特許無効審判
2024-800123
おもちゃの水風船
- 審判番号
- 2024-800123
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2022-541295
- 登録番号
- 7341351
- 請求日
- 2024年11月07日
- 審決日
- 2026年02月10日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】深▲せん▼市華明軍橡膠有限公司
- 【請求人代理人】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
- 【被請求人】東莞市賽恩創客科学技術有限公司
- 【被請求人代理人】藤沼 光太
- 【被請求人代理人】平田 慎二
- 審判長/審判官
- 審判長 川俣 洋史
- 審判官 濱本 禎広
- 審判官 門 良成
- 分類
- P1113.121-Y (A63H) / P1113.537-Y (A63H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第169条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第7341351号発明「おもちゃの水風船」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
特許第7341351号発明の特許請求の範囲の請求項1乃至請求項13に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
2 答弁の趣旨
本件審判の請求を却下する、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。
(ただし、上記のうち、「本件審判の請求を却下する、との審決を求める。」との趣旨に係る請求人適格についての主張は撤回された(「第5 被請求人の主張」なお書き参照)。)
第2 手続の経緯
本件無効審判の請求に係る特許第7341351号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、2021年(令和3年)1月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2020年12月25日、中国)を国際出願日とする出願であって、特願2022-541295号として審査され、令和5年8月31日に特許権の設定登録(請求項の数13)がされたものである。
これに対して、令和6年11月7日に深▲せん▼市華明軍橡膠有限公司(以下「請求人」という。)より、無効審判(以下「本件無効審判」という。)が請求され、令和7年3月7日に答弁書が東莞市賽恩創客科学技術有限公司(以下「被請求人」という。)から提出された。
本件無効審判における手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和6年11月 7日 :審判請求書の提出
同月28日 :手続補正書の提出
令和7年 3月 7日 :答弁書の提出
同年 8月20日付け:審理事項通知
同年10月27日 :口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
同月29日 :口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
同年11月12日 :第1回口頭審理
同月26日 :上申書の提出(被請求人)
同年12月10日 :上申書の提出(請求人)
第3 本件発明
本件特許の請求項1~13に係る発明(以下、請求項の番号にしたがって「本件発明1」などという。また、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ本件特許の特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される次のとおりのものである
「【請求項1】
複数の花弁状本体を備えるおもちゃの水風船であって、各前記花弁状本体は、第1縁部と第2縁部とを有し、各前記花弁状本体の第1縁部及び第2縁部は、軟質ゴムであり、各前記第1縁部に少なくとも1つの第1マグネット部材が取り付けられ、各前記第2縁部に少なくとも1つの第2マグネット部材が取り付けられ、各前記花弁状本体の第1縁部に第1貼合面が設けられ、前記第1マグネット部材は、前記第1縁部の前記第1貼合面とは反対側の内側部に取り付けられ、各前記花弁状本体の第2縁部に第2貼合面が設けられ、前記第2マグネット部材は、前記第2縁部の前記第2貼合面とは反対側の内側部に取り付けられ、各前記花弁状本体の第1貼合面は第1斜面を有し、これにより、前記第1貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈し、各前記花弁状本体の第2貼合面は第2斜面を有し、これにより、前記第2貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈し、前記花弁状本体で球体状を画成すると、各前記花弁状本体の前記第1縁部上の前記第1マグネット部材と隣り合う花弁状本体の前記第2縁部上の前記第2マグネット部材とが引力を生じて、前記花弁状本体の前記第1縁部の内側凹陥形状を呈する前記第1貼合面と隣り合う花弁状本体の前記第2縁部の内側凹陥形状を呈する前記第2貼合面とが互いに対向して変形して密着し、これにより前記花弁状本体が共同で水を貯める空洞を形成するようにする、
おもちゃの水風船。
【請求項2】
前記花弁状本体のうち1つの前記第1縁部の前記第1マグネット部材の数は、複数であり、前記花弁状本体の前記第1縁部と隣り合う花弁状本体の前記第2縁部の前記第2マグネット部材の数も複数であり、かつ、前記花弁状本体の前記第1マグネット部材と前記隣り合う花弁状本体の前記第2マグネット部材との位置は1対1で対応していることを特徴とする、請求項1に記載のおもちゃの水風船。
【請求項3】
各前記花弁状本体の前記第1縁部の前記第1マグネット部材の数は複数であり、同じ前記第1縁部の前記第1マグネット部材が互いに間隔を置いて配置され、各前記花弁状本体の前記第2縁部の前記第2マグネット部材の数は複数であり、同じ前記第2縁部の前記第2マグネット部材が互いに間隔を置いて配置されることを特徴とする、請求項1に記載のおもちゃの水風船。
【請求項4】
前記第1マグネット部材は、前記第1貼合面の中央部に対応して配置され、前記第2マグネット部材は前記第2貼合面の中央部に対応して配置されることを特徴とする、請求項1に記載のおもちゃの水風船。
【請求項5】
各前記花弁状本体をそれぞれ連結するための連結部材をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載のおもちゃの水風船。
【請求項6】
前記連結部材は、弾性を有する連結環と、前記連結環と各前記花弁状本体をそれぞれ連結する連結端とを備えることを特徴とする、請求項5に記載のおもちゃの水風船。
【請求項7】
各前記花弁状本体の前記第1縁部の内側面に凹溝が設けられ、前記第1マグネット部材は、前記凹溝内に固定されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のおもちゃの水風船。
【請求項8】
前記第1マグネット部材は、接着又はスナップフィット結合によって前記第1縁部に固定されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のおもちゃの水風船。
【請求項9】
前記花弁状本体の数は、2つ、又は3つ、或いは4つ、若しくは5つであることを特徴とする、請求項1に記載のおもちゃの水風船。
