特許拒絶査定不服審判
2024-016527
蓄電デバイス用外装体及び蓄電デバイス
- 審判番号
- 2024-016527
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-059311
- 請求日
- 2024年10月16日
- 審決日
- 2025年07月10日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】大日本印刷株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人WisePlus
- 審判長/審判官
- 審判長 岩間 直純
- 審判官 井上 信一
- 審判官 ▲吉▼澤 雅博
- 分類
- P18 .121-Z (H01M) / P18 .561-Z (H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 59311「蓄電デバイス用外装体及び蓄電デバイス」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年10月 1日出願公開、特開2020-161326〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年3月26日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年11月16日付け:拒絶理由通知
令和5年 1月18日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 4月21日付け:最後の拒絶理由通知
令和5年 6月22日 :意見書の提出
令和5年 9月20日付け:最後の拒絶理由通知
令和5年11月17日 :意見書の提出
令和6年 2月 2日付け:最後の拒絶理由通知
令和6年 4月10日 :意見書の提出
令和6年 7月 9日付け:拒絶査定(原査定)
令和6年10月16日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年10月16日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和6年10月16日の手続補正を却下する。
[理由]
1.本件補正について
令和6年10月16日の手続補正(以下、「本件補正」という。)による補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前には、
「【請求項1】
基材層、バリア層、接着層及びシーラント層がこの順に積層されてなる蓄電デバイス用外装体であって、
前記バリア層は、ステンレス箔からなるものであり、
前記接着層は、プロピレン成分を70質量%以上含有すると共に酸成分を0.1~10質量%含有する酸変性ポリプロピレン樹脂と、オキサゾリン化合物及びエポキシ化合物の少なくとも一方を含む架橋剤とを含有し、
前記酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対し前記架橋剤を0.1~40質量部の割合で含有し、
前記シーラント層は、ポリプロピレン樹脂からなり、
前記ステンレス箔の両面にフェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液を塗布して化成処理層が形成されている
ことを特徴とする蓄電デバイス用外装体。」
とあったものを、
「【請求項1】
基材層、バリア層、接着層及びシーラント層がこの順に積層されてなる蓄電デバイス用外装体であって、
前記バリア層は、ステンレス箔からなるものであり、
前記接着層は、プロピレン成分を70質量%以上含有すると共に酸成分を0.1~10質量%含有する酸変性ポリプロピレン樹脂と、オキサゾリン化合物及びエポキシ化合物の少なくとも一方を含む架橋剤とを含有し、
前記酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対し前記架橋剤を0.1~40質量部の割合で含有し、
前記シーラント層は、ポリプロピレン樹脂からなり、
前記ステンレス箔の両面にフェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液を塗布して化成処理層が形成されている(ただし、前記基材層の前記バリア層側と反対側に保護層を有する場合を除く)
ことを特徴とする蓄電デバイス用外装体。」
とするものである(なお、下線部は補正された箇所を示す。)。
2.補正の適否
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「蓄電デバイス用外装体」について、「前記基材層の前記バリア層側と反対側に保護層を有する場合」との技術的事項を除くとする補正である。
しかしながら、「前記基材層の前記バリア層側と反対側に保護層を有する場合」との技術的事項を除くこと、すなわち、基材層のバリア層側と反対側には保護層を有さないものとすることについては、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に明示的に記載されておらず、当初明細書等の記載から自明な事項ともいえない。
そもそも、いわゆる「除くクレーム」とする補正が許されるのは、請求項に係る発明が引用発明と重なるために新規性等(特許法第29条第1項第3号、第29条の2又は第39条)が否定されるおそれがある場合に、その重なりのみを除く補正であり、「除くクレーム」とすることにより特許を受けることができる発明は、引用発明と技術的思想として顕著に異なり本来進歩性を有するが、たまたま引用発明と重なるような発明の場合である。しかし、本件はそのような場合には該当しない。
