特許拒絶査定不服審判
2024-008723
グラウト材料、グラウトモルタル組成物及び硬化体
- 審判番号
- 2024-008723
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-028622
- 請求日
- 2024年05月27日
- 審決日
- 2025年09月03日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】デンカ株式会社
- 【請求人代理人】田口 昌浩
- 審判長/審判官
- 審判長 深草 祐一
- 審判官 増山 淳子
- 審判官 田口 裕健
- 分類
- P18 .113-Z (C04B) / P18 .121-Z (C04B) / P18 .575-Z (C04B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第126条第7項、特許法第159条第1項、特許法第53条第1項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023- 28622「グラウト材料、グラウトモルタル組成物及び硬化体」拒絶査定不服審判事件〔令和 6年 9月 6日出願公開、特開2024-121485〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和 5年 2月27日の出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。
令和 5年 8月 3日付け :拒絶理由通知書
9月26日 :意見書、手続補正書の提出
11月21日付け :拒絶理由通知書(最後)
令和 6年 1月26日 :意見書、手続補正書の提出
3月 6日付け :補正却下、拒絶査定
5月27日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和 6年 5月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和 6年 5月27日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容について
本件審判の請求と同時にされた令和 6年 5月27日の手続補正は、特許請求の範囲の請求項1についての補正(以下、「本件補正」という。)を含むものであって、本件補正前後の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである(下線は、本件補正の補正箇所を示す。)。
(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】
セメントと、発泡物質と、減水剤とを含有し、
前記セメントが化学成分としてMnOとTiO2とP2O5を含有し、
前記セメント中のMnOとTiO2とP2O5の合計含有量が0.05質量%以上2.0質量%以下であり、
前記セメント中のP2O5の含有量に対するMnOとTiO2の合計含有量の質量比((MnO+TiO2)/P2O5)が0.3以上15以下であり、
但し、密度2.7g/cm3以上の重量骨材を含有するものは除く、グラウト材料。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】
セメントと、発泡物質と、減水剤と、ポゾラン物質とを含有し、
前記セメントが化学成分としてMnOとTiO2とP2O5を含有し、
前記セメント中のMnOとTiO2とP2O5の合計含有量が0.05質量%以上2.0質量%以下であり、
前記セメント中のP2O5の含有量に対するMnOとTiO2の合計含有量の質量比((MnO+TiO2)/P2O5)が0.3以上15以下であり、
但し、密度2.7g/cm3以上の重量骨材を含有するもの、前記ポゾラン物質の粉末度が6,000cm2/g以上であるもの、及び、カオリナイト焼成物を含有するものは除く、グラウト材料。」
2 本件補正の目的について
本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項において、グラウト材料について、ポゾラン物質を含有することを特定し、前記ポゾラン物質の粉末度が6,000cm2/g以上であるもの、及び、カオリナイト焼成物を含有するものは除く、と特定することで、グラウト材料が含有する物質を限定する補正を含むものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることは明らかであるから、本件補正は特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とすることを含むものである。
3 本件補正の独立特許要件について