【請求項10】
前記第1マグネット部材は磁石であり、前記第2マグネット部材も磁石であり、対応する前記第1マグネット部材と前記第2マグネット部材は反対の極性を有し、又は、前記第1マグネット部材は磁石であり、前記第2マグネット部材は前記磁石と互いに引き合う鉄塊であることを特徴とする、請求項1に記載のおもちゃの水風船。
【請求項11】
各前記花弁状本体の第1貼合面の第1斜面と、隣り合う第2貼合面の第2斜面とが対向し傾斜することを特徴とする、請求項1に記載のおもちゃの水風船。
【請求項12】
各前記花弁状本体は、シリコンゴムであることを特徴とする、請求項1に記載のおもちゃの水風船。
【請求項13】
第1縁部は前記花弁状本体の外表面から内へ延在し、前記花弁状本体の内表面を超える、請求項1に記載のおもちゃの水風船。」
第4 請求人の主張及び証拠方法
請求人の主張及び証拠方法は、審判請求書、令和6年11月28日提出の手続補正書、令和7年10月29日提出の口頭審理陳述要領書、及び、同年12月10日提出の上申書の記載からみて、概略、次のとおり整理することができる。
1 無効理由1(明確性要件違反)
(1) 明確性要件違反その1(斜面の意味)
本件発明1~13における「第1貼合面は第1斜面を有し、」及び「第2貼合面は第2斜面を有し、」において、「第1斜面」及び「第2斜面」が、どのような面であり、何に対して傾斜している面なのか明確ではない。
(2) 明確性要件違反その2(内側凹陥形状の意味)
本件発明1~13における「第1貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈し、」及び「前記第2貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈し、」にいう「内側凹陥形状」は明確ではない。
「内側凹陥形状」について、明細書中の記載に当該語句が用いられ、実施形態に示された形状のことであることが説明されているとしても、「凹陥」という語は造語であり、各漢字の意味からは、基準面から一段落ち窪んだ有底の穴や溝が想起されるものであるから、このような明細書に記載された実施形態の形状と乖離した語句を用いている以上、請求項の記載が明確であるとはいえない。
(3) 明確性要件違反その3(自然状態の意味)
本件発明1~13における「第1貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈し、」及び「前記第2貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈し、」にいう「自然状態において」は明確ではない。
(4) 明確性要件違反その4
本件発明1~13において、「第1貼合面は第1斜面を有」することにより、なぜ、「第1貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈」することになるのか、また、「第2貼合面は第2斜面を有」することにより、なぜ、「前記第2貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈」することになるのか、といった関係性について理解することができない。
2 無効理由2(サポート要件違反)
(1) サポート要件違反その1
本件発明1~13における「第1貼合面は第1斜面を有し、」及び「第2貼合面は第2斜面を有し、」という表現には、発明の詳細な説明に記載していない形状が含まれるから、本件発明1~13は発明の詳細な説明に記載したものではない。
(2) サポート要件違反その2
本件発明1~13における「第1貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈し、」及び「前記第2貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈し、」という構成には、「内側凹陥形状」の意味の解釈次第では、発明の詳細な説明に記載していないものが含まれるから、本件発明1~13は発明の詳細な説明に記載したものではない。
3 無効理由3(進歩性の欠如)
(1) 進歩性の欠如その1
本件発明1~12は、甲2発明及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~12に係る特許は、特許法29条2項に規定に違反してされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
(2) 進歩性の欠如その2
本件発明1~13は、甲2発明、甲3に記載された事項、及び、甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~13に係る特許は、特許法29条2項に規定に違反してされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
(3) 進歩性の欠如その3
ア 本件発明1~4、7~13は、甲2発明、甲5に記載された事項、及び、甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~4、7~13に係る特許は、特許法29条2項に規定に違反してされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
イ また、本件発明5~6は、甲2発明、甲5に記載された事項、甲4に記載された事項、及び、甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明5~6に係る特許は、特許法29条2項に規定に違反してされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
4 証拠方法
請求人は、前記3の主張を裏付ける証拠として、次の甲第2号証~甲第5号証(以下、単に「甲2」~「甲5」という。)を提出した。
甲第2号証:中国実用新案第201543247号明細書(訳文を添付)
甲第3号証:中国実用新案第212112652号明細書(訳文を添付)
甲第4号証:特開2015-232365号公報
甲第5号証:特表2013-538435号公報
第5 被請求人の主張
被請求人の主張は、答弁書、令和7年10月27日提出の口頭審理陳述要領書、及び、同年11月26日提出の上申書の記載からみて、概略、次のとおり整理することができる。なお、前記第1の「2 答弁の趣旨」ただし書きのとおり、被請求人は、令和7年11月12日に行われた第1回口頭審理において、請求人適格についての主張を撤回した(第1回口頭審理調書参照)。
1 無効理由1(明確性要件違反)について
(1) 明確性要件違反その1(斜面の意味)
本件特許明細書や図面を参照すれば、貼合面のうち外側縁部と内側縁部(球体内側方向)とで高さ(位置)が異なる面を含む構造であると理解できる。
明細書の説明を補足する参考図として、本願明細書の図4の第1貼合面31又は第2貼合面32の密着直前と密着時の図を以下に示す。
[図:0001436885000001.jpg]
以上により、請求人が主張するような「どこに対して傾いているか分からない」などの疑義は生じない。
(2) 明確性要件違反その2(内側凹陥形状の意味)
本件特許明細書【0030】や【図5】、【図6】等により、貼合面(第1貼合面31や第2貼合面32)が「自然状態で内側に凹む(湾曲・折れ曲がる)形状」を呈している旨を具体的に説明している。
各花弁状本体は軟質ゴム(シリコンゴム等)であり、「通常状態(自然状態)とは、外力が加わっていない主に2つの貼合面が変形していない状態」であり、自然状態では、貼合面が弾性復元力により緩やかに内側へ湾曲している。
