特許拒絶査定不服審判
2024-017607
車両による低電磁プロファイルのオブジェクト(対象物)の検出を向上させるためのシステムおよび方法
- 審判番号
- 2024-017607
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-560987外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年11月05日
- 審決日
- 2025年07月24日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ベイスキー、ベン、シオン
- 【請求人代理人】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
- 分類
- P18 .121-Z (G08G) / P18 .561-Z (G08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第184条の12第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-560987「車両による低電磁プロファイルのオブジェクト(対象物)の検出を向上させるためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 3月19日国際公開、WO2020/053650、令和 3年12月23日国内公表、特表2021-536045〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)9月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年9月10日、2018年10月30日、2019年7月30日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和2年10月29日 :特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書の提出
令和5年 8月31日付け:拒絶理由通知書
令和6年 3月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 6月24日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和6年11月 5日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年11月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年11月5日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正は、特許請求の範囲についてのものであり、その補正後の請求項1の記載は、次のとおりである。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
以下からなる車両アドホックネットワークを作成する方法:
車両ナビゲーション制御システムを改善するための方法を組み込んだ複数の車両を供給する、および
各ナビゲーション制御システムが、作動可能範囲を超えて各車両と各オブジェクトの識別データを同時に共有するように構成されており、
前記車両ナビゲーション制御システムを改善する方法は、以下を含む:
ナビゲーション制御システムを有する車両を提供すること、
前記車両にレーダーおよびRFIDリーダーを接続し、前記ナビゲーション制御システムと作動的に関連付けること、
低いレーダー断面を有する少なくとも1つのオブジェクトに1つ以上のコーナーリフレクターを取り付けることで、各コーナーリフレクターがレーダー断面を増加させること、
各コーナーリフレクターに1つ以上のRFIDタグを連結し、各RFIDタグは、前記オブジェクトの位置に関係なくそのオブジェクトの性質を含む識別データを検索可能に記憶すること、および
前記車両に接続した前記レーダーの断面積を増やすことによって、遭遇したオブジェクトにおける視認性を高めること、
RFIDリーダーが、RFIDタグが識別データを同時に開示するように、作動可能範囲内のすべてのRFIDタグに問い合わせるように構成されていること。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正による補正前の請求項1(令和6年3月5日に提出された手続補正書による補正後の請求項1)の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
車両ナビゲーション制御システムを改善する方法で、以下を含む:
ナビゲーション制御システムを有する車両を提供すること、
前記車両にレーダーおよびRFIDリーダーを接続し、前記ナビゲーション制御システムと作動的に関連付けること、
低いレーダー断面を有する少なくとも1つのオブジェクトに1つ以上のコーナーリフレクターを取り付けることで、各コーナーリフレクターがレーダー断面を増加させること、
各コーナーリフレクターに1つ以上のRFIDタグを連結し、各RFIDタグは、前記オブジェクトの位置に関係なくそのオブジェクトの性質を含む識別データを検索可能に記憶すること、および
前記車両に接続した前記レーダーの断面積を増やすことによって、遭遇したオブジェクトにおける視認性を高めること、
RFIDリーダーが、RFIDタグが識別データを開示するように、作動可能範囲内のすべてのRFIDタグに問い合わせるように構成されていること。」
2 補正の適否(新規事項の追加)
本願は、国際出願であることから、特許請求の範囲等の補正は、特許法17条の2第3項の規定により(同法第184条の12第2項参照)、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(1970年6月19日にワシントンで作成された特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文か提出された場合にあっては、当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、「翻訳文等」という。)に記載した事項の範囲内においてしなければならないところ、前記1(1)の補正が、翻訳文等に記載したものであるか、以下検討する。
(1)本件補正
本件補正による請求項1の記載の補正は、以下のア及びイの補正事項からなるといえる。
ア 「車両ナビゲーション制御システムを改善するための方法を組み込んだ複数の車両を供給する」との事項を特定し、「各ナビゲーション制御システムが、作動可能範囲を超えて各車両と各オブジェクトの識別データを同時に共有するように構成されて」いるとの事項を特定するとともに、方法が「車両ナビゲーション制御システムを改善するための方法」でなく、「車両アドホックネットワークを作成する方法」であるとする補正。
イ 補正前の「RFIDリーダーが、RFIDタグが識別データを開示するように、作動可能範囲内のすべてのRFIDタグに問い合わせるように構成されている」の記載を、補正後の「RFIDリーダーが、RFIDタグが識別データを同時に開示するように、作動可能範囲内のすべてのRFIDタグに問い合わせるように構成されている」とする補正。
(2)補正により追加された技術的事項
上記(1)のうち、(1)イの補正事項により、請求項1の記載に「同時に」との文言が加えられ、「各ナビゲーション制御システムが、作動可能範囲を超えて、各車両と各オブジェクトの識別データを同時に共有する」との補正前の請求項1においては特定されていなかった技術的事項が補正後においては特定されている。
この点、補正前の請求項10(摘記省略)には、「各ナビゲーション制御システムが、作動範囲を超えて各車両と各オブジェクトの識別データを共有するように構成されている」旨の記載があるものの、この記載は、当該技術的事項を特定するものでなく、(1)イの補正事項は、補正前の請求項10の特定事項を補正後の請求項1の特定事項としたものともいえない。
そこで、以下では、当該技術的事項が、翻訳文等に記載された全ての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるかについて検討する。
(3)翻訳文等の記載
上記(1)イに示した補正事項に関して、翻訳文等には次の記載がある。(下線は当審にて付した。以下同じ。)
ア「【請求項11】
以下からなる車両アドホックネットワークを作成する方法:
特許請求1の車両ナビゲーション制御システムを改善するための方法を組み込んだ複数の車両を供給する、および
各ナビゲーション制御システムが、作動可能範囲を超えて各車両と各オブジェクトの識別データを共有するように構成されている。」
