特許拒絶査定不服審判
2024-017559
セキュリティペーパー
- 審判番号
- 2024-017559
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-560324
- 請求日
- 2024年11月01日
- 審決日
- 2026年01月28日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ブイエイチピー セキュリティ ペーパー ビー・ブイ
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】飯田 雅人
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 審判長/審判官
- 審判長 濱本 禎広
- 審判官 門 良成
- 審判官 殿川 雅也
- 分類
- P18 .575-Z (B42D) / P18 .113-Z (B42D) / P18 .121-Z (B42D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-560324「セキュリティペーパー」拒絶査定不服審判事件〔令和元年10月31日国際公開、WO2019/206760、令和3年8月30日国内公表、特表2021-522087〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年4月17日(パリ条約による優先権主張2018年4月23日、フランス)を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和2年12月23日 :手続補正書の提出
令和4年11月16日付け:拒絶理由通知書
令和5年 4年18日 :意見書、手続補正書の提出
同年 5月29日付け:拒絶理由通知書
同年 9年 5日 :意見書、手続補正書の提出
同年11月17日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和6年 5年27日 :意見書、手続補正書の提出
同年 6月21日付け:補正の却下の決定、拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 7月 1日 :原査定の謄本の送達)
同年11月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出
同月 7日 :手続補正書(方式)の提出
令和7年 4月21日 :上申書の提出
第2 令和6年11月1日に提出された手続補正書による補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年11月1日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、次の(1)に示す令和5年9月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。
(1)本件補正前の請求項1
「 【請求項1】
少なくとも1つの紙基材(10)と、
前記紙基材(10)内に作成された少なくとも1つの透かし(11)であって、前記透かしは外部輪郭(13)を有する、少なくとも1つの透かし(11)と、
前記紙基材の切除によって作成され開口部に突出する繊維を含まない規則的なエッジの少なくとも1つの開口部(12)と、
前記少なくとも1つの透かし(11)及び前記開口部(12)上に少なくとも部分的に重ね合わされた少なくとも1つのセキュリティフィルム(15)と、
を備えるセキュリティシートであって、
前記少なくとも1つの開口部(12)は、その外部輪郭によって囲まれるように前記透かし(11)の内側にあり、前記セキュリティフィルム(15)は、少なくとも部分的に前記開口部(12)に重ね合わされた少なくとも1つのセキュリティエレメント(20)を備えることを特徴とするセキュリティシート。」
(2)本件補正後の請求項1
「 【請求項1】
少なくとも1つの紙基材(10)と、
前記紙基材(10)内に作成された少なくとも1つの透かし(11)であって、前記透かしは外部輪郭(13)を有する、少なくとも1つの透かし(11)と、
前記紙基材の切除によって作成され開口部に突出する繊維を含まない規則的なエッジの少なくとも1つの開口部(12)と、
プラスチックの透明な担体を備え、前記少なくとも1つの透かし(11)及び前記開口部(12)上に少なくとも部分的に重ね合わされ、前記少なくとも1つの透かし(11)に重ね合わされた領域において透明である1つのセキュリティフィルム(15)と、
を備えるセキュリティシートであって、
前記少なくとも1つの開口部(12)は、その外部輪郭によって囲まれるように前記透かし(11)の内側にあり、前記1つのセキュリティフィルム(15)は、少なくとも部分的に前記開口部(12)に重ね合わされた少なくとも1つのセキュリティエレメント(20)を備え、前記セキュリティエレメント(20)は、前記開口部の領域において、異なる外観の前面及び後面を有することを特徴とするセキュリティシート。」
