特許拒絶査定不服審判
2024-017659
バリ取り装置及びバリ取り方法
- 審判番号
- 2024-017659
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-185102
- 請求日
- 2024年11月05日
- 審決日
- 2026年01月20日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東芝産業機器システム株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人サトー
- 審判長/審判官
- 審判長 本庄 亮太郎
- 審判官 塩澤 如正
- 審判官 鈴木 貴雄
- 分類
- P18 .121-Z (B24B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-185102「バリ取り装置及びバリ取り方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 5月18日出願公開、特開2022- 74768〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年11月5日にされた特許出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 6年 4月25日付け:拒絶理由通知書による拒絶の理由の通知
同年 6月12日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月30日付け:拒絶をすべき旨の査定
(拒絶査定、以下「原査定」という。)
同年11月 5日 :本件審判(拒絶査定不服審判)の請求
第2 本件発明の認定
本願の請求項1~10に係る発明は、令和6年6月12日提出の手続補正書により補正がされた特許請求の範囲の請求項1、6に記載された事項、及び、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項2~5、7~10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、次の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
「 【請求項1】
バリ取り工具を装着したロボットにより、樹脂成形品の外面に生じているバリのバリ取りを行うバリ取り装置であって、
前記ロボットによる作業空間に位置して前記樹脂成形品がセットされるワーク台と、
前記ワーク台にセットされた前記樹脂成形品の外形を成す二面が交差する稜部をスキャンして3次元形状データを取得するレーザセンサと、
前記3次元形状データからバリの形状及び位置を認識する認識装置と、
前記認識装置の認識に基づいて前記ロボットのバリ取り動作のための動作データを生成する動作データ生成装置と、
前記動作データに従って前記ロボットを動作させるロボット制御装置とを具備してなるバリ取り装置。」
第3 原査定の拒絶の理由
本件発明に対する、原査定の拒絶の理由(理由1:特許法第29条2項)は、概略、次のとおりである。
「(進歩性)本件発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、引用文献1に記載された発明、例えば引用文献2に記載された周知の技術、及び、例えば引用文献3~4に記載された周知の技術に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
引用文献1:特開平8-141881号公報
引用文献2:特開昭61-125717号公報
引用文献3:特開平4-306704号公報
引用文献4:特開2000-61852号公報
第4 引用文献に記載された発明、周知の技術的事項の認定
1 引用文献1に記載された発明の認定
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、図面とともに次の記載がある(下線は当審にて付した。以下同様。)。
「【0022】
【実施例】以下、添付図面を参照し、本発明をその装置例及び方法例に基づいて、より詳細に説明する。なお、以下の装置例及び方法例では、垂直関節(リンク)形の多関節ロボットを用いたが、本発明をこれに限定するものではなく、水平関節形のロボット、その他のアーム形のロボットを用いる構成にしても良い。