当業者であれば、本件特許明細書に示された図面(特に、図4~6)や文中記載から、これが「内側へ窪んだ形状」であることを十分理解できる。
(3) 明確性要件違反その3(自然状態の意味)
本件特許明細書【0030】では「第1貼合面及び第2貼合面は、外力で圧迫された場合には容易に変形する」ことと対比して「自然状態において内側凹陥するよう配置される」と説明されている。すなわち、通常状態(自然状態)とは、外力が加わっていない2つの貼合面が変形していない状態を指す。それに反して、2つの貼合面が磁気吸引力により変形(変形後密着)し、この場合を変形状態とする。したがって、当業者は、この「自然状態」の意味を理解可能である。
2 無効理由2(サポート要件違反)について
本件特許発明の記載は、軟質ゴムによる多様な形状を包含する。そして、いずれの形状も「花弁状本体が互いに内側へ湾曲する形状をなし、マグネット部材で密着する」という共通概念に支えられており、当業者が通常の弾性材料設計の範囲内で容易に実施可能である。したがって、「明細書に記載がない形状まで含んでいる」との請求人の指摘は当たらない。
3 無効理由3(進歩性の欠如)について
甲2~甲5はそれぞれ異なる技術分野や異なる目的のものであり、本件発明固有の構成・作用を導く動機付けは存在しない。
甲第2号証~第5号証のいずれにおいても、本件発明において採用されているような「各前記花弁状本体の第1貼合面は第1斜面を有し、これにより、前記第1貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈し、各前記花弁状本体の第2貼合面は第2斜面を有し、これにより、前記第2貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈し、」という構成が開示も示唆もされておらず、本件発明の構成に到達する動機付けは見出し難いことは明白である。
第6 当審の判断
1 無効理由1(明確性要件違反)について
(1) 自然状態の意味について
ア 請求項1には、次の(ア)及び(イ)の記載がある。下線は当合議体によるもので、以下同様である。
(ア) 「各前記花弁状本体の第1貼合面は第1斜面を有し、これにより、前記第1貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈し、各前記花弁状本体の第2貼合面は第2斜面を有し、これにより、前記第2貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈し、」
(イ) 「前記花弁状本体の前記第1縁部の内側凹陥形状を呈する前記第1貼合面と隣り合う花弁状本体の前記第2縁部の内側凹陥形状を呈する前記第2貼合面とが互いに対向して変形して密着し、これにより前記花弁状本体が共同で水を貯める空洞を形成する」
イ(ア) 前記ア(ア)の記載から、「第1貼合面」は「第1斜面を有[する]」ことにより、「自然状態において内側凹陥形状を呈[する]」こと、同様に、「第2貼合面」は「第2斜面を有[する]」ことにより、「自然状態において内側凹陥形状を呈[する]」ことが読み取れる。
(イ) また、前記ア(イ)の記載には、「内側凹陥形状を呈する」「第1貼合面」及び「第2貼合面」は、「互いに対向して変形して密着[する]」とあるから、「第1貼合面」及び「第2貼合面」は、互いに対向する面であり、変形して密着した状態にあるときは平面形状であり、変形する前の「自然状態において」は「内側凹陥形状」であることが読み取れる。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)を踏まえると、「自然状態」とは変形する前の状態であって、外力であるマグネット部材による引力が加わっていない状態を意味することは明らかであり、このことは、本件特許明細書【0030】の記載とも整合するものである。
ウ したがって、本件発明1~13における「第1貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈し、」及び「前記第2貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈し、」にいう「自然状態において」は明確である。
(2) 斜面の意味について
ア 前記(1)イ(イ)から、両貼合面は変形して密着状態にあるときは平面形状になるから、変形前の「内側凹陥形状」は平面形状ではないことになる。
イ そして、前記(1)イ(ア)のとおり、「第1貼合面」は「第1斜面を有[する]」ことにより、「自然状態において内側凹陥形状を呈[する]」から、前記アを踏まえると、平面形状でない「第1貼合面」は、少なくとも「第1斜面」と「第1斜面」と平行する関係にない面とからなること、同様に、平面形状でない「第2貼合面」は、少なくとも「第2斜面」と「第2斜面」と平行する関係にない面とからなることは明らかである。
ウ また、両貼合面は互いに対向する面であるから、「内側凹陥形状」の「内側」とは、「第1貼合面」においては「第2貼合面」側の反対側を意味し、「第2貼合面」においては「第1貼合面」側の反対側を意味するものといえる。
エ そうすると「内側凹陥形状」を呈する「第1斜面」は、「第1貼合面」から「第2貼合面」に向かって傾斜する面であり、「内側凹陥形状」を呈する「第2斜面」は、「第2貼合面」から「第1貼合面」に向かって傾斜する面であるものと理解される。
オ したがって、本件発明1~13における「第1貼合面は第1斜面を有し、」及び「第2貼合面は第2斜面を有し、」の「第1斜面」及び「第2斜面」は明確である。
(3) 内側凹陥形状について
ア 前記(2)エを踏まえると、「内側凹陥形状」とは、「第1貼合面」においては、「第1貼合面」から「第2貼合面」に向かって傾斜する面を有する形状であり、「第2貼合面」においては、「第2貼合面」から「第1貼合面」に向かって傾斜する面を有する形状であるものといえる。
イ(ア) ここで、請求人は、次のとおり主張する。
「「内側凹陥形状」について、明細書中の記載に当該語句が用いられ、実施形態に示された形状のことであることが説明されているとしても、「凹陥」という語は造語であり、各漢字の意味からは、基準面から一段落ち窪んだ有底の穴や溝が想起されるものであるから、このような明細書に記載された実施形態の形状と乖離した語句を用いている以上、請求項の記載が明確であるとはいえない。」
(イ) しかしながら、「凹陥」という語句は造語であり、当該語句は通常用いられているようなものではないから、請求項に記載の「語句」について、通常用いられている意味と明細書で定義されている意味が乖離している場合に、いずれの意味と解釈すべきか明確でない場合とは明らかに異なるものであり、本件発明1~13の「内側凹陥形状」の意味については、明細書において定義されている意味でしか解釈のしようがないのであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
ウ したがって、本件発明1~13における「第1貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈し、」及び「前記第2貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈し、」にいう「内側凹陥形状」は明確である。
(4) 小括
前記(1)~(3)のとおりであるから、本件発明1~13において、「斜面」、「内側凹陥形状」及び「自然状態」の意味は明確であり、「第1貼合面は第1斜面を有」することにより「第1貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈」することになる関係性、及び、「第2貼合面は第2斜面を有」することにより「前記第2貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈」することになる関係性について明確である。
