審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2024-013493

取水方法、供給装置および取水システム

審判番号
2024-013493
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-120401
請求日
2024年08月21日
審決日
2026年02月26日
公報発行日
2026年05月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社高田地研
  • 【請求人代理人】古部 次郎
  • 【請求人代理人】尾形 文雄
審判長/審判官
  • 審判長 居島 一仁
  • 審判官 小島 寛史
  • 審判官 立澤 正樹
分類
P18 .121-Z (E03B) / P18 .575-Z (E03B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-120401「取水方法、供給装置および取水システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年1月26日出願公開、特開2022- 17701〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和2年7月14日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和5年12月 8日付け:拒絶理由通知書 令和6年 2月13日 :意見書、手続補正書の提出 同年 5月13日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月21日 :原査定の謄本の送達) 同年 8月21日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和6年8月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年8月21日にされた手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 補正の内容 令和6年8月21日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正を含むものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和6年2月13日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。 (1) 本件補正前 「【請求項1】 地下水を汲み上げる揚水井戸の周囲の地中であり当該揚水井戸に流入する地下水が流れる地中に掘られた孔における地下水に、少なくとも酸素を含む流体を供給し、地下水に含まれる金属成分を酸化させる工程と、 酸化した金属成分を、前記孔と前記揚水井戸との間の地盤に吸着または捕集させる工程と、 前記揚水井戸から地下水を汲み上げる工程と、 前記孔における地下水を排出し、前記地盤に吸着または捕集されていた金属成分を当該孔から排出する工程と、 を備える取水方法。」 (2) 本件補正後 「【請求項1】 地下水を汲み上げる揚水井戸の周囲の地中であり当該揚水井戸に流入する地下水が流れる地中に掘られた孔における地下水に、当該孔に沿って伸びる注入井戸に設けられる流路部を介して少なくとも酸素を含む流体を当該注入井戸に供給し、地下水に含まれる金属成分を酸化させる工程と、 酸化した金属成分を、前記孔と前記揚水井戸との間の地盤に吸着または捕集させる工程と、 前記揚水井戸から地下水を汲み上げる工程と、 前記注入井戸に前記流路部を介して圧縮空気を注入して前記孔における地下水を当該注入井戸を介して排出し、前記地盤に吸着または捕集されていた金属成分を当該孔から排出する工程と、 を備える取水方法。」 2 補正の目的 (1) 本件補正のうち請求項1についてする補正は、次のア及びイの限定をするものである。 ア 本件補正前の請求項1に記載された「地下水を汲み上げる揚水井戸の周囲の地中であり当該揚水井戸に流入する地下水が流れる地中に掘られた孔における地下水に、少なくとも酸素を含む流体を供給」することについて、「当該孔に沿って伸びる注入井戸に設けられる流路部を介して」供給するものであること、及び、「当該注入井戸に」供給するものであることを限定すること。 イ 本件補正前の請求項1に記載された「前記孔における地下水を排出」することについて、「前記注入井戸に前記流路部を介して圧縮空気を注入して」排出するものであること、及び、「当該注入井戸を介して」排出するものであることを限定すること。 (2) そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 (3) したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 3 独立特許要件の判断 本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。 (1) 本件補正発明 ア 本件補正発明の認定と分説 本件補正発明は、前記1(2)に示した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成Aから構成Dまでに分説する。また、参考図として、本願の【図1】に部材名を記入したものを掲載する。 <本件補正発明の分説> A 地下水を汲み上げる揚水井戸の周囲の地中であり当該揚水井戸に流入する地下水が流れる地中に掘られた孔における地下水に、当該孔に沿って伸びる注入井戸に設けられる流路部を介して少なくとも酸素を含む流体を当該注入井戸に供給し、地下水に含まれる金属成分を酸化させる工程と、 B 酸化した金属成分を、前記孔と前記揚水井戸との間の地盤に吸着または捕集させる工程と、 C 前記揚水井戸から地下水を汲み上げる工程と、 D 前記注入井戸に前記流路部を介して圧縮空気を注入して前記孔における地下水を当該注入井戸を介して排出し、前記地盤に吸着または捕集されていた金属成分を当該孔から排出する工程と、 X を備える取水方法。 <参考図> 【図1】 [図:0001434741000001.jpg] イ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。なお、下線は、当合議体において付したものであり、以下同様である。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、取水方法、供給装置および取水システムに関する。 【背景技術】 【0002】 地下水には、鉄分やマンガンなどの金属成分が多量に含まれる場合があり、その地下水の利用が制限される場合があった。 例えば特許文献1には、エアレーション槽内に処理すべき地下水を供給し、エアレーション槽の下部から空気または酸素を吹込むことにより地下水をエアレーションし、地下水中に含有されている第1鉄イオンを酸化させる方法において、エアレーション槽内の地下水中に担体を添加し、エアレーション槽の下部から吹き込まれた空気または酸素により、地下水と共に担体を流動化させることによって、地下水中に生成したオキシ水酸化鉄を担体の表面上に付着させ、その表面上にオキシ水酸化鉄が担持された触媒を形成し、このようにして形成された触媒によって、地下水中に存在する第1鉄イオンを酸化させることが開示されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特開平9-1157号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 ところで、地下から汲み上げた地下水に含まれる鉄分やマンガンなどの金属成分を取り除くためには、濾材や薬剤などが用いられていた。しかしながら、このような濾材や薬剤は、定期的に交換したり補充したりする必要があり、効率的ではなかった。 本発明は、地下水を利用するにあたって、地下水に含まれる金属成分を効率的に除去することを目的とする。 …(中略)… 【発明の効果】 【0006】 本発明によれば、地下水を利用するにあたって、地下水に含まれる金属成分を効率的に除去することができる。」 「【0011】 ここで、地下水には、鉄分やマンガンなどの金属成分(以下、鉄分を代表例として説明する)が多量に含まれる場合がある。そして、本実施形態の取水システム1では、揚水井戸10によって地下水を汲み上げた際に、鉄分の量が低減された地下水が得られるようになっている。 【0012】 地下水は、地中において、酸素不足による還元状態の環境下に置かれている。そのため、地中の地下水における鉄分は、溶解性の水酸化鉄で存在し、粒子が比較的小さいコロイドの状態となっている。そこで、本実施形態に取水システム1では、注入装置20によって、揚水井戸10の周囲の地下水をエアレーションすることで、地下水に含まれる鉄分を酸化させる。鉄分は、酸化されることで不溶性の水酸化鉄となり、粒子が比較的大きい団粒や凝集された状態になる。そして、本実施形態に取水システム1では、不溶性の水酸化鉄を、注入装置20と揚水井戸10との間の地盤に吸着させたり、地盤に捕集させたりする。その結果、本実施形態の取水システム1では、揚水井戸10から、鉄分の量が低減された地下水が得られる。」 「【0042】 逆洗処理において、制御装置30は、注入井戸40における排泥バルブ44を開ける。(図1および図2参照)さらに、制御装置30は、コンプレッサ22を駆動して、注入井戸40に対して圧縮空気を供給する。注入井戸40では、注入ケーシング41における下側にて気体が噴射されることで、注入ケーシング41内の地下水や鉄分を含む異物が上側へと持ち上げられ、排泥バルブ44から排出される。また、注入ケーシング41内の地下水が地上へと排出されることで、揚水井戸10に対して注入井戸40側の地下水位は、低下する。これによって、揚水井戸10から注入井戸40に向かう地下水の流れが発生する。これによって、揚水井戸10と注入井戸40との間の地中に捕集されていた鉄分を含む異物は、注入ケーシング41側に向けて進行する。この鉄分などを含む異物は、注入ケーシング41内に進入した場合、上述のとおり、下側にて噴出される気体によって地上へと排出される。 このように、第1実施形態の取水システム1では、逆洗処理を行うことで、揚水井戸10における取水能力および注入井戸40による鉄分の除去能力が回復し、維持される。」 「【0045】 以上のように、本実施形態の取水システム1は、揚水井戸10のユーザ用バルブ15からは、含まれる鉄分の量が低減された地下水を得ることができる。本実施形態の取水システム1によれば、従来では汲み上げた後に鉄分を除去する処理を行う必要があった地下水を地中で処理し、揚水井戸10のユーザ用バルブ15から出る地下水は、飲料水などの生活用水にそのまま用いることができる。」 (2) 引用文献の記載事項及び引用発明等の認定 ア 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定 (ア) 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特公昭49-17461号公報(以下「引用文献1」という。)には、次のa~cの記載がある(以下、見出しの符号に従い「摘記事項a」などという。)。なお、当合議体により、後記(イ)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。 a 1頁第1欄24行~2頁第3欄27行 「発明の詳細な説明 本発明は地下水用井戸、特に深井戸から汲み出す水に酸素又は酸素遊離物質を導入し、鉄分を沈殿した酸化鉄として濾別することにより上記水を精製する方法に関するものである。 ここに「地下水用井戸」と称するは、地下水の流れ込む水深が大きくて大量の水を得ることができるような深井戸を意味するものとする。かかる井戸から1分間当り数千リットルの水を得ることができ、或る場合には1分間当り数万リットルもの水が得られる。この水を井戸からポンプによって汲み出し、消費地点に導く。かかる井戸を深井戸(ボアホール井戸)又は管井戸と称する。 時には、精製装置を全く必要としない純度の地下水があり、この地下水はそのままで使用することができる。最も好ましくない不純物、すなわち普通除去せねばならぬ不純物は鉄イオンである。この鉄イオンを除去するためには、酸素又はある酸素遊離物質を水に添加して鉄を酸化鉄として沈殿させる精製装置を設ける必要がある。酸素を、たとえば純粋酸素の形態で水に添加するか、もしくは水を段構造体に通して気曝することにより添加することができる。 鉄イオンを沈殿させるに必要な酸素の量は多くない。酸化鉄の沈殿後水を、たとえば1個又は数個の砂層に通して濾過する。このような精製装置の設備費は高い。更に操業費もかかる装置の使用で増大する。その理由は、沈殿した酸化鉄を除去するために砂層を時々再生せねばならないからである。 雨水が浸透し地下水に導入される場所においては地下水に鉄イオンは生じないことを確めた。雨水は酸素を伴い、次に鉄を沈殿させる。土壌層間に明白な酸化鉄含有褐色層をしばしば観察することができる。かかる層の一方で地下水は鉄を含有し、他方では鉄を含有しない。本発明はかかる観察結果を利用することに基づく。本発明方法は、井戸のまわりの地下水含有土壌層に酸素又は酸素遊離物質を含有する給水を供給することを特徴とする。すなわち本発明においては水を精製するために、天然の装置をそのままで使用する。給水は地下水を酸化し、沈殿した酸化鉄が土壌に残留する。 上述した如く、鉄を沈殿させるのに必要な酸素の分量は少ない。このため給水の分量も多くない。給水の供給を、井戸から所定位置まで汲み出す水における鉄分の増加をまねくことなく数ケ月間にわたって停止することができる。 本発明の好適例においては、井戸のまわりの地下水含有土壌層に管を挿入し、この管を通して給水を供給する。地下水がある流れ方向を有する場合には、上記管を地下水が井戸に流れ込む主流方向の側に設けることができる。本発明方法による地下水の精製は特別の精製装置を具えた従来既知の方法と比較して著しく安価である。 給水を井戸から汲み出す水から分岐管により取り、これに酸素又は酸素遊離物質を添加する場合が有利である。 本発明の一例においては、給水を圧力によって深井戸に導入し、これから周囲の地下水含有土壌層に拡散させる。換言すれば、水の流れ方向が井戸から出るスタンド管において逆になる、これと同時に酸素又はある酸素遊離物質が水に供給される。この方法で酸素を井戸のまわりの地下水含有土壌層に供給した後、酸素を再び導入する前に鉄分のない水を井戸から数カ月間にわたって汲み出すことができる。 また本発明はかかる方法を実施するための装置にも関するものである。本発明装置は、井戸のまわりの地下水含有土壌層に延在する管並びに給水をかかる管を経て供給するためのポンプを具えることを特徴とする。 本発明装置の好適例においては、ポンプの吸込側の分岐管によって井戸の水汲み出し管と連結し、ポンプの吸込側又は送出し側に酸素又はある酸素遊離物質を給水に添加するための装置を設ける。酸素又はある酸素遊離物質を添加するための装置は、たとえば酸素フラスコ又は空気圧縮機からの管で構成することができる。」 b 2頁第3欄25行~第4欄9行、第1図、第2図 「次に本発明を図面につき説明する。 水が井戸1のまわりの地下水含有土壌層から流れ込む。この水を井戸1からこれから離れたスタンド管2を経て消費地点に導く。水を汲み出すためのポンプを井戸自体に又は管2に沿ったある他の地点に設けることができる。 管2から分岐管3をポンプ4に通し、給水を管5を経て井戸のまわりの地下水含有土壌層中に延在する垂直管6~11に供給する。管6~11の井戸1からの距離を井戸のまわりの土壌の型により数メートル又は数十メートルとする。分岐管3に管12を連結し、これを通して酸素又は酸素遊離物質を給水に供給する。地下水を精製するためにある化学薬品を必要とする場合は、これらも管12によって導入することができる。かかる化学薬品を例示すれば、地下水を中和する水酸化ナトリウム及びソーダ水がある。腐食により再び鉄がたとえば管系から生ずるのを防止するために水を中和する必要がある。かかる中和剤も遊離の炭酸を分解し、これにより二酸化炭素と酸素が得られこの酸素が再び鉄を沈殿させる。 