【0023】(装置例)図1はバリ取り装置の構成例を示す概略図である。バリ取り装置Aは、図1に示すように、ハンドにバリ取りツール等を有するロボット1と、ロボット1のコントローラとして機能する制御装置2と、制御装置2に動作信号S1′,S1″を送出するコンピュータ3と、CCDカメラ4と、対象ワークWを固定する作業台(図を省略)とからなる。
【0024】ロボット1は、リンク形の多関節ロボットによって構成されている。ロボット1のハンド5には、バリ取りツール6と、三次元形状計測装置7とが取り付けられている。バリ取りツール6は、ワークW表面のバリBを除去するための工具であって、その具体例としては、カッタ、グラインダ等を挙げることができる。
【0025】三次元形状計測装置7は、ワークW表面の表面形状を計測する装置であって、その具体例としては、レーザレンジセンサ(レーザレンジファインダ)等を挙げることができる。レーザレンジセンサは、具体的に平面状のレーザ光とワーク面との交線の三次元位置を計測する装置である。なお、出力データは交線の形状を点列で表現したものとなる。
【0026】制御装置2は、コンピュータ3から動作信号S1′,S1″を受けてロボット1の位置・姿勢制御、及びバリ取りツール6の動作制御を行う。コンピュータ3は、CCDカメラ4及び三次元形状計測装置7の出力データ信号S2,S3を読み込み、所定の演算処理を行って制御装置2に動作信号S1′,S1″を送出する。なお、コンピュータ3としては、ロボット1の作業速度を高める観点から、画像解析等の処理能力に優れたワークステーションを用いることが望ましい。
【0027】CCDカメラ4は、ワークWの表面形状の特徴的な位置を計測する撮像装置として機能する。本装置例においては、ワークW表面形状の特徴的な箇所の位置を計測する位置計測手段としてCCDカメラ4を使用したが、本発明の構成をこれに限定するものではなく、他の撮像装置を使用しても良い。」
「【図1】
[図:0001433761000001.jpg]
」
「【0028】次に、コンピュータ3の処理内容について説明する。図2は本装置例におけるコンピュータの内部構造を示したブロック図である。コンピュータ3は、図2に示すように、教示・記憶装置8、大局的位置決定装置9、高精度位置決定装置10、三次元形状記憶装置11とを有する。
「【図2】
[図:0001433761000002.jpg]
」
【0029】教示・記憶装置8は、予めバリ取りの対象となるワークWの表面形状とバリBの発生率が高い面(拘束面)との関係データを教示データとして記憶する。教示データは、ワークWの外周面上に発生するバリBの性質に注目して決定する。ここで、図3はワークの構造を示している。
【0030】ワークWとして鋳物を例に挙げると、鋳型に液状の金属を流し込んでワークWを製造するため、通常、図3に示すように、鋳型の合わせ面にバリBが発生する。なお、ワークWの表面F1の外周上でバリBの発生率が高い箇所は拘束面F2として表すことができる。教示・記憶装置21へ教示データを入力する手段の例としては、CADを利用する方法、具体的に数値を手入力する方法等を挙げることができる。
【0031】大局的位置決定装置9は、教示・記憶装置8の教示データ、及びCCDカメラ4の画像データ(ワークWの位置データ)に基づき、対象ワークWの拘束面F2の大まかな位置を決定する。例えば、図5に示すように、CCDカメラ4にてワークWを撮影してワーク表面の特徴的な箇所Pの位置(例えば、コーナー部分)を決定する。そして、位置決定に対応した動作信号S1′を制御装置2に送出して、対象ワークWの拘束面F2の大まかな位置の近傍にロボット1のハンド5を誘導させる。
【0032】なお、本装置例では、大局的位置決定装置9におけるハンド5の誘導位置の決定において、CCDカメラ4の画像データを用いたが、その他の方法例としては、ハンド5の先端にポインタを設置して、対象ワークWの拘束面F2の大まかな位置にロボット1を手動で誘導してもよい。
【0033】三次元形状記憶装置11は、ワークWの拘束面F2の大まかな位置の近傍にハンド5が移動すると、三次元形状計測装置7が計測して得たワークW表面F1形状の部分データを蓄積して、高精度位置決定装置10に送出する。
