特許拒絶査定不服審判
2024-016357
ネットワークに接続された駐車システム
- 審判番号
- 2024-016357
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-218988
- 請求日
- 2024年10月11日
- 審決日
- 2025年06月19日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】トヨタ モーター ノース アメリカ,インコーポレイティド
- 【請求人代理人】青木 篤
- 【請求人代理人】三橋 真二
- 【請求人代理人】鶴田 準一
- 【請求人代理人】渡辺 陽一
- 【請求人代理人】中村 和広
- 【請求人代理人】南山 知広
- 審判長/審判官
- 審判長 相崎 裕恒
- 審判官 伏本 正典
- 審判官 安藤 一道
- 分類
- P18 .121-Z (G08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-218988「ネットワークに接続された駐車システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 7月27日出願公開、特開2020-113261〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年12月3日(パリ条約による優先権主張2018年12月4日、米国(US))の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和5年11月28日付け :拒絶理由通知
同6年 3月 5日 :意見書及び手続補正書の提出
同 年 5月24日付け :拒絶査定(同年6月11日送達)
同 年10月11日 :手続補正書の提出、拒絶査定不服審判の請求
第2 本願発明
本願に係る発明(以下「本願発明」という。)の要旨は、特許請求の範囲(令和6年10月11日に提出された手続補正書による補正後の特許請求の範囲)の請求項1に記載した、以下のとおりのものと認める。なお、同手続補正書による補正は、請求項2~6を削除するものであって、請求項1は補正されていない。
(本願発明)
目的地の所定距離以内の駐車状況を、車両の運転手に注意喚起するためのシステムであって、
1台以上の他の車両から、前記目的地の前記所定距離以内に位置する複数の車両に対応する車両の速度データを含んでいる駐車状況データを受信するように構成されている、前記車両のトランシーバと、
前記トランシーバに接続され、
前記車両の速度データに基づいて、前記目的地の前記所定距離以内の駐車混雑レベルを決定し、
前記駐車混雑レベルが、閾値駐車混雑レベルを超えているかどうかを決定し、
前記駐車混雑レベルが前記閾値駐車混雑レベルを超えているときは、出力装置に、前記目的地の近くの駐車混雑を、前記運転手に注意喚起するように指示するように構成されている、前記車両の電子制御ユニット(ECU)を備えている、
システム。
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1.特開2010-117151号公報
引用文献2.特開2014-229250号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明等
1 引用文献1
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1は、平成22年5月27日の出願公開に係る公開特許公報であって、下記の記載がある(下線は当審付与。以下同様)。
「【0001】
本発明は、車載用ナビゲーション装置及びプログラムに関する。」
「【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(一実施形態)
図1は、本実施形態による車載用ナビゲーション装置1の全体構成を示すブロック図である。車両2に搭載される車載用ナビゲーション装置1は、制御部10を中心に構成されており、制御部10に接続される位置検出器20、地図データ記憶部30、操作スイッチ群40、通信部50、描画部60、および音声出力部70、及び情報記憶部80を備えている。なお、車載用ナビゲーション装置1が搭載されている車両2が「自車両」に相当する。
【0012】
制御部10は、通常のコンピュータとして構成されており、内部にはCPU、ROM、I/O、および、これらの構成を接続するバスラインなどが備えられている。
位置検出器20は、いずれも周知の地磁気センサ21、ジャイロスコープ22、距離センサ23、および、衛星からの電波を受信するGPS(Global Positioning System)受信機24等を有している。これらのセンサ等21~24は、各々が性質の異なる誤差を持っているため、相互に補完しながら使用される。」
「【0015】
描画部60には、ディスプレイ61が接続されている。ディスプレイ61は、液晶やCRTを用いたカラーディスプレイである。このディスプレイ61を介して情報表示が行われる。
音声出力部70にはスピーカ71が接続されており、このスピーカ71を介して音声による案内が行われる。」
「【0017】
ところで、本実施形態においては、車両2が目的地付近に接近したときに利用可能な駐車エリアを適切に案内する点に特徴を有している。そこで、図2及び図3に示すフローチャートに基づき、駐車場案内処理について説明する。なお、図2は、車載用ナビゲーション装置1における処理を示したフローチャートであり、図3は、車載器91における処理を示したフローチャートである。
【0018】
図2に示す処理は、イグニッションキーがオンになっているとき、所定の間隔で、例えば100msecごとに、行われる処理である。
最初のステップS101(以下、「ステップ」を省略し、単に記号「S」で示す。)では、目的地が設定されているか否かを判断する。目的地の設定は、例えば、操作スイッチ群40を介して、条件が入力されると、当該条件に合った目的地のリストがディスプレイ61に表示される。 このリストの中から選択操作を行うことにより、目的地が設定され、目的地への経路を探索し、探索された経路に基づいて案内が開始される。なお、「目的地」とは、上述のようにして設定された地図データ上の施設、或いは位置座標を意味するものとする。また、本実施形態では目的地の設定に伴い、目的地に関する情報として施設ID、住所、及び中心座標を制御部10が有する図示しないRAMに記憶する。