上記2のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とすることを含むものであるから、本件補正が適法にされたものであるというためには、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定(独立特許要件)に適合することが必要である。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。
(1)引用文献及びその記載事項
ア 引用文献
引用文献1:特開2021-155310号公報
引用文献2:「セメントの常識」、一般社団法人セメント協会、2019年4月発行、第19~20ページ
イ 引用文献の記載事項
(ア)引用文献1について
引用文献1には、次の事項が記載されている。
「【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0035】
セメント:
普通ポルトランドセメント
早強ポルトランドセメント
非晶質アルミノシリケート:カオリナイト焼成物
高炉スラグ1:ブレーン比表面積4000cm3/g
高炉スラグ2:ブレーン比表面積8000cm3/g
減水剤:
ナフタレンスルホン酸系減水剤
ポリカルボン酸系減水剤
リグニンスルホン酸系減水剤
膨張材:生石灰系膨張材
発泡剤:アルミニウム粉末
消泡剤:シリコーン系消泡剤
細骨材:石灰石砂(粒径2.5mm以下含有率95質量%以上)
【0036】
[グラウトの作製]
セメント、非晶質アルミノシリケート及び高炉スラグからなる結合材100質量部に対して、各種材料を表1に示す割合とし、膨張材を4質量部、発泡剤を0.001質量部、消泡剤を0.01質量部、細骨材を100質量部として配合設計し、グラウト組成物を調製した。20℃環境下において、10Lの円筒容器に配合設計したグラウト組成物と水を添加し、ハンドミキサーで90秒混練してグラウトを作製した。水は結合材100質量部に対し、38質量部となるように添加した。
【0037】
[評価方法]
下記の評価方法にて、各種グラウトの評価を行った。各試験結果は表1に示す。実験は全て20℃にて行った。
・J漏斗流下値の測定
土木学会基準JSCE-F 541-2013「充てんモルタルの流動性試験方法(案)」に準拠し、J14漏斗流下時間を測定した。
・フローの測定
JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」のフロー試験に準じて流動性試験を実施した。フロー値は引抜きフロー値(0打)を測定した。
・圧縮強度
土木学会基準JSCE-G 505-2010「円柱供試体を用いたモルタル又はセメントペーストの圧縮強度試験方法(案)」に準じて、材齢7日及び28日におけるモルタル硬化体の圧縮強度を測定した。供試体の寸法は、直径50mm、高さ100mmとした。なお、比較例3及び4については、練り上げ後のグラウト時の性状(J14漏斗の流下速度、フロー値、材料分離等)が良好ではなかったため測定しなかった。
・耐塩性試験
直径50mm、高さ100mmの供試体を作成し、脱型後28日間水中養生した後、10質量%の塩化ナトリウム水溶液に浸漬させた。浸漬期間4週及び8週の供試体を割裂後、割裂面にフルオレセインナトリウム水溶液及び硝酸銀水溶液を噴霧し、表面から呈色していない部分までの距離を測定した。なお、比較例3及び4については、練り上げ後のグラウト時の性状(J14漏斗の流下速度、フロー値、材料分離等)が良好ではなかったため測定しなかった。
・不分離性試験
混練したグラウトを円筒容器の中で1分間静置し、そのときの状況を目視により確認して分離状況を評価した。円筒容器の底に骨材が沈下したものを×、材料分離(ブリーディング)が発生しなかったものを○として評価した。
【0038】
【表1】
[図:0001428734000001.jpg]
」
(イ)引用文献2について
引用文献2には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001428734000002.jpg]
表1-9 各種セメントの化学分析結果 [JIS R 5204:2002、JIS R 5202:2015]
[図:0001428734000003.jpg]
」(19~20頁)
(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)イ(ア)(【0036】)によれば、セメント、非晶質アルミノシリケート及び高炉スラグからなる結合材100質量部に対して、各種材料を表1に示す割合とし、膨張材を4質量部、発泡剤を0.001質量部、消泡剤を0.01質量部、細骨材を100質量部として配合設計し、グラウト組成物を調製したことが記載されており、同(ア)(【0035】)によれば、高炉スラグ1はブレーン比表面積4000cm3/gを有し、細骨材は石灰石砂(粒径2.5mm以下含有率95質量%以上)であることが記載されている。