【0034】高精度位置決定装置10は、教示・記憶装置8の教示データ、及び三次元形状記憶装置7(当審注:「11」の誤記と認める。)に記憶されたデータに基づいて対象ワークWの拘束面F2の位置を、より高精度で算出し、バリ取り経路を決定する。そして、バリ取り経路の信号S1″は制御装置2に送出され、ロボット1によりワークW表面F1のバリ取り作業が実行される。」
「【図3】
[図:0001433761000003.jpg]
」
「【0046】(3)ワーク表面の三次元的形状モデル利用型方法
先ず、バリ取りの代表ワークの表面形状と当該ワークの拘束面との関係データをコンピュータ3の教示・記憶装置8に記憶する(第1ステップ)。次に、作業台に固定した対象ワークWの拘束面F2の近傍に三次元形状計測装置7を誘導する(第2ステップ)。
【0047】続いて、三次元形状計測装置7にて得られた計測データ列を三次元形状記憶装置11にて複数記憶し、これらの記憶データを基に高精度位置決定装置10にて、図7に示すように、ワークW表面F1の形状モデルMを三次元的形状に再構成する(第3ステップ)。
【0048】そして、教示・記憶装置8に記憶されたバリB取りの代表ワークの表面形状と第3ステップにて得られたワークW表面F1の形状モデルとの間でマッチング演算を行い、対象ワークWの表面F1形状の位置を算出する(第4ステップ)。これにより、バリ取り装置AがワークW表面F1のバリB発生面として認識していた拘束面F2′を正確な拘束面F2″に修正できる。
【0049】なお、マッチング処理は、ワークW表面F1の形状モデルの各データと代表ワークの表面を平面パッチで近似したデータとの距離の総和が最も小さくなるような回転・移動変換を求めることにより行う。
【0050】第4ステップにて得られた対象ワークWの表面F1形状の位置データ、及び教示・記憶装置8に記憶された代表ワークの表面形状とワークの拘束面との関係データに基づいて対象ワークWのバリB発生箇所を推測してバリ取り経路を決定する(第5ステップ)。そして、制御装置2が、第5ステップにて決定されたバリ取り経路に沿ってバリ取りツール6を誘導して対象ワークWのバリ取り作業を実行する(第6ステップ)。」
「【図7】
[図:0001433761000004.jpg]
」
(2)引用文献1に記載されているといえる事項
上記(1)から、引用文献1には、次の事項が記載されているといえる。
ア 引用文献1の段落【0023】~【0024】、【0029】~【0030】の記載、及び、図1、図3の図示内容から、引用文献1には、バリ取りツール6をハンド5に取り付けたロボット1により、ワークWの表面F1に発生しているバリBの除去を行うバリ取り装置Aについての発明が記載されているといえる。
そして、引用文献1の段落【0023】、【0028】の記載、及び、図1~2の図示内容から、引用文献1記載の当該バリ取り装置Aは、作業台と、三次元形状計測装置7と、高精度位置決定装置10を含むコンピュータ3と、制御装置2とを備えるといえる。
イ 引用文献1の段落【0023】の記載から、上記アの作業台は、ワークWを固定するためのものである。そして、引用文献1記載のバリ取り装置Aは、ロボット1により、ワークWの表面F1に発生しているバリBの除去を行う(上記ア)ためのものであるから、当然に、ワークWを固定する作業台は、ロボット1による作業空間に位置しているといえる。
以上から、引用文献1記載の当該バリ取り装置Aは、ロボット1による作業空間に位置してワークWが固定される作業台を備えるといえる。
ウ 引用文献1の段落【0024】~【0025】の記載、及び、図1の図示内容から、上記アの三次元形状計測装置7は、ロボット1のハンド5に取り付けられ、ワークWの表面F1の表面形状を計測する装置であって、レーザレンジセンサ7を用いることができるといえる。そして、段落【0025】の記載から、当該レーザレンジセンサ7は、表面形状を計測するにあたり、平面状のレーザ光とワーク面との交線の三次元位置を計測し、交線の形状を点列で表現した出力データを出力するものであるといえる。さらに、段落【0033】、【0047】の記載、及び、図7の図示内容から、交線の形状を点列で表現した出力データは、表面形状を得るために複数出力されて、コンピュータ3の三次元形状記憶部11(段落【0028】)に蓄積して記憶されるものといえる。
