特許拒絶査定不服審判
2024-012807
排水処理方法及び排水装置
- 審判番号
- 2024-012807
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-055713
- 請求日
- 2024年08月06日
- 審決日
- 2025年07月04日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社エステック
- 【請求人代理人】弁理士法人鷲田国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 川俣 洋史
- 審判官 殿川 雅也
- 審判官 門 良成
- 分類
- P18 .121-Z (E03F) / P18 .56 -Z (E03F) / P18 .575-Z (E03F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-55713「排水処理方法及び排水装置」拒絶査定不服審判事件〔令和6年10月11日出願公開、特開2024-143180〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和5年3月30日の出願であって、令和6年1月24日付けで拒絶理由が通知され、同年3月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月9日付け(送達日同年5月21日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年8月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 令和6年8月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年8月6日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和6年3月27日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲1ないし10を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし10へと補正するものである(下線は補正箇所を示すために付した。)。
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「 【請求項1】
溜水を排水する排水処理方法であって、
前記溜水に排水ポンプを吊り下ろして、前記溜水の水面に前記排水ポンプを浮かせる第1工程と、
前記排水ポンプを駆動して前記溜水を排水する第2工程と、を含み、
前記第2工程では、前記排水ポンプの電力源として単相100Vの蓄電装置を用い、排水に伴う水位変化に前記排水ポンプが追従し、変化する揚程に応じた排水性能を発揮しながら排水を行う、
排水処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の排水処理方法に用いられる排水装置であって、
排水ポンプと、
前記排水ポンプに取り付けられ、前記排水ポンプを水面に浮かせる浮き具と、
を備え、
前記浮き具は、
ボトル状の浮き本体と、
前記排水ポンプの周囲に前記浮き本体を立位姿勢で保持する保持部材と、を有する、
排水装置。
【請求項3】
前記保持部材は、前記排水ポンプの周囲に沿って配置される枠体であり、
前記枠体に、前記浮き本体のネック部を挿通可能で、かつ、前記浮き本体のヘッド部を挿通不能な取付穴が形成されている、
請求項2に記載の排水装置。
【請求項4】
前記枠体は、フランジ部と、前記フランジ部の端縁から屈曲して起立する起立板部と、
を有し、
前記フランジ部に、前記取付穴が形成され、
前記起立板部に、前記取付穴に連通し前記ヘッド部を挿通可能な誘導穴が形成されている、
請求項3に記載の排水装置。
【請求項5】
前記枠体は、前記浮き本体の取付部分を拡縮可能である、
請求項3に記載の排水装置。
【請求項6】
前記枠体の一部が開放されている、
請求項3に記載の排水装置。
【請求項7】
前記浮き本体は、ペットボトルである、
請求項2に記載の排水装置。
【請求項8】
前記ペットボトルは、前記排水ポンプの下端よりも下方に突出する、
請求項7に記載の排水装置。
【請求項9】
前記ペットボトル内に配置される照明装置を備える、
請求項7に記載の排水装置。
【請求項10】
前記排水ポンプに取り付けられる排水ホースを有し、
前記排水ホースは、硬質の樹脂材料からなる伸縮自在な蛇腹構造を有する、
請求項2に記載の排水装置。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
地下の溜水をマンホールを通じて排水する排水処理方法であって、
前記溜水に排水ポンプを吊り下ろして、前記溜水の水面に前記排水ポンプを浮かせる第1工程と、
前記排水ポンプを駆動して前記溜水を排水する第2工程と、を含み、
前記第2工程では、前記排水ポンプの電力源として単相100Vの蓄電装置を用い、排水に伴う水位変化に前記排水ポンプが追従し、変化する揚程に応じた排水性能を発揮しながら排水を行う、
排水処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の排水処理方法に用いられる排水装置であって、
排水ポンプと、
前記排水ポンプに取り付けられ、前記排水ポンプを水面に浮かせる浮き具と、
を備え、
前記浮き具は、
ボトル状の浮き本体と、
前記排水ポンプの周囲に前記浮き本体を立位姿勢で保持する保持部材と、を有する、
排水装置。
【請求項3】
前記保持部材は、前記排水ポンプの周囲に沿って配置される枠体であり、
前記枠体に、前記浮き本体のネック部を挿通可能で、かつ、前記浮き本体のヘッド部を挿通不能な取付穴が形成されている、
請求項2に記載の排水装置。
【請求項4】
前記枠体は、フランジ部と、前記フランジ部の端縁から屈曲して起立する起立板部と、
を有し、
前記フランジ部に、前記取付穴が形成され、
前記起立板部に、前記取付穴に連通し前記ヘッド部を挿通可能な誘導穴が形成されている、
請求項3に記載の排水装置。
【請求項5】
前記枠体は、前記浮き本体の取付部分を拡縮可能である、
請求項3に記載の排水装置。
【請求項6】
前記枠体の一部が開放されている、
請求項3に記載の排水装置。
【請求項7】
前記浮き本体は、ペットボトルである、
請求項2に記載の排水装置。
【請求項8】
前記ペットボトルは、前記排水ポンプの下端よりも下方に突出する、
請求項7に記載の排水装置。
【請求項9】
前記ペットボトル内に配置される照明装置を備える、
請求項7に記載の排水装置。
【請求項10】
前記排水ポンプに取り付けられる排水ホースを有し、
前記排水ホースは、硬質の樹脂材料からなる伸縮自在な蛇腹構造を有する、
