接続された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサにおいて、 前記誘電体セラミック層が、次の組成式、 {Ba1-xCaxO}mTiO2+αRe2O3+βMgO+γMnO (但し、Re2O3は、Y2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3及びYb2O3の中から選ばれる少なくとも1種以上であり、α、β及びγはモル比を表わし 0.001≦α≦0.10 0.001≦β≦0.12 0.001<γ≦0.12 1.000<m≦1.035 0.005<x≦0.22 の範囲内にある)で表わされ、かつ該誘電体セラミック層に用いる{Ba1-xCaxO}nTiO2(ただし、0.005<x≦0.22、0.990≦n≦1.035)原料中のアルカリ金属酸化物の含有量が0.02重量%以下である主成分100重量部に対して、第1の副成分をLi2O-B2O3-(Si、Ti)O2系の酸化物とし、第2の副成分をAl2O3-MO-B2O3系の酸化物(但し、MOはBaO、CaO、SrO、MgO、ZnO及びMnOの中から選ばれる少なくとも1種である)の酸化物とし、第3の副成分をSiO2としたときに、該第1、第2及び第3の副成分から選ばれる1種を0.2~5.0重量部含有しており、 前記内部電極はニッケルまたはニッケル合金からなることを特徴とする、積層セラミックコンデンサ。」 を、訂正後の特許請求の範囲の請求項1の 「複数の誘電体セラミック層と、該誘電体セラミック層間に形成された内部電極と、該内部電極に電気的に接続された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサにおいて、 前記誘電体セラミック層が、次の組成式、 {Ba1-xCaxO}mTiO2+αRe2O3+βMgO+γMnO (但し、Re2O3は、Y2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3及びYb2O3の中から選ばれる少なくとも1種以上であり、α、β及びγはモル比を表わし 0.001≦α≦0.10 0.001≦β≦0.12 0.001<γ≦0.12 1.000<m≦1.035 0.005<x≦0.22 の範囲内にある)で表わされ、かつ該誘電体セラミック層に用いる{Ba1-xCaxO}nTiO2(ただし、0.005<x≦0.22、0.990≦n≦1.035)原料中のアルカリ金属酸化物の含有量が0.02重量%以下である主成分100重量部に対して、副成分をSiO2としたときに、該副成分を0.2~5.0重量部含有しており、 前記内部電極はニッケルまたはニッケル合金からなることを特徴とする、積層セラミックコンデンサ。」 と、訂正すること。 (2)訂正事項b 特許請求の範囲の請求項3~5を削除すること。 (3)訂正事項c 特許請求の範囲の請求項6を請求項3に繰り上げ、次のとおり訂正すること。 「前記外部電極は、導電性金属粉末、又はガラスフリットを添加した導電性金属粉末の焼結層からなることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の積層セラミックコンデンサ。」 (4)訂正事項d 特許請求の範囲の請求項7を請求項4に繰り上げ、次のとおり訂正すること。 「前記外部電極は、導電性金属粉末、又はガラスフリットを添加した導電性金属粉末の焼結層と、その上に形成されためっき層からなることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の積層セラミックコンデンサ。」 (5)訂正事項e 明細書の段落【0007】を次のとおり訂正すること。 「上記目的を達成するため、本発明の積層セラミックコンデンサは、複数の誘電体セラミック層と、該誘電体セラミック層間に形成された内部電極と、該内部電極に電気的に接続された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサにおいて、前記誘電体セラミック層が、次の組成式、 {Ba1-xCaxO}mTiO2+αRe2O3+βMgO+γMnO (但し、Re2O3は、Y2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3及びYb2O3の中から選ばれる少なくとも1種以上であり、α、β及びγはモル比を表わし、0.001≦α≦0.10、0.001≦β≦0.12、0.001<γ≦0.12、1.000<m≦1.035、0.005<x≦0.22の範囲内にある)で表わされ、かつ該誘電体セラミック層に用いる{Ba1-xCaxO}nTiO2(ただし、0.005<x≦0.22、0.990≦n≦1.035)原料中のアルカリ金属酸化物の含有量が0.02重量%以下である主成分100重量部に対して、副成分をSiO2としたときに、該副成分を0.2~5.0重量部含有しており、前記内部電極はニッケルまたはニッケル合金からなることを特徴とする。」 (6)訂正事項f 明細書の段落【0009】~【0011】を削除すること。 (7)訂正事項g 明細書の段落【0027】に「(実施例1)」とあるのを、「(参考例1)」と訂正すること。 (8)訂正事項h 明細書の段落【0035】に「これらこれら」とあるのを、「これら」と訂正すること。 (9)訂正事項i 明細書の段落【0051】に「(実施例2)」とあるのを、「(実施例)」と訂正し、また、「まず、実施例1と同様にして」とあるのを、「まず、参考例1と同様にして」と訂正すること」。 (10)訂正事項j 明細書の段落【0054】に「その後、実施例1と同様にして」とあるのを、「その後、参考例1と同様にして」と訂正し、また、「積層セラミックコンデンサの寸法形状は、実施例1と同様である」とあるのを、「積層セラミックコンデンサの寸法形状は、参考例1と同様である」と訂正し、また、「そして、実施例1と同様にして電気的特性を測定した」とあるのを、「そして、参考例1と同様にして電気的特性を測定した」と訂正すること。 (11)訂正事項k 明細書の段落【0065】に「平均寿命時間が52時間とやや悪い」とあるのを、「平均寿命時間が62時間とやや悪い」と訂正すること。 (12)訂正事項l 明細書の段落【0066】に「(実施例3)」とあるのを、「(参考例2)」と訂正し、また、「その他は実施例1と同様にして積層セラミックコンデンサを作製した」とあるのを、「その他は参考例1と同様にして積層セラミックコンデンサを作製した」と訂正し、また、「作製した積層セラミックコンデンサの寸法形状は、実施例1と同様である」とあるのを、「作製した積層セラミックコンデンサの寸法形状は、参考例1と同様である」と訂正し、また、「そして、実施例1と同様にして電気的特性を測定した」とあるのを、「そして、参考例1と同様にして電気的特性を測定した」と訂正すること。 (13)訂正事項m 明細書の段落【0072】に「(実施例4)」とあるのを、「(参考例3)」と訂正し、また、「その他は実施例1と同様にして積層セラミックコンデンサを作製した」とあるのを、「その他は参考例1と同様にして積層セラミックコンデンサを作製した」と訂正し、また、「作製した積層セラミックコンデンサの寸法形状は、実施例1と同様である」とあるのを、「作製した積層セラミックコンデンサの寸法形状は、参考例1と同様である」と訂正し、また、「そして、実施例1と同様にして電気的特性を測定した」とあるのを、「そして、参考例1と同様にして電気的特性を測定した」と訂正すること。 (14)訂正事項n 明細書の段落【0077】に「実施例1~4で得られた本発明の範囲内の試料」とあるのを、「実施例及び参考例1~3で得られた本発明の範囲内の試料」と訂正すること。 2.訂正の目的についての検討 (1)訂正事項a 訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1において、訂正前の「第1の副成分をLi2O-B2O3-(Si、Ti)O2系の酸化物とし、第2の副成分をAl2O3-MO-B2O3系の酸化物(但し、MOはBaO、CaO、SrO、MgO、ZnO及びMnOの中から選ばれる少なくとも1種である)の酸化物とし、第3の副成分をSiO2としたときに、該第1、第2及び第3の副成分から選ばれる1種を0.2~5.0重量部含有しており」を、「副成分をSiO2としたときに、該副成分を0.2~5.0重量部含有しており」と訂正するものであり、「副成分」が、「第1の副成分」、「第2の副成分」又は「第3の副成分」から選ばれるいずれか1種であったのを、「第3の副成分」である「SiO2」のみに限定するものであり、択一的記載の要素を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (2)訂正事項bについて 訂正事項bは、請求項を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (3)訂正事項c及びdについて 訂正事項c及びdは、いずれも訂正事項bにより請求項が削除されたことに伴い、請求項の項番の繰上げと、請求項の引用関係を変更するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (4)訂正事項e及びfについて 訂正事項e及びfは、訂正事項a及びbに対応して発明の詳細な説明の記載を整合させるものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 (5)訂正事項g、i、j及びl~nについて 訂正事項g、i、j及びl~nは、訂正事項aに伴い、訂正前の請求項1の「第1の副成分」又は「第2の副成分」を含有する積層セラミックコンデンサが発明の実施例ではなくなり、「第3の副成分」である「SiO2」を含有する積層セラミックコンデンサのみが実施例となったことに伴い、実施例ではなくなったものを参考例と改めるものであって、訂正事項aに対応して発明の詳細な説明の記載を整合させるものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 (6)訂正事項h、kについて 訂正事項h、kは、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当する。 (7)補正の目的についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第134条の2第1項ただし書に規定する要件を満たすものである。 3.新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否等についての検討 (1)本件訂正は、上記1.において検討したとおり、特許請求の範囲における択一的記載の要素の削除、請求項の削除及びそれに伴う引用請求項の修正、特許請求の範囲と整合を取るための発明の詳細な説明の修正、並びに誤記の訂正からなるものであるであるから、特許明細書等に記載されている事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。 したがって、本件訂正は、特許法第134条の2第第5項において準用する同法第126条第3項及び4項の規定に適合するものである。 (2)なお、請求人は、無効理由1において、本件訂正発明1~4が焼結後の誘電体セラミック層の原料物質の組成を規定したものである場合には、本件訂正は特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項の規定に適合しないものであると主張しているので、これについて検討する。 本件訂正発明1~4は、後記第5.3.(無効理由3-3についての検討)において検討したとおりの理由により、焼結前の誘電体セラミック層の原料物質の組成を規定したものと認められるが、本件訂正は、上に述べたとおり、特許請求の範囲における択一的記載の要素の削除、請求項の削除及びそれに伴う引用請求項の修正、特許請求の範囲と整合を取るための発明の詳細な説明の修正、並びに誤記の訂正からなるものであるであるから、本件訂正発明1~4が、焼結前の誘電体セラミック層の原料物質の組成を規定したものであるか、焼結後の誘電体セラミック層の原料物質の組成を規定したものであるかにかかわりなく、本件訂正がいわゆる新規事項の追加や特許請求の範囲の拡張・変更をもたらす余地がないことは明らかである。 したがって、請求人の主張は採用できず、無効理由1は存在しない。 4.本件訂正についてのむすび 以上検討したとおり、本件訂正における訂正事項は、いずれも、特許法第134条の2第1項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び4項の規定に適合する。 したがって、無効理由1は存在せず、本件訂正は適法になされたものである。 第4.無効理由2(特許法第29条第2項を根拠とするもの)についての検討 1.訂正後の特許発明 上記第3.において検討したとおり、本件訂正を認めるので、本件訂正による訂正後の請求項1~4に係る特許発明(本件訂正発明1~4)は、本件訂正により訂正された特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載されている事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 複数の誘電体セラミック層と、該誘電体セラミック層間に形成された内部電極と、該内部電極に電気的に接続された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサにおいて、 前記誘電体セラミック層が、次の組成式、 {Ba1-xCaxO}mTiO2+αRe2O3+βMgO+γMnO (但し、Re2O3は、Y2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3及びYb2O3の中から選ばれる少なくとも1種以上であり、α、β及びγはモル比を表わし 0.001≦α≦0.10 0.001≦β≦0.12 0.001<γ≦0.12 1.000<m≦1.035 0.005<x≦0.22 の範囲内にある)で表わされ、かつ該誘電体セラミック層に用いる{Ba1-xCaxO}nTiO2(ただし、0.005<x≦0.22、0.990≦n≦1.035)原料中のアルカリ金属酸化物の含有量が0.02重量%以下である主成分100重量部に対して、副成分をSiO2としたときに、該副成分を0.2~5.0重量部含有しており、 前記内部電極はニッケルまたはニッケル合金からなることを特徴とする、積層セラミックコンデンサ。 【請求項2】 前記誘電体セラミック層に用いる{Ba1-xCaxO}nTiO2(ただし、0.005<x≦0.22、0.990≦n≦1.035)原料の平均粒径は、0.1~0.7μmであることを特徴とする、請求項1記載の積層セラミックコンデンサ。 【請求項3】 前記外部電極は、導電性金属粉末、又はガラスフリットを添加した導電性金属粉末の焼結層からなることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の積層セラミックコンデンサ。 【請求項4】 前記外部電極は、導電性金属粉末、又はガラスフリットを添加した導電性金属粉末の焼結層と、その上に形成されためっき層からなることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の積層セラミックコンデンサ。」 2.甲1~9の記載事項 (1)甲1の記載事項 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲1(特開平8-31232号公報)には、「非還元性誘電体磁器組成物」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 (1-1)「【請求項3】金属元素のモル比による組成式を 100(Ba1-xCax)1+kTiO3+aRE2O3+bMnO+cMgO+dLi2O+eSiO2(REは、Y、Gd、Dy、Ho、Er及びYbのうち少なくとも1種)と表した時、式中のa、b、c、d、e、x及びkが 0.25≦a≦2.50 0.05≦b≦0.50 0.50≦c≦8.00 1.50≦d≦4.50 0.75≦e<2.00 0   <x≦0.025 0   ≦k<a/50 を満足することを特徴とする非還元性誘電体磁器組成物。」 (1-2)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、磁器コンデンサ、特にニッケル、銅等の卑金属を主成分とする内部電極を有する積層型磁器コンデンサに適した非還元性誘電体磁器組成物に関するものである。 【0002】 【従来技術】従来、一般に積層型磁器コンデンサは、表面に内部電極が塗布されたBaTiO3を主成分とする誘電体シートを複数枚積層するとともに、各シートの内部電極を交互に並列に一対の外部接続用電極に接続し、これを焼結一体化することにより形成されている。このような積層型磁器コンデンサは、近年のエレクトロニクスの発展に伴い電子部品の小型化が急速に進行し、広範な電子回路に使用されるようになってきている。」 (1-3)「【0004】一方、上記従来の積層型磁器コンデンサの高価となる欠点を解消するために、内部電極として安価な卑金属、例えばニッケルを使用することが試みられている。しかしながら、ニッケルなどの卑金属を内部電極として使用すると、チタン酸バリウム(BaTiO3)等からなる誘電体と卑金属内部電極とを同時焼結する際、前記卑金属が酸化する事なく金属膜として焼結する条件はNi/NiOの平衡酸素分圧が1300℃において約0.03Paであるから、それ以下の酸素分圧でなければならず、この場合BaTiO3またはその固溶体からなる誘電体は、一般に前記の酸素分圧下では還元されてしまって絶縁性を失い、その結果、積層型磁器コンデンサとしての実用的な誘電特性が得られなくなるという欠点を有していた。」 (1-4)「【0007】本発明は、1150℃~1350℃で焼成しても還元することがなく、また内部電極として使用するニッケルなどの卑金属粉末粒子も酸化することがなく金属膜として焼結し、高い比誘電率と優れた絶縁性を有し、かつ誘電率の温度変化率が広い温度範囲にわたって小さく、誘電正接が小さい極めて経済性の高い高誘電率系の非還元性誘電体磁器組成物を提供することを目的とするものである。」 (1-5)「【0015】また、本発明の非還元性誘電体磁器組成物は、金属元素のモル比による組成式を、100BaTiO3+aRE2O3+bMnO+cMgO+dLi2O+eSiO2(REは、Y、Gd、Dy、Ho、Er及びYbのうち少なくとも1種)と表した時、式中のa、b、c、d及びeが、0.25≦a≦2.50、0.05≦b≦0.50、0.50≦c≦8.00、1.50≦d≦4.50、0.75≦e<2.00を満足するものである。」 (1-6)「【0020】また、BaTiO3100モルに対するLi2Oのモル比dを、1.50≦d≦4.50としたのは、dが1.50よりも小さい場合には比誘電率の温度特性が悪くなり、dが4.50よりも大きい場合には比誘電率が低くなるからである。dは1.50≦d≦2.50であることが望ましい。 【0021】さらに、BaTiO3100モルに対するSiO2のモル比eを、0.75≦e<2.00としたのは、eが0.75よりも小さい場合には、焼結性が低下し、焼成温度1350℃で緻密な磁器が得られなくなり、eが2.00以上となると比誘電率が低く、絶縁抵抗が低くなるからである。eは0.75≦e≦1.50、特には0.75≦e≦1.00であることが望ましい。」 (1-7)「【0023】さらに、本発明の非還元性誘電体磁器組成物は、金属元素のモル比による組成式を、100(Ba1-xCax)1+kTiO3+aRE2O3+bMnO+cMgO+dLi2O+eSiO2(REは、Y、Gd、Dy、Ho、Er及びYbのうち少なくとも1種)と表した時、式中のa、b、c、d、e、x及びkが、0.25≦a≦2.50、0.05≦b≦0.50、0.50≦c≦8.00、1.50≦d≦4.50、0.75≦e<2.00、0<x≦0.025、0≦k<a/50を満足するものである。 【0024】ここで、モル比による組成式を、100(Ba1-xCax)1+kTiO3+aRE2O3+bMnO+cMgO+dLi2O+eSiO2と表した時、BaTiO3100モルに対するモル比a、b、c、d、e、x及びkを上記のように限定したのは、上記理由と同様である。そして、BaのCaによる置換量xを0<x≦0.025としたのは、xが0.025よりも多くなると、比誘電率が低くなり、絶縁抵抗も低くなるからである。xは0<x≦0.010であることが望ましい。 【0025】また、組成式におけるkを0≦k<a/50としたのは、kが0よりも小さい場合には絶縁抵抗が低くなり、kがa/50以上となる場合には焼結性が低下し緻密化しないからである。kは0.010≦k≦0.020であること望ましい。また、本発明においては、BaTiO3の平均結晶粒径は1.5μm以下であることが望ましい。これは、BaTiO3の平均結晶粒径が1.5μmよりも大きくなると絶縁抵抗が低くなり、誘電率の温度変化率の絶対値が大きくなる傾向にあるからである。」 (1-8)「【0045】このスラリーに有機バインダー、可塑剤を加え、十分撹拌後ドクターブレード法によりフィルム状に成形した。このフィルムを積み重ね熱圧着後切断して(縦)10mm×(横)10mm×(厚み)0.5mmの試料を得た。この試料を酸素分圧3×10-5Paに制御し、キャリアガスを窒素ガスとして1250℃にて2時間焼成した。最後に得られた焼結体の上下両面にIn-Ga合金を塗布して電気特性用電極とした。」 (1-9)「【0049】表5、6からも明らかなように、希土類酸化物Re2O3の添加量aが0.25モル部を下回るNo13では絶縁抵抗が低く、逆にaが2.5モル部を超えるNo17では比誘電率が低い傾向にあるとともに焼結性が低下し、絶縁抵抗が低くなる。また、イオン半径が大きい希土類元素であるSmを添加したNo25の場合、誘電損失が大きく、絶縁抵抗が低く、温度特性も悪い。MgOの量cが0.5モル部を下回るNo7では絶縁抵抗が低く、逆にcが8モル部を超えるNo12では比誘電率が低い。また、MnO量bが0.05モル部を下回るNo1では絶縁抵抗が低く、bが0.5モル部を超えるNo6ではエージングレートが大きい。Li2Oの量dが1.50モル部を下回るNo32では温度特性が悪く、4.5モル部を上回るNo24では比誘電率が低い。SiO2量eが0.75モル部を下回るNo18は焼結性が悪く、eが2.0モル部よりも多いNo31は比誘電率が低く、絶縁抵抗が悪い。」 (1-10)「【0051】実施例3 出発原料として純度99%以上のBaCO3粉末、TiO2粉末、CaCO3粉末を用い混合後1000℃にて固相反応させ(Ba、Ca)TiO3を合成し、粒径1.5μm以下に微粉砕した。次にこの合成微粉末(Ba、Ca)TiO3とMnCO3粉末、MgCO3粉末にY2O3、Gd2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3、Yb2O3から選ばれる少なくとも1種の粉末を加え、Li2CO3粉末、SiO2粉末をそれぞれ表7の割合になるように秤量し、分散剤、分散媒とともにボールミルにて混合し、原料スラリーを調整した。 【0052】 【表7】 」 (1-11)「【0053】このスラリーに有機バインダー、可塑剤を加え、十分撹拌後ドクターブレード法によりフィルム状に成形した。このフィルムを積み重ね熱圧着後切断して(縦)10mm×(横)10mm×(厚み)0.5mmの試料を得た。この試料を酸素分圧3×10-5Paに制御し、キャリアガスを窒素ガスとして1250℃にて2時間焼成した。最後に得られた焼結体の上下両面にIn-Ga合金を塗布して電気特性用電極とした。 【0054】次にこれらの評価試料を上記実施例2と同様にして、比誘電率、絶縁抵抗、誘電正接および+25℃での静電容量に対する各温度での静電容量の変化率を測定するとともに、評価試料を150℃で1時間熱処理後、25℃で放置し、1時間後の静電容量に対する10時間後の静電容量の変化率(エージングレート)を算出した。この結果を表8に示す。 【0055】 【表8】 」 (1-12)「【0056】但し、絶縁抵抗は静電容量(C、μF)と絶縁抵抗(R、MΩ)との積(CR、MΩ・μF)で表わした。 【0057】表7、8からも明らかなように、Caのモル比xが0.025モルを越えるNo39では比誘電率低く、絶縁抵抗も低い。また、kの値が0を下回るNo40では絶縁抵抗が低く、kの値がa/50以上のNo42では焼結性が悪く緻密化せず、比誘電率が低い。また、イオン半径が大きい希土類元素であるSmを添加したNo43の場合、誘電損失が大きく、絶縁抵抗が低く、温度特性も悪い。 【0058】これらの比較例に対し、本発明の試料ではいずれも比誘電率2500以上、誘電正接(tanδ)が1.0%以下、絶縁抵抗2700MΩ・μF以上、比誘電率の温度変化率が±15%以下と優れた特性を示した。」 (1-13)「【0059】 【発明の効果】以上詳述した通り、本発明の非還元性誘電体磁器組成物は焼成温度が1150~1350℃の範囲で、酸素分圧がNi/NiOの平衡酸素分圧以下の焼成条件で焼成しても、比誘電率、誘電正接、絶縁抵抗、比誘電率の温度特性において優れた特性を示すことから、ニッケルを主成分とする内部電極を用いた積層形磁器コンデンサ用の誘電体磁器組成物として実用性に優れたものである。」 (2)甲2の記載事項 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲2(特開平9-270366号公報)には、「積層型コンデンサ」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 (2-1)「【請求項1】BaTiO3を主成分とし、Si、希土類元素およびアルカリ土類金属元素を含有する誘電体層と、Niを主成分とする内部電極層とを交互に積層してなる積層型コンデンサであって、前記誘電体層が、BaTiO3を主成分とする結晶粒子と、該結晶粒子間の粒界とからなり、前記誘電体層の破断面における全粒界個数のうち80%以上の粒界が、Si、希土類元素、アルカリ土類金属元素および酸素を含む非晶質からなることを特徴とする積層型コンデンサ。」 (2-2)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、BaTiO3を主成分とし、Si、希土類元素およびアルカリ土類金属元素を含有する誘電体層と、Niを主成分とする内部電極層とを交互に積層してなる積層型コンデンサに関するものである。」 (2-3)「【0003】しかしながら、従来のBaTiO3を主成分とする誘電体材料は高温で焼結する必要があり、内部電極は誘電体の焼結温度にて溶融することなく、かつ酸化することがない高価な貴金属であるパラジウム(融点1555℃)またはその合金が使用され、特に静電容量が大きいものでは内部電極枚数が大となってコスト高となるという問題があった。従って、従来の積層型コンデンサでは容積効率が高く、誘電特性に優れ、かつ高信頼性であるにも拘らず価格面がその発展に大きな障害となっていた。 【0004】そこで、近年、内部電極として安価な卑金属、例えばニッケルを使用することが試みられている。しかしながら、ニッケルなどの卑金属を内部電極として使用すると、チタン酸バリウム(BaTiO3)等からなる誘電体と卑金属内部電極とを同時焼結する際、前記卑金属が酸化することなく金属膜として焼結する条件はNi/NiOの平衡酸素分圧が1300℃において約0.03Paであるから、それ以下の酸素分圧でなければならず、この場合BaTiO3またはその固溶体からなる誘電体は、一般に前記の酸素分圧下では還元されてしまって絶縁性を失い、その結果、積層型磁器コンデンサとしての実用的な誘電特性が得られなくなるという欠点を有していた。 【0005】一方、ニッケルなどの内部電極を有する積層型コンデンサとして使用できる非還元性誘電体磁器組成物として、チタン酸バリウム固溶体(Ba、Ca、Sr)TiO3において、塩基性酸化物である(Ba、Ca、Sr)Oを酸性酸化物であるTiO2に対して化学量論比より過剰としたのもが、特公昭57-42588号公報等において提案されている。」 (2-4)「【0007】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記公報に記載された誘電体磁器組成物を積層型コンデンサとして用いた場合、高温負荷寿命が短いという欠点を有していた。また、静電容量の温度変化率が大きく、誘電特性が低下するという欠点を有していた。 【0008】本発明は、高い比誘電率と優れた絶縁性を有し、かつ静電容量の温度変化率が広い温度範囲にわたって小さく、誘電正接が小さく、高温負荷寿命が長い極めて経済性の高い積層型コンデンサを提供することを目的とする。」 (2-5)「【0010】 【作用】本発明者等は、非還元性誘電体磁器の高温負荷寿命の劣化の機構を研究した結果、高温負荷時に絶縁抵抗が劣化して寿命が短くなること、この絶縁抵抗の劣化は、酸素空孔の移動、偏在による電子濃度の増加によることを見い出し、本発明に至った。」 (2-6)「【0012】 【発明の実施の形態】本発明の積層型コンデンサは、誘電体層が、BaTiO3を主成分とした結晶粒子と、該結晶粒子間の粒界とからなり、誘電体層の破断面における全粒界個数のうち80%以上の粒界が、Si、希土類元素、アルカリ土類金属元素および酸素を含む非晶質からなるものである。 【0013】ここで、誘電体層は、BaTiO3を主成分とし、Si、希土類元素およびアルカリ土類金属元素を含有するもので、本発明は、例えば、BaTiO386~99モル%、MgO0.2~2.0モル%、MnO0.01~2.0モル%、Y2O30.5~2.0モル%、Li2O0~4モル%、SiO20.5~4モル%からなるものである。 【0014】特に、高誘電率とするためには、BaTiO392~98.5モル%、MgO0.2~1.0モル%、MnO0.04~0.5モル%、Y2O30.75~1.5モル%、Li2O0~0.5モル%、SiO20.5~4モル%からなることが望ましい。誘電体層中には、不純物としてAl、Zr、Fe、Na等が存在することがあるが、微量であれば特性上問題ない。また、粉砕時の粉砕ボールから、ボール成分が混入する場合もある。」 (2-7)「【0019】希土類元素としてはY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Dy、Ho、Er、Yb等があるが、これらのうちでも、Y、Ho、Er、Ybが高温負荷寿命の延長という点から望ましい。また、アルカリ土類金属元素としては、Mg、Ca、Sr、Ba等があるが、これらのうちでも、Mg、Baが高温負荷寿命の延長という点から望ましい。さらに、本発明の誘電体層を形成する元素として、焼結性という点からLi、K、B等を添加しても良いが、これらのうちでもLiが静電容量の温度特性という点から望ましい。」 (2-8)「【0025】本発明における誘電体層のBaTiO3粒子は、共振周波数の温度特性と誘電率向上という観点から平均粒径0.3~1μmのものが望ましい。」 (2-9)「【0028】このフィルムを積み重ね熱圧着後、縦3.5mm、横1.8mm、厚み0.75mmの積層成形体を得た。この積層成形体を大気中300℃、4時間で、脱バインダーを行った後、酸素分圧10-5~10-7Paに制御し、キャリアガスを窒素ガスとして1200~1350℃にて2時間焼成した。バレル研摩を行った後、磁器の端面にCuペーストを塗布して、850℃、窒素中で焼き付け、端子電極とし、本発明の積層型コンデンサを得た。」 (2-10)「表1」には、試料No.18として、BaTiO3が95.8モル%、MgOが1.0モル%、MnOが0.2モル%、Y2O3が1.0モル%、Li2Oが0モル%、SiO2が2.0モル%の試料が記載されている。 (3)甲3の記載事項 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲3(特開平6-318404号公報)には、「誘電体磁器組成物粉末およびそれを用いた積層セラミックコンデンサ」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 (3-1)「【請求項1】水熱反応を利用して製造した、不純物として含まれるアルカリ金属酸化物の含有量が0.03重量%以下、ハロゲンの含有量が0.03重量%以下の一般式ABO3で表されるペロブスカイト型酸化物粉末(ただし、A群元素はBaまたはCaであり、B群元素はTi、ZrまたはNbである。)を少なくとも1種類以上用いて得られ、次の一般式{(Ba1-xCax)O}m(Ti1-o-pZroNbp)O2+p/2で表され、x、o、pおよびmが、 0≦x≦0.20 0<o≦0.25 0≦p≦0.015 1.000≦m≦1.03 の関係を満足する主成分100モルに対して、副成分として、Mn、Fe、Cr、CoおよびNiの各酸化物をMnO2、Fe2O3、Cr2O3、CoOおよびNiOと表したとき、各酸化物の少なくとも一種類以上を0.02~2.0モル添加含有し、比表面積が8.0m2/g以下である、誘電体磁器組成物粉末。 【請求項2】複数の内部電極を介在させて積層された誘電体磁器焼結体、および前記誘電体磁器焼結体内の内部電極に電気的に接続されるように設けられた外部電極を含む積層セラミックコンデンサにおいて、 前記内部電極がNiおよびNi合金のうちの1種類からなり、前記誘電体磁器焼結体が請求項1の誘電体磁器組成物粉末を用いて形成されたことを特徴とする、積層セラミックコンデンサ。」 (3-2)「【0007】しかしながら、これらの電極材料は優れた特性を有する反面、高価であった。そのため、積層セラミックコンデンサに占める電極材料費の割合は30~70%にも達し、製造コストを上昇させる最大の要因となっていた。 【0008】貴金属以外に高融点をもつものとしてNi、Fe、Co、W、Moなどの卑金属があるが、これらの卑金属は高温の酸化性雰囲気中では容易に酸化されてしまい、電極としての役目を果たさなくなってしまう。そのため、これらの卑金属を積層セラミックコンデンサの内部電極として使用するためには、誘電体磁器とともに中性または還元性雰囲気中で焼成する必要がある。しかしながら、従来の誘電体磁器材料では、このような還元性雰囲気中で焼成すると著しく還元されてしまい、半導体化してしまうという欠点があった。」 (3-3)「【0011】しかし、内部電極として、Niなどの卑金属を使用した積層セラミックコンデンサは、自然雰囲気中で焼成される白金、金、パラジウムあるいは銀-パラジウム合金などのような貴金属を内部電極とする積層セラミックコンデンサと比較して、高温負荷、湿中負荷時の絶縁抵抗の寿命が短く、信頼性が低いという問題点を有していた。 【0012】一方、近年のエレクトロニクスの発展に伴い電子部品の小型化が急速に進行し、積層セラミックコンデンサも小型化の傾向が顕著になってきた。また、積層セラミックコンデンサを小型化する方法としては、一般的に大きな誘電率を有する材料を用いるか、誘電体層を薄膜化することが知られている。しかし、大きな誘電率を有する材料は結晶粒が大きく、15μm以下のような薄膜になると、1つの層中に存在する結晶粒の数が減少し、著しく信頼性が低下してしまう。 【0013】それゆえに、この発明の主たる目的は、還元性雰囲気中で焼成しても半導体化せず、しかも結晶粒径が小さいにもかかわらず、大きな誘電率が得られる誘電体磁器組成物粉末および低コストで信頼性の高い小型大容量の積層セラミックコンデンサを提供することである。 【0014】 【課題を解決するための手段】第1の発明は、水熱反応を利用して製造した、不純物として含まれるアルカリ金属酸化物の含有量が0.03重量%以下、ハロゲンの含有量が0.03重量%以下の一般式ABO3で表されるペロブスカイト型酸化物粉末(ただし、A群元素はBaまたはCaであり、B群元素はTi、ZrまたはNbである。)を少なくとも1種類以上用いて得られ、次の一般式、{(Ba1-xCax)O}m(Ti1-o-pZroNbp)O2+p/2で表され、x、o、pおよびmが、0≦x≦0.20、0<o≦0.25、0≦p≦0.015、1.000≦m≦1.03の関係を満足する主成分100モルに対して、副成分として、Mn、Fe、Cr、CoおよびNiの各酸化物をMnO2、Fe2O3、Cr2O3、CoOおよびNiOと表したとき、各酸化物の少なくとも一種類以上を0.02~2.0モル添加含有し、比表面積が8.0m2/g以下である、誘電体磁器組成物粉末である。」 (3-4)「【0019】また、本発明者らは、NiまたはNi合金からなる内部電極を有する積層セラミックコンデンサの誘電体磁器焼結体の原料粉末として、水熱合成法で合成されるペロブスカイト型の酸化物粉末を用いる場合に、不純物として存在するNa2O、K2Oなどのアルカリ金属酸化物およびClなどのハロゲンの含有量が、誘電体磁器の高温負荷、湿中負荷時の絶縁抵抗の寿命に大きく影響することを見いだした。」 (3-5)「【0026】・・・表1に示す8種類のペロブスカイト型の酸化物粉末を得た。」 (3-6)「【0028】次いで、上記8種類のペロブスカイト型酸化物と、純度99.8%以上のBaCO3、CaCO3、TiO2、ZrO2、Nb2O5、MnO2、Fe2O3、Cr2O3、CoO、NiOとを準備した。これらの原料を{(Ba1-xCax)O}m(Ti1-o-pZroNbp)O2+p/2の組成式で表され、x、o、p、mが表2に示す割合となるように配合して、配合原料を得た。この配合原料をボールミルで湿式混合し、粉砕したのち乾燥し、空気中において1000℃~1180℃で2時間仮焼して仮焼物を得た。この仮焼物を乾式粉砕機によって粉砕し、表2に示す比表面積の原料粉末を得た。」 (3-7)「【0030】この原料粉末にポリビニルブチラール系バインダおよびエタノールなどの有機溶剤を加えて、ボールミルによって湿式混合し、セラミックスラリを調整した。そののち、セラミックスラリをドクターブレード法によってシート成形し、厚み26μmの矩形のグリーンシートを得た。次に、このセラミックグリーンシート上に、Niを主体とする導電ペーストを印刷し、内部電極を構成するための導電ペースト層を形成した。導電ペースト層が形成されたセラミックグリーンシートを、導電ペーストの引き出されている側が互い違いとなるように複数枚積層し、積層体を得た。得られた積層体をN2雰囲気中において350℃の温度に加熱し、バインダを燃焼させたのち、酸素分圧が10-9~10-12MPaのH2-N2-空気ガスからなる還元性雰囲気中において表3に示す温度で2時間焼成し、セラミック焼結体を得た。得られたセラミック焼結体の表面を、走査型電子顕微鏡で倍率1500倍で観察し、グレインサイズを測定した。」 (3-8)「【0032】焼成後、得られた焼結体の両端面にAgペーストを塗布し、N2雰囲気中において600℃の温度で焼き付け、内部電極と電気的に接続された外部電極を形成した。」 (3-9)「【0042】また、試料番号17のように、水熱反応を利用して製造したアルカリ金属の含有量が0.03重量%を超えると、高温負荷試験での不良数が多くなり好ましくない。」 (3-10)「【0047】なお、この発明にかかる誘電体磁器組成物粉末において、微量のシリカおよび酸化物ガラスのような焼結助材を添加することは、得られる積層セラミックコンデンサの特性を何ら損なうものではない。」 (3-11)「表1」には、ペロブスカイト酸化物の種類C、D、E、Fとして、いずれも、ペロブスカイト酸化物の組成式が、(Ba0.95Ca0.05)TiO3であり、不純物量(重量%)が、それぞれ、Na量0.009、0.03、0.01、0.1、Cl量0.015、0.008、0.03、0.01であるペロブスカイト型の酸化物粉末が記載されている。 (4)甲4の記載事項 本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第4号証(Y.SAKABE,T.TAKAGI,K.WAKINO ’Dielectric Materials for Base-Metal Multilayer Ceramic Capacitors’ Advance in Ceramics(米国)American Ceramic Society Inc.1986年p.103~115)には、次の記載がある。 (4-1)「従来のMLCでは、空気中で行われる焼結の際に電極が酸化しセラミックと反応するのを防ぐために、白金、パラジウム、銀-パラジウム合金といった貴金属を用いて製造されてきた。したがって、10μFを超える容量のMLCは高価で、電解コンデンサと競合できなかった。 この問題を克服するため、貴金属をニッケルのような卑金属で置き換える誘電体及び製造技術が開発されてきた。それには、ニッケル電極が空気中では完全に酸化されるため、低い酸素分圧(P(O2))の下でMLCが焼結されなくてはならない。もしもP(O2)が十分に低くないと、ニッケル電極は部分的に酸化されてセラミック中に拡散する。したがって、焼結雰囲気は、P(O2)がNi/NiO平衡のものよりも低く保たれるように厳密に管理されなくてはならない。残念ながら、従来の酸化チタンからなるセラミック誘電体は、そのような低いP(O2)雰囲気下では、半導体化する。 したがって、還元性焼結条件下でも還元されない新規誘電材料が求められている。」(103ページ15行~30行の訳文) (4-2)「低い酸素分圧の下で焼結したBaTiO3セラミックスに対する、アルカリ土類金属酸化物、酸化ニオブ及び酸化マンガンの添加の影響を調べた。ニッケル電極を備えた試料における誘電特性に対するP(O2)の影響の評価も行い、ニッケル電極を有するMLCのための実用的な焼結条件を出した。」(104ページ14行~18行の訳文) (4-3)「電気用の最高等級のBaCO3、CaCO3、SrCO3、MgCO3、TiO2、Nb2O5、及びMnO2粉末から試料を準備した。粉末の粒子の大きさは約1.0μmであった。典型的な試料の不純物含有量を誘導結合プラズマ分光法で測定した結果を表1に示す。」(104ページ20行~23行の訳文) (4-4)「酸化マグネシウムは抵抗率に対して、有効な効果を有することが明らかになった。」(106ページ16行の訳文) (4-5)「本研究においては、(Ba、Ca)TiO3セラミックスにMnO2を添加し、そのモル比mは1.01に固定した。」(108ページ1行~2行の訳文) (4-6)表1には、(Ba0.85Ca0.15O)1.01TiO2セラミックスにおける不純物の内容として、SiO2が0.09重量%、Al2O3が0.005重量%、Fe2O3が0.004重量%、Na2Oが0.002重量%のものが、記載されている。 (5)甲5の記載事項 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲5(特開平6-227817号公報)には、「ペロブスカイト型化合物微細粒子粉末」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 (5-1)「【請求項2】平均粒径が0.05~0.30μmである、請求項1記載のチタン酸バリウム系ペロブスカイト型化合物微細粒子粉末。」 (5-2)「【0001】産業上の利用分野 本発明は、易焼結性であり、且つ緻密で微細なグレインからなるセラミックスが得られることを特徴とするチタン酸バリウム系ペロブスカイト型化合物微細粒子粉末に関する。 【0002】従来の技術 近年、電子材料は益々小型高性能化しているが、TiO2系ペロブスカイト型化合物を用いた強誘電体セラミックスもまた同様であり、小型高性能化を目的として配合技術、成型技術、焼結技術等の面で種々検討が行われてきた。しかしながら、このような技術の改善だけではいまや小型高性能化は限界に達しており、現状よりも更に小型高性能化するにはその素材自体の特性を改善する必要があるとされている。即ち、1μm以下好ましくは0.5μm以下の直径を有し、粒度分布が狭く且つ球形状のTiO2系ペロブスカイト型化合物粉末の開発が切望されている。このような性状のペロブスカイト型化合物の微細粒子粉末の開発が切望されているのは以下のような理由によるものである。即ち、粒径が小さければ表面エネルギーが高くなり、粒子の大きさが揃っていれば成形時のパッキングがよくなって、焼結性が著しく改善され、より低い温度で緻密で高強度なセラミックスが得られるだけでなく、強誘電体としては最も高い比誘電率の得られる0.5~1μmのグレインサイズからなるセラミックスが得られると考えられているからである。」 (5-3)「【0016】尚、チタニアゾル粒子に吸着している塩素イオン、あるいは硝酸イオンを除去する目的でチタニアゾルの分散液に添加するアルカリ源としてNaOHやKOHを使用した場合には、該スラリーのpHを7以上にしないことが特に重要である。すなわち、該スラリーのpHを7以上に調整すると、含水酸化チタンにNa+やK+が吸着し、この為合成されるペロブスカイト型化合物のNaやKの含有量が多くなり好ましくない。」 (5-4)「【0027】実施例 1.硫酸チタニル水溶液を加水分解して得られた含水酸化チタンを上澄み液の電気伝導度が1600μS/cmになるまで純水で洗浄した後、該スラリーのpHが9.5になるまで水酸化ナトリウム水溶液を添加した。更に該スラリーに塩酸を滴下し、該スラリーのpHを7に調整した後、該スラリーの上澄み液の電気伝導度が200μS/cmなるまで純水を用いて洗浄した。この後、該スラリーに塩酸を添加してスラリーのpHを1に調整してチタニアゾル分散液を得た。該チタニアゾル分散液に水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、分散液のpHを6に調整した後上澄み液の電気伝導度が130μS/cmになるまで純水で洗浄した。得られた含水酸化チタンを110℃で乾燥してX線回折により調べたところアナターゼの回折パターンを示した。また、化学分析により調べた該乾燥含水酸化チタンのSO3含有率は0.25重量%であることが分かった。 【0028】以上のようにして得られた含水率92%の含水酸化チタン3200gをSUS製反応容器に移し、該反応容器中に窒素ガスを20分間流した後、Ba(OH)2・8H2Oを1339g加え、更に純水を加えてBaO0.20モル/リットル、BaO/TiO2モル比1.30のスラリーに調整した。窒素雰囲気中で該スラリーを沸点まで昇温速度79℃/Hで昇温し、沸点で3時間反応を行った。反応後液温が40℃になるまで冷却し、窒素雰囲気下において純水を用いてデカンテーションにより洗浄後、濾過した。得られたケーキを110℃で真空下および大気中で乾燥した。両生成物をX線回折により調べたところ、チタン酸バリウムの単一相であることがわかった。電子顕微鏡下での観察でもチタン酸バリウム以外の粒子は特に観察されなかった。真空下で乾燥した粉末のC含有量は0.04重量%であり、大気中で乾燥した粉末のそれは0.07重量%であった。真空下で乾燥した粉末および大気中で乾燥した粉末のSO3含有量はともに0.08重量%であった。また、電子顕微鏡写真を用いてPSAにより重量分布で算出した平均粒径は0.19μmであった。該粉末のNa含有量は5ppmであった。該粉末のBaO/TiO2モル比は0.999であった。」 (5-5)「【0035】実施例 5.硫酸チタニル水溶液を加水分解して得られた含水酸化チタンを上澄み液の電気伝導度が1500μS/cmになるまで純水で洗浄した後、該スラリ-のpHが9.5になるまで水酸化ナトリウム水溶液を添加した。更に該スラリーに塩酸を滴下し、該スラリーのpHを7に調整した後、該スラリーの上澄み液の電気伝導度が290μS/cmになるまで純水を用いて洗浄した。この後該スラリーに塩酸を添加してスラリーのpHを1に調整してチタニアゾル分散液を得た。該チタニアゾル分散液に水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、該分散液のpHを6に調整した後上澄み液の電気伝導度が120μS/cmになるまで純水で洗浄した。得られた含水酸化チタンを110℃で乾燥してX線回折により調べたところアナターゼの回折パターンを示した。また、化学分析により調べた該乾燥含水酸化チタンのSO3含有率は0.28重量%であることが分かった。 【0036】以上のようにして得られた含水率93%の含水酸化チタン4571gをSUS製反応容器に移し、該反応容器中に窒素ガスを20分間流した後、Ba(OH)2・8H2O1236gとCa(OH)272.6gを加え、更に純水を加えてBaO+CaO0.25モル/リットル、(BaO+CaO)/TiO2モル比1.20のスラリーに調整した。窒素雰囲気中で該スラリーを沸点まで昇温速度79℃/Hで昇温し、沸点で3時間反応を行った。反応後液温が40℃になるまで冷却し、窒素雰囲気下において純水を用いてデカンテーションにより洗浄後、濾過した。得られたケーキを大気中において110℃で乾燥した。該生成物をX線回折により調べたところ、チタン酸バリウムのピーク位置より高角側にピークがシフトしていることが分かった。該粉末のC含有量は0.08重量%であり、SO3含有量は0.09重量%であった。また、平均粒径は0.17μmであった。蛍光X線により求めた該粉末の(BaO+CaO)/TiO2モル比は1.000であった。」 (6)甲6の記載事項 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲6(特開平10-172857号公報)には、「積層セラミックコンデンサ」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 (6-1)「【請求項1】複数の誘電体セラミック層と、 それぞれの端縁が前記誘電体セラミック層の両端面に露出するように前記誘電体セラミック層間に形成された複数の内部電極と、 露出した前記内部電極に電気的に接続されるように設けられた外部電極とを含む積層セラミックコンデンサにおいて、 前記誘電体セラミック層が、 不純物として含まれるアルカリ金属酸化物の含有量が0.02重量%以下のチタン酸バリウムと、 酸化スカンジウムまたは酸化イットリウムの中から選ばれる少なくとも1種類以上と、 酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケルの中から選ばれる少なくとも1種類以上とからなり、 次の組成式、 (1-α-β){BaO}m・TiO2+αM2O3+β(Mn1-x-yNixCoy)O (ただし、M2O3は、Sc2O3、Y2O3の中から選ばれる少なくとも1種類以上であり、α、β、m、x、yは、 0.0025≦α≦0.025 0.0025≦β≦0.05 β/α≦4 0≦x<1.0 0≦y<1.0 0≦x+y<1.0 1.000<m≦1.035) で表される主成分100モルに対して、 副成分として、酸化マグネシウムをMgOに換算して0.5~5.0モル添加含有し、 さらに前記主成分および前記酸化マグネシウムの合計を100重量部として、SiO2-TiO2-MO系(ただし、MOは、BaO、CaO、SrO、MgO、ZnO、MnOの中から選ばれる少なくとも1種類以上の酸化物)の酸化物ガラスを0.2~3.0重量部含有した材料によって構成され、前記内部電極はニッケルまたはニッケル合金によって構成されることを特徴とする積層セラミックコンデンサ。 【請求項2】前記SiO2-TiO2-MO系(ただし、MOは、BaO、CaO、SrO、MgO、ZnO、MnOの中から選ばれる少なくとも1種類以上の酸化物)の酸化物ガラスが、{SiO2、TiO2、MO}の三角図(ただし、単位はモル%)としたときに、 A(85、 1、14) B(35、51、14) C(30、20、50) D(39、 1、60) の4点を結ぶ4本の直線で囲まれた領域の内部または線上にあり、 上記成分を100重量部として、Al2O3およびZrO2のうち少なくとも1種類を合計で15重量部以下(ただし、ZrO2は5重量部以下)を添加含有することを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。 【請求項3】前記外部電極は、導電性金属粉末、またはガラスフリットを添加した導電性金属粉末の焼結層によって構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサ。 【請求項4】前記外部電極は、導電性金属粉末、またはガラスフリットを添加した導電性金属粉末の焼結層からなる第1層と、その上のメッキ層からなる第2層とからなることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサ。」 (6-2)「【0017】それゆえに、この発明の主たる目的は、誘電率が3000以上、絶縁抵抗を静電容量との積(CR積)で表した場合に、室温での絶縁抵抗が6000MΩ・μF以上と高く、静電容量の温度特性がJIS規格で規定するところのB特性およびEIA規格で規定するところのX7R特性を満足し、高温負荷、耐湿負荷等の耐候性能に優れた、低コストの小型大容量の積層セラミックコンデンサを提供することにある。 【0018】 【課題を解決するための手段】すなわち、第1の発明は、複数の誘電体セラミック層と、それぞれの端縁が前記誘電体セラミック層の両端面に露出するように前記誘電体セラミック層間に形成された複数の内部電極と、露出した前記内部電極に電気的に接続されるように設けられた外部電極とを含む積層セラミックコンデンサにおいて、前記誘電体セラミック層が、不純物として含まれるアルカリ金属酸化物の含有量が0.02重量%以下のチタン酸バリウムと、酸化スカンジウムまたは酸化イットリウムの中から選ばれる少なくとも1種類以上と、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケルの中から選ばれる少なくとも1種類以上とからなり、次の組成式、(1-α-β){BaO}m・TiO2+αM2O3+β(Mn1-x-yNixCoy)O(ただし、M2O3は、Sc2O3,Y2O3の中から選ばれる少なくとも1種類以上であり、α,β,m,x,yは、0.0025≦α≦0.025、0.0025≦β≦0.05、β/α≦4、0≦x<1.0、0≦y<1.0、0≦x+y<1.0、1.000<m≦1.035)で表される主成分100モルに対して、副成分として、酸化マグネシウムをMgOに換算して0.5~5.0モル添加含有し、さらに前記主成分および前記酸化マグネシウムの合計を100重量部として、SiO2-TiO2-MO系(ただし、MOは、BaO,CaO,SrO,MgO,ZnO,MnOの中から選ばれる少なくとも1種類以上の酸化物)の酸化物ガラスを0.2~3.0重量部含有した材料によって構成され、前記内部電極はニッケルまたはニッケル合金によって構成される積層セラミックコンデンサである。」 (6-3)「【0023】また、得られる誘電体セラミック層の結晶粒径が1μm以下と小さいため、1つの誘電体セラミック層中に存在する結晶粒の数を増やすことができ、積層セラミックコンデンサの誘電体セラミック層の厚みを薄くしても信頼性の低下を防ぐことができる。 【0024】また、誘電体セラミック層がチタン酸バリウムと、酸化スカンジウム、酸化イットリウムの中から選ばれる少なくとも1種類以上の希土類酸化物と、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケルの中から選ばれる少なくとも1種類の酸化物とにより構成される誘電体セラミック材料の主成分のうち、そのチタン酸バリウム中に不純物として存在するSrO、CaO等のアルカリ土類金属酸化物、Na2O、K2O等のアルカリ金属酸化物、その他Al2O3、SiO2等の酸化物の中で、特にNa2O、K2O等のアルカリ金属酸化物の含有量が電気的特性に大きく影響することを確認している。つまり、不純物として存在するアルカリ金属酸化物量が0.02重量%未満のチタン酸バリウムを用いることで、3000以上の誘電率が得られることを確認している。」 (6-4)「【0033】以下に、この発明を実施例に基づきより詳細に説明する。 (実施例1)まず、出発原料として種々の純度のTiCl4とBa(NO3)2とを準備して秤量した後、蓚酸により蓚酸チタニルバリウム(BaTiO(C2O4)・4H2O)として沈澱させ、沈澱物を得た。この沈澱物を1000℃以上の温度で加熱分解させて、表1の4種類のチタン酸バリウム(BaTiO3)を合成した。」 (6-5)「【0055】(実施例2)誘電体セラミック材料として、表1のAのチタン酸バリウムを用いて、98.0{BaO}1.010・TiO2+0.9Y2O3+0.1Sc2O3+1.0(Mn0.4Ni0.6)O(モル比)に対して、MgOが1.2モルになるように配合された原料を準備し、実施例1と同様の方法で1200℃~1600℃で加熱して作製した表4に示す平均粒径1μm以下のSiO2-TiO2-MO系の酸化物ガラスを添加して、実施例1と同様の方法で内部電極と電気的に接続された銀からなる外部電極を形成した積層セラミックコンデンサを作製した。なお、作製した積層セラミックコンデンサの外形寸法などは、実施例1と同様である。」 (6-6)「【0068】さらに、結晶粒径が1μm以下と小さいため、誘電体セラミック層を薄層化したときに、従来の積層セラミックコンデンサに比較して層中に存在する結晶粒の量を多くできる。このため、信頼性が高く、しかも小型で大容量の積層セラミックコンデンサを得ることができる。」 (6-7)表1には、4種類のチタン酸バリウム(BaTiO3)A~Dであり、それぞれ、不純物含有量(重量%)として、アルカリ金属酸化物が、0.003、0.020、0.012、0.062、平均粒径(μm)が、0.60、0.56、0.72、0.58のものが、記載されている。 (7)甲7の記載事項 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第7号証(特開平9-171938号公報)には、「積層セラミックコンデンサ」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 (7-1)「【請求項1】複数の誘電体セラミック層、 それぞれの端縁が前記誘電体セラミック層の両端面に露出するように前記誘電体セラミック層間に形成された複数の内部電極、および露出した前記内部電極に電気的に接続されるように設けられた外部電極を含む積層セラミックコンデンサにおいて、 前記誘電体セラミック層が、 不純物として含まれるアルカリ金属酸化物の含有量が0.02重量%以下のチタン酸バリウムと、 酸化イットリウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化イッテルビウム、酸化マンガン、酸化コバルトおよび酸化ニッケルとからなり、 次の組成式、 (1-α-β){BaO}m・TiO2+αRe2O3+β(Mn1-x-yNixCoy)O (ただし、Re2O3は、Y2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3、Yb2O3の中から選ばれる一種類以上であり、 α、β、m、x、yは、 0.0025≦α≦0.025 0.0025≦β≦0.05 β/α≦4 0≦x<1.0 0≦y<1.0 0≦x+y<1.0 1.000<m≦1.035) で表される主成分100モルに対して、 副成分として、酸化マグネシウムをMgOに換算して0.1~3.0モル添加含有し、 さらに、上記成分を100重量部として、Li2O-B2O3-(Si、Ti)O2系の酸化物を0.2~3.0重量部含有した材料によって構成され、前記内部電極はニッケルまたはニッケル合金によって構成されていることを特徴とする、積層セラミックコンデンサ。 【請求項2】前記Li2O-B2O3-(Si、Ti)O2系の酸化物が、 {Li2O、B2O3、(SiwTi1-w)O2}(ただし、0.3≦w<1.0)の三角図としたときに(モル%で示す)、 A(0、20、80) B(19、1、80) C(49、1、50) D(45、50、5) E(20、75、5) F(0、80、20) の6点を結ぶ6本の直線で囲まれた組成範囲にあり、 上記成分を100重量部として、Al2O3およびZrO2のうち少なくとも一種類を合計で20重量部以下(ただし、ZrO2は10重量部以下)を添加含有することを特徴とする、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。 【請求項3】外部電極は、導電性金属粉末またはガラスフリットを添加した導電性金属粉末の焼結層によって構成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の積層セラミックコンデンサ。 【請求項4】外部電極は、導電性金属粉末またはガラスフリットを添加した導電性金属粉末の焼結層からなる第1層と、その上のメッキ層からなる第2層とからなる、請求項1または請求項2に記載の積層セラミックコンデンサ。」 (7-2)「【0003】したがって、内部電極の材料としては、次のような条件を満たす必要がある。 (a)誘電体磁器と内部電極とが同時に焼成されるので、誘電体磁器が焼成される温度以上の融点を有すること。 (b)酸化性の高温雰囲気中においても酸化されず、しかも誘電体と反応しないこと。 このような条件を満足させる電極としては、白金、金、パラジウムあるいは銀-パラジウム合金などのような貴金属が用いられてきた。しかしながら、これらの電極材料は優れた特性を有する反面、高価であった。そのため、積層セラミックコンデンサに占める電極材料費の割合は30~70%にも達し、製造コストを上昇させる最大の要因となっていた。 【0004】貴金属以外に高融点をもつものとしてNi、Fe、Co、W、Mo等の卑金属があるが、これらの卑金属は高温の酸化性雰囲気中では容易に酸化されてしまい、電極としての役目を果たさなくなってしまう。そのため、これらの卑金属を積層セラミックコンデンサの内部電極として使用するためには、誘電体磁器とともに中性または還元性雰囲気中で焼成する必要がある。しかしながら、従来の誘電体磁器材料では、このような中性または還元性雰囲気で焼成すると著しく還元してしまい、半導体化してしまうという欠点があった。」 (7-3)「【0013】ところで、小型大容量の積層セラミックコンデンサにおいては、自動表面実装に対応するため、外部電極として導電性金属粉末の焼き付け電極の上に半田などのメッキ膜が形成される。(中略) 【0014】それゆえに、この発明の主たる目的は、誘電率が3000以上、絶縁抵抗が静電容量との積(CR積)で表した場合に2KV/mmでの室温および125℃での絶縁抵抗がそれぞれ6、000MΩ・μF、2、000MΩ・μF以上、20KV/mmでの室温および125℃での絶縁抵抗がそれぞれ2、000MΩ・μF、500MΩ・μF以上と高く、静電容量の温度特性がJIS規格で規定するB特性およびEIA規格で規定するX7R特性を満足し、メッキの有無に関係なく信頼性が高く、低コストの小型大容量の積層セラミックコンデンサを提供することである。」 (7-4)「【0022】また、この誘電体磁器組成物を用いた積層セラミックコンデンサは、誘電率が3、000以上あり、しかもこのように高誘電率であるにもかかわらず、誘電率の温度変化が小さい。この積層セラミックコンデンサは、高電界での絶縁抵抗も高く、高温での寿命時間が長い。したがって、誘電体層を薄層化しても、定格電圧を下げる必要がない。さらに、結晶粒径が1μm以下と小さいため、誘電体層を薄層化しても、従来の積層セラミックコンデンサのように層中に存在する結晶粒の量が少なくならない。このため、信頼性が高く、しかも小型で大容量の積層セラミックコンデンサを得る事ができる。また、メッキによる電気的特性の劣化がないため、自動表面実装に対応可能となる。」 (7-5)「【0028】 【実施例】 (実施例1)まず、出発原料として種々の純度のTiCl4とBa(NO3)2とを準備して秤量した後、蓚酸により蓚酸チタニルバリウム(BaTiO(C2O4)・4H2O)として沈澱させ、沈澱物を得た。この沈澱物を1000℃以上の温度で加熱分解させて、表1に示す4種類のチタン酸バリウム(BaTiO3)を合成した。また、0.25Li2O-0.10B2O3-0.07TiO2・0.58SiO2(モル比)の組成割合になるように、各成分の酸化物、炭酸塩および水酸化物を秤量し、混合粉砕して粉末を得た。この粉末を白金るつぼ中において、1300℃まで加熱した後、急冷し、粉砕することによって、平均粒径が1μm以下の酸化物粉末を得た。」 (7-6)「【0061】表4、表5から明らかなように、この発明のLi2O-B2O3-(Si、Ti)O2系の酸化物を添加含有した誘電体セラミック層から構成される積層コンデンサは誘電率εが3、000以上と高く、誘電正接tanδは2.5%以下で、温度に対する静電容量の変化率が、-25℃~85℃での範囲でJIS規格に規定するB特性規格を満足し、-55℃と125℃での範囲内でEIA規格に規定するX7R特性規格を満足する。しかも、メッキを施しても、電気的特性が劣化しない。 【0062】これに対して、この発明のLi2O-B2O3-(Si、Ti)O2からなる酸化物について、{Li2O、B2O3、(SiwTi1-w)O2}(ただし、0.3≦w<1.0)の図4に示す三角図としたときに、Li2Oが0モル%、B2O3が20モル%、(Si、Ti)O2が80モル%の組成を示す点Aと、Li2Oが19モル%、B2O3が1モル%、(Si、Ti)O2が80モル%の組成を示す点Bと、Li2Oが49モル%、B2O3が1モル%、(Si、Ti)O2が50モル%の組成を示す点Cと、Li2Oが45モル%、B2O3が50モル%、(Si、Ti)O2が5モル%の組成を示す点Dと、Li2Oが20モル%、B2O3が75モル%、(Si、Ti)O2が5モル%の組成を示す点Eと、Li2Oが0モル%、B2O3が80モル%、(Si、Ti)O2が20モル%の組成を示す点Fとを結ぶ6本の直線で囲まれた組成範囲外にある、試料番号115~118については、焼結不足となるか、焼結してもメッキによって極端に絶縁抵抗が低下し、好ましくない。 【0063】試料番号119、120のように、上記6角形の辺上および内部の範囲にあっても、Si量wが0.3未満の場合は、焼結不足となり、Si量wが1.0の場合には、メッキ後の20kV/mmでの絶縁抵抗が極端に低くなり、好ましくない。 【0064】Li2O-B2O3-(Si、Ti)O2からなる酸化物、Al2O3、ZrO2を含有させることによって、20kV/mmにおける25℃、125℃の絶縁抵抗が3、000Ω・μF、1000Ω・μFの積層コンデンサが得られるものの、試料番号121、122のように、Al2O3添加量として20重量部およびZrO2添加量として10重量部を超えると、焼結性が極端に低下し、好ましくない。」 (7-7)「表1」には、4種類のチタン酸バリウム(BaTiO3)A~Dであり、それぞれ、不純物含有量(重量%)として、アルカリ金属酸化物が、0.003、0.020、0.012、0.062であり、平均粒径(μm)が、0.60、0.56、0.72、0.58であるものが、記載されている。 (8)甲8の記載事項 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲8証(特開平10-172856号公報)には、「積層セラミックコンデンサ」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 (8-1)「【請求項1】複数の誘電体セラミック層と、 それぞれの端縁が前記誘電体セラミック層の両端面に露出するように前記誘電体セラミック層間に形成された複数の内部電極と、 露出した前記内部電極に電気的に接続されるように設けられた外部電極とを含む積層セラミックコンデンサにおいて、 前記誘電体セラミック層が、 不純物として含まれるアルカリ金属酸化物の含有量が0.02重量%以下のチタン酸バリウムと、 酸化イットリウム、酸化テルビニウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化イッテルビウムの中から選ばれる少なくとも1種類以上と、 酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケルの中から選ばれる少なくとも1種類以上とからなり、 次の組成式、 (1-α-β){BaO}m・TiO2+αRe2O3+β(Mn1-x-yNixCoy)O (ただし、Re2O3は、Y2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3、Yb2O3の中から選ばれる少なくとも1種類以上であり、α、β、m、x、yは、 0.0025≦α≦0.025 0.0025≦β≦0.05 β/α≦4 0≦x<1.0 0≦y<1.0 0≦x+y<1.0 1.000<m≦1.035) で表される主成分100モルに対して、 副成分として、酸化マグネシウムをMgOに換算して0.1~3.0モル添加含有し、 さらに前記主成分および前記酸化マグネシウムの合計を100重量部として、Al2O3-MO-B2O3系(ただし、MOは、BaO、CaO、SrO、MgO、ZnO、MnOの中から選ばれる少なくとも1種類以上の酸化物)の酸化物ガラスを0.2~3.0重量部含有した材料によって構成され、前記内部電極はニッケルまたはニッケル合金によって構成されることを特徴とする積層セラミックコンデンサ。 【請求項2】前記Al2O3-MO-B2O3系(ただし、MOは、BaO、CaO、SrO、MgO、ZnO、MnOの中から選ばれる少なくとも1種類以上の酸化物)の酸化物ガラスが、{Al2O3、MO、B2O3}の三角図(ただし、単位はモル%)としたときに、 A( 1、14、85) B(20、10、70) C(30、20、50) D(40、50、10) E(20、70、10) F( 1、39、60) の6点を結ぶ6本の直線で囲まれた領域の内部または線上にあることを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。 【請求項3】前記外部電極は、導電性金属粉末、またはガラスフリットを添加した導電性金属粉末の焼結層によって構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサ。 【請求項4】前記外部電極は、導電性金属粉末、またはガラスフリットを添加した導電性金属粉末の焼結層からなる第1層と、その上のメッキ層からなる第2層とからなることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサ。」 (8-2)「【0003】したがって、内部電極の材料としては、次のような条件を満たす必要がある。 (a)誘電体セラミックと内部電極とが同時に焼成されるので、誘電体セラミックが焼成される温度以上の融点を有すること。 (b)酸化性の高温雰囲気中においても酸化されず、しかも誘電体セラミックと反応しないこと。 このような条件を満足させる電極としては、白金、金、パラジウムあるいは銀-パラジウム合金などのような貴金属が用いられてきた。しかしながら、これらの電極材料は優れた特性を有する反面、高価であった。そのため、積層セラミックコンデンサに占める電極材料費の割合が高くなり、製造コストを上昇させる最大の要因となっていた。 【0004】貴金属以外に高融点をもつものとしてNi、Fe、Co、W、Mo等の卑金属があるが、これらの卑金属は高温の酸化性雰囲気中では容易に酸化されてしまい、電極としての役目を果たさなくなってしまう。そのため、これらの卑金属を積層セラミックコンデンサの内部電極として使用するためには、誘電体セラミックとともに中性または還元性雰囲気中で焼成する必要がある。しかしながら、従来の誘電体セラミック材料では、このような中性または還元性雰囲気で焼成すると著しく還元してしまい、半導体化してしまうという欠点があった。」 (8-3)「【0007】このような誘電体セラミック材料を使用することによって、還元性雰囲気で焼成しても半導体化しない誘電体セラミックを得ることができ、内部電極としてニッケル等の卑金属を使用した積層セラミックコンデンサの製造が可能となった。」 (8-4)「【0016】ところで、小型大容量の積層セラミックコンデンサにおいては、表面実装に対応するため、外部電極として導電性金属粉末の焼き付け電極の上にはんだなどのメッキ膜が形成される。メッキ膜の形成方法としては、電解メッキ法が一般的である。通常、導電性金属粉末の焼き付け電極は、微細な空隙が生じる。その焼き付け電極の上にメッキ被膜を形成する際、メッキ液中に積層セラミックコンデンサを浸漬すると、焼き付け電極の空隙からメッキ液が浸入し、内部電極と誘電体セラミック層の界面にまでメッキ液が達して、信頼性の低下を招くという問題がある。 