イ「【0039】
(VANET、V2V -車両対車両、V2R‐車両対路側、V2I‐車両対インフラ)
VANETプロトコルは、インフラのない環境で動作するように特別に設計されており、すべての車両 (ノード) が互いに通信し (アドホックネットワーク)、特定の環境でその瞬間に存在する交通状況に関する情報を共同で生成できる。本発明の開示されたシステムおよび方法は、VANETに統合され、そこで車両がオブジェクトから選択した情報 (ID、場所など) が共有され、VANETまたは他の同様のデータ共有ネットワークを介して隣接車両と共有することができる。 本発明の開示されたシステムおよび方法における他の要素は、別の入力として車両制御システムに統合される。
【0040】
また、本発明のシステムは、WiFi/WiMax/Bluetooth などの通信チャネルを追加してネットワーク内のアクティブノードとなることで、車両対車両 (V2V)、車両対路側 (V2R)、車両対インフラ (V2I) と統合することも可能である。
【0041】
車両アドホックネットワークまたはVANETは、移動車両をネットワークのノードとして使用してモバイルネットワークを作成するテクノロジーである。VANETは、参加しているすべての車両をワイヤレスルーターまたはノードに変える。これにより、約100~300メートルの距離にある車両が相互に接続し、広範囲のネットワークを構築できる。車両が信号範囲から外れ、ネットワークから外れると、他の車両が参加して、車両を相互に接続し、モバイルインターネットが作成される。VANETはノードが車両を参照するMANETのサブグループである。道路は車両の移動を制限するため、交通規制は重要な場所にVANETが活用可能な固定的なインフラを作成する。VANETの主な目的は、インフラ配備の有無にかかわらず、車両の現在の速度、位置座標が橋渡しされる交通安全対策を提供することである。
【0042】
通信タイプ
‐ 車両対車両 (V2V)
‐ 車両対インフラ (V2I)
‐ 車両対路側 (V2R)
(車両対インフラ/路側通信(V2I/V2R))
・車両対インフラは、より長距離の車両ネットワークへのソリューションを提供する。
・ワイヤレスアクセスポイント (ロードサイドユニット- RSU) などの既存のネットワークインフラを利用する。
・車両とRSU間の通信は、車両対インフラ (V2I) プロトコルと車両対路側 (V2R) プロトコルでサポートされている。
【0043】
(使用される技術)
・センサー技術(赤外線センサー/ビデオおよびカメラ画像認識/レーダー/ジャイロセンサー/慣性センサー)は、数学的アルゴリズムを介してデータを処理し、車両環境の仮想現実的な理解を導き出す
・車載デジタルマップと測位技術(GPS/Wi-Fi/WiMAX)は、感知システムを利用して車両の位置を正確に特定し、環境を解釈する
・道路脇のインフラによってグリッドロック/高い交通密度が検出された場合、路側システムはそのすべてのノード/車両に情報をブロードキャストできる。
・次に、VANETのDTN機能を使用して、このジャンクションに向かう他の車両に情報を送信できる。
・同様に、その時点で非渋滞交通経路を見つける中央システムの調整に応じて、接近してくる車両に他の経路を伝えることができる。
【0044】
(専用短距離通信 (DSRC))
・VANETのアクティブな乗客の安全性とより高い信頼性
・802.11pは車両ネットワークへの無線アクセスを追加し、OSIスタックを実装する
・5.9GHzのライセンスバンド、7 つのチャネル、1000mの範囲、データレート6~27Mbpsのワイヤレスプロトコル
・主に以下の通信に使用される
1)車両対車両
2)車両対路側
IEEE 802.11p、IEEE802.11ファミリーに属するプロトコルである。
カシフ・アリ他(参考文献1)では、非インテリジェント車両(非IV)にパッシブRFIDタグを装着し、車両の制御システムによる検出を支援することについては教示しているが、他のオブジェクトにパッシブRFIDタグもしくはアクティブRFIDの追加することについては教示していない
A . バニータ・キャサリン他。(参考文献2)は、 VANETコンセプトを使い、RFIDを車両間の通信手段 (V2V) として使用することについて教示している。
協調型衝突警告と車両のナビゲーション、ローカル相互接続ネットワーク (LIN) と CAN (コントローラーエリアネットワーク)、車両間通信 (IVC) プロトコルのための、車両アドホックネットワーク (VANET) と協調型衝突回避 (CCA) 通信システム。MOST (Media Oriented Systems Transport)、FlexRay、およびイーサネットは、車載通信設計の標準となっている。Dedicated Short-Range Communication(DSRC)規格などの規格は、早期の警告を提供し、自律システムの安全なナビゲーションを可能にすることにより、致命的な道路事故の数を劇的に削減することが期待されている。」
ウ「【0045】
本発明の目的は、車両のレーダやRFID照会を使用し、車両からの問い合わせに応じてオブジェクトの性質、位置、速度等の重要な情報を明らかにし、車両のセンサーによる低電磁プロファイルと低電磁プロファイルのオブジェクトから得られた情報の検出性を高めることによって、車両の制御性能を向上させることにある。そのシンプルさ、高い信頼性、および非常に低いコストにより、固定または移動するすべての既存または新規の道路要素に取り付けることができ、あらゆる車両に、また複数の車両に同時に、正確で信頼できる全天候対応の情報を提供する。車両の制御システムに統合されており、安全かつ正確な半自動または完全自動のナビゲーションを可能にする。」
エ「【0067】
本発明のシステムには、図6、7、15に示すように、車両のセンサーに接続されたセンサー - データフュージョンおよび制御システム15の配列にRFIDリーダー19を追加する必要がある。
【0068】
システムは複数のオブジェクトを同時に読み取ることができ、オブジェクトは非常に短時間で、さらには同時に複数の問い合わせに応答できる。」
オ「【0075】
(衝突防止プロトコルとアルゴリズム)
RFIDリーダーは、衝突防止のアルゴリズムを採用できる。これにより、複数のオブジェクトが存在する混雑した交通や環境で車両が直面する可能性のある状況で、複数のRFIDタグを同時に読み取ることができる。
衝突防止プロトコルは、大きく4つの多元接続プロトコルに分類できる。
a)SDMA-空間分割多元接続。チャネルは、識別プロセスのために指向性アンテナまたは複数のリーダーを使用して方向に分割される。チャネルを空間的に分離するために、このプロトコルでは複雑なアンテナ設計が必要である。
b)FDMA-周波数分割多元接続。チャネル全体を単一の通信リンク専用にする代わりに、チャネルはより小さな帯域幅に分割される。識別が終了するまで、各周波数領域は単一のタグ専用となる。このメカニズムでは、識別を成功させるために複雑なリーダー機能が必要である。
c)CDMA-符号分割多元接続。タグは、リーダーに送信する前に、IDに疑似乱数コードを掛ける必要がある。次に、リーダーは送信されたIDを一意のコードと照合して解読する。このシステムでは、識別プロセスを成功させるために計算作業を行う必要があるため、両端に複雑な機能が必要である。
d)TDMA-時分割多元接続。チャネル帯域幅は、通信プロセスのタグとリーダーによって使用されるタイムスロットに分割されます。TDMAプロトコルは、実装が容易で複雑さが軽減されることにより、パッシブRFIDシステムの衝突防止プロトコルの最大のファミリを形成する。TDMAシステムは、リーダートークファースト(RTF)とも呼ばれるリーダー駆動システムとタグトークファースト (TTF) とも呼ばれるタグ駆動システムにさらに分けることができる。
(例として) 言及される衝突防止アルゴリズムは次のとおりである: ALOHA、framed slotted Aloha(FSA)、Dynamic Frame Slotted ALOHA(DFSA)、プログレッシブスキャン(PS)アルゴリズム、およびツリーベースのプロトコル。それぞれ確率論的アプローチと決定論的アプローチである。」
(4)新規事項の判断
ア 上記(2)の技術的事項(「各ナビゲーション制御システムが、作動可能範囲を超えて各車両と各オブジェクトの識別データを同時に共有する」)について
(ア)「作動可能範囲」について
「作動可能範囲」は、翻訳文等において、明示的に定義されていない。(翻訳文等の【請求項11】の記載は、「作動可能範囲」の文言を単に示すものであり、「作動可能範囲」の定義を示すものではない。)
