特許拒絶査定不服審判
2024-012348
セルフランドリーシステム
- 審判番号
- 2024-012348
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-097814
- 請求日
- 2024年07月29日
- 審決日
- 2026年02月16日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】高梨 健太郎
- 【請求人代理人】植村 貴昭
- 【請求人】株式会社wash-plus
- 【請求人代理人】植村 貴昭
- 審判長/審判官
- 審判長 川口 真一
- 審判官 柿崎 拓
- 審判官 長馬 望
- 分類
- P18 .121-WZ (D06F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023- 97814「セルフランドリーシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 8月22日出願公開、特開2023-116693〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
この出願は、平成30年3月13日(優先権主張 平成30年3月5日)に出願した特願2018-44877号の一部を令和5年6月14日に新たな特許出願としたものであって、この新たな特許出願と同日に手続補正がされ、令和6年2月27日付けの拒絶理由の通知に対し、令和6年3月28日に意見書が提出されたが、令和6年5月15日付けで拒絶査定がされ、これに対して令和6年7月29日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その後、当審において、令和7年8月25日付けで拒絶理由が通知され、令和7年10月20日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。
第2 本願発明
この出願の請求項に係る発明は、令和7年10月20日に手続補正がされた特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「ランドリー店舗内に設置され、乾燥機能を少なくとも有するランドリー機器と、
利用者の携帯端末と通信を行い、その通信結果に応じて前記ランドリー機器を運転制御する制御装置とを備えたセルフランドリーシステムであって、
前記制御装置は、
ポイントアップ条件を満たした場合にポイントをアップし、ポイントダウン条件を満たした場合に前記ポイントをダウンさせ、
前記ポイントがランクアップ値に達した場合にユーザのランクアップを行い、前記ポイントがランクダウン値に減少した場合にユーザのランクダウンを行う、
ことを特徴とする、セルフランドリーシステム。」
第3 拒絶の理由
令和7年8月25日付けで当審が通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうち、本願発明に対応する請求項1に係る発明に対する理由2(進歩性)は、概略、次のとおりのものである。
この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に掲載された発明、周知の事項1及び周知の事項2に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:スマートフォンとコインランドリーをIoTで結ぶ「Smart Laundry」11月29日正式リリース~「国際コインランドリーEXPO 2017」(11/29~)に出展~,[online],2017年11月28日,[検索日2025.08.22],インターネット<URL:https://www.atpress.ne.jp/news/143700>(参考:<https://web.archive.org/web/20241119045619/https://www.atpress.ne.jp/news/143700>)
(株式会社山本製作所、株式会社Wash-Plusのプレスリリース)
引用文献2:特開2009-271899号公報(周知の事項1を示す文献)
引用文献3:特開2005-341981号公報(周知の事項1を示す文献)
引用文献4:特開2017-45450号公報(周知の事項2を示す文献)
引用文献5:特開2012-22441号公報(周知の事項2を示す文献)
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載及び引用発明
(1)当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、前記引用文献1には、次の事項が掲載されている。
ア「
[図:0001434714000001.jpg]
」
イ「
[図:0001434714000002.jpg]
[図:0001434714000003.jpg]
」
ウ「
[図:0001434714000004.jpg]
」
エ「
[図:0001434714000005.jpg]
」
オ 「
[図:0001434714000006.jpg]
」
カ スマートフォンのスクリーンショットとして、以下の画像が示されている。
「
