特許拒絶査定不服審判
2024-016216
モータ制御装置およびモータ制御方法
- 審判番号
- 2024-016216
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-086908
- 請求日
- 2024年10月09日
- 審決日
- 2025年07月22日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社ミツバ
- 【請求人代理人】弁理士法人武和国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 吉田 美彦
- 審判官 脇岡 剛
- 審判官 山崎 慎一
- 分類
- P18 .121-WY (H02P)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023- 86908「モータ制御装置およびモータ制御方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 6年12月 6日出願公開、特開2024-170003、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和5年5月26日の出願であって、令和6年3月7日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月30日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年7月26日付けで拒絶査定(謄本送達日同年8月6日。以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して同年10月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和6年7月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1-5
・引用文献等 1-2
<引用文献等一覧>
1.特開2019-134550号公報
2.特開2012-90360号公報(周知技術を示す文献)
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正(以下、「本件補正」という。)は、以下に示すとおり、特許法17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
本件補正によって請求項1及び5に「前記第1の駆動信号とは異なる」という事項を追加する補正事項(以下、「補正事項1」という。)は、本件補正前の「第2の駆動信号」を限定的に減縮するものである。
また、本件補正によって、請求項1及び5に「前記所定の相電圧値の位相が前記d軸電流の位相に対応する」との事項を追加する補正事項(以下、「補正事項2」という。)は、本件補正前の「所定の相電圧」を限定的に減縮するものである。
そして、補正事項1は、当初明細書の段落【0030】~【0042】並びに当初図面の図2~図3及び図3A、3Bに、「3相電圧制御部30」の動作に関する事項として記載されているから、補正事項1は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
また、補正事項2は、当初明細書の段落【0041】に記載されているから、補正事項2は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
したがって、本件補正は、特許請求の範囲を限定的に減縮することを目的とするものであって、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
そして、以下、第4~第6に示すように、補正後の請求項1~5に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願請求項1~5に係る発明(以下、「本願発明1」~「本願発明5」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~5に記載された、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
モータを駆動する駆動回路と、
前記駆動回路の電源供給ラインに接続されたリップル吸収コンデンサと、
d軸電流およびq軸電流に対するフィードバック制御に基づいて前記駆動回路に電気角に応じた第1の駆動信号を与えるフィードバック制御部と、
所定の相電圧に対応する、前記第1の駆動信号とは異なる第2の駆動信号を前記駆動回路に与える相電圧制御部と、