請求項2に記載の排水装置。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「溜水を排水する排水処理方法」について、その「溜水」が存在する位置を「地下」に限定し、その「排水」の経路を「マンホールを通じて」行うものに限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、本願の願書に最初に添付された明細書に、「【0002】 従来、地下に管路を設けて、電力ケーブルや通信ケーブル等のケーブル類を地中に埋設することが行われている。管路の途中には、所定の間隔でマンホールが設けられ、ケーブル類の接続や保守点検等(以下、「マンホール内作業」と称する)を行うことができるようになっている。 【0003】 ところで、マンホール内作業を行う際、マンホール内に浸入した雨水や地下水が滞留していることがある。この場合、排水ポンプを用いてマンホール内の溜水を排出した上で、所定の作業が行われる。通常、排水ポンプは、マンホールの床面に設けられたポンプ固定用凹部に設置され、溜水に沈んだ状態で駆動される(例えば、特許文献1参照)。」、「【0015】 図1A、図1Bに示すように、排水装置1は、排水ポンプ10及び浮き具20を備える。排水装置1は、マンホールMH内の溜水を汲み上げて排出する装置であり、溜水に浮かせた状態で使用される。」(スペースは改行を示す。)と記載されていることから導かれる事項であって、本願の願書に最初に添付された明細書に記載した事項の範囲内でされた補正であるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(2)の請求項1に記載したとおりのものである。
(2)引用文献
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に発行された引用文献である、特開2007-262922号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は当審において付した。以下同じ。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急災害時や土木工事等において排水ポンプに関する。」
「【0017】
排水ポンプは、主軸1を回転させるモータ2と主軸1の先端側に装着した羽根車3とを有する流体吐出用のポンプ本体(水中モータである)4と、上下方向(厚さ方向)に貫通形成されたポンプ用開口部5を有するフロート6とを備える。ポンプ本体4は、羽根車3を下にしフロート6の上面よりもモータ2を上方に配置し、かつポンプ本体4を露出させた縦置き状態でポンプ用開口部5に取付けられ、フロート6の体積はポンプ本体4を水面F上に浮かせる大きさ、例えばポンプ本体4を取り付けた状態でフロート6の上面を水面F上に位置させる浮力を有するように設定される。フロート6は厚さ方向長さが水平方向長さ(即ち径)より短い扁平な円環状であり、フロート6の水平断面積が水面F上で安定姿勢を維持する大きさに設定される。
・・・
【0018】
・・・本発明のようにポンプ本体が縦置きである場合には吸い込み空間がフロート下方に位置するので土木工事用のピットの径は排水ポンプの水平方向長さ(即ちフロートの径)に吸い込み空間を含めずに設定すれば済み、横型排水ポンプに比べ、ピットの径の設定が容易にでき、さらにフロートの径よりポンプ本体の全長が長い場合にはピットの径をより小さくできるので、ピットを作る土木的な負担が少なくなる。また上方へ水を排出するための吐出しホースの取り回しも、横置きの場合よりも容易になる。・・・
【0019】
ポンプ本体4のモータ2はモータフレーム7に収容されている。モータ2と羽根車3との間の主軸1には、メカニカルシール8がモータ2と羽根車3との間をシールすべく取付けられ、モータフレーム7のメカニカルシール8とは反対側(モータフレーム7の上側)には上部カバー9が液密に設けられ、モータ2を防水している。メカニカルシール8は、モータフレーム7に一体形成されたシール部7aに収容されている。
・・・
【0021】
羽根車3は吸込みベル14に収容され、吸込みベル14の上端部に径方向外側に向って形成されたフランジ14aをフロート6上面のポンプ用開口部5の周縁部6aに載置した状態でフランジ14a以下の吸込みベル14をポンプ用開口部5に上下方向に挿入している。・・・
【0022】
吸込みベル14の上側には揚水管16が接続され、揚水管16の内部にはモータフレーム7および上部カバー9が支持されている。揚水管16は、揚水管下部16aと、揚水管下部16aの上側に接続された揚水管中間部16bと、揚水管中間部16bの上側に接続された揚水管上部16cとから構成される。・・・揚水管下部16aの上側には径方向外側に接続フランジ16eが形成され、この接続フランジ16eに、揚水管中間部16bの下側に径方向外側に向って形成された接続フランジ16fを戴置しボルトで締結固定している。揚水管中間部16bの上側には径方向外側に向って接続フランジ16gが形成され、接続フランジ16gに、揚水管上部16cの下側に径方向外側に向って形成された接続フランジ16hを戴置している。
【0023】
接続フランジ16gおよび接続フランジ16hには複数の挿通孔が上下に貫通形成されている。各挿通孔には、チェーン取付け用のリング部17aを一端に有した複数のボルト部材17が接続フランジ16h側から挿入されている。各ボルト部材17は接続フランジ16g側でナット部材18によって固定され、リング部17aには排水ポンプ吊下げ運搬用チェーン19が取り付けられている。揚水管下部16a内にはシール部2aが複数の支持部20によって支持されている。
【0024】
揚水管上部16c内には上部カバー9が支持部21によって支持されている。揚水管上部16cの上側には吐出し管22が接続されている。吐出しホース22には、羽根車3の回転によって吸い込み口15から吸い込まれ、揚水管16と、モータフレーム7および上部カバー9との間を通過したポンピング対象流体が送出される。
【0025】
フロート6下面6cには、吸い込み口15へのゴミ混入を防ぐストレーナ23がフロート6の下面のポンプ用開口部5aを下方から覆った状態で取付けられ、フロート6下方に吸い込み空間24を確保している。ストレーナ23は、フロート6下面6cの外周縁から下方に延出形成されたフロートの一部である側部23aと、側部23aの下側開口を覆う底部23bとから構成される。側部23aは、水位が低いために底部23bが接地面Gに接地した場合に排水ポンプを支持できる強度を有する。・・・
【0026】
フロート6は樹脂製や金属製のものを任意に用いることができる。またフロート6は、内部室25を有し、内部室25に連通する挿通孔26a,26bがフロート外周面に設けられている。ここでフロート6の径方向長さ(外径)はマンホールの径方向長さ(内径)D0より短く設定されているので(図1参照)、洪水等の水害によって町内が水浸しとなった場合に水を掻き出すためにマンホールを排水ポンプの緊急用ピットとして利用したいときには、挿通孔26aまたは挿通孔26bを介して液体を内部室25に充填させフロート6の浮力を低減させることで、ポンプ本体4の自重によって排水ポンプをマンホール内に沈めることができる。またマンホールを利用するのではなく、排水用のピットを作る場合にも、フロート6の径方向長さが小さいことによってピットが小さくて済むのでピットを作る土木工事の負担を減らすことができる。
【0027】