[図:0001434714000007.jpg]
[図:0001434714000008.jpg]
」
キ 前記イによると、引用文献1に掲載されたシステムは、コインランドリーに設置された洗濯乾燥機を備えているといえる。また、該システムは、前記ウによると、お客様がスマホひとつでコインランドリーを利用できるものであるから、そのためには、お客様のスマホと洗濯乾燥機との間に、洗濯乾燥機を運転制御する制御機器が介在していることは明らかである。すると、引用文献1には、コインランドリーに設置された洗濯乾燥機と、お客様がスマホひとつでコインランドリーを利用するために、洗濯乾燥機を運転制御する制御機器とを備えたシステムが掲載されているといえる。
ク 前記エによると、お客様は、スマホアプリ「Smart Laundry」を利用することや、洗濯終了から3分以内に洗濯物を取り出すことにより、「スマートメダル」がもらえ、該「スマートメダル」の貯まった枚数に応じてステイタスが上がり、利用時に使えるチケットがもらえたり、利用できるサービスが広がったりすることが把握できる。そして、これらの処理は、技術的にみて、前記キに示した制御機器によって、実行されていることは明らかである。すると、引用文献1に掲載された事項から、お客様が、スマホアプリ「Smart Laundry」を利用することや、洗濯終了から3分以内に洗濯物を取り出すことにより、お客様に「スマートメダル」を与え、該「スマートメダル」の貯まった枚数に応じてお客様のステイタスを上げ、利用時に使えるチケットを与えたり、利用できるサービスを広げるように、制御機器が処理を実行することが把握できる。
(2)引用文献1の前記(1)ア~クの事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が掲載されていると認められる。
「コインランドリーに設置された洗濯乾燥機と、
お客様がスマホひとつでコインランドリーを利用するために、前記洗濯乾燥機を運転制御する制御機器とを備えたシステムであって、
前記制御機器は、
お客様が、スマホアプリ「Smart Laundry」を利用することや、洗濯終了から3分以内に洗濯物を取り出すことにより、お客様に「スマートメダル」を与え、該「スマートメダル」の貯まった枚数に応じてお客様のステイタスを上げ、利用時に使えるチケットを与えたり、利用できるサービスを広げるように処理を実行する、システム。」
2 引用文献2の記載
当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、前記引用文献2には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審で付加した。以下、同様である。)。
(1)「【0006】
従って、本発明の課題は、コインランドリーのような無人店舗においても、利用者にポイント還元などのサービスを提供し得る、しかも簡単かつ即時に利用することが可能な顧客サービスシステムを提供することにある。」
(2)「【0032】
また、この他に挙げられる機能としては、サービスの対象となる物品の保持機能がある。コインランドリーでは、洗濯物を扱い、利用者が洗濯物を洗濯機や乾燥機に装入したままで長時間放置した場合、利用者に替わって洗濯物を取り出しておくことも可能であるが、適切な状態で保持しないと、洗濯物が汚れたり盗難に遭ったりすることがある。これには洗濯機や乾燥機の扉をロックし、利用者情報の送信とともに追加料金をコインリピータに投入することによりロックを解除するという機能を付加することで対処できる。」
3 引用文献3の記載
当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、前記引用文献3には、図面とともに、次の記載がある。
(1)「【技術分野】
【0001】
この発明は、ランドリーシステム、衣類乾燥機および洗濯機に関する。」
(2)「【0028】
また、利用者が、ランドリー機器1の運転終了時間が過ぎても、ランドリー機器1にICカード5を挿入せず、ランドリー機器1内の衣類を取り出さない場合は(衣類放置時においては)、まず、サーバー4の計時部42において、ランドリー機器1の運転終了からの時間が計測される(C1)。そして、一定時間が経過すると、経過時間に基づいて延長料金が課金され(C2)、その延長料金がデータコントローラ2に送信される(C3)。」
(3)「【0036】
ロック解除指令を受信したデータコントローラ2は、対象機器の開閉扉11のロック装置12のロック状態を解除する(E6)。これにより、利用者は、ランドリー機器1内の衣類を取り出すことができる。
また、利用者が、ランドリー機器1の運転終了時間が過ぎても、サーバー4へのアクセスを行わず、ランドリー機器1内の衣類を取り出さない場合は(衣類放置時においては)、まず、サーバー4の計時部42において、ランドリー機器1の運転終了からの時間が計測される(F1)。そして、一定時間が経過すると、経過時間に基づいて延長料金が課金され(F2)、その延長料金がデータコントローラ2に送信される(F3)。」
(4)「【0042】
また、サーバー4は、計時部42が計時した時間に基づいて費用を課金するので、運転終了後、利用者がランドリー機器1を占有したことに対して、適切に課金することができ、さらに、課金された料金が支払われたことに応答してロック装置12のロックが解除されるので、利用者に対して確実に料金の支払いを要求できる。