地下水の流れの主方向が、たとえば第2図の上方から下方の場合には、管10及び11、更に管6及び9も省くことができる。」 「(第1図) [図:0001434741000002.jpg] (第2図) [図:0001434741000003.jpg] 」 c 2頁第4欄26行~41行 「特許請求の範囲 1 地下水用井戸、特に深井戸から汲み出す水に酸素又は酸素遊離物質を導入し、鉄分を沈殿した酸化鉄として濾別することにより上記水を精製するに当り、井戸のまわりの地下水含有土壌層に酸素又は酸素遊離物質を含有する給水を供給することを特徴とする地下水用井戸から汲み出す水を精製する方法。 2 井戸のまわりの地下水含有土壌層に延在する管と、これらの管を経て給水を供給するためのポンプとを具え、このポンプの吸込口を分岐管によって井戸のスタンド管に連結し、上記ポンプの吸込側又は送出し側に酸素又は酸素遊離物質を給水に添加するための装置を設けたことを特徴とする地下水用井戸から汲み出す水を精製するための装置。」 (イ) 引用発明の認定 前記アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。 <引用発明> 「地下水用井戸から汲み出す水を精製する方法であって、(摘記事項c) 水が井戸1のまわりの地下水含有土壌層から流れ込み、この水を井戸1からポンプによって汲み出し、これから離れたスタンド管2を経て消費地点に導き、(摘記事項b、摘記事項a) 管2から分岐管3をポンプ4に通し、給水を管5を経て井戸のまわりの地下水含有土壌層中に延在する垂直管6~11に供給し、(摘記事項b) 分岐管3に管12を連結し、これを通して酸素又は酸素遊離物質を給水に供給し、(摘記事項b) 給水は地下水を酸化し、沈殿した酸化鉄が土壌に残留する、(摘記事項a) 方法。」 イ 引用文献2、3の記載事項及び周知技術1の認定 (ア) 引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開昭53-115551号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。 (3頁左上欄10行~右上欄11行) 「本発明は飲料水用および潅概用井戸を排水させたり、拡張したりそして修理したりするための装置、すなわち井戸自体を再生したり、水の流れを良くしたり、水に含まれる砂やゴミを除去したりするための井戸の清掃作業、フィルタの拡張および詰まりの排除作業を行うシステムと、従来の装置についての改良および新しくて有益な変更と、そして新しい装置および新しい適用方法の採用とにかゝわる。 従来一般に実施されて来た井戸を空にする方法は、水を吸上げるパイプの内部に同軸にして径の小さい特殊な給気パイプを挿入し、給気パイプの上部入口から井戸の底に圧搾空気を送り込み、その吸上げパイプと給気パイプとの間の空間を利用して、井戸の底の水を押し上げ、頂部に位置する弁を介して排出させるものであった。(後略)」 (イ) 引用文献3に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開昭60-40438号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。 a 1頁右下欄6行~2頁左上欄2行 「本発明は、揚水量が減ったり揚水が濁ったり、砂が混じたったりするようになった老化した井戸を新しい井戸の状態に回復せしめる井戸の回春工法に関するもので、添付図面を参照してその構成を詳述すると次の通りである。 井戸(1)の中に高圧空気を噴出する噴射管(2)を井戸(1)のストレーナ一部分(1)′まで降下挿入せしめ、この噴射管(2)から噴出する高圧空気を旋回流にする旋回流形成装置(a)を噴射管(2)に設け、この高圧空気の旋回流により地下水(3)を旋回上昇せしめて井戸(1)の揚水量を回復せしめることを特徴とするものである。」 b 2頁左上欄3行~右下欄13行、第1図、第2図 「第1図は旋回流形成装置(a)として、噴射管(2)に旋回羽根(4)を付設し、この旋回羽根(4)に噴射管(2)の噴射口(5)から噴出される高圧空気を噴射させる構造のものを示している。 「(第1図) [図:0001434741000004.jpg] 」 「また、第2図は旋回流形成装置(a)の別例を示すもので、噴射管(2)の回りに螺旋状に且つ斜め上向きに突出した状態に複数本のノズル管(6)を付設している。」 「(第2図) [図:0001434741000005.jpg] 」 「図中符号(7)は噴射管(2)に高圧空気を導入する高圧空気送管、(8)は高圧空気を発化する例えは高圧大型コンプレッサー車、(9)は接続ホース、(10)は井戸(1)の取水口である。 一般に地下水を採取する井戸は、長期にわたる使用によって地下水層に埋設されている井戸管の最下端部に位置するストレーナ一部分にスラッジが付着して目詰りが生じたり、また地下水層において地下水の通路となっている土壌粒子の間隙にもスラッジが詰まったりして揚水量が低下する。このように揚水量が非常に減少した井戸からの取水量を増加させる回春工法としては色々な方法かある。 …(中略)… 本発明は、スワッピング法と同様に全く老化した井戸を大掃除する井戸の回春工法にして、上述のように井戸(1)の中に噴射管(2)を降下挿入し、この噴射管(2)から噴射した高圧空気を旋回流形成装置(a)により旋回流にして井戸(1)の底部に高圧力で放出するから、この高速高圧空気のジェット旋回流は井戸(1)の中の地下水(3)をも-緒に高速高圧で旋回せしめることになり、この地下水(3)のジェット旋回流は上昇旋回流として井戸(1)上部より排出されることになる。 