特許無効審判
2024-800003
透水性構造体
- 審判番号
- 2024-800003
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2019-090854
- 登録番号
- 6830123
- 請求日
- 2024年01月10日
- 審決日
- 2024年09月20日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求成立(無効)
- 当事者
- 【請求人】株式会社 ファイン工業
- 【請求人代理人】▲高▼山 嘉成
- 【被請求人】ダイドレ 株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 有家 秀郎
- 審判官 土屋 真理子
- 分類
- P1113.121-Z (E01C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第169条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第6830123号発明「透水性構造体」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6830123号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許無効審判事件は、被請求人が特許権者である特許第6830123号(以下「本件特許」という。令和元年5月13日出願、令和3年1月27日登録、請求項の数は1。)について、請求人が、特許請求の範囲の請求項1についての特許を無効とすることを求める事案である。
本件特許無効審判事件の、手続の経緯は、以下のとおりである。
令和 6年 1月10日: 審判請求書提出
同年 2月 6日: 審判請求書手続補正書提出
同月15日付け:答弁指令
同年 5月13日付け:書面審理通知
同月30日付け:審決の予告
なお、上記答弁指令及び審決の予告に対して、被請求人からは何ら応答がなかった。
第2 本件特許発明について
1 本件特許発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、本件特許公報の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。(分説記号AないしFは、当審で付した。)
「【請求項1】
A 集合体を形成している骨材の相互間隙間が水通路として作用し、かつ、この集合体が金属製の縁枠の囲繞空間に装填されることにより上記縁枠と協働して集水桝などの排水設備の上部開口を覆う透水性蓋体を構成している透水性構造体であって、
B 上記集合体が、上記透水性構造体の主要部を形成しているベース層と、このベース層の上側に施工されてこのベース層の表面を覆う表層とに分かれていて、表層の骨材が天然石である乾燥砂利でなると共に、上記表層及び上記ベース層のそれぞれの骨材が、セラミック繊維又はガラス繊維を混合したエポキシ系樹脂バインダーで固められ、
C 上記表層の層厚が10mm以下であり、
D 上記表層の骨材の粒径が上記ベース層の骨材の粒径よりも小さく、5mm前後に揃えられており、
E 上記縁枠が金属製の外フレームとこの外フレームに固定されている複数のメインバーとを備えていて、集合体の上記ベース層がこのメインバーにアンカリングされていることを特徴とする
F 透水性構造体。」
第3 請求人の主張
1 請求人の主張の概要
請求人は審判請求書(以下、「請求書」という。)において、「特許第6830123号発明の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」とし、その理由として、概ね以下のとおり主張している。
〔無効理由〕(特許法29条2項)
本件特許発明は、甲第1号証~甲第4号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願時に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。
2 証拠方法
請求人より提出された証拠は、以下のとおりである。
(「甲第1号証」等を、以下、その数字に従って「甲1」等と称することがある。)
甲第1号証 :RAIN WATER PERMABLE TECHNOLOGY SAFTY ASSOCIATION、一
般社団法人 透水技術安全協会、全8頁
甲第2号証 :特開2004-121171号公報
甲第3号証 :特開2004-162343号公報
甲第4号証 :実用新案登録第2510938号公報
甲第5号証 :「透水技術安全協会を設立」、産経新聞、平成26年10
月23日、13面、産経新聞社
甲第6号証 :一般社団法人透水技術安全協会の登記情報、2023年1
2月26日時点、一般財団法人民事法務協会
甲第7号証 :一般社団法人透水技術安全協会代表理事 近藤好男氏によ
る陳述書
甲第8号証 :タツミ印刷株式会社 営業部部長 上田勝大氏による証明
書
甲第9号証 :イトー事務所 代表 伊藤昌紘氏による証明書
甲第10号証:マツモト産業株式会社 部長 吉村浩氏による証明書
甲第11号証:株式会社庄治工業 代表取締役 上高原庄二氏による証明
書(当審注;「高」は異体字(はしご高))
甲第12号証:特願2019-090854号(当審注;本件特許に係る
出願)における新規性の喪失の例外証明書提出書
甲第13号証:ニュースリリース ダイドレ株式会社「ステンレス製 透
水化粧蓋」発売のお知らせ、クリエイト株式会社HP、
https://www.cr-net.co.jp/news/products/325/
甲第14号証:Tosk Remake Cover ステンレス製 透水化粧蓋、一般社団
法人 透水技術安全協会、ダイドレ株式会社
3 請求人の具体的な主張
本件無効審判事件において、請求人が無効理由とする理由についての、具体的な主張は、以下の(1)及び(2)のとおりである。
