特許拒絶査定不服審判
2024-010292
コレステリック液晶表示装置およびコレステリック液晶表示装置の画質ムラを改善する駆動方法
- 審判番号
- 2024-010292
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-196058
- 請求日
- 2024年06月20日
- 審決日
- 2025年08月27日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アイリス オプトロニクス カンパニー リミテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人東海特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 吉野 三寛
- 審判官 小澤 尚由
- 分類
- P18 .113-Z (G02F) / P18 .121-Z (G02F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-196058「コレステリック液晶表示装置およびコレステリック液晶表示装置の画質ムラを改善する駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔令和5年6月21日出願公開、特開2023-86121〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和4年12月8日の出願であって(パリ条約の例による優先権主張2021年12月9日、台湾)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 9月 7日付け:拒絶理由通知書
同年12月 7日 :意見書及び手続補正書の提出
令和6年 2月13日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月21日 :原査定の謄本の送達)
同年 6月20日 :審判請求書及び手続補正書の提出
2 本願発明について
(1) 本願発明の認定
本願の請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本願出願時の特許請求の範囲の請求項3に記載された、次に示す事項により特定されるとおりのものである。
<本願発明>
「複数の列回路構造および複数の行回路構造からなるコレステリック液晶パネルと、
前記コレステリック液晶パネルにカップリングされた液晶駆動ユニットと、を含み、前記液晶駆動ユニットは、制御モジュールをさらに含み、前記液晶駆動ユニットは、前記複数の列回路構造に列駆動電圧を出力し、走査方式で前記複数の行回路構造に行駆動電圧を順次出力し、前記複数の行回路構造の1つの行回路構造に走査すると1走査単位時間がかかり、前記行駆動電圧は、選択電圧と非選択電圧とを含み、前記液晶駆動ユニットが前記複数の行回路構造を走査した後、前記制御モジュールは、前記非選択電圧で前記複数の行回路構造に補正時間を一括して印加し、前記補正時間は走査単位時間の18倍を超えることを特徴とするコレステリック液晶表示装置。」
(2) 本願発明の分説
検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成X並びに構成A、構成B1a~B1c及び構成B2に分説する。
<本願発明の分説>
A 複数の列回路構造および複数の行回路構造からなるコレステリック液晶パネルと、前記コレステリック液晶パネルにカップリングされた液晶駆動ユニットと、を含み、
B1a 前記液晶駆動ユニットは、制御モジュールをさらに含み、
B2 前記液晶駆動ユニットは、前記複数の列回路構造に列駆動電圧を出力し、走査方式で前記複数の行回路構造に行駆動電圧を順次出力し、前記複数の行回路構造の1つの行回路構造に走査すると1走査単位時間がかかり、
前記行駆動電圧は、選択電圧と非選択電圧とを含み、
B1b 前記液晶駆動ユニットが前記複数の行回路構造を走査した後、前記制御モジュールは、前記非選択電圧で前記複数の行回路構造に補正時間を一括して印加し、
B1c 前記補正時間は走査単位時間の18倍を超えることを特徴とする
X コレステリック液晶表示装置。
(3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、概してコレステリック液晶表示装置に関し、より詳細にはコレステリック液晶表示装置およびコレステリック液晶表示装置の画質ムラを改善する駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステリック液晶表示装置は、縦横に交錯する複数の列回路構造(clumn)と複数の行回路構造(row)からなる画素マトリックス(Passive Matrix)であるコレステリック液晶表示パネルを有する。