この上昇旋回流は単に井戸(1)の内面に付着しているスラッジをえぐり収って井戸(1)内の掃除を行うだけでなく、ストレーナ一部分(1)′に於いてはストレーナ一部分(1)′の目づまりを解消し、更にストレーナ一部分(1)′の外周にまで噴出して地下水層(11)における地下水(3)の通路である土壌粒子の間隙群に詰ったスラッジをも流し出し、これを再び上部のストレーナ一部分(1)′を介して井戸(1)内に導入せしめ、不良泥土としてどんどん排出するからストレーナ一部分(1)′の内側も外側も良好に大掃除され、ストレーナ一部分(1)′の外側に付為した水垢まできれいに清掃されることになる。」 (ウ) 周知技術1の認定 前記(ア)及び(イ)に示した引用文献2及び引用文献3の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる。(以下「周知技術1」という。) <周知技術1> 「井戸やその周囲の汚れや詰まりを解消するために、井戸内に給気パイプを設けて高圧空気を注入させることにより、井戸の内壁と給気パイプの間の空間を利用して、地下水とともに汚れや詰まりの原因物質を井戸外へ排出すること。」 ウ 引用文献4に記載された事項及び技術常識1の認定 (ア) 引用文献4に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2011-256671号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。 「【0065】 次に、本発明をリチャージウェル工法(復水工法)に適用した応用例について説明する。 【0066】 図14(a)~(c)に示すように、本実施形態のリチャージウェル工法では、ディープウェル31(揚水井戸)とリチャージウェル32(復水井戸)とを用いる。そして、ディープウェル31で汲み上げた水を、リチャージウェル32によって地盤Gへ戻している(復水工程)。また、ディープウェル31及びリチャージウェル32のそれぞれに、前述した揚水ユニット3を設置している。」 「【図14】 [図:0001434741000006.jpg] 」 「【0067】 図14(a)に示すように、ディープウェル31で汲み上げた水を、長期間にわたってリチャージウェル32を介して地盤Gへ戻し続けると、リチャージウェル32側で目詰まりが生じてしまい、水が地盤Gに注入され難くなってしまう。これは、地盤G中の細かな土砂が注入された水と共に移動し、水の流路を塞いだためと考えられる。その結果、リチャージウェル32の水位が上昇し、ディープウェル31で汲み上げた水を注入し難くなってしまう。 【0068】 そこで、図14(b)に示すように、リチャージウェル32に設置した揚水ユニット3により、リチャージウェル32内の水を汲み上げて、地盤Gの水及び土砂をリチャージウェル32側に移動させる回復工程を行う。この回復工程では、ディープウェル31において揚水ポンプ11の運転を停止し、リチャージウェル32の揚水ポンプ11を運転し、井戸管3内の水位が十分に下がったら減圧ポンプ15を運転する。これによって、第1実施形態で説明したように、広い範囲の地下水Wがリチャージウェル32側に移動する。 【0069】 地下水Wの移動によって目詰まりの原因となっていた土砂も移動する。例えば、リチャージウェル32内に流入した土砂は水と共に外部に排出される。また、リチャージウェル32から離れた位置の土砂は、リチャージウェル32側に多少移動する。このように、土砂が排出されたり移動したりすることで、土砂が原因の目詰まりが解消される。目詰まりが解消されたならば、図14(c)に示すように、復水工程を再開する。 【0070】 リチャージウェル32の回復工程では、目詰まりした位置とのヘッド差を大きくしてやることが重要である。このため自然水位の井戸では、井戸内水位の低下に限界があり、バキュームウェルで負圧をかけて、仮想水位を下げてやると効果がでる。 【0071】 また、この実施形態でも、先の実施形態と同様に、地下水Wの揚水ユニット3内への流入効率を高めることができる。その結果、回復工程において、長期間に亘って広い範囲の地下水Wや土砂を復水井戸側へ移動させることができ、この移動で形成された流路を通じてその後の復水工程における水の地盤Gへの注入を円滑に行うことができる。」 (イ) 技術常識1の認定 前記(ア)に示した引用文献4の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識1」という。) <技術常識1> 「揚水井戸で汲み上げた水を復水井戸を介して地盤へ戻し続けると、地盤中の細かな土砂により復水井戸側の流路に目詰まり生じてしまうという課題があること。」 (3) 本件補正発明と引用発明の対比 ア 対比分析 本件補正発明と引用発明を対比する。 (ア) 構成Xの観点(取水方法) 引用発明は、「地下水用井戸から汲み出す水を精製する方法」の発明であって、「水を井戸1からポンプによって汲み出」すことを含むから、「取水方法」の発明である本件補正発明と「地下水用井戸から汲み出す水を精製する方法」の発明である引用発明は、「取水方法」の発明である点において一致する。 (イ) 構成Aの観点(酸化させる工程) a 構成Aは、「地下水を汲み上げる揚水井戸の周囲の地中であり当該揚水井戸に流入する地下水が流れる地中に掘られた孔における地下水に、当該孔に沿って伸びる注入井戸に設けられる流路部を介して少なくとも酸素を含む流体を当該注入井戸に供給し、地下水に含まれる金属成分を酸化させる工程」を備えることである。 b 引用発明における「水を」「ポンプによって汲み出」す「井戸1」は、本件補正発明の「地下水を汲み上げる揚水井戸」に相当する。 また、引用発明は、「水が井戸1のまわりの地下水含有土壌層から流れ込み、この水を井戸1からポンプによって汲み出」すものであるから、引用発明の「井戸のまわりの地下水含有土壌層中」は、本件補正発明の「揚水井戸の周囲の地中であり当該揚水井戸に流入する地下水が流れる地中」に相当する。 そして、引用発明は、「井戸のまわりの地下水含有土壌層中に延在する垂直管6~11」を含むものであるから、「地下水含有土壌層中」における「垂直管6~11」の位置には、孔が存在するということができ、このような孔は、本件補正発明の「当該揚水井戸に流入する地下水が流れる地中に掘られた孔」に相当する。 また、引用発明の「垂直管6~11」は、本件補正発明の「当該孔に沿って伸びる注入井戸に設けられる流路部」と、「当該孔に沿って伸びる流路部」である点において共通する。 さらに、引用発明は、「給水は地下水を酸化し、沈殿した酸化鉄が土壌に残留する」ものであるから、「地下水を酸化」することは、地下水中の鉄分を酸化することを含むことが明らかであるところ、当該地下水中の鉄分は、本件補正発明の「地下水に含まれる金属成分」に相当する。 引用発明は、「管2から分岐管3をポンプ4に通し、給水を管5を経て井戸のまわりの地下水含有土壌層中に延在する垂直管6~11に供給し」、「分岐管3に管12を連結し、これを通して酸素又は酸素遊離物質を給水に供給し」、「給水は地下水を酸化し、沈殿した酸化鉄」が生じるものであるところ、このことは、本件補正発明の「地下水に、当該孔に沿って伸びる」「流路部を介して少なくとも酸素を含む流体を」「供給し、地下水に含まれる金属成分を酸化させる」ことに相当する。 c 以上の検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明の構成Aの観点における一致点及び相違点は、次の(a)及び(b)に示すとおりである。 (a) 構成Aの観点における一致点 「地下水を汲み上げる揚水井戸の周囲の地中であり当該揚水井戸に流入する地下水が流れる地中に掘られた孔における地下水に、当該孔に沿って伸びる流路部を介して少なくとも酸素を含む流体を供給し、地下水に含まれる金属成分を酸化させる工程」を備える点。 (b) 構成Aの観点における相違点 本件補正発明においては、 「流路部」が「当該孔に沿って伸びる注入井戸に設けられる」ものであり、 「地下水を汲み上げる揚水井戸の周囲の地中であり当該揚水井戸に流入する地下水が流れる地中に掘られた孔における地下水に、当該孔に沿って伸びる流路部を介して少なくとも酸素を含む流体を供給」することについて、「当該注入井戸に」供給するものであるのに対して、 引用発明においては、「垂直管6~11」(流路部)が「注入井戸」といえるものに設けられているのか明らかでない点。 (ウ) 構成Bの観点(吸着または捕集させる工程) a 構成Bは、「酸化した金属成分を、前記孔と前記揚水井戸との間の地盤に吸着または捕集させる工程」を備えることである。 b 引用発明は、「給水は地下水を酸化し、沈殿した酸化鉄が土壌に残留する」ものであるところ、引用発明の「酸化鉄」は、本件補正発明の「酸化した金属成分」に相当する。 また、引用発明は、「水が井戸1のまわりの地下水含有土壌層から流れ込み、この水を井戸1からポンプによって汲み出し、これから離れたスタンド管2を経て消費地点に導」くとともに、「管2から分岐管3をポンプ4に通し、給水を管5を経て井戸のまわりの地下水含有土壌層中に延在する垂直管6~11に供給」するものであり、「垂直管6~11」と「井戸1」の間の土壌層中を介して水が循環しているといえるから、引用発明における「土壌に残留する」「沈殿した酸化鉄」は、「垂直管6~11」と「井戸1」の間の土壌層中に吸着又は捕集されたものであることは明らかである。 そうすると、引用発明は、本件補正発明の「酸化した金属成分を、前記孔と前記揚水井戸との間の地盤に吸着または捕集させる」ことに相当する構成を有するといえる。 c したがって、本件補正発明と引用発明は、構成Bの観点について、次の点において一致する。 「酸化した金属成分を、前記孔と前記揚水井戸との間の地盤に吸着または捕集させる工程」を備える点。 (エ) 構成Cの観点(汲み上げる工程) a 構成Cは、「前記揚水井戸から地下水を汲み上げる工程」を備えることである。 b 引用発明の「この水を井戸1からポンプによって汲み出」すことは、本件補正発明の「前記揚水井戸から地下水を汲み上げる」ことに相当する。 c したがって、本件補正発明と引用発明は、構成Cの観点について、次の点において一致する。 「前記揚水井戸から地下水を汲み上げる工程」を備える点。 (オ) 構成Dの観点(排出する工程) a 構成Dは、「前記注入井戸に前記流路部を介して圧縮空気を注入して前記孔における地下水を当該注入井戸を介して排出し、前記地盤に吸着または捕集されていた金属成分を当該孔から排出する工程」を備えることである。 b 引用発明は、本件補正発明の構成Dに相当する構成を備えていないから、本件補正発明と引用発明は、構成Dの観点について、次の点において相違する。 <構成Dの観点における相違点> 本件補正発明においては、「前記注入井戸に前記流路部を介して圧縮空気を注入して前記孔における地下水を当該注入井戸を介して排出し、前記地盤に吸着または捕集されていた金属成分を当該孔から排出する工程」を備えるのに対して、引用発明においては、当該「排出する工程」に相当する工程を有しない点。 イ 一致点及び相違点 前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次の(ア)及び(イ)に示すとおりである。 (ア) 一致点 「地下水を汲み上げる揚水井戸の周囲の地中であり当該揚水井戸に流入する地下水が流れる地中に掘られた孔における地下水に、当該孔に沿って伸びる流路部を介して少なくとも酸素を含む流体を供給し、地下水に含まれる金属成分を酸化させる工程と、 酸化した金属成分を、前記孔と前記揚水井戸との間の地盤に吸着または捕集させる工程と、 前記揚水井戸から地下水を汲み上げる工程と、 を備える取水方法」である点。 (イ) 相違点 本件補正発明においては、 「流路部」が「当該孔に沿って伸びる注入井戸に設けられる」ものであり、 「地下水を汲み上げる揚水井戸の周囲の地中であり当該揚水井戸に流入する地下水が流れる地中に掘られた孔における地下水に、当該孔に沿って伸びる流路部を介して少なくとも酸素を含む流体を供給」することについて、「当該注入井戸に」供給するものであり、 「前記注入井戸に前記流路部を介して圧縮空気を注入して前記孔における地下水を当該注入井戸を介して排出し、前記地盤に吸着または捕集されていた金属成分を当該孔から排出する工程」を備えるのに対して、 引用発明においては、「垂直管6~11」(流路部)が「注入井戸」といえるものに設けられているのか明らかでなく、また、当該「排出する工程」に相当する工程を有しない点。 (4) 判断 ア 当合議体の判断 (ア) 引用発明は、「水が井戸1のまわりの地下水含有土壌層から流れ込み、この水を井戸1からポンプによって汲み出し、これから離れたスタンド管2を経て消費地点に導き」、「管2から分岐管3をポンプ4に通し、給水を管5を経て井戸のまわりの地下水含有土壌層中に延在する垂直管6~11に供給」するものであるから、井戸1から汲み出した水を、スタンド管2、分岐管3、ポンプ4、管5、垂直管6~11、及び、垂直管6~11と井戸1の間の土壌層を介して循環させているといえる。 ここで、前記(2)ウ(イ)において技術常識1として認定したとおり、「揚水井戸で汲み上げた水を復水井戸を介して地盤へ戻し続けると、地盤中の細かな土砂により復水井戸側の流路に目詰まり生じてしまうという課題があること」は、本願の出願前に当業者にとって技術常識であった。 そして、引用発明は、前述したとおり、井戸1から汲み出した水を垂直管6~11等を介して循環させるものであって、井戸1から汲み出した水を垂直管6~11を介して地盤に戻し続けるものといえ、また、「沈殿した酸化鉄が土壌に残留する」ものでもあるから、技術常識1を踏まえると、引用発明が、沈殿した酸化鉄によって垂直管6~11側の流路に目詰まりが生じるという課題を内在することは、当業者にとって自明といえる。 (イ) 一方、前記(2)イ(ウ)において周知技術1として認定したとおり、「井戸やその周囲の汚れや詰まりを解消するために、井戸内に給気パイプを設けて高圧空気を注入させることにより、井戸の内壁と給気パイプの間の空間を利用して、地下水とともに汚れや詰まりの原因物質を井戸外へ排出すること」は、本願の出願前に周知の技術であった。 (ウ) そうすると、引用発明において、沈殿した酸化鉄によって垂直管6~11側の流路に目詰まりが生じるという課題を解消するために、垂直管6~11に対して周知技術1を適用することにより、垂直管6~11の設けられる孔を井戸状のもの(注入井戸)にするとともに、当該井戸状の孔内に給気パイプを設けて高圧空気(圧縮空気)を注入させることにより、孔の内壁と給気パイプの間の空間を利用して(注入井戸を介して)、地下水とともに沈殿した酸化鉄(地盤に吸着または捕集されていた金属成分)を孔外へ排出するように構成することは、当業者にとって容易といえる。 そして、その際に、「給気パイプ」の具体的な態様としては、垂直管6~11自体を給気パイプとして用いるとともに、垂直管6~11に対して水の供給と高圧空気の供給とを切り替える機構を設ける態様(本件補正発明の「前記流路部を介して圧縮空気を注入」することに相当する構成)と、井戸状の孔内に垂直管6~11とは別に給気パイプを設ける態様とのいずれかが想定されるところ、前者の態様では、孔内に別途の給気パイプが存在しないため孔内のスペース効率が良好であるが、前述した「切り替える機構」を設ける必要があり、後者の態様では、配管構造は単純であるが、孔内に垂直管と給気パイプを設ける必要があるから、いずれの態様を採用するかは、配管構造を単純にすることと孔内のスペース効率を良好にすることとのいずれを優先するか等に応じて、当業者が適宜選択し得た設計事項にすぎないものといえる。 (エ) そうすると、引用発明において、垂直管6~11に対して周知技術1を適用するとともに、「給気パイプ」の具体的な態様として前者の態様を選択するよう設計変更することにより、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (オ) そして、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 (カ)したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術1及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 請求人の主張について (ア) 請求人の主張内容 請求人は、審判請求書において、概略、次のとおりの主張をしている。 