なお、請求書において請求人が言及する、上記(1)及び(2)以外の無効理由については、以下の(3)に示すとおり、本件無効審判事件において請求人が無効理由とするものではない。
(1)甲1の刊行物公知性
甲1は、一般社団法人透水技術安全協会が発行し頒布したカタログであり、遅くとも本件特許の出願前である2015(平成27)年3月31日には、特許法29条1項3号に規定の刊行物公知となった、先行技術文献である(請求書第11頁第5行-第14頁第4行)。
(2)甲1を主たる証拠とした公知刊行物に基づく進歩性欠如
本件特許発明は、甲1に記載された発明と対比して、相違点に係る本件特許発明の構成が、甲2ないし甲4に記載された事項から容易に想到できるものであるから、本件特許の出願前に公知となった刊行物である甲1ないし甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
したがって、本件特許発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明に係る本件特許は、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである(請求書第11頁第4行、第14頁第5行-第38頁第21行)。
(3)本件無効審判事件における無効理由とはしない理由についての言及
請求書の第38頁第22行-第39頁最終行において、請求人は、「被請求人への喚起」として、甲12ないし甲14を参照して、本件特許出願前の公知公用による無効理由について言及している。
しかしながら、本件特許出願前の公知公用による無効理由は、請求書における「被請求人への喚起」という見出し、及び、「公知公用に関する立証の困難さを考慮して、まずは、本件審判請求では、カタログによる刊行物公知に基づく進歩性欠如を理由とした無効理由を構成しているが、被請求人が、無効理由について、さらに争う姿勢をとるのであれば、公知公用による無効理由を構成した無効審判を別途請求する。」(請求書第39頁第17行-第21行)という記載に示されるとおり、本件無効審判事件とは別途の無効審判を請求する場合があることを被請求人に喚起する文脈で言及されるものである。
したがって、上記公知公用による無効理由は、本件無効審判事件において請求人が無効理由とするものではない。
第4 証拠の記載
請求人が提出した証拠のうち、本件特許発明の進歩性欠如に係る先行技術文献とされる甲1ないし甲4、及び、甲1の刊行物公知性の根拠とされる甲5ないし甲11の記載は、以下のとおりである。
1 甲1
(1)記載、写真及び図示
甲1には、次の記載、写真及び図示がある(下線は、当審において付した。以下、同様。)。
ア 関連する団体
第1葉には、「一般社団法人 透水技術安全協会」と記載されている。
第8葉には、「一般社団法人 透水技術安全協会」と記載され、住所として、「大阪市西区西本町1丁目11番7号 エイトビル西本町702」と記載されている。
イ 高性能/高機能舗装材
第4葉には、「高性能/高機能舗装材」に関し、次の記載及び図示がある。
(ア)「高性能/高機能舗装材
プラスファイバー
一般名称「繊維化合成樹脂」で知られ、エポキシ系樹脂にファイバー(特殊繊維)を混合した耐久性/耐薬品性等に優れたバインダー(接着剤)のことです。」
(イ)「
[図:0001416422000001.jpg]
」
(ウ)「高性能/高機能舗装材のバインダーはエポキシ系樹脂の中でファイバーが絡み合いエポキシ系樹脂により繊維群は補強され超強力な混合部材となります。
これにより従来のバインダーでは不可能とされた骨材が三次元立体構造に固定されることが可能となり、より超強力な接着性を実現させたのです。
バインダーに繊維状物質を混入すれば強度が増すことは知られていましたがバインダーとの混合工程で不均等による強度不足の不安がありましたが「プラスファイバー」の導入により安定した強度を保つことが出来ました。」
ウ 透水性グレーチング
第5葉には、「透水性グレーチング」に関し、次の記載、写真及び図示がある。
(ア)「透水性グレーチング「ファイングレーチング」とは現状のオープン構造の金属製グレーチングとは違いそのオープン箇所にプラスファイバーを用いた高性能・高機能舗装材を詰めて充実構造とした新しいタイプのグレーチングです。」
(イ)「
[図:0001416422000002.jpg]
」
(ウ)「従来の金属製グレーチングのオープン形状が車椅子・ベビーカー・歩行用補助器具など車輪の脱落等々日常生活における安全上の不安がありましたが、「ファイングレーチング」の導入により金属フレームと舗装材で合成形状をなしたグレーチングは安全に暮らすことができる確実な構造を備えているのです。
それは、プラスファイバーを用いた高性能・高機能舗装材で空間を埋める際、その上層部には表面骨材として天然石・砂利を使用することで高度な安全機能を確保致します。」
(エ)「
[図:0001416422000003.jpg]
」
(オ)「
[図:0001416422000004.jpg]
」
(カ)「
[図:0001416422000005.jpg]
」
エ 施工例
第7葉には、施工例として、次の写真がある。
(ア)「
[図:0001416422000006.jpg]
」
(イ)「
[図:0001416422000007.jpg]
」
(ウ)「
[図:0001416422000008.jpg]
」
(エ)「
[図:0001416422000009.jpg]
」
(2)図または写真より看取される事項
上記イ(ウ)の記載を踏まえると、上記イ(イ)の図のうち、左側の「高性能・高機能舗装材の構造」の図に、プラスファイバーによって骨材間に大きな空間がある三次元立体構造となることが示され、右側の「高性能・高機能舗装材の透水イメージ図」に、大量の透水がされることが示されることから、これらの図より、高性能・高機能舗装材は、骨材間の大きな空間が大量の透水を可能とすることが、看取される。
上記ウ(イ)及び(エ)の写真、及び上記ウ(カ)の図示より、透水性のファイングレーチングは、四周の金属フレームと、内部の複数のメインバーとを備えることが、看取される。