【0003】
一般的には、複数の列回路構造に列駆動電圧を出力し、走査方式で前記複数の行回路構造に行駆動電圧を順次出力する駆動チップを採用し、行駆動電圧は、選択電圧(select)と非選択電圧(non-select)とを含む。
【0004】
1つの行回路構造を走査すると1走査単位時間(Row Scan Time)がかかり、すべての行回路構造を走査すると1バッチ走査時間がかかり、バッチ走査時間は各走査単位時間の合計である。選択電圧で1つの行回路構造を走査することによって消費される走査単位時間を選択単位時間(Tselect)と呼び、非選択電圧で1つの行回路構造を走査することによって消費される走査単位時間を非選択単位時間(Tnon-select)と呼ぶ。
【0005】
図1を参照する。図1は本発明のコレステリック液晶表示装置01の概略構造図である。図1に示す従来技術のコレステリック液晶表示パネル01は、M個の行回路構造02およびN個の列回路構造04を有し、N個の列回路構造04はCol1、・・・、Col(N)で表され、M個の行回路構造02は、それぞれRow1、Row2、・・・、Row(M―1)、Row(M)で表され、行駆動電圧の選択電圧は、Row1、Row2からRow(M-1)、Row(M)まで順次走査される。
【0006】
さらに表1を参照する。表1は、各行回路構造02のバッチ走査時間。図1の構造によれば、1バッチ走査時間が終了した後、各行回路構造02のバッチ走査時間が表1に示される。
【0007】
【表1】
[図:0001431731000001.jpg]
【0008】
表から分かるように、行回路構造02は、Row1、Row2からRow(M―1)、Row(M)の順となり、選択電圧(表中のTselect)で走査した後の非選択電圧積算時間はそれぞれ:(M-1)*Tnon-select、(M-2)*Tnon-select、・・・、1*Tnon-select、0であり、それは順次短縮された時間である。
【0009】
特に、順次走査の後、列回路構造02の順序が後ろであるほど、選択電圧で走査した後の非選択電圧積算時間が短くなることを見やすくために、下線を引いて示す。また、非選択電圧積算時間が短いほど、液晶に蓄積された電圧エネルギーが異なるため、液晶の配向が一致せず、液晶の反射率が高くなり、視覚的に輝度が高く見えるため、映像が不均一に見える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、コレステリック液晶表示装置及びコレステリック液晶表示装置の画質ムラを改善する駆動方法を開発し、上記の問題を解決することは、当業者が積極的に解決したい問題の1つとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、コレステリック液晶表示装置全体の画面輝度を比較的一致させ、さらに画面をより均一にすることができるコレステリック液晶表示装置およびコレステリック液晶表示装置の画質ムラを改善する駆動方法を提供することにある。
【0012】
上記の利点の少なくとも1つまたは他の利点を達成するために、本発明の一実施形態は、コレステリック液晶表示パネルおよび液晶駆動ユニットを含むコレステロリック液晶表示装置を提案する。
…(中略)…
【0018】
コレステリック液晶パネルは、複数の列回路構造および複数の行回路構造からなる。液晶駆動ユニットは、コレステリック液晶パネルにカップリングされ、液晶駆動ユニットは、制御モジュールをさらに含む。
【0019】
液晶駆動ユニットは、複数の列回路構造に列駆動電圧を出力し、走査方式で複数の行回路構造に行駆動電圧を順次出力し、1つの行回路構造に走査すると1走査単位時間がかかり、前記行駆動電圧は、選択電圧と非選択電圧とを含む。
【0020】
また、液晶駆動ユニットが複数の行回路構造を走査した後、制御モジュールは、非選択電圧で複数の行回路構造に補正時間を一括して印加することによって、画面をより均一にする。前記補正時間は走査単位時間の18倍を超える。
【0021】
補足すると、前記コレステリック液晶表示パネルは、パッシブマトリクス型であってもよい。」
「【0044】
補足すると、液晶駆動ユニット34が複数の行回路構造44を走査した後、すなわち、最後の行回路構造44が選択電圧によって走査された後、制御モジュール5402は、非選択電圧で複数の行回路構造64に補正時間を一括して印加し、すなわち、表2のTnon-select-addは18*Tnon-selectより大きく、すべての液晶が相転移するのに十分なエネルギーを得ることができ、画面をより均一にする。」
「【0050】