挿通孔26a,26bは、具体的にはフロート6の上面における主軸1の立軸線Pの両脇二箇所に設けられている。各挿通孔26a,26bには配管27が配管取付け部28を介して接続され、排水ポンプを水中に沈めたい場合には、一方の挿通孔26aを介して液体を内部室25に流入し、他方の挿通孔26bを介して内部室25からエア抜きをし、内部室25に液体を充填させることでフロート6の浮力を低減させ、ポンプ本体の自重によって排水ポンプを水中に沈め、使用することができる。また一旦沈めた排水ポンプを浮かしたい場合には、一方の挿通孔26aを介して内部室25から液体を吸い込み、他方の挿通孔26bを介して内部室25にエアを流入し、内部室25にエアを充填させることでフロート6の浮力を回復させて排水ポンプを浮かせる。また、配管27を用いなくとも、あらかじめ液体を挿通孔から内部室に入れておけば水中に沈めることが可能であることは言うまでもない。」
「【図1】
[図:0001426606000001.jpg]
」
(ア)上記【0023】の「接続フランジ16g」及び「接続フランジ16h」との記載、及び上記【0024】の「吐出しホース22には、・・・ポンピング対象流体が送出される」との記載を踏まえると、図1から「ポンプ本体4」は、「接続フランジ16g」及び「接続フランジ16h」を備えており、「吐出しホース22」が接続されていることが看取できる。
以上を総合すると、引用文献1には、次の装置発明(以下「引用文献1装置発明」という。)が記載されている。
[引用文献1装置発明]
主軸1を回転させるモータ2と主軸1の先端側に装着した羽根車3とを有する流体吐出用のポンプ本体4と、上下方向に貫通形成されたポンプ用開口部5を有するフロート6とを備える排水ポンプであって(【0001】、【0017】)、
フロート6の体積は、ポンプ本体4を取り付けた状態でフロート6の上面を水面F上に位置させる浮力を有するように設定されており(【0017】)、
フロート6の外径はマンホールの内径より短く設定されており(【0026】)、
ポンプ本体4が備える接続フランジ16gおよび接続フランジ16hには複数の挿通孔が上下に貫通形成されており、各挿通孔には、チェーン取付け用のリング部17aを一端に有した複数のボルト部材17が接続フランジ16h側から挿入されて、リング部17aには排水ポンプ吊下げ運搬用チェーン19が取り付けられており((ア)、【0023】)、
ポンプ本体4に接続されている吐出しホース22には、羽根車3の回転によって吸い込み口15から吸い込まれ、揚水管16と、モータフレーム7および上部カバー9との間を通過したポンピング対象流体が送出される((ア)、【0024】)、
排水ポンプ(【0001】)。
上記引用文献1装置発明から、以下の事項が把握できる。
(イ)引用文献1装置発明の「排水ポンプ」には、「接続フランジ16gおよび接続フランジ16hには複数の挿通孔が上下に貫通形成されており、各挿通孔には、チェーン取付け用のリング部17aを一端に有した複数のボルト部材17が接続フランジ16h側から挿入されて、リング部17aには排水ポンプ吊下げ運搬用チェーン19が取り付けられて」いるから、引用文献1装置発明は、「排水ポンプ吊下げ運搬用チェーン19により吊り下げ」られる「排水ポンプ」に関する発明と認められる。
(ウ)引用文献1装置発明の「排水ポンプ」は、「主軸1を回転させるモータ2と主軸1の先端側に装着した羽根車3とを有する流体吐出用のポンプ本体4と、上下方向に貫通形成されたポンプ用開口部5を有するフロート6」を備えている。
(エ)引用文献1装置発明の「排水ポンプ」の「フロート6」の外径は、「マンホールの内径より短く設定されて」いる。
(オ)引用文献1装置発明の「排水ポンプ」は、「フロート6」の浮力により「フロート6の上面を水面上に位置させて、羽根車3の回転によって吸い込み口15から吸い込まれたポンピング流体を、吐出しホース22に送出」して排水するポンプである。
(カ)上記(イ)より、「排水ポンプ」を「排水ポンプ吊下げ運搬用チェーン19により吊り下げ」ること、及び、上記(オ)より、「排水ポンプ」を「フロート6の浮力によりフロート6の上面を水面上に位置させ」て「ポンピング流体を、吐出しホース22に送出して排水する」方法を、引用文献1装置発明に対応する方法発明として認めることができる。
すると、引用文献1には、次の方法発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
[引用発明]
主軸1を回転させるモータ2と主軸1の先端側に装着した羽根車3とを有する流体吐出用のポンプ本体4と、上下方向に貫通形成されたポンプ用開口部5を有するフロート6を備え((ウ))、
フロート6の外径は、マンホールの内径より短く設定されている、排水ポンプを((エ))、
排水ポンプ吊下げ運搬用チェーン19により吊り下げて((イ))、
フロート6の浮力によりフロート6の上面を水面上に位置させて、ポンピング流体を、吐出しホース22に送出して排水する((オ))、
方法((カ))。
イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に発行された引用文献である、実願平2-56848号(実開平4-17192号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
(ア)「〔産業上の利用分野〕
本願考案は水中ポンプを利用して揚水する装置に関し、特に、その電源を太陽エネルギーから得る揚水装置に関する。」(第1ページ第17行ないし同ページ第20行)
(イ)「〔作用〕
本願考案においては、太陽が昇ると太陽エネルギーは太陽電池により発電され、水中ポンプのモーターを駆動する。そして、太陽が沈むと、太陽電池の発電は停止され、揚水も自動的に停止させる。また、蓄電池を設けたものにあっては、太陽光が照射されている間は、太陽エネルギーは太陽電池により発電され、蓄電池に蓄えられる。
そして、必要の都度、水中ポンプを駆動して、必要量に応じて揚水を行うことができる。」(第3ページ第11行ないし同ページ第20行)
(ウ)「本願考案の実施例について図面に基づき詳述すると、まず、第1図において、符号1はフロートであって、フロート1に水中ポンプ2が取り付けられている。水中ポンプ2は液面下に水没して浮遊しており、水中ポンプ2を駆動しない時には浅瀬へ移動できるようにしてある。符号3は太陽電池であって、水中ポンプ2の上部に取り付けられ、フロート1の浮力で水面上に支持されて、太陽光を受けるようにしてある。太陽電池3は、太陽光が照射されている時には、光エネルギーを電気エネルギーに変換するようになっており、太陽電池3は、1m2当たり約1KWの太陽エネルギーが照射され、この太陽エネルギーを1m2当たり約100Wの電力に変換する。そして、得られた電力は、陸上部に設けられた蓄電池4にケーブル5で移送され蓄えられる。蓄電池4には、制御装置6が並設され、第2図に示すようにセンサー回路と制御回路からなっている。符号7は水中ポンプ2の駆動モーターであって、制御装置6からケーブル5で接続されている。符号8は水中ポンプの吐出口、符号9は陸上部に設けられた放水管であって、吐出口8と放水管9が可撓管10で接続してある。」(第4ページ第2行ないし第5ページ第3行)