以上から、引用文献1記載の当該バリ取り装置Aは、上記イと併せてみれば、作業台に固定されたワークWの表面F1と平面状のレーザ光との交線の三次元位置を計測して、交線の形状を点列で表現した出力データを複数出力することで表面形状を計測する三次元形状計測装置7としてのレーザレンジセンサ7を備えるといえる。
エ 引用文献1の段落【0033】~【0034】の記載、及び、図2~3の図示内容から、上記アのコンピュータ3の高精度位置決定装置10は、レーザレンジセンサ7(上記ウ)により計測され、三次元形状記憶装置11(上記ウ)に蓄積して記憶された、三次元位置を計測した複数の出力データ(上記ウ)に基づいて、ワークWのバリBの発生率が高い面である拘束面F2(段落【0029】)の位置をより高精度で算出する機能(以下「高精度位置決定装置10の拘束面位置算出機能」という。)を備えているといえる。そして、段落【0047】~【0048】及び図7の例では、当該高精度位置決定装置10の拘束面位置算出機能は、三次元形状記憶装置11に複数記憶された交線の形状を点列で表現した出力データから、ワークWの表面F1の形状モデルMを三次元的形状に再構成することで、拘束面F2の位置を算出するものであるといえ、ワークWの表面F1の形状モデルMには、当然に表面F1から突出するバリBの形状(図7)も含まれるといえる。
以上から、引用文献1記載の当該バリ取り装置Aは、三次元位置を計測した複数の出力データから、ワークWの表面F1のバリBの形状及びバリBの発生率が高い拘束面F2の位置を算出する高精度位置決定装置10の拘束面位置算出機能を備えるといえる。
オ また、上記アのコンピュータ3の高精度位置決定装置10は、引用文献1の段落【0034】の記載、及び、図2~3の図示内容から、上記エの拘束面位置算出機能による、拘束面F2の位置の算出に基づいて、ロボット1のバリ取り経路を決定し、当該バリ取り経路の信号S1″を制御装置2に送出するものといえる。そして、当該高精度位置決定装置10は、当該信号S1″を送出するために、当然に、当該信号S1″を生成する機能(以下「高精度位置決定装置10の信号生成機能」という。)を備えているといえる。
以上から、引用文献1記載の当該バリ取り装置Aは、高精度位置決定装置10の拘束面位置算出機能の拘束面F2の位置の算出に基づいて、ロボット1のバリ取り経路を決定し、当該バリ取り経路の信号S1″を生成する高精度位置決定装置10の信号生成機能を備えるといえる。
カ 引用文献1の段落【0023】、【0026】、【0034】、【0050】の記載、及び、図2の図示内容から、上記アの制御装置2は、ロボット1のコントローラとして機能するものであって、信号S1″を受けてロボット1の位置・姿勢制御及びバリ取りツール6の動作制御を行うものであるといえる。
以上から、引用文献1記載の当該バリ取り装置Aは、信号S1″を受けてロボット1の位置・姿勢制御及びバリ取りツール6の動作制御を行う制御装置2を備えるといえる。
(3)引用文献1に記載された発明
上記(1)~(2)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「バリ取りツール6を取り付けたロボット1により、ワークWの表面F1に発生しているバリBの除去を行うバリ取り装置Aであって、
前記ロボット1による作業空間に位置して前記ワークWが固定される作業台と、
前記作業台に固定された前記ワークWの表面F1と平面状のレーザ光との交線の三次元位置を計測して、交線の形状を点列で表現した出力データを複数出力することで表面形状を計測する三次元形状計測装置7としてのレーザレンジセンサ7と、
前記三次元位置を計測した複数の出力データから、ワークWの表面F1のバリBの形状及びバリBの発生率が高い拘束面F2の位置を算出する高精度位置決定装置10の拘束面位置算出機能と、
前記高精度位置決定装置10の拘束面位置算出機能の拘束面F2の位置の算出に基づいて前記ロボット1のバリ取り経路の信号S1″を生成する高精度位置決定装置10の信号生成機能と、
前記信号S1″を受けて前記ロボット1の位置・姿勢制御及びバリ取りツール6の動作制御を行う制御装置2と、を備えるバリ取り装置A。」
2 周知の技術的事項の認定
(1)引用文献2に記載された事項
引用文献2の、第1ページ右下欄第6行~第2ページ右上欄第3行には、次の記載がある。
「《産業上の利用分野》
本発明は、熱可塑性あるいは熱硬化性樹脂成形物の角部のバリ取り装置に関する。