上記ウ(ア)の記載を踏まえると、上記ウ(カ)の図示より、透水性のファイングレーチングは、四周の金属フレームと、内部の複数のメインバーとで形成される、上方及び下方がオープンとなった箇所の空間に、高性能・高機能舗装材を詰めて充実構造としたものであることが、看取される。
上記ウ(イ)及び(エ)の写真、及び、上記エ(ア)ないし(エ)の写真より、透水性のファイングレーチングは、四周が金属フレームに囲まれた構造であることによって、従来の金属製グレーチングが用いられていた、側溝等の排水設備の上部開口を覆うことができる様子が、看取される。
上記ウ(ウ)の記載を踏まえると、上記ウ(イ)及び(エ)の写真より、透水性のファイングレーチングは、上層部の表面骨材が使用された高性能・高機能舗装材の表面が、略平坦に仕上げられている様子が、看取される。
上記ウ(カ)の図示より、透水性のファイングレーチングは、内部の複数のメインバーの上端が、四周の金属フレームの上端及び高性能・高機能舗装材の表面より下方に下げられており、上層部の表面骨材より下方の高性能・高機能舗装材が、内部の複数のメインバーに接して、四周の金属フレーム及び内部の複数のメインバーの下端まで充填されている様子が、看取される。
上記ウ(ウ)の記載を踏まえると、上記ウ(カ)の図示より、透水性のファイングレーチングは、高性能・高機能舗装材の、上層部の表面骨材の粒径が、下方の骨材の粒径よりも小さい様子が、看取される。
(3)記載された発明
上記(1)及び(2)より、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると、認められる。
なお、「高性能/高機能舗装材」と「高性能・高機能舗装材」の表記は、後者に統一した。
<甲1発明>
骨材がエポキシ性樹脂にファイバーを混合したバインダーによって三次元立体構造に固定され、骨材間の大きな空間が大量の透水を可能とする高性能・高機能舗装材と、
四周の金属フレームと、内部の複数のメインバーとを備える、透水性のファイングレーチングであって、
透水性のファイングレーチングは、四周の金属フレームと、内部の複数のメインバーとで形成される、上方及び下方がオープンとなった箇所の空間に、高性能・高機能舗装材を詰めて充実構造としたものであり、
透水性のファイングレーチングは、四周が金属フレームに囲まれた構造であることによって、従来の金属製グレーチングが用いられていた、側溝等の排水設備の上部開口を覆うことができ、
透水性のファイングレーチングは、四周の金属フレームと、内部の複数のメインバーとで形成されるオープン箇所の空間を、高性能・高機能舗装材で埋める際、その上層部には表面骨材として天然石・砂利を使用し、
透水性のファイングレーチングは、従来の金属製グレーチングのオープン形状が車椅子・ベビーカー・歩行用補助器具など車輪の脱落等々日常生活における安全上の不安があったのに対して、安全に暮らすことができる構造とし、上層部の表面骨材が使用された高性能・高機能舗装材の表面が、略平坦に仕上げられており、
透水性のファイングレーチングは、高性能・高機能舗装材の、上層部の表面骨材の粒径が、下方の骨材の粒径よりも小さく、
透水性のファイングレーチングは、内部の複数のメインバーの上端が、四周の金属フレームの上端及び高性能・高機能舗装材の表面より下方に下げられており、上層部の表面骨材より下方の高性能・高機能舗装材が、内部の複数のメインバーに接して、四周の金属フレーム及び内部の複数のメインバーの下端まで充填されている、
透水性のファイングレーチング。
2 甲2
(1)記載
甲2には、次の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】
・・・・
【0005】
また、土木用及び建築用に用いられている舗装用ブロック、溝蓋、内外装版、暗渠材として、従来からコンクリート二次製品が用いられている。コンクリート二次製品は、耐久性はあるが、非透水性で水が溜まり易く、滑り易い。さらに重量が重く、現場加工や施工性が悪く、製品規格外形状箇所に適用することは困難である。また、荷重制限のある屋上などへの敷設に適さず、内外装設置の場合、下地処理が大掛かりとなる。
・・・・
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明では、上述の特許文献を初めとする従来技術の問題点を解決する連通空隙を備えた物体を形成するための資材及びその資材の製造方法を提供することを課題としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため請求項1の発明では、単一種類の粒子又は粒子状の固形物からなる集合体、又は複数種類の粒子又は粒子状の固形物を混合して形成された集合体を、常温下でエポキシ系のセラミックス繊維が混入する繊維化合成樹脂で硬化させることにより、多数の連通空隙を有する物体を形成する資材を形成するようにした。
・・・・
【0012】
請求項1の発明において、粒子又は粒子状の固形物として細石、砕石、プラスチック片、ガラス片(ガラス製品としてのビー玉、おはじき等を含む)、ウッドチップ、木の枝、ゴム片、籾殻、貝殻、わら及びヘゴ材等の固形物の集合体を使用することができる。このうち、細石、プラスチック片、ガラス片、ウッドチップ、ゴム片、貝殻、ヘゴ材等の固形物は廃材(リサイクル資源)を使用することができ、廃材を使用すると資源の有効利用を図ることができると共に、製造に要する材料費の低減化を図ることができる。また、請求項2の発明において、芯材として使用するシュロ製、わら製、布製、麻製、合成繊維製等の紐や縄も、廃材をリサイクル使用することもできる。
【0013】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
図1~図4は、請求項1、3の発明の製造方法で製造される資材で植木鉢100を製造する工程の段取を示す概念図である。図1において、外枠1と内枠2の間に資材3が充填されている。
【0014】