2 本件補正の目的
(1)本件補正は、次のア~ウの補正事項からなり、全体として特許請求の範囲の減縮であるといえる。
ア 補正前の「セキュリティフィルム(15)」について、「プラスチックの透明な担体を備え」、「前記少なくとも1つの透かし(11)に重ね合わされた領域において透明である」と限定すること。
イ 補正前の「セキュリティフィルム(15)」の数について、「少なくとも1つ」であったところ、「1つ」と限定すること。
ウ 補正前の「セキュリティエレメント(20)」について、「前記開口部の領域において、異なる外観の前面及び後面を有する」と限定すること。
(2)そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
(3)したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件の判断
本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、再掲すると、令和6年11月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
少なくとも1つの紙基材(10)と、
前記紙基材(10)内に作成された少なくとも1つの透かし(11)であって、前記透かしは外部輪郭(13)を有する、少なくとも1つの透かし(11)と、
前記紙基材の切除によって作成され開口部に突出する繊維を含まない規則的なエッジの少なくとも1つの開口部(12)と、
プラスチックの透明な担体を備え、前記少なくとも1つの透かし(11)及び前記開口部(12)上に少なくとも部分的に重ね合わされ、前記少なくとも1つの透かし(11)に重ね合わされた領域において透明である1つのセキュリティフィルム(15)と、
を備えるセキュリティシートであって、
前記少なくとも1つの開口部(12)は、その外部輪郭によって囲まれるように前記透かし(11)の内側にあり、前記1つのセキュリティフィルム(15)は、少なくとも部分的に前記開口部(12)に重ね合わされた少なくとも1つのセキュリティエレメント(20)を備え、前記セキュリティエレメント(20)は、前記開口部の領域において、異なる外観の前面及び後面を有することを特徴とするセキュリティシート。」
(2)引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前の平成17年8月25日に発行された文献である特表2005-525474号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。また、下線は当審において付したものであり、以下同様である。
(ア)「【0018】
開口部によって有価証書の偽造防止または偽造を著しく困難にするという本発明の目的は、スクリーンに対応するエンボス加工を施すと共に/または電気製版による水切り障害要素によって、セキュリティー・ペーパーに比較的大きな薄い領域を形成し、その領域に本発明の開口部を形成し、薄いペーパー領域が開口部の少なくとも一部の周囲、好ましくはすべての周囲に延び、セキュリティー・ペーパーの透過観察において、薄いペーパー領域が周囲のペーパー・ウェブと対比して際立つようにすることによっても達成することができる。この場合、開口部は前記のように製紙の段階で形成することができる。しかし、開口部を直接囲む薄い紙領域の有無により偽造を識別することができるため、紙が完成した後に打抜きまたは切断、特にレーザー切断によって、セキュリティー・ペーパーを切断することも同様に可能である。」
「【0032】
前記開口部の両面にセキュリティー要素を配する場合、同一または同種の要素を配するか、または異なる要素を配することができる。以下の組合せが好ましい。
【表1】
[図:0001436776000001.jpg]
」
「【0034】
図1は本発明の有価証書の平面図である。図示の例は銀行券1である。銀行券1は貫通開口部2を有している。前記開口部は銀行券1に使用されるセキュリティー・ペーパーの製造時に形成されたものであり、繊維質の不規則な縁部14を有している。縁部14は前記銀行券用の紙シート製造時に形成されたもので、前記用紙が完成した後に打抜きまたは切断によって形成することはできない。」
「【0041】
図7は、図6の製紙スクリーン4を用いて形成したペーパー・ウェブ10を示す図である。ペーパー・ウェブ10は、封止要素7によって形成された開口部2を有している。しかし、転調されたペーパー領域12は、透かしエンボス加工要素11によって形成されたものである。以後“透かし12”と呼ぶ前記ペーパー領域を開口部2に直接有意味に関連付けるか、または開口部2と透かし12とによって、例えば、図8の平面図に示すようなモチーフを形成することができる。開口部2は円形輪郭を有し、放射状の透かし12に囲まれ太陽のモチーフが形成されている。
【0042】