そして、表1には、比較例2として、普通ポルトランドセメントを20質量部、早強ポルトランドセメントを30質量部、高炉スラグ1を50質量部、ナフタレンスルホン酸系減水剤0.5質量部を添加したことが記載されている。
してみれば、比較例2に着目して整理すると、引用文献1には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「引用発明1」という。)。
「普通ポルトランドセメントを20質量部、早強ポルトランドセメントを30質量部、ブレーン比表面積4000cm3/gである高炉スラグ1を50質量部、ナフタレンスルホン酸系減水剤を0.5質量部、膨張剤を4質量部、発泡剤を0.001質量部、消泡剤を0.01質量部、石灰石砂(粒径2.5mm以下含有率95質量%以上)を100質量部、を配合して、調製したグラウト組成物。」
(3)本件補正発明と引用発明1との対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「普通ポルトランドセメント」、「早強ポルトランドセメント」は、本件補正発明の「セメント」に相当する。
引用発明1の「発泡剤」、「ナフタレンスルホン酸系減水剤」、「グラウト組成物」は、それぞれ、本件補正発明の「発泡物質」、「減水剤」、「グラウト材料」に相当する。
本願明細書の【0025】には、「ポゾラン物質としては、・・・高炉水砕スラグ微粉末・・・・が挙げられ、・・・・なかでも、・・・高炉水砕スラグ微粉末の使用がより好ましい」と記載されているところ、引用発明1の「ブレーン比表面積4000cm3/gである高炉スラグ1」は、本件補正発明の「ポゾラン物質」であって、「但し、・・・前記ポゾラン物質の粉末度が6,000cm2/g以上であるもの」「は除く」に相当する。
本願明細書の【0028】、【0030】には、「本発明で使用する骨材としては、・・・石灰石骨材、石灰砂、・・・及び重量骨材等が使用可能であり」、「本発明で使用する重量骨材としては、・・・例えば、フェロニッケルスラグ、フェロ クロムスラグ、橄欖石、磁鉄鉱石、赤鉄鉱石、銅スラグ、電気炉酸化スラグ等が挙げられる」と記載されている。そうすると、引用発明1の「石灰石砂(粒径2.5mm以下含有率95質量%以上)」は、骨材のうち、「石灰石骨材」又は「石灰砂」に相当するものであり、「重量骨材」に相当するものではないから、引用発明1は、「密度2.7g/cm3以上の重量骨材を含有するもの」「は除く」を満たしている。
また、引用発明1は、カオリナイト焼成物を含有していないため、「カオリナイト焼成物を含有するものは除く」を満たしている。
そうすると、本件補正発明と引用発明1とは、
「セメントと、発泡物質と、減水剤と、ポゾラン物質とを含有し、
但し、密度2.7g/cm3以上の重量骨材を含有するもの、前記ポゾラン物質の粉末度が6,000cm2/g以上であるもの、及び、カオリナイト焼成物を含有するものは除く、グラウト材料。」
で一致し、以下の点で一応相違する。
<相違点1>
本件補正発明では、「前記セメントが化学成分としてMnOとTiO2とP2O5を含有し、
前記セメント中のMnOとTiO2とP2O5の合計含有量が0.05質量%以上2.0質量%以下であり、
前記セメント中のP2O5の含有量に対するMnOとTiO2の合計含有量の質量比((MnO+TiO2)/P2O5)が0.3以上15以下であり」とされているのに対し、引用発明1ではそのような特定がない点。
(4)相違点1について
上記相違点1について検討する。
上記(1)イ(イ)の表1-9によれば、引用文献2には、普通ポルトランドセメントとは、TiO2を0.28質量%、P2O5を0.25質量%、MnOを0.09質量%含有するものであることが記載されており、早強ポルトランドセメントとは、TiO2を0.27質量%、P2O5を0.22質量%、MnOを0.07質量%含有するものであることが記載されている。そうすると、引用発明1で用いられている、普通ポルトランドセメントを20質量部、早強ポルトランドセメントを30質量部からなるセメントは、TiO2を0.274(=(0.28×0.2+0.27×0.3)/0.5)質量%、P2O5を0.232(=(0.25×0.2+0.22×0.3)/0.5)質量%、MnOを0.078(=(0.09×0.2+0.07×0.3)/0.5)質量%含有するものといえる。
してみれば、そのMnOとTiO2とP2O5の合計含有量は0.584(=0.078+0.274+0.232)質量%であるし、P2O5の含有量に対するMnOとTiO2の合計含有量の質量比((MnO+TiO2)/P2O5)は、約1.52(=(0.078+0.274)/0.232)である。