【0019】
目的地が設定されていないと判断された場合(S101:NO)、S102以降の処理は行わない。目的地が設定されていると判断された場合(S101:YES)、S102へ移行する。
S102では、車両2が目的地に接近したか否かを判断する。本実施形態においては、目的地を中心とする第一の所定範囲(本実施形態では、半径1kmの円内)に車両2が位置するとき、「自車両が目的地に接近した」と判断する。なお、目的地へ接近したことの判断は、半径1kmの円内に車両2が位置するか否かではなく、目的地までの残距離が、例えば1km以下となったか否かによって行ってもよい。車両2が目的地に接近していない場合(S102:NO)、S103以降の処理は行わない。車両2が目的地に接近した場合(S102:YES)、S103へ移行する。
【0020】
S103では、送信開始フラグがセットされているか否かを判断する。送信開始フラグがセットされている場合(S103:YES)、S106へ移行する。送信開始フラグがセットされていない場合(S103:NO)、S104へ移行する。
S104では、送信開始フラグをセットする。そして、送信開始フラグがセットされると、時間の計時を開始し、S105へ移行する。なお、この送信開始フラグは、車両駐車後、イグニッションキーが再度オンになったときにリセットされるものとする。
【0021】
S105では、通信部50から、車両2と通信可能な車両90の車載器91に対し、車両情報の送信要求を送信する。
ここで、本実施形態における車両情報の送信要求の送信方法は、上述の通り、車車間通信である。車両情報の送信要求時に車両2から送信される情報には、車両2の車両ID、目的地を中心とする所定範囲としての第二の所定範囲を特定する情報(例えば、第二の所定範囲を示す座標情報や、目的地の中心座標及び中心座標を中心とする半径500mを対象とする旨の情報、など)、第二の所定範囲に存在し、且つ駐車中である車両が対象である旨を示す情報、及び、対象車両は車両情報を車両2の車両IDを送信先として特定して送信する旨を指示する情報等が含まれる。なお、本実施形態における「第二の所定範囲」は、目的地を中心とする半径500mの円であるものとする。また、「第二の所定範囲」は「第一の所定範囲」よりも狭い範囲として設定される。
【0022】
車両2と車車間通信可能である車両90の車載器91では、図3に示すフローチャートに基づく処理が行われる。図3に示す処理は、イグニッションキーのオン/オフに関わらず、所定の間隔で、例えば100msecごとに、行われる処理である。
【0023】
最初のS201では、図2中のS105において車両2から送信される車両情報の送信要求を受信したか否かを判断する。車両情報の送信要求を受信していないと判断された場合(S201:NO)、S202以降の処理は行わない。車両情報の送信要求を受信したと判断された場合(S201:YES)、S202へ移行する。
【0024】
S202では、車両90が第二の所定範囲内に位置するか否かを判断する。第二の所定範囲は、上述した通り、車両情報の送信要求時に車両2から送信される情報によって特定され、本実施形態では、車両2において設定されている目的地の中心座標を中心とする半径500mの範囲である。第二の所定範囲内に位置しないと判断された場合(S202:NO)、S203以降の処理を行わない。第二の所定範囲内に位置すると判断された場合(S202:YES)、S203へ移行する。
S203では、車両90が駐車中か否かを判断する。本実施形態では、イグニッションキーがオフになっている場合、駐車中であると判断する。車両90が駐車中でないと判断された場合(S203:NO)、S204の処理を行わない。車両90が駐車中であると判断された場合(S203:YES)、S204へ移行する。
なお、S202及びS203での判断処理は、車両2から送信された車両情報の送信要求の情報に基づいて、車両90が車両情報の送信要求の対象車両か否かを判断するものである。ここで、車両情報の送信要求の対象車両が「他車両」に対応する。
【0025】
S204では、車両90の車両情報を送信する。本実施形態において車両情報は、車両90が駐車されている位置情報としての位置座標と目的地に関する情報であるものとする。目的地に関する情報は、当該車両が駐車される前に車載器91において目的地が設定されていた場合に送信される情報であり、当該目的地の施設ID、住所、中心座標等である。車両情報は、送信先を特定するための車両2のIDと併せて送信される。
【0026】
再び図2に戻り、送信開始フラグがセットされている場合(S103:NO)に移行するS106では、送信開始フラグがセットされてから(S104)、所定時間が経過したか否かを判断する。本実施形態においては、所定範囲に存在する車両の数が不明であるため、タイムアウト値を設けている。本実施形態における所定時間は、10秒とするが、通信状態に応じて可変になるように構成してもよい。
【0027】
送信開始フラグがセットされてから所定時間が経過したと判断された場合(S106:YES)、S109へ移行する。送信開始フラグがセットされてから所定時間が経過していないと判断された場合(S106:NO)、S107へ移行する。
S107では、通信部50は、車両90から送信されてくる車両情報を受信し、受信した情報を情報記憶部80に記憶する。そして、S108へ移行する。このS107での処理は、図3中のS204において送信される車両90の車両情報を受信するものである。
【0028】
S108では、受信した車両情報に基づいて、利用可能な駐車エリアを特定し、駐車場データを作成する。本実施形態においては、目的地を中心とする第二の所定範囲に駐車中の車両のうち、通信可能な全ての車両90から車両情報を受信し、当該車両情報を情報記憶部80に記憶させる。そして、情報記憶部80に記憶された車両情報のうち、同一の目的地が設定されていた車両から受信した車両情報を制御部10が取得し、利用可能な駐車エリアを特定し、駐車場データを作成する。
具体的には、制御部10は、車両90から受信し、情報記憶部80に記憶された車両情報に含まれる目的地に関する情報(施設ID、住所、中心座標等)と、車両2の図示しないRAMに記憶された目的地に関する情報(施設ID、住所、中心座標等)とを比較し、目的地に関する情報が一致する場合、「同一の目的地が設定されていた車両の車両情報」であるものとし、当該車両情報を取得する。