当初明細書等には、例えば段落【0014】に「本発明の蓄電デバイス用外装体は、厚み方向に順に、基材層、バリア層、接着層及びシーラント層をこの順に積層した構成を有する。」と記載され、「保護層」については記載がなく、段落【0103】~【0106】の実施例(実施例1)について記載をみても、基材層のバリア層側と反対側に「保護層」を形成してはいない。しかし一方で、後記する引用文献1に記載された発明のように、蓄電デバイス用外装体において、基材層のバリア層側と反対側に「保護層」を形成
してなるものも周知といえるものであって、当該保護層は必要に応じて適宜蓄電デバイス用外装体の基材層のバリア層側と反対側に付加し得るものと認められる。してみれば、当初明細書等の記載は「保護層」を有しないことを前提とした記載となっているとしても、当初明細書等に記載された発明の技術思想は保護層を有する場合にも適用可能なものであって、当初明細書等には保護層を有する場合を積極的に除外する技術思想までは記載されていないと解される。
したがって、本件補正は、「前記基材層の前記バリア層側と反対側に保護層を有する場合を除く」とする技術的事項を追加するものであって、当初明細書等に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるといえる。
よって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
令和6年10月16日の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和5年1月18日の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
基材層、バリア層、接着層及びシーラント層がこの順に積層されてなる蓄電デバイス用外装体であって、
前記バリア層は、ステンレス箔からなるものであり、
前記接着層は、プロピレン成分を70質量%以上含有すると共に酸成分を0.1~10質量%含有する酸変性ポリプロピレン樹脂と、オキサゾリン化合物及びエポキシ化合物の少なくとも一方を含む架橋剤とを含有し、
前記酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対し前記架橋剤を0.1~40質量部の割合で含有し、
前記シーラント層は、ポリプロピレン樹脂からなり、
前記ステンレス箔の両面にフェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液を塗布して化成処理層が形成されている
ことを特徴とする蓄電デバイス用外装体。」
第4 原査定について
1.原査定の概要
本願の請求項1に対する原査定(令和6年7月9日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:国際公開第2019/039504号
引用文献2:特開2012-216364号公報
2.当審の判断
(1)引用文献の記載事項
(1-1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1(国際公開第2019/039504号)には、「電池用包装材料」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「[請求項1] 少なくとも、保護層と、基材層と、ステンレス鋼箔と、熱融着性樹脂層とをこの順に有する積層体からなり、
前記保護層の最表面側からフーリエ変換赤外線分光分析法の減衰全反射で測定した場合に、赤外線の波数が2800cm-1から3000cm-1の範囲に検出される吸光度の最大値Aと、2200cm-1から2300cm-1の範囲に検出される吸光度の最大値Bとが、0.05≦B/A≦0.75の関係を充足している、電池用包装材料。
・・・・(中 略)・・・・
[請求項8] 前記ステンレス鋼箔と前記熱融着性樹脂層との間に接着層を有する、請求項1~7のいずれかに記載の電池用包装材料。」
イ.「[0020]1.電池用包装材料の積層構造
本発明の電池用包装材料は、図1及び図2に示すように、少なくとも、保護層6、基材層1、ステンレス鋼箔3、及び熱融着性樹脂層4をこの順に有する積層体からなる。本発明の電池用包装材料において、保護層6が最外層になり、熱融着性樹脂層4は最内層になる。即ち、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層4同士が熱融着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。
[0021] 本発明の電池用包装材料は、図1に示すように、基材層1とステンレス鋼箔3との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて接着剤層2が設けられていてもよい。また、図2に示すように、ステンレス鋼箔3と熱融着性樹脂層4との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて接着層5が設けられていてもよい。」
ウ.「[0074][ステンレス鋼箔3]
本発明の電池用包装材料において、ステンレス鋼箔3は、電池用包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光等が侵入するのを防止するためのバリア層として機能する層である。
・・・・(中 略)・・・・