図5を参照する。図5は、補正時間が反射率に与える影響の概略図である。図中のX軸座標はコレステリック液晶表示パネルを行回路構造の走査方向に合わせてコレステリック液晶表示パネルを10分割した領域であり、図2と図3を参照すると上から下に10分割した領域である。図中のY軸座標は反射率であり反射率が高いほど画面が明るくなり、理想的な曲線は平らなほどが良く、傾くほど明暗の差が大きくなり、すなわち画面にムラ現象が生じる。」
「【図5】
[図:0001431731000002.jpg]
」
「【0051】
図中の3つの補正時間の反射効果は、それぞれ補正時間が0倍の非選択単位時間、20倍の非選択単位時間および50倍の非選択単位時間、すなわち補正時間Tnon-select-add=0*Tnon-select-add、20*Tnon-select-addおよび50*Tnon-select-addであり、0倍の非選択単位時間は既知の未改良状態である。実験と調査を繰り返した結果、18倍以上で画面輝度の均一さはすでに消費者の視覚が許容範囲に達したため、例えば図中の20倍の非選択単位時間と50倍の非選択単位時間、本発明は権利範囲を実験で得られた18倍の非選択単位時間と定義するが、非選択単位時間と選択単位時間は一般的に走査単位時間であるため、18倍を超える走査単位時間と定義することもできる。
【0052】
要約すると、本発明が提供しするコレステリック液晶表示装置10は、降圧信号を生成するように液晶駆動ユニット14を設定することによって、コレステリック液晶表示装置10のクロストーク現象を改善し、選択されない画素が表示状態になることを防止し、コレステリック液晶表示装置10の表示性能を確保する。」
3 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由1(新規性欠如)及び理由2(進歩性欠如)の概要は、次のとおりである。
理由1(新規性欠如) 本願発明は、その優先日前に発行された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2(進歩性欠如) 本願発明は、その優先日前に発行された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2005-257999号公報
4 引用文献1の記載及び引用発明の認定
(1) 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である引用文献1(特開2005-257999号公報)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(3)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
「【0023】
本発明は、プレーナーリセット法による書換えを採用している。プレーナーリセット法による書換えは、フォーカルコニック法に比較して、パネルの電極間距離(セルギャップ)や、配向膜の表面状態の影響を受けにくく、表示エリアに多少このようなムラがあっても、均一な階調表示が得られる利点を有する。しかし、表示容量が大きくなり、すなわちコモン電極数およびセグメント電極数が多くなると、コモン電極列の位置により反射率-印加電圧の表示特性が異なり、これにより表示ムラが生じる。特にこの表示ムラは、高速書換え時に顕著に生じる。
【0024】
また、プレーナーリセットにすると、液晶の配向制御、基板間ギャップバラツキなどの液晶表示素子の特性の厳密な制御が必要でなくなる。
【0025】
また、本発明によれば、全面一括非選択維持期間を設けたので、表示特性がどの画素についても同じになり、表示ムラがなくなる。これにより、表示の均一性,高速書換え性を有する液晶が容易に得られる。
【0026】
全面一括非選択維持期間は、5~200msecとするのが好ましい。5msec以下では充分でない。また、200msec以上では、書換え速度に影響する。例えば、コモン電極が320本の表示であれば、典型的な例として、下記の計算式で導かれる。
【0027】
20msec(プレーナーリセット期間:50Hz1周期)+2msec(コモン選択波形の長さ)×320(500Hz320周期)
+xmsec=20+640+xmsec(0.88秒)
x=200msec 660msecが880msecになる
500msec 660msecが1160msecになる
実用的には1秒前後以下の書換え時間が要求されるが、本発明はこれを実現することができる。
…(中略)…
【0032】
前記第2の非選択信号と前記非選択信号がともに電圧パルスであって、前記第2の非選択信号の周波数が前記非選択信号の周波数以上,5Hz以下であることが好ましい。第2の非選択信号が、非選択信号の周波数より小さいと、消費電流が大きくなるので望ましくない。5Hz以上では、全面一括非選択期間が長くなり(200msecを超える)書換え時間が長くなる。