次に、取得した車両情報に含まれる車両90の位置座標と、地図データ記憶部30に記憶された施設情報の「領域を示すデータ」とを比較し、車両90が駐車されている施設を特定する。そして、1つの施設に所定数以上(本実施形態においては5台以上)の車両が駐車されている場合、当該施設を利用可能な駐車エリアとして特定する。さらに、駐車エリアとして利用可能と特定された施設に位置する車両の数、及び、当該施設の面積に基づいて混雑度合いを算出する。
そして、利用可能な駐車エリアとして特定された施設情報と混雑度合いとを合わせて、駐車場データを作成する。
【0029】
送信開始フラグがセットされてから所定時間経過後(S106:YES)に移行するS109では、S108において駐車場データが作成されたか否かを判断する。駐車場データの作成が行われた場合(S109:YES)、S110へ移行し、S108で作成された駐車場データに基づいて駐車場を案内し、本処理を終了する。
【0030】
S108にて駐車場データが作成されなかった場合(S109:NO)に移行するS111では、予め地図データ記憶部30に記憶されている施設情報に基づいて駐車場を案内し、本処理を終了する。
なお、駐車場の案内方法については、画面に表示されている地図上に駐車場の場所を重畳表示するのに加えて、音声にて目的地や現在位置に近い駐車場の名称等を案内するようにしてもよい。」
「【0038】
ここで、駐車エリアの混雑度合いの判断方法について説明する。駐車場Yには100台の車両が駐車中であり、施設Zには20台の車両が駐車中であるものとする。なお、駐車場Y及び施設Zに駐車されている車両の数は、図2中のS105で受信した車両の位置情報に基づいてカウントすることが可能である。また、駐車場Y及び施設Zの駐車可能面積は、同一であるものとする。とすれば、車両の数を駐車可能面積で除した車両密度は、施設Zの方が小さい。したがって、施設Zは、駐車場Yよりも「空いている」と判断することができる。本実施形態においては、施設Zを「現在、施設Xと対応して、かつ、利用可能な駐車エリア」として、案内するものとする。案内は、音声で案内するように構成してもよいし、ディスプレイ61に重畳表示するようにしてもよい。なお、駐車可能面積は、地図データ記憶部30に記憶されている施設の領域の面積としてもよいし、施設の領域の面積から建物面積を減じた面積としてもよい。
【0039】
以上、詳述したように、本実施形態の車載用ナビゲーション装置1によれば、地図データ記憶部30に記憶された地図データに基づいて設定された目的地に車両2が接近したとき(S102:YES)、第二の所定範囲内に駐車されている車両90から位置情報及び設定されていた目的地情報を含む車両情報を受信する(S107)。そして、受信した車両情報と地図データとに基づいて、利用可能な駐車エリアを特定して駐車場データを作成し(S108)、当該駐車場データに基づいて利用可能な駐車エリアを案内する(S110)。
【0040】
すなわち、本実施形態においては、車両2が目的地に接近したときに、目的地から第二の所定範囲に駐車されている車両90から送信される車両情報に基づいて、利用可能な駐車エリアを特定することができる。これにより、利用可能な駐車エリアを特定し、適切な駐車エリアを案内することができるので、利便性が向上する。
【0041】
また、車両2と同一の目的地が設定された車両90から送信されてくる車両情報に基づいて利用可能な駐車エリアを特定するので、当該目的地に対応する駐車エリアを特定して、適切な駐車エリアを案内することができる。特に、地図データ記憶部30に記憶されている駐車場以外のエリアに、車両2と同一の目的地が設定された車両90が所定数以上駐車されている場合、当該エリアを利用可能な駐車エリアとして特定することができる。このように構成することにより、地図データ記憶部30に駐車場として記憶されていない施設、すなわち通常は駐車場として利用されていない施設、が当該目的地に対応する臨時駐車場となっている場合においても、当該施設を、「自車両が目的地付近に接近したときに利用可能な駐車エリアである」と特定し、適切な駐車場を案内することができる。
【0042】
さらに、本実施形態では、車両90の車両情報に基づいて決定される駐車エリアの混雑度合いに基づいて駐車エリアを特定することにより、より適切な駐車エリアを案内することができる。
【0043】
なお、本実施形態の地図データ記憶部30が「地図データ記憶手段」を構成する。また、制御部10が、「目的地設定手段」、「駐車エリア特定手段」、「案内手段」を構成する。そして、図2中のS102、S103、S104、S106、及びS108が「駐車エリア特定手段」の機能としての処理に相当し、図2中のS110が「案内手段」の機能としての処理に相当する。
【0044】
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【0045】
(ア)車両情報の取得
上記実施形態においては、所定範囲に駐車されている自車両と通信可能な全ての車両から送信されるデータを受信し、同一の目的地が設定されていた車両から受信した車両情報に基づいて駐車エリアを特定したが、受信した全てのデータを用いて駐車エリアを特定するように構成してもよい。また、同一の目的地が設定された車両からのみ車両情報を受信するようにしてもよい。
【0046】
上記実施形態においては、図3中のS203においてイグニッションキーがオフになっていることにより、第二の所定範囲内の車両が駐車中であると判断し、駐車中の車両のみから車両情報を取得していた。図3中のS203における判断は、イグニッションキーのオン/オフによらず、例えば、道路以外に位置し、所定速度以下で走行中の車両は、駐車エリア内で駐車できるスペースを探して走行していることが考えられるため、このような車両からも車両情報を取得するように構成してもよい。言い換えると、「目的地を中心とする所定範囲内で、イグニッションがオフである車両や、道路以外に位置し、且つ所定速度以下で走行中の車両から当該車両の位置情報を含む車両情報を取得する」ということである。
【0047】
(イ)駐車場データの作成