引用文献1には、本件補正発明の技術的特徴である「前記注入井戸に前記流路部を介して圧縮空気を注入して前記孔における地下水を当該注入井戸を介して排出し、前記地盤に吸着または捕集されていた金属成分を当該孔から排出する工程」については何ら記載されていない。 一方、周知技術とされる引用文献2~3に記載の技術は、井戸を浚渫するための技術であって、揚水井戸の周囲の孔に沿って伸びる注入井戸に設けられる流路部を介して圧縮空気を注入し、地盤に吸着または捕集されていた金属成分を孔から排出する本件補正発明の技術とは全く異なるものである。また、引用文献4に記載の技術では、土砂や地下水を吸い込んで、地下水を流す機能を回復させることが記載されているが、金属成分を捕集する能力を回復させる本件補正発明の技術的思想は何ら記載されていない。 したがって、本件補正発明の技術的特徴が何ら記載されていない引用文献2~4を周知技術として引用し、引用文献1から進歩性がない、とする認定には誤りがある。 (イ) 請求人の主張についての検討 請求人が本件補正発明の技術的特徴であると主張する構成は、前記(3)イ(イ)において認定した相違点に係る本件補正発明の構成に含まれるところ、当該相違点については、前記アにおいて説示したとおり、当業者が容易に想到し得たものである。 また、引用発明において、垂直管6~11に対して周知技術1を適用することにより、沈殿した酸化鉄(地盤に吸着または捕集されていた金属成分)を地下水とともに孔外へ排出するように構成されるから、金属成分を捕集する能力を回復させるという作用効果が奏されることは、当業者にとって自明といえる。 したがって、前記(ア)に示した請求人の主張は採用できない。 (5) 独立特許要件の判断のまとめ 以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明、周知技術1及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。 4 本件補正の却下の決定の理由のむすび 前記3(5)のとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の本願発明に対する拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。 理由4(進歩性の欠如) 本願発明は、その出願前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.特公昭49-17461号公報(主たる引用文献) 引用文献2.特開昭53-115551号公報(周知技術を示す文献) 引用文献3.特開昭60-40438号公報(周知技術を示す文献) 引用文献4.特開2011-256671号公報(周知技術を示す文献) 3 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定 引用文献1に記載された事項、並びに、引用発明、周知技術1及び技術常識1は、前記第2の3(2)ア(ア)、並びに、3(2)ア(イ) 、3(2)イ(ウ)及び3(2)ウ(イ)において示したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、本件補正発明から、前記第2の2(1)のア及びイに示した限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(4)において説示したとおり、引用発明、周知技術1及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明、周知技術1及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-013493

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ論点・分野の審決(審決分類)10件(121・E03B、575・E03B)
  • 2025-002577拒絶査定不服審判 / 2026-08-26 / 原査定取消(特許/登録すべき)雨水取水装置
    共通の審決分類: 121・E03B
  • 2023-012579拒絶査定不服審判 / 2025-06-26 / 原査定取消(特許/登録すべき)構造物
    共通の審決分類: 121・E03B
  • 2023-003646拒絶査定不服審判 / 2024-07-04 / 原査定取消(特許/登録すべき)短管取付け工法
    共通の審決分類: 121・E03B
  • 2019-007169拒絶査定不服審判 / 2020-09-28 / 原査定取消(特許/登録すべき)貯水槽塗装修繕方法
    共通の審決分類: 121・E03B
  • 2019-009192拒絶査定不服審判 / 2020-09-14 / 原査定取消(特許/登録すべき)貯水槽の保水構造および貯水槽の保水方法
    共通の審決分類: 121・E03B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存