図9は図1の有価証書の1の別の実施の形態を示す、図1のA-A線断面図である。この実施の形態では、開口部2の一方の側がセキュリティー要素13によって封止されている。セキュリティー要素13は、前記開口部を囲む窪み15に配されることが好ましい。窪み15は、ペーバー・ウェブ10を、後のカレンダ加工、即ち、紙繊維を圧縮することによって得られる。
【0043】
別の方法として、当該部分の紙厚を実際に薄くすることによって窪み15を形成することもできる。これは、製紙スクリーンを対応するよう構成し、当該領域のシートを薄く形成することにより、ペーパー・ウェブ10の製造時に直接実施できる最も簡単な方法である。前記は、製紙スクリーン4の対応するエンボス加工要素16によって得ることができる。
【0044】
図4および5に示す封止要素7は、種々の方法で実現することができる。従って、テイクオフ・ロール5によって押下される発泡プラグによって前記と同様の封止要素を実現することが考えられる。前記要素は製紙スクリーン4に接着され、当該領域におけるシートの形成を抑制する。しかし、前記封止要素は、圧力によって圧縮され、その後、元の形状に戻る瓶形弾性要素によっても実現することができる。
【0045】
セキュリティー要素13は、単層または多層形態であって、少なくとも1つの紙またはプラスチック層を有している。セキュリティー要素13は、開口部2の領域に、一方において複写防止機能を果たし、他方において、前記開口部の縁を両方の側から見えるようにするための比較的大きな透明領域を有していることが好ましい。更に、セキュリティー要素13は、希望する任意のセキュリティー機能を備えることができる。
【0046】
図10は、本発明のセキュリティー・ペーパーの別の実施の形態を示す断面図である。ペーパー・ウェブ10は、他の領域と比較して紙厚の薄い領域16を有している。しかし、領域16の紙厚は殆んど均一である。前記薄い領域16は、対応するエンボス加工要素またはペーパー・ウェブ10製造時の水切れ抑制体によって形成することができる。その後、前記薄い領域16に本発明の開口部2が形成される。図10において、前記開口部2の端部輪郭を破線17で示す。本実施の形態の開口部2は、ペーパー・ウェブの領域16に打抜きまたは切断によって形成することが好ましい。同時に、領域16が開口部16の少なくとも一部の周囲に延び、透過観察において、ペーパー・ウェブ10の対応する真贋をチェックできるようにする必要がある。」
「【図1】
[図:0001436776000002.jpg]
」
「【図8】
[図:0001436776000003.jpg]
」
「【図9】
[図:0001436776000004.jpg]
」
「【図10】
[図:0001436776000005.jpg]
」
(イ)引用文献1の記載より認定できる事項
a 認定事項1
(a)前記(ア)【0034】、【0041】、【図1】、【図8】に記載された、ペーパー・ウェブ10に、開口部2と透かし12とによってモチーフが形成されたセキュリティ・ペーパーの実施の形態(以下「第1実施形態」という。)、前記(ア)【0042】、【図9】に記載された、開口部2の一方の側がセキュリティー要素13によって封止されているセキュリティ・ペーパーの実施の形態(以下「第2実施形態」という。)、及び前記(ア)【0046】、【図10】に記載された、他の領域と比較して紙厚の薄い領域16を有し、開口部2がペーパー・ウェブの領域16に形成されたセキュリティー・ペーパーの実施の形態(以下「第3実施形態」という。)は、それぞれ別の実施の形態のごとく記載されているものの、第1実施形態の「開口部2と透かし12」、第2実施形態の「セキュリティー要素13」、及び第3実施形態の「紙厚の薄い領域16」は、それぞれ異なる部位に適用されて併用できる技術であるから、これらを同時に備えたセキュリティ・ペーパーの発明が実質的に記載されているといえる。
(b)そうすると、他の領域と比較して紙厚の薄い領域16を有するペーパー・ウェブ10に、領域16に形成された開口部2と透かし12とによってモチーフが形成され、開口部2の一方の側がセキュリティー要素13によって封止されたセキュリティ・ペーパーが記載されているといえる。
b 認定事項2
(a)前記(ア)【0046】の「本実施の形態の開口部2は、ペーパー・ウェブの領域16に打抜きまたは切断によって形成することが好ましい。」、及び前記(ア)【0018】の「開口部によって有価証書の偽造防止または偽造を著しく困難にするという本発明の目的は、スクリーンに対応するエンボス加工を施すと共に/または電気製版による水切り障害要素によって、セキュリティー・ペーパーに比較的大きな薄い領域を形成し、その領域に本発明の開口部を形成し、薄いペーパー領域が開口部の少なくとも一部の周囲、好ましくはすべての周囲に延び、セキュリティー・ペーパーの透過観察において、薄いペーパー領域が周囲のペーパー・ウェブと対比して際立つようにすることによっても達成することができる。この場合、開口部は前記のように製紙の段階で形成することができる。しかし、開口部を直接囲む薄い紙領域の有無により偽造を識別することができるため、紙が完成した後に打抜きまたは切断、特にレーザー切断によって、セキュリティー・ペーパーを切断することも同様に可能である。」との記載から、他の領域と比較して紙厚の薄い領域16を有する第3実施形態において、レーザー切断によって開口部2を形成することが記載されているといえる。