なお、上述の説明では、データの判別はサーバー4において行われるが、以下のように、データの判別がランドリー機器1において行われてもよい。」
4 引用文献4の記載
当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、前記引用文献4には、図面とともに、次の記載がある。
(1)「【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電池パックの利用料及びサービスの対価の少なくとも一方として使用可能なポイントの管理を行うサーバ装置及びポイント管理方法に関する。」
(2)「【0011】
この構成によれば、蓄電池パックの利用状況が蓄電池パックの利用促進のための条件又は蓄電池パックの状態管理のための条件のうち少なくとも一方の利用条件を満たすか否かに基づき、ポイント数を変更することができる。つまり、蓄電池パックの利用状況に応じて、ポイントを用いて利用者に報酬(リワード)及び/又は罰則(ペナルティ)を与えることができる。そのため、蓄電池パックの利用状況が利用条件を満たすように利用者を誘導することができる。逆に、蓄電池パックの利用状況が利用条件を満たさなくなることを抑制することもできる。したがって、蓄電池パックの不適切な利用を抑制することができる。
【0012】
例えば、前記制御器は、前記利用状況が前記利用条件を満たすとき、前記ポイント数を増加させてもよい。
【0013】
この構成によれば、蓄電池パックの利用状況が利用条件を満すときに、ポイント数を増加させることができる。つまり、蓄電池パックの利用状況に応じて、利用者に報酬を与えることができる。したがって、蓄電池パックの利用状況が利用条件を満たすように利用者を誘導することができる。
【0014】
例えば、前記制御器は、前記利用状況が前記利用条件を満たさないとき、前記ポイント数を減少させてもよい。
【0015】
この構成によれば、蓄電池パックの利用状況が利用条件を満たさないときに、ポイント数を減少させることができる。つまり、蓄電池パックの利用状況に応じて、利用者に罰則を与えることができる。したがって、蓄電池パックの利用状況が利用条件を満たさなくなることを抑制することができる。
【0016】
例えば、前記利用条件は、前記蓄電池パックの状態管理のための条件であってもよい。
【0017】
この構成によれば、蓄電池パックの状態管理のための条件を利用条件として用いることができる。したがって、蓄電池パックの状態を管理することができ、蓄電池パックの状態を管理できない状態になることを抑制することができる。
【0018】
例えば、前記利用条件は、前記蓄電池パックの返却期限を経過していないこと、または前記返却期限までに前記蓄電池パックを返却することを含んでもよい。
【0019】
この構成によれば、蓄電池パックの返却期限までに蓄電池パックを返却することを利用条件として用いることができる。したがって、蓄電池パックが返却期限までに返却されないことを抑制することができる。」
(3)「【0091】
また、蓄電池パック50の状態管理のための利用条件は、例えば、蓄電池パック50の返却期限の時点で蓄電池パック50を返却していることであってもよい。つまり、蓄電池パック50の状態管理のための利用条件は、蓄電池パック50の返却期限を守ることであってもよい。
【0092】
この場合、現在日が貸与中の蓄電池パック50の返却期限日を超過していれば、蓄電池パック50の利用状況が利用条件を満たしていないと判定される。言い換えれば、蓄電池パック50の返却期限の時点で蓄電池パック50が返却されていなければ、蓄電池パック50の利用状況が利用条件を満たしていないと判定される。逆に、現在日が貸与中の蓄電池パック50の返却期限日以前であれば、蓄電池パック50の利用状況が利用条件を満たしていると判定される。または、蓄電池パック50の返却期限以前に蓄電池パック50が返却されたとき、すなわち返却日が蓄電池パック50の返却期限以前であるとき、蓄電池パック50の利用状況が利用条件を満たしていると判定してもよい。このとき、利用条件の判定には、例えば、第1管理テーブル14aの返却期限のフィールドが参照される。」
(4)「【0107】
[効果]
以上のように、本実施の形態に係るサーバ装置11によれば、蓄電池パック50の利用状況が蓄電池パック50の利用促進のための利用条件又は蓄電池パック50の状態管理のための利用条件を満たすか否かに基づき、ポイント数を変更することができる。つまり、蓄電池パック50の利用状況に応じて、ポイントを用いて利用者に報酬(リワード)及び/又は罰則(ペナルティ)を与えることができる。そのため、蓄電池パック50の利用状況が利用条件を満たすように利用者100を誘導することができる。逆に、蓄電池パック50の利用状況が利用条件を満たさなくなることを抑制することもできる。したがって、蓄電池パック50の不適切な利用を抑制することができる。
【0108】
また、本実施の形態に係るサーバ装置11によれば、蓄電池パック50の利用状況が利用条件を満すときに、ポイント数を増加させることができる。つまり、蓄電池パック50の利用状況に応じて、利用者100に報酬を与えることができる。したがって、蓄電池パック50の利用状況が利用条件を満たすように利用者100を誘導することができる。