【0017】それゆえに、この発明の主たる目的は、誘電率が3000以上、絶縁抵抗を静電容量との積(CR積)で表した場合に、2kV/mmでの室温および125℃での絶縁抵抗がそれぞれ6000MΩ・μF、2000MΩ・μF以上、20kV/mmでの室温および125℃での絶縁抵抗がそれぞれ2000MΩ・μF、500MΩ・μF以上と高く、静電容量の温度特性がJIS規格で規定するところのB特性およびEIA規格で規定するところのX7R特性を満足し、外部電極にメッキ層を形成しても信頼性の高い、低コストの小型大容量の積層セラミックコンデンサを提供することにある。」 (8-5)「【0023】また、得られる誘電体セラミック層の結晶粒径が1μm以下と小さいため、1つの誘電体セラミック層中に存在する結晶粒の数を増やすことができ、積層セラミックコンデンサの誘電体セラミック層の厚みを薄くしても信頼性の低下を防ぐことができる。」 (8-6)「【0033】以下に、この発明を実施例に基づきより詳細に説明する。 (実施例1)まず、出発原料として種々の純度のTiCl4とBa(NO3)2とを準備して秤量した後、蓚酸により蓚酸チタニルバリウム(BaTiO(C2O4)・4H2O)として沈澱させ、沈澱物を得た。この沈澱物を1000℃以上の温度で加熱分解させて、表1の4種類のチタン酸バリウム(BaTiO3)を合成した。」 (8-7)「【0061】表4、表5から明かなように、この発明のAl2O3-MO-B2O3系の酸化物ガラスを添加含有した誘電体セラミック層から構成される積層セラミックコンデンサは誘電率が3000以上と高く、誘電損失が2.5%以下で、温度に対する静電容量の変化率が、-25℃~85℃での範囲でJIS規格に規定されているB特性規格および、-55℃と125℃での範囲内でEIA規格に規定されているX7R特性規格を満足する。しかも、メッキを施しても、電気的特性が劣化しない。 【0062】ここで、この発明の積層セラミックコンデンサに用いる酸化物ガラスの組成限定理由について説明する。Al2O3-MO-B2O3系(ただし、MOは、BaO、CaO、SrO、MgO、ZnO、MnOの中から選ばれる少なくとも1種類以上の酸化物)の酸化物ガラスは、図4に示す{Al2O3、MO、B2O3}の三角図としたときに、Al2O3が1モル%、MOが14モル%、B2O3が85モル%の組成を示す点Aと、Al2O3が20モル%、MOが10モル%、B2O3が70モル%の組成を示す点Bと、Al2O3が30モル%、MOが20モル%、B2O3が50モル%の組成を示す点Cと、Al2O3が40モル%、MOが50モル%、B2O3が10モル%の組成を示す点Dと、Al2O3が20モル%、MOが70モル%、B2O3が10モル%の組成を示す点Eと、Al2O3が1モル%、MOが39モル%、B2O3が60モル%の組成を示す点Fとの6点を結ぶ6本の直線で囲まれた領域の内部または線上の範囲外にある試料番号36~41については、焼結不足となるか、焼結してもメッキによって極端に絶縁抵抗が低下するからである。」 (8-8)「表1」には、4種類のチタン酸バリウム(BaTiO3)A~Dであり、それぞれ、不純物含有量(重量%)として、アルカリ金属酸化物が、0.003、0.020、0.012、0.062、平均粒径(μm)が、0.60、0.56、0.72、0.58のものが、記載されている。 (9)甲第9号証の記載事項 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲9(特開平3-226909号公報)には、「高誘電率系磁器組成物」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 (9-1)「〔従来の技術〕 高誘電率系磁器組成物は、積層セラミックコンデンサ等の材料として使用される。積層セラミックコンデンサは、対向内部電極が形成された高誘電率系磁器組成物の生シートを所定容量になるように複数枚積層した後、一体的に焼成して構成されている。」(1ページ右下欄3行~9行) (9-2)「〔課題を解決するための手段〕 上述の目的を達成するために行った具体的な手段は、複合酸化物(Ba1-XCaX)(Ti1-YZrY)O3と表した時、モル分率X、Yがそれぞれ、0≦X<0.1、0.1<Y<0.16であり、さらに、(Ba1-XCaX)(Ti1-YZrY)O3の100重量部に対して、ネオジウム化合物をNd2O3換算で0.8~1.8重量%、酸化亜鉛をZnO換算で0.8~2.0重量%、マンガン化合物をMnO2換算で0.1~0.5重量%の範囲で含有して成る高誘電率系磁器組成物である。 さらに好ましくは、複合酸化物(Ba1-XCaX)(Ti1-YZrY)O3の平均粒径が1μm未満とした高誘電率系磁器組成物である。」(2ページ右上欄11行~左下欄4行) (9-3)「なお、複合酸化物チタンジルコン酸バリウムカルシウム(Ba1-XCaX )(Ti1-YZrY)O3の平均粒径は1μm未満が好ましい。」(3ページ左上欄7行~9行) (9-4)「チタンジルコン酸バリウムカルシウム(Ba1-XCaX)(Ti1-YZrY)O3(0≦X<0.1、0.1<Y<0.16)で表される複合酸化物を主成分として、この複合酸化物100重量部に対して、ネオジウム化合物としてNd2O3、ZnO及びマンガン化合物としてMnO2の各粉末を表1に示す分率となるように秤量し、ボールミルにて20時間湿式粉砕した後、有機系粘結剤を添加し、しかる後攪拌、ドクターブレード法で厚さ30μmのテープ状に成型した。このテープを130mm×100mmに裁断し、40枚重ね、80℃でホットプレスで積層体を作成する。」(3ページ左上欄17行~右上欄8行) (9-5)「つぎに、試料番号25~30において、高誘電率系磁器の主成分となるチタンジルコン酸バリウムBa(Ti1-YZrY)O3の平均粒径を検討した。即ち、平均粒径を0.1~1.0μmに夫々変化させた。このときAサイトのモル分率Xを0とした。また、Bサイトのモル分率Yを0.13とし、Nd2O3、ZnO及びMnO2の添加量を夫々1.5、1.5及び0.3重量%として固定した。 試料番号25~29(平均粒径が0.1~0.9μm)では、比誘電率εが12000~17500となり、また焼成温度も1080~1190℃となる。これにより、高い比誘電率で且つ低温焼成可能な高誘電率系磁器組成物が得られる。 これに対して、試料番号30(平均粒径が1.0μm)では、比誘電率εが17000と良好な結果が得られるものの、焼成温度が1200℃を越え、1250℃となってしまう。即ち、平均粒径が大きくなるにつれて、焼成温度が高くなるとともに、比誘電率εが平均粒径0.9μm(試料番号28)をピークに減少する。 従って、本発明においてはチタンジルコン酸バリウムBa(Ti1-YZrY)O3の平均粒径を0.9μm以下とすることが、低温焼成の高誘電率系磁器組成物として重要になる。」(6ページ左上欄13行~右上欄16行) 3.無効理由2-1(甲1を主引用例とするもの)についての検討 (1)甲1に記載された発明 上記2.(1)の記載を総合すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「誘電体シートを複数枚積層するとともに、各シートの内部電極を交互に並列に一対の外部接続用電極に接続して形成されている、積層型磁器コンデンサにおいて、 前記誘電体シートが、 金属元素のモル比による組成式を 100(Ba1-xCax)1+kTiO3+aRE2O3+bMnO+cMgO+dLi2O+eSiO2(REは、Y、Gd、Dy、Ho、Er及びYbのうち少なくとも1種)と表した時、式中のa、b、c、d、e、x及びkが 0.25≦a≦2.50 0.05≦b≦0.50 0.50≦c≦8.00 1.50≦d≦4.50 0.75≦e<2.00 0   <x≦0.025 0   ≦k<a/50 を満足する非還元性誘電体磁器組成物からなり、 前記内部電極はニッケルからなることを特徴とする、積層磁器コンデンサ。」 (2)本件訂正発明1と甲1発明との対比 (2-1)本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「誘電体シート」及び「非還元性誘電体磁器組成物」、「各シートの内部電極」、「各シートの内部電極を交互に並列に」接続した「一対の外部接続用電極」、並びに「積層型磁器コンデンサ」は、それぞれ本件訂正発明1の「誘電体セラミック層」、「該誘電体セラミック層間に形成された内部電極」、「該内部電極に電気的に接続された外部電極」、並びに「積層セラミックコンデンサ」に相当するから、甲1発明の「誘電体シートを複数枚積層するとともに、各シートの内部電極を交互に並列に一対の外部接続用電極に接続して形成されている、積層型磁器コンデンサ」は、本件訂正発明1の「複数の誘電体セラミック層と、該誘電体セラミック層間に形成された内部電極と、該内部電極に電気的に接続された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサ」に相当する。 (2-2)甲1発明の「(Ba1-xCax)1+kTiO3」「0<x≦0.025 0≦k<a/50」と、本件訂正発明1の「{Ba1-xCaxO}mTiO2」「1.000<m≦1.035 0.005<x≦0.22」とを対比する。 まず甲1発明の「x」についてみると、甲1発明の「(Ba1-xCax)1+kTiO3」における「x」は、本件訂正明1の「{Ba1-xCaxO}mTiO2」の「x」に相当し、それらの数値範囲は、甲1発明の「0<x≦0.025」であるのに対して、本件訂正発明1の「0.005<x≦0.22」であるから、数値範囲が重なっていることに加えて、甲1の表7には「試料番号36」として、x=0.010のものが記載されているから、甲1発明と本件訂正発明1とは、「{Ba1-xCaxO}mTiO2」における「x」が、「0.005<x≦0.22」である点で一致する。 次に甲1発明の「k」についてみると、甲1発明の「1+k」は、Ba及びCaとTiとの比率を規定するものである点で、本件訂正発明1の「m」と一致しており、その数値範囲も、甲1発明の「1+k」が1≦1+k<1.05であるのに対して、本件訂正発明1の「m」は1.000<m≦1.035であって、数値範囲が重なっていることに加え、甲1の表7には「試料番号36」として、k=0.015(1+k=1.015)のものが記載されているから、甲1発明と本件訂正発明1とは、Ba及びCaとTiとの比率とを規定する観点に限ってみれば、「{Ba1-xCaxO}mTiO2」「1.000<m≦1.035」である点で一致する。 一方、「O」についてみると、本件訂正発明1の「{Ba1-xCaxO}mTiO2」における「O」の量を表す数(以下「Oの数」)という。)は、「m+2」(1.000<m≦1.035)であるのに対して、甲1発明の「(Ba1-xCax)1+kTiO3」におけるOの数は3であって、両者は異なる。 以上を総合すると、甲1発明と本件訂正発明1とは、「{Ba1-xCaxO}mTiO2」(0.005<x≦0.22(ただし、mは特定されない。))を主成分として含むものである点で一致する。 (2-3)甲1発明の金属元素のモル比による組成式のうちの「RE2O3」「REは、Y、Gd、Dy、Ho、Er及びYbのうち少なくとも1種」は、本件訂正発明1の「Re2O3」「但し、Re2O3は、Y2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3及びYb2O3の中から選ばれる少なくとも1種以上であ」ることに、相当する。 また、甲1発明の金属元素のモル比による組成式のうちの「100(Ba1-xCax)1+kTiO3+aRE2O3+bMnO+cMgO」において、「a」、「b」、「c」は、いずれも、「(Ba1-xCax)1+kTiO3」の100モルに対するモル比であるから、「(Ba1-xCax)1+kTiO3」の1モルに対するモル比は、それぞれ、「a/100」、「b/100」、「c/100」となる。 そうすると、甲1発明の金属元素のモル比による組成式のうちの「100(Ba1-xCax)1+kTiO3+aRE2O3+bMnO+cMgO」における「a」、「b」、「c」について、「a/100」、「c/100」、「b/100」が、それぞれ本件訂正発明1の「{Ba1-xCaxO}mTiO2+αRe2O3+βMgO+γMnO」の「α」、「β」、「γ」に相当する。 そして、甲1発明においては、「100(Ba1-xCax)1+kTiO3+aRE2O3+bMnO+cMgO」における式中のa、b、c、が、 「0.25≦a≦2.50 0.05≦b≦0.50 0.50≦c≦8.00」 であるから、「a/100」、「b/100」、「c/100」については、 0.0025≦a/100≦0.025 0.0005≦b/100≦0.005 0.0050≦c/100≦0.080 となることが明らかである。 すると、甲1発明から導出される上記の 0.0025≦a/100≦0.025 0.0050≦c/100≦0.080 0.0005≦b/100≦0.005 は、 本件訂正発明1の 「0.001≦α≦0.10 0.001≦β≦0.12 0.001<γ≦0.12」 と、数値範囲が重なっていることに加え、甲1の表7には「試料番号36」として、a/100=0.010,c/100=0.020,b/100=0.001」のものが記載されていることを勘案すると、甲1発明の金属元素のモル比による組成式「100(Ba1-xCax)1+kTiO3+aRE2O3+bMnO+cMgO」「式中のa、b、c」が、 「0.25≦a≦2.50 0.05≦b≦0.50 0.50≦c≦8.00」 であることは、本件訂正発明1の組成式「{Ba1-xCaxO}mTiO2+αRe2O3+βMgO+γMnO」の「α、β及びγはモル比を表わし 0.001≦α≦0.10 0.001≦β≦0.12 0.001<γ≦0.12」であることに相当する。 (2-4)甲1発明の金属元素のモル比による組成式の「100(Ba1-xCax)1+kTiO3+aRE2O3+bMnO+cMgO+dLi2O+eSiO2」のうちの「Li2O」と「SiO2」を併せたものは、本件訂正発明1の「副成分」に相当する。 そして、甲1発明の「eSiO2」の係数「e」は、「0.75≦e<2.00」であり、上記(2-3)と同様に、「e」は、「(Ba1-xCax)1+kTiO3」の100モルに対するモル比であるから、「(Ba1-xCax)1+kTiO3」の1モルに対するモル比は、「e/100」であり、「0.0075≦e/100<0.020」となり、主成分100重量部に対するSiO2の量は、0.2~0.5重量部と換算できる。 すると、甲1発明の金属元素のモル比による組成式の「100(Ba1-xCax)1+kTiO3+aRE2O3+bMnO+cMgO+dLi2O+eSiO2」のうちの「eSiO2」について、主成分100重量部に対する量は、0.2~0.5であり、本件訂正発明1の「主成分100重量部に対して、副成分をSiO2としたときに、該副成分を0.2~5.0重量部含有して」いることと、数値範囲が重なっている。 したがって、甲1発明の金属元素のモル比による組成式の「100(Ba1-xCax)1+kTiO3+aRE2O3+bMnO+cMgO+dLi2O+eSiO2」のうちの「dLi2O+eSiO2」について、「1.50≦d≦4.50」、「0.75≦e<2.00」であることは、本件訂正発明1の「主成分100重量部に対して、」「SiO2」を「0.2~5.0重量部含有して」いることに相当する。 (2-5)そうすると、本件訂正発明1と甲1発明との一致点と相違点は、次のとおりとなる。 《一致点》 「複数の誘電体セラミック層と、該誘電体セラミック層間に形成された内部電極と、該内部電極に電気的に接続された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサにおいて、 前記誘電体セラミック層が、次の組成式、 {Ba1-xCaxO}mTiO2+αRe2O3+βMgO+γMnO (但し、Re2O3は、Y2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3及びYb2O3の中から選ばれる少なくとも1種以上であり、α、β及びγはモル比を表わし 0.001≦α≦0.10 0.001≦β≦0.12 0.001<γ≦0.12 0.005<x≦0.22 の範囲内にある)で表わされた主成分100重量部に対して、SiO2を0.2~5.0重量部含有しており、 前記内部電極はニッケルまたはニッケル合金からなることを特徴とする、積層セラミックコンデンサ。」 《相違点》 《相違点1》 本件訂正発明1は、「1.000<m≦1.035」であるのに対して、甲1発明は、そのような構成を備えていない(より詳しくは、Ba及びCaとTiとの比率を規定する観点に限れば、本件訂正発明1と甲1発明は共に「1.000<m≦1.035」である点で一致するが、「O」の数値という観点で見れば甲1発明は「1.000<m≦1.035」となっていない)点。 《相違点2》 本件訂正発明1は、「該誘電体セラミック層に用いる{Ba1-xCaxO}nTiO2(ただし、0.005<x≦0.22、0.990≦n≦1.035)原料中のアルカリ金属酸化物の含有量が0.02重量%以下である」のに対して、甲1発明は、チタン酸バリウムカルシウム原料中のアルカリ金属酸化物の含有量が不明である点。 《相違点3》 「副成分」が、本件訂正発明1では「SiO2」であるのに対して、甲1発明では「Li2O」及び「SiO2」である点。 (3)相違点についての当審の判断 (3-1)相違点1について 本件訂正発明1の組成式「{Ba1-xCaxO}mTiO2」において、「O」の数値は、「m+2」(1.000<m≦1.035)であるから、3を超えている。 しかしながら、mが限りなく1.000に近いものも本件訂正発明1に含まれること、換言すれば、「O」の数値が限りなく3に近いものも本件訂正発明1に含まれることが明らかである。 すると、甲1発明の「(Ba1-xCax)1+kTiO3」における「O」の数値は3であるから、本件訂正発明1と甲1発明とが実質的に相違しないことは明らかである。 したがって、相違点1は、実質的なものではない。 (3-2)相違点2について (3-2-1)まず、本件訂正発明1における「{Ba1-xCaxO}nTiO2(ただし、0.005<x≦0.22、0.990≦n≦1.035)」という原料について検討する。 