もっとも、「作動可能範囲」の文言は、請求項1の記載においては、当該技術的事項についての記載以外に「RFIDリーダーが、RFIDタグが識別データを開示するように、作動可能範囲内のすべてのRFIDタグに問い合わせるように構成されている」との記載においても用いられている(この記載は、翻訳文等における請求項1(摘記省略)においても存在していた。)。そして、翻訳文等には、段落【0034】の「RFID -アクティブタグにはローカル電源(バッテリーや太陽電池など)があり、RFIDリーダーから最大数百メートルの動作範囲がある。」との記載、段落【0036】の「アクティブタグのビーコンは数百メートル離れたところから読み取りが可能だが、バッテリー寿命を節約するために、約100メートルの読み取り範囲に到達するように送信電力を低く設定する場合がある。」との記載があり、これらを勘案すると、「作動可能範囲」は、RFIDタグの読取可能範囲、すなわち、RFIDリーダーによりRFIDタグの情報を読み取ることが可能な範囲等を示す文言として用いられていることが明らかである。
(イ)「同時」について
「同時」という用語について、翻訳文等には、【0045】、【0068】、【0075】、【0091】に用いられており、これらの記載は、「同時」の定義を示すものでないものの、「道路要素に取り付けることができ」るものから「車両」への情報の提供(【0045】)、複数のオブジェクトの読み取り(【0068】)及び複数のRFIDタグの読み取り(【0075】【0091】)について「同時」の文言を用いていることから、翻訳文等における「同時」が、文字通りの「同じ時(同じタイミング)」という意味で用いられていることは、明らかである。
(ウ)上記(ア)、(イ)を踏まえると、「各ナビゲーション制御システムが、作動可能範囲を超えて各車両と各オブジェクトの識別データを同時に共有する」ことは、「各ナビゲーション制御システムが、(車両の)RFIDリーダーによりRFIDタグの情報を読み取ることが可能な範囲を超えて、各車両と各オブジェクトの識別データを、同じ時(タイミング)で共有すること」と解される。
イ 翻訳文等の記載について
(ア)段落【0045】の記載
段落【0045】には、「車両のレーダやRFID照会を使用し、車両からの問い合わせに応じてオブジェクトの性質、位置、速度等の重要な情報を明らかにし、車両のセンサーによる低電磁プロファイルと低電磁プロファイルのオブジェクトから得られた情報の検出性を高めることによって、車両の制御性能を向上させることにある。そのシンプルさ、高い信頼性、および非常に低いコストにより、固定または移動するすべての既存または新規の道路要素に取り付けることができ、あらゆる車両に、また複数の車両に同時に、正確で信頼できる全天候対応の情報を提供する。」と記載されており、あらゆる複数の車両に同時に情報が提供されることが記載されているといえる。
ここで、「情報を提供する」主体は、その文脈から「車両のレーダやRFID照会を使用し、車両からの問い合わせに応じてオブジェクトの性質、位置、速度等の重要な情報を明らかに」するものであり、「固定または移動するすべての既存または新規の道路要素に取り付け」られるものであることが明らかである。また、「RFID照会を使用し」との文言から、取り付けられるものにRFIDタグが含まれることも自明である。
そうすると、段落【0045】に記載されている事項は、「固定または移動するすべての既存または新規の道路要素に取り付け」られたもの(例えばRFID)から、情報を送信することが可能な範囲内の車両に対して、同時に情報を提供し得ることであって、車両間の通信を用いて、各車両と各オブジェクトの識別データを同時に共有することとは認められない。
してみると、段落【0045】には、「各ナビゲーション制御システムが、作動可能範囲を超えて各車両と各オブジェクトの識別データを同時に共有する」構成は明示されておらず、また、当該構成を示唆する記載もない。
(イ)その他の段落の記載
上記(2)にて摘記したように、翻訳文等には、各ナビゲーション制御システムが、作動可能範囲を超えて各車両と各オブジェクトの識別データを共有するように構成されていること(【請求項11】)、VANETまたは他の同様のデータ共有ネットワークを介して、車両がオブジェクトから選択した情報を隣接車両と共有すること(段落【0039】~【0044】)、システムは複数のオブジェクトを同時に読み取ることができること(段落【0067】)、衝突防止のアルゴリズムを採用することで複数のRFID タグを同時に読み取ることができること(段落【0075】)が明示されており、翻訳文等には、「作動可能範囲を超えて各車両と各オブジェクトの識別データを共有するように構成されていること」、また、VANETまたは他の同様のデータ共有ネットワークを介することで、「作動可能範囲を超えない範囲で各車両と各オブジェクトの識別データを同時に共有すること」は記載されているものといえる。
他方、「各ナビゲーション制御システムが、作動可能範囲を超えて各車両と各オブジェクトの識別データを同時に共有する」構成は、翻訳文等において明示されておらず、また、当該構成を示唆する記載も見当たらない。
ウ 判断
(ア) 上記イ(イ)によれば、翻訳文等には、作動可能範囲を超えて各車両が各オブジェクトの識別データを共有すること、及び、作動可能範囲を超えない範囲で各車両と各オブジェクトの識別データを同時に共有することは記載されているといえるが、それにとどまり、各ナビゲーション制御システムが、作動可能範囲を超えて各車両と各オブジェクトの識別データを同時に共有することは、記載されていない。
(イ) また、出願時の技術常識を考慮しても、当該構成が本願の出願日前に周知であった等、本件補正が翻訳文等に記載されているに等しい事項であると認めるべき事情も存在しない。
すなわち、翻訳文等には、車両間で情報共有するための技術として、段落【0043】に「VANET のDTN機能を使用して、このジャンクションに向かう他の車両に情報を送信できる。」との記載があり、DTN機能を使用することが記載されているところ、DTN(Delay Tolerant Networking)機能とは、通信ネットワークにおいて、遅延や断続的な接続が発生する環境でもデータを効果的に送受信できるように設計されたプロトコルのことを指すものであって、車両がオブジェクトから取得したデータを他の車両に即時に共有する機能ではない。
一般に、各車両が備えるRFIDリーダーによりRFIDタグの情報を読み取ることが可能な範囲等を超えて各車両が取得したデータ(RFIDタグの情報等)を共有するためには、車両が取得したデータを何らかのネットワークを介して他の車両に送信したり、当該範囲等を超えるまでデータを受信した車両がさらに他の車両に当該データを送信することを繰り返す必要があり、ネットワークを介したデータの送受信に必然的に伴うタイムラグが生じるところ、このようなタイムラグを克服して、各車両が取得したオブジェクトの識別データを「作動可能範囲を超えて」「同時」に「共有」することための技術は、本願に係る優先日前の技術常識や国際出願日前の技術常識であるとはいえない。
(ウ)よって、本件補正は、翻訳文等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項である「各ナビゲーション制御システムが、作動可能範囲を超えて各車両と各オブジェクトの識別データを同時に共有する」との事項を導入するものであるから、本件補正は、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてするものとは認められない。
(5)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、上記2(1)イに示した補正事項は、段落【0068】の記載に基づくものであると主張している。
しかし、段落【0068】には、RFIDリーダーを含むシステムが、複数のRFIDタグの情報を同時に読み取ることができることについて記載されているものの、「作動可能範囲を超えて各車両と各オブジェクトの識別データを同時に共有する」ことは、記載されていない。