…(中略)…
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、書換え期間の後に、全面一括非選択期間を設ける駆動方法により、表示ムラのない表示が可能となり、さらには全面においてコントラストが良好な均一な階調表示が可能となる。また本発明の液晶表示装置によれば、とりわけ大面積高精細の表示を行う場合、短時間で書換えを行っても均一な階調表示を実現することができる。」
「【実施例1】
【0041】
図7は、本発明が適用されるコレステリック液晶表示装置の構成を示す概略図である。コレステリック液晶表示装置は、コレステリック液晶を互いに対向状態で交差する複数のコモン電極COM1,COM2,…と複数のセグメント電極SEG1,SEG2,…とでマトリクス駆動するコレステリック液晶表示素子10と、本発明の駆動方法で表示内容の書き込みを行う機構とを具備したものである。この機構は、コモンドライバ12,セグメントドライバ14,コントローラ16,電源18により構成されている。」
「【図7】
[図:0001431731000003.jpg]
」
「【0042】
コレステリック液晶表示素子10のコモン電極はコモンドライバ12の出力端子に接続され、セグメント電極はセグメントドライバ14の出力端子に接続されている。コントローラ16から与えられたデータに基づき、コモンドライバ12からコモン電極COM1,COM2,…に、セグメントドライバ14からセグメント電極SEG1,SEG2,…にそれぞれ電圧が印加される。液晶表示素子10の画素にはそれら電圧の差が印加される。」
「【実施例2】
【0054】
コレステリック液晶表示素子10として、0.25gのメルク社製ネマティック液晶MDA-02-1174と、0.75gのメルク社製コレステリック液晶MDA-03-162とを混合した液晶を使用して、図8に示すコレステリック液晶表示素子を作成した。液晶層の厚みは4.5μmである。図8中の配向膜4は、垂直配向膜である。また、観察面とは逆の面には、青色の印刷を施した。」
「【図8】
[図:0001431731000004.jpg]
」
「【0055】
得られた液晶表示素子(コモン電極数640,セグメント電極数480)に、実際のマトリクス駆動を想定し、図9に示す電圧波形を順次印加し、表示画素のエリアの視感反射率を測定した。図9は、図面を簡単にするために4行×3列の液晶表示素子のコモン電極列およびセグメント電極列に印加する電圧波形を示す。図10は、電極間に印加される合成波形の一例を示す。」
「【図9】
[図:0001431731000005.jpg]
」
「【図10】
[図:0001431731000006.jpg]
」
「【0056】
リセット期間には、全てのコモン電極にコモンリセット信号を、全てのセグメント電極にデータリセット信号を印加して、これらの信号の差からなるリセット信号を全ての画素を構成する液晶に印加して、全画素をプレーナー状態にするリセットする。
【0057】
書換え期間には、あるコモン電極をコモン選択電極に選び、その他のコモン電極をコモン非選択電極に選び、コモン選択電極にコモン選択信号を印加し、同時にコモン非選択電極にコモン非選択信号を印加し、コモン選択信号に同期してセグメント電極にデータ信号を印加し、コモン選択信号とデータ信号の差からなる選択信号をコモン選択電極上の画素を構成する液晶に印加して表示状態を選択し、またコモン非選択信号とデータ信号との差からなる非選択信号をコモン非選択信号上の画素を構成する液晶に印加する書換え動作を行い、その後次のコモン電極をコモン選択電極に選んで書換え動作を行い、この書換え動作を繰り返すことで全ての画素を構成する液晶の表示状態を書換える。
【0058】
全面一括非選択期間には、全てのコモン電極に第2のコモン非選択信号を、全てのセグメント電極に第2のデータ信号を印加して、これらの信号の差からなる第2の非選択信号を全ての画素を構成する液晶に印加して、全画素を非選択状態に維持する。
【0059】
以上の駆動方法において、図10に示す電圧波形では、以下のような駆動条件に設定した。
【0060】
プレーナーリセット条件:35V,20msec(50Hz)1周期
書換え条件:
印加した電圧波形の周波数は、500Hz,640周期
電圧の設定は、:フォーカルコニック用12V(V2に相当)
プレーナー用:23V(V0に相当)
非選択波形:5.5V((V0-V2)/2に相当)
全面一括非選択条件:5.5V,100Hz,0~30周期(0~300msec)可変
書換え期間の非選択信号と全面一括非選択期間の第2の非選択信号の電圧とは、同じ5.5Vとしている。
【0061】
書換え期間終了後、全面一括非選択波形を印加した時間と、液晶表示素子の640本目コモン電極近傍の画素の光学特性の関係を図11,図12に示す。図11は視感反射率を、図12はコントラストを示す。」