前記第1の駆動信号または、前記第2の駆動信号を択一的に選択して前記駆動回路に与える選択部と、
を備え、
前記リップル吸収コンデンサの電荷の放電時に、前記選択部は、前記第2の駆動信号を選択し、前記相電圧制御部は、前記電荷の放電中に検出される電気角に応じたd軸電流を前記モータに供給する前記所定の相電圧に対応する前記第2の駆動信号を出力し、
前記所定の相電圧値の位相が前記d軸電流の位相に対応する、モータ制御装置。
【請求項2】
前記選択部により前記第2の駆動信号が選択されているときに、q軸電流の電流値を検知する検知部を備え、
前記相電圧制御部は、前記検知部により検知されるq軸電流の電流値に基づいて前記第2の駆動信号の位相をフィードバック制御する、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記相電圧制御部は、信号生成マップに基づいて、前記第2の駆動信号を生成し、
前記信号生成マップは、q軸電流の電流値を抑制するように、前記電気角と前記第2の駆動信号の値の関係を規定する、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記駆動回路の動作タイミングには、デッドタイムが含まれている、請求項2または請求項3に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
d軸電流およびq軸電流に対するフィードバック制御に基づいて、モータを駆動する駆動回路に電気角に応じた第1の駆動信号を与えるフィードバック制御ステップと、
電気角に応じた所定の相電圧に対応する第2の駆動信号を前記駆動回路に与える相電圧制御ステップと、
前記第1の駆動信号または、前記第1の駆動信号とは異なる前記第2の駆動信号を択一的に選択して前記駆動回路に与える選択ステップと、
を備え、
前記駆動回路の電源供給ラインに接続されたリップル吸収コンデンサの電荷の放電時に、前記選択ステップでは、前記第2の駆動信号を選択し、前記相電圧制御ステップでは、前記電荷の放電中に検出される電気角に応じたd軸電流を前記モータに供給する前記所定の相電圧に対応する前記第2の駆動信号を出力し、
前記所定の相電圧値の位相が前記d軸電流の位相に対応する、モータ制御方法。」
第5 引用例
1 引用例1
(1)引用例1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、特開2019-134550号公報(令和元年8月8日公開。以下、これを「引用例1」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)
ア 「【0019】
図1に示すように、モータ制御装置Aは、電源装置1、駆動回路2、フェイルセーフリレー回路3、電源スイッチ4、リップル吸収用のコンデンサ5、電流センサ6、回転角センサ7、プリドライバ8、及び制御部9を備える。ただし、フェイルセーフリレー回路3は、本実施形態において必須な構成ではなく省略可能である。
【0020】
電源装置1は、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。また、電源装置1は、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることもできる。本実施形態の電源装置1は、車両内に設けられたバッテリである。なお、電源装置1の出力電圧は、バッテリ電圧VBとする。
【0021】
駆動回路2は、複数のスイッチング素子SWUH~SWWL(SWUH,SWUL,SWVH,SWVL,SWWH,SWWL)を有し、このスイッチング素子のオンとオフとをPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御することで電源装置1からの直流電流を交流電流(相電流)に変換して電動モータMに出力する。これにより、電動モータMが駆動する。なお、本実施形態では、6つのスイッチング素子SWUH~SWWLがn型チャネルのFET(Field Effective Transistor)である場合について説明するが、これに限定されず、例えば、IGBT(Insulated gate bipolar transistor)、及びBJT(bipolar junction transistor)であってもよい。
…(中略)…
【0032】
コンデンサ5は、一端が電源スイッチ4と駆動回路2(例えば、スイッチング素子SWUHのドレイン端子)との間に接続され、他端がGNDに接続されている。このコンデンサ5は、電源装置1から電源スイッチ4を介して駆動回路2に供給される電流のリップルを吸収する平滑コンデンサである。