甲1の段落【0051】の「出発原料として純度99%以上のBaCO3粉末、TiO2粉末、CaCO3粉末を用い混合後1000℃にて固相反応させ(Ba、Ca)TiO3を合成し、粒径1.5μm以下に微粉砕した。」という記載から、甲1には、「{Ba1-xCaxO}nTiO2」において、n=1とすることが記載されていることに加え、甲1発明における「0<x≦0.025」という数値範囲を勘案すれば、甲1発明において、本件訂正発明1のように、「{Ba1-xCaxO}nTiO2(ただし、0.005<x≦0.22、0.990≦n≦1.035)」という原料を用いることは、当業者が容易になし得たことである。 (3-2-2)次に、本件訂正発明1における「原料中のアルカリ金属酸化物の含有量が0.02重量%以下である」という点について検討する。 甲3には、請求項1に、「{(Ba1-xCax)O}m(Ti1-o-pZroNbp)O2+p/2」で表される「ペロブスカイト型酸化物粉末」において、「不純物として含まれるアルカリ金属酸化物の含有量が0.03重量%以下」であるものが、記載されている。 また、甲3には、表1において、ペロブスカイト酸化物の種類C、D、E、Fとして、いずれも、ペロブスカイト酸化物の組成式が、(Ba0.95Ca0.05)TiO3であり、不純物量(重量%)が、それぞれ、Na量0.009、0.03、0.01、0.1、Cl量0.015、0.008、0.03、0.01であるペロブスカイト型の酸化物粉末が記載されている。 さらに、甲第3号証の段落【0019】には、「NiまたはNi合金からなる内部電極を有する積層セラミックコンデンサの誘電体磁器焼結体の原料粉末として、水熱合成法で合成されるペロブスカイト型の酸化物粉末を用いる場合に、不純物として存在するNa2O、K2Oなどのアルカリ金属酸化物およびClなどのハロゲンの含有量が、誘電体磁器の高温負荷、湿中負荷時の絶縁抵抗の寿命に大きく影響することを見いだした。」ことが、記載されている。 (3-2-3)また、甲4には、表1において、(Ba0.85Ca0.15O)1.01TiO2セラミックス不純物の内容として、Na2Oが0.002重量%のものが、記載されている。 さらに、甲5には、段落【0028】に、「チタン酸バリウムの単一相であ」る「粉末のNa含有量は5ppmであ」ることが記載されており、また、段落【0035】及び【0036】には、段落【0028】の、「チタン酸バリウム」と同様な製造方法で製造された「(BaO+CaO)/TiO2」「粉末」が、記載されている。 (3-2-4)すると、これら甲3~5の記載に接した当業者であれば、甲1発明において、性能を担保するために、原料中のアルカリ金属酸化物の含有量をできるだけ少なくしようとすること、具体的には、例えば甲4の「Na2O」の量のように、0.002重量%程度まで少なくしようとすることは、当然に試みる事項である。 そして、本件訂正明細書を精査しても、アルカリ金属酸化物の上限値を「0.02重量%」とすることの臨界的意義は認められない。 したがって、甲1発明において、本件訂正発明1のように、「原料中のアルカリ金属酸化物の含有量が0.02重量%以下である」という構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。 以上のとおりであるから、相違点2は当業者が容易になし得た範囲に含まれる程度のものである。 (3-3)相違点3について (3-3-1)甲1には、段落【0015】に「また、本発明の非還元性誘電体磁器組成物は、金属元素のモル比による組成式を、100BaTiO3+aRE2O3+bMnO+cMgO+dLi2O+eSiO2(REは、Y、Gd、Dy、Ho、Er及びYbのうち少なくとも1種)と表した時、式中のa、b、c、d及びeが、0.25≦a≦2.50、0.05≦b≦0.50、0.50≦c≦8.00、1.50≦d≦4.50、0.75≦e<2.00を満足するものである。」ことが記載されており、段落【0020】に「また、BaTiO3100モルに対するLi2Oのモル比dを、1.50≦d≦4.50としたのは、dが1.50よりも小さい場合には比誘電率の温度特性が悪くなり、dが4.50よりも大きい場合には比誘電率が低くなるからである。dは1.50≦d≦2.50であることが望ましい。」ことが記載されている。 また、段落【0023】及び【0024】には、「さらに、本発明の非還元性誘電体磁器組成物は、金属元素のモル比による組成式を、100(Ba1-xCax)1+kTiO3+aRE2O3+bMnO+cMgO+dLi2O+eSiO2(REは、Y、Gd、Dy、Ho、Er及びYbのうち少なくとも1種)と表した時、式中のa、b、c、d、e、x及びkが、0.25≦a≦2.50、0.05≦b≦0.50、0.50≦c≦8.00、1.50≦d≦4.50、0.75≦e<2.00、0<x≦0.025、0≦k<a/50を満足するものである。」「ここで、モル比による組成式を、100(Ba1-xCax)1+kTiO3+aRE2O3+bMnO+cMgO+dLi2O+eSiO2と表した時、BaTiO3100モルに対するモル比a、b、c、d、e、x及びkを上記のように限定したのは、上記理由と同様である。」ことが、記載されている。 また、段落【0049】には、「Li2Oの量dが1.50モル部を下回るNo32では温度特性が悪く、4.5モル部を上回るNo24では比誘電率が低い。」ことが、記載されている。 (3-3-2)このように、甲1には、Li2Oが、所定の量よりも少ないと、比誘電率の温度特性が悪くなってしまうことが複数箇所に記載されており、甲1においてLi2Oが必須成分として認識されていることは明らかである。 したがって、たとえ、チタン酸バリウムカルシウムを含むセラミックコンデンサにおける添加剤として、SiO2及びLi2Oが共に当業者において周知であり、かつ、チタン酸バリウムカルシウムを含むセラミックコンデンサにおいて、Li2Oを含まないものも周知であるとしても、Li2Oが所定の量よりも少ないと特性が悪化することが明示されている甲1に記載された甲1発明において、Li2Oをあえて取り除くことには、明らかな阻害要因が存在するものと認められる。 したがって、甲2~8に記載された技術事項及び周知技術を勘案したとしても、甲1発明において、「Li2O」及び「SiO2」からなる副成分に換えて、「SiO2」からなる副成分とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 よって、相違点3は、当業者が容易になし得た範囲に含まれる程度のものではない。 (3-3-3)この点に関連して、請求人は、本件訂正発明1はLi2Oを排除するものではなく、Li2Oが含有されるものも含まれるから、そもそも相違点2は存在しないと主張している(請求人口頭審理陳述要領書7ページ~21ページ等)。 しかしながら、本件訂正後の請求項1には、「前記誘電体セラミック層が、次の組成式、{Ba1-xCaxO}mTiO2+αRe2O3+βMgO+γMnO・・・である主成分100重量部に対して、副成分をSiO2としたときに・・・」と記載されており、主成分及び副成分が明確に規定されているから、これら両成分の他には、不可避的に含まれる物質、又は改めて記載するまでもなく当然に含まれると当業者が認識できる物質を除き、他の物質は含まれないと解釈するのが自然であるから、請求人の主張は採用できない。 また、請求人は、相違点3に係る構成は、周知技術であるから、当該周知技術を勘案することにより当業者が容易に想到することができたものであるとも主張している(同21ページ~23ページ等)。 しかしながら、上記(3-3-2)において検討したとおり、たとえ相違点3に係る構成が周知技術であったとしても、Li2Oが所定の量よりも少ないと特性が悪化することが明示されている甲1に記載された甲1発明において、Li2Oをあえて取り除くことには、明らかな阻害要因が存在するものと認められるから、請求人の主張は採用できない。 (3-4)相違点についての判断のまとめ 以上検討したとおり、本件訂正発明1と甲1発明との相違点は、当業者が容易になし得た範囲に含まれる程度のものではないから、本件訂正発明1は甲1発明及び甲2~8に記載された発明ないしは技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件訂正発明2~4ついて 本件訂正発明2~4は、本件訂正発明1に対して、それぞれ本件訂正後の請求項2~4に記載されているような技術的限定を付加したものである。 そして、本件訂正発明1は、上において検討したとおり、甲1発明及び甲2~8に記載された発明ないしは技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明1に対して、技術的限定を付加した本件訂正発明2~4についても、甲2~8に加え、さらに甲9に記載された技術等を勘案したとしても、甲1発明及び甲2~9に記載された発明ないしは技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないことが明らかである。 (5)無効理由2-1についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正発明1~4は、甲1発明及び甲2~9に記載された発明ないしは技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、無効理由2-1は存在しない。 4.無効理由2-2(甲2を主引用例とするもの)についての検討 (1)甲2に記載された発明 上記2.(2)の記載を総合すると、甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。 「BaTiO3を主成分とし、BaTiO386~99モル%、MgO0.2~2.0モル%、MnO0.01~2.0モル%、Y2O30.5~2.0モル%、Li2O0~4モル%、SiO20.5~4モル%からなる誘電体層と、Niを主成分とする内部電極層とを交互に積層してなり、端子電極を有する積層型コンデンサであって、前記誘電体層が、BaTiO3を主成分とする結晶粒子と、該結晶粒子間の粒界とからなり、前記誘電体層の破断面における全粒界個数のうち80%以上の粒界が、Si、希土類元素、アルカリ土類金属元素および酸素を含む非晶質からなり、前記誘電体層には、不純物としてNaが存在することがあるが、特性上問題ない微量であることを特徴とする積層型コンデンサ。」 (2) 本件訂正発明1と甲2発明との対比 (2-1)本件訂正発明1と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「誘電体層」、「内部電極層」、「端子電極」、「積層型コンデンサ」は、それぞれ、本件訂正発明1の「誘電体セラミック層」、「該誘電体セラミック層間に形成された内部電極」、「該内部電極に電気的に接続された外部電極」、「積層セラミックコンデンサ」に相当するから、甲2発明の「誘電体層と、Niを主成分とする内部電極層とを交互に積層してなり、端子電極を有する積層型コンデンサ」は、本件訂正発明1の「複数の誘電体セラミック層と、該誘電体セラミック層間に形成された内部電極と、該内部電極に電気的に接続された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサ」に相当する。 (2-2)甲2発明の「BaTiO3」と本件訂正発明1の「{Ba1-xCaxO}mTiO2」とは、バリウム、チタン及び酸素を含むペロブスカイト型酸化物である点で一致する。 また、甲2発明の「Y2O3」は、本件訂正発明1の「Re2O3」「但し、Re2O3は、Y2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3及びYb2O3の中から選ばれる少なくとも1種以上」に相当する。 そして、甲2発明の「MgO0.2~2.0モル%」、「MnO0.01~2.0モル%」、「Y2O30.5~2.0モル%」をモル比に直すと、MgO、MnO、Y2O3のモル比は、それぞれ、0.002~0.02、0.0001~0.02、0.005~0.02と小数点が左に2桁ずれることになるから、甲2発明のY2O3のモル比0.005~0.02は、本件訂正発明1の「0.001≦α≦0.10」と数値範囲が重なり、甲2発明のMgOのモル比0.002~0.02は、本件訂正発明1の「0.001≦β≦0.12」と数値範囲が重なり、甲2発明のMnOのモル比0.0001~0.02は、本件訂正発明1の「0.001<γ≦0.12」と数値範囲が重なっていることに加え、甲2の表1には「試料No.18」として、Y2O3、MgO、MnOのモル比が、それぞれ0.01、0.01、0.002のものが記載されていることを勘案すると、甲2発明も本件訂正発明1と同様に、「0.001≦α≦0.10」、「0.001≦β≦0.12」、「0.001<γ≦0.12」という構成を備えていることが明らかである。 (2-3)甲2発明の「Li2O0~4モル%」と、「SiO20.5~4モル%」を併せたものは、本件訂正発明1の「副成分」に相当する。 そして、甲2発明の「Li2O0~4モル%」は、Li2O0モル%、すなわち、Li2Oを副成分として用いない場合も含むから、この場合には、副成分がSiO2のみとなり、また、甲2発明の「SiO20.5~4モル%」を重量部に換算すると、約0.13~1.0重量部となり、本件訂正発明1の「副成分を0.2~5.0重量部含有して」いることと、数値範囲が重なっていることに加えて、甲2の表1には「試料No.18」として「SiO2」が2.0モル%(0.5重量%)であるものが記載されている。 したがって、甲2発明も本件訂正発明1と同様に、「副成分をSiO2としたときに、該副成分を0.2~5.0重量部含有しており」という構成を備えている。 (2-4)そうすると、本件訂正発明1と甲2発明との一致点と相違点は、次のとおりとなる。 《一致点》 「複数の誘電体セラミック層と、該誘電体セラミック層間に形成された内部電極と、該内部電極に電気的に接続された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサにおいて、 前記誘電体セラミック層が、次の組成式、 バリウム、チタン及び酸素を含むペロブスカイト型酸化物+αRe2O3+βMgO+γMnO (但し、Re2O3は、Y2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3及びYb2O3の中から選ばれる少なくとも1種以上であり、α、β及びγはモル比を表わし 0.001≦α≦0.10 0.001≦β≦0.12 0.001<γ≦0.12 の範囲内にある)で表わされる主成分100重量部に対して、副成分をSiO2としたときに、該副成分を0.2~5.0重量部含有しており、 前記内部電極はニッケルまたはニッケル合金からなることを特徴とする、積層セラミックコンデンサ。」 《相違点》 《相違点4》 主成分を構成する「バリウム、チタン及び酸素を含むペロブスカイト型酸化物」が、本件訂正発明1では{Ba1-xCaxO}mTiO2」(「但し、」「1.000<m≦1.035、0.005<x≦0.22」)であるのに対して、甲2発明では「BaTiO3」である点。 また、それに付随して、「Re2O3」、「MgO」、「MnO」、「SiO2」の各含有量も、本件訂正発明1では、主成分を構成する「バリウム、チタン及び酸素を含むペロブスカイト型酸化物」が{Ba1-xCaxO}mTiO2」(「但し、」「1.000<m≦1.035、0.005<x≦0.22」)であることを前提とするものであるのに対して、甲2発明では、主成分を構成する「バリウム、チタン及び酸素を含むペロブスカイト型酸化物」が「BaTiO3」であることを前提とするものである点。 《相違点5》 本件訂正発明1は、「誘電体セラミック層に用いる{Ba1-xCaxO}nTiO2(ただし、0.005<x≦0.22、0.990≦n≦1.035)原料中のアルカリ金属酸化物の含有量が0.02重量%以下である」のに対して、甲2発明は、「前記誘電体層には、不純物としてNaが微量であり特性上問題ない量存在する」ものである点。 (3)相違点についての当審の判断 (3-1)相違点4について (3-1-1)一般に、バリウム、チタン及び酸素を含むペロブスカイト型酸化物として、BaTiO3及び{Ba1-XCaXO}mTiO2は共に当業者において周知であり、かつ、それらの酸化物が積層型セラミックコンデンサの誘電体として用いられることも当業者において周知であると認められる。 しかしながら、甲2発明はBaTiO3を誘電体として用いた積層型セラミックコンデンサに関する発明であり、そのような構成により所期の課題を解決しているものであるところ、たとえ{Ba1-XCaXO}mTiO2自体、及びそれを積層型セラミックコンデンサの誘電体として用いることが周知であったとしても、甲2発明におけるBaTiO3をわざわざ{Ba1-XCaXO}mTiO2に置き換えることは、当業者にとって動機付けが存在しない。 また、一般に、セラミックにおいて、ペロブスカイト型酸化物に対して添加する種々の成分が物性に与える影響は、ある程度の類似性が存在するとしても、ペロブスカイト型酸化物として何を用いるかによって当然にその内容が異なるものであるから、甲2発明において、ペロブスカイト型酸化物をBaTiO3に換えて{Ba1-XCaXO}mTiO2とし、かつ、ペロブスカイト型酸化物以外の各物質の種類及びその比率を甲2発明と同一とすることは、当業者にとって容易に想到し得たことではない。 したがって、相違点4は、当業者が容易になし得た範囲に含まれる程度のものではない。 (3-1-2)なお、これに関連して、請求人は、積層型セラミックコンデンサの誘電体として用いるセラミックがBaTiO3又は{Ba1-xCaxO}mTiO2のいずれであっても、Re2O3、MgO及びMnOが与える影響は同じであるから、甲2発明において、ペロブスカイト型酸化物をBaTiO3に換えて{Ba1-XCaXO}mTiO2とし、かつ、ペロブスカイト型酸化物以外の各物質の種類及びその比率を甲2発明と同一とすることは、当業者にとって容易であると主張している(請求人口頭審理陳述要領書23ページ~31ページ等)。 