[0078] また、ステンレス鋼箔3は、接着の安定化、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも一方の面、好ましくは少なくとも熱融着性樹脂層4側の面、さらに好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、ステンレス鋼箔3の表面に耐酸性皮膜を形成する処理である。」
エ.「[0088][熱融着性樹脂層4]
本発明の電池用包装材料において、熱融着性樹脂層4は、最内層に該当し、電池の組み立て時に熱融着性樹脂層同士が熱融着して電池素子を密封する層である。
[0089] 熱融着性樹脂層4に使用される樹脂成分については、熱融着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。すなわち、熱融着性樹脂層4を構成している樹脂は、ポリオレフィン骨格を含んでいても含んでいなくてもよく、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましい。熱融着性樹脂層4を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
[0090] 前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)などのポリプロピレン;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマーなどが挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。」
オ.「[0100][接着層5]
本発明の電池用包装材料において、接着層5は、ステンレス鋼箔3と熱融着性樹脂層4を強固に接着させるために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
[0101] 接着層5は、ステンレス鋼箔3と熱融着性樹脂層4とを接着可能である樹脂によって形成される。接着層5の形成に使用される樹脂としては、その接着機構、接着剤成分の種類等は、接着剤層2で例示した接着剤と同様のものが使用できる。また、接着層5の形成に使用される樹脂としては、前述の熱融着性樹脂層4で例示したポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂も使用できる。ステンレス鋼箔3と熱融着性樹脂層4との密着性に優れる観点から、ポリオレフィンとしては、カルボン酸変性ポリオレフィンが好ましく、カルボン酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。すなわち、接着層5を構成している樹脂は、ポリオレフィン骨格を含んでいても含んでいなくてもよく、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましい。接着層5を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
[0102] さらに、電池用包装材料の厚みを薄くしつつ、成形性に優れた電池用包装材料とする観点からは、接着層5は、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることも好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、好ましくは、熱融着性樹脂層4で例示したカルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンと同じものが例示できる。
[0103] また、硬化剤としては、酸変性ポリオレフィンを硬化させるものであれば、特に限定されない。硬化剤としては、例えば、エポキシ系硬化剤、多官能イソシアネート系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤などが挙げられる。
[0104] エポキシ系硬化剤は、少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されない。エポキシ系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどのエポキシ樹脂が挙げられる。
・・・・(中 略)・・・・
[0109] 接着層5を形成する樹脂組成物における硬化剤の含有量は、0.1~50質量%程度の範囲にあることが好ましく、0.1~30質量%程度の範囲にあることがより好ましく、0.1~10質量%程度の範囲にあることがさらに好ましい。」
カ.「[0121]<電池用包装材料の製造>
実施例1-3及び比較例1,2
延伸ナイロンフィルム(ONY)からなる基材層1の上に、両面に化成処理を施したステンレス鋼箔(SUS)からなるバリア層をドライラミネート法により積層させた。具体的には、ステンレス鋼箔の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、ステンレス鋼箔3上に接着剤層2(厚さ3μm)を形成した。次いで、ステンレス鋼箔3上の接着剤層2と基材層1を加圧加熱貼合した後、エージング処理を実施することにより、基材層1/接着剤層2/ステンレス鋼箔3の積層体を調製した。なお、ステンレス鋼箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m 2 (乾燥重量)となるように、ロールコート法によりステンレス鋼箔の両面に塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件で焼付けすることにより行った。
