特許拒絶査定不服審判
2024-012804
緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法
- 審判番号
- 2024-012804
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-052262
- 請求日
- 2024年08月06日
- 審決日
- 2025年12月19日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日鉄建材株式会社
- 【請求人代理人】安彦 元
- 審判長/審判官
- 審判長 石井 孝明
- 審判官 岩瀬 昌治
- 審判官 鎌田 哲生
- 分類
- P18 .121-Z (F16B) / P18 .561-Z (F16B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 52262「緊結金具、鋼製部材の緊結構造及び鋼製部材の緊結方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年10月 7日出願公開、特開2022-149916〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年3月25日の出願であって、その手続の経緯は以下の通りである。
令和5年11月17日付け 拒絶理由通知書
令和6年 1月19日 意見書・手続補正書の提出
令和6年 4月23日付け 拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和6年 8月 6日 審判請求書・手続補正書の提出
第2 令和6年8月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年8月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
貫通孔が形成される鋼製部材同士を緊結するための緊結金具であって、
隣接する鋼製部材に形成される各々の貫通孔に貫通可能な貫通部と、
前記貫通部の一端部側に螺合可能な頭部と、前記頭部と前記鋼製部材との間に配置されるとともに前記貫通孔よりも径大に形成される拡径部と、を有する第1係止部と、を備え、
前記貫通部は、棒状部材を折り曲げて構成され、
一端部側に前記頭部が螺合されるネジ部と、
前記ネジ部に対して直交して延びる第2係止部と、を有し、
前記第1係止部と前記第2係止部とは、隣接する前記鋼製部材同士を挟んで緊結するものであり、
前記第1係止部は、前記頭部と前記拡径部とが一体化され、前記ネジ部の軸心の傾きを抑制するものであり、
前記第2係止部は、前記鋼製部材に接触される面に第1突起部を有し、
前記第1突起部は、前記第2係止部の折れ曲がり部分の内側に形成されること
を特徴とする緊結金具。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和6年1月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
貫通孔が形成される鋼製部材同士を緊結するための緊結金具であって、
隣接する鋼製部材に形成される各々の貫通孔に貫通可能な貫通部と、
前記貫通部の一端部側に螺合可能な頭部と、前記頭部と前記鋼製部材との間に配置されるとともに前記貫通孔よりも径大に形成される拡径部と、を有する第1係止部と、を備え、
前記貫通部は、
一端部側に前記頭部が螺合されるネジ部と、
前記ネジ部に対して直交して延びる第2係止部と、を有し、
前記第1係止部と前記第2係止部とは、隣接する前記鋼製部材同士を挟んで緊結するものであり、
前記第1係止部は、前記頭部と前記拡径部とが一体化され、前記ネジ部の軸心の傾きを抑制するものであること
を特徴とする緊結金具。」
2 補正の適否
(1)本件補正の目的について
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「貫通部」、「第2係止部」及び「第1突起部」のそれぞれについて、上記のとおり限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2)新規事項の追加の有無について
ア 「貫通部」に関して、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という)には、「貫通部2は、直線状の棒状部材をL字状に折り曲げ加工されたものが用いられ」(【0089】)と記載されているから、本件補正により「貫通部」について「棒状部材を折り曲げて構成され」と限定したことは、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