【0109】
また、本実施の形態に係るサーバ装置11によれば、蓄電池パック50の利用状況が利用条件を満たさないときに、ポイント数を減少させることができる。つまり、蓄電池パック50の利用状況に応じて、利用者100に罰則を与えることができる。したがって、蓄電池パック50の利用状況が利用条件を満たさなくなることを抑制することができる。
【0110】
また、本実施の形態に係るサーバ装置11によれば、蓄電池パック50の返却期限までに蓄電池パック50を返却することを利用条件として用いることができる。したがって、蓄電池パック50が返却期限までに返却されないことを抑制することができる。」
5 引用文献5の記載
当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、前記引用文献5には、図面とともに、次の記載がある。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、顧客来店促進システムに関し、顧客が所定の要件を満たすことにより顧客への特典を付与することを動機付けとして顧客の来店を促進させるためのシステムである。」
(2)「【0064】
さらに、ポイント付与手段が、商品またはサービスの購入に使うことのできる特典ポイントを加算する設定のシステム13において、CPU64は、照合手段により来店予告情報の日付読み出しにより来店事実が確認された日付(例えば本日)が一致する結果が得られたことを条件として、記録装置8、9に確保される、または確保されているポイントテーブルに所定の特典ポイントを加算するポイント加算手段を有している。また、ポイント加算手段とともに、または、ポイント加算手段に代えて、照合手段により来店予告情報の日付と確認された日付が一致する結果が得られたことを条件として、記録装置8、9のポイントテーブルの特典ポイントに乗じられるポイント加算率をより大きな乗数に変動させるポイント加算率変動手段を有している。このポイント加算率変動手段は、所定回数を超えて来店した顧客のポイントテーブル毎に変動させてもよいし、来店予告の多い日または少ない日、あるいはあらかじめ設定した特売日など一定の期間変動させてもよい。
【0065】
さらに、ペナルティ付与手段が設定可能なシステム13において、ペナルティ付与手段は、商品またはサービスの購入に使うことのできる特典ポイントを減算する設定になっている。CPU64は、照合手段により来店予告情報の日付と読み出しにより来店事実が確認された日付(例えば本日)が一致しないこと、および読み出しにより来店事実が確認された日付が来店予告情報の日付を過ぎていることを条件として、記録装置8、9のポイントテーブルから所定の特典ポイントを減算するポイント減算手段を有している。また、ポイント減算手段とともに、または、ポイント減算手段に代えて、照合手段により来店予告情報の日付と来店事実確認手段により確認された日付が一致しないこと、および、来店事実確認手段により確認された日付が来店予告情報の日付を過ぎていることを条件として、記録訴追8、9のポイントテーブルの特典ポイントに乗じられるポイント加算率をより小さな乗数に変動させるポイント加算率変動手段を有している。尚、このペナルティ付与手段の設定は、解除することができる。」
第5 対比・判断
1 対比
以下、本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「コインランドリー」は、本願発明の「ランドリー店舗」に相当し、引用発明の「洗濯乾燥機」は、洗濯と乾燥の機能を備えるものであるから、本願発明の「乾燥機能を少なくとも有するランドリー機器」に相当する。すると、引用発明の「コインランドリーに設置された洗濯乾燥機」は、本願発明の「ランドリー店舗内に設置され、乾燥機能を少なくとも有するランドリー機器」に相当する。
(2)引用発明の「お客様」、「スマホ」及び「制御機器」は、それぞれ本願発明の「利用者」、「携帯端末」及び「制御装置」に相当する。そして、引用発明の「お客様がスマホひとつでコインランドリーを利用するために、前記洗濯乾燥機を運転制御する制御機器」は、スマホひとつでのコインランドリーの利用のために、お客様のスマホとの通信、及びその通信結果を用いているといえるから、本願発明の「利用者の携帯端末と通信を行い、その通信結果に応じて前記ランドリー機器を運転制御する制御装置」に相当する。
(3)引用発明の「システム」は、「コインランドリー」に係るシステムであるから、本願発明の「セルフランドリーシステム」に相当する。
(4)引用発明の「スマートメダル」は、コインランドリーのサービス提供者が、お客様に対して付与する価値単位といえ、本願発明の「ポイント」に相当する。すると、引用発明の「お客様に「スマートメダル」を与え」ることは、本願発明の「ポイントをアップ」することに相当し、引用発明の「お客様が、スマホアプリ「Smart Laundry」を利用することや、洗濯終了から3分以内に洗濯物を取り出すこと」は、本願発明の「ポイントアップ条件を満たした場合」に相当する。さらに、引用発明の「お客様のステイタスを上げ」ることは、本願発明の「ユーザのランクアップを行」うことに相当し、引用発明の「該「スマートメダル」の貯まった枚数に応じてお客様のステイタスを上げ」ることは、本願発明の「前記ポイントがランクアップ値に達した場合にユーザのランクアップを行」うことに相当する。