(b)前記a、及び前記(a)をふまえると、他の領域と比較して紙厚の薄い領域16を有するペーパー・ウェブ10に、領域16にレーザー切断によって形成された開口部2と透かし12とによってモチーフが形成され、開口部2の一方の側がセキュリティー要素13によって封止されたセキュリティ・ペーパーが記載されているといえる。
c 認定事項3
(a)前記(ア)【0042】の「図9は図1の有価証書の1の別の実施の形態を示す、図1のA-A線断面図である。この実施の形態では、開口部2の一方の側がセキュリティー要素13によって封止されている。」との記載、【図1】、及び【図9】から、1枚のセキュリティー要素13が開口部2を封止していることが記載されているといえる。
d 認定事項4
(a)前記(ア)【0032】の「前記開口部の両面にセキュリティー要素を配する場合、同一または同種の要素を配するか、または異なる要素を配することができる。」との記載、及び【表1】の3つめの例から、セキュリティ・ペーパーの一方の面と他方の面で、セキュリティー要素の見え方が異なることが記載されているといえる。
e 認定事項5
(a)前記(ア)【0032】の【表1】から、セキュリティー要素には目視可能な物質を含む印刷インクから成る印刷が全面に施されることが記載されているといえる。
(ウ)引用発明1
前記(ア)、(イ)から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「他の領域と比較して紙厚の薄い領域16を有するペーパー・ウェブ10に、領域16にレーザー切断によって形成された開口部2と透かし12とによってモチーフが形成され、開口部2の一方の側が1枚のセキュリティー要素13によって封止されたセキュリティ・ペーパーであって(前記(イ)b、c)、
開口部2は円形輪郭を有し、放射状の透かし12に囲まれ太陽のモチーフが形成されており((ア)【0041】)、
1枚のセキュリティー要素13は、プラスチック層を有し、開口部2の縁を両方の側から見えるようにするための比較的大きな透明領域を有し((ア)【0045】)、目視可能な物質を含む印刷インクから成る印刷が全面に施される(前記(イ)e)、
セキュリティ・ペーパー。」
(エ)引用文献1技術事項
前記(イ)dから、引用文献1には次の技術事項(以下「引用文献1技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「セキュリティ・ペーパーの一方の面と他方の面で、セキュリティー要素の見え方が異なる技術」
イ 引用文献2
本願優先日前である平成14年10月8日に発行された特表2002-533588号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0011】
(発明の開示)
本発明によれば、少なくとも一部がその中に埋め込まれた細長い不浸透性ストリップを有する単層紙の製造方法であって、多孔質支持表面の一つ以上の選択された領域を目隠しするステップと、前記目隠し領域の周囲の前記多孔質支持表面上に紙繊維の第1層を付着させるステップと、前記ストリップの少なくともエッジが前記付着された繊維に重なるように前記ストリップを前記支持表面の目隠し領域に接触した状態にするステップと、前記紙内に前記ストリップの前記エッジをしっかりと埋め込むように前記第1層および前記不浸透性ストリップ上に紙繊維の別の層を付着させるステップとからなり、前記目隠し領域は、偽造防止要素(security element)がその上に置かれる前に繊維の付着をほぼ防止して、それにより紙の第1面に複数の分離した半透明または透明の窓を形成するために不浸透性であって、前記窓において前記ストリップの一方の面の領域が露出しており、前記エッジ間の領域では前記ストリップの長さの両側に沿って紙繊維がほとんど付着せず、それにより前記紙の第2面で前記ストリップの連続する領域を露出させることを特徴とする方法が提供される。」
「【0031】
(発明を実施するための最良の形態)
本発明の製紙方法は、図1ないし11に関して最初に示されている。例えばシリンダー型カバー10の形の多孔性支持表面は、公知の方法で製造される。型カバー10は、EP-A-0070172号公報に開示されるようなエンボス(embossing)により形成される浮き上がった領域を有しておらず、選択された領域12が目隠し材料(blinding material)を型カバー10に固定することにより覆われている。目隠し材料は、一般に、シリンダー型カバー10に溶接される金属であり(図2,7,8参照)、これらの目隠しは最終の紙16に形成される窓17の形状を決定する。目隠し材料12はまた、排水および繊維付着を防止するためにシリンダー型カバー10にしっかりと取り付け得るワックス、ポリマー、または他のいかなる材料であってもよい。本明細書において、用語“窓”は、規則的または不規則な形状および発生の紙における透明または半透明の領域を含む。