上記実施形態においては、取得した車両90の位置座標と、地図データ記憶部30に記憶された施設情報の「領域を示すデータ」とを比較し、車両90が駐車されている施設を特定し、1つの施設に所定数以上の車両が位置する施設を利用可能な駐車エリアとして特定した。車両の位置座標が、地図データ記憶部30に記憶されたいずれの施設にも位置していない場合、例えば、第二の所定範囲を100m四方のエリアに区切り、1つのエリアに所定数以上の車両が駐車されている場合、当該エリアを「利用可能な駐車エリア」として特定してもよい。また例えば、6番地18、といった住所に基づいてエリアを特定してもよい。
【0048】
(ウ)混雑度合いの判断
上記実施形態においては、駐車エリアに駐車されている車両数を駐車可能面積で除した車両密度を算出して比較し、車両密度が低い駐車エリアを案内した。その他に、所定の車両密度を予め設定しておき、車両密度が所定の車両密度よりも低い場合には「空いている」とし、所定の車両密度よりも高い場合には「混雑している」してもよい。言い換えると、「他車両の車両情報及び地図データに基づいて算出された駐車エリアの車両密度が、所定値よりも大きい場合、当該駐車エリアは混雑している、と判断する」ということである。また、各々の駐車エリアの混雑度合いが、「混雑」または「空」であるという案内をしてもよい。なお、車両密度の算出は、車両数を駐車可能面積で除するのではなく、駐車可能台数で除するようにしてもよい。
【0049】
また、上記実施形態のS107においては、所定範囲に駐車されている他車両から車両情報を取得する。上記実施形態においては、車両情報には、車両の位置情報と、車両の車載器により設定されていた目的地情報と、が含まれている。「混雑度合いに関する情報」として、車両の周辺情報を取得するように構成してもよい。周辺情報としては、例えば、車両が車両周辺を撮影可能なカメラを有している場合、カメラを用いて撮影された車両周辺の映像情報である。この映像情報を取得することにより、車両が駐車されている駐車エリアの混雑度合いを判断することができる。言い換えると、「車両情報は、他車両の周辺情報を含み、当該周辺情報に基づいて、他車両が駐車されている駐車エリアの混雑度合いを判断する」ということである。なお、混雑度合いの判断を他車両で行い、自車両に送信するように構成してもよい。
【0050】
また例えば、車両が当該駐車エリアに進入してから駐車するまでのエリア内走行時間を「混雑度合いに関する情報」として取得するように構成してもよい。エリア内走行時間が長い場合、当該駐車エリアは混雑していると判断することができる。言い換えると、「車両情報は、他車両が当該駐車エリアに進入してから駐車するまでのエリア内走行時間を含み、エリア内走行時間が所定時間よりも長い場合、当該駐車エリアは混雑している、と判断する」ということである。」
【図1】
[図:0001429746000001.jpg]
(2) 上記(1)によれば、引用文献1について、以下のとおりである。
ア 段落【0011】、【0017】の記載によれば、引用文献1には、車両2に搭載され、車両2が目的地付近に接近したときに利用可能な駐車エリアを適切に案内する車載用ナビゲーション装置が記載されている。
イ 段落【0011】、【0015】、【図1】によれば、アの車載用ナビゲーション装置は、制御部を中心に構成されており、制御部に接続される位置検出器、通信部、情報表示のためのディスプレイに接続された描画部、音声案内のためのスピーカに接続された音声出力部、及び情報記憶部を備えるものであり、段落【0012】によれば、制御部は、CPU、ROMなどを備える通常のコンピュータとして構成されたものである。
ウ 段落【0017】、【0021】、【0027】によれば、アのナビゲーション装置は、車両2が目的地に接近した場合、通信部から、車両2と通信可能な車両90の車載器に対し、車両情報の送信要求を送信し、車両90から送信されてくる車両情報を受信して、情報記憶部に記憶する。
ここで、段落【0025】によれば、車両情報は、車両90が駐車されている位置情報としての位置座標と目的地に関する情報である。
また、段落【0021】によれば、車両情報の送信要求時に車両2から送信される情報には、車両2の車両ID、目的地を中心とする所定範囲としての第二の所定範囲を特定する情報、第二の所定範囲に存在し、且つ駐車中である車両が対象である旨を示す情報、及び、対象車両は車両情報を車両2の車両IDを送信先として特定して送信する旨を指示する情報等が含まれている。
もっとも、段落【0046】によれば、道路以外に位置し、所定速度以下で走行中の車両は、駐車エリア内で駐車できるスペースを探して走行していることが考えられるため、対象となる車両を「第二の所定範囲に存在し、且つ駐車中である車両」ではなく「目的地を中心とする所定範囲内で、イグニッションがオフである車両や、道路以外に位置し、且つ所定速度以下で走行中の車両」とするように構成してもよいものである。
エ 段落【0028】によれば、制御部は、目的地を中心とする第二の所定範囲に駐車中の車両のうち、通信可能な全ての車両90から車両情報を受信し、当該車両情報を情報記憶部に記憶させ、情報記憶部に記憶された車両情報のうち、同一目的地が設定されていた車両から受信した車両情報を取得し、利用可能な駐車エリアを特定する。
また、段落【0028】によれば、制御部は、さらに、駐車エリアとして利用可能と特定された施設に位置する車両の数、及び、当該施設の面積に基づいて混雑度合いを算出し、具体的には、段落【0038】、【0048】によれば、車両の数を駐車可能面積又は駐車可能台数で除した車両密度を用いて混雑度合いを判断する。
オ 段落【0028】、【0029】、【0030】によれば、制御部は、利用可能な駐車エリアとして特定された施設情報と混雑度合いとを合わせて、駐車場データを作成し、作成された駐車場データに基づいて、画面に表示されている地図上に駐車場の場所を重畳表示するのに加えて、音声にて目的地や現在位置に近い駐車場の名称等を案内するものであり、段落【0038】、【0048】によれば、車両密度が低い駐車エリアを案内したり、所定の車両密度を予め設定しておき、車両密度が所定の車両密度よりも低い場合には「空いている」とし、所定の車両密度よりも高い場合には「混雑している」とし、各々の駐車エリアの混雑度合いが、「混雑」または「空」であるという案内をしてもよいものである。
(3)引用発明
上記(1)及び(2)によると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
(引用発明)
車両2に搭載され、車両2が目的地付近に接近したときに利用可能な駐車エリアを適切に案内する、車載用ナビゲーション装置であって、