「【図11】
[図:0001431731000007.jpg]
」
「【図12】
[図:0001431731000008.jpg]
」
「【0062】
選択波形が印加された後の全面一括非選択期間が長くなると、
・プレーナーの反射率は、19%でありほとんど変化しない。
・フォーカルコニックの反射率が低下する。飽和値は6.3%である。
・結果として、コントラストが向上する。
16階調を行おうとすると、一つの階調表示を行ったときに、表示エリア全体の反射率のばらつきを、
(プレーナー反射率-フォーカルコニック反射率)/(16-1)
以内に抑えることが必要であるとすると、このパネルの場合には、
6.3+(19-6.3)/15=7.1(%)
であり、フォーカルコニックの反射率を7.1% 以下にまで抑えなくてはならない。
【0063】
図10に示す電圧波形を印加して、COM No.とフォーカルコニック反射率の関係を調べた結果を図13に示す。図中の時間(msec)は、最後のCOM電極(COM640)に選択波形が印加された後、続いて印加した全面一括非選択電圧の印加時間を示している(0msecは、比較例である)。」
「【図13】
[図:0001431731000009.jpg]
」
「【0064】
図13より、選択波形が印加された後に、全面一括非選択波形を約10msec印加することによって、プレーナーの反射率を7.1%以下にすることができる。すなわち、全面一括非選択電圧を10msec追加することによって、表示エリア全面に均一な階調表示を得ることが可能であると言える。
【0065】
本実施例では、コモンドライバおよびセグメントドライバにSTNドライバICを使用した実際の液晶表示装置を考慮した場合、プレーナーリセット期間と、書換え期間の間で、図14に示す電圧切換えスイッチ20を設け、リセット期間と書換え期間で印加する電圧パルスの最大電圧を切換えるのがよい。図14において、プレーナーリセット側の電圧を35Vとし、書換え側の電圧を23Vと設定する。V0=23Vのとき,V1=17.5V,V2=12V,V3=11V,V4=5.5V,V5=0Vとなるように、抵抗R1,R2,R3,R4,R5を設定する。STNドライバICを用いたコモンドライバおよびセグメントドライバは、共に0Vを含む4水準の電圧が出力できる。プレーナーリセットには、コモン側もセグメント側も出力はV0とV5の2水準のみである。
【0066】
なお、電圧切換えスイッチ20は、図7に示したコントローラ16により制御される。
【0067】
本実施例では、書換え期間の非選択信号と全面一括非選択期間の第2の非選択信号の電圧が同じである5.5Vとしたが、全面一括非選択期間を設けることによって、他の表示特性が劣化しない。同様の効果があれば、第2の非選択信号の電圧,周波数やその入力のタイミングなどは、制限されない。」
(2) 引用文献1の記載より把握できる事項の認定
図10より、次の事項(以下「認定事項1」という。)を把握できる。
<認定事項1>
「全面一括非選択条件は、5.5V,100Hz,10周期であること。」
(3) 引用発明の認定
前記(1)に摘記した引用文献1の記載、及び前記(2)の引用文献1の記載より把握できる事項によれば、引用文献1には、実施例1(【図7】)に係るコレステリック液晶表示装置、及び実施例2(【図10】)に係るにコレステリック液晶表示装置の駆動方法ついて、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「コレステリック液晶表示装置であって、(【0041】)
コレステリック液晶を互いに対向状態で交差する複数のコモン電極COM1,COM2,…と複数のセグメント電極SEG1,SEG2,…とでマトリクス駆動するコレステリック液晶表示素子10と、表示内容の書き込みを行う機構とを具備し、
表示内容の書き込みを行う機構は、コモンドライバ12,セグメントドライバ14,コントローラ16,電源18により構成され、(【0041】)
コレステリック液晶表示素子10のコモン電極はコモンドライバ12の出力端子に接続され、セグメント電極はセグメントドライバ14の出力端子に接続され、コントローラ16から与えられたデータに基づき、コモンドライバ12からコモン電極COM1,COM2,…に、セグメントドライバ14からセグメント電極SEG1,SEG2,…にそれぞれ電圧が印加され、液晶表示素子10の画素にはそれら電圧の差が印加されるものであり、(【0042】)