[0122] 次いで、前記積層体のステンレス鋼箔3側に、2液型オレフィン接着剤(酸変性ポリプロピレン樹脂とエポキシ樹脂を含む樹脂組成物)を塗布し、ステンレス鋼箔3上に接着層5を形成した。さらに、接着層5の上から、熱融着性樹脂層4としての未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)を積層した。次に、得られた積層体を加熱してエージング処理を実施した。次に、基材層1の上に、保護層6を形成する樹脂組成物(水酸基価が7mgKOH/g、重量平均分子量15000のポリエステルポリオールを20質量%と、イソシアネート基を有する硬化剤としての芳香族ジイソシアネート硬化剤であるトリレンジイソシアネート(TDI)を15質量%、メチルエチルケトンの溶媒を65質量%含む樹脂組成物)をグラビアコート法により塗布し、基材層1の表面に保護層6を形成した(厚さ2.5μm)。斯して、保護層6/基材層1/接着剤層2/ステンレス鋼箔3/接着層5/熱融着性樹脂層4が順に積層された積層フィルムからなる電池用包装材料を得た。
・・・・(中 略)・・・・
[0145] ・・・・(中 略)・・・・
[表1]
[図:0001427739000001.jpg]
[0146] 実施例13,14においては、ステンレス鋼箔として、SUS444(フェライト系ステンレス鋼箔)を用いた。
[0147] なお、表1において、ONYは延伸ナイロンフィルム、PETはポリエチレンテレフタレートフィルム、SUSはステンレス鋼箔、ALMはアルミニウム箔、URは2液型ウレタン接着剤の硬化物、OEはポリオレフィン樹脂とエポキシ樹脂の硬化物、CPPは未延伸ポリプロピレンフィルム、PPaは無水マレイン酸ポリプロピレン、PPはポリプロピレンを意味する。また、層の後ろに記載されている数値は、層の厚さ(μm)を意味しており、例えば、「ONY10」は、「厚さ10μmの延伸ナイロンフィルム」を意味している。」
キ.「[図2]
[図:0001427739000002.jpg]
」
上記「ア.」ないし「キ.」から以下のことがいえる。
・引用文献1に記載の「電池用包装材料」は、上記「ア.」、「イ.」の記載、及び「キ.」(図2)によれば、少なくとも、保護層と、基材層と、ステンレス鋼箔と、熱融着性樹脂層とをこの順に有する積層体からなり、さらに、ステンレス鋼箔と熱融着性樹脂層との間に接着層を有する、すなわち、少なくとも、保護層と、基材層と、ステンレス鋼箔と、接着層と、熱融着性樹脂層とをこの順に有する積層体からなるものである。
・上記「ウ.」の記載によれば、ステンレス鋼箔は、バリア層として機能する層であり、さらに好ましくはその両面が耐酸性被膜を形成する化成処理がされていることが好ましいものである。
・上記「エ.」の記載によれば、熱融着性樹脂層は、電池の組み立て時に熱融着性樹脂層同士が熱融着して電池素子を密封する層であり、使用される樹脂成分としては好ましくは例えばポリプロピレンが挙げられてなるものである。
・上記「オ.」の記載によれば、接着層は、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることも好ましく、硬化剤は例えばエポキシ系硬化剤(エポキシ樹脂)などが挙げられてなるものである。
・そして、上記「カ.」の記載によれば、実施例1においても、電池用包装材料は、少なくとも、保護層、基材層、両面に化成処理を施したステンレス鋼箔からなるバリア層、接着層、未延伸ポリプロピレンフィルムからなる熱融着性樹脂層をこの順に積層した積層フィルムからなるものである。ここで、ステンレス鋼箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液を塗布して焼付けすることにより行われてなるものである。また、接着層は、2液型オレフィン接着剤(酸変性ポリプロピレン樹脂とエポキシ樹脂を含む樹脂組成物)により形成されてなるものである。
以上のことから、特に実施例1に係る電池用包装材料に着目し、上記記載及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「少なくとも、保護層、基材層、ステンレス鋼箔からなるバリア層、接着層、熱融着性樹脂層をこの順に積層した積層フィルムからなる電池用包装材料であって、
前記バリア層のステンレス鋼箔の両面には、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液を塗布して焼付けすることによる化成処理が施され、耐酸性被膜が形成されてなり、
前記接着層は、2液型オレフィン接着剤(酸変性ポリプロピレン樹脂と硬化剤としてのエポキシ樹脂を含む樹脂組成物)により形成され、
前記熱融着性樹脂層は、電池の組み立て時に熱融着性樹脂層同士が熱融着して電池素子を密封する層であり、未延伸ポリプロピレンフィルムからなる、電池用包装材料。」
(1-2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2(特開2012-216364号公報)には、「電池用外装体」について、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【請求項1】
基材層、バリア層、接着層及びシーラント層がこの順に積層されてなる電池用外装体であって、前記接着層が、プロピレン成分を70質量%以上含有すると共に酸成分を0.1~10質量%含有する酸変性ポリプロピレン樹脂と、オキサゾリン化合物及びエポキシ化合物の少なくとも一方を含む架橋剤とを含有し、前記酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対し前記架橋剤を0.1~40質量部の割合で含有し、さらに、シーラント層がポリプロピレン樹脂からなることを特徴とする電池用外装体。」
