2024-007930
睡眠時無呼吸症候群治療システム、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
- 審判番号
- 2024-007930
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-079386外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年05月13日
- 審決日
- 2025年09月22日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】泉工医科工業株式会社
- 【請求人代理人】松沼 泰史
- 【請求人代理人】大浪 一徳
- 【請求人代理人】山口 洋
- 【請求人代理人】山口 健吾
- 分類
- P18 .121-WY (G16H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 15項目
第1 手続の経緯
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本件出願(以下「本願」という。)は、令和5年5月12日の出願であって、同年7月24日付けの拒絶理由の通知に対し、同年10月4日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年10月31日付けの拒絶理由(最後の拒絶理由)の通知に対し、令和6年1月10日に意見書が提出され、同年1月31日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して同年5月13日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正がなされ、令和7年6月24日付けで拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)がなされ、同年8月19日に意見書が提出されるとともに手続補正(以下「本件補正」という。)がなされものである。
第2 原査定の概要
本願の請求項1~5に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第3 当審拒絶理由通知の概要
1 理由1(明確性要件)
本願は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
・請求項1~5の記載について
請求項1には、「前記判定部は、前記ユーザの睡眠時において前記酸素飽和度が第一の閾値以下である場合、及び、前記呼吸数が第一の閾値以下である場合のうちの少なくともいずれかである場合、前記ユーザの呼吸状態を無呼吸状態ではない低呼吸状態であると判定し、」と記載されている。
(1)当該記載事項の「無呼吸状態ではない低呼吸状態」は、正常状態、低呼吸状態、無呼吸状態の3つ状態のうち低呼吸状態に該当するところ、判定部は、「第一の閾値以下」(正常状態と低呼吸状態との境界以下)という条件のみを満たした場合、当該「無呼吸状態ではない低呼吸状態」であると「判定」するものと理解すると、「第一の閾値以下」(正常状態と低呼吸状態との境界以下)という条件のみを満たしただけでは、当該「無呼吸状態ではない低呼吸状態」のみを判定することはできない。すると、「第一の閾値以下」(正常状態と低呼吸状態との境界以下)という条件のみを満たすためには、当該「無呼吸状態ではない低呼吸状態」だけでなく、無呼吸状態を含めて判定するしかない。すなわち、「第一の閾値以下」(正常状態と低呼吸状態との境界以下)という条件のみを満たす場合、当該「無呼吸状態ではない低呼吸状態」及び無呼吸状態「であると」、いずれの状態を区別することなく「判定」するのか。
(2)それとも、「第一の閾値以下」という条件のみでなく、「第一の閾値以下」、且つ、第二の閾値以上(低呼吸状態と無呼吸状態との境界以上)という条件を満たした場合、当該「無呼吸状態ではない低呼吸状態」「であると」「判定」するのか。
(3)以上のとおり、当該記載事項は、上記(1)のように理解するのか、上記(2)のように理解するのか、上記(1)と(2)の少なくとも一方を含むものとして理解するのか、それとも、上記(1)と(2)以外の理解があるのか、明瞭でない。したがって、当該記載事項を含む請求項1に係る発明は明確でない。また、請求項1の記載を引用する請求項2に係る発明も、同様の理由で明確でない。また、請求項1に係る発明と発明のカテゴリーのみが異なる請求項3~5に係る発明も、同様の理由で明確でない。
2 理由2(進歩性欠如)
本願の請求項1~5に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 本願発明
本願の請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明5」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるものである。当該請求項1~5の記載は、以下のとおりである。下線は補正箇所である。
「 【請求項1】睡眠時無呼吸症候群の治療システムであって、情報処理装置と、刺激付与装置と、を備え、前記情報処理装置は、続きを表示(全36行)ユーザの酸素飽和度及び呼吸数を含む生体情報を取得する生体情報取得部と、前記生体情報を基に前記ユーザの呼吸状態を判定する判定部と、機械学習により、前記生体情報及び前記ユーザの呼吸状態に応じた、前記ユーザに与える刺激を決定する決定部と、を備え、前記決定部は、前記刺激の種類、タイミング、及び強さを決定し、前記刺激付与装置は、前記刺激の種類、タイミング、及び強さに基づいて前記ユーザに刺激を与え、前記判定部は、前記ユーザの睡眠時において前記酸素飽和度が低呼吸状態と判定するための第一の閾値以下、かつ、無呼吸状態であると判定するための、第一の閾値よりも小さな第二の閾値超である場合、及び、前記呼吸数が低呼吸状態と判定するための第一の閾値以下、かつ、無呼吸状態であると判定するための、第一の閾値よりも小さな第二の閾値超である場合のうちの少なくともいずれかである場合、前記ユーザの呼吸状態を無呼吸状態ではない低呼吸状態であると判定し、前記刺激付与装置は、前記ユーザの呼吸状態が無呼吸状態ではない低呼吸状態であると判断された場合に、前記ユーザに前記刺激を与える、睡眠時無呼吸症候群治療システム。【請求項2】複数の前記情報処理装置と接続された医療支援装置をさらに備え、前記医療支援装置は、前記情報処理装置ごとに取得された、複数の、前記生体情報、前記呼吸状態に関する情報、並びに、前記刺激の種類、タイミング、及び強さに基づいて、前記ユーザごとに与える前記刺激の種類、タイミング、及び強さを決定する決定部を備える、請求項1に記載の睡眠時無呼吸症候群治療システム。【請求項3】睡眠時無呼吸症候群の治療に用いられる情報処理装置であって、ユーザの酸素飽和度及び呼吸数を含む生体情報を取得する生体情報取得部と、前記生体情報を基に前記ユーザの呼吸状態を判定する判定部と、機械学習により、前記生体情報及び前記ユーザの呼吸状態に応じた、前記ユーザに与える刺激を決定する決定部と、を備え、前記決定部は、前記刺激の種類、タイミング、及び強さを決定し、前記判定部は、前記ユーザの睡眠時において前記酸素飽和度が低呼吸状態と判定するための第一の閾値以下、かつ、無呼吸状態であると判定するための、第一の閾値よりも小さな第二の閾値超である場合、及び、前記呼吸数が低呼吸状態と判定するための第一の閾値以下、かつ、無呼吸状態であると判定するための、第一の閾値よりも小さな第二の閾値超である場合のうちの少なくともいずれかである場合、前記ユーザの呼吸状態を無呼吸状態ではない低呼吸状態であると判定する、情報処理装置。【請求項4】睡眠時無呼吸症候群の治療に用いられる情報処理方法であって、ユーザの酸素飽和度及び呼吸数を含む生体情報を取得する生体情報取得ステップと、判定部が前記生体情報を基に前記ユーザの呼吸状態を判定する判定ステップと、機械学習により、前記生体情報及び前記ユーザの呼吸状態に応じた、前記ユーザに与える刺激を決定する決定ステップと、を含み、前記決定ステップでは、前記刺激の種類、タイミング、及び強さを決定し、