イ 「第2係止部」に関して、当初明細書等には、「鋼製部材の緊結構造100は、第1ライナープレート9-1と、第2ライナープレート9-2と、緊結金具1とを備える。」(【0021】)、「第1ライナープレート9-1は、第1貫通孔92-1が形成される第1フランジ91-1を有する。第2ライナープレート9-2は、第1ライナープレート9-1に隣接するものであって、第2貫通孔92-2が形成される第2フランジ91-2を有する。」(【0022】)及び「第2係止部22は、第2フランジ91-2に接触される面に第1突起部25を有する」(【0093】)と記載されているから、本件補正により「第2係止部」について「前記鋼製部材に接触される面に第1突起部を有し」と限定したことは、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
ウ 補正後の請求項1の「第2係止部」は「ネジ部に対して直交して延びる」ものであるから、補正後の請求項1の「前記第1突起部は、前記第2係止部の折れ曲がり部分の内側に形成され」(下線は当審合議体が付した。以下の摘記についても同様である。)は、「第1突起部」が、「ネジ部」と「第2係支部」とが直交する部分の内側に形成されるものと理解される。
すなわち、当初明細書等の「貫通部2は、ネジ部29と第2係止部22とを繋ぐ角部28が略直角に形成されて、ネジ部29と第2係止部22とが直交して配置される。」(【0026】)、「この緊結金具1では、貫通部2は、ネジ部29と第2係止部22とを繋ぐ角部28が湾曲して形成されて、ネジ部29と第2係止部22とが直交して配置される。」(【0056】)という記載に沿って表現すれば、「ネジ部29と第2係止部22とを繋ぐ角部28」の内側である。
一方で、「第1突起部」に関して、当初明細書等には、「図15に示すように、貫通部2は、直線状の棒状部材をL字状に折り曲げ加工されたものが用いられ、この第1突起部25は、当該棒状部材をL字状に折り曲げ加工することによって折り曲げの内側に形成される突起である。第1突起部25は、鋼片等の突起状に形成される突起物が第2係止部22に取り付けられて形成されてもよい。」(【0089】)、「本実施形態によれば、第2係止部22は、第2フランジ91-2に接触される面に第1突起部25を有する。これにより、第1フランジ91-1と第2フランジ91-2とを第1係止部3と第2係止部22の第1突起部25とにより挟んで緊結したとき、第1突起部25を第2フランジ91-2に食い込ませることができる。」(【0093】)と記載されている。
これらの記載によれば、「折り曲げの内側」とは、「棒状部材をL字状に折り曲げ加工すること」で内側になる部分である。
また、「第1突起部」は「第2フランジ91-2に食い込ませることができる」ものであるところ、「第1突起部」を「第2フランジ91-2に食い込ませる」ためには、「第1突起部」は、「第2係支部」における「第2フランジ91-2」に対向する位置にある必要があるから、「第2係支部」の直線状部分に形成されるものと理解され、図15の図示内容もこの理解と矛盾しない。
そうすると、当初明細書等に記載された「第1突起部」は、棒状部材をL字状に折り曲げ加工すること」で内側になる部分に形成され、かつ「第2係支部」の「ネジ部に対して直交して延びる」の直線状部分に形成されるものであり、「ネジ部29と第2係止部22とを繋ぐ角部28」の内側に形成されるものではない。
以上によれば、「第1突起部」が「前記第2係止部の折れ曲がり部分の内側に形成され」るものは、当初明細書等に記載されたものではなく、上記当初明細書等の記載から自明の事項であるともいえないから、本件補正により「第1突起部」について「前記第2係止部の折れ曲がり部分の内側に形成され」と限定したことは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、本件補正により「第1突起部」について「前記第2係止部の折れ曲がり部分の内側に形成され」と限定したことは、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
(3)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、「本審判請求時に提出した手続補正書における請求項1に係る補正は、本補正前の旧請求項1、2、本願明細書段落[0089]、図15等の記載に基づきます。」との主張をしているが、本件補正により「第1突起部」について「前記第2係止部の折れ曲がり部分の内側に形成され」と限定したことについては、上記(2)に示したとおりであるから、審判請求人の上記主張は採用できない。
3 補正却下の決定についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~12に係る発明は、令和6年1月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、当該請求項1の記載は上記第2の[理由]1(2)に示したとおりである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対するものは、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2019-032008号公報