(エ)「第1図
[図:0001426606000002.jpg]
」
(オ)「第2図
[図:0001426606000003.jpg]
」
上記摘記事項(イ)から、以下の事項が認められる。
(カ)太陽が昇ると太陽電池により発電されて水中ポンプのモーターを駆動し、太陽が沈むと太陽電池の発電が停止されるが、蓄電池が設けられると、太陽光が照射されている間は、太陽エネルギーが太陽電池により発電されて蓄電池に蓄えられて、(太陽が昇っていなくても)必要なときに蓄電池に蓄えされた太陽エネルギー(電力)が水中ポンプを駆動して、必要量に応じて揚水を行うことができることから、「必要の都度、蓄電池4に蓄えられた電力により、水中ポンプ2を駆動して、必要量に応じて揚水を行うことができる」ことが認められる。
上記摘記事項(ア)ないし(オ)及び上記認定事項(カ)から、引用文献2には次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されている。
[引用文献2技術事項]
水中ポンプ2が、フロート1に取り付けられて、液面下に水没して浮遊しており((ウ))、
必要の都度、蓄電池4に蓄えられた電力により、水中ポンプ2を駆動して、必要量に応じて揚水を行うことができる((カ))、
水中ポンプ2を利用して揚水する装置((ア))。
ウ 周知例1
当審において新たに引用され、本願の出願前に発行された、特開2014-25201号公報(以下「周知例1」という。)には、次の記載がある。なお、周知例1は、本願明細書に先行技術文献として引用されている文献である。
「【0001】
本発明は、マンホール内の排水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マンホール内に設置された設備の保守などを行うためには、保守を行う前にマンホール内の溜まり水を排水する必要がある。
【0003】
マンホール内の溜まり水の排水は、一般に、排水ポンプ及び排水ホースを用いて行う。すなわち、排水ホースが取り付けられた排水ポンプを溜まり水に沈め、この排水ポンプ及び排水ホースによって溜まり水を汲み上げることにより、溜まり水をマンホールの外部に排出する。」
「【0014】
図1は、本実施の形態のマンホール内の排水方法を用いて、マンホール20内の溜まり水21を排水している様子を示す。
【0015】
マンホール20内には、排水ガイド10が配置されている。排水ガイド10にはロープ31が掛けられており、排水ガイド10は、作業員32によってロープ31を用いて、マンホール20内に投入され、及び、排水作業終了後マンホール20内から引き上げられる。排水ガイド10は、マンホール20内の溜まり水21に自立して浮くようになっている。・・・
【0016】
排水ポンプ41は、排水ガイド10を介してマンホール20の溜まり水21の中に沈められ、マンホール20の底に設置される。排水ポンプ41に取り付けられた排水ホース42は、排水ガイド10内を通過して排水タンク43に繋がれている。排水ポンプ41及び排水ホース42によって汲み上げられた溜まり水21は排水タンク43に貯留される。」
「【図1】
[図:0001426606000004.jpg]
」
すると、周知例1には、次の技術事項(以下「周知例1技術事項」という。)が記載されている。
[周知例1技術事項]
マンホール20の溜まり水21の中に沈められ、マンホール20の底に設置された排水ポンプ41に排水ホース42が取り付けられており、排水ポンプ41及び排水ホース42によって溜まり水21が汲み上げられて排水タンク43に貯留されることによって、マンホール20内の溜まり水21を排水するマンホール内の排水方法であって(【0014】、【0016】)、
マンホール内に設置された設備の保守を行う前にマンホール内の溜まり水を排水する(【0002】)、
マンホール内の排水方法(【0001】)。
エ 周知例2
当審において新たに引用され、本願の出願前に発行された、特開平5-272165号公報(以下「周知例2」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、道路下に設けられたマンホール内の水を地上の道路脇の排水溝に排水するのに好適なマンホール内排水方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、図3、図4に示すように道路1の真下に設けられたマンホール2内の水を道路上に排水する場合、排水ホース3を、マンホール2内床面からマンホールの出入り孔4を経て地上の道路脇の排水溝5まで布設する。そして排水ホース3の下端に連結した水中ポンプ6により揚水し、地上の道路脇の排水溝5に排出するようにしている。」
「【図3】
[図:0001426606000005.jpg]
」
「【図4】
[図:0001426606000006.jpg]
」
すると、周知例2には、次の技術事項(以下「周知例2技術事項」という。)が記載されている。
[周知例2技術事項]
マンホール2内の水を道路上に排水する場合、排水ホース3を、マンホール2内床面からマンホールの出入り孔4を経て地上の道路脇の排水溝5まで布設し、排水ホース3の下端に連結した水中ポンプ6により揚水し、地上の道路脇の排水溝5に排出する(【0002】)、
マンホール内排水方法(【0001】)。
オ 周知例3
当審において新たに引用され、本願の出願前に発行された、特開2020-33874号公報(以下「周知例3」という。)には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハンドホールやマンホール内の水を排水するための排水システムに関する。」
「【0031】
図1は本発明の実施形態に係る排水システム1の設置例を示す概略図であり、また、図2は排水システム1のブロック図である。排水システム1は、例えば電力ケーブル及び通信ケーブルの少なくとも一方が配設される地下空間部に溜まった水を排水するための装置であり、この実施形態では、地下空間部としてのマンホール100に溜まった水を排水するのに使用される。地下空間部は、マンホール100の他に、例えばマンホール100よりも小さなハンドホール(図示せず)であってもよいし、マンホール100やハンドホールに接続される管路102であってもよい。管路102には、符号Cで示すケーブルが配設されている。管路102に配設されるケーブルCは、電力ケーブルであってもよいし、通信ケーブルであってもよいし、電力ケーブル及び通信ケーブルの両方であってもよい。マンホール100の上部には蓋101が設けられている。」
「【0036】
(ポンプユニット10の構成)
・・・ポンプユニット10は、筐体11と、排水ポンプ12と、フロートスイッチ13とを備えている。排水ポンプ12及びフロートスイッチ13は筐体11に収容されている。図3に示すように、筐体11には、当該筐体11の外部の水が内部へ流通可能な開口部11aが設けられている。開口部11aの形成箇所は複数箇所であってもよい。筐体11をマンホール100の壁面に固定することで、ポンプユニット10の設置が可能である。
【0037】