《従来技術と問題点》
周知のように、熱可塑性あるいは熱硬化性樹脂成形物には成形物の角部にバリが突出する。
一方、これらの樹脂成形物は、冷却固化あるいは硬化する際に樹脂の混合比率などによって異なる特有な後収縮が生ずる。
従って、成形物に発生するバリは一様でなく異なった形態を示す。
このため、例えばロボットや油圧倣い装置によってこれを除去することは極めて難しかった。
すなわち、ロボットにおいては成形物のワークの形状データなどを、一度ティーチングして同一軌跡を反復させているが、上述したようにバリが成形物によって異なるため、ワークに多少の形状誤差があると、均一なバリ取りができなかった。
また、倣い装置においても、モデルになぞって軌跡を描くため、同じ問題があった。
さらに、この種の装置では、一般的にサーボ機構を採用しているため、装置が非常に高価となり、値段の割りには十分な性能が発揮されないこともあって実用化に至っていない。
このため、従来成形物のバリ取りは、専ら人手によってこれを除去していたが、時間がかかり不経済であって、しかも個人差もあることから均一性に欠けるという問題があった。
《発明の目的》
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、従来人手に頼っていた樹脂成形物のバリ取りを自動化し、作業時間を短縮するとともに、バリ取りが必要なワーク個々に直接ガイドローラーを倣わせて行なうので、均一なバリ取りが可能となり、さらには高価なサーボ機構を採用することなくこれらを達成できる比較的安価な合成樹脂成形物のバリ取り装置を提供することにある。」
(2)引用文献3に記載された事項
引用文献3の、段落【0010】には、図3とともに、次の記載がある(なお、丸付き数字は、例えば(1)のように、半角数字と半角括弧に下線を付して代替する。)。
「【0010】図3は比較的大きなバリと寸法偏差とを有する鋳物の模式図である。このような鋳物としてはアルミホイールがある。(1)は教示データから定まる鋳物の基準位置であり、図3では鋳物の位置と鋳物の基準位置とが一致しているが、鋳物の寸法偏差や教示誤差などにより、鋳物の位置と鋳物の基準位置との間に誤差が発生する。(2)は本実施例の第2段階に行う最終的な仕上げ加工を行う位置(3)は一定の押付け力制御により、鋳物の寸法偏差を許容し仕上げ加工が可能となる最大限度のバリの大きさ(4)は本実施例の第1段階に行う粗加工を行う位置を示す。」
「【図3】
[図:0001433761000005.jpg]
」
(3)引用文献4に記載された事項
引用文献4の、段落【0002】~【0003】には、図面とともに、次の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】金属を鋳造したり機械加工したりして製造される各種機械部品の各エッジには、所謂微細なバリが生じている。
【0003】これら微細なバリはそのままでは不都合を引き起こすので除去しておく必要があり、従来この微細なバリ取りは手作業または電着ダイヤモンド工具を先端に付けたロボットで行っていた。」
(4)周知の技術的事項1
上記(1)の記載から、次の事項は、本件出願前において周知の技術(以下「周知の技術的事項1」という。)であったと認められる。
「バリ取り装置で樹脂成形品のバリ取りを行うこと。」
(5)周知の技術的事項2
上記(2)~(3)の記載のほか、上記(1)にも記載されるように、次の事項は、本件出願前において周知の技術(以下「周知の技術的事項2」という。)であったと認められる。
「成形品の外形を成す二面が交差する稜部において、バリが発生しやすく、バリ取り加工の対象部位とすること。」
第5 本件発明と引用発明1との対比
1 相当関係
本件発明と引用発明1とを対比すると、次の相当関係があるといえる。
(1)引用発明1における「バリ取りツール6」は、その機能からみて、本件発明における「バリ取り工具」に相当し、以下同様に、「ロボット1」は「ロボット」に、「バリ取りツール6を取り付けたロボット1」は「バリ取り工具を装着したロボット」に、「バリB」は「バリ」に、「バリBの除去」は「バリのバリ取り」にそれぞれ相当する。また、引用発明1における「ワークW」は、引用文献1の段落【0030】に鋳型に液状の金属を流し込んで製造する鋳物が例示されることから、「成形品」である限りにおいて、本件発明における「樹脂成形品」に一致し、以下同様に、「ワークWの表面F1」は「成形品の外面」である限りにおいて「樹脂成形品の外面」に一致し、「前記ワークWが固定される作業台」は「前記成形品がセットされるワーク台」である限りにおいて「前記樹脂成形品がセットされるワーク台」に一致する。