しかしながら、積層型セラミックコンデンサの誘電体として用いるセラミックとしてBaTiO3を用いて所期の課題を解決している甲2発明において、BaTiO3をわざわざ{Ba1-XCaXO}mTiO2に置き換えることは、そもそも当業者にとって動機付けが存在しない。 また、甲3及び6~8の記載事項等からも分かるように、Re2O3、MgO及びMnOが与える影響は、積層型セラミックコンデンサの誘電体として用いるセラミックがBaTiO3又は{Ba1-xCaxO}mTiO2のいずれであってもある程度類似していることは事実であるが、例えば、甲1の表7には、「試料番号33」~「試料番号38」として、{Ba1-xCaxO}mTiO2におけるxのみが異なり、Re2O3、MgO及びMnOの量が同一である6個の試料が記載されているところ、それらの特性が、表8に記載されているとおり互いに相当程度異なっていることからも分かるとおり、Re2O3、MgO及びMnOが与える影響は、BaTiO3と{Ba1-xCaxO}mTiO2とで相当程度異なるものと認められる。 したがって、積層型セラミックコンデンサの誘電体として用いるセラミックがBaTiO3又は{Ba1-xCaxO}mTiO2のいずれであっても、Re2O3、MgO及びMnOが与える影響は同じであるとまではいうことができないから、請求人の主張は採用できない。 (3-2)相違点5について 「該誘電体セラミック層に用いる」「原料中のアルカリ金属酸化物の含有量が0.02重量%以下である」とすることは、上記3.(3)(3-2)「相違点2について」において検討したとおりの理由で、当業者が容易になし得たことである。 しかしながら、甲2発明において、ペロブスカイト型酸化物をBaTiO3に換えて{Ba1-xCaxO}mTiO2とすることが、当業者が容易になし得たことではないのであるから、甲2発明において、原料を「{Ba1-xCaxO}nTiO2(ただし、0.005<x≦0.22、0.990≦n≦1.035)」とすることも当然に、当業者が容易になし得たことではない。 したがって、相違点5は当業者が容易になし得た範囲に含まれる程度のものではない。 (3-3)相違点についての判断のまとめ 以上検討したとおり、本件訂正発明1と甲2発明との相違点は、当業者が容易になし得た範囲に含まれる程度のものではないから、本件訂正発明1は甲2発明及び甲3~8に記載された発明ないしは技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件訂正発明2~4ついて 本件訂正発明2~4は、本件訂正発明1に対して、それぞれ本件訂正後の請求項2~4に記載されているような技術的限定を付加したものである。 そして、本件訂正発明1は、上において検討したとおり、甲2発明及び甲3~8に記載された発明ないしは技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明1に対して、技術的限定を付加した本件訂正発明2~4についても、甲3~8に加え、さらに甲9に記載された技術等を勘案したとしても、甲2発明及び甲3~9に記載された発明ないしは技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないことが明らかである。 (5)無効理由2-2についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正発明1~4は、甲2発明及び甲3~9に記載された発明ないしは技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、無効理由2-2は存在しない。 5.無効理由2-3(甲6を主引用例とするもの)についての検討 (1)甲6に記載された発明 上記2.(6)の記載を総合すると、甲6には、次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているものと認められる。 「複数の誘電体セラミック層と、 それぞれの端縁が前記誘電体セラミック層の両端面に露出するように前記誘電体セラミック層間に形成された複数の内部電極と、 露出した前記内部電極に電気的に接続されるように設けられた外部電極とを含む積層セラミックコンデンサにおいて、 前記誘電体セラミック層が、 不純物として含まれるアルカリ金属酸化物の含有量が0.02重量%以下のチタン酸バリウムと、 酸化スカンジウムまたは酸化イットリウムの中から選ばれる少なくとも1種類以上と、 酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケルの中から選ばれる少なくとも1種類以上とからなり、 次の組成式、 (1-α-β){BaO}m・TiO2+αM2O3+β(Mn1-x-yNixCoy)O (ただし、M2O3は、Sc2O3、Y2O3の中から選ばれる少なくとも1種類以上であり、α、β、m、x、yは、 0.0025≦α≦0.025 0.0025≦β≦0.05 β/α≦4 0≦x<1.0 0≦y<1.0 0≦x+y<1.0 1.000<m≦1.035) で表される主成分100モルに対して、 副成分として、酸化マグネシウムをMgOに換算して0.5~5.0モル添加含有し、 さらに前記主成分および前記酸化マグネシウムの合計を100重量部として、SiO2-TiO2-MO系(ただし、MOは、BaO、CaO、SrO、MgO、ZnO、MnOの中から選ばれる少なくとも1種類以上の酸化物)の酸化物ガラスを0.2~3.0重量部含有した材料によって構成され、前記内部電極はニッケルまたはニッケル合金によって構成されることを特徴とする積層セラミックコンデンサ。」 (2)本件訂正発明1と甲6発明との対比 (2-1)本件訂正発明1と甲6発明とを対比する。 甲6発明の「誘電体セラミック層」、「内部電極」、「外部電極」、「積層セラミックコンデンサ」は、それぞれ、本件訂正発明1の「誘電体セラミック層」、「該誘電体セラミック層間に形成された内部電極」、「該内部電極に電気的に接続された外部電極」、「積層セラミックコンデンサ」に相当するから、甲6発明の「複数の誘電体セラミック層と、それぞれの端縁が前記誘電体セラミック層の両端面に露出するように前記誘電体セラミック層間に形成された複数の内部電極と、露出した前記内部電極に電気的に接続されるように設けられた外部電極とを含む積層セラミックコンデンサ」は、本件訂正発明1の「複数の誘電体セラミック層と、該誘電体セラミック層間に形成された内部電極と、該内部電極に電気的に接続された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサ」に相当する。 (2-2)甲6発明の「(1-α-β){BaO}m・TiO2」と本件訂正発明1の「{Ba1-xCaxO}mTiO2」とは、バリウム、チタン及び酸素を含むペロブスカイト型酸化物である点で一致する。 また、甲6発明の「M2O3」「ただし、M2O3は、Sc2O3、Y2O3の中から選ばれる少なくとも1種類以上」は、本件訂正発明1の「Re2O3」「但し、Re2O3は、Y2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3及びYb2O3の中から選ばれる少なくとも1種以上」に相当する。 また、甲6発明は、「0≦x+y<1.0」という条件を備えており、かつ、甲6の段落【0018】に「酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケルの中から選ばれる少なくとも1種類以上」が含まれることが記載されていることを勘案すると、甲6発明の「(Mn1-x-yNixCoy)O」は、本件訂正発明1の「MnO」に相当する。 そして、甲6発明の組成式の「(1-α-β){BaO}m・TiO2+αM2O3+β(Mn1-x-yNixCoy)O」において、「αM2O3+β(Mn1-x-yNixCOy)O」の「α」、「β」は、いずれも、モル比である。 そうすると、甲6発明のモル比による組成式の「(1-α-β){BaO}m・TiO2+αM2O3+β(Mn1-x-yNixCoy)O」における、「α」、「β」は、本件訂正発明1の「{Ba1-xCaxO}mTiO2+αRe2O3+βMgO+γMnO」の「α」、「γ」に対応する。 そして、甲6発明の組成式の「(1-α-β){BaO}m・TiO2+αM2O3+β(Mn1-x-yNixCoy)O」における、式中の「α」、「β」が、 「0.0025≦α≦0.025 0.0025≦β≦0.05」 であるから、 本件訂正発明1の 「0.001≦α≦0.10」 「0.001≦γ≦0.12」 と、数値範囲が、重なっている。 したがって、甲6発明も本件訂正発明1と同様に、「0.001≦α≦0.10 0.001≦γ≦0.12」という構成を備えている。 (2-3)甲6発明の「主成分100モルに対して、副成分として、酸化マグネシウムをMgOに換算して0.5~5.0モル添加含有」することにおいて、主成分1モルに対しては、酸化マグネシウムをMgOに換算して(0.5~5.0)×1/100モル=0.005~0.05モル添加含有することになるから、甲6発明の「MgO」の量は、本件訂正発明1の組成式「{Ba1-xCaxO}mTiO2+αRe2O3+βMgO+γMnO」「0.001≦β≦0.12」で表される「MgO」の量と数値範囲が重なっている。 したがって、甲6発明も本件訂正発明1と同様に、「0.001≦β≦0.12」であるという構成を備えている。 (2-4)甲6発明の「SiO2-TiO2-MO系(ただし、MOは、BaO、CaO、SrO、MgO、ZnO、MnOの中から選ばれる少なくとも1種類以上の酸化物)の酸化物ガラス」は、本件訂正発明1の「副成分」に相当する。 したがって、甲6発明の「SiO2-TiO2-MO系(ただし、MOは、BaO、CaO、SrO、MgO、ZnO、MnOの中から選ばれる少なくとも1種類以上の酸化物)の酸化物ガラスを0.2~3.0重量部含有」する構成と、本件訂正発明1の「副成分をSiO2としたときに、該副成分を0.2~5.0重量部含有」する構成とは、「副成分を0.2~5.0重量部含有」する構成である点で一致する。 (2-5)そうすると、本件訂正発明1と甲6発明の一致点と相違点は、次のとおりとなる。 《一致点》 「複数の誘電体セラミック層と、該誘電体セラミック層間に形成された内部電極と、該内部電極に電気的に接続された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサにおいて、 前記誘電体セラミック層が、次の組成式、 バリウム、チタン及び酸素を含むペロブスカイト型酸化物+αRe2O3+βMgO+γMnO (但し、Re2O3は、Y2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3及びYb2O3の中から選ばれる少なくとも1種以上であり、α、β及びγはモル比を表わし 0.001≦α≦0.10 0.001≦β≦0.12 0.001<γ≦0.12 の範囲内にある)で表わされる主成分100重量部に対して、副成分を0.2~5.0重量部含有しており、 前記内部電極はニッケルまたはニッケル合金からなることを特徴とする、積層セラミックコンデンサ。」 《相違点》 《相違点6》 主成分を構成する「バリウム、チタン及び酸素を含むペロブスカイト型酸化物」が、本件訂正発明1では{Ba1-xCaxO}mTiO2」(「但し、」「1.000<m≦1.035、0.005<x≦0.22」)であるのに対して、甲6発明では「{BaO}m・TiO2」、(「ただし」、「1.000<m≦1.035」)である点。 また、それに付随して、「Re2O3」、「MgO」、「MnO」、「副成分」の各含有量も、本件訂正発明1では、主成分を構成する「バリウム、チタン及び酸素を含むペロブスカイト型酸化物」が{Ba1-xCaxO}mTiO2」(「但し、」「1.000<m≦1.035、0.005<x≦0.22」)であることを前提とするものであるのに対して、甲6発明では、主成分を構成する「バリウム、チタン及び酸素を含むペロブスカイト型酸化物」が「{BaO}m・TiO2」、(「ただし」、「1.000<m≦1.035」)であることを前提とするものである点。 《相違点7》 本件訂正発明1は、「誘電体セラミック層に用いる{Ba1-xCaxO}nTiO2(ただし、0.005<x≦0.22、0.990≦n≦1.035)原料中のアルカリ金属酸化物の含有量が0.02重量%以下である」のに対して、甲6発明は、「不純物として含まれるアルカリ金属酸化物の含有量が0.02重量%以下のチタン酸バリウム」を有する点。 《相違点8》 「副成分」が、本件訂正発明1は「SiO2」であるのに対して、甲6発明は「SiO2-TiO2-MO系(ただし、MOは、BaO、CaO、SrO、MgO、ZnO、MnOの中から選ばれる少なくとも1種類以上の酸化物)の酸化物ガラス」である点。 (3)相違点についての当審の判断 (3-1)相違点6について 上記4.(3)(3-1)「相違点4について」において検討したとおりの理由で、相違点6は、当業者が容易になし得た範囲に含まれる程度のものではない。 (3-2)相違点7について 「該誘電体セラミック層に用いる」「原料中のアルカリ金属酸化物の含有量が0.02重量%以下である」とすることは、上記3.(3)(3-2)「相違点2について」において検討したとおりの理由で、当業者が容易になし得たことである。 しかしながら、甲6発明において、ペロブスカイト型酸化物を「{BaO}m・TiO2」、(「ただし」、「1.000<m≦1.035」)に換えて{Ba1-xCaxO}mTiO2とすることが、当業者が容易になし得たことではないのであるから、甲6発明において、原料を「{Ba1-xCaxO}nTiO2(ただし、0.005<x≦0.22、0.990≦n≦1.035)」とすることも当然に、当業者が容易になし得たことではない。 したがって、相違点7は当業者が容易になし得た範囲に含まれる程度のものではない。 (3-3)相違点8について 甲6の明細書全般の記載から判断して、甲6発明は、副成分として、「SiO2-TiO2-MO系(ただし、MOは、BaO、CaO、SrO、MgO、ZnO、MnOの中から選ばれる少なくとも1種類以上の酸化物)の酸化物ガラス」の代わりに「SiO2」のみを用いることは想定されていないことが明らかである。 また、上記4.(3)(3-1)「相違点4について」において検討したとおり、一般に、セラミックにおいて、ペロブスカイト型酸化物に対して添加する種々の成分が物性に与える影響は、ペロブスカイト型酸化物として何を用いるかによって当然にその内容が異なるものであるから、副成分としてどのような物質を選択するかということ、及び当該物質の含有量をどの程度にするかということは、ペロブスカイト型酸化物として何を用いるかを特定して初めて意味をなすものである。 したがって、相違点8は、当業者が適宜なし得た範囲に含まれる程度のものではない。 (3-4)相違点についての判断のまとめ 以上検討したとおり、本件訂正発明1と甲6発明との相違点は、当業者が容易になし得た範囲に含まれる程度のものではないから、本件訂正発明1は甲6発明並びに甲3~5、7及び8に記載された発明ないしは技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件訂正発明2~4ついて 本件訂正発明2~4は、本件訂正発明1に対して、それぞれ本件訂正後の請求項2~4に記載されているような技術的限定を付加したものである。 そして、本件訂正発明1は、上において検討したとおり、甲6発明並びに甲3~5、7及び8に記載された発明ないしは技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明1に対して、技術的限定を付加した本件訂正発明2~4についても、甲3~5、7及び8に加え、さらに甲9に記載された技術等を勘案したとしても、甲6発明及び甲3~5及び7~9に記載された発明ないしは技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないことが明らかである。 (5)無効理由2-3についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正発明1~4は、甲6発明及び甲3~5及び7~9に記載された発明ないしは技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、無効理由2-3は存在しない。 6.無効理由2についてのまとめ 以上検討したとおり、本件訂正発明1~4は、甲1、甲2又は甲6のいずれの刊行物を主引用例としても、甲1~9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、無効理由2は存在しない。 第5.無効理由3(特許法第36条第4項及び第6項を根拠とするもの)についての検討 1.無効理由3-1(特許法第36条第6項第1号を根拠とするもの)について (1)請求人の主張 無効理由3-1についての請求人の主張を整理すると、次のとおりである。 (1-1)無効理由3-1-a 本件訂正明細書の特許請求の範囲(第5.の章に限り、以下単に「特許請求の範囲」という。)の請求項1(第5.の章に限り、以下単に「請求項1」という。他の請求項についても同じ。)には、種々のパラメータについて数値範囲の限定がなされているが、本件訂正明細書の発明の詳細な説明(第5.の章に限り、以下単に「発明の詳細な説明」という。)において、各パラメータが請求項1に記載された範囲内で最悪値を取った場合であっても所期の課題を解決できることが裏付けられていないから、発明の詳細な説明に記載された具体例から請求項1に記載された数値範囲の全体にまで拡張ないし一般化できるとはいえない。 したがって、本件訂正発明1は発明の詳細な説明に記載されたものではない。 (1-2)無効理由3-1-b 請求項1には、「{Ba1-xCaxO}nTiO2(ただし,0.005<x≦0.22,0.990≦n≦1.035)原料」の平均粒径についての特定がなされていないから、請求項1は、課題を解決するための手段が反映されていない。 