排水ポンプ12は、マンホール100の内部に溜まった水を排水するためのものであり、小電力モータを内蔵した省スペースな細径筒型ポンプで構成されている。排水ポンプ12の排水能力は、設置条件によって多少異なるが、揚程3m、10~30ml/秒程度の能力とされている。つまり、汚水等が流入するマンホール用の排水ポンプに比べて大幅に低い能力であることから排水ポンプ12を小型にすることができ、狭い場所であっても設置が容易になっている。
【0038】
図3や図4に示すように、排水ポンプ12は筐体11の内部に配設されている。図4に示すように、排水ポンプ12には、水を吸入する吸入管部12aが設けられるとともに、水を吐出する吐出管部12bが設けられている。排水ポンプ12が運転状態になると、筐体11内の水が吸入管部12aから吸入されて吐出管部12bから吐出される。
【0039】
筐体11の内部には、排水ポンプ12の吐出管部12bに接続される上流側ホース10bと、ホース10bの下流端部に接続されるL型ジョイント10cと、L型ジョイント10cの下流端部に接続される中間ホース10eと、中間ホース10eの下流端部に接続されるチェックバルブ10dとが設けられている。また、チェックバルブ10dの吐出側には、排水管10fの上流端部が接続されている。従って、排水管10fは、上流側ホース10b、L型ジョイント10c、中間ホース10e及びチェックバルブ10dを介して排水ポンプ12の吐出管部12bに連通することになる。
【0040】
図1に示すように、排水管10fは、マンホール100の蓋101よりも下方から外部へ配設される。マンホール100の上部は、蓋101が嵌まる部分であり、金属製となっているが、この金属製の部分よりも下側はコンクリート製となっている。コンクリート製の部分は、金属製の部分に比べて貫通孔を開けるのが容易であるため、コンクリート製の部分に貫通孔を開けて排水管10fを通すことができる。排水管10fは、マンホール100の蓋101から離れた所から地上に出すようにすればよい。これにより、通行上の問題にならないように、排水管10fを配設することができる。尚、ハンドホールの場合も同様に排水管10fを配設することができる。」
「【図1】
[図:0001426606000007.jpg]
」
すると、周知例3には、次の技術事項(以下「周知例3技術事項」という。)が記載されている。
[周知例3技術事項]
筐体11及び筐体11に収容された排水ポンプ12を備えたポンプユニット10において(【0036】、
筐体11をマンホール100の壁面に固定することで、ポンプユニット10を設置しており(【0036】)、
排水ポンプ12は、マンホール100の内部に溜まった水を排水するためのものであり、小電力モータを内蔵した省スペースな細径筒型ポンプで構成されており、(【0037】)、
排水管10fが、上流側ホース10b、L型ジョイント10c、中間ホース10e及びチェックバルブ10dを介して排水ポンプ12の吐出管部12bに連通しており(【0039】)、
排水管10fは、マンホール100の蓋101よりも下方から外部へ配設される(【0039】)、
マンホール内の水を排水するための排水システム(【0001】)。
カ 周知技術1
周知例1技術事項ないし周知例3技術事項から、次の事項が周知の技術(以下「周知技術1」という。)であったと認められる。
[周知技術1]
マンホール内(地下)に排水ポンプ(水中ポンプ)を設置して、排水ホース(排水管)を通してマンホール内の水を排水する技術。
キ 周知例4
当審において新たに引用され、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、“排水用水中ポンプ”、[online]、2009年(平成21年)8月9日、水中ポンプ.com、[2025年(令和7年)5月16日検索]、インターネット <URL: https://web.archive.org/web/20090809173732/https://pump1000.com/pump/i_youto_haisui.html>(URL中のパスに含まれる文字列「20090809173732」から判断できる、「Wayback machine」(https://web.archive.org)への保存日からみて、標記Webサイトは遅くとも2009年(平成21年)8月9日に公知になったものと認められる。)には、次の記載がある。
(ア)「排水用水中ポンプ
安心の水中ポンプ専門サイト「水中ポンプ.com」
(イ)「排水用(工場)水中ポンプ
工事現場や工場で使用可能な丈夫な作りの水中ポンプです。
「工事現場に入った水を吐き出す際」や「工場で水を汲み上げる際」等に
使用されています。」
(ウ)「一般的には排水する場合をメインに想定し造られております。
出力や揚程高さをご覧になって用途にあった水中ポンプをお選びください。」
(エ)「鶴見一般工事用水中ポンプPRO-25S2
・・・
[図:0001426606000008.jpg]
」
上記摘記事項から、次の事項を把握できる。
(オ)上記(エ)に、50Hzと60Hzの各々の電源周波数において、一分間あたりの吐出し水量(l)と揚水高さ(m)の関係を示したグラフとともに、揚水高さと1分間あたりの吐出し水量の関係が「6m」及び「80l(50Hzと60Hzの両方)」、「5m」及び「98l(50Hzと60Hzの両方)」、「2m」及び「143l(50Hz)/152l(60Hz)」となっていることが記載されていることを把握できる。
周知例4は、水中ポンプを解説するWebサイトであるから、当該Webサイトに記載された内容は、水中ポンプを取り扱う者にとってよく知られた内容であると認められる。
すると、周知例4の記載から、次の事項が周知の技術(以下「周知技術2」という。)であったと認められる。
[周知技術2]
揚水高さに応じて1分間あたりの吐出し水量が変化する排水用水中ポンプ((イ)、(ウ)及び(オ))。
ク 周知例5
当審において新たに引用され、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、“単相と三層のご説明/水中ポンプ.com”、[online]、2010年(平成22年)3月28日、水中ポンプ.com、[2025年(令和7年)5月16日検索]、インターネット <URL: https://web.archive.org/web/20100328083542/https://pump1000.com:80/setumei/s_sou.html>(URL中のパスに含まれる文字列「20100328083542」から判断できる、「Wayback machine」(https://web.archive.org)への保存日からみて、標記Webサイトは遅くとも2010年(平成22年)3月28日に公知になったものと認められる。)には、次の記載がある。
(ア)「単相と三相のご説明
単相と三相ではコンセントの差込口の形が違ってきます。合わないタイプの相を購入すると使えなくなってしまうので、ご購入の際は十分にお確かめ下さい。」
(イ)「
[図:0001426606000009.jpg]
」
(ウ)「電圧(V)と相について
現在、日本では100Vの単相、200Vの単相、200Vの三相があります。」