すなわち、段落【0068】の「システムは複数のオブジェクトを同時に読み取ることができ」との記載における「システム」は、「RFIDリーダー19」を含む「システム」であり(段落【0067】の「本発明のシステムには、図6、7、15に示すように、車両のセンサーに接続されたセンサー - データフュージョンおよび制御システム15の配列にRFIDリーダー19を追加する必要がある。」との記載を参照。)、また、「オブジェクト」は、RFIDタグ25を備え、車両からのRFID問い合わせ信号に対してオブジェクトについての情報を含む信号を送り返すものであって、例えば自転車などである(段落【0064】の「図1に示すように、車両47には、半自律または完全自律ナビゲーション用の複数のセンサーが装備されており、これらのセンサーの中には、a)車両のレーダー16およびb)RFIDリーダー19がある。両者とも電磁信号を送信するが、レーダー16はそのレーダー(または車両の片側)の前にあるオブジェクト(複数可)を検出し、RFIDリーダー19は、それ/それらに問い合わせし、応答としてそのタイプ(または性質)、位置などについての情報を取得する。低電磁プロファイルを有するオブジェクトの例として自転車21とそのライダー20はレーダーパルスを反射するが、一般的には、レーダー信号17に対して非常に弱い応答信号によって応答する(低レーダー断面積としても知られている)。本発明のシステムには、コーナー反射板(図8を参照)およびRFIDトランスポンダ25のようなリフレクター13が含まれてる。レーダー信号は、はるかに強い信号32(リフレクターの構造により、図10を参照)18として跳ね返され、大きなオブジェクトとしてレーダーで受信される。RFID問い合わせ信号は、RFIDタグ25(アクティブまたはパッシブ)によって応答され、合意されたプロトコルに基づいて、オブジェクト(それが取り付けられている)の性質(またはタイプ)、および任意でそのリアルタイムの位置、特定のオブジェクトに関連する可能性のある危険、シリアル番号、材料構成、年齢、サイズ、重量、高さ、およびそれらの任意の組み合わせについての情報を含む信号18を送り返す。」との記載、段落【0071】の「本発明のシステムから益を得ることができるオブジェクトの例は、図13にあり、家畜、豚、牛/雄牛、羊、ペット、馬、子供、路側の支柱、信号機、警察官、子供などを含み、さらに任意の組み合わせもある。」との記載、図1の記載(オブジェクトの例である自転車21にRFIDタグ25が備え付けられている)などを参照。)から、段落【0068】の記載は、RFIDリーダーを含むシステムが、複数のRFIDタグの情報を同時に読み取ることができることを示すものであって、「作動可能範囲を超えて各車両と各オブジェクトの識別データを同時に共有する」ことを示す記載ではない。
よって、審判請求人の主張は採用できない。
(6)小括
したがって、上記(1)の本件補正による請求項1の補正のうち、(1)イの補正事項は、翻訳文等に記載された全ての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
してみると、本件補正は、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないから、特許法第184条の12第2項において読み替えられた同法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
3 本件補正についてのむすび
前記2によれば、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明
本件補正は上述のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(2)に示した請求項1の記載とおりに特定されるものと認める。
第4 原査定の概要
原査定の概要は、以下のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、本願出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の文献1に記載された発明に基づいて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
文献1.特表2011-511281号公報
第5 引用文献の記載事項
1 引用文献1(特表2011-511281号公報)
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特表2011-511281号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
ア「【0020】
本明細書において、センサにより検出されたオブジェクトとマップマッチングするシステム及び方法を説明する。ダイレクトセンサ及びオブジェクトマッチング技術は、運転者が通過したオブジェクトの曖昧さをなくすために使用される。その技術により、ナビゲーションシステムは、位置推定値を改善できる(すなわち、位置推定値の精度を向上できる)。」
イ「【0026】
一実施形態によると、本発明者は、車両の次の世代のナビゲーション機能が車両の近傍のオブジェクトを検出及び測定するために電子センサ及び他のセンサを含むことを予想している。これらのセンサの例は、カメラ(ビデオカメラ及びスチルカメラを含む)、種々の設計パラメータを使用して種々の波長で動作するレーダ、レーザスキャナ、並びに電波方式認識(RFID)及び近接又は無線通信デバイス等の技術と共に使用する種々の他の受信機及びセンサを含む。」
ウ「【0032】
図1は、一実施形態に従って実世界のオブジェクトの選択と共に車両ナビゲーション座標系を示す図である。図1に示すように、車両100は、1つ以上の縁石、道路標示、オブジェクト及び道路の設置物を含む車道102、この例では縁石104、車線及び/又は道路標示105(車線分離標又は道路のセンターライン、橋及び陸橋等の特徴を含むことができる)、ガードレール108、郵便ポスト101、出口標識103、道路標識(停止標識等)106及び他の道路のオブジェクト110又は建造物を含む車道102を走行する。それらの道路標示及びオブジェクトの全て、あるいは道路標示及びオブジェクトのうち選択されたものは、システムにより解釈可能なシーン107として考えられる。シーンが本明細書において図1に示すように道路標示及びオブジェクトと共に一例として提供され、多くの他のシーン、並びに種々の道路標示及びオブジェクトが本発明の実施形態により考えられ且つ使用されることは明らかである。
【0033】
道路網、車両及びオブジェクトは座標系118に関して考慮されてもよく、x方向又はx軸120、y方向又はy軸122及びz方向又はz軸124の配置、向き及び動きを含む。一実施形態によると、車両の地図データベースは、従来の道路網及び道路属性に加えてそれらのオブジェクトを格納するために使用される。停止標識、路傍の標識、街灯、信号機、橋、建物、あるいは車線標示又は道路の縁石等のオブジェクトは、眼で容易に見え且つ識別できる物理的なオブジェクトである。本発明の実施形態によると、それらのオブジェクトの一部又は全ては、車両上又は車両内に搭載されるレーダ、レーザ、スキャン式レーザ、カメラ又はRFID受信機等のセンサにより検知される(128)。これらのデバイスは、オブジェクトを検知でき、多くの場合は、車両の場所及び向きに対するオブジェクトの相対的な距離及び方向を測定できる。いくつかの実施形態によると、センサは、オブジェクトのサイズ又は寸法、密度、色、反射率又は他の特性等のオブジェクトに関する他の情報を抽出できる。
【0034】
いくつかの実現例において、システム及び/又はセンサは、車両のソフトウェア及びマイクロプロセッサに埋め込まれるか又は接続され、車両が移動するのに伴って車両がリアルタイムでセンサ出力のオブジェクトを識別できるようにする。図2は、車両ナビゲーションシステムの一実施形態を示す図である。図2に示すように、システムは、自動車、トラック、バス又は任意の他の移動する車両等の車両に配置されるナビゲーションシステム140を含む。別の実施形態は、船舶、航空、ハンドヘルドナビゲーションデバイス、並びに他の動作及び用途において使用するように同様に設計可能である。ナビゲーションシステムは、複数のオブジェクト情報を含むデジタル地図又は地図データベース142を含む。あるいは、この地図データベースの一部又は全てが必要に応じてデバイスと通信される格納された車外部分及び選択された部分であってもよい。一実施形態によると、オブジェクトレコードの一部又は全てがオブジェクトの絶対位置及び/又は相対位置に関する情報(又はオブジェクトから得られる生センササンプル)を含む。ナビゲーションシステムは、測位センササブシステム162を更に含む。一実施形態によると、測位センササブシステムは、オブジェクト特徴付け論理168、シーンマッチング論理170、並びに1つ以上の絶対測位論理168及び/又は相対測位論理174の組合せを含む。一実施形態によると、絶対測位論理は、例えばGPS又はGalileo受信機を含む絶対測位センサ164からデータを取得する。このデータは、車両の絶対位置に関する初期推定値を取得するために使用可能である。一実施形態によると、相対測位論理は、例えばレーダ、レーザ、光(可視)、RFID又は無線センサを含む相対測位センサからデータを取得する。このデータは、オブジェクトと比較して車両の相対位置又は方位に関する推定値を取得するために使用可能である。オブジェクトは、システムに既知であってもよく(この場合、デジタル地図はそのオブジェクトに対するレコードを含む)、あるいは未知であってもよい(この場合、デジタル地図はレコードを含まない)。特定の実現例に依存して、測位センササブシステムは、絶対測位論理及び相対測位論理のうちの一方を含むことができるか、あるいは双方の形式の測位論理を含むことができる。