そうすると、引用発明1は、本件補正発明の「前記セメントが化学成分としてMnOとTiO2とP2O5を含有し、
前記セメント中のMnOとTiO2とP2O5の合計含有量が0.05質量%以上2.0質量%以下であり、
前記セメント中のP2O5の含有量に対するMnOとTiO2の合計含有量の質量比((MnO+TiO2)/P2O5)が0.3以上15以下であり」を満たす。
仮に、普通ポルトランドセメントや早強ポルトランドセメントの成分組成に若干の測定誤差や組成のずれ等があったとしても、引用発明1は、本件補正発明で特定されるかなり広い範囲の中に十分に入る組成を有するといえる。
したがって、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。
してみれば、本件補正発明は、引用発明1と相違するところがなく、引用文献1に記載された発明である。
よって、本件補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない発明であって、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(5)補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
したがって、本件補正については、前記 [補正却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和 6年 5月27日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和5年 9月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(第2の1(1)参照)。
2 原査定における拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、令和 5年11月21日付け拒絶理由通知書に記載した理由1を含み、理由1は、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する、というものである。
引用文献3:特開2004-345898号公報
引用文献2:「セメントの常識」、一般社団法人セメント協会、2019年4月発行、第19~20ページ
引用文献4:笠井芳夫、「コンクリート総覧」、第1版、技術書院、1998年6月10日、第218~220ページ
3 引用文献について
(1)引用文献の記載事項
ア 引用文献3の記載事項
引用文献3には、以下の事項が記載されている。
「【0013】本発明での細骨材としては、珪砂、石灰石砂、高炉スラグ細骨材等のうちの一種または二種以上を使用することができる。中でも、経済性の面から高炉スラグ細骨材の使用がより好ましい。」
「【0020】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0021】実施例1セメント47部、高炉スラグ微粉末13部、膨張材7部、無機質粉末33部からなるセメント系無機粉体に対して、細骨材67部、減水剤0.08部、発泡剤0.003部、増粘剤0.02部、消泡剤0.05部、再乳化形粉末樹脂1部、凝結調整剤0.1部のグラウト組成物に、グラウト組成物100部に対して20~23部の水とを混合してグラウト材を調製した。
・・・
【0023】<使用材料>セメント:市販普通ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末:実施例1はブレーン粉末度6000cm2/g、実施例2は8000cm2/g、膨張材:市販アウイン系、無機質粉末:ブレーン粉末度4500cm2/gの石灰石微粉末、細骨材:最大寸法1.2mmのスラグ細骨材、減水剤:市販ポリカルボン酸系粉末減水剤、発泡剤:市販アルミニウム粉末、増粘剤:市販セルロースエーテル、消泡剤:市販シリコーン系粉末消泡剤、再乳化形粉末樹脂:市販酢酸ビニル-バーサチック酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体、凝結調整剤:市販工業用炭酸リチウム、収縮低減剤:市販グリコール系固体収縮低減剤、有機短繊維:市販ポリプロピレン繊維、繊維長6mm」
イ 引用文献4の記載事項
引用文献4には、以下の事項が記載されている。
「
[図:0001428734000004.jpg]
・・・
[図:0001428734000005.jpg]
」(218-219頁)
(2)引用文献3に記載された発明