2 無効理由2(サポート要件違反)について
前記1において検討したとおり、本件発明1~13は明確であり、発明の詳細な説明に記載していない形状まで含むものではないから、本件発明1~13は発明の詳細な説明に記載したものである。
3 無効理由3(進歩性の欠如)について
(1) 本件発明1の分説
本件発明1の構成を、後記(3)の対比の議論のために、便宜上次のように構成A~Gに分説する。なお、構成A~Gは、審判請求書において請求人が付したものである。
「【請求項1】
(構成A)複数の花弁状本体を備えるおもちゃの水風船であって、
(構成B)各前記花弁状本体は、第1縁部と第2縁部とを有し、各前記花弁状本体の第1縁部及び第2縁部は、軟質ゴムであり、
(構成C)各前記第1縁部に少なくとも1つの第1マグネット部材が取り付けられ、各前記第2縁部に少なくとも1つの第2マグネット部材が取り付けられ、
(構成D)各前記花弁状本体の第1縁部に第1貼合面が設けられ、前記第1マグネット部材は、前記第1縁部の前記第1貼合面とは反対側の内側部に取り付けられ、各前記花弁状本体の第2縁部に第2貼合面が設けられ、前記第2マグネット部材は、前記第2縁部の前記第2貼合面とは反対側の内側部に取り付けられ、
(構成E)各前記花弁状本体の第1貼合面は第1斜面を有し、これにより、前記第1貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈し、各前記花弁状本体の第2貼合面は第2斜面を有し、これにより、前記第2貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈し、
(構成F)前記花弁状本体で球体状を画成すると、各前記花弁状本体の前記第1縁部上の前記第1マグネット部材と隣り合う花弁状本体の前記第2縁部上の前記第2マグネット部材とが引力を生じて、前記花弁状本体の前記第1縁部の内側凹陥形状を呈する前記第1貼合面と隣り合う花弁状本体の前記第2縁部の内側凹陥形状を呈する前記第2貼合面とが互いに対向して変形して密着し、
(構成G)これにより前記花弁状本体が共同で水を貯める空洞を形成するようにする、おもちゃの水風船。」
(2) 各甲号証に記録された事項及び甲2発明等の認定
ア 甲2に記載された事項及び甲2発明の認定
(ア) 甲2に記載された事項
甲2(中国実用新案第201543247号明細書)には、以下の事項が記載されている。日本語訳は、請求人が提出した訳文に基づいて、当合議体が修正を行ったものである。甲3についても同様である。
a [0001]、[0002]
「
[図:0001436885000002.jpg]
」
(技術分野
[0001] 本実用新案は、水遊び用の遊戯具に関する。
背景技術
[0002] 従来の水遊び玩具は、通常、水鉄砲玩具であり、水鉄砲玩具は、水を噴出させるために玩具銃内の風船を指で押圧することを目的としている。このような玩具水鉄砲は長い間使用されており、子供に対する魅力が不十分である。)
b [0003]~[0009]
「
[図:0001436885000003.jpg]
」
(実用新案の内容
[0003] 本実用新案が解決しようとする技術的課題は、上記した従来技術の玩具水鉄砲の使用時間が長く、子供にとって魅力がないという欠点に対応した遊戯具を提供することである
[0004] 本実用新案が解決しようとする技術的解決手段は、合成後に中空ボールを形成する上部と下部を含み、前記上部、下部は半球状の上部、下部であり、前記上部、下部内に使用時に水を収容する半球状キャビティが設けられている遊戯具を構成する。
[0005] 本実用新案に係る遊戯具において、前記下部には第1の環状突起が設けられ、前記上部には前記第1の環状突起に係合する第2の環状突起が設けられている。
[0006] 本実用新案に係る遊戯具では、前記上部、下部の外面には、それぞれリブが設けられている。
[0007] 本実用新案に係る遊戯具において、前記上部、下部は、弾性材料製の上部、下部である。
[0008] 本実用新案に係る遊戯具は、以下の有益な効果を有する。
[0009] 本実用新案の遊戯具は、合成後に中空ボールを形成する上部と下部とを備え、前記上部、下部は半球状の上部、下部であり、前記上部、下部内には使用時に水を収容する半球状の空洞が設けられている。このような構成により、使用者は、使用時に上部と下部に水を入れた後に合わせることができ、さらに別の遊戯相手に狙いを定めて水を押し出し、遊戯の楽しさを増加させることができる。)
c [0015]~[0020]、[図1]~[図4]
「
[図:0001436885000004.jpg]
」
(具体的な実施形態
[0015] 図1~図4に示すように、本実用新案の遊戯具の第1実施例において、前記遊戯具は、合成後に中空ボールを形成する上部10及び下部20を含み、前記上部10、下部20は半球形であり、前記上部10、下部20内にはそれぞれ使用時に水を収容する半球状キャビティ100及び半球状キャビティ200が設けられている。
[0016] 上部10、下部20を使用時によく合わせるために、上部10の底部に第1の環状突起12が設けられ、それに応じて、下部20の頂部にも第1の環状突起12と係合する第2の環状突起22が設けられ、上部10と下部20とを合わせた後に正確に位置制限するために、上部10内に環状回避窪み13がさらに設けられる。
[0017] 遊戯具の強度を増加させるために、上部10及び下部20の外面にはそれぞれ補強リブが設けられ、上部10の補強リブは第1の補強リブ15及び第2の補強リブ18を含み、下部20の補強リブは第3の補強リブ25及び第4の補強リブ28を含み、第1の補強リブ15は半円形であり、第2の補強リブ18は板状である。美観を造形するために、第1の補強リブ15及び第2の補強リブ18は、それぞれ第3の補強リブ25及び第4の補強リブ28と同じである。造形の美観のために、上部10、下部20の上面に環状突起19が設けられていてもよい。
[0018] 遊戯具の水を押し出すことができるように、上部10、下部20は弾性材料で作製され、さらに上部10、下部20の表面はそれぞれ緑色と橙色であり、もちろん、上部10、下部20は他の鮮やかな色を選択してもよい。
[0019] 理解できるように、本実用新案は楕円球形又は他の形状とすることもでき、第1の補強リブ15及び第2の補強リブ18は、それぞれ第3の補強リブ25及び第4の補強リブ28と同じでなくてもよい。
[0020] 本実用新案は、上部10と下部20とを水に入れて水を満たし、さらに閉じて水面まで上げ、遊戯具内の水を手で強く押し出すことができ、遊戯具を別の遊戯相手に投げつけることもできる。)
「
[図:0001436885000005.jpg]
」
「
[図:0001436885000006.jpg]
」
「
[図:0001436885000007.jpg]
」
「
[図:0001436885000008.jpg]
」
(イ) 甲2から読み取れる認定事項
図1及び図4から、次の事項が読み取れる。
「第1の環状突起12の内周面と、第2の環状突起22の外周面が貼合面となり、互いに密着することにより、第1の環状突起12と第2の環状突起22が係合すること。」
(ウ) 甲2発明の認定
前記(ア)の記載事項及び前記(イ)の認定事項を総合すると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲2発明>
「水遊び用の遊戯具であって、([0001])