【0035】
ナビゲーションシステムは、ナビゲーション論理148を更に含む。一実施形態によると、ナビゲーション論理は、図2に示すような複数の追加の構成要素を含む。一部の構成要素がオプションであり、他の構成要素が必要に応じて追加されてもよいことは明らかになるだろう。ナビゲーション論理の中心は、車両位置判定論理150及び/又はオブジェクトを用いたマップマッチング論理154である。一実施形態によると、車両位置判定論理は、センサ及び他の構成要素の各々から入力を受信し、デジタル地図、他の車両及び他のオブジェクトの座標系に対する車両の正確な位置(及び要望に応じて方位)を計算する。車両フィードバックインタフェース156は、車両の位置に関する情報を受信する。この情報は、運転者により使用されるか、あるいは車両により自動的に使用される。一実施形態によると、情報は運転者フィードバックに使用される(この場合、情報は運転者のナビゲーションディスプレイ146にも供給される)。この情報は、位置及び向きフィードバック、並びに詳細なルート案内を含むことができる。
【0036】
いくつかの実施形態によると、車両の近傍のオブジェクトは、システム及び/又は運転者により使用できるように、実際に処理され、解析され且つ特徴付けられる。別の実施形態によると、オブジェクトの特性に関する情報は、センサデータから抽出される必要もなく、また完全に「理解」される必要もない。これらの実施形態において、センサから返される生データのみがオブジェクト又はシーンマッチングに使用される。それら技術の1つ以上を使用するいくつかの種々の実施形態を以下に説明する。
【0037】
シーンマッチング
シーンマッチングを使用する一実施形態によると、(a)センサにより収集されたデータ又は生データから1つ以上のシーンを抽出し、(b)地図により提供されたバージョン又は格納されたバージョンの生データから対応するシーンを構築し、(c)車両の位置のより正確な推定値を容易に提供するために2つのシーンを比較するシステムが提供される。
【0038】
本実施形態の利点は、実現例が相対的に容易に実現され且つ本質的に客観的であることを含む。地図データベースに更なるオブジェクトのカテゴリを追加することは、基礎となるシーンマッチング処理に影響を及ぼさず、その処理を変更することもない。これにより、地図の顧客は、新しい地図のコンテンツが利用可能になるとすぐに利益を得られる。顧客は、アプリケーションプラットフォームの挙動を変更する必要がない。一般に、本実施形態は、より大きい記憶容量及び処理能力を実現することを要求してもよい。
【0039】
図3は、一実施形態に従ってセンサにより検出されたオブジェクトの特徴付け及びシーンマッチングを使用するマップマッチングを示す図である。本実施形態によると、車載ナビゲーションシステムは、任意の特定のオブジェクトを抽出するためにセンサデータを処理する必要はない。センサは、現在検知している空間の2次元(2D)又は3次元(3D)シーンを構築する。検知したシーンは、地図データベースから検索されるように、対応する地図別の2D又は3Dシーン、あるいは一連のシーンと比較される。シーンマッチングは、車両とオブジェクトとの間で適切なマッチングを行なうために使用され、この情報は位置判定及びナビゲーションのために使用される。」
エ「【0045】
一実施形態によると、複数のオブジェクトの各々は、生センサデータ(又はその圧縮バージョン)として地図データベース142に格納される。シーンのオブジェクト184に対する情報は、ナビゲーションシステムにより地図データベースから検索される。図3に示す例は、この例においてはセンサデータの「背後」にある別の道路標識184又は複数のボックスとして、格納された生センサデータ及びオブジェクトの描画を示す。従って、図3は、一般的な3D座標系において計算されるように、オブジェクトシーン194の地図バージョン及び同一のオブジェクトシーン192のリアルタイムセンサバージョンを表す。図3に示すように、オブジェクトシーン192のリアルタイムセンサバージョンは、場合によっては、近傍のオブジェクトからの信号、地図データベース195内のまだ認識されていないオブジェクト(可能性として、物理的なシーンに最近設置され且つ地図に更新されていないオブジェクト)からの信号、並びに不定期なランダムノイズ197を含むシーン内の他のオブジェクトからの外部信号又はノイズを含むことができる。一実施形態によると、初期のクリーンアップは、それらの追加の信号及びノイズを低減するために実行される。2つのシーンは、ナビゲーションシステムによりマッチングされる(170)。結果として得られる情報は、測位センササブシステム162に再び渡される。」
オ「【0055】
車両/オブジェクト位置マッチング
車両/オブジェクト位置マッチングを使用する一実施形態によると、(a)センサにより収集されたデータ又は生データから生オブジェクトデータを抽出し、(b)地図により提供されたバージョン又は格納されたバージョンの生データからの地図中に保持された対応する生オブジェクトデータと抽出したデータとを比較し、(c)車両の位置のより正確な推定値を容易に提供するためにオブジェクトデータの2つの基準を比較するシステムが提供される。」
カ「【0069】
図7は、別の実施形態に従ってセンサにより検出されたオブジェクトの特徴付け及びオブジェクトの特徴付けを使用するマップマッチングを示す図である。図7に示すように、本実施形態によると、車両は生センサデータを処理し、オブジェクト246を抽出し、少なくとも場所、並びに可能性としてサイズ、特定の寸法、色、反射率及びレーダ断面等の他の属性を有する既知のオブジェクト244と抽出したオブジェクトとをマッチングするためにオブジェクト特徴付けマッチング論理168を使用する。当業者には周知であるように、多くの種々のオブジェクト識別/抽出アルゴリズムが使用される。高性能のオブジェクト抽出は計算費用が高いが、この問題は、新しいアルゴリズム及び専用プロセッサが開発されるのに伴って小さな問題になってきている。」
キ「【0074】
一実施形態によると、オブジェクトには「コーナ反射器」等を含むレーダ反射増強装置が装着される。これらの安価で小さいデバイスは、検出性を向上するか又は検出される範囲を拡大するようにオブジェクトに装着可能である。これらのデバイスは、検知したオブジェクトのより大きな署名内に強力な点のようなオブジェクトを作成することにより空間拡張されたオブジェクトの場所を正確に特定できる。従って、センサに依存して、オブジェクトのマッチングを検証するために使用されるオブジェクトのいくつかの特徴付け特徴が存在してもよい。」
ク「【0096】
図8は、一実施形態に従ってセンサにより検出されたオブジェクトの特徴付け及びオブジェクトの特徴付けを使用するマップマッチングの方法を示すフローチャートである。図8に示すように、ステップ250において、システムは、GPS、推論、マップマッチング、INS又は同様の測位センサを使用して(初期)位置及び方向情報を見つける。ステップ252において、車載車両センサは、周囲のシーンの画像を走査するために使用される。ステップ254において、システムはシーン(又は関心領域ROI)からオブジェクトを抽出する。ステップ256において、オブジェクトはセンサデータを使用して特徴付けられる。ステップ258において、システムは検知されたオブジェクトの位置を地図データベースの位置と比較する。システムは、オブジェクトの特徴付けを比較できる。ステップ260において、位置が一致すること及び比較がある特定の閾値を満たすことをシステムが判定した場合、システムはオブジェクトに対して一致を判定する。ステップ262において、位置情報が更新され且つ/又は運転者フィードバックが提供される。
オブジェクトIDセンサ増強
図9は、別の実施形態に従ってセンサにより検出されたオブジェクトの特徴付け及びセンサ増強を使用するマップマッチングを示す図である。上述した実施形態において、一般にオブジェクトは、支援なしのセンサ測定値に基づいてナビゲーションシステムにより検出及び評価された。一実施形態によると、センサ測定値は、増強デバイスにより支援又は増強される。増強は、例えばレーダ又はレーザ反射器の使用を含むことができる。この例において、増強デバイスは、オブジェクトの特定の場所からのリターンを人工的に明るくするレーザ反射器であってもよい。そのような明るいスポットの存在が取り込まれ且つ地図データベースに格納され、マッチング処理において支援するために、並びに位置及び向きを測定するための局所化された適切に規定された点になることを支援するために後で使用される。そのようなコーナ反射器等は、レーダ及びレーザ技術において周知である。