【0032】
公知の方法で、シリンダー型カバー10は、図1に示すように、製紙原料のバット(vat)内で回転する。それが回転すると、好ましくは6mm以上の幅を有する幅広の細長い不浸透性基板13は、製紙材料11の面より下でシリンダー型カバー10と接触する。このことは、例えば40gsmシートを形成するように、紙繊維の層14がシリンダー型カバー10に既に付着していることを意味する。不浸透性基板13が目隠し材料に接触した状態になると、さらなる紙繊維15が不浸透性基板13の上部および側面に付着して一般に80ないし90gsmまでシート15の残りの部分を形成する。製造の間は、不浸透性基板13の振動が起こらないことが好ましい。
【0033】
上述したように、紙繊維の層は、基板13の導入の前にシリンダー型カバー10上に積み重なる。しかしながら、目隠し領域12は基板13との接触前には紙繊維をほとんど、または全く保持しないが、目隠し領域12の間の囲まれた領域には十分な適用(coverage)が得られる。同時に、基板13の不浸透性のために、基板13の上部の大部分の上には紙繊維がほとんど、または全く保持されない。従って、紙16がシリンダー型カバー10から除去されるとき、紙16は不浸透性基板の幅広ストリップ13を組み込んでおり、ストリップ13の各エッジは、ストリップ13を所定位置にしっかりと保持するように、紙16の2つの表面間に完全に埋め込まれている。ストリップ13が透明であれば、紙には前記目隠し領域12に対応する一つ以上の半透明または透明の窓17が存在することになる。」
「【0040】
不浸透性基板からなるこの幅広ストリップ13は、大きい窓17において良く見える例えば非金属化像(de-metallised images)、ホログラフィ像、色ずれ領域(colour-shifting areas)、印刷またはこれらのいずれかもしくは全ての組合せのようなしるし(indicia)のための表示面として使用されてもよい。しかしながら、平坦で透き通ったストリップ13が使用されれば、窓17は部分的に半透明または完全に透明になることになる。裏面から透過で見るとき、ストリップ13の十分に埋め込まれたエッジ上の前記しるし、金属化、または着色もまた見えるようになる。これらのエッジには、ストリップ13の露出部上に含まれるいずれかのしるしから裁ち切りにする(bleed)か又は前記しるしを補足するしるしを設けてもよい。」
「【0049】
ストリップ13は、情報担体として好都合に使用可能であり、および/または、公知の偽造防止の特徴(security feature)の幅広い変化を含むことができる。これらは、次のものを含む。」
「【0053】
表裏に示す異なる着色印刷。印刷は、一つの色が一方の面の他の色で隠されるが他方の面に透けて見えるような状態で、ストリップのどちらかの面か、または同じ面に両方なされてもよい。」
(イ)周知技術
前記(ア)から、次の技術は、本願優先日前には周知の技術(以下「周知技術」という。)であったと認められる。
「偽造防止のためにストリップの表裏に異なる印刷をする技術」
(3)対比
本件補正発明と引用発明1を対比する。
ア 後者の「ペーパー・ウェブ10」は、前者の「少なくとも1つの紙基材(10)」に相当する。
イ 後者の「透かし12」は、「ペーパー・ウェブ10」に「開口部2」を囲んで「太陽のモチーフ」として形成されたものであって、「太陽のモチーフ」の外縁を構成するものであるといえるから、前記アをふまえると、前者の「前記紙基材(10)内に作成された少なくとも1つの透かし(11)であって、前記透かしは外部輪郭(13)を有する、少なくとも1つの透かし(11)」に相当する。
ウ 後者の「開口部2」は、「ペーパー・ウェブ10」の「他の領域と比較して紙厚の薄い領域16」に「レーザー切断によって形成」され、「円形輪郭を有」するものであるから、前者の「開口部(12)」と「前記紙基材の切除によって作成され開口部に突出する繊維を含まない規則的なエッジの少なくとも1つの」開口部である点で一致する。
エ 後者の「1枚のセキュリティー要素13」は、「開口部2の一方の側」を封止するものであって、「プラスチック層を有し、開口部2の縁を両方の側から見えるようにするための比較的大きな透明領域を有」するものであるから、「開口部2」よりも大きい「透明領域」を有するといえる。
そして、後者の「開口部2」が「放射状の透かし12に囲まれ」ることにより「太陽のモチーフ」を形成することをふまえると、後者の「1枚のセキュリティー要素13」は、少なくとも「透かし12」の一部に重なっているといえる。