イ.「【0009】
本発明の課題は、耐電解液性と共に、耐漏液性にも優れる電池用外装体及び前記外装体を用いた電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、基材層、バリア層、接着層及びシーラント層がこの順に積層されてなる電池用外装体であって、前記接着層が、プロピレン成分を70質量%以上含有すると共に酸成分を0.1~10質量%含有する酸変性ポリプロピレン樹脂と、オキサゾリン化合物及びエポキシ化合物の少なくとも一方を含む架橋剤とを含有し、前記酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対し前記架橋剤を0.1~40質量部の割合で含有し、さらに、シーラント層がポリプロピレン樹脂からなることを特徴とする電池用外装体を要旨とし、さらに、前記外装体を用いた電池を要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電池用外装体は、基材層、バリア層、接着層及びシーラント層が順次積層されてなる電池用外装体において、接着層に特定の樹脂と特定の架橋剤からなる組成物を用いている。このため、電池の外装体として用いた場合に優れた耐電解液性、耐漏液性を発揮し、結果、電池の寿命が延び、取扱上の安全性も高まり、産業上の利用価値は非常に高い。」
ウ.「【0019】
本発明の電池用外装体は、接着層として、プロピレン成分を70質量%以上含有する酸変性ポリプロピレン樹脂を含む。プロピレン成分の含有量が70質量%未満になると、シーラント層との接着性が低下し、結果、外装体の耐電解液性が低下する。なお、本発明では、後述する酸成分以外の成分が全てプロピレン成分である純然たる酸変性ポリプロピレン樹脂は勿論のこと、プロピレン成分以外の成分を含んでいてもプロピレン成分の含有量が70質量%以上であれば、その樹脂も本発明にいう酸変性ポリプロピレン樹脂に包含する。
・・・・(中 略)・・・・
【0021】
また、本発明における酸変性ポリプロピレン樹脂は、バリア層とシーラント層との接着性のバランスから、酸成分を0.1~10質量%含有する必要があり、0.2~10質量%が好ましく、0.3~10質量%がより好ましく、0.5~9質量%がさらに好ましく、1~9質量%が特に好ましい。含有量が0.1質量%未満の場合は、アルミニウム箔等のバリア層との十分な接着性が得られない場合がある。また、後述のように、架橋剤と混合するためには、酸変性ポリプロピレン樹脂を水性分散化したうえで混合する方法が好ましいが、酸成分が0.1質量%未満の場合は、水性分散化が困難になり、架橋剤との混合も困難となる。一方、10質量%を超える場合は、シーラント層との接着性が低下する場合がある。」
エ.「【0031】
接着層における架橋剤の含有量は、酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、0.1~40質量部であることが必要であり、0.5~30質量部であることが好ましく、1~25質量部であることがより好ましく、2~20質量部であることが特に好ましい。架橋剤の含有量が上記範囲を外れる場合には、耐電解液性や耐漏液性が発現しなくなるかまたは低下する傾向にある。」
上記「ア.」ないし「エ.」の記載を総合勘案すると、引用文献2には、次の技術事項が記載されている。
「基材層、バリア層、接着層及びシーラント層がこの順に積層されてなる電池用外装体において、
十分な接着性が得られ、耐電解液性を発揮させるために、接着層をプロピレン成分を70質量%以上含有すると共に酸成分を0.1~10質量%含有する酸変性ポリプロピレン樹脂と、例えばエポキシ化合物を含む架橋剤とを含有するものとすること。」さらに、「耐電解液性や耐漏液性が発現しなくなったり低下しないようにするために、酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対し架橋剤を0.1~40質量部の割合で含有するものとすること。」
(2)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア.引用発明における「基材層」、「バリア層」、「接着層」は、それぞれ本願発明でいう「基材層」、「バリア層」、「接着層」に相当し、さらに、引用発明における「熱融着性樹脂層」は、電池の組み立て時に熱融着性樹脂層同士が熱融着して電池素子を密封する層であることから、本願発明でいう「シーラント層」に相当する。したがって、引用発明における、少なくとも保護層、基材層、バリア層、接着層、熱融着性樹脂層をこの順に積層した積層フィルムからなる「電池用包装材料」は、本願発明でいう「蓄電デバイス用外装体」に相当するものである。また、引用発明における「バリア層」にあっても、ステンレス鋼箔からなるものである。
よって、本願発明と引用発明とは、「基材層、バリア層、接着層及びシーラント層がこの順に積層されてなる蓄電デバイス用外装体であって、前記バリア層は、ステンレス箔からなる」ものである点で一致する。
イ.引用発明における「接着層」は、2液型オレフィン接着剤(酸変性ポリプロピレン樹脂と硬化剤としてのエポキシ樹脂を含む樹脂組成物)により形成されてなるものであるところ、このうちの「酸変性ポリプロピレン樹脂」が、本願発明でいう接着層が含有する「酸変性ポリプロピレン樹脂」に相当し、また、「硬化剤としてのエポキシ樹脂」が、本願発明でいう接着層が含有する「オキサゾリン化合物及びエポキシ樹脂の少なくとも一方を含む架橋剤」のうちの「エポキシ化合物樹脂を含む架橋剤」に相当するといえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記接着層は、酸変性ポリプロピレン樹脂と、エポキシ化合物を含む架橋剤とを含有」するものである点で一致する。