…(中略)…
【0039】
駆動制御部12は、イグニッションスイッチがオン操作され、故障判定部10により電源スイッチ4がオン故障していないと判定された場合には、電動モータMを駆動するモードである通常モードに移行する。通常モードにおいては、駆動制御部12は、外部から出力されるトルク指令値に基づいて、第1の駆動信号をプリドライバ8に出力することで、UVW相の各相の相電流を制御する。これにより、電動モータMを駆動させる。なお、このトルク指令値とは、運転者によってステアリングハンドルが操作された場合のステアリングハンドルのトルク(操作トルク)に基づいた値であって、トルクセンサによって検出される。
【0040】
一方、駆動制御部12は、イグニッションスイッチがオフ操作されたことを示すIGSW_OFF信号を取得した場合には、コンデンサ5に蓄えられた電荷を電動モータMに供給することで放電させる放電制御モードに移行する。
【0041】
以下に、本発明の一実施形態に係る駆動制御部12の構成について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る駆動制御部12のブロック図である。
【0042】
図2に示すように、駆動制御部12は、状態遷移処理部13、目標dq軸電流設定部14、三相-二軸変換部15、電流制御部16、及びゲート駆動信号生成部17を備える。
…(中略)…
【0044】
目標dq軸電流設定部14は、トルクセンサからトルク指令値を取得する。また、目標dq軸電流設定部14は、回転角センサ7から電気角θを取得する。そして、目標dq軸電流設定部14は、取得したトルク指令値と電気角θとに応じて、d軸電流の目標値である目標d軸電流値Idrefと、q軸電流の目標値である目標q軸電流値Iqrefと、を設定する。ただし、目標dq軸電流設定部14は、状態遷移処理部13から放電制御モード信号を取得した場合には、トルク指令値によらず、目標d軸電流値と目標q軸電流値とを算出する。具体的には、目標dq軸電流設定部14は、状態遷移処理部13から放電制御モード信号を取得した場合には、目標d軸電流値を所定値に設定するとともに、目標q軸電流値をゼロに設定する。目標dq軸電流設定部14は、設定した目標d軸電流値Idref及び目標q軸電流値Iqrefを電流制御部16に出力する。
【0045】
三相-二軸変換部15は、電流センサ6から取得したU相電流値Iu、V相電流値Iv及びW相電流値Iwを、回転角センサ7から取得した電気角θを用いて、d軸電流値Id及びq軸電流値Iqに変換する。なお、U相電流値Iu、V相電流値Iv及びW相電流値Iwからd軸電流値Id及びq軸電流値Iqへの変換には、以下に示す式(1)及び式(2)が用いられる。
…(中略)…
【0048】
電流制御部16は、目標dq軸電流設定部14から取得した目標d軸電流値Idrefと、三相-二軸変換部15から取得したd軸電流値Idとの偏差Δdに対してPI演算を実行することで、偏差Δdをゼロに近づけるためのd軸の電圧であるd軸電圧指令値Vdを算出する。また、電流制御部16は、目標dq軸電流設定部14から取得した目標q軸電流値Iqrefと、三相-二軸変換部15から取得したq軸電流値Iqとの偏差Δqに対してPI演算を実行することで、偏差Δqをゼロに近づけるためのq軸の電圧であるq軸電圧指令値Vqを算出する。
…(中略)…
【0052】
一方、放電制御モードにおいては、目標d軸電流値が所定値に設定され、且つ目標q軸電流値がゼロに設定されている。そのため、プリドライバ8は、放電制御モードにおいては、電流制御部16からの駆動信号(第2の駆動信号)に基づいて、各相の相電流を制御することで電動モータMに対してd軸のみに電流が流れるように制御する。ここで、放電制御モードにおいて、電源スイッチ4はオフ状態に制御される。したがって、放電制御モードにおいては、コンデンサ5に蓄えられた電荷が駆動回路2に供給され、d軸電流として電動モータMに供給される。これにより、電動モータMを駆動させずに、且つコンデンサ5に蓄えられた電荷を放電させることができる。」
イ 「図1
[図:0001425593000001.jpg]
」
ウ 「図2
[図:0001425593000002.jpg]
」
(2)引用発明
上記(1)の記載(特に下線部。)より、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「電源装置1、駆動回路2、リップル吸収用のコンデンサ5、回転角センサ7を備えるモータ制御装置Aであって(【0019】、図1)、
駆動回路2は、電源装置1からの直流電流を交流電流(相電流)に変換して電動モータMに出力することにより、電動モータMを駆動し(【0021】)、