書換え期間には、あるコモン電極をコモン選択電極に選び、その他のコモン電極をコモン非選択電極に選び、コモン選択電極にコモン選択信号を印加し、同時にコモン非選択電極にコモン非選択信号を印加し、コモン選択信号に同期してセグメント電極にデータ信号を印加し、コモン選択信号とデータ信号の差からなる選択信号をコモン選択電極上の画素を構成する液晶に印加して表示状態を選択し、またコモン非選択信号とデータ信号との差からなる非選択信号をコモン非選択信号上の画素を構成する液晶に印加する書換え動作を行い、その後次のコモン電極をコモン選択電極に選んで書換え動作を行い、この書換え動作を繰り返すことで全ての画素を構成する液晶の表示状態を書換えるものであり、(【0057】)
全面一括非選択期間には、全てのコモン電極に第2のコモン非選択信号を、全てのセグメント電極に第2のデータ信号を印加して、これらの信号の差からなる第2の非選択信号を全ての画素を構成する液晶に印加して、全画素を非選択状態に維持するものであり、(【0058】)
以下のような駆動条件に設定し、(【0059】)
プレーナーリセット条件:35V,20msec(50Hz)1周期
書換え条件:
印加した電圧波形の周波数は、500Hz,640周期
電圧の設定は、:フォーカルコニック用12V(V2に相当)
プレーナー用:23V(V0に相当)
非選択波形:5.5V((V0-V2)/2に相当)
全面一括非選択条件:5.5V,100Hz,10周期(0~300msec)可変(【0060】、「認定事項1」)
書換え期間終了後、全面一括非選択波形を印加する、(【0061】)
コレステリック液晶表示装置。」
5 本願発明と引用発明の対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成Xの観点(コレステリック液晶表示装置)
構成Xは、「コレステリック液晶表示装置」に係る発明であることを特定するものである。
「コレステリック液晶表示装置」の発明である本願発明と「コレステリック液晶表示装置」の発明である引用発明は、「コレステリック液晶表示装置」の発明である点において一致する。
イ 構成Aの観点(液晶パネル及び液晶駆動ユニット)
構成Aは、複数の列回路構造および複数の行回路構造からなるコレステリック液晶パネルと、前記コレステリック液晶パネルにカップリングされた液晶駆動ユニットと、を含むことである。
(ア) 次の引用発明の欄に記載した引用発明の各構成は、それぞれ、対応する本願発明の欄に記載した次の本願発明の構成に相当する。
<引用発明> <本願発明>
コレステリック液晶表示素子10 - コレステリック液晶パネル
セグメント電極SEG ------ 列回路構造
コモン電極 ----------- 行回路構造
(イ) 引用発明における「表示内容の書き込みを行う機構」は、「コモンドライバ12,セグメントドライバ14,コントローラ16,電源18により構成され」、「表示内容の書き込みを行う」ものであるから、本願発明における「液晶駆動ユニット」に相当し、本願発明でいう「カップリングされた」ものといえることは明らかである。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Aの観点である次の点において一致する。
「複数の列回路構造および複数の行回路構造からなるコレステリック液晶パネルと、前記コレステリック液晶パネルにカップリングされた液晶駆動ユニットと、を含[む]」点。
ウ 構成B1a~B1b及びB2の観点(液晶駆動ユニット)
先に構成B2の観点を検討し、その後で構成B1a及び構成B1bについて検討する。
(ア) 構成B2(走査方式、選択電圧と非選択電圧)
構成B2は、「前記液晶駆動ユニットは、前記複数の列回路構造に列駆動電圧を出力し、走査方式で前記複数の行回路構造に行駆動電圧を順次出力し、前記複数の行回路構造の1つの行回路構造に走査すると1走査単位時間がかかり、
前記行駆動電圧は、選択電圧と非選択電圧とを含[む]」ことである。
a 引用発明においては、「表示内容の書き込みを行う機構」を構成する「セグメントドライバ14」から、「セグメント電極SEG」に「電圧が印加され」ているところ、当該電圧(以下「セグメント電圧」という。)は、本願発明における「列駆動電圧」に相当する。そうすると、引用発明における「表示内容の書き込みを行う機構」は、本願発明における「前記複数の列回路構造に列駆動電圧を出力する」との構成に相当する構成を備えているといえる。
b 引用発明においては、「コモンドライバ12」から、「コモン電極COM」に「電圧が印加され」ているところ、当該電圧(以下「コモン電圧」という。)は、本願発明における「行駆動電圧」に相当する。
そして、引用発明においては、「書換え期間には、あるコモン電極をコモン選択電極に選び、その他のコモン電極をコモン非選択電極に選び、選択信号をコモン選択電極上の画素を構成する液晶に印加して表示状態を選択し、またコモン非選択信号とデータ信号との差からなる非選択信号をコモン非選択信号上の画素を構成する液晶に印加する書換え動作を行い、その後次のコモン電極をコモン選択電極に選んで書換え動作を行い、この書換え動作を繰り返すことで全ての画素を構成する液晶の表示状態を書換え[ている]」ところ、「この書換え動作を繰り返す」構成は、本願発明でいう「走査方式」に相当し、引用発明における「書換え期間」は、本願発明における「1走査単位時間」に相当する。