したがって、本件訂正発明1は発明の詳細な説明に記載されたものではない。 (1-3)無効理由3-1-c 請求項2~4は請求項1又は2に従属するものであるが、本件訂正発明1は上記無効理由3-1-a及び3-1-bのとおりの理由で発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件訂正発明2~4も同様に、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 (2)無効理由3-1についての当審の判断 (2-1)無効理由3-1-aについて 発明の詳細な説明には、請求項1において数値範囲の限定がなされている各パラメータについて,各パラメータが当該数値範囲を満たす場合と満たさない場合とでどのような効果上の差異が存在するのかということが、表4及び5等を用いて一通り記載されているものと認められる。 そして、一般に、数値範囲の限定がなされた発明において、発明の詳細な説明においてどの程度の裏付けを行う必要があるかは、発明の属する技術分野に応じて判断すべきものであるが、本件訂正発明1が属する積層型セラミックコンデンサの技術分野においては、発明の詳細な説明において開示されている程度の説明があれば、本件特許の請求項1に記載された数値範囲の限定について、課題を解決できると当業者が認識できる程度の裏付けはなされているものと認められる。 したがって、無効理由3-1-aは存在しない。 (2-2)無効理由3-1-bについて 発明の詳細な説明の段落【0065】には、「なお、試料番号116のように、チタン酸バリウムカルシウムの平均粒径が0.7μmを越える場合には、平均寿命時間が62時間とやや悪い。一方、試料番号117のように、チタン酸バリウムカルシウムの平均粒径が0.1μm未満の場合には、誘電率が1130とやや小さい。したがって、チタン酸バリウムカルシウムの平均粒径は0.1~0.7μmの範囲がより好ましい。」と記載されており、「チタン酸バリウムカルシウム」(すなわち{Ba1-xCaxO}nTiO2)の「平均粒径」に関して、所期の課題を解決するために「0.1~0.7μmの範囲がより好ましい」ことが開示されているにとどまり、当該「平均粒径」が特定の値でなければ課題を解決することができないことは記載されていない。 また、発明の詳細な説明全般を精査しても、{Ba1-xCaxO}nTiO2(ただし、0.005<x≦0.22,0.990≦n≦1.035)原料」の平均粒径が特定の(例えば請求項2に記載されている)値でなければ所期の課題を解決することができないことを窺わせる記載はない。 したがって、無効理由3-1-bは存在しない。 (2-3)無効理由3-1-cについて 無効理由3-1-cは無効理由3-1-a及びbを前提とするものであるが、上記(2-1)及び(2-2)において検討したとおり、これらの無効理由は存在しないから、当然に無効理由3-1-cも存在しない。 (3)無効理由3-1についてのまとめ 以上検討したとおりであるから、無効理由3-1は存在しない。 2.無効理由3-2(特許法第36条第4項を根拠とするもの)について (1)請求人の主張 無効理由3-2についての請求人の主張を整理すると、次のとおりである。 (1-1)無効理由3-2-a 発明の詳細な説明の記載では、請求項1において数値範囲の限定がなされている各パラメータが、請求項1に記載された範囲内で最悪値を取った場合であっても、本件訂正発明1が所期の課題を解決できることを当業者が理解できない。 (1-2)無効理由3-2-b 請求項1には、Re2O3は、Y2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3及びYb2O3の中から選ばれる少なくとも1種以上であり」と記載されているが、発明の詳細な説明には、そのすべての組合せについての実施例の開示がなされていないから、発明の詳細な説明の記載では、本件訂正発明1が所期の課題を解決することができることを当業者が理解できない。 (1-3)無効理由3-2-c 発明の詳細な説明の記載では、当業者は、少なくとも、{Ba1-xCaxO}nTiO2(ただし、0.005<x≦0.22、0.990≦n≦1.035)原料のx及びnが、請求項1の数値範囲の下限付近の値である場合には、発明の詳細な説明に記載されたようにBaCO3あるいはTiO3を加えても、{Ba1-xCaxO}mTiO2(1.000<m≦1.035、0.005<x≦0.22)で表される誘電体セラミックを得ることができないから、発明の詳細な説明の記載に基づいて当業者が本件訂正発明1を実施することができない。 (1-4)無効理由3-2-d 請求項1には、「該誘電体セラミック層に用いる{Ba1-xCaxO}nTiO2(ただし、0.005<x≦0.22、0.990≦n≦1.035)原料中のアルカリ金属酸化物の含有量が0.02重量%以下である主成分100重量部」と記載されており、「アルカリ金属酸化物の含有量」がゼロである場合も含むものとなっているが、発明の詳細な説明には、どのようにすれば「アルカリ金属酸化物の含有量」をゼロにできるかについての説明がなされておらず、また、どのようにして「アルカリ金属酸化物の含有量」を「0.02重量%以下」に制御するのかについての説明もなされていないから、発明の詳細な説明の記載に基づいて当業者が本件訂正発明1を実施することができない。 (1-5)無効理由3-2-e 請求項2~4は請求項1又は2に従属するものであるが、本件訂正発明1については、上記(1-1)~(1-4)のとおりの理由で、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないから、本件訂正発明2~4についても同様に、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 (2)無効理由3-2についての当審の判断 (2-1)無効理由3-2-aについて 無効理由3-2-aは、無効理由3-1-aと同様の事項を、発明の詳細な説明の記載不備という観点から述べたにすぎないものであるから、上記1.(2)(2-1)において検討したとおりの理由により、無効理由3-2-aは存在しない。 (2-2)無効理由3-2-bについて 発明の詳細な説明には、請求項1における「Re2O3」に関して、「Y2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3及びYb2O3」で表される各物質のすべて、及び、「Y2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3及びYb2O3」で表される各物質の幾つかの組合せについての実験データが記載されており、積層型セラミックコンデンサの技術分野においては、発明の詳細な説明において開示されている程度の説明がなされていれば、請求項1に記載された数値範囲の限定について、課題を解決できると当業者が認識できる程度の裏付けはなされているものと認められる。 したがって、無効理由3-2-bは存在しない。 (2-3)無効理由3-2-cについて 一般に、原料の各成分の比率について数値範囲の限定がなされており、当該数値範囲を満たす原料を用いて、各成分の比率について数値範囲の限定(原料の数値範囲と必ずしも一致しなくてもよい)がなされている最終製品を製造する場合に、原料における各成分の比率を、最終製品における各成分の比率に適するように選択することは、当業者が当然に行うことである。 したがって、最終製品における各成分の比率に適さない各成分の比率を有する原料を選択した場合において、最終製品における各成分の比率が所望の値にならないことを根拠として、発明の詳細な説明の記載が不十分であるということはできない。 よって、無効理由3-2-cは存在しない。 (2-4)無効理由3-2-dについて 一般に、積層セラミックコンデンサの誘電体において、アルカリ金属酸化物は不可避的に含まれてしまうものであって、その含有量を完全にゼロにすることは極めて困難(殆ど不可能)であり、請求項1における「原料中のアルカリ金属酸化物の含有量が0.02重量%以下である」とは、「原料中のアルカリ金属酸化物の含有量」が、不可避的に含まれてしまう極微量~「0.02重量%」を意味するものであることは、当業者であれば直ちに察知できることであるから、「原料中のアルカリ金属酸化物の含有量」をゼロにする手法が発明の詳細な説明に記載されていないことを根拠として、発明の詳細な説明の記載が不十分であるということはできない。 また、「原料中のアルカリ金属酸化物の含有量が0.02重量%以下である」ようにすること自体は、甲3~5の記載からも分かるように、本件特許の出願時における技術常識に基づいて当業者が難なく実施できる程度のことと認められる。 したがって、「アルカリ金属酸化物の含有量」を「0.02重量%以下」に制御する手法が発明の詳細な説明に記載されていないことを根拠として、発明の詳細な説明の記載が不十分であるということもできない。 よって、無効理由3-2-dは存在しない。 (2-5)無効理由3-2-eについて 無効理由3-2-eは無効理由3-2-a~dを前提とするものであるが、上記(2-1)~(2-4)において検討したとおり、これらの無効理由は存在しないから、当然に無効理由3-2-eも存在しない。 (3)無効理由3-2についてのまとめ 以上検討したとおりであるから、無効理由3-2は存在しない。 3.無効理由3-3(特許法第36条第6項第2号を根拠とするもの)について (1)請求人の主張 無効理由3-3についての請求人の主張を整理すると、次のとおりである。 (1-1)無効理由3-3-a 請求項1の「前記誘電体セラミック層が、次の組成式、{Ba1-xCaxO}mTiO2+αRe2O3+βMgO+γMnO(但し、Re2O3は、Y2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3及びYb2O3の中から選ばれる少なくとも1種以上であり、α、β及びγはモル比を表わし、0.001≦α≦0.10、0.001≦β≦0.12、0.001<γ≦0.12、1.000<m≦1.035、0.005<x≦0.22の範囲内にある)で表わされ」(審決注:見やすくするために読点を付加した。以下同じ。)が、焼結後の誘電体セラミック層について述べたものである場合には、この記載の意味がそれ自体で明確ではないから、本件訂正発明1は明確ではない。 (1-2)無効理由3-3-b 請求項2~4は請求項1又は2に従属するものであるが、本件訂正発明1は上記無効理由3-3-aのとおりの理由で明確ではないから、本件訂正発明2~4も同様に明確ではない。 (2)無効理由3-3についての当審の判断 (2-1)無効理由3-3-aについて (2-1-1)請求項1には、「複数の誘電体セラミック層と、該誘電体セラミック層間に形成された内部電極と、該内部電極に電気的に接続された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサにおいて、前記誘電体セラミック層が、次の組成式、{Ba1-xCaxO}mTiO2+αRe2O3+βMgO+γMnO(但し、Re2O3は、Y2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3及びYb2O3の中から選ばれる少なくとも1種以上であり、α、β及びγはモル比を表わし、0.001≦α≦0.10、0.001≦β≦0.12、0.001<γ≦0.12、1.000<m≦1.035、0.005<x≦0.22の範囲内にある)で表わされ、かつ該誘電体セラミック層に用いる{Ba1-xCaxO}nTiO2(ただし、0.005<x≦0.22、0.990≦n≦1.035)原料中のアルカリ金属酸化物の含有量が0.02重量%以下である主成分」と記載されているのみであり、「前記誘電体セラミック層が、次の組成式、{Ba1-xCaxO}mTiO2+αRe2O3+βMgO+γMnO(但し、Re2O3は、Y2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3及びYb2O3の中から選ばれる少なくとも1種以上であり、α、β及びγはモル比を表わし、0.001≦α≦0.10、0.001≦β≦0.12、0.001<γ≦0.12、1.000<m≦1.035、0.005<x≦0.22の範囲内にある)で表わされ」という部分が、焼結前の原料の組成について規定したものであるのか、焼結後のセラミック層の組成について規定したものであるのかについては記載されていない。 (2-1-2)そこで、発明の詳細な説明の記載を参酌すると、発明の詳細な説明には、段落【0027】~【0032】、及び、段落【0051】~【0054】等をはじめとして、焼結前の原料についての組成が特定されているのみであり、さらに、段落【0060】の「又、試料番号105のように、MgO量βが0.001未満の場合には、電圧印加による容量変化率が大きく、温度特性がB特性/X7R特性を満足せず、比抵抗が低く、平均寿命時間が短くなり好ましくない。一方、試料番号106のように、MgOの添加量βが0.12を超える場合には、焼結温度が高くなって平均寿命時間が極端に短くなり好ましくない。したがって、MgO量βは0.001≦β≦0.12の範囲が好ましい。」等の記載から、請求項1の「前記誘電体セラミック層が、次の組成式、{Ba1-xCaxO}mTiO2+αRe2O3+βMgO+γMnO・・・で表わされ」における「α」、「β」、「γ」は、原料粉末に添加する物質の量を規定するものであることが明らかである。 そして、発明の詳細な説明全体を精査しても、「前記誘電体セラミック層が、次の組成式、{Ba1-xCaxO}mTiO2+αRe2O3+βMgO+γMnO・・・で表わされ」という部分が焼結後のセラミック層についての組成が記載されていると当業者が明確に認識できる記載は存在しない。 したがって、請求項1の「前記誘電体セラミック層が、次の組成式、{Ba1-xCaxO}mTiO2+αRe2O3+βMgO+γMnO(但し、Re2O3は、Y2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3及びYb2O3の中から選ばれる少なくとも1種以上であり、α、β及びγはモル比を表わし、0.001≦α≦0.10、0.001≦β≦0.12、0.001<γ≦0.12、1.000<m≦1.035、0.005<x≦0.22の範囲内にある)で表わされ」とは、焼結前の原料について、その組成を規定したのもの(すなわち、当該原料に有機溶剤を加えてセラミックグリーンシートを作成し、そのセラミックグリーンシート上にニッケルを主体とする導電ペースト層を印刷し、導電ペースト層が印刷されたセラミックグリーンシートを積層した後に焼結する。)であることが明らかであると認められるから、本件特許の請求項1は明確である。 (2-1-3)なお、これに関連して、被請求人は、請求項1に「前記誘電体セラミック層が、次の組成式、{Ba1-xCaxO}mTiO2+αRe2O3+βMgO+γMnO(但し、Re2O3は、Y2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3及びYb2O3の中から選ばれる少なくとも1種以上であり、α、β及びγはモル比を表わし、0.001≦α≦0.10、0.001≦β≦0.12、0.001<γ≦0.12、1.000<m≦1.035、0.005<x≦0.22の範囲内にある)で表わされ」と記載されているところ、当該記載における「前記誘電体セラミック層」とは「複数の誘電体セラミック層と・・・を備えた積層セラミックコンデンサ」の「誘電体セラミック層」を指すものであるから、「前記誘電体セラミック層が、次の組成式、{Ba1-xCaxO}mTiO2+αRe2O3+βMgO+γMnO・・・で表わされ」は、焼成後の誘電体セラミック層の組成を規定するものであると主張している(被請求人口頭審理陳述要領書第11ページ)ので、これについて検討する。 (2-1-4)確かに、被請求人の主張するとおり、請求項1の「前記誘電体セラミック層が、次の組成式、{Ba1-xCaxO}mTiO2+αRe2O3+βMgO+γMnO・・・で表わされ」における「前記誘電体セラミック層」が、「複数の誘電体セラミック層と・・・を備えた積層セラミックコンデンサ」の「誘電体セラミック層」を指すものであることは明らかである。 しかしながら、請求項1の「前記誘電体セラミック層」が「複数の誘電体セラミック層と・・・を備えた積層セラミックコンデンサ」の「誘電体セラミック層」を指すものであることと、「前記誘電体セラミック層が、次の組成式、{Ba1-xCaxO}mTiO2+αRe2O3+βMgO+γMnO・・・で表わされ」が焼結前の原料又は、焼結後の誘電体セラミックのいずれの組成を規定するものであるのかということとは、互いに無関係な事項であり、かつ、上記(2-1-2)において検討したとおり、発明の詳細な説明には、焼結前の原料についての組成が特定されているのみであって、焼結後の誘電体セラミック層についての組成が記載されていると当業者が明確に認識できる記載は存在しないのであるから、被請求人の主張は採用できない。 以上のとおりであるから、無効理由3-3-aは存在しない。 (2-2)無効理由3-3-b 無効理由3-3-bは無効理由3-3-aを前提とするものであるが、上記(2-1)において検討したとおり、当該無効理由は存在しないから、当然に無効理由3-3-bも存在しない。 (3)無効理由3-3についてのまとめ 以上検討したとおりであるから、無効理由3-3は存在しない。 4.無効理由3についてのまとめ 以上検討したとおり、本件訂正による訂正後の特許明細書は特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしており、無効理由3は存在しない。 第6.むすび 以上検討したとおり、本件特許については、請求人が主張するいずれの無効理由も存在せず、また、その他本件特許を無効とすべき理由も見いだせないから、本件特許は無効とすべきものではない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2011-800001

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