前記遊戯具は、合成後に中空ボールを形成する上部10及び下部20を含み、前記上部10、下部20は半球形であり、前記上部10、下部20内にはそれぞれ使用時に水を収容する半球状キャビティ100及び半球状キャビティ200が設けられ、([0015])
上部10、下部20を使用時によく合わせるために、上部10の底部に第1の環状突起12が設けられ、それに応じて、下部20の頂部にも第1の環状突起12と係合する第2の環状突起22が設けられ、([0016])
第1の環状突起12の内周面と、第2の環状突起22の外周面が貼合面となり、互いに密着することにより、第1の環状突起12と第2の環状突起22が係合し、(前記(イ)の認定事項)
遊戯具の水を押し出すことができるように、上部10、下部20は弾性材料で作製され、([0018])
上部10と下部20とを水に入れて水を満たし、さらに閉じて水面まで上げ、遊戯具内の水を手で強く押し出すことができ、遊戯具を別の遊戯相手に投げつけることもできる、([0020])
水遊び用の遊戯具。」
イ 甲3に記載された事項及び甲3技術事項の認定
(ア) 甲3に記載された事項
甲3(中国実用新案第212112652号明細書)には、以下の事項が記載されている。
a [0001]、[0002]
「
[図:0001436885000009.jpg]
」
(技術分野
[0001] 本実用新案は、玩具の構造の技術分野に関し、特に、カプセル玩具に関する。
背景技術
[0002] ガチャは、スピニングエッグ又はカプセルトイとも呼ばれる。一般に、複数の同じテーマの玩具モデルを一連にまとめ、それぞれ卵状の半透明プラスチックケースに入れ、対応する明細書を追加して対応するテーマのガチャに入れ、コインやカードの投入によりランダムに抽出する方式で販売する商品である。ガチャ球は、分解されるまでは確実な係合状態を保持すべきであり、また、使用者によって分解された後も還元組立の機能があるはずである。現在のガチャ玩具の構造は、分解した後、そのうちの半分を見失うことが容易であり、分解後、組立が容易に緩みやすく、玩具の体験に影響を与える。)
b [0021]~[0026]、[図1]~[図4]
「
[図:0001436885000010.jpg]
」
(具体的な実施形態
[0021] 当業者の理解を容易にするために、以下、実施形態及び図面を参照しながら本実用新案をさらに説明するが、実施形態に言及された内容は本実用新案を限定するものではない。以下、図面を参照しながら本実用新案を詳細に説明する。
[0022] 図1~図4に示すように、ハウジングと弾性接続部材1とを含み、前記ハウジングは上半球体2と下半球体3とを接続して形成され、前記上半球体2の外壁は弾性接続部材1の一端に接続され、前記下半球体3の外壁は弾性接続部材1の他端に接続され、前記上半球体2の下端面の両側にはいずれも挿着位置決め部材が設けられ、前記下半球体3の上端面の両側にはいずれも前記挿着位置決め部材と係合する挿着位置決め孔が設けられている。具体的には、本実用新案の実施形態は、構造が新規で、設計が巧みであり、上半球体2と下半球体3とが組み立てられたときに、挿着位置決め部材が前記挿着位置決め孔内に挿入され、上半球体2と下半球体3との接続の安定性と信頼性を保証し、本実用新案の実施形態は、使用者によって分解された後にも復元して組み立てられる機能を保証することができ、また、弾性接続部材1の設置により、上半球体2と下半球体3が分解して落下することがなく、本実用新案の実施形態の接続の堅牢性が強く、信頼性が高い。
[0023] 本実施形態に記載の卵玩具であって、前記挿着位置決め部材は、挿入柱4と弾性球体5とからなり、前記挿入柱4の一端が上半球体2の下端面に接続され、他端が弾性球体5に接続され、前記挿着位置決め孔は、前記挿入柱4と嵌合するスロット6と、前記弾性球体5に係合する球状チャンバ7とを含み、前記球状チャンバ7と前記スロット6とが連通する。具体的には、挿入柱4が前記スロット6に挿入されると、前記スロット6の内壁が前記弾性球体5を押して変形させ、弾性球体5が球形キャビティ7に入り、弾性球体5が変形を回復し、弾性球体5が球形キャビティ7内に係止され、挿着位置決め部材が挿着位置決め孔内に挿入された後の安定性と信頼性が保証され、緩みにくく、複数回の挿抜を行うことができる。)
「
[図:0001436885000011.jpg]
」
「
[図:0001436885000012.jpg]
」
「
[図:0001436885000013.jpg]
」
「
[図:0001436885000014.jpg]
」
「
[図:0001436885000015.jpg]
」
([0024] 本実施形態に記載の卵玩具において、前記上半球体2の下端面には、環状位置決めバー8が設けられ、前記下半球体3の上端面には、前記環状位置決めバー8と係合する環状溝9が設けられ、前記上半球体2と下半球体3とが貼り合わされて組み立てられる際に、環状位置決めバー8が環状溝9内に係止され、上半球体2と下半球体3との係合の正確性が保証される。
[0025] 本実施形態に記載の卵玩具において、前記弾性接続部材1は弾性テープである。具体的には、弾性テープは、弾性変形効果を備え、上半球体2と下半球体3との接続の安定性を保証するとともに、上半球体2と下半球体3との組立及び取り外しに影響を与えない。
[0026] 本実施形態に記載の卵玩具は、前記上半球体2の下端面に複数の第1の吸着磁石10が嵌設され、前記下半球体3の上端面に前記第1の吸着磁石10と協働して吸着する複数の第2の吸着磁石11が嵌設され、前記設置された第1の吸着磁石10と第2の吸着磁石11とが異磁性であり、第1の吸着磁石10と第2の吸着磁石11とが協働して吸着することにより、上半球体2と下半球体3の組立復帰後の安定性と信頼性を向上させる。)
(イ) 甲3技術事項の認定
前記(ア)の記載事項を総合すると、甲3には、次の技術事項(以下「甲3技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
<甲3技術事項>
「上半球体2と下半球体3とを接続して形成されるハウジングを含むカプセル玩具において、([0001]、[0022])
前記上半球体2の下端面に複数の第1の吸着磁石10が嵌設され、前記下半球体3の上端面に前記第1の吸着磁石10と協働して吸着する複数の第2の吸着磁石11が嵌設され、第1の吸着磁石10と第2の吸着磁石11とが協働して吸着することにより、上半球体2と下半球体3の組立復帰後の安定性と信頼性を向上させること([0026])。」
ウ 甲4に記載された事項及び甲4技術事項の認定
(ア) 甲4に記載された事項
甲4(特開2015-232365号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0025】
図1は、本発明の実施例に係る密封装置1の要部断面を示している。
【0026】
当該実施例に係る密封装置1は、ハウジング(シールハウジング)51とこのハウジング51に設けた軸孔52に挿通する回転軸61との間で機内側(油側)Aの密封流体(油)が機外側(大気側)Bへ漏洩しないようにシールする密封装置(エンジン用オイルシール)1である。図示するように軸孔52および回転軸61はその中心軸線0を水平方向に向けて設定されている。また回転軸61の回転停止時、密封流体は軸孔52内にて所定の高さ位置まで充満し、具体的には、回転軸61の中心軸線0の高さ位置と同等ないし略同等の高さ位置まで充満するものとされている。図ではこのときの液面水位を符号Hで示している。」
「【図1】
[図:0001436885000016.jpg]
」
「【0027】
密封装置1は、回転軸61の外周に装着されるスリンガー11と、ハウジング51の軸孔52内周に装着されるリップシール部材21との組み合わせにより構成されている。