【0097】
別の実施形態によると、システムはRFIDタグ等のIDタグ270を使用できる。そのようなデバイスは、適切な受信機により容易に検出され且つ識別子又はIDを生成するように復号化される識別コードを送信する。IDはルックアップされるか、あるいは地図データベース内にあるか又は地図データベース又は他の空間表現と関連付けられるID272のテーブルと比較される。IDは、特定のオブジェクトと関連付けられるか、あるいはオブジェクト274の種類又は分類(例えば、停止標識、郵便ポスト又は道路の曲がり角)と関連付けられる。一般に、停止標識等の標識の間隔及び車両の位置推定値の精度は、どの検知されたオブジェクトがどのRFIDタグと関連付けられるかに関する不確かさ又は曖昧さを回避するのに十分である。このように、オブジェクト識別機276又はマッチングアルゴリズムは、検知したオブジェクトを地図の適切な地図オブジェクトと明確にマッチングさせるある特定の高速な手段を含むことができる。
【0098】
別の実施形態によると、システムは例えば反射器とのRFID技術の組合せを使用できる。RFIDが反射器と同一の場所に配置される場合、これは、正の識別文字としての役割を果たすことができる。更にRFIDは、反射器(又は他のセンサ)が車載センサ、例えばスキャン式レーザにより照明される場合にのみ、固有の識別コード又は追加のフラグを同報通信するように制御される。これは、デバイスがトランスポンダとして動作することを可能にし、信号の受信とRFIDタグの受信との間の高精度な時間相関を生成する。この正のIDマッチングは、任意のそのようなマッチングの信頼度及び位置精度の双方を向上するため、上述の空間マッチング技術のいくつかを向上する(且つ不必要にする可能性もなる)。この技術は、特にオブジェクトが密集している状況又はRFIDタグの高密度電磁界において有用である。
【0099】
別の実施形態によると、バーコード、セマコード(2次元バーコードの形態)又は同様のコード及び識別デバイスが光検知デバイス及び他の検知デバイスにより読み取られるのに十分なサイズでオブジェクトの上に配置される。カメラ又はビデオ画像等のセンサリターンは、そのようなコードを検出し且つ読み取り、それらのコードを格納された地図データと比較するために処理される。高精度でロバスト性のあるマッチングは、このように実行される。
【0100】
図10は、一実施形態に従ってセンサにより検出されたオブジェクトの特徴付け及びセンサ増強を使用するマップマッチングの方法を示すフローチャートである。図10に示すように、ステップ280において、システムは、GPS、推論、マップマッチング、INS又は同様の測位センサを使用して(初期)位置及び方向情報を見つける。ステップ282において、システムは周囲のシーンの画像を走査するために車載車両センサを使用する。ステップ284において、システムは、更なる識別のためにシーンから1つ以上のオブジェクトを選択する。ステップ286において、システムは、それらのオブジェクトに対するオブジェクトIDを判定し、その情報を使用して格納されたオブジェクトID(地図データベース等の)と比較し且つ正確なオブジェクトIDを提供する。ステップ288において、システムは更新された位置情報に対して、運転者フィードバックを提供するために識別されたオブジェクトを使用できる。」
「【図9】
[図:0001430817000001.jpg]
」
(2)引用文献1に記載されているといえる事項
ア 段落【0020】の記載事項及び段落【0034】の記載事項を踏まえると、引用文献1には「車両ナビゲーションシステムの位置推定値の精度を向上させるために使用される、センサにより検出されたオブジェクトとマップマッチングする方法」との事項が記載されているといえる。
イ 段落【0033】の記載事項を踏まえると、引用文献1には、「車両に物理的なオブジェクトを検知するためのレーダおよびRFID受信機等のセンサが搭載され、それらのオブジェクトは、センサにより検知され、センサは、オブジェクトのサイズ又は寸法、密度、色、反射率又は他の特性等のオブジェクトに関する他の情報を抽出できる」との事項が記載されているといえる。
ウ 段落【0034】の記載事項を踏まえると、引用文献1には、「車両ナビゲーションシステムは、車両ナビゲーションシステムが配置される車両、測位センササブシステム162を含む」との事項が記載されているといえる。
エ 段落【0037】、【0039】、【0045】の記載事項を踏まえると、引用文献1には「センサにより収集されたデータから1つ以上のシーンを抽出し、地図により提供されたバージョン又は格納されたバージョンの生データから対応するシーンを構築し、車両の位置のより正確な推定値を容易に提供するために、車両ナビゲーションシステムが2つのシーンを比較するシーンマッチングを使用し、結果として得られる情報は、測位センササブシステム162に渡され、位置判定及びナビゲーションのために使用される」との事項が記載されているといえる。
オ 段落【0074】の記載事項を踏まえると、引用文献1には、「オブジェクトには、検出性を向上するか又は検出される範囲を拡大するように、コーナ反射器を含むレーダ反射増強装置が装着される」との事項が記載されているといえる。
カ 段落【0097】の記載事項を踏まえると、引用文献1には、「車両ナビゲーションシステムはRFIDタグ等のIDタグ270を使用でき、IDタグ270は、識別子又はIDを生成するように復号化される識別コードを適切な受信機に送信し、IDは、地図データベース内にあるID272のテーブルと比較され、また、IDは、特定のオブジェクトと関連付けられるか、あるいはオブジェクト274の種類又は分類(例えば、停止標識、郵便ポスト又は道路の曲がり角)と関連付けられる」との事項が記載されているといえる。
キ 段落【0098】の記載事項を踏まえると、引用文献1には、「車両ナビゲーションシステムは例えば反射器とのRFID技術の組合せを使用でき、RFIDタグが反射器と同一の場所に配置される」との事項が記載されているといえる。
(3) 引用発明
上記(1)及び(2)より、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「車両ナビゲーションシステムの位置推定値の精度を向上させるために使用される、センサにより検出されたオブジェクトとマップマッチングする方法であって、(上記ア)
車両ナビゲーションシステムは、車両ナビゲーションシステムが配置される車両、測位センササブシステム162を含み、(上記ウ)
車両に物理的なオブジェクトを検知するためのレーダおよびRFID受信機等のセンサが搭載され、それらのオブジェクトは、センサにより検知され、センサは、オブジェクトのサイズ又は寸法、密度、色、反射率又は他の特性等のオブジェクトに関する他の情報を抽出でき、(上記イ)
センサにより収集されたデータから1つ以上のシーンを抽出し、地図により提供されたバージョン又は格納されたバージョンの生データから対応するシーンを構築し、車両の位置のより正確な推定値を容易に提供するために、車両ナビゲーションシステムが2つのシーンを比較するシーンマッチングを使用し、結果として得られる情報は、測位センササブシステム162に渡され、位置判定及びナビゲーションのために使用され、(上記エ)
オブジェクトには、検出性を向上するか又は検出される範囲を拡大するように、コーナ反射器を含むレーダ反射増強装置が装着され、(上記オ)
車両ナビゲーションシステムはRFIDタグ等のIDタグ270を使用でき、IDタグ270は、識別子又はIDを生成するように復号化される識別コードを適切な受信機に送信し、IDは、地図データベース内にあるID272のテーブルと比較され、また、IDは、特定のオブジェクトと関連付けられるか、あるいはオブジェクト274の種類又は分類(例えば、停止標識、郵便ポスト又は道路の曲がり角)と関連付けられ、(上記カ)
車両ナビゲーションシステムは例えば反射器とのRFID技術の組合せを使用でき、RFIDタグが反射器と同一の場所に配置される、(上記キ)
方法」
第6 本願発明と引用発明との対比
1 対比
(1)「車両ナビゲーション制御システムを改善する方法で、以下を含む:」について
引用発明の「センサにより検出されたオブジェクトとマップマッチングする方法」は、「車両ナビゲーションシステムの位置推定値の精度を向上」するものであるから、「車両ナビゲーションシステムを改善するための方法」といえる。