制御部を中心に構成され、制御部に接続される位置検出器、通信部、情報表示のためのディスプレイに接続された描画部、音声案内のためのスピーカに接続された音声出力部、及び情報記憶部を備えたものであり、
制御部は、CPU、ROMなどを備える通常のコンピュータとして構成されたものであり、
車両2が目的に接近した場合、通信部から、車両2と通信可能な車両90の車載器に対し、車両情報の送信要求を送信し、車両90から送信されてくる車両情報を受信して、情報記憶部に記憶し、
ここで、車両情報は、車両90が駐車されている位置情報としての位置座標と目的地に関する情報であり、また、車両情報の送信要求時に車両2から送信される情報には、車両2の車両ID、目的地を中心とする所定範囲としての第二の所定範囲を特定する情報、第二の所定範囲に存在し、且つ駐車中である車両が対象である旨を示す情報、及び、対象車両は車両情報を車両2の車両IDを送信先として特定して送信する旨を指示する情報等が含まれており、
もっとも、道路以外に位置し、所定速度以下で走行中の車両は、駐車エリア内で駐車できるスペースを探して走行していることが考えられるため、対象となる車両を「第二の所定範囲に存在し、且つ駐車中である車両」ではなく「目的地を中心とする所定範囲内で、イグニッションがオフである車両や、道路以外に位置し、且つ所定速度以下で走行中の車両」とするように構成してもよいものであり、
制御部は、目的地を中心とする第二の所定範囲に駐車中の車両のうち、通信可能な全ての車両90から車両情報を受信し、当該車両情報を情報記憶部に記憶させ、情報記憶部に記憶された車両情報のうち、同一目的地が設定されていた車両から受信した車両情報を取得し、利用可能な駐車エリアを特定し、さらに、駐車エリアとして利用可能と特定された施設に位置する車両の数、及び、当該施設の面積に基づいて混雑度合いを算出し、具体的には、車両の数を駐車可能面積又は駐車可能台数で除した車両密度を用いて混在度合いを判断し、
利用可能な駐車エリアとして特定された施設情報と混雑度合いとを合わせて、駐車場データを作成し、作成された駐車場データに基づいて、画面に表示されている地図上に駐車場の場所を重畳表示するのに加えて、音声にて目的地や現在位置に近い駐車場の名称等を案内するものであり、車両密度が低い駐車エリアを案内したり、所定の車両密度を予め設定しておき、車両密度が所定の車両密度よりも低い場合には「空いている」とし、所定の車両密度よりも高い場合には「混雑している」とし、各々の駐車エリアの混雑度合いが、「混雑」または「空」であるという案内をしてもよいものである、
車載用ナビゲーション装置。
2 引用文献2
(1)引用文献2に記載されている事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2は、平成26年12月8日の出願公開に係る公開特許公報であって、下記の記載がある。
「【0001】
この発明は、例えば、高速道路に併設されたサービスエリアやパーキングエリアなど、種々の駐車場の混雑状況(混雑度)を適切に把握してユーザーに提供できるようにする装置、方法、プログラムに関する。」
「【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の混雑状況把握装置は、
管理対象の駐車場の少なくとも位置と面積範囲とを管理する管理手段と、
少なくとも送信元の現在位置を示す位置情報と当該位置情報の取得日時とを含み、車載装置からネットワークを通じて順次に送信されて来るプローブ情報を受信する受信手段と、
受信した前記プローブ情報に基づいて、前記管理手段で管理されている駐車場の面積範囲に位置する前記プローブ情報の各送信元の移動速度と、移動速度が減速傾向か加速傾向かを特定する特定手段と、
前記移動速度が所定の閾値未満であるときと、前記移動速度が所定の閾値以上であり、かつ、移動速度が減速傾向であるときには、当該送信元は当該駐車場に滞在中の送信元としてカウントし、前記移動速度が所定の閾値以上であり、かつ、移動速度が加速傾向であるときには、当該送信元は当該駐車場に滞在中の送信元としてカウントしないようにして、前記駐車場に滞在中の送信元の数を把握する把握手段と、
把握した前記駐車場に滞在中のプローブ情報の送信元の数に応じて、前記駐車場の混雑状況を判別する判別手段と
を備えることを特徴とする。」
「【0011】
特定手段は、受信したプローブ情報に基づき、管理手段で管理されている駐車場の面積範囲に位置するプローブ情報の各送信元の移動速度と、移動速度が減速傾向か加速傾向かを特定する。移動速度は、プローブ情報に含まれていればそれを用いればよいし、含まれていない場合には、同じ送信元の前回のプローブ情報と今回のプローブ情報の位置情報と当該位置情報の取得日時とから移動距離と移動時間を求め、これから移動速度を算出できる。また、移動速度が減速傾向か、加速傾向かは、同じ送信元の前回と今回の移動速度を比較することにより特定できる。」
「【0016】
・・・以下に説明する実施の形態の混雑状況把握装置は、種々の利用者が利用する種々の駐車場の混雑状況を的確に把握し、これを駐車場の利用予定者などに対して提供できるものである。なお、この発明の混雑状況把握装置は、例えば、大規模商業施設などの駐車場、観光地の観光スポットの駐車場、高速道路に併設されたサービスエリアやパーキングエリアなど、種々の駐車場の混雑状況の把握が可能である。しかし、以下においては、説明を簡単にするため、高速道路に併設されたサービスエリアやパーキングエリアの混雑状況を把握して、これをユーザーに対して提供する場合を例にして説明する。」
「【0025】
そして、この実施の形態のサーバー1は、図2に示すように、管理しているサービスエリアの領域内に位置し、移動速度が時速30km未満のプローブ情報の送信元(車載装置の搭載車)は、当該サービスエリアに滞在中であると判別する。また、時速30km以上の移動速度で移動しているプローブ情報の送信元であっても、その移動速度が減速傾向にある場合には、当該送信元は当該サービスエリア内に滞在中であると判別する。また、時速30km以上の移動速度で移動しているプローブ情報の送信元であって、その移動速度が加速傾向にある場合には、当該送信元は当該サービスエリアに滞在中であるとは看做さないようにする。
【0026】