リップルを吸収する平滑コンデンサであるコンデンサ5は、一端が電源スイッチ4と駆動回路2との間に接続され、他端がGNDに接続され(【0032】)、
駆動制御部12は、第1の駆動信号をプリドライバ8に出力することで、UVW相の各相の相電流を制御することにより、電動モータMを駆動させる(【0039】)一方、コンデンサ5に蓄えられた電荷を電動モータMに供給することで放電させる放電制御モードに移行し(【0040】)、
駆動制御部12は、目標dq軸電流設定部14、三相-二軸変換部15、電流制御部16、及びゲート駆動信号生成部17を備え(【0042】、図2)、
目標dq軸電流設定部14は、取得したトルク指令値と電気角θとに応じて、d軸電流の目標値である目標d軸電流値Idrefと、q軸電流の目標値である目標q軸電流値Iqrefと、を設定し、状態遷移処理部13から放電制御モード信号を取得した場合には、トルク指令値によらず、目標d軸電流値と目標q軸電流値とを算出し、目標dq軸電流設定部14は、設定した目標d軸電流値Idref及び目標q軸電流値Iqrefを電流制御部16に出力し(【0044】)、
三相-二軸変換部15は、電流センサ6から取得したU相電流値Iu、V相電流値Iv及びW相電流値Iwを、回転角センサ7から取得した電気角θを用いて、d軸電流値Id及びq軸電流値Iqに変換し(【0045】)、
電流制御部16は、目標dq軸電流設定部14から取得した目標d軸電流値Idrefと、三相-二軸変換部15から取得したd軸電流値Idとの偏差Δdに対してPI演算を実行することで、偏差Δdをゼロに近づけるためのd軸の電圧であるd軸電圧指令値Vdを算出し、電流制御部16は、目標dq軸電流設定部14から取得した目標q軸電流値Iqrefと、三相-二軸変換部15から取得したq軸電流値Iqとの偏差Δqに対してPI演算を実行することで、偏差Δqをゼロに近づけるためのq軸の電圧であるq軸電圧指令値Vqを算出して(【0048】)、ゲート駆動信号生成部17に出力し(図2)、
放電制御モードにおいては、電流制御部16からの駆動信号(第2の駆動信号)に基づいて、各相の相電流を制御することで電動モータMに対してd軸のみに電流が流れるように制御して、コンデンサ5に蓄えられた電荷が駆動回路2に供給され、d軸電流として電動モータMに供給されることにより、電動モータMを駆動させずに、且つコンデンサ5に蓄えられた電荷を放電させることができる(【0052】)
モータ制御装置A。」
2 引用例2
原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、特開2012-90360号公報(平成24年5月10日公開。以下、これを「引用例2」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。
(1)「【0032】
図2に、モータジェネレータ10およびパワーコントロールユニット20と、制御装置30の行う処理のうち特にモータジェネレータ10の制御量の制御に関する処理とを示す。
…(中略)…
【0037】
3相変換部38は、回転角度センサ28によって検出される都度の回転角度θに基づき、指令電圧vdr、vqrを、3相の固定座標系の指令電圧であるU相の指令電圧Vur,V相の指令電圧Vvr、およびW相の指令電圧Vwrに変換する。PWM変調部40は、インバータIVの3相の出力電圧を、指令電圧Vur,Vvr,Vwrを模擬した電圧とするためのPWM信号を生成する。ここでは、例えば、指令電圧Vur,Vvr,Vwrを電圧センサ26によって検出されるインバータIVの入力電圧によって規格化したものと三角波形状のキャリアとの大小比較結果をPWM信号とすればよい。これによって生成されるPWM信号が、インバータIVのスイッチング素子S*#(*=u,v,w;#=p,n)を操作する操作信号g*#である。
「モータジェネレータ10を用いた平滑コンデンサ22の放電制御」
放電開始角保持部42は、放電開始に際してのモータジェネレータ10の回転角度(開始角θ0)を記憶保持する。放電用電圧設定部44は、モータジェネレータ10に流れる電流を無効電流が流れると想定される位相を有するものに開ループ制御するための操作量としての指令電圧を設定する。これは、振幅Vmおよび位相δを与えることで行うことができる。ここで位相δは、d軸上の指令電流idrを正として且つ、q軸上の指令電流iqrをゼロとするためのものとすればよい。すなわち、IPMSMに生成されるトルクTは、d軸インダクタンスLd、q軸インダクタンスLq、d軸の電流id、q軸の電流iq、電機子鎖交磁束定数φおよび極対数Pを用いると、以下の式(c1)となる。