また、引用発明の「車両ナビゲーションシステム」は、本願発明の「車両ナビゲーション制御システム」に相当する。
そうすると、引用発明は、以下で特定する相違点を除いて、本願発明の「車両ナビゲーション制御システムを改善する方法」に相当する。
(2)「ナビゲーション制御システムを有する車両を提供すること」について
引用発明の「ナビゲーションシステムが配置される車両」は、本願発明の「ナビゲーション制御システムを有する車両」に相当する。
そうすると、引用発明は「ナビゲーション制御システムを有する車両を提供」しているといえる。
(3)「前記車両にレーダーおよびRFIDリーダーを接続し、前記ナビゲーション制御システムと作動的に関連付けること」について
引用発明の車両に搭載されるセンサである「レーダ」は、本願発明の車両に接続される「レーダー」に相当する。また、引用発明においては、車両に搭載されるセンサであるRFID受信機が、車両ナビゲーションシステムが使用するIDタグ270によって送信される識別コードを受信する「適切な受信機」として機能して、物理的なオブジェクトを検知するから、引用発明の「RFID受信機」は、本願発明の、車両に接続される「RFIDリーダー」に相当する。
そうすると、引用発明の「車両に物理的なオブジェクトを検知するためのレーダおよびRFID受信機等のセンサが搭載され」は、本願発明の「前記車両にレーダーおよびRFIDリーダーを接続し」に相当する。
そして、引用発明においては、(レーダおよびRFID受信機等の)センサにより収集されたデータから抽出されたシーンと、地図により提供されたバージョンの生データから構築された対応するシーンが車両ナビゲーションシステムによりマッチングされるのであるから、引用発明の(レーダおよびRFID受信機等の)センサは、収集したデータがナビゲーションシステムに用いられるという点において、ナビゲーションシステムと作動的に関連付けられているといえる。
してみると、引用発明は「前記車両にレーダーおよびRFIDリーダーを接続し、前記ナビゲーション制御システムと作動的に関連付け」ているといえる。
(4)「低いレーダー断面を有する少なくとも1つのオブジェクトに1つ以上のコーナーリフレクターを取り付けることで、各コーナーリフレクターがレーダー断面を増加させること」について
引用発明の「コーナ反射器」は、本願発明の「コーナーリフレクター」に相当する。そして、引用発明の「オブジェクト」には、コーナーリフレクターを含むレーダ反射増強装置が装着されているから、本願発明と引用発明は、「少なくとも1つのオブジェクトに1つ以上のコーナーリフレクターを取り付ける」点で共通しており、引用発明においては、コーナリフレクターを取り付けるオブジェクトが「低いレーダー断面を有する」ものであり、各コーナーリフレクターが「レーダー断面を増加させる」ものか否かが明らかでない点で、両者は相違する。
(5)「各コーナーリフレクターに1つ以上のRFIDタグを連結し、各RFIDタグは、前記オブジェクトの位置に関係なくそのオブジェクトの性質を含む識別データを検索可能に記憶すること」について
ア「各コーナーリフレクターに1つ以上のRFIDタグを連結し」について
引用発明においては、「RFIDが反射器と同一の場所に配置される」ことから、引用発明と本願発明は「各コーナーリフレクターに1つ以上のRFIDタグを配置」する点で共通する一方、以下の点で両者は相違する。
本願発明は「各コーナーリフレクターに1つ以上のRFIDタグを連結」するものであるのに対し、引用発明には、「RFIDタグと反射器を同一の場所に配置する」ことは記載されているものの、RFIDタグと反射器を「連結」することは特定されていない点。
イ「各RFIDタグは、前記オブジェクトの位置に関係なくそのオブジェクトの性質を含む識別データを検索可能に記憶すること」について
本願明細書の段落【0017】の「各RFIDタグが前記対象物の性質を含む識別データを検索可能な形で記憶すること」との記載を踏まえると、「識別データを検索可能に記憶すること」とは、「識別データを検索可能な形で記憶すること」と解される。
また、本願明細書の段落【0080】(【表4】)、【0083】(【表5】)、【0087】(【表6】)、【0089】(表7)に記載されたRFIDタグに記憶されるデータの例を参酌すると、RFIDタグに記憶される「前記オブジェクトの位置に関係なくそのオブジェクトの性質を含む識別データ」は、「ID番号等の識別データと、オブジェクトの位置に関係なくそのオブジェクトの性質をあらわすデータ」と解される。
一方、引用発明の「RFIDタグ」は「識別子又はIDを生成するように復号化される識別コードを送信する」ものであるから、「RFIDタグ」は「IDを生成するように復号化される識別コード」を記憶しているといえる。
そうすると、引用発明と本願発明は、「各RFIDタグ」が「データを記憶する」という点で共通する一方、以下の点で両者は相違する。
本願発明のRFIDタグは、「前記オブジェクトの位置に関係なくそのオブジェクトの性質を含む識別データを検索可能に記憶する」のに対し、引用発明のRFIDタグが記憶する情報は「IDを生成するように復号化される識別コード」である点。
(6)「前記車両に接続した前記レーダーの断面積を増やすことによって、遭遇したオブジェクトにおける視認性を高めること」について
本願発明の「視認性を高める」について、視認性とは、一般的には「(人の)目で見たときの確認のしやすさ」という意味で用いられる用語であるが、本願明細書の段落【0063】には「遭遇したオブジェクトが、a)レーダーの断面積を増やすことによって車両のセンサーによる「視認性」を高め」と記載されており、また、本願明細書のその他の記載を考慮しても、「人の目で見たときの確認のしやすさ」を高めることについては記載がない。
そうすると、請求項1の「視認性を高める」とは、「車両のセンサー」が周囲のオブジェクトをより効果的に検出し、認識できることと解される。
そして、引用発明の「コーナ反射器」は、検出性を向上するようにオブジェクトに装着可能なものであるから、上記解釈を踏まえると、引用発明と本願発明は、コーナーリフレクターを用いることで「遭遇したオブジェクトにおける視認性を高める」点で共通する一方、以下の点で両者は相違する。
本願発明では、コーナーリフレクターを用いることにより得られる「遭遇したオブジェクトにおける視認性を高めること」という効果について、「前記車両に接続した前記レーダーの断面積を増やすことによって」とその効果を奏するという作用機序を明示しているのに対し、引用発明ではそのような作用機序を明示していない点。
(7)「RFIDリーダーが、RFIDタグが識別データを開示するように、作動可能範囲内のすべてのRFIDタグに問い合わせるように構成されていること」について
引用発明のRFIDタグは、RFID受信機に識別コードを送信するものであるところ、RFID受信機が、RFIDタグに対してRFIDタグが記憶しているデータを開示するように、RFIDタグに問い合わせていることは明らかである。
そうすると、引用発明と本願発明は「RFIDリーダーが、RFIDタグが識別データを開示するように、RFIDタグに問い合わせるように構成されていること」という点で共通する一方、以下の点で両者は相違する。
本願発明は「作動可能範囲内のすべてのRFIDタグに問い合わせる」のに対し、引用発明にはそのような特定がなされていない点。
2 一致点及び相違点
上記1で検討したことを踏まえると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「車両ナビゲーション制御システムを改善する方法で、以下を含む:
ナビゲーション制御システムを有する車両を提供すること、
前記車両にレーダーおよびRFIDリーダーを接続し、前記ナビゲーション制御システムと作動的に関連付けること、
低いレーダー断面を有する少なくとも1つのオブジェクトに1つ以上のコーナーリフレクターを取り付けることで、各コーナーリフレクターがレーダー断面を増加させること、
各コーナーリフレクターに1つ以上のRFIDタグを配置し、各RFIDタグは、前記オブジェクトの位置に関係なくそのオブジェクトの性質を含む識別データを検索可能に記憶すること、および
前記車両に接続した前記レーダーの断面積を増やすことによって、遭遇したオブジェクトにおける視認性を高めること、
RFIDリーダーが、RFIDタグが識別データを開示するように、作動可能範囲内のすべてのRFIDタグに問い合わせるように構成されていること。」
(相違点1)
本願発明は「低いレーダー断面を有する」オブジェクトにコーナーリフレクターを取り付けるのに対し、引用発明にはコーナ反射器を取り付けるオブジェクトが「低いレーダー断面を有する」ものであることが特定されていない点。
(相違点2)