(エ)「水中ポンプの機能のご説明」
上記摘記事項から、次の事項を把握できる。
(オ)上記(エ)の水中ポンプの機能の説明とともに、上記(ア)及び(ウ)から、水中ポンプには、100V単相のコンセントの差込口に適合した水中ポンプが存在することを把握できる。
周知例5は、水中ポンプを解説するWebサイトであるから、当該Webサイトに記載された内容は、水中ポンプを取り扱う者にとってよく知られた内容であると認められる。
すると、周知例5の記載から、次の事項が周知の技術(以下「周知技術3」という。)であったと認められる。
[周知技術3]
100V単相のコンセントの差込口に適合した水中ポンプ((オ))。
ケ 周知例6
当審において新たに引用され、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、“ポータブル電源シリーズ(災害対策用・非常用電源)”、[online]、2022年(令和4年)5月23日、EMC CORE、[2025年(令和7年)5月17日検索]、インターネット <URL: https://web.archive.org/web/20100328083542/https://pump1000.com:80/setumei/s_sou.html>(URL中のパスに含まれる文字列「20100328083542」から判断できる、「Wayback machine」(https://web.archive.org)への保存日からみて、標記Webサイトは遅くとも2022年(令和4年)5月17日に公知になったものと認められる。)には、次の記載がある。
(ア)「ポータブル電源シリーズ(災害対策用・非常用電源)」
(イ)「製品情報
・リチウム蓄電池を搭載したポータブル電源」
(ウ)「主な用途
・・・
・工事現場や仮設建物での商用電源の代替」
(エ)「製品特徴
大容量だけではなく、定格出力も抜群
2400Whのポータブル電源は前からありますが、2000Whの大容量を誇り、かつ定格出力が2000Wのポータブル電源は前例がありません。正真正銘のスーパーポータブル電源です。」
(オ)「製品特徴
製品型番:COREポータブルSG2000
[図:0001426606000010.jpg]
・・・
AC100V 50Hz/60HZ 2000W 出力:6系統」
(カ)「
[図:0001426606000011.jpg]
」
上記周知例6の摘記事項から、次の事項を把握できる。
(キ)上記(ア)の「ポータブル電源シリーズ」との商品表示、及び、上記(エ)の「2400Whのポータブル電源は前からあります」との記載から、「ポータブル電源」が、周知例6が公知になる前から一般に販売された製品であることが認められる。
すると、上記(キ)を踏まえると、周知例6の記載から、次の事項が周知の技術(以下「周知技術4」という。)であったと認められる。
[周知技術4]
工事現場や仮設建物での商用電源の代替用途に利用でき((ウ))、
100VのAC入力と((オ))、
100VのAC出力が可能である((オ))、
リチウム蓄電池を搭載したポータブル電源((イ))。
(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア)引用発明は、「排水する」ための「方法」であるので、本件補正発明と引用発明は「水を排水する排水処理方法」に関する発明である点で共通する。
(イ)引用発明の「排水ポンプ」は、本件補正発明の「排水ポンプ」に相当する。
(ウ)引用発明の「方法」は、「排水ポンプ」を「排水ポンプ吊下げ運搬用チェーン19により吊り下げて」、「フロート6の浮力によりフロート6の上面を水面上に位置させ」る工程を含むので、本件補正発明の「排水処理方法」と引用発明の「方法」は、「前記水に排水ポンプを吊り下ろして、前記水の水面に前記排水ポンプを浮かせる第1工程」を含む方法である点で共通する。
(エ)引用発明の「方法」は、「フロート6の浮力によりフロート6の上面を水面上に位置」した状態の「排水ポンプ」を用いて排水する工程を含むから、本件補正発明の「排水処理方法」と引用発明の「方法」は、「前記排水ポンプを駆動して前記水を排水する第2工程」を含む方法である点で共通する。
イ すると、本件補正発明と引用発明は、
[一致点]
「水を排水する排水処理方法であって、
前記水に排水ポンプを吊り下ろして、前記水の水面に前記排水ポンプを浮かせる第1工程と、
前記排水ポンプを駆動して前記水を排水する第2工程と、を含む
排水処理方法。」
の点で一致し、次の点で相違又は一応相違する。
[一応の相違点1]
本件補正発明の「排水処理方法」は、「地下の溜水をマンホールを通じて排水する排水処理方法」であるのに対し、引用発明の「方法」は、「水を排水する排水処理方法」とはいえるものの、「水」が地下の溜水であって、この地下の溜水を、マンホールを通じて排水するものであることが明示されていない点。
[一応の相違点2]
本件補正発明の「排水処理方法」は、「前記第2工程では」、「排水に伴う水位変化に前記排水ポンプが追従し、変化する揚程に応じた排水性能を発揮しながら排水を行う」ものであるのに対し、引用発明の「方法」は、排水ポンプがフロート6の浮力により水に浮いているといえるものの、排水ポンプが水位変化に追従して変化する揚程に応じた排水性能を発揮しながら排水を行うものであることが明示されていない点。
[相違点3]
本件補正発明の「排水処理方法」は、「前記第2工程では」、「前記排水ポンプの電力源として単相100Vの蓄電装置を用い」るものであるが、本葉発明の「方法」は、排水ポンプの動力源について明らかでない点。
(4)判断
ア 一応の相違点1について
引用発明の「方法」に用いられる「排水ポンプ」の「フロート6の外径」は、マンホールの内径より短く設定されていることから、排水ポンプをマンホールの中に吊り下げて排水することが示唆されているといえる。
そして、上記(2)カの周知技術1のとおり、「マンホール内(地下)に排水ポンプ(水中ポンプ)を設置して、排水ホース(排水管)を通してマンホール内の水を排水する技術」は、本願出願前に周知の技術であったといえる。よって、周知技術1を考慮すると、引用発明に接した当業者であれば、引用発明の排水する「方法」を周知の「地下の溜水をマンホールを通じて排水する」用途に適用して一応の相違点1に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得る。
イ 一応の相違点2について
引用発明の「方法」に利用される「排水ポンプ」は、「フロート6の浮力によりフロート6の上面を水面上に位置させて、ポンピング流体を、吐出しホース22に送出して排水する」ものであるから、排水の進行にしたがって水量が減少するとともに、排水ポンプの位置が水面の変化にしたがって変化し、これに伴って排水ポンプの揚程が変化することは当業者に自明である。
本願明細書の発明の詳細な説明の【0043】に「従来の排水処理方法では、排水ポンプがマンホールMHのポンプ設置用凹部52に設置された状態で排水が行われるので、排水作業を通して揚程が一定である。これに対して、本実施の形態の排水処理方法では、溜水の水位に応じて揚程が変化する。揚程に応じた排水性能が発揮されることとなり、揚程が一定である場合に比較して排水効率が格段に向上するので、排水作業に要する時間が短縮される。」と記載されているとおり、本件補正発明の「排水ポンプ」の「排水性能」は、排水ポンプが水位変化に追従することにより変化する揚程に対応した排水性能を示していると理解できる。