そうすると、前者の「1つのセキュリティフィルム(15)」と後者の「1枚のセキュリティー要素13」は、「プラスチックの透明な担体を備え、前記少なくとも1つの透かし及び前記開口部上に少なくとも部分的に重ね合わされ、前記少なくとも1つの透かしに重ね合わされた領域において透明である1つのセキュリティフィルム」である点で一致する。
オ 後者の「セキュリティ・ペーパー」は、「開口部2と透かし12とによってモチーフが形成され、開口部2の一方の側が1枚のセキュリティー要素13によって封止された」ものであるから、前者の「セキュリティシート」と後者の「セキュリティ・ペーパー」は、「少なくとも1つの紙基材と、少なくとも1つの透かしと、少なくとも1つの開口部と、1つのセキュリティフィルムと、を備えるセキュリティシート」である点で一致する。
カ 後者の「開口部2」は、「放射状の透かし12に囲まれ太陽のモチーフが形成され」るものであるから、前記イ、ウをふまえると、前者の「少なくとも1つの開口部(12)」と後者の「開口部2」は、「その外部輪郭によって囲まれるように前記透かしの内側にあ」るものである点で一致する。
キ 後者の「目視可能な物質を含む印刷インクから成る印刷」は、「開口部2の一方の側」を封止する「1枚のセキュリティー要素13」の「全面に施され」たものであるから、前者の「少なくとも部分的に前記開口部(12)に重ね合わされた少なくとも1つのセキュリティエレメント(20)」に相当し、前記エをふまえると、前者の「1つのセキュリティフィルム(15)」と後者の「1枚のセキュリティー要素13」は、「少なくとも1つのセキュリティエレメントを備え」るものである点でも一致する。
ク そうすると、本件補正発明と引用発明1は、
[一致点]
「少なくとも1つの紙基材と、
前記紙基材内に作成された少なくとも1つの透かしであって、前記透かしは外部輪郭を有する、少なくとも1つの透かしと、
前記紙基材の切除によって作成され開口部に突出する繊維を含まない規則的なエッジの少なくとも1つの開口部と、
プラスチックの透明な担体を備え、前記少なくとも1つの透かし及び前記開口部上に少なくとも部分的に重ね合わされ、前記少なくとも1つの透かしに重ね合わされた領域において透明である1つのセキュリティフィルムと、
を備えるセキュリティシートであって、
前記少なくとも1つの開口部は、その外部輪郭によって囲まれるように前記透かしの内側にあり、前記1つのセキュリティフィルムは、少なくとも部分的に前記開口部に重ね合わされた少なくとも1つのセキュリティエレメントを備えるセキュリティシート。」
で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
本件補正発明の「セキュリティエレメント(20)」が、「前記開口部の領域において、異なる外観の前面及び後面を有する」ものであるのに対し、引用発明1の「目視可能な物質を含む印刷インクから成る印刷」がそのような構成を有するものであるのか不明である点。
(4)判断
前記相違点について検討する。
引用文献1技術事項のように、セキュリティ・ペーパーの一方の面と他方の面で、セキュリティー要素の見え方を異ならせるという課題は、偽造防止の技術分野においては周知の課題であるから、引用発明1の「目視可能な物質を含む印刷インクから成る印刷が全面に施され」た「1枚のセキュリティー要素13」に対して、両面から見たときに異なる見え方とするように、偽造防止のためにストリップ(フィルム)の表裏に異なる印刷をする周知技術を適用し、前記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本件補正発明の効果も、引用発明1、及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものといえる。
(5)令和7年4月21日に提出された上申書の主張について
ア 請求人は、前記上申書において以下のように主張している。
「すなわち、引用文献2に記載の発明の製造方法は、紙16にストリップ13を挿入しながら、シリンダー型カバー10上に紙16を製造していくものであり、透かしとストリップ13を重ね合わせることができるものではありません。引用文献2には、透かしを設けて、紙の製造中において透かしの上にストリップ13を重ね合わせることは開示も示唆もされていません。
以上のとおり、当業者には引用文献1に記載の発明と引用文献2に記載の発明とを組み合わせる動機が存在せず、仮に、引用文献1に記載の発明と引用文献2に記載の発明とを組み合わせたとしても、本願発明1の「前記少なくとも1つの透かし(11)及び前記開口部(12)上に少なくとも部分的に重ね合わされ、前記少なくとも1つの透かし(11)に重ね合わされた領域において透明である1つのセキュリティフィルム(15)」との構成は得ることができないものと思料します。」
イ 請求人の主張についての検討
前記(4)に示したとおりであるから、前記主張アは前記(4)の判断を左右するものでなく、採用できない。
(6)むすび
以上のとおり、本件補正発明は、当業者が、引用発明1、及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 小括