3 引用文献1の記載事項
(1)引用文献1には、以下の記載がある。なお、下線は当審合議体が付した。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば角形鋼管やリップ溝形鋼などの鋼材をナットにより締結する鋼材締結装置、締結部材および鋼材締結方法に関する。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の連結機構では、コの字状の締結部材を鋼管内で回転させる必要があり、例えば高さが半分程度の角形鋼管などでは、内側に回転スペースがなく、コの字状の締結部材が使えない。
【0006】
また、コの字状の締結部材は、棒状のねじの軸に2度屈曲加工を施すことから、軸径が例えば12mm程度の比較的、径が細いものしか作れず、さらに太い径のものが望まれている。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、内側に手が入り難い長尺の鋼材を外側からのナット締め作業で簡単にかつ堅固に締結することができる鋼材締結装置、締結部材および鋼材締結方法を提供することにある。」
ウ 「【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、屈曲した板の内側に手が入り難い鋼材を外側からのナット締め作業で簡単にかつ堅固に締結することができる。」
エ 「【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一つの実施の形態の鋼材締結装置の構成を示す斜視図である。
【図2】図1の鋼材締結装置の正面図である。
【図3】ボルトを示す図である。
【図4】鋼材の締結手順を示す斜視図である。
【図5】孔に通したボルトをナットで締め付けることでボルトが回転する様子を示す図である。
【図6】ボルトが鋼材の内壁に当接した様子を示す図である。」
オ 「【0015】
この実施の形態の鋼材締結装置は、ねじ締め用の第1の貫通孔としての締め付け軸挿通孔10、11が設けられた平板2aと、この平板2aの側縁を屈曲させて形成した側板2bとが設けられた鋼材2と、締め付け軸挿通孔10、11と対応する第2の貫通孔としての締め付け軸挿通孔12、13を有する断面がL字形の金具7(以下「L形金具7」と称す)とを、締め付け軸挿通孔10、11、12、13を合わせるように対向させて締め付け軸挿通孔10、11、12、13に締結部材としてのL型ボルト8を挿通して上方よりナット19でL型ボルト8を締め付けることでL形金具7と角形鋼管2を締結してなるものである。
【0016】
すなわち、この実施の形態の鋼材締結装置は、鋼材として長尺の角形鋼管2と、この角形鋼管2に他の鋼材(図示せず)を直交させて固定するL形金具7とをL形ボルト8とナット19で締結してなる装置である。上記他の鋼材としては、例えば同種の角形鋼管やリップ溝形鋼等を始めとする種々の鋼材(鋼管)等が含まれる。リップ溝形鋼をC形鋼などともいう。
【0017】
角形鋼管2は、締結時に、L形金具7の平板部6が対向してあてがわれる平板2aと、この平板2aの両端をL形金具7との対向面とは逆側に直角に折り曲げて形成された側板2bと、これら側板2bを他の端部で繋ぐように平板2aと対向配置された平板2cとを有する。
【0018】
角形鋼管2の平板2Aには、第1の挿通孔としての一対の締め付け軸挿通孔10、11が角形鋼管2の長手方向と直交する方向に並べて穿孔されている。
【0019】
L形金具7は、ナット19と角形鋼管2の平板2Aとの間に配置される。L形金具7は、例えば平板部5、6を有するL形鋼を用いる。この他、L形金具7は、例えば一枚の鋼板(金属板)を直角に折り曲げて平板部5、6を形成したものであってもよい。
【0020】
平板部5には、角形鋼管2に他の鋼材を連結するための貫通孔9が設けられている。平板部6には、角形鋼管2と連結するために平板2Aの締め付け軸挿通孔10、11と対応する第2の貫通孔としての締め付け軸挿通孔12、13(図4参照)が設けられている。換言すると、L形金具7はナット19と平板2Aとの間に配置され、平板2A側の締め付け軸挿通孔10、11に対応する締め付け軸挿通孔12、13を有する。」
カ 「【0024】
図3に示すように、L形ボルト8は、ナット19と螺合(係合)するネジ山を有する第1の軸(ネジ部)としての締め付け軸8aと、この締め付け軸8aに直交して設けられた第2の軸としての係止軸8bとを備える。L形ボルト8は、一本の金属棒を折り曲げ加工して締め付け軸8aと係止軸8bを形成しているが、他の加工方法で形成してもよい。」
キ 「【0030】
以下、図4乃至図6を参照してこの実施形態の角形鋼管2とL型金具7の締結方法を説明する。