ただし、酸変性ポリプロピレン樹脂について、本願発明では「プロピレン成分を70質量%以上含有すると共に酸成分を0.1~10質量%含有する」ものであることを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点で相違する。
またさらに、本願発明では「前記酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対し前記架橋剤を0.1~40質量部の割合で含有」することを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点でも相違する。
ウ.引用発明における「熱融着性樹脂層」は、未延伸ポリプロピレンフィルムからなるものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記シーラント層は、ポリプロピレン樹脂」からなるものである点で一致する。
エ.引用発明における「バリア層」のステンレス鋼箔の両面にも、本願発明と同じ「フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液」を塗布して焼付けすることによる化成処理が施され、耐酸性被膜が形成されてなるものであり、この「耐酸性被膜」が、本願発明でいう「化成処理層」に相当するものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記ステンレス箔の両面にフェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液を塗布して化成処理層が形成」されている点で一致する。
よって上記「ア.」ないし「エ.」によれば、本願発明と引用発明とは、
「基材層、バリア層、接着層及びシーラント層がこの順に積層されてなる蓄電デバイス用外装体であって、
前記バリア層は、ステンレス箔からなるものであり、
前記接着層は、酸変性ポリプロピレン樹脂と、エポキシ化合物を含む架橋剤とを含有し、
前記シーラント層は、ポリプロピレン樹脂からなり、
前記ステンレス箔の両面にフェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液を塗布して化成処理層が形成されている
ことを特徴とする蓄電デバイス用外装体。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
接着層が含有する酸変性ポリプロピレン樹脂について、本願発明では「プロピレン成分を70質量%以上含有すると共に酸成分を0.1~10質量%含有する」ものであることを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点。
[相違点2]
接着層について、本願発明では「前記酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対し前記架橋剤を0.1~40質量部の割合で含有」することを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点。
(3)判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
引用文献2には、基材層、バリア層、接着層及びシーラント層がこの順に積層されてなる電池用外装体において、十分な接着性が得られ、耐電解液性を発揮させるために、接着層をプロピレン成分を70質量%以上含有すると共に酸成分を0.1~10質量%含有する酸変性ポリプロピレン樹脂と、例えばエポキシ化合物を含む架橋剤とを含有するものとする技術事項が記載(上記(1-2)を参照)されており、引用発明においても、十分な接着性や耐電解液性は当然望まれることであるから、当該引用文献2に記載された技術事項を参酌し、相違点1に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得たことである。
[相違点2]について
引用文献1の段落【0109】には、接着層を形成する樹脂組成物における硬化剤の含有量は、0.1~30質量%程度の範囲にあることがより好ましいことが記載され、さらには、引用文献2にも、耐電解液性や耐漏液性が発現しなくなったり低下しないようにするために、酸変性ポリプロピレン樹脂と例えばエポキシ化合物を含む架橋剤とを含有する接着層について、酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対し架橋剤を0.1~40質量部の割合で含有するものとする技術事項が記載(上記(1-2)を参照)されているところであり、引用発明においても、酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対する硬化剤を含有量を、本願発明で特定する「0.1~40質量部」の範囲を満たす値とし、相違点2に係る構成とすることは当業者であれば適宜なし得たことである。
よって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易には発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-016527