…(中略)…
【0039】
平滑コンデンサ22を放電させる場合には、セレクタSL1,SL2によって放電用電圧設定部44によって設定される指令電圧vdr,vqrが選択されることで、この指令電圧vdr,vqrが3相変換部38に入力される。そして、この際、3相変換部38では、開始角θ0に基づき指令電圧vdr,vqrを3相の指令電圧vur、vvr、vwrに変換することで、指令電圧のベクトルの方向を、開始角θ0が正しいとした場合に、無効電流が流れると想定される方向に設定する。」
(2)「図2
[図:0001425593000003.jpg]
」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 「モータを駆動する駆動回路」について
引用発明の「駆動回路2」は、「電動モータMを駆動」するものであるから、本願発明1の「モータを駆動する駆動回路」に相当する。
イ 「前記駆動回路の電源供給ラインに接続されたリップル吸収コンデンサ」について
引用発明の「リップル吸収用のコンデンサ5」は、「一端が電源スイッチ4と駆動回路2との間に接続され、他端がGNDに接続され」るものであるところ、本願発明1の「前記駆動回路の電源供給ラインに接続されたリップル吸収コンデンサ」に相当する。
ウ 「d軸電流およびq軸電流に対するフィードバック制御に基づいて前記駆動回路に電気角に応じた第1の駆動信号を与えるフィードバック制御部」について
引用発明の「駆動制御部12」は、「目標dq軸電流設定部14、三相-二軸変換部15、電流制御部16…を備え」るところ、当該「目標dq軸電流設定部14」は、「取得したトルク指令値と電気角θとに応じて、d軸電流の目標値である目標d軸電流値Idrefと、q軸電流の目標値である目標q軸電流値Iqrefと、を設定」するとともに、「設定した目標d軸電流値Idref及び目標q軸電流値Iqrefを電流制御部16に出力」し、「電流制御部16」は、「目標dq軸電流設定部14から取得した目標d軸電流値Idrefと、三相-二軸変換部15から取得したd軸電流値Idとの偏差Δdに対してPI演算を実行することで、偏差Δdをゼロに近づけるためのd軸の電圧であるd軸電圧指令値Vdを算出」するとともに「目標dq軸電流設定部14から取得した目標q軸電流値Iqrefと、三相-二軸変換部15から取得したq軸電流値Iqとの偏差Δqに対してPI演算を実行することで、偏差Δqをゼロに近づけるためのq軸の電圧であるq軸電圧指令値Vqを算出」することから、当該「駆動制御部12」の、「目標dq軸電流設定部14、三相-二軸変換部15、電流制御部16」による、「目標d軸電流値Idref及び目標q軸電流値Iqref」と「三相-二軸変換部15から取得」した、「d軸電流値Id」及び「q軸電流値Iq」によって、上記「d軸電圧指令値Vd」及び「q軸電圧指令値Vq」を算出することは、“d軸電流およびq軸電流に対するフィードバック制御に基づいて第1の駆動信号を与えるフィードバック制御”を行っているといえる。
そして、当該第1の駆動信号は、「電気角θ」に応じたものであるとともに、「d軸電圧指令値Vd」及び「q軸電圧指令値Vq」は、「ゲート駆動信号生成部17に出力」されるところ、引用発明の「目標dq軸電流設定部14、三相-二軸変換部15、電流制御部16…を備え」る「駆動制御部12」は、本願発明1の「d軸電流およびq軸電流に対するフィードバック制御に基づいて前記駆動回路に電気角に応じた第1の駆動信号を与えるフィードバック制御部」に相当する。
エ 「所定の相電圧に対応する、前記第1の駆動信号とは異なる第2の駆動信号を前記駆動回路に与える相電圧制御部」及び「前記第1の駆動信号または、前記第2の駆動信号を択一的に選択して前記駆動回路に与える選択部」について
引用発明は、本願発明1の「所定の相電圧に対応する、前記第1の駆動信号とは異なる第2の駆動信号を前記駆動回路に与える相電圧制御部」及び「前記第1の駆動信号または、前記第2の駆動信号を択一的に選択して前記駆動回路に与える選択部」に相当する構成を有しない(相違点1)。
オ 「前記リップル吸収コンデンサの電荷の放電時に、前記選択部は、前記第2の駆動信号を選択し、前記相電圧制御部は、前記電荷の放電中に検出される電気角に応じたd軸電流を前記モータに供給する前記所定の相電圧に対応する前記第2の駆動信号を出力し」及び「前記所定の相電圧値の位相が前記d軸電流の位相に対応する」について
引用発明は、本願発明1の「前記リップル吸収コンデンサの電荷の放電時に、前記選択部は、前記第2の駆動信号を選択し、前記相電圧制御部は、前記電荷の放電中に検出される電気角に応じたd軸電流を前記モータに供給する前記所定の相電圧に対応する前記第2の駆動信号を出力し」との構成及び「前記所定の相電圧値の位相が前記d軸電流の位相に対応する」との構成を有しない。(相違点2)