上記(1)ア(【0021】)によれば、実施例1として、セメント、高炉スラグ微粉末、膨張材、無機質粉末からなるセメント系無機粉体に対して、細骨材、減水剤、発泡剤、増粘剤、消泡剤、再乳化形粉末樹脂、凝結調整剤からなるグラウト組成物に、水を混合してグラウト材を調製したことが記載されており、同ア(【0023】)によれば、セメントは市販普通ポルトランドセメントであり、細骨材はスラグ細骨材である。
そうすると、引用文献3には、以下の発明が記載されているといえる。
「市販普通ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、膨張材、無機質粉末からなるセメント系無機粉体に対して、スラグ細骨材、減水剤、発泡剤、増粘剤、消泡剤、再乳化形粉末樹脂、凝結調整剤に水を添加して調製したグラウト材。」(以下、「引用発明3」という。)
4 本願発明について
(1)本願発明と引用発明3の対比
本願発明と引用発明3とを対比する。
引用発明3の「市販普通ポルトランドセメント」、「発泡剤」、「グラウト材」は、それぞれ、本願発明の「セメント」、「発泡物質」、「グラウト材料」に相当する。
してみれば、本願発明と引用発明3は
「セメントと、発泡物質と、減水剤とを含有する、グラウト材料。」で一致し、以下の点で一応相違する。
<相違点2>
本願発明では、
「前記セメントが化学成分としてMnOとTiO2とP2O5を含有し、
前記セメント中のMnOとTiO2とP2O5の合計含有量が0.05質量%以上2.0質量%以下であり、
前記セメント中のP2O5の含有量に対するMnOとTiO2の合計含有量の質量比((MnO+TiO2)/P2O5)が0.3以上15以下であり」とされているのに対し、引用発明3ではそのような特定がない点。
<相違点3>
本願発明では、 「但し、密度2.7g/cm3以上の重量骨材を含有するものは除く」とされているのに対し、引用発明3ではそのような特定がない点。
(2)相違点について
ア 相違点2について
相違点2について検討する。
引用発明3は、セメントとして普通ポルトランドセメントを用いている。
そして、上記第2の3(1)イ(イ)によれば、普通ポルトランドセメントはTiO2を0.28質量%、P2O5を0.25質量%、MnOを0.09質量%含有するものである。そうすると、引用発明3のセメントの、MnOとTiO2とP2O5の合計含有量は0.62(=0.09+0.28+0.25)質量%であるし、P2O5の含有量に対するMnOとTiO2の合計含有量の質量比((MnO+TiO2)/P2O5)は1.48(=(0.09+0.28)/0.25)であるから、本願発明の「前記セメントが化学成分としてMnOとTiO2とP2O5を含有し、
前記セメント中のMnOとTiO2とP2O5の合計含有量が0.05質量%以上2.0質量%以下であり、
前記セメント中のP2O5の含有量に対するMnOとTiO2の合計含有量の質量比((MnO+TiO2)/P2O5)が0.3以上15以下であり」を満たす。
仮に、普通ポルトランドセメントの成分組成に若干の測定誤差や組成のずれ等があったとしても、引用発明3は、本願発明で特定されるかなり広い範囲の中に十分入る組成を有するといえる。
したがって、上記相違点2は、実質的な相違点ではない。
イ 相違点3について
相違点3について検討する。
引用発明3において、「スラグ細骨材」は、上記3(1)アの【0013】の記載によれば「高炉スラグ細骨材」を意味しているといえ、同(2)(表5.5.6)によれば、引用文献4には、高炉スラグ細骨材の絶乾比重が、2.57~2.69g/cm3であることが記載されている。そうすると、引用発明3の「スラグ細骨材」は、比重、すなわち、密度が2.57~2.69g/cm3であるといえる。そして、引用発明3は、他の骨材は含有していないから、「但し、密度2.7g/cm3以上の重量骨材を含有するものは除く」を満たす。
したがって、上記相違点3は、実質的な相違点ではない。
仮に、引用発明3の「スラグ細骨材」が「高炉スラグ細骨材」を意味していないとしても、上記2(1)アの【0013】には、「本発明での細骨材としては、珪砂、石灰石砂、高炉スラグ細骨材等のうちの一種または二種以上を使用することができる。中でも、経済性の面から高炉スラグ細骨材の使用がより好ましい」と記載されているため、「スラグ細骨材」として「高炉スラグ細骨材」を用いることは、当業者が容易に想到し得ることである。したがって、引用発明3において、相違点3に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易になしうることである。
ウ 小括
したがって、本願発明は、引用発明3である、又は、引用発明3に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明、すなわち、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-008723