すると、上記(2)キの周知技術2のとおり、「排水用水中ポンプ」が「揚水高さに応じて1分間あたりの吐出し水量が変化する」ことは周知であるから、排水の進行にしたがって水量が減少するとともに、排水ポンプの位置が水面の変化にしたがって変化し、これに伴って排水ポンプの揚程が変化する、引用発明の「方法」において、周知技術2を考慮すれば、必然的に、引用発明の「方法」が、本願補正発明の一応の相違点2に係る「排水に伴う水位変化に前記排水ポンプが追従し、変化する揚程に応じた排水性能を発揮しながら排水を行う」ことを充足していることは明らかである。
したがって、一応の相違点2は、実質的な相違点ではない。
ウ 相違点3について
上記(2)イの引用文献2技術事項の「水中ポンプ2」は、フロート1に取り付けられて浮遊しながら揚水する点において、引用発明の「排水ポンプ」と利用分野と機能が共通する。
そして、引用文献2技術事項の「必要の都度、水中ポンプを駆動して、必要量に応じて揚水を行うこと」は、引用発明の「排水ポンプ」においても求められる機能であるので、引用文献2技術事項のように「蓄電池」を動力源として引用発明の「排水ポンプ」を駆動する動機がある。
また、本願補正発明の「単相100Vの蓄電装置」が、充電時に「単相100V」を「蓄電装置」に入力するのか、「蓄電装置」が「排水ポンプ」に「単相100V」を供給するのか、その「蓄電装置」の構成がいずれかに特定されていない。
しかしながら、上記(2)ケの周知技術4のように100VのAC入力(充電)が可能な「ポータブル電源」は周知であり、また、上記(2)クの周知技術3のように、「100V単相のコンセントの差込口に適合した水中ポンプ」及び上記(2)ケの周知技術4のように100VのAC出力が可能な「ポータブル電源」が周知である。
したがって、引用発明の「排水ポンプ」の駆動源として、引用文献2技術事項の「蓄電池」で「排水ポンプ」を駆動する構成を採用する際に、100V単相が入力又は出力のいずれも問わず、周知技術4の「ポータプル電源」を採用して本願補正発明の「前記排水ポンプの電力源として単相100Vの蓄電装置を用い」る構成として、相違点3に係る構成とすることは当業者が容易になし得る設計的事項の範疇にすぎない。
(5)小括
本願補正発明は、周知技術1ないし周知技術3を考慮すれば、引用発明に引用文献2技術事項の蓄電池により水中ポンプを駆動する技術を採用することにより、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができた発明ではない。
(6)審判請求人の主張について
審判請求人は、令和6年8月6日に提出した審判請求書の3(4)において、概略以下のとおり主張している。
ア 「補正後の本願発明と、引用発明を対比すると、さらに、本願発明は、地下の溜水をマンホールを通じて排水する排水処理方法であるのに対して、引用発明は、緊急災害時や土木工事等に適用しうるものであり(引用文献1の段落[0001]参照)、地下の溜水をマンホールを通じて排水する場合については特に開示されていない点で相違します。」
「地下の溜水をマンホールを通じて排水する場合の前提として、マンホール内は作業空間が狭く、壁面には作業用の足場(ステップ)等の障害物が多数存在します。つまり、排水作業中に、排水ホースや電源コード(以下、「排水ホース等」と称する)が絡まったり、排水ホース等が障害物と擦れて損傷したりしやすい環境であるといえます。」
「そのため、従来の排水処理方法では、排水作業の初期から、マンホールの床面に設けられたポンプ設置用凹部に排水ポンプを設置した状態で排水処理が行われています。この場合、排水ホース等は排水初期からマンホール内に必要長だけ導入され、また、排水ポンプはポンプ設置用凹部に安定した姿勢で固定されますので、排水作業中に排水ホース等が絡まったり損傷したりするという不具合を抑制することができます。」
「引用発明は、溜水の水面に排水ポンプを浮かせ、浮遊した状態で排水を行う方法ですが、・・・排水ポンプの姿勢は不安定となります。・・・排水装置の姿勢を安定させ排水ホース等に不具合が生じないようにする工夫が必要になりますが、引用文献1には、そのような工夫についても何ら開示も示唆もされていません。そのため、引用発明の排水処理方法を適用して地下の溜水をマンホールを通じて排水する場合、排水ホース等に不具合が生じることを容易に予測できます。つまり、地下の溜水をマンホールを通じて排水する場合に、引用発明の排水処理方法を適用することには、上記した阻害要因があります。」
「また、引用文献2も、農業用やゴルフ場の散水等に使用する水中ポンプが開示されているに過ぎず(引用文献2の第2頁第12行-第17行)、地下の溜水の排水処理への適用については開示も示唆もされていません。」
イ 「一般的には、排水効率を考慮して、排水ポンプの電力源には大容量の発電機が使用されます。マンホール内の溜水を排水する場合に、排水ポンプの電力源として単相100Vの蓄電装置を使用すると、揚程が高い場合に十分な排水性能が発揮されず排水効率が著しく低下し、作業時間が長大化する虞があるためです。」
「本願発明では、・・・発電機を使用した場合に比較して作業スペースを縮小するために、単相100Vの小型の蓄電装置を用いています。また、単相100Vの蓄電装置を用いることで、発電機を使用する場合に発生する温室効果ガス(例えば、二酸化炭素)や、騒音・振動の問題を解消することができます。」
ウ 「・・・溜水の水面に排水ポンプを浮かせて(第1工程)、排水に伴う水位変化に排水ポンプが追従し、変化する揚程に応じた排水性能を発揮しながら排水を行う(第2工程)ことにより、単相100Vの蓄電装置を用いた場合の排水性能の低下を補い、作業時間の長大化を最小限に抑えるようにしています。」
エ 「上述したように、本願発明は、地下の溜水をマンホールを通じて排水する場合に、一定の排水性能を確保しつつ、作業スペースの縮小化及び騒音・振動問題等の解消を図るためになされたものです。」
オ 主張アについて
上記(4)アにおいて検討したとおり、引用発明の「方法」に用いられる「排水ポンプ」は、「フロート6の外径」がマンホールの内径より短く設定されているので、排水ポンプをマンホール内で稼働させることが考慮されている。
また、上記(2)カの周知技術1のとおり、「マンホール内に排水ポンプ(水中ポンプ)を設置して、排水ホース(排水管)を通してマンホール内の水を排水する技術」は、本願出願前に周知の技術であったことからみても、引用発明の「排水ポンプ」を、マンホールを通した排水処理方法に使用するにあたり阻害要因は認められない。
よって、審判請求人の上記アの主張は採用できない。
カ 主張イについて
上記(4)ウにおいて検討したとおり、引用発明の「方法」に用いられる「排水ポンプ」を駆動させるために、引用文献2技術事項のように「蓄電池」を動力源として引用発明の「排水ポンプ」を駆動させることは、当業者が容易に想到し得る程度のことである。