この場合、図4に示すように、まずナット19をL形ボルト8の締め付け軸8aの浅い位置に仮締めする。そして、角形鋼管2の上面(平板2a)にL型金具7をあてがう。
つまり平板2aとナット19の間にL形金具7を配置する。
【0031】
ナット19を仮締めしたL形ボルト8の係止軸8bを、L型金具7および平板2aの締め付け軸挿通孔10、11、12、13に挿通し、屈曲方向に向きを変えながらナット19を仮締めした締め付け軸8aを締め付け軸挿通孔10、11、12、13に挿通して係止軸8bを平板2aの裏面に引っ掛けた状態にする。
【0032】
そして、L形ボルト8の上からインパクトレンチでナット19を締め付けることで、図5に示すように、ナット19の螺合に伴いL形ボルト8の締め付け軸8aが矢印Cの方向に供回りする。
【0033】
締め付け軸8aの供回りにより、図6に示すように、L形ボルト8の係止軸8bのが側板2bの内面に当接し、係止軸8bおよび締め付け軸8aの供回りが止まる。つまりナット19を締め付けて供回りした締め付け軸8aの回転により係止軸8bの先端を側板2bに当接させて締め付け軸8aの供回りを止める。
【0034】
そこからさらにインパクトレンチでの締め付けを続けることでナット19が締り、L形ボルト8が引き上げられて平板2aの内面に係止軸8bが密着し、ナット19と係止軸8bとの挟まれたL型金具7と角形鋼管2とが固定される(図1、図2参照)。」
ク 「【図1】
[図:0001432658000001.jpg]
」
ケ 「【図2】
[図:0001432658000002.jpg]
」
コ 「【図3】
[図:0001432658000003.jpg]
」
サ「【図4】
[図:0001432658000004.jpg]
」
シ 「【図5】
[図:0001432658000005.jpg]
」
ス 「【図6】
[図:0001432658000006.jpg]
」
セ 上記エ及びク~スから、図1~6の各図面において矛盾なく、「ナット19」は外形が六角柱状の部分(以下、便宜的に「六角部」という。)と円板状の部分(以下、便宜的に「円板部」という。)からなり、円板部が六角部と「L形金具7」の「平板部6」との間に配置されることが看取されるところ、上記キによれば「ナット19を仮締めした締め付け軸8aを締め付け軸挿通孔10、11、12、13に挿通して係止軸8bを平板2aの裏面に引っ掛けた状態にすることができ」(上記キ【0031】)るのであるから、「ナット19」の円板部の径は、「平板部6」に設けられた「角形鋼管2と連結するために平板2Aの締め付け軸挿通孔10、11と対応する第2の貫通孔としての締め付け軸挿通孔12、13(図4参照)」(上記オ【0020】)の径よりも大きいことは明らかである。
また、「ナット」とは「ボルトにはめて物を締め付けるのに用いるもの。多くは六角形で、内面にねじが切ってある。」(広辞苑第7版)というものであり、上記カ及びキによれば、「L形ボルト8の上からインパクトレンチでナット19を締め付けることで、」「L型ボルト8」に螺合するのであるから、「ナット19」の六角部が「L型ボルト8」の「締め付け軸8a」に螺合することも明らかである。
(2) 上記(1)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ねじ締め用の第1の貫通孔としての締め付け軸挿通孔10、11が設けられた平板2aと、この平板2aの側縁を屈曲させて形成した側板2bとが設けられた鋼材2と、締め付け軸挿通孔10、11と対応する第2の貫通孔としての締め付け軸挿通孔12、13を有するL形金具7とを、締め付け軸挿通孔10、11、12、13を合わせるように対向させて締め付け軸挿通孔10、11、12、13に締結部材としてのL型ボルト8を挿通して上方よりナット19でL型ボルト8を締め付けることでL形金具7と角形鋼管2を堅固に締結してなる鋼材締結装置であって、
前記ナット19は、前記L形ボルト8の締め付け軸8aに螺合する六角部と、前記六角部とL形金具7の平板部6との間に配置されるとともに前記締め付け軸挿通孔12、13よりも径が大きく形成された円板部とを備え、
前記L形ボルト8は、一本の金属棒を折り曲げ加工して、ナット19と螺合(係合)するネジ山を有する第1の軸(ネジ部)としての締め付け軸8aと、この締め付け軸8aに直交して設けられた第2の軸としての係止軸8bとを備え、
前記ナット19は、締め付け軸8aに螺合する六角部と、前記六角部とL形金具7の平板部6との間に配置されるとともに前記締め付け軸挿通孔12、13よりも径が大きく形成された円板部とを備え、
ナット19が締り、L形ボルト8が引き上げられて平板2aの内面に係止軸8bが密着し、ナット19と係止軸8bとの挟まれたL型金具7と角形鋼管2とが固定される、
鋼材締結装置。」
4 本願発明と引用発明との対比
(1) 引用発明の「ねじ締め用の第1の貫通孔としての締め付け軸挿通孔10、11」及び「第2の貫通孔としての締め付け軸挿通孔12、13」は、全体として本願発明の「貫通孔」に相当し、その各々は本願発明の「各々の貫通孔」に相当する。