したがって、引用発明の「前記制御機器は、お客様が、スマホアプリ「Smart Laundry」を利用することや、洗濯終了から3分以内に洗濯物を取り出すことにより、お客様に「スマートメダル」を与え、該「スマートメダル」の貯まった枚数に応じてお客様のステイタスを上げ、利用時に使えるチケットを与えたり、利用できるサービスを広げるように処理を実行する」ことは、本願発明の「前記制御装置は、ポイントアップ条件を満たした場合にポイントをアップし、ポイントダウン条件を満たした場合に前記ポイントをダウンさせ、前記ポイントがランクアップ値に達した場合にユーザのランクアップを行い、前記ポイントがランクダウン値に減少した場合にユーザのランクダウンを行う」ことと、制御装置は、ポイントアップ条件を満たした場合にポイントをアップし、前記ポイントがランクアップ値に達した場合にユーザのランクアップを行う点において共通する。
(5)そうすると、本願発明と引用発明とは、
「ランドリー店舗内に設置され、乾燥機能を少なくとも有するランドリー機器と、
利用者の携帯端末と通信を行い、その通信結果に応じて前記ランドリー機器を運転制御する制御装置とを備えたセルフランドリーシステムであって、
前記制御装置は、
ポイントアップ条件を満たした場合にポイントをアップし、
前記ポイントがランクアップ値に達した場合にユーザのランクアップを行う、
セルフランドリーシステム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
本願発明は、「ポイントダウン条件を満たした場合に前記ポイントをダウンさせ」、「前記ポイントがランクダウン値に減少した場合にユーザのランクダウンを行う」のに対し、引用発明は、そのようなポイントのダウン、及びユーザのランクダウンを行っているか明らかでない点。
2 判断
(1)相違点について
以下、<相違点>について検討する。
ア 引用文献1には、【経営者様へのメリット】として、「会員ステイタス制によるお得意様の獲得や洗濯物放置による機会損失の抑制などのほか、経営者様にとっても嬉しい機能が盛り込まれています。」と掲載されているから、引用発明は、洗濯や乾燥の終了後に洗濯物が放置されることを抑制することを課題の一つとするものであり、該課題を「スマートメダル」を与えることにより解決するものである。
そして、コインランドリーシステムにおいて、洗濯物の放置があった場合に、ユーザにペナルティーを科すことは、この出願の優先日前から周知の事項である(例えば、引用文献2の前記第4 2(1)、(2)、引用文献3の前記第4 3(1)~(4)参照。以下、「周知の事項1」という。)。
また、種々の分野で用いられているポイントサービスにおいて、サービス提供者にとって望ましい行動をとったユーザのポイント数を増加させるとともに、サービス提供者が望まない行動をとったユーザのポイント数を減少させることも、この出願の優先日前から周知の事項である(例えば、引用文献4の前記第4 4(1)~(4)、引用文献5の前記第4 5(1)、(2)の他、特開2016-170771号公報の段落【0107】、【0112】、特開2006-178738号公報の段落【0010】、【0013】、【0041】、【0046】参照。以下、「周知の事項2」という。)。
イ そうすると、洗濯や乾燥の終了後に洗濯物が放置されることを抑制することを課題として、「スマートメダル」を与える引用発明において、前記周知の事項1及び前記周知の事項2を知る当業者であれば、前記課題を改善すべく、洗濯物の放置を行ったお客様に対し、ペナルティーとして「スマートメダル」の枚数を減少させることは、容易に想到し得たものである。また、引用発明は、「スマートメダル」の貯まった枚数に応じてお客様のステイタスが決まるものと解されるから、「スマートメダル」の枚数の減少により、お客様のステイタスが下がることは明らかである。
ウ そうすると、引用発明において、前記周知の事項1及び前記周知の事項2に基いて、本願発明の前記相違点に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、令和7年10月20日に提出した意見書(以下、単に「意見書」という。)の「2.請求項1について」の「A 容易の容易」において、「この相違点1に対して、周知事項1と周知事項2を同時に適用することになります。このようなことは、創作の上に創作をさらに重ねることになり、いわゆる容易の容易に該当します。」と主張している。
しかしながら、引用発明の課題について、技術水準として知られている種々の周知の事項等を総合的に勘案して、周知の事項と同程度のさらなる改善を図ることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないものである。