この資材3は、粒径(最大寸法)が5mm以下の多数の細石、又は粒径が5~20mmの多数の砕石で構成されている。図1では、外枠1と内枠2とを実際に植木鉢100を形成する際と同じ相対的な位置関係となるように配置しており、両者の間に形成された空間に資材3が充填されている。充填は、外枠1の周りから打撃し、あるいは充填部を上から打撃して均一な状態になるように行い、この充填された資材3を図示しない計重量器にかけ、充填量(重量)を計測する。
【0015】
図2は、図1で外枠1と内枠2の間に充填した資材3を矢印4で示すようにボール7に移し、さらに矢印5で示すようにカーボン繊維等のセラミックス繊維が混入するエポキシ系繊維化合成樹脂6をボール7内の資材3に供給する様子を示している。
・・・・
【0035】
図11は、実施例1,2で製造された植木鉢100の斜視図である。全体に渡って通気性と透水性を有するように構成されており、底部に水抜き孔を設けなくても、側壁11や図示しない底壁から過剰な水分を外部へ排出することができる。さらに植木鉢100は、充填された土10に植物の生育に必要十分な酸素を供給することができる。
・・・・
【0039】
図15(1)はポーラスブロック103(図14)を舗装用ブロックとツリーサークルとして使用した場合、図15(2)は浴室の床にポーラスブロック103(図14)を設置した場合、図15(3)は植樹帯の縁石としてポーラスブロック103(図14)を設置した場合の斜視図である。これらのようにポーラスブロックをそれぞれ設置することにより排水が良好となり、表面に水が溜まらなくなり、歩行時にすべりにくくなる。また、ツリーサークルには雑草やゴミが付着しない。
・・・・
【0048】
【発明の効果】
請求項1の連通空隙を備えた物体を形成するための資材の製造方法の発明では、粒子又は粒子状の細石、砕石、プラスチック片(廃材を含む)、ガラス片(ビー玉、おはじき等のガラス製品を含む)、ウッドチップ、木の枝、ゴム片、籾殻、わら、ヘゴ材及び貝殻等の固形物の集合体(資材3)を単一で又は複数を混合して構成し、エポキシ系繊維化合成樹脂6で硬化させるようにしたので、常温で資材8を製造することができる。
【0049】
また、資材8はエポキシ系の繊維化合成樹脂6で硬化させるので、多数の空隙12(連通空隙)を形成して優れた通気性を呈し、軽量でかつ靭性に富んで割れにくく優れた耐久性を備えることができる。」
(2)技術事項
上記(1)より、甲2には、次の技術事項(以下、「甲2技術事項」という。)が記載されていると、認められる。
<甲2技術事項>
従来の舗装用ブロックや溝蓋等について、コンクリートを用いたものは非透水性で水が溜まり易かったことを考慮して、多数の連通空隙を備えて透水性を有し、排水が良好となり、表面に水が溜まらなくなり、歩行時にすべりにくくなる物体を提供する技術において、
多数の連通空隙を備えて透水性を有する物体を形成するうえで、粒子である細石、砕石等の資材に供給して硬化させるエポキシ系繊維化合成樹脂に混入させる繊維として、セラミック繊維を用いること。
3 甲3
(1)記載
甲3には、次の記載がある。
「【0020】このような多孔質に混合した状態で、各種の用途に応じた成型を行なう。例えば、適当なサイズで適当な形状のブロック状や盤状に成型しておくと、透水性を要する場所に敷いたりできる。道路にする場合は、図1のように、地盤1の上に敷きならして、基盤層2とする。
【0021】このように粒状の溶融スラグをポルトランドセメントと混合し多孔質に形成した場合、ガラスカレットや天然石などに比べると、耐磨耗性が劣るので、道路の表層には適しないが、荷重には耐えられるので、表層3の下側の基盤層2を厚めに積層しておけば、車の通る道路としても適している。この基盤層2の厚みは、2cm以上が適している。
【0022】道路などの表層は、美観や耐磨耗性が要求されるので、ガラスカレットや天然石を樹脂で接合してなる透水構造が適している。したがって、色ガラスカレットと天然石の砂利とエポキシ系の樹脂を混合してなる舗装材を前記の基盤層2の上に敷きならして、表層3とする。この表層3は高価であるため、5~15mm程度の厚さが適している。最後に、コテなどで平らに仕上げて、養生すると、完成である。」
(2)技術事項
上記(1)より、甲3には、次の技術事項(以下、「甲3技術事項」という。)が記載されていると、認められる。
<甲3技術事項>
透水性を要する場所に用いる多孔質に形成した基盤層及び基盤層の上の透水構造である表層において、
美観や耐摩耗性が要求されることから天然石を樹脂で接合してなる表層は、高価であるため、5~15mm程度の厚さとすること。
4 甲4
(1)記載
甲4には、次の記載がある。
「【0014】透水性素材2は、粒径1.0~8.0ミリの天然石8、好ましくは粒径4~8ミリの天然石に、適当な量の硬化剤と硬化促進剤を混合したエポキシ樹脂9を重量で3~7%混合したものである。
・・・・
【0016】底面5に設けられた窪み7は基材の剛性を損なうことなく重量の軽減を目的としている。骨材8として直径4~8ミリの天然石を用い、この天然石に数%のエポキシ樹脂を混合した透水性素材2は、既に各地の道路公園等の歩道用に舗装材として使用実績があり、透水性能やその性能保持は充分な実績がある。
・・・・
【0021】
【考案の効果】本考案の透水性溝蓋によれば、表面がほぼ平滑であり、ハイヒールを引掛けたり、また、ベビーカーを押す歩行者にも安全であり、一種の透水性素材の充填層だけで排水性能も充分確保され、しかも、鋳鉄製基材は下部のアーチ形断面で支架されるため強度的にも十分支持力を保有し、且つ、鋳鉄製基材の形状を工夫することにより、デザイン性にも優れ、タイやが溝蓋上にかかり、急発進、急ブレーキを掛けるような恐れのある場所でも、中段部の曲面をもつジョウゴ形スリットを構成する山形状突出部を間隔をあけて上面まで突設させることにより、透水性骨材の緊締と、骨材間の空隙率も効率的に安定し、且つデザイン性と合わせて車輌の通行にも充分耐え得る、比較的軽量の溝蓋、ます蓋とすることができる。」
(2)技術事項
上記(1)より、甲4には、次の技術事項(以下、「甲4技術事項」という。)が記載されていると、認められる。
<甲4技術事項>