すなわち、図3に示すように、プローブ情報の送信元である車載装置の搭載車の移動速度が、時速0km以上時速10km未満である場合には、移動速度が減速傾向か加速傾向かにかかわらず、当該送信元は停車中か徐行中であり、当該サービスエリア内に滞在中であると判別する。また、プローブ情報の送信元の移動速度が、時速10km以上時速20km未満である場合には、移動速度が減速傾向か加速傾向かにかかわらず、当該送信元は当該サービスエリア内を徐行中であり、当該送信元は当該サービスエリア内に滞在中であると判別する。また、プローブ情報の送信元の移動速度が、時速20km以上時速30km未満である場合には、移動速度が減速傾向か加速傾向かにかかわらず、当該送信元は当該サービスエリア内を徐行中であり、当該送信元は当該サービスエリアに滞在中であると判別する。
【0027】
また、プローブ情報の送信元の移動速度が、時速30km以上である場合であって、移動速度が減速傾向であるときには、当該送信元は当該サービスエリアに入ってきたものであり、当該送信元は当該サービスエリア内に滞在中であると判別する。これに対して、プローブ情報の送信元の移動速度が、時速30km以上である場合であって、移動速度が加速傾向であるときには、当該送信元は当該サービスエリアから出ようとしているものであり、当該送信元は当該サービスエリア内に滞在中とは看做さないようにする。」
「【0029】
そして、サーバー1は、把握したプローブ情報の送信元の滞在数に基づいて、当該サービスエリアにおける混雑状況を把握する。しかし、求めた滞在数は、あくまでもプローブ情報を送信してきている車載装置の搭載車の滞在数であり、プローブ情報を送信する車載装置を搭載していない自動車やプローブ情報を送信する車載装置を搭載していても機能させていない自動車も存在する。このため、この実施の形態のサーバー1においては、以下に説明するいくつかの方法を用いて、より適切にサービスエリア等の混雑状況を把握する。
【0030】
1つの方法は、当該サービスエリアの駐車可能台数に対する、把握したプローブ情報の送信元の滞在数の割合に応じて、当該サービスエリアの混雑状況を把握する。例えば、駐車可能台数が300台であるとする。この場合に、プローブ情報の送信元の滞在数が例えば10台未満であれば混雑していないと判別し、10台以上30台未満であれば混雑傾向にあると判別し、30台以上であれば混雑していると判別する。というように、当該サービスエリアの混雑状況を把握する。この例の場合の、滞在数の10台、30台という基準値は、例えば、過去の混雑状況の実測値に基づいて定めるなどのことが可能である。」
「【0048】
図5に示すように、プローブ生成部312で生成されるプローブ情報は、送信元ID、位置情報(緯度,経度)、移動速度、取得日時、その他の情報からなっている。送信元IDは、例えば、当該車載外装置の製造番号など、車載装置3のユーザー個人は特定できないが、プローブ情報の送信元の識別は可能な情報である。位置情報は、GPS部307を通じて取得された自機の現在位置を示す情報である。移動速度は、上述した速度等取得部306を通じて取得された当該車載装置3を搭載している自動車の速度センサの検出値である。取得日時は、位置情報と移動速度を取得した時点を示す情報であり、車載装置3の時間制御部305から取得する情報である。」
(2)引用文献2に記載されている技術事項
上記(1)によれば、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。
(引用文献2記載事項)
車載装置を搭載している自動車の位置情報及び当該自動車の速度センサの検出値である移動速度の情報等を含むプローブ情報を受信し、
受信した前記プローブ情報に基づいて、前記管理手段で管理されているサービスエリア等の駐車場の面積範囲に位置する前記プローブ情報の各送信元の移動速度と、移動速度が減速傾向か加速傾向かを特定し、
前記移動速度が所定の閾値未満であるときと、前記移動速度が所定の閾値以上であり、かつ、移動速度が減速傾向であるときには、当該送信元は当該駐車場に滞在中の送信元としてカウントし、前記移動速度が所定の閾値以上であり、かつ、移動速度が加速傾向であるときには、当該送信元は当該駐車場に滞在中の送信元としてカウントしないようにして、前記駐車場に滞在中の送信元の数を把握し、
該駐車場の駐車可能台数に対する、把握したプローブ情報の送信元の滞在数の割合に応じて、例えば、駐車可能台数が300台である場合に、プローブ情報の送信元の滞在数が10台未満であれば混雑していないと判別し、10台以上30台未満であれば混雑傾向にあると判別し、30台以上であれば混雑していると判別するというようにして、当該駐車場の混雑状況を把握する、技術
第5 当審の判断
1 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)「目的地の所定距離以内の駐車状況を、車両の運転手に注意喚起するためのシステム」について
ア 引用発明の「車両2」は、本願発明の「車両」に相当し、引用発明の「車載用ナビゲーション装置」は、車載装置自体が車両に搭載されているシステムであり、本願発明と同様に、「システム」であるといえる。
イ 引用発明の「目的地」は、本願発明の「目的地」に相当する。そして、引用発明は、目的地を中心とする第二の所定範囲に駐車中の車両90から受信した車両情報により特定される「利用可能な駐車エリア」について、「車両密度が低い駐車エリアを案内」したり「各々の駐車エリアの混雑度合いが、「混雑」または「空」であるという案内」をしてもよいものであるところ、引用発明の「車両密度が低い駐車エリア」及び「各々の駐車エリアの混雑度合い」は、本願発明の「目的地の所定距離以内の駐車状況」に相当する。
なお、本願発明における「目的地の所定距離以内の駐車状況」は、特許請求の範囲の文言上、目的地の所定距離以内の駐車場(駐車可能面積や駐車可能な車両数を属性とする駐車場)の駐車混雑を含む概念であり、本願明細書の段落【0002】【0011】の記載からみても、目的地の所定距離以内に所在する「駐車ロット」(そこに入ってから利用可能駐車場所が残っていないことを発見することがあり得るような「駐車ロット」)に係る駐車混雑が、本願発明の「目的地の所定距離以内の駐車状況」の一態様でないということはできない。
ウ 引用発明における、イの目的地の所定距離以内の駐車状況(利用可能な駐車エリアや各々の駐車エリアの混雑度合い)の「案内」は、目的地に向かう車両の運転手に対して駐車状況について注意喚起するためのものといえるから、本願発明と引用発明は、以下の相違点を除いて、いずれも「目的地の所定距離以内の駐車状況を、車両の運転手に注意喚起するためのシステム」である点で共通する。