【0028】
スリンガー11は、金属等の剛材製であって、回転軸61の外周面に固定(嵌合)されるスリーブ部12と、このスリーブ部12の一端(機内側端部)に設けられたフランジ部13とを一体に有し、更にフランジ部13の機外側端面13aにゴム状弾性体よりなる回転側リップ14が設けられている。フランジ部13の機外側端面13aにネジ溝は設けられておらず、よってフランジ部13の機外側端面13aは平滑面とされている。
【0029】
一方、リップシール部材21は、ハウジング51の軸孔52内周面に固定(嵌合)される金属等の剛材よりなる取付環22と、この取付環22に被着(加硫接着)されたゴム状弾性体23とを有し、このゴム状弾性体23によって、スリンガー11における回転側リップ14の先端部に摺動可能に密接するシールリップ(端面リップ)24と、スリンガー11に対し非接触の油回収リップ25と、スリンガー11におけるスリーブ部12の外周面に摺動可能に密接するダストリップ26が一体に設けられている。油回収リップ25はシールリップ24の機外側Bに配置され、ダストリップ26は油回収リップ25の更に機外側Bに配置されている。回転側リップ14はその基端部から先端部へかけて径寸法が徐々に拡大するテーパー状(漏斗状)のサイドリップとされ、シールリップ24もその基端部から先端部へかけて径寸法が徐々に拡大するテーパー状(漏斗状)のサイドリップとされているので、シールリップ24はその先端部が回転側リップ14の先端部の内周面に密接するものとされている。」
「【0034】
上記構成の密封装置1においては、回転軸61の回転時、シールリップ24がスリンガー11の回転側リップ14に摺動可能に密接することにより基本的なシール機能が発揮されるほか、回転軸61と共に回転するスリンガー11がフランジ部13および回転側リップ14による流体振り切り作用を発揮し、更にシールリップ24に設けられたネジ溝27がフランジ部13および回転側リップ14との相対回転に伴う流体ポンピング作用を発揮するため、シールリップ24および回転側リップ14間を通過する流体があってもこれを外周側(機内側A)へ戻すことが可能とされ、よって優れたシール機能が発揮される。」
「【0036】
また、スリンガー11におけるフランジ部13の機外側端面13aに回転側リップ14が設けられてこの回転側リップ14に対し静止側のシールリップ24が密接するため、この密接はリップ14,24同士が密接するものとされている。したがって弾性変形可能なリップ14,24同士が密接するため、シールリップ24が金属等の剛材製フランジ部13に密接する場合と比較してスキマが生じにくく、よって静止漏れが発生するのを一層有効に抑制することができる。」
(イ) 甲4技術事項の認定
前記(ア)の記載事項を総合すると、甲4には、次の技術事項(以下「甲4技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
<甲4技術事項>
「ハウジング(シールハウジング)51とこのハウジング51に設けた軸孔52に挿通する回転軸61との間で機内側(油側)Aの密封流体(油)が機外側(大気側)Bへ漏洩しないようにシールする密封装置(エンジン用オイルシール)1において、(【0026】)
密封装置1は、回転軸61の外周に装着されるスリンガー11と、ハウジング51の軸孔52内周に装着されるリップシール部材21との組み合わせにより構成されており、(【0027】)
スリンガー11は、金属等の剛材製であって、回転軸61の外周面に固定(嵌合)されるスリーブ部12と、このスリーブ部12の一端(機内側端部)に設けられたフランジ部13とを一体に有し、更にフランジ部13の機外側端面13aにゴム状弾性体よりなる回転側リップ14が設けられ、(【0028】)
リップシール部材21は、ハウジング51の軸孔52内周面に固定(嵌合)される金属等の剛材よりなる取付環22と、この取付環22に被着(加硫接着)されたゴム状弾性体23とを有し、このゴム状弾性体23によって、スリンガー11における回転側リップ14の先端部に摺動可能に密接するシールリップ(端面リップ)24が設けられ、(【0029】)
回転側リップ14はその基端部から先端部へかけて径寸法が徐々に拡大するテーパー状(漏斗状)のサイドリップとされ、シールリップ24もその基端部から先端部へかけて径寸法が徐々に拡大するテーパー状(漏斗状)のサイドリップとされているので、シールリップ24はその先端部が回転側リップ14の先端部の内周面に密接するものとされていること(【0029】)。」
エ 甲5に記載された事項及び甲5技術事項の認定
(ア) 甲5に記載された事項
甲5(特表2013-538435号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0131】
本発明は、以下に示されるように様々な分野で使用可能である新規な磁石の封止用閉止100を開示する。
【0132】
封止用閉止100の特定の実施態様を略図で例示する図1aによると、封止用閉止100は、a.複数の磁石要素18を組み込むように適合する複数の空洞16を持ち、主軸X、第1側部12及び第2側部14を有する第1の可撓性ストリップ10と;b.複数の磁石要素28を組み込むように適合する複数の空洞26を持ち、主軸X、第1側部22及び第2側部24を有する第2の可撓性ストリップ20とを含む。」
「【図1a】
[図:0001436885000017.jpg]
」
「【0133】
機械的に堅固な封止が封止用閉止100を経て提供される主な新規な要素は、第1のストリップ10の第1側部12に接続可能である第1の膜19、及び、第2のストリップ20の第1側部22に接続可能である第2の膜29である。
【0134】
第1の膜19の主な目的の一つは、第1のストリップ10と第1の膜19との間で、複数の空洞16内に第1のストリップ10の磁石要素18を封入して埋め込むことである。第2の膜29の主な目的の一つは、第2のストリップ20と第2の膜29との間で、複数の空洞26内に第2のストリップ20の磁石要素28を封入して埋め込むことである。」
「【0136】
図1aにて図示したように、第1のストリップ10及び第2のストリップ20は、互いに接触して、磁石要素18及び28が磁気的に互いに引き付けるように第1の膜19及び第2の膜29の側部から共に導かれる。この磁力は、封止を提供するのに適している。」
「【0154】
いくつかの実施態様によれば、前記封止用閉止は可撓性を有し、水を通さない。」
(イ) 甲5技術事項の認定
前記(ア)の記載事項を総合すると、甲5には、次の技術事項(以下「甲5技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
<甲5技術事項>
「様々な分野で使用可能である新規な磁石の封止用閉止100において、(【0131】)
封止用閉止100は、a.複数の磁石要素18を組み込むように適合する複数の空洞16を持ち、主軸X、第1側部12及び第2側部14を有する第1の可撓性ストリップ10と;b.複数の磁石要素28を組み込むように適合する複数の空洞26を持ち、主軸X、第1側部22及び第2側部24を有する第2の可撓性ストリップ20とを含み、(【0132】)
第1のストリップ10及び第2のストリップ20は、互いに接触して、磁石要素18及び28が磁気的に互いに引き付けるように第1の膜19及び第2の膜29の側部から共に導かれ、この磁力は、封止を提供するのに適しており、(【0136】)
前記封止用閉止は可撓性を有し、水を通さないこと(【0154】)。」
(3) 本件発明1について
ア 対比分析
本件発明1と甲2発明を対比する。
(ア) 構成Aについて