表面がほぼ平滑であり、ハイヒールを引掛けたり、また、ベビーカーを押す歩行者にも安全である透水性溝蓋において、
エポキシ樹脂を混合して形成する透水性素材の骨材とする天然石の粒径として、直径4~8ミリとすること。
5 甲5
甲5は、平成26年(2014年)10月23日の新聞記事であり、「透水技術安全協会を設立」と題されている。また、「■独占せず普及優先」の小見出しの後に、「同協会は3日に大阪市内で発足式を開き、・・・」と記載され、記事の最後には「・・・現在、一般社団法人の認可手続きを進めているという。」と記載されている。
6 甲6
甲6には、一般社団法人透水技術安全協会に関し、「名称 一般社団法人透水技術安全協会」、「主たる事務所 大阪市西区西本町一丁目11番7号エイトビル西本町702」、「法人成立の年月日 平成27年3月3日」、「登記記録に関する事項 設立 平成27年3月3日登記」と記載されている。
7 甲7
甲7は、「R5年12月20日」と記され(当審注;「R5年」は、令和5年(2023年)の意味と認める。)、「一般社団法人透水技術安全協会」「代表理事 近藤好男」の記名がされた、陳述書である。
同陳述書には、「当協会は、添付のカタログの制作及び印刷を、タツミ印刷株式会社様に依頼し、2015年3月9日に、1,000部の納品を受けました。そして、一般社団法人透水技術安全協会は、納品を受けたあとの2015年3月から順次、当該カタログを当協会の会員や関係者などの守秘義務のない者に配布しました。」と記載されている。
そして、添付書類として、「(1)一般社団法人透水技術安全協会のカタログ(表裏表紙を含めて全8頁)写し」が添付されている。
添付書類「(1)一般社団法人透水技術安全協会のカタログ(表裏表紙を含めて全8頁)写し」の内容は、甲1の内容と同じである。
8 甲8
甲8は、「2023年12月21日」と記され、「タツミ印刷株式会社」、「営業部部長」、「上田勝大」の記名がされた、証明書である。
同証明書には、「タツミ印刷株式会社は、一般社団法人透水技術安全協会様からのご依頼により、添付の貴協会のカタログの制作及び印刷を行い、2015年3月9日に、1,000部を、貴協会に納品したことに間違いありません。」と記載されている。
そして、添付書類として、「(1)一般社団法人透水技術安全協会のカタログ(表裏表紙を含めて全8頁)写し」及び「(2)納品書写し」が添付されている。
添付書類「(1)一般社団法人透水技術安全協会のカタログ(表裏表紙を含めて全8頁)写し」の内容は、甲1の内容と同じである。
添付書類「(2)納品書写し」には、「納品書 透水技術安全協会様」、「タツミ印刷株式会社」、「発行年月日 15年03月09日」、「品名 カタログ A4 8P」、「数量 1,000部」と、記載されている。
9 甲9
甲9は、「5年12月19日」と記され(当審注;「5年」は、令和5年(2023年)の意味と認める。)、「イトー事務所」、「代表」、「伊藤昌紘」の記名がされた、証明書である。
同証明書には、「私こと、伊藤昌紘は、2015年3月に、一般社団法人透水技術安全協会様から、添付の貴協会のカタログ(複数部数)の配布を受けました。私は、当該カタログについて、貴協会から守秘義務が課されたことはなく、配布を受けた当該カタログを、第三者に配布しました。」と記載されている。
そして、添付書類として、「(1)一般社団法人透水技術安全協会のカタログ(表裏表紙を含めて全8頁)写し」が添付されている。
添付書類「(1)一般社団法人透水技術安全協会のカタログ(表裏表紙を含めて全8頁)写し」の内容は、甲1の内容と同じである。
10 甲10
甲10は、「5年12月18日」と記され(当審注;「5年」は、令和5年(2023年)の意味と認める。)、「マツモト産業株式会社」、「部長」、「吉村浩」の記名がされた、証明書である。
同証明書には、「弊社は、2015年3月に、一般社団法人透水技術安全協会様から、添付の貴協会のカタログの配布を受けました。弊社は、当該カタログについて、貴協会から守秘義務が課されたことはありません。」と記載されている。
そして、添付書類として、「(1)一般社団法人透水技術安全協会のカタログ(表裏表紙を含めて全8頁)写し」が添付されている。
添付書類「(1)一般社団法人透水技術安全協会のカタログ(表裏表紙を含めて全8頁)写し」の内容は、甲1の内容と同じである。
11 甲11
甲11は、「R5年12月20日」と記され(当審注;「R5年」は、令和5年(2023年)の意味と認める。)、「株式会社庄治工業」、「代表取締役」、「上高原庄二」(当審注;「高」は異体字(はしご高))の記名がされた、証明書である。
同証明書には、「弊社は、2015年3月に、一般社団法人透水技術安全協会様から、添付の貴協会のカタログの配布を受けました。弊社は、当該カタログについて、貴協会から守秘義務が課されたことはありません。」と記載されている。
そして、添付書類として、「(1)一般社団法人透水技術安全協会のカタログ(表裏表紙を含めて全8頁)写し」が添付されている。
添付書類「(1)一般社団法人透水技術安全協会のカタログ(表裏表紙を含めて全8頁)写し」の内容は、甲1の内容と同じである。
第5 当審の判断
1 甲1の刊行物公知性について
甲5及び甲6より、平成26年10月23日時点で一般社団法人の認可手続きを進めていた透水技術安全協会は、平成27年3月3日に、一般社団法人透水技術安全協会として法人成立し、登記されたと認められる。
甲6に示される法人名及び住所と、甲1に記載される法人名及び住所が一致することから、甲1は、平成27年3月3日に法人成立した一般社団法人透水技術安全協会に関し、活動内容等を紹介する冊子(以下、請求人の用語を用いて「カタログ」という。)であると、認められる。
甲7には、一般社団法人透水技術安全協会へ、甲1に係るカタログの1,000部が、2015年3月9日に納品されたこと、及び、同月中に、同協会から守秘義務のない複数の者へ、甲1に係るカタログが配布されていたことが、陳述されている。
甲8ないし甲11には、甲7に陳述された内容と整合する事項について、事実に相違ないことを証明する旨が、記載されている。