(2) 上記(1)を踏まえると、引用発明の「ねじ締め用の第1の貫通孔としての締め付け軸挿通孔10、11が設けられた平板2aと、この平板2aの側縁を屈曲させて形成した側板2bとが設けられた鋼材2」及び「締め付け軸挿通孔10、11と対応する第2の貫通孔としての締め付け軸挿通孔12、13を有するL形金具7」は、それぞれ本願発明の「鋼製部材」の一方及び他方に相当し、合わせて本願発明の「鋼製部材同士」に相当する。
(3) 上記(1)及び(2)を踏まえると、引用発明の「締め付け軸挿通孔10、11、12、13に」「挿通する」「締結部材としてのL型ボルト8」及び「ナット19」は、本願発明の「隣接する鋼製部材に形成される各々の貫通孔に貫通可能な貫通部」及び「第1係止部」に相当する。
(4) 引用発明の「L形ボルト8」の「ネジ山を有する第1の軸(ネジ部)としての締め付け軸8a」は本願発明の「貫通部」の「一端部側」の「ネジ部」に相当するから、引用発明の「前記L型ボルト8の締め付け軸8aに螺合する六角部」及び「前記六角部とL形金具7の平板部6との間に配置されるとともに前記締め付け軸挿通孔12、13よりも径が大きく形成された円板部」は、本願発明の「前記貫通部の一端部側に螺合可能な頭部」及び「前記頭部と前記鋼製部材との間に配置されるとともに前記貫通孔よりも径大に形成される拡径部」に相当する。
(5) 引用発明の「この締め付け軸8aに直交して設けられた第2の軸としての係止軸8b」は、本願発明の「前記ネジ部に対して直交して延びる第2係止部」に相当し、引用発明の「有し」は、本願発明の「備え」に相当する。
(6) 引用発明の「平板2aの内面に係止軸8bが密着し」て「堅固に締結する」ことは、本願発明の「緊結する」ことに相当するから、上記(1)~(3)を踏まえると、引用発明の「締め付け軸挿通孔10、11、12、13を合わせるように対向させて締め付け軸挿通孔10、11、12、13に」「一本の金属棒を折り曲げ加工して形成し」た「締結部材としてのL型ボルト8を挿通して上方よりナット19でL型ボルト8を締め付けることでL形金具7と角形鋼管2を堅固に締結してなる鋼材締結装置」は、本願発明の「貫通孔が形成される鋼製部材同士を緊結するための緊結金具」に相当する。
以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「貫通孔が形成される鋼製部材同士緊結するための緊結金具であって、
隣接する鋼製部材に形成される各々の貫通孔に貫通可能な貫通部と、
前記貫通部の一端部側に螺合可能な頭部と、前記頭部と前記鋼製部材との間に配置されるとともに前記貫通孔よりも径大に形成される拡径部と、を有する第1係止部と、を備え、
前記貫通部は、
一端部側に頭部が螺合されるネジ部と、
前記ネジ部に対して直交して延びる第2係止部と、を有し、
前記第1係止部と前記第2係止部とは、隣接する前記鋼製部材同士を挟んで緊結するものである、
緊結金具。」
[相違点]
「第1係止部」について、本願発明は、「前記頭部と前記拡径部とが一体化され、ネジ部の軸心の傾きを抑制するものである」のに対し、引用発明は、「ナット19が締り、L形ボルト8が引き上げられて平板2aの内面に係止軸8bが密着し、ナット19と係止軸8bとの挟まれたL型金具7と角形鋼管2とが固定される」点。
5 判断
以下、相違点について検討する。
引用発明の六角部及び円板部は、本件明細書等おいて一貫して「ナット19」という1つのものとして記載されており、一体化されているものと理解するのが自然であるから、この点に係る相違は実質的なものではなく、仮に実質的なものであるにせよ、引用発明において、あえて六角部と円板部とを分離する理由はないから、六角部と円板部を一体化することは、引用発明を具体化するに当たり、当業者が設計上適宜になし得たことであって、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
また、引用発明は、「係止軸8b」が「締め付け軸8aに直交して設けられた」ことを前提として、「ナット19が締り、L形ボルト8が引き上げられて平板2aの内面に係止軸8bが密着」するものであって、その結果として「締め付け軸8a」の軸心の傾きは抑制されているといえるし、また、引用発明において、「締め付け軸8a」の軸心の傾けることは、引用発明が予定している「平板2aの内面に係止軸8bが密着」することを阻害することになりかねないから、引用発明における「ナット19」を「ネジ部の軸心の傾きを抑制する」ことができるような程度のものとすることは、引用発明を具体化するに当たり、当業者が設計上適宜になし得たことであって、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
そして、本願発明の奏する効果は、引用発明に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-012804