a 甲2発明の「水遊び用の遊戯具」は、「半球形であり」「弾性材料で作製され[る]」「上部10と下部20とを水に入れて水を満たし、さらに閉じて水面まで上げ」、「別の遊戯相手に投げつける」ものであるから、本件発明1の「おもちゃの水風船」に相当する。
b(a) 本件発明1の「花弁状本体」について、本件特許明細書には次の記載がある。
「【0037】
(実施例2)
図8を参照すると、本発明の実施例2のおもちゃの水風船100aは、複数の花弁状本体10aを備え、各花弁状本体10aは第1縁部11aと、第2縁部12aとを有し、各第1縁部11aには第1マグネット部材(図示せず)が取り付けられ、各前記第2縁部12aには第2マグネット部材(図示せず)が取り付けられる。実施例2に係るおもちゃの水風船100aは実施例1に係るおもちゃの水風船100と類似しており、相違点は、実施例2に係るおもちゃの水風船100aの花弁状本体10aの数が2つであり、各花弁状本体10aが半球殼体を呈して配置され、ている点にある。前記おもちゃの水風船100aは、各前記花弁状本体10aを各々連結するための連結部材50aをさらに備える。」
(b) 前記(a)の記載によると、本件発明1の「花弁状本体」には、2つの「花弁状本体」により「おもちゃの水風船」が形成されるもの、すなわち、「半球殻体」のものも含まれていると理解される。
c 前記bを踏まえると、甲2発明の「上部10と下部20」は、「半球形であり」、「合成後に中空ボールを形成する」ものであるから、本件発明1の「複数の花弁状本体」に相当する。
d したがって、本件発明1と甲2発明は、「複数の花弁状本体を備えるおもちゃの水風船」である点において一致する。
(イ) 構成Bについて
a 甲2発明の「上部10の底部に」「設けられ[る]」「第1の環状突起12」は、「第1の環状突起12」の一部と他部に分けられるところ、これらは、それぞれ本件発明1の「花弁状本体」の「第1縁部」及び「第2縁部」に相当する。
b そして、甲2発明の「下部20の頂部に」「設けられ[る]」「第2の環状突起22」においても、「第1の環状突起12」の一部と係合する部分と、他部と係合する部分に分けられるところ、この前者の部分及び後者の部分は、それぞれ本件発明1の「花弁状本体」の「第2縁部」及び「第1縁部」に相当する。
c 甲2発明においては、「上部10、下部20は弾性材料で作製され」、「第1の環状突起12」及び「第2の環状突起22」も弾性部材であるといえるから、このことは、本件発明1と「前記花弁状本体の第1縁部及び第2縁部は、弾性部材である」点において共通する。
d したがって、本件発明1と甲2発明は、「各前記花弁状本体は、第1縁部と第2縁部とを有し、各前記花弁状本体の第1縁部及び第2縁部は、弾性部材である」点において共通する。
e 一方、本件発明1と甲2発明は、構成Bに関して、次に示す点において相違する。
本件発明1においては、
「各前記花弁状本体の第1縁部及び第2縁部は、軟質ゴムであ[る]」のに対して、
甲2発明においては、
第1の環状突起12及び第2の環状突起22は弾性部材ではあるが、軟質ゴムであるのか不明な点。
(ウ) 構成Cについて
本件発明1と甲2発明は、構成Cに関して、次に示す点において相違する。
本件発明1においては、
「各前記第1縁部に少なくとも1つの第1マグネット部材が取り付けられ、各前記第2縁部に少なくとも1つの第2マグネット部材が取り付けられ[ている]」のに対して、
甲2発明においては、
第1の環状突起12及び第2の環状突起22には、マグネットが取り付けられていない点。
(エ) 構成Dについて
a 甲2発明においては、「第1の環状突起12の内周面と、第2の環状突起22の外周面が貼合面とな[る]」ところ、前記(イ)を踏まえると、「第1の環状突起12」の一部と「第2の環状突起22」の他部、「第1の環状突起12」の一部と「第2の環状突起22」の他部が係合するから、本件発明1と甲2発明は、「各前記花弁状本体の第1縁部に第1貼合面が設けられ」、「各前記花弁状本体の第2縁部に第2貼合面が設けられ[ている]」点において共通する。
g 一方、本件発明1と甲2発明は、構成Dに関して、次に示す点において相違する。
本件発明1においては、
「前記第1マグネット部材は、前記第1縁部の前記第1貼合面とは反対側の内側部に取り付けられ」、「前記第2マグネット部材は、前記第2縁部の前記第2貼合面とは反対側の内側部に取り付けられ[ている]」のに対して、
甲2発明においては、
第1の環状突起12及び第2の環状突起22には、マグネットが取り付けられていない点。
(オ) 構成Eについて
本件発明1と甲2発明は、構成Eに関して、次に示す点において相違する。
本件発明1においては、
「各前記花弁状本体の第1貼合面は第1斜面を有し、これにより、前記第1貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈し、各前記花弁状本体の第2貼合面は第2斜面を有し、これにより、前記第2貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈し[ている]」のに対して、
甲2発明においては、
第1の環状突起12の内周面及び第2の環状突起22の外周面は、斜面を有しておらず、斜面を有することにより内側に凹状となる形状ではない点。
(カ) 構成Fについて
本件発明1と甲2発明は、構成Fに関して、次に示す点において相違する。
本件発明1においては、
「前記花弁状本体で球体状を画成すると、各前記花弁状本体の前記第1縁部上の前記第1マグネット部材と隣り合う花弁状本体の前記第2縁部上の前記第2マグネット部材とが引力を生じて、前記花弁状本体の前記第1縁部の内側凹陥形状を呈する前記第1貼合面と隣り合う花弁状本体の前記第2縁部の内側凹陥形状を呈する前記第2貼合面とが互いに対向して変形して密着[する]」のに対して、
甲2発明においては、
第1の環状突起12及び第2の環状突起22には、マグネットが取り付けられておらず、マグネットが生じる引力により変形して密着するものではない点。
(キ) 構成Gについて
a 甲2発明において、「合成後に中空ボールを形成する」「上部10、下部20内にはそれぞれ使用時に水を収容する半球状キャビティ100及び半球状キャビティ200が設けられ[る]」ことは、本件発明1の「前記花弁状本体が共同で水を貯める空洞を形成する」ことに相当する。
b したがって、前記(ア)を踏まえると、本件発明1と甲2発明は、「前記花弁状本体が共同で水を貯める空洞を形成するようにする、おもちゃの水風船」である点において共通する。
c 一方、本件発明1と甲2発明は、構成Gに関して、次に示す点において相違する。
本件発明1においては、
「これにより」、すなわち構成Fを備えることにより、「前記花弁状本体が共同で水を貯める空洞を形成する」のに対して、
甲2発明においては、
本件発明1の構成Fに相当する構成を備えていない点。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の検討結果を総合すると、本件発明1と甲2発明の一致点及び相違点は、それぞれ次に示すとおりである。
(ア) 一致点
(構成A)複数の花弁状本体を備えるおもちゃの水風船であって、
(構成B′)各前記花弁状本体は、第1縁部と第2縁部とを有し、各前記花弁状本体の第1縁部及び第2縁部は、弾性部材であり、
(構成D′)各前記花弁状本体の第1縁部に第1貼合面が設けられ、各前記花弁状本体の第2縁部に第2貼合面が設けられ、
(構成G′)前記花弁状本体が共同で水を貯める空洞を形成するようにする、おもちゃの水風船、である点。
(イ) 相違点
a 相違点1(構成B)
本件発明1においては、
「各前記花弁状本体の第1縁部及び第2縁部は、軟質ゴムであ[る]」のに対して、