そして、本件無効審判事件で提出された全ての事項、及び当事者の主張を考慮しても、2015年(平成27年)3月に法人成立した一般社団法人透水技術安全協会から、同年同月に、甲1に係るカタログが複数の者へ、守秘義務を課することなく配布されたことについて、疑うべき事情はない。
したがって、甲1に係るカタログは、本件特許出願より前の2015年3月中に頒布され、特許法29条1項3号に係る刊行物となったと、認められる。
2 甲1を主たる先行技術文献とした進歩性欠如の無効理由について
(1)対比
本件特許発明と甲1発明とを、対比する。
ア 構成Aに関して
甲1発明において、「骨材」が「エポキシ性樹脂にファイバーを混合したバインダーによって三次元立体構造に固定され」たものである「高性能・高機能舗装材」は、本件特許発明において、「骨材」が「形成」している「集合体」に、相当する。
甲1発明において、「骨材間の大きな空間が大量の透水を可能とする」構成は、本件特許発明において、「骨材の相互間隙間が水通路として作用」する構成に、相当する。
甲1発明において、「高性能・高機能舗装材と、四周の金属フレームと、内部の複数のメインバーとを備える、透水性のファイングレーチング」に関し、「四周の金属フレームと、内部の複数のメインバー」とは、全体として縁となる枠組みをなすことが明らかであることを踏まえると、本件特許発明において、「金属製の縁枠」に、相当する。
甲1発明において、「透水性のファイングレーチング」が、「四周の金属フレームと、内部の複数のメインバーとで形成される、上方及び下方がオープンとなった箇所の空間に、高性能・高機能舗装材を詰めて充実構造としたもの」である構成は、本件特許発明において、「この集合体が金属製の縁枠の囲繞空間に装填されること」で「透水性構造体」となる構成に、相当する。
甲1発明において、「透水性のファイングレーチング」が、「四周が金属フレームに囲まれた構造であることによって、従来の金属製グレーチングが用いられていた、側溝等の排水設備の上部開口を覆うことができ」る構成は、「側溝等」の「上部開口」と同様に「集水桝」などの「上部開口」を覆うことができることが明らかであることを踏まえると、本件特許発明において、「透水性構造体」が、「上記縁枠と協働して集水桝などの排水設備の上部開口を覆う透水性蓋体を構成している」ことに、相当する。
以上を整理すると、甲1発明は、「集合体を形成している骨材の相互間隙間が水通路として作用し、かつ、この集合体が金属製の縁枠の囲繞空間に装填されることにより上記縁枠と協働して集水桝などの排水設備の上部開口を覆う透水性蓋体を構成している透水性構造体」である、本件特許発明の構成Aに相当する構成を、有している。
イ 構成Bに関して
甲1発明において、「透水性のファイングレーチング」が有する「高性能・高機能舗装材」に関し、「その上層部には表面骨材として天然石・砂利を使用」している構成は、「表面骨材」を使用する「上層部」以外の箇所が、「上層部」と区別されて「表面」以外の主な部分となる層であることが明らかであること、及び、「表面骨材として」の「天然石・砂利」は乾燥させたうえで「骨材」として用いていることが技術常識から明らかであることを踏まえると、本件特許発明において、「上記集合体が、上記透水性構造体の主要部を形成しているベース層と、このベース層の上側に施工されてこのベース層の表面を覆う表層とに分かれていて、表層の骨材が天然石である乾燥砂利でなる」構成に、相当する。
甲1発明において、「高性能・高機能舗装材」が、「上層部の表面骨材」及び「下方の骨材」を含み、「骨材がエポキシ性樹脂にファイバーを混合したバインダーによって三次元立体構造に固定され」たものである構成と、本件特許発明において、「上記集合体」が、「上記表層及び上記ベース層のそれぞれの骨材が、セラミック繊維又はガラス繊維を混合したエポキシ系樹脂バインダーで固められ」たものである構成とは、「上記集合体」が、「上記表層及び上記ベース層のそれぞれの骨材が、繊維を混合したエポキシ系樹脂バインダーで固められ」たものである点で、共通する。
以上を整理すると、甲1発明は、本件特許発明の構成Bと、「上記集合体が、上記透水性構造体の主要部を形成しているベース層と、このベース層の上側に施工されてこのベース層の表面を覆う表層とに分かれていて、表層の骨材が天然石である乾燥砂利でなると共に、上記表層及び上記ベース層のそれぞれの骨材が、繊維を混合したエポキシ系樹脂バインダーで固められ」る点で、共通する構成を有している。
ウ 構成Dに関して
甲1発明において、「高性能・高機能舗装材の、上層部の表面骨材の粒径が、下方の骨材の粒径よりも小さ」い構成は、本件特許発明において、「上記表層の骨材の粒径が上記ベース層の骨材の粒径よりも小さ」い構成に、相当する。
エ 構成Eに関して
甲1発明において、「四周の金属フレーム」及び「内部の複数のメインバー」のそれぞれは、本件特許発明において、「金属製の外フレーム」及び「複数のメインバー」のそれぞれに、相当する。
甲1発明において、「四周の金属フレーム」と「内部の複数のメインバー」とが、「高性能・高機能舗装材を詰め」るべき「上方及び下方がオープンとなった箇所の空間」を形成する構成は、「内部の複数のメインバー」が「四周の金属フレーム」に固定されることで、両者が「上方及び下方がオープンとなった箇所の空間」を形成することが明らかであることを踏まえると、本件特許発明において、「複数のメインバー」が「外フレームに固定されている」構成に、相当する。
甲1発明において、「上層部の表面骨材より下方の高性能・高機能舗装材が、内部の複数のメインバーに接して、四周の金属フレーム及び内部の複数のメインバーの下端まで充填されている」構成は、「上層部の表面骨材より下方の高性能・高機能舗装材」が「四周の金属フレームと、内部の複数のメインバーとで形成される、上方及び下方がオープンとなった箇所の空間」から「下方」に脱落しないよう固定されていることが明らかであること、及び、「エポキシ性樹脂にファイバーを混合したバインダー」を有する「上層部の表面骨材より下方の高性能・高機能舗装材」が「メインバーに接」する箇所において「メインバー」に固定されることが明らかであることを踏まえると、本件特許発明において、「集合体の上記ベース層がこのメインバーにアンカリングされている」構成に、相当する。