(2)「1台以上の他の車両から、前記目的地の前記所定距離以内に位置する複数の車両に対応する車両の速度データを含んでいる駐車状況データを受信するように構成されている、前記車両のトランシーバ」について
ア 引用発明のシステム(車載用ナビゲーション装置)は、「制御部を中心に構成され」るものであるとともにこの「制御部」に接続される「通信部」を備えるところ、引用発明の「通信部」は、本願発明の「トランシーバ」に相当する。
イ 引用発明の「目的地を中心とする所定の範囲としての第二の所定範囲」は、本願発明の「前記目的地の前記所定距離以内」に相当し、引用発明の「目的地を中心とする第二の所定範囲に駐車中の車両のうち、通信可能な全ての車両90」は、本願発明の「前記目的地の前記所定距離以内に位置する複数の車両に対応する車両」である「1台以上の他の車両」(以下「他の車両」という。)に相当する。
そして、引用発明のトランシーバ(通信部)は、車両情報の送信要求を送信し、1台以上の他の車両から送信されてくる車両情報を受信するところ、この車両情報は、他の車両が駐車されている位置情報を含むデータであって、車両の速度データを含んでいる駐車状況データではないものの車両の駐車に関するデータであるといえるから、本願発明と引用発明とは、1台以上の他の車両から、前記目的地の前記所定距離以内に位置する複数の車両に対応する車両の駐車に関するデータを受信するように構成されている点で共通するといえる。
(3)「前記トランシーバに接続され、前記車両の速度データに基づいて、前記目的地の前記所定距離以内の駐車混雑レベルを決定し、前記駐車混雑レベルが、閾値駐車混雑レベルを超えているかどうかを決定し、前記駐車混雑レベルが前記閾値駐車混雑レベルを超えているときは、出力装置に、前記目的地の近くの駐車混雑を、前記運転手に注意喚起するように指示するように構成されている、前記車両の電子制御ユニット(ECU)」について
ア 引用発明のシステム(車載用ナビゲーション装置)の「制御部」は、「通信部」が接続されている制御部であり、本願発明の「前記トランシーバに接続され」ている「車両の電子制御ユニット(ECU)」に対応するものといえる。
イ 引用発明の制御部は、他の車両から受信した車両の駐車に関するデータ(他の車両が駐車されている位置情報を含む車両情報)を取得し、利用可能な駐車エリアを特定し、さらに、駐車エリアとして利用可能と特定された施設に位置する車両の数と当該施設の面積に基づく車両密度である混雑度合いを算出しており、引用発明における「利用可能な駐車エリア」についての車両密度である「混雑度合い」は、目的地の所定距離以内の駐車混雑レベルを示す値といえるから、本願発明の「目的地」の「所定距離以内の駐車混雑レベル」に相当する。
そして、引用発明は、このような目的地の所定距離以内の駐車混雑レベルを算出して決定するものであり、その算出は、速度データでないものの他の車両から受信した車両の駐車に関するデータが含むデータに基づくものといえるから、本願発明と引用発明とは、制御部が、受信した車両の駐車に関するデータが含むデータに基づいて目的地の所定距離以内の駐車混雑レベルを決定する点で、共通するといえる。
ウ 引用発明の制御部は、算出された車両密度である混在度合いが予め設定された所定の車両密度よりも低い場合には「空いている」とし、所定の車両密度よりも高い場合には「混雑している」とし、各々の駐車エリアの混雑度合いが、「混雑」または「空」であるという案内をしてもよいものであるところ、引用発明における、「予め設定された所定の車両密度」は、本願発明の「閾値駐車混雑レベル」に相当するものであり、引用発明の制御部は、目的地の所定距離以内の駐車混雑レベルが閾値駐車混雑レベルを超えているかどうかを決定するものといえる。
エ 引用発明の「情報表示のためのディスプレイに接続された描画部」及び「音声案内のためのスピーカに接続された音声出力部」は、本願発明の「出力装置」に相当する。
そして、引用発明の制御部は、車両密度が低い駐車エリアを案内したり、目的地の所定距離以内の駐車混雑レベルが閾値駐車混雑レベルを超えているかどうかを決定して、各々の駐車エリアの混雑度合いが「混雑」または「空」であるという案内を行うところ、これらの案内は、目的地の近くの駐車混雑を運転手に注意喚起するためのものといえ、そのために出力装置に指示するものであるから、引用発明の制御部は、本願発明と同様に、「前記駐車混雑レベルが前記閾値駐車混雑レベルを超えているときは、出力装置に、前記目的地の近くの駐車混雑を、前記運転手に注意喚起するように指示するように構成されている」ものといえる。
(4)以上を踏まえれば、本願発明と引用発明は、次の点で一致する。
(一致点)
目的地の所定距離以内の駐車状況を、車両の運転手に注意喚起するためのシステムであって、
1台以上の他の車両から、前記目的地の前記所定距離以内に位置する複数の車両に対応する車両の駐車状況駐車に関するデータを受信するように構成されている、前記車両のトランシーバと、
前記トランシーバに接続され、
受信した車両の駐車に関するデータが含むデータに基づいて、前記目的地の前記所定距離以内の駐車混雑レベルを決定し、
前記駐車混雑レベルが、閾値駐車混雑レベルを超えているかどうかを決定し、
前記駐車混雑レベルが前記閾値駐車混雑レベルを超えているときは、出力装置に、前記目的地の近くの駐車混雑を、前記運転手に注意喚起するように指示するように構成されている、制御部を備えている、
システム。
(5)そして、本願発明と引用発明は、次の点で、相違する。
(相違点)
(相違点1)
本願発明では、他の車両から、駐車混雑レベルの決定のための車両の駐車に関するデータとして、当該他の車両の「速度データを含んでいる駐車状況データ」を受信するのに対し、引用発明では、他の車両が駐車されている位置情報を含む車両情報を受信し、当該他の車両の速度データを含んでいる駐車状況データを受信しない点。
(相違点2)
駐車混雑レベルの決定にあたって、本願発明は、「前記車両の速度データ」、つまり他の車両から受信した駐車状況データに含まれる当該他の車両の速度データ、に基づいて決定するのに対し、引用発明は、他の車両から受信した駐車状況データに含まれる当該他の車両の速度データに基づいて決定しない点。
(相違点3)
本願発明の制御部は「車両の電子制御ユニット(ECU)」であるのに対して、引用発明の制御部は、車載用ナビゲーション装置の制御部である点。