甲2発明においては、
第1の環状突起12及び第2の環状突起22は弾性部材ではあるが、軟質ゴムであるのか不明な点。
b 相違点2(構成C~F)
本件発明1においては、
「各前記第1縁部に少なくとも1つの第1マグネット部材が取り付けられ、各前記第2縁部に少なくとも1つの第2マグネット部材が取り付けられ」、
「前記第1マグネット部材は、前記第1縁部の前記第1貼合面とは反対側の内側部に取り付けられ」、「前記第2マグネット部材は、前記第2縁部の前記第2貼合面とは反対側の内側部に取り付けられ」、
「各前記花弁状本体の第1貼合面は第1斜面を有し、これにより、前記第1貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈し、各前記花弁状本体の第2貼合面は第2斜面を有し、これにより、前記第2貼合面は、自然状態において内側凹陥形状を呈し」、
「前記花弁状本体で球体状を画成すると、各前記花弁状本体の前記第1縁部上の前記第1マグネット部材と隣り合う花弁状本体の前記第2縁部上の前記第2マグネット部材とが引力を生じて、前記花弁状本体の前記第1縁部の内側凹陥形状を呈する前記第1貼合面と隣り合う花弁状本体の前記第2縁部の内側凹陥形状を呈する前記第2貼合面とが互いに対向して変形して密着し」、
「これにより前記花弁状本体が共同で水を貯める空洞を形成するようにする」のに対して、
甲2発明においては、
第1の環状突起12の内周面及び第2の環状突起22の外周面は、斜面を有しておらず、斜面を有することにより内側に凹状となる形状ではなく、
第1の環状突起12及び第2の環状突起22には、マグネットが取り付けられておらず、マグネットが生じる引力により変形して密着するものではない点。
ウ 相違点の判断
事案に鑑み、前記相違点2について検討する。
(ア) 甲2と甲3の組み合わせについて
a 前記(2)イ(イ)において示したとおり、甲3技術事項は、上半球体2と下半球体3とを接続して形成されるハウジングを含むカプセル玩具において、上半球体2の下端面と下半球体3の上端面を貼合面として、これらの面に第1の吸着磁石10と第2の吸着磁石を設けたものである。
b 一方、甲2発明は、上部10の底部に設けられた第1の環状突起12の内周面と、下部20の頂部に設けられた第2の環状突起22の外周面を、貼合面とするものであるから、甲3技術事項に倣って、甲2発明に第1の吸着磁石10と第2の吸着磁石を設けようとする場合、上部10の底部に前記第1の環状突起12を設けないようにし、下部20の頂部に第2の環状突起22を設けないようにし、上部10の底部と下部20の頂部を貼合面にして、これらの貼合面に吸着磁石を設けることになるところ、甲2発明において、第1の環状突起12と第2の環状突起22は、上部10と下部20を使用時によく合わせるために設けられたものであるから、これらの環状突起を設けないようにする動機づけがあるものでない。
c また、甲2発明の第1の環状突起12の内周面と第2の環状突起22の外周面に、甲3技術事項の第1の吸着磁石10と第2の吸着磁石を設けることも考えられるものの、そもそも甲2発明は、上部10の底部に第1の環状突起12を設け、下部20の頂部に第1の環状突起12と係合する第2の環状突起22が設けることで、上部10、下部20を使用時によく合わせるという課題を解決しているのであるから、甲3技術事項を適用しなくてはならない積極的な動機づけがあるものでもない。
d したがって、甲2発明に甲3技術事項を適用することは、当業者であっても容易に想到し得たことではない。
(イ) 甲2と甲4の組み合わせについて
a 前記(2)ウ(イ)において示したとおり、甲4技術事項は、ハウジング(シールハウジング)51とこのハウジング51に設けた軸孔52に挿通する回転軸61との間で機内側(油側)Aの密封流体(油)が機外側(大気側)Bへ漏洩しないようにシールする密封装置(エンジン用オイルシール)1であるところ、甲2発明は水遊び用の遊戯具であり、これらの技術分野は大いに異なるものであることを踏まえると、甲2発明に甲4技術事項を適用する動機づけは見いだせない。
b また、甲4技術事項は、ハウジング51と、このハウジング51に設けた軸孔52に挿通する回転軸61の間が密着しておらず、ある程度の空間が存在していることが前提であり、この空間をシールするために密封装置を設けるものであるのに対して、甲2発明の貼合面である第1の環状突起12の内周面と、第2の環状突起22の外周面は密着しているから、この点からも甲2発明に甲4技術事項を適用することは困難である。
c したがって、甲2発明に甲4技術事項を適用することは、当業者であっても容易に想到し得たことではない。
(ウ) 甲2と甲5の組み合わせについて
a 前記(2)エ(イ)において示したとおり、甲5技術事項は、第1の可撓性ストリップ10及び第2の可撓性ストリップ20に、複数の磁石要素18及び28を組み込み、磁石要素18及び28が磁気的に互いに引き付けるようにして、両ストリップ間を封止するものであるところ、当該封止は水を通さないものとされ、また様々な分野で使用可能なものとされている。
b しかしながら、前記(ア)で示した理由と同様の理由により、甲2発明に甲5技術事項を適用する動機づけは見いだせない。
c したがって、甲2発明に甲5技術事項を適用することは、当業者であっても容易に想到し得たことではない。
(エ) 第1斜面及び第2斜面について
a 仮に、甲2発明に甲3~5技術事項を適用したとしても、甲2~甲5には、本件発明1の構成E及び構成Fについては開示も示唆もされていない。
b(a) この点について、請求人は審判請求書の64~65頁において、甲4に、シールリップ24(斜めの部材)と回転側リップ14(斜めの部材)とが互いに対向して変形して密着することで密封空間(空洞)を形成する構成が記載されていると主張している。
(b) しかしながら、甲4技術事項の「回転側リップ14」及び「シールリップ(端面リップ)24」は、本件発明1の「第1斜面」及び「第2斜面」に相当するから、甲4には、本件発明1の「第1斜面」と「第2斜面」に相当する構成が密接していることが記載されているとはいえるとしても、本件発明1の「前記花弁状本体の前記第1縁部の内側凹陥形状を呈する前記第1貼合面と隣り合う花弁状本体の前記第2縁部の内側凹陥形状を呈する前記第2貼合面とが互いに対向して変形して密着[する]」構成、すなわち、第1斜面と第2斜面が変形することにより、第1貼合面と前記第2貼合面とが密着する構成については記載されているとは認められない。
(オ) 小括
したがって、前記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても、甲2発明、甲3~5技術事項に基づいて容易に発明できたものではない。
(4) 本件発明2~13について
本件発明2~13も、前記相違点2に係る構成を備えるものであるから、本件発明1と同様の理由により、当業者であっても、甲2発明、甲3~5技術事項に基づいて容易に発明できたものではない。
(5) 無効理由3(進歩性の欠如)についてのまとめ
よって、本件発明1~13は、当業者であっても、甲2発明、甲3~5技術事項に基づいて容易に発明できたものではないから、本件発明1~13に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものでない。
第7 むすび
以上のとおり、無効理由1~3はいずれも理由がないものであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1~13に係る特許は、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-800123