以上を整理すると、甲1発明は、「上記縁枠が金属製の外フレームとこの外フレームに固定されている複数のメインバーとを備えていて、集合体の上記ベース層がこのメインバーにアンカリングされている」、本件特許発明の構成Eに相当する構成を、有している。
オ 構成Fに関して
甲1発明において、「透水性のファイングレーチング」である構成は、本件特許発明において、「透水性構造体」である構成Fに、相当する。
カ 一致点
上記ア~オより、本件特許発明と甲1発明とは、次の一致点において一致する(一部相当する構成に関し、当審においてB’、D’の符号を付した。)。
<一致点>
A 集合体を形成している骨材の相互間隙間が水通路として作用し、かつ、この集合体が金属製の縁枠の囲繞空間に装填されることにより上記縁枠と協働して集水桝などの排水設備の上部開口を覆う透水性蓋体を構成している透水性構造体であって、
B’ 上記集合体が、上記透水性構造体の主要部を形成しているベース層と、このベース層の上側に施工されてこのベース層の表面を覆う表層とに分かれていて、表層の骨材が天然石である乾燥砂利でなると共に、上記表層及び上記ベース層のそれぞれの骨材が、繊維を混合したエポキシ系樹脂バインダーで固められ、
D’ 上記表層の骨材の粒径が上記ベース層の骨材の粒径よりも小さく、
E 上記縁枠が金属製の外フレームとこの外フレームに固定されている複数のメインバーとを備えていて、集合体の上記ベース層がこのメインバーにアンカリングされている、
F 透水性構造体
キ 相違点
そして、本件特許発明と甲1発明とは、次の相違点において、相違する。
<相違点1>
「骨材」を固める「エポキシ系樹脂バインダー」に混合する「繊維」に関し、
本件特許発明においては、「セラミック繊維又はガラス繊維」と特定されているのに対し、
甲1発明においては、そのように特定されていない点。
<相違点2>
「骨材」に「天然石」を用いる「表層」の「層厚」が、
本件特許発明においては、「10mm以下」と特定されているのに対し、
甲1発明においては、そのように特定されていない点。
<相違点3>
「表層の骨材の粒径」が、
本件特許発明においては、「5mm前後に揃えられて」いると特定されているのに対し、
甲1発明においては、そのように特定されていない点。
(2)判断
ア 相違点1について
甲1発明は、高性能・高機能舗装材に用いるエポキシ系樹脂に混合するファイバーについて、具体的なファイバーの種類を特定していないところ、実際に高性能・高機能舗装材を製造するうえでは、具体的なファイバーを選択して製造を行う必要があるから、甲1発明に接した当業者には、使用する具体的なファイバーとして、骨材を三次元立体構造に固定して、骨材間の大き
な空間により大量の透水を可能とする、という甲1発明の機能に整合する公知のファイバーを選択する、動機付けがある。
公知の具体的なファイバーに関し、甲2には、上記第4の2(2)に示した甲2技術事項が示されている。
甲2技術事項において用いられるファイバーである、セラミック繊維は、多数の連通空隙を備えて透水性を有する物体を形成するうえで、粒子である細石、砕石等の資材に供給して硬化させるエポキシ系繊維化合成樹脂に、混入させる繊維であるから、透水を可能とする甲1発明の機能に整合する公知の繊維(ファイバー)であることが明らかである。また、甲1発明が、側溝等の排水設備の上部開口を覆うことができる透水性のファイングレーチングを提供するのに対し、甲2技術事項は、従来技術の舗装用ブロックや溝蓋等について、コンクリートを用いた物は非透水性で水が溜まり易かったことを考慮して、多数の連通空隙を備えて透水性を有する物体を提供するから、甲1発明と甲2技術事項とは、技術分野、及び、透水性を備えるものを提供するという課題解決手法において、共通している。
そして、甲1発明において、使用する具体的なファイバーとして、甲2技術事項において用いられている公知のファイバー(繊維)である、セラミック繊維を採用することについて、阻害要因があることを示すような記載は、甲1及び甲2中に、見いだすことができない。
また、相違点1に係る構成の効果に関し、本件明細書の段落【0022】には、次の記載がある。
「【0022】
図2には無機繊維を混合した樹脂バインダー40で固められた骨材によって形成される3次元立体構造を説明的に示している。同図のように骨材31,21が無機繊維を混合した樹脂バインダーで固められていると、骨材21,31の相互間に広い隙間Sが形成されて高い排水性能が発揮されるようになるだけでなく、ベース層20や表層30の集合体の形崩れも起こりにくくなる。この作用は、無機繊維にセラミック繊維又はガラス繊維を採用し、樹脂バインダーにエポキシ系樹脂バインダーを採用することによって顕著に発揮されることが判っている。」
しかしながら、上記段落【0022】に記載される効果は、無機繊維にセラミック繊維又はガラス繊維を採用し、樹脂バインダーにエポキシ性樹脂バインダーを採用すると、骨材間に広い隙間が形成されて高い排水性能が発揮される効果が顕著に発揮されるというものであるから、エポキシ性樹脂のバインダーとファイバーとを用いて三次元立体構造とする骨材間の大きな空隙により大量の透水を可能とする、甲1発明の効果と同質の効果であり、また、粒子にセラミック繊維を混入したエポキシ系繊維化合成樹脂を供給して硬化させ、多数の連通空隙を備えて透水性を有する物体を形成する、甲2技術事項の効果と同質かつ同程度の効果にとどまる。
したがって、本件発明1において上記相違点1に係る構成が生じる効果は、明細書の段落【0022】の記載を考慮しても、甲1発明及び甲2技術事項から、事前に予測される範囲を超えるものではない。
よって、甲1発明において、甲2技術事項を適用し、上記相違点1に係る本件発明の構成とすることは、当業者にとって動機付けがあり、容易に想到できた事項である。また、そうしたことによる効果も、事前に予測される範囲を超えるものではない。