そうすると、引用発明における「表示内容の書き込みを行う機構」は、本願発明における「走査方式で前記複数の行回路構造に行駆動電圧を順次出力し、前記複数の行回路構造の1つの行回路構造に走査すると1走査単位時間がかか[る]」という構成に相当する構成を備えているといえる。
c したがって、本願発明と引用発明は、構成B1a及びB1bの観点である次の点において一致する。
「前記液晶駆動ユニットは、制御モジュールをさらに含み、
前記液晶駆動ユニットが前記複数の行回路構造を走査した後、前記制御モジュールは、前記非選択電圧で前記複数の行回路構造に補正時間を一括して印加「する」」点。
d(a) 引用発明は、その「書換え期間」において、「あるコモン電極をコモン選択電極に選び、」「コモン選択電極にコモン選択信号を印加し」ているから、引用発明が本願発明でいう「行駆動電圧は、選択電圧」「を含む」ことに相当する構成を備えていることは明らかである。
(b) また、引用発明においては、「その他のコモン電極をコモン非選択電極に選び、」「同時にコモン非選択電極にコモン非選択信号を印加し」ているから、引用発明が、本願発明でいう「行駆動電圧は、」「非選択電圧」「を含む」ことに相当する構成を備えていることは明らかである。
e 以上をまとめると、本願発明と引用発明は、構成B2の観点である次の点において一致する。
「前記液晶駆動ユニットは、前記複数の列回路構造に列駆動電圧を出力し、走査方式で前記複数の行回路構造に行駆動電圧を順次出力し、前記複数の行回路構造の1つの行回路構造に走査すると1走査単位時間がかかり、
前記行駆動電圧は、選択電圧と非選択電圧とを含[む]」点。
(イ) 構成B1a~B1cの観点(制御モジュールとその動作)
構成B1aは、「前記液晶駆動ユニットは、制御モジュールをさらに含[む]」ことであり、
構成B1bは、「前記液晶駆動ユニットが前記複数の行回路構造を走査した後、前記制御モジュールは、前記非選択電圧で前記複数の行回路構造に補正時間を一括して印加[する]」ことであり、
構成B1cは、「前記補正時間は走査単位時間の18倍を超えること」である。
a 構成B1aとB1bの観点(制御モジュールと補正)
(a) 引用発明においては、「全面一括非選択期間には、全てのコモン電極に第2のコモン非選択信号を、全てのセグメント電極に第2のデータ信号を印加して、これらの信号の差からなる第2の非選択信号を全ての画素を構成する液晶に印加して、全画素を非選択状態に維持する」から、引用発明が本願発明における「前記液晶駆動ユニットは、制御モジュールをさらに含み、」「前記制御モジュールは、前記非選択電圧で前記複数の行回路構造に補正時間を一括して印加[する]」ことに相当する構成を備えることは明らかである。
(b) そして、引用発明においては、「書換え期間終了後、全面一括非選択波形を印加する」のであるから、引用発明は、本願発明における「前記非選択電圧で前記複数の行回路構造に補正時間を一括して印加[する]ことが」「前記液晶駆動ユニットが前記複数の行回路構造を走査した後」であることに相当する構成を備えているといえる。
(c) したがって、本願発明と引用発明は、構成Dの観点である次の点において一致する。
「前記液晶駆動ユニットは、制御モジュールをさらに含み、
前記液晶駆動ユニットが前記複数の行回路構造を走査した後、前記制御モジュールは、前記非選択電圧で前記複数の行回路構造に補正時間を一括して印加[する]」点。
b 構成B1cの観点(補正時間)
補正時間について、
本願発明においては、「前記補正時間は走査単位時間の18倍を超える」のに対して、
引用発明においては、「100Hz,10周期」である点において相違する。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。
ア 一致点
「複数の列回路構造および複数の行回路構造からなるコレステリック液晶パネルと、
前記コレステリック液晶パネルにカップリングされた液晶駆動ユニットと、を含み、前記液晶駆動ユニットは、制御モジュールをさらに含み、前記液晶駆動ユニットは、前記複数の列回路構造に列駆動電圧を出力し、走査方式で前記複数の行回路構造に行駆動電圧を順次出力し、前記複数の行回路構造の1つの行回路構造に走査すると1走査単位時間がかかり、前記行駆動電圧は、選択電圧と非選択電圧とを含み、前記液晶駆動ユニットが前記複数の行回路構造を走査した後、前記制御モジュールは、前記非選択電圧で前記複数の行回路構造に補正時間を一括して印加する、コレステリック液晶表示装置」の発明である点。