2 相違点の判断
(1)相違点1及び2について
相違点1と相違点2は、関連する相違点であり、両者を併せて検討することを要する。
ア 引用文献2記載技術について
引用文献2には、上記第4の2(2)に示したとおりの引用文献2記載技術が記載されており、この引用文献2記載技術は、駐車場の混雑状況を把握するために、「車載装置を搭載している自動車の位置情報及び当該自動車の速度センサの検出値である移動速度の情報等を含むプローブ情報」を用いるものである。
ここで、上記1(1)イに示したとおり、本願発明における「目的地の所定距離以内の駐車状況」は、目的地の所定距離以内の駐車場(駐車可能面積や駐車可能な車両数を属性とする駐車場)の駐車混雑を含む概念であるから、引用文献2記載技術における「駐車場の混雑状況」は、本願発明の「駐車状況」に含まれるものといえる。そして、引用文献2記載技術における「プローブ情報」は、駐車場の混雑状況を把握するために用いられるデータであるとともにプローブ情報を送信元である他の車両の速度データを含むデータであることから、本願発明の「車両の速度データを含んでいる駐車状況データ」に相当し、引用文献2記載技術における、「該駐車場の駐車可能台数に対する、把握したプローブ情報の送信元の滞在数の割合」は、本願発明における、車両の速度に関するデータに基づいて決定される「駐車混雑レベル」に相当するといえる。
イ 動機付けについて
引用発明は、特定された駐車エリアに位置する車両数を駐車可能台数で除した車両密度を用いて混在度合いを判断するところ、引用文献2記載技術における「駐車場の混雑状況」を示す「該駐車場の駐車可能台数に対する、把握したプローブ情報の送信元の滞在数の割合」は、引用発明における車両密度に対応することが明らかであり、このことから、引用文献2記載技術は、引用発明における車両密度の算出のための駐車エリアに位置する車両数を把握するために適用可能な技術として、駐車エリアに位置する他の車両から受信した駐車状況データが含む当該他の車両の速度データを用いることを示すものといえる。
そして、引用発明は、道路以外に位置し所定速度以下で走行中の車両が駐車エリア内で駐車できるスペースを探して走行していることが考えられるため、対象となる車両を「目的地を中心とする所定範囲内で、イグニッションがオフである車両や、道路以外に位置し、且つ所定速度以下で走行中の車両」とするように構成してもよいものであるし、更には、引用文献1の段落【0050】には「エリア内走行時間」を用いて駐車エリアが混雑していると判断する例も記載されており、これらは、引用発明において、駐車エリアに位置する車両数を把握するために、駐車エリアに位置する他の車両から受信した駐車状況データが含む当該他の車両の速度データを用いる技術である引用文献2記載技術を適用することを示唆するものである。
ウ 以上を踏まえれば、上記イに示したとおり、引用発明において引用文献2記載技術を適用することの示唆があることから、引用発明の「混雑度合い」を算出するために引用文献2に記載の技術を適用して相違点1及び2に係る構成とすること(つまり、引用発明の駐車混雑レベルの決定のための駐車に関するデータとして他の車両の速度データを含んでいる駐車状況データを当該他の車両から受信するものとし、受信した駐車状況データが含む当該他の車両の速度データに基づいて駐車混雑レベルを決定するように構成すること)は、当業者が容易に想到し得たことである。
(2)相違点3について
車載用ナビゲーション装置の機能を車両に作り付けのものとすることは、しばしば行われ、そのような機能の作り付けにあたって、車載用ナビゲーション装置の制御部の機能を車両の電子制御ユニット(ECU)の機能とすること(ECUに含まれる複数の制御部の一部にナビゲーション装置に係る制御を担わせること)は、当業者が適宜設計すべきことであり、相違点3は、設計的事項である。
(3) 効果について
上記相違点1~3を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2記載技術の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
3 審判請求人の主張について
(1)審判請求人は、本願発明は、「たとえ利用可能駐車場所があったとしても、目的地点の周りのエリアの混雑が、駐車を困難にし、また、時間のかかるものとしてしまう」ような場合においても、「目的地点の周りの混雑を回避するための、推奨される代りの駐車場所を提供することを可能とする効果を奏しうる」ものであり、そのことは、例えば本願明細書の段落【0019】の記載などから理解されうる旨を主張している。
しかしながら、本願発明は、特許請求の範囲の文言において、「目的地の近くの駐車混雑を、前記運転手に注意喚起する」ものであるとされており、目的地周辺の推奨される代わりの駐車場所を提供することは、特許請求の文言において示されていないから、審判請求人の主張は、特許請求の範囲の文言に基づくものでない。また、引用発明は、車両密度が低い駐車エリアを案内するものであり、このことからも、推奨される代わりの駐車場所を提供することを可能とする効果が格別なものであるとはいえない。
(2)審判請求人は、引用文献2における車両の移動速度は、駐車場に滞在する車両の数を決定するために使用されるものであり、本願発明のような、車両の速度データに基づいて目的地から所定距離内の駐車場の混雑度を決定するために使用されるものではない旨、及び、引用文献2における混雑状態は、車両の速度によって決定されるものではなく、駐車場の広さ及び駐車場内の車両の滞在数に基づいて決定されるものであり、本願発明とは異なる旨を主張している。
上記1(1)イに示したとおり、本願発明における「目的地の所定距離以内の駐車状況」は、目的地の所定距離以内の駐車場(駐車可能面積や駐車可能な車両数を属性とする駐車場)の駐車混雑を含む概念であり、上記2(1)に示したとおり、引用文献2記載技術は、車両の速度データに基づいて駐車場に滞在する車両の数を決定して駐車場の混雑状況を把握するものであり、これを引用発明における目的地に近い駐車場の混雑状況を把握するために用いることにより、本願発明と同様に、「目的地の所定距離以内の駐車状況」について運転者に注意喚起するシステムとすることは、容易想到である。
第6 むすび
そうすると、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-016357