その際に、上記(2)クの周知技術3の「100V単相のコンセントの差込口に適合した水中ポンプ」、及び上記(2)ケの周知技術4の「100VのAC入力」及び「100VのAC出力」を備える「ポータプル電源」を採用することは、当業者が適宜なし得る程度のことにすぎない。
よって、審判請求人の上記イの主張は採用できない。
キ 主張ウについて
上記(4)イにおいて検討したとおり、信用発明の「方法」に用いられる「排水ポンプ」は、排水の進行にしたがって水量が減少するとともに、排水ポンプの位置が水面の変化にしたがって変化するものであって、これに伴って排水ポンプの揚程が変化するものであることは、当業者に自明であって、その際に、上記(2)キの周知技術2のとおり、「排水用水中ポンプ」が「揚水高さに応じて1分間あたりの吐出し水量が変化する」ことは周知であることからすると、引用発明は、本願補正発明のように実質的に「溜水の水面に排水ポンプを浮かせて(第1工程)、排水に伴う水位変化に排水ポンプが追従し、変化する揚程に応じた排水性能を発揮しながら排水を行う(第2工程)」ものである。
ク 主張エについて
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明、引用文献2技術事項、周知技術1ないし周知技術4に基づいて当業者が容易に想到し得ることができるものである。
そして、その効果は、引用発明、引用文献2技術事項、周知技術1ないし周知技術4が内在するものであり、これらの技術から当業者が予測し得る程度のものにすぎない。
ケ したがって、審判請求人の主張は、いずれも採用できない。
3 補正の却下の決定のむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和6年3月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(1)の請求項1に記載のとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
原査定の理由とされた、令和6年1月24日付け拒絶理由通知書に記載した理由の概要は、以下の理由を含む。
(進歩性)この出願の請求項2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特開2007-262922号公報
引用文献2:実願平2-56848号(実開平4-17192号)のマイクロフィルム
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び引用文献2、当審で新たに引用された周知例1ないし周知例6、並びにこれらの記載事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から「溜水」の位置を「地下」とすること、及び「排水」を「マンホールを通じて」行うことに係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2(3)、(4)において検討したとおり、周知技術1ないし周知技術4を考慮すれば、引用発明の排水ポンプの駆動源として引用文献2技術事項の「蓄電池4」を採用することにより、当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献2技術事項、及び周知技術1ないし周知技術4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 審判請求人が令和6年3月27日に提出した意見書における主張について
審判請求人は、令和6年3月27日に提出した意見書の3(3)において、概略以下のとおり主張している。
(1)「本願発明では、第2工程において、排水ポンプの電力源として単相100Vで蓄電される小容量の蓄電装置を用いるのに対して、引用文献1には、モータ2の駆動源に関する記載はありません。」
「・・・引用文献2に記載の揚水装置は、水中ポンプの固定設備や遠方からの配線工事を不要とし、維持管理費用を抑制することを目的としており、そのために、太陽電池を利用して発電された電力を蓄電池に蓄電するようになっています。
また、引用文献2には、「太陽電池の蓄電池と制御装置とを陸上部に設置すればよいものである。」・・・と記載されており、かかる記載から、引用文献2の蓄電池及び制御装置は、作業現場に固定して運用することを想定しており、作業現場に持ち運んで運用することを想定していないと考えられます。」
「・・・引用発明は、作業スペースの縮小化を目的としたものではありませんし、引用文献2には、蓄電池を適用することで、作業スペースの縮小化を図ることができることについて、何ら記載も示唆もされていませんので、引用文献1、2に基づいて、作業スペースの縮小化のために蓄電池の設計変更を行うという動機付けも得られません。」
「本願発明では、・・・持ち運び可能な単相100Vの小容量の蓄電装置を用いることで、作業スペースの縮小化を実現しているのであり、かかる効果は、引用文献1、2の組合せからは得られない格別なものであると思料します。」
「引用発明における動力源として、引用文献2に記載の蓄電池を適用することに想到し得たとしても、制御装置とともに作業現場に固定され、水中ポンプに搭載された太陽電池によって発電された電力を蓄電する蓄電池を適用するに留まり、さらに、当該蓄電池を、本願発明のように、持ち運び可能な単相100Vの蓄電装置に変更することは、当業者であっても容易に想到しうるものではないと思料します。」
(2)引用文献1にモータ2の駆動源の記載がないとしても、モータ2が電力により駆動されることは技術常識なので、引用文献2記載の、必要の都度、蓄電池に蓄えられた電力により、水中ポンプ2を駆動する技術に基づき、引用発明の「排水ポンプ」を蓄電池に蓄えられた電力により駆動することは、当業者が容易に想到し得る。
その際に、審判請求人が主張するように、仮に、引用文献2記載の技術が太陽電池を必須としているとしても、本願発明が「排水ポンプ」の動力源として「蓄電装置」を用いることが特定されている一方で太陽電池を用いないことが特定されているわけではないし、また、周知技術4のように、工事現場等で用いる電源として蓄電池を搭載したポータブル電源(可搬電源)が周知である以上、太陽電池の有無にかかわらず、引用発明の「排水ポンプ」の動力源として「蓄電池」を採用することは、当業者が容易になし得る。
そして、上記第2の[理由]2(4)ウにおいて検討したとおり、100VのAC入力(充電)及び100VのAC出力(駆動)が可能な「ポータブル電源」は周知の技術であり(周知技術4)、また、「100V単相のコンセントの差込口に適合した水中ポンプ」も周知の技術(周知技術3)である。
すると、引用発明の「排水ポンプ」を駆動するために引用文献2技術事項のように「蓄電池」を利用する際に、これらの周知技術を採用することに何ら困難性はない。その効果も引用文献、引用文献2技術事項、周知技術3及び周知技術4から当業者が予測し得る程度のものにすぎない。
したがって、審判請求人による上記(1)の主張は採用できない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-012807