本願発明は「コーナーリフレクターを取り付ける」ことにより、各コーナーリフレクターが「レーダー断面を増加させる」ことを明示しているのに対し、引用発明には、そのことを明示していない点。
(相違点3)
本願発明は「各コーナーリフレクターに1つ以上のRFIDタグを連結」するものであるのに対し、引用発明には、「RFIDタグと反射器を同一の場所に配置する」ことは記載されているものの、RFIDタグと反射器を「連結」することは特定されていない点。
(相違点4)
本願発明のRFIDタグは、「前記オブジェクトの位置に関係なくそのオブジェクトの性質を含む識別データを検索可能に記憶する」のに対し、引用発明のRFIDタグが記憶する情報は「IDを生成するように復号化される識別コード」である点。
(相違点5)
本願発明では、コーナーリフレクターを用いることにより得られる「遭遇したオブジェクトにおける視認性を高めること」という効果について、「前記車両に接続した前記レーダーの断面積を増やすことによって」とその効果を奏するという作用機序を明示しているのに対し、引用発明ではそのような作用機序を明示していない点。
(相違点6)
本願発明は「作動可能範囲内のすべてのRFIDタグに問い合わせる」のに対し、引用発明にはそのような特定がなされていない点。
第7 判断
1 相違点についての判断
(1)相違点1について
引用発明において、コーナ反射器は「検出性を向上するか又は検出される範囲を拡大する」ためにオブジェクトに装着されるものである(引用文献1の段落【0074】)ことを踏まえると、コーナ反射器を装着するオブジェクトとして、検出性が低いオブジェクトも想定されていることは自明であるから、引用発明において、コーナ反射器を装着するオブジェクトとして、「低いレーダー断面を有するもの」を対象とすることは当業者が容易に想到し得た事項である。
(2)相違点2、5について
相違点2と相違点5は、関連する相違点であり、まとめて検討する。
レーダの入射方向への反射率を増加させるコーナ反射器を用いることでレーダー断面積が増加すること、オブジェクトのレーダ断面積の増加によりオブジェクトの検知がし易くなることは、いずれも文献を示すまでもない技術常識であり(必要であれば、例えば特開2016-75570号公報の段落【0027】、【0042】を参照。)、引用文献1の段落【0074】の「オブジェクト」への「「コーナー反射器」等を含むレーザ反射増強装置」の「装着」を示す記載とその直前の段落【0073】の「レーダは、可能性として密度を測定してもよく、あるいは少なくともレーダサイズ又は断面を提供しかつその解像度に依存して形状を識別できてもよい。」との記載は、このような技術常識を前提として、測定される「密度」(つまり、コーナー反射器が増強する入射方向への反射波の電力密度)に代替するパラメータとして「断面」を用いること、「コーナー反射器」の装着によって「オブジェクト」からの「レーザ反射」が「増強」されることを示唆する記載であるといえる。
してみると、引用発明において、コーナ反射器をそれ自体は低いレーダー断面を有するオブジェクトに装着することで、コーナー反射器が装着されたオブジェクトのレーダー断面が増加し、それによりオブジェクトの検出性が向上することは、当業者にとって、引用文献1において、明示されずとも記載されているのも同然の事項である。
以上を踏まえれば、相違点2及び相違点5は、実質的な相違点でないか、あるいは、実質的な相違点であるとしても、当業者が適宜為し得た事項である。
(3)相違点3について
本願明細書の段落【0025】には「本明細書で使用される、「連結された」という用語は、必ずしも直接ではないが、機械的に接続されていると定義される。」と記載されており、当該記載を踏まえると、「各コーナーリフレクターに1つ以上のRFIDタグを連結」するとは、「各コーナーリフレクター」と「1つ以上のRFIDタグ」とが「機械的に接続される」ことと解される。
そして、引用文献1においても、段落【0098】に「更にRFIDは、反射器(又は他のセンサ)が車載センサ、例えばスキャン式レーザにより照明される場合にのみ、固有の識別コード又は追加のフラグを同報通信するように制御される。」と記載されており、RFIDと反射器が協働する態様についても開示されていることを踏まえると、引用発明において、RFIDと反射器を同一の場所に配置するに際して、両者が協働するように、両者を機械的に接続する(連結する)よう構成することは当業者が容易になし得たことである。
(4)相違点4について
引用発明は、RFID受信機等のセンサが、オブジェクトから「オブジェクトのサイズ又は寸法、密度、色、反射率又は他の特性等のオブジェクトに関する他の情報を抽出」するものであることから、RFID受信機等のセンサが、RFIDタグからオブジェクトに関する他の情報を取得することが少なくとも示唆されているといえる。
ここで、「オブジェクトのサイズ又は寸法、密度、色、反射率又は他の特性等のオブジェクトに関する他の情報」は、オブジェクトの位置を表す情報ではないから、本願発明の「前記オブジェクトの位置に関係なくそのオブジェクトの性質」をあらわすデータに相当する。
そして、当該示唆を踏まえると、引用発明において、RFID受信機等のセンサが、オブジェクトから「オブジェクトのサイズ又は寸法、密度、色、反射率又は他の特性等のオブジェクトに関する他の情報を抽出」できるよう、RFIDタグに、「オブジェクトのサイズ又は寸法、密度、色、反射率又は他の特性等のオブジェクトに関する他の情報」を記憶させることは、当業者が容易になし得た事項である。
(なお、タグ自体に様々な付加情報を記録することは特表2015-522797号公報(段落【0056】)、特開2008-175913号公報(段落【0050】、【0055】)に記載されているように出願時に広く知られた技術である。)
また、引用発明において、RFIDタグに記憶させるデータを復号化の処理が必要な「識別コード」とするか「ID」そのものとするかは、必要とするセキュリティレベルやレスポンス速度等に応じて当業者が適宜選択し得た設計的事項であって、識別コードに代えてIDをRFIDタグに記憶させることに格別の技術的困難性は認められない。ここで、「ID」が検索可能な形のものといえることは明らかである。
してみると、引用発明において、RFIDに「ID」、「オブジェクトのサイズ又は寸法、密度、色、反射率又は他の特性等のオブジェクトに関する他の情報」を記録し、相違点4に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
(5)相違点6について
引用文献1の【図1】や段落【0100】の「ステップ284において、システムは、更なる識別のためにシーンから1つ以上のオブジェクトを選択する。ステップ286において、システムは、それらのオブジェクトに対するオブジェクトIDを判定し、その情報を使用して格納されたオブジェクトID(地図データベース等の)と比較し且つ正確なオブジェクトIDを提供する。」との記載から、シーンには複数のオブジェクトが含まれうるものと認められる。
この点、複数のRFIDタグから情報を取得する際に、データの衝突を防ぐ技術は、技術常識であり(必要であれば、特開2005-500516号公報の段落【0002】~【0003】を参照。)、引用文献1において、データの衝突をいかにして防ぐかが明示されていないことは、引用発明において「複数のRFIDタグから情報を取得する」ことを阻害するとはいえない。
そうすると、引用発明において、車両からRFIDタグに問い合わせをする場合に、シーン内の複数のオブジェクトからデータを取得するために、作動可能範囲内のすべてのRFIDタグに対して問い合わせを行うよう構成することは、当業者であれば容易に想到し得た事項である。
2 効果について
本願発明の奏する作用効果は、上記相違点1~6を総合的に勘案しても、引用発明及び周知技術による作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものではない。
3 審判請求人の主張について
審判請求人は、令和6年11月5日提出の審判請求書において、令和6年11月5日に提出された手続補正書による手続補正により追加された「各ナビゲーション制御システムが、作動可能範囲を超えて各車両と各オブジェクトの識別データを同時に共有するように構成されており」との構成を前提に縷々主張しているが、上記手続補正は上記第2に記載のとおり却下されたから、当該構成を前提とする審判請求人の主張は採用できない。
4 小括
以上より、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第8 むすび
前記第7によれば、本願発明は、引用発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-017607