イ 相違点
「補正時間」について、本願発明は、「走査単位時間の18倍を超える」のに対し、引用発明は、「100Hz,10周期」である点。
6 判断
(1) 実質的な相違点でないこと
引用発明においては、全面一括非選択条件は、「100Hz,10周期」であるところ、これを時間に換算すると、100ms(=(1/100)×10×1000)となる。
他方、引用発明における「書換え条件」の「電圧波形の周波数」は500Hzであるから、「書換え期間」は、2ms(=(1/500)×1000)である。
そうすると、引用発明の「全面一括非選択期間」は、「書換え期間」の50倍であるから、本願発明の「18倍を超える」との特定事項を満たしている。
したがって、前記相違点は、実質的な相違点ではない。
(2) 請求項3の記載を善解した際の検討
ア 請求項3においては、「走査方式で複数の行回路構造に行駆動電圧を順次出力する期間と補正時間とで、印加する電圧の周波数が同じであること」は、特定されていないところ、当該事項が特定されているとして念のため検討しても、次のイにおいて検討するとおり、本願発明に進歩性は認められない。
イ(ア)a 引用文献1には、「前記第2の非選択信号の周波数が前記非選択信号の周波数以上,5Hz以下であることが好ましい。」(【0032】)、「同様の効果があれば、第2の非選択信号の電圧,周波数やその入力のタイミングなどは、制限されない。」(【0067】)と記載されているから、第2の非選択信号の周波数を非選択信号の周波数と同じとすることは、当業者が適宜なし得た設計事項といえる。
b そして、周波数を100Hzから500Hzに変更すると、一周期の時間が短くなるのであるから、繰り返しの周期を多くすることは自然なことといえ、周波数が5倍、すなわち周期は1/5となることに鑑みれば、10周期(100ms)であったものは50周期(100ms)となるから、相違点に係る「18倍を超える」との特定事項は満たされることとなる。
(イ) なお、引用発明は、「100Hz,0~30周期(0~300msec)可変」であり、「0~30周期」となっているが、この特定事項は、「100Hz」の場合に「0~30周期」であると理解することが自然であり、引用文献1の【0026】の「全面一括非選択維持期間は、5~200msecとするのが好ましい。」との記載からも、前記の理解は首肯できるものである。
したがって、引用発明の「全面一括非選択条件」を、500Hz,50周期(100msec)とすることに阻害要因はない。
(ウ) そして、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
(エ) 以上のとおりであるから、引用発明の「第2の非選択信号」の周波数を「非選択信号」の周波数と同じとするとともに、「全面一括非選択条件」の期間を、書換え期間の18倍(18周期)を超える時間とすることは、当業者が適宜なし得た設計事項であり、本願発明は、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
7 請求人の主張について
(1) 請求人の主張内容
引用文献1の【0054】~【0064】、【図9】~【図13】等に記載の内容から、引用文献1において全面一括で非選択電圧を印加する際の駆動周波数は100Hzに固定され、書換え期間に印加する電圧の周波数は500Hzである。
これに対して、本願明細書【0015】に「液晶駆動ユニットが複数の行回路構造を走査した後、液晶駆動ユニットは再び非選択電圧で複数の行回路構造に18倍を超える走査単位時間」とあるように、本願発明においては、非選択電圧の時間計算単位と、液晶駆動ユニットの走査単位時間は一致する。
走査方式で複数の行回路構造に行駆動電圧を順次出力する期間と補正時間とで、印加する電圧の周波数が同じであることは、引用文献1から想到し得るものではない。
(2) 請求人の主張についての検討
ア 前記6(2)アにおいて指摘したとおり、請求項3においては、「走査方式で複数の行回路構造に行駆動電圧を順次出力する期間と補正時間とで、印加する電圧の周波数が同じであること」は特定されていないから、請求人の前記主張は、請求項3の記載に基づかない主張であり、採用することはできない。
イ また、「周波数が同じ選択電圧と非選択電圧」であることが請求項3において特定されているとしても、本願発明に進歩性が認められないことは、前記6(2)において説示したとおりであるから、請求人の主張を根拠に進歩性を認めることはできない。
8 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当するため、又は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-010292