(2)引用発明1における「ワークWの表面F1と平面状のレーザ光との交線の三次元位置を計測して、交線の形状を点列で表現した出力データを複数出力することで表面形状を計測する」ことは、レーザ光によるスキャンによりワークWの表面の3次元形状データを取得する技術であるといえるから、引用発明1における「前記作業台に固定された前記ワークWの表面F1と平面状のレーザ光との交線の三次元位置を計測して、交線の形状を点列で表現した出力データを複数出力することで表面形状を計測する三次元形状計測装置7としてのレーザレンジセンサ7」は、「前記ワーク台にセットされた前記成形品の外面をスキャンして3次元形状データを取得するレーザセンサ」である限りにおいて、「前記ワーク台にセットされた前記樹脂成形品の外形を成す二面が交差する稜部をスキャンして3次元形状データを取得するレーザセンサ」に一致する。
(3)引用発明1における「三次元位置を計測した複数の出力データ」は、上記(2)から、本件発明における「3次元形状データ」に相当し、以下同様に、「バリBの形状」は「バリの形状」に、「バリBの発生率が高い拘束面F2の位置」は「(バリの)位置」に、「算出(する)」は「認識(する)」に、「高精度位置決定装置10の拘束面位置算出機能」は「認識装置」に、「バリ取り経路」は「バリ取り動作」に、「信号S1″」は「動作データ」に、「高精度位置決定装置10の信号生成機能」は「動作データ生成装置」に、「信号S1″を受けて」は「動作データに従って」に、「前記ロボット1の位置・姿勢制御及びバリ取りツール6の動作制御を行う」ことは「前記ロボットを動作させる」に、「制御装置2」は「ロボット制御装置」に、「備える」は「具備してなる」にそれぞれ相当する。
(4)引用発明1における「バリ取り装置A」は、上記(1)~(3)の限りにおいて、本件発明における「バリ取り装置」に一致する。
2 一致点
上記1から、本件発明と引用発明1とは次の一致点で一致する。
・一致点
「バリ取り工具を装着したロボットにより、成形品の外面に生じているバリのバリ取りを行うバリ取り装置であって、
前記ロボットによる作業空間に位置して前記成形品がセットされるワーク台と、
前記ワーク台にセットされた前記成形品の外面をスキャンして3次元形状データを取得するレーザセンサと、
前記3次元形状データからバリの形状及び位置を認識する認識装置と、
前記認識装置の認識に基づいて前記ロボットのバリ取り動作のための動作データを生成する動作データ生成装置と、
前記動作データに従って前記ロボットを動作させるロボット制御装置とを具備してなるバリ取り装置。」
3 相違点
一方、本件発明と引用発明1とは次の相違点1~2で相違する。
(1)相違点1
成形品に関し、
本件発明においては「樹脂成形品」であるのに対し、
引用発明1における「ワークW」が樹脂成形品であるか、不明である点。
(2)相違点2
3次元形状データを取得するレーザセンサに関し、
本件発明においては、樹脂成形品の「外形を成す二面が交差する稜部」をスキャンするものであるのに対し、
引用発明1においては、ワークWの「表面F1」と平面状のレーザ光との交線の三次元位置を計測(スキャン)するものである点。
第6 相違点についての判断
1 相違点1について
上記相違点1について検討する。
バリ取りを行う対象成形品を、樹脂成形品とすることは、上記第4の2(4)に周知の技術的事項1として示したように、本件出願前において周知であった。また、引用文献2(上記第4の2(1))には、樹脂成形物の角部に突出したバリを除去するにあたり、ロボットによって行いたいが難しかったとの課題が開示されるところ、引用発明1は、その解決手段を備えるものといえる。
してみると、引用発明1において、バリBを除去する対象のワークWとして、周知の技術的事項1のように樹脂成形品とすることで、上記相違点1に係る本件発明のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
2 相違点2について
上記相違点2について検討する。