カ 一致点・相違点
以上、ア~オの対比から、引用発明と本願発明1とは、次の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
モータを駆動する駆動回路と、
前記駆動回路の電源供給ラインに接続されたリップル吸収コンデンサと、
d軸電流およびq軸電流に対するフィードバック制御に基づいて前記駆動回路に電気角に応じた第1の駆動信号を与えるフィードバック制御部と、
を備える、モータ制御装置。
〈相違点1〉
本願発明1が、「所定の相電圧に対応する、前記第1の駆動信号とは異なる第2の駆動信号を前記駆動回路に与える相電圧制御部」を備えるとともに、「前記第1の駆動信号または、前記第2の駆動信号を択一的に選択して前記駆動回路に与える選択部」を備えるのに対し、引用発明は、そのような構成を有しない点。
〈相違点2〉
本願発明1が、「前記リップル吸収コンデンサの電荷の放電時に、前記選択部は、前記第2の駆動信号を選択し、前記相電圧制御部は、前記電荷の放電中に検出される電気角に応じたd軸電流を前記モータに供給する前記所定の相電圧に対応する前記第2の駆動信号を出力」するとともに「前記所定の相電圧値の位相が前記d軸電流の位相に対応す」るものであるのに対し、引用発明は、そのような構成を有しない点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み、先に相違点1について検討する。
本願発明は、引用例1(本願明細書段落【0003】に記載された従来例である、「特許文献1」。)において、例えば、q軸電流およびd軸電流をフィードバック制御することができない期間には、リップル吸収用のコンデンサの電荷を放電することができない(同【0004】)との課題に対し、q軸電流およびd軸電流に対するフィードバック制御を行わずに、リップル吸収用のコンデンサの電荷を放電することができるモータ制御装置等を提供することを目的としたもの(【0005】)であるところ、q軸電流およびd軸電流に対するフィードバック制御を行わずにリップル吸収用のコンデンサの電荷を放電するとは、本願従来例である引用例1に対して、角度検出部52から得られた電気角θを3相電圧制御部30に与え、当該3相電圧制御部30からの信号を第2の駆動信号として選択部40に与える(同【0037】~【0039】)回路を設けた上、リップル吸収コンデンサCの電荷をブラシレスモータMを介して放電する(同【0041】)こと(以下、「課題解決手段」という。)をいうものと解される。
そして、当該課題解決手段を特定する上記相違点1に係る構成、すなわち、「所定の相電圧に対応する、前記第1の駆動信号とは異なる第2の駆動信号を前記駆動回路に与える相電圧制御部」を備えるとともに、「前記第1の駆動信号または、前記第2の駆動信号を択一的に選択して前記駆動回路に与える選択部」を備える点については、引用例1に記載された引用発明のほか、上記引用例2にも記載も示唆もされておらず、またそのような手段を設けることが本願出願時における技術常識ないし周知技術であるということもできないから、その余の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとまではいえない。
2 本願発明5について
本願発明5は、概ね本願発明1とカテゴリー表現のみ異なる発明であるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとまではいえない。
3 本願発明2~4について
本願発明2~4は、本願発明1の構成の全てを含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとまではいえない。
第7 原査定について
上記第6で示したとおり、相違点1に係る、「所定の相電圧に対応する、前記第1の駆動信号とは異なる第2の駆動信号を前記駆動回路に与える相電圧制御部」を備えるとともに、「前記第1の駆動信号または、前記第2の駆動信号を択一的に選択して前記駆動回路に与える選択部」を備える点は、拒絶査定において引用された引用文献1及び2(上記第5の引用例1及び2)には記載も示唆もされておらず、また当該構成は本願出願時における技術常識ないし周知技術であるということもできないから、本願発明1~5は、引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとまではいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-016216