本件補正発明は、前記3のとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1~32に係る発明は、令和5年9月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~32に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、再掲すると、令和5年9月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
少なくとも1つの紙基材(10)と、
前記紙基材(10)内に作成された少なくとも1つの透かし(11)であって、前記透かしは外部輪郭(13)を有する、少なくとも1つの透かし(11)と、
前記紙基材の切除によって作成され開口部に突出する繊維を含まない規則的なエッジの少なくとも1つの開口部(12)と、
前記少なくとも1つの透かし(11)及び前記開口部(12)上に少なくとも部分的に重ね合わされた少なくとも1つのセキュリティフィルム(15)と、
を備えるセキュリティシートであって、
前記少なくとも1つの開口部(12)は、その外部輪郭によって囲まれるように前記透かし(11)の内側にあり、前記セキュリティフィルム(15)は、少なくとも部分的に前記開口部(12)に重ね合わされた少なくとも1つのセキュリティエレメント(20)を備えることを特徴とするセキュリティシート。」
2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、以下の拒絶理由を含むものである。
1.(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特表2005-525474号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由における引用文献1は、前記第2の3(2)アにおける「引用文献1」に相当する。
したがって、引用文献1に記載された内容は、前記第2の3(2)アに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の「プラスチックの透明な担体を備え、前記少なくとも1つの透かし(11)及び前記開口部(12)上に少なくとも部分的に重ね合わされ、前記少なくとも1つの透かし(11)に重ね合わされた領域において透明である1つのセキュリティフィルム(15)」という発明特定事項を、「前記少なくとも1つの透かし(11)及び前記開口部(12)上に少なくとも部分的に重ね合わされた少なくとも1つのセキュリティフィルム(15)」に置き換え、本件補正発明の「前記少なくとも1つの開口部(12)は、その外部輪郭によって囲まれるように前記透かし(11)の内側にあり、前記1つのセキュリティフィルム(15)は、少なくとも部分的に前記開口部(12)に重ね合わされた少なくとも1つのセキュリティエレメント(20)を備え、前記セキュリティエレメント(20)は、前記開口部の領域において、異なる外観の前面及び後面を有する」という発明特定事項を、「前記少なくとも1つの開口部(12)は、その外部輪郭によって囲まれるように前記透かし(11)の内側にあり、前記セキュリティフィルム(15)は、少なくとも部分的に前記開口部(12)に重ね合わされた少なくとも1つのセキュリティエレメント(20)を備える」に置き換えたものである。
また、本願発明は、本件補正発明から「セキュリティエレメント(20)」についての「前記開口部の領域において、異なる外観の前面及び後面を有する」との限定を省いたものである。
(1)対比・判断
ア 本願発明と引用発明1を対比すると、前記第2の3(3)のとおりであるから、両者は、
「少なくとも1つの紙基材と、
前記紙基材内に作成された少なくとも1つの透かしであって、前記透かしは外部輪郭を有する、少なくとも1つの透かしと、
前記紙基材の切除によって作成され開口部に突出する繊維を含まない規則的なエッジの少なくとも1つの開口部と、
前記少なくとも1つの透かし及び前記開口部上に少なくとも部分的に重ね合わされた少なくとも1つのセキュリティフィルムと、
を備えるセキュリティシートであって、
前記少なくとも1つの開口部は、その外部輪郭によって囲まれるように前記透かしの内側にあり、前記セキュリティフィルムは、少なくとも部分的に前記開口部に重ね合わされた少なくとも1つのセキュリティエレメントを備えることを特徴とするセキュリティシート。」
である点で一致し、相違するところがない。
イ したがって、本願発明は、引用発明1であるか、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1であり、特許法29条1項3号に該当するものであるから、特許を受けることができない。
また、本願発明は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-017559