イ 相違点2について
甲1発明は、「四周の金属フレームと、内部の複数のメインバーとで形成されるオープン箇所の空間を、高性能・高機能舗装材で埋める際、その上層部には表面骨材として天然石・砂利を使用」しており、「上層部」の具体的な厚さについては特定されていないところ、実際に「上層部には表面骨材として天然石・砂利を使用」するうえでは、「天然石・砂利を使用」する「上層部」の層厚を設定する必要がある。
「上層部」の層厚を設定するうえで、甲1発明においては、「上層部」の層厚は、「骨材として天然石・砂利を使用」して「表面」の層を形成する厚さであれば、足りることが明らかである。また、上記第4の3(1)に摘記した甲3の段落【0022】の記載に示されるように、「美観や耐摩耗性が要求」されることから「天然石を樹脂で接合してなる透水構造」の「表層」は、「高価である」ことが、技術常識であることを踏まえると、甲1発明に接した当業者には、「上層部」の層厚について、費用の面から高価となり過ぎない程度の厚さに押さえることについて、動機付けがある。
そして、甲3には、上記第4の3(2)に示した甲3技術事項が示されており、甲3技術事項には、上述した「天然石を樹脂で接合してなる透水構造」の「表層」は、「高価である」という技術常識とともに、当該「表層」の具体的な厚さとして、「5~15mm程度の厚さ」とすることが、示されている。
そうすると、甲1発明において、「表面骨材として天然石・砂利を使用」した「上層部」の層厚を設定するうえで、甲3技術事項において「天然石を樹脂で接合してなる透水構造」の「表層」の厚さとして示される「5~15mm程度」のうち、費用の面から薄い範囲の厚さを選択し、もって上記相違点2に係る「10mm以下」という本件特許発明の構成に至ることは、当業者であれば容易に想到し得た事項である。
また、相違点2に係る構成の効果に関し、本件明細書の段落【0012】には、次の記載がある。
「【0012】
本発明に係る透水性構造体では、上記表層の層厚が10mm以下であることが望ましい。表層に使用される骨材は、比較的高価な天然石である乾燥砂利でなり、主な使用目的は装飾性を高めるためであるので、表層の骨材の使用量は必要最小限度にすることが望ましい。この観点から表層の層厚は10mmもあれば十分であり、そうすることによって、当該透水性構造体の低コスト化を図りやすくなる。この作用は、上記表層の骨材の粒径が上記ベース層の骨材の粒径よりも小さい場合にも発揮される。」
しかしながら、上記段落【0012】に記載される効果は、高価な材料を用いる層厚を抑えて低コスト化を図るというものであるから、甲1発明、及び甲3技術事項に示される技術常識から、事前に予測される範囲を超えるものではない。
したがって、甲1発明において、甲3技術事項のうち薄めの層厚を適用し、上記相違点2に係る本件特許発明の構成とすることは、当業者にとって動機付けがあり、容易に想到できた事項である。また、そうしたことによる効果も、事前に予測される範囲を超えるものではない。
ウ 相違点3について
甲1発明は、「従来の金属製グレーチングのオープン形状が車椅子・ベビーカー・歩行用補助器具など車輪の脱落等々日常生活における安全上の不安があったのに対して、安全に暮らすことができる構造とし、上層部の表面骨材が使用された高性能・高機能舗装材の表面が、略平坦に仕上げられ」たものであるから、「天然石・砂利を使用」する「上層の表面骨材」の粒径について、十分安全な程度に表面の凹凸を低減できる粒径とする、動機付けがある。
甲4には、上記第4の4(2)に示した甲4技術事項が示されており、甲4技術事項は、「表面がほぼ平滑であり、ハイヒールを引掛けたり、また、ベビーカーを押す歩行者にも安全」である「透水性溝蓋」において、「エポキシ樹脂を混合」して形成する「透水性素材」の「骨材」とする「天然石」の粒径として、「直径4~8ミリ」とする構成を有している。
そうすると、甲1発明において、「天然石・砂利を使用」する「上層の表面骨材」の粒径について、十分安全な程度に表面の凸凹を低減できる粒径として、甲4技術事項に示される「直径4~8ミリ」に揃え、もって上記相違点3に係る本件特許発明の構成に至ることは、当業者であれば容易に想到し得た事項である。
また、相違点3に係る構成の効果に関し、本件明細書の段落【0025】には、次の記載がある。
「【0025】
・・・・(前略)・・・・。また、この透水性舗装構造において、表層30に使用される骨材31として粒径が5mm前後のものを採用すると、路面(表層30の表面)に現れる凹凸が目立たなくなって、上記した装飾性が良好に発揮され、周囲の景観が顕著に高まるだけでなく、自動車の走行や駐車に際して雑音や振動の軽減に役立ち、さらに自動車のタイヤや人の足がスリップしにくくなって、特に歩行に際して足や身体の疲れを軽減することにも役立つ。」
しかしながら、上記段落【0025】に記載される効果は、表面の凸凹を目立たないものとして安全にも資するというものであるから、甲1発明において「安全な構造とし、上層部の表面骨材が使用された高性能・高機能舗装材の表面が、略平坦に仕上げられて」いること、及び甲4技術事項において「凹凸が目立たなく」なるという効果から、事前に予測される範囲を超えるものではない。
したがって、甲1発明において、甲4技術事項を適用し、上記相違点3に係る本件特許発明の構成とすることは、当業者にとって動機付けがあり、容易に想到できた事項である。また、そうしたことによる効果も、事前に予測される範囲を超えるものではない。
エ まとめ
上記アないしウのとおり、本件特許発明は、甲1発明、甲2技術事項、甲3技術事項、及び甲4技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、無効理由には理由があり、本件特許発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定において準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-800003