具体的には、引用発明は、前記(1)アに示したように、洗濯や乾燥の終了後に洗濯物が放置されることを抑制することを課題とし、該課題を「スマートメダル」を与えることにより解決するものであるから、「スマートメダル」という報酬により、洗濯物を3分以内に取り出すというお客様の行動を誘導するものといえる。そして、コインランドリーシステムにおいて、洗濯物の放置にペナルティー(罰則)を科すことが、前記周知の事項1であることを勘案すると、引用発明において、ポイントサービス一般の技術水準である前記周知の事項2(つまり、報酬による行動の誘導と罰則による行動の抑制をともに行うこと)を適用する動機付けは十分にあるといえる。
以上によると、引用発明において、前記周知の事項1及び前記周知の事項2に基いて、本願発明の前記相違点に係る発明特定事項とすることは、引用発明の前記課題について、技術水準として知られている前記周知の事項1及び前記周知の事項2を総合的に勘案して、周知の事項2と同程度のさらなる改善を図るものといえ、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないものである。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。
イ 請求人は、意見書の「2.請求項1について」の「B 周知事項1」において、「周知事項1の2文献はいずれも、追加料金を取るというものです。・・・。このような周知事項1を適用しても本願の請求項1にはなりません。・・・。そして、引用文献2及び引用文献3の追加料金を取るという構成にすることも、引用文献1の技術においても全く問題がないどころか、むしろ自然であると思料いたします。」と主張している。
しかしながら、仮に、引用発明において、前記周知の事項1に基いて、洗濯物を放置した場合に追加料金を取ることが、当業者が容易に想到し得たものだとしても、そのことをもって、引用発明において、本願発明の前記相違点に係る発明特定事項とすることが、当業者が容易に想到できたものでないとはいえない。ここで、ユーザの行動に対するペナルティー(罰則)の科し方としては、追加料金の請求、ポイントの減算、サービスの制限等、種々のものが考えられる(例えば、前記特開2016-170771号公報の段落【0112】参照。)が、引用発明は、「洗濯終了から3分以内に洗濯物を取り出すことにより、お客様に「スマートメダル」を与え」るものであって、前記アに示したように、「スマートメダル」という報酬により、洗濯物を3分以内に取り出すというお客様の行動を誘導するものであるから、逆に、洗濯物を長時間取り出さなかったとき、つまり、お客様が洗濯物を放置したときに、該「スマートメダル」(報酬)を減少させるという、ペナルティー(罰則)を科すことは、前記周知の事項1及び前記周知の事項2に基いて、当業者が容易に想到し得た事項である。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。
ウ 請求人は、意見書の「2.請求項1について」の「C 周知事項2」において、「周知事項2の事項は、コインランドリの技術とは全く関係がございません。技術分野が全く異なっております。そのような技術分野の技術的事項をコインランドリの通常の当業者が知っているということはないと思料いたします。万が一、知っていたとしても、動機付けは無いものと思料いたします。」と主張している。
しかしながら、引用発明は、前記(1)アに示したように、洗濯や乾燥の終了後に洗濯物が放置されることを抑制することを課題とし、該課題を「スマートメダル」を与えることにより解決するものであるから、「スマートメダル」という価値単位を用いたポイントサービスを利用したものといえる。そうすると、引用発明に係る当業者であれば、引用発明が利用するポイントサービスに係る技術水準も当然に把握しているものと解され、周知の事項2が、引用発明と全く異なる技術分野のものとはいえない。
さらに、引用発明に前記周知の事項2を適用する動機付けについては、前記アに示したとおりである。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。
エ 請求人は、意見書の「2.請求項1について」の「C 周知事項2」において、「また、引用文献4及び引用文献5も単にポイントのダウンのみで、ランクダウンについては記載がいないものと思料いたします。そのため、万一、この周知事項2を引用文献1に適用できるとしても、ランクダウンについては、前述の創作の上に創作をしなければならないものと確信します。」と主張している。
しかしながら、前記(1)イに示したように、引用発明は、「スマートメダル」の貯まった枚数に応じてお客様のステイタスが決まるものと解されるから、引用発明に前記周知の事項2を適用することにより、「スマートメダル」の枚数が減少すれば、お客様のステイタスを下げることも自然と想到されるものである。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。
(3)本願発明の作用効果について
本願発明の作用効果は、引用発明、前記周知の事項1及び前記周知の事項2から当業者が予測できる範囲のものである。
3 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、前記周知の事項1及び前記周知の事項2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-012348