(1)成形品の外面に生じるバリが発生する部位が、成形品の外形を成す二面が交差する稜部となることは、上記第4の2(5)に周知の技術的事項2として示したように、本件出願前において周知であった。
(2)また、引用文献1の段落【0029】~【0033】には、三次元形状計測装置7によるワークWの表面F1の表面形状の計測に際して、次のア~エの工程を経ることが記載されている。
ア ワークWの表面形状とバリBの発生率が高い面(拘束面)との関係データを教示データとして教示・記憶装置8に記憶すること。
イ 大局的位置決定装置9にて、教示・記憶装置8の教示データ、及びCCDカメラ4の画像データに基づき、対象ワークWの拘束面F2の大まかな位置を決定すること。
ウ 制御装置2にて、対象ワークWの拘束面F2の大まかな位置の近傍にロボット1のハンド5を誘導させること。
エ ワークWの拘束面F2の大まかな位置の近傍にハンド5が移動すると、三次元形状計測装置7により、ワークWの表面F1の表面形状を計測すること。
そして、上記アに関して、段落【0029】~【0030】には、通常、鋳型の合わせ面にバリBが発生すること、及び、ワークWの表面F1の外周上でバリBの発生率が高い箇所である拘束面F2について、ワークWの表面形状と拘束面F2との関係データである教示データを入力する手段の例として、CADを利用する方法、具体的に数値を手入力する方法等があること、が記載されている。
(3)また、引用文献1の段落【0046】~【0050】には、図7に図示されるように、ワークWの表面F1の形状モデルMを三次元的形状に再構成する場合の態様について示されている。
(4)引用発明1と周知の技術的事項2とは、いずれもバリ取りに関する技術である点で技術分野が関連し、また、引用発明1においては、バリBの発生率が高い箇所である拘束面F2の算出にあたり、まず大まかな位置を決定した上でワークWの表面F1の表面形状を計測していることに鑑みて、ワークWの表面F1のさまざまな位置に発生するバリBを除去したい、との課題が内在することは自明であるといえるから、引用発明1に周知の技術的事項2を適用することに動機があるといえる。そして、引用発明1に周知の技術的事項2を適用して、成形品の外形を成す二面が交差する稜部に発生したバリの除去を行うにあたり、成形品の外形を成す二面が交差する稜部を含む当該二面の少なくとも一方を表面F1として捉え、ワークの表面形状と拘束面F2との関係データである教示データを、稜部を含むように拘束面を設定するべく、CADを利用したり、数値を手入力したりすることで作成し、当該教示データに基づいて、三次元形状計測装置7としてのレーザレンジセンサ7により、稜部を含む当該表面F1と、平面状のレーザ光との交線の三次元位置を計測(スキャン)して、交線の形状を点列で表現した出力データを複数出力することにより表面形状を計測することで、上記相違点2に係る本件発明のようにすることは、上記(2)~(3)の記載からみて、当業者であれば容易に想到し得たことである。
3 相違点についての判断のまとめ
したがって、本件発明は、引用発明1及び周知の技術的事項1~2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 審判請求書における主張について
審判請求人は、令和6年11月5日提出の審判請求書において、上記相違点2に関し、原査定においては、「二面が交差する稜部をバリ取り加工の対象部位とすることは当業者が容易に想到し得る」ことは指摘しているが、レーザレンジセンサが~稜部をスキャンすることに関しては、特に言及しておらず、たとえ稜部をバリ取り加工の対象部位とすることが容易であるとしても、綾部(当審注:「稜部」の誤記と認める。)をレーザレンジセンサでスキャンすることまでが、引用文献1における、上記のバリ取り経路を決定するプロセス開示内容から容易であるとはいえず、原査定の進歩性の判断には飛躍がある旨、主張する。
しかしながら、上記第6の2(4)で検討したように、稜部をバリ取り加工の対象部位とすることが容易であるならば、引用文献1の記載からみて、稜部をレーザレンジセンサでスキャンすることも、当業者であれば容易になし得たことである。
したがって、審判請求人の主張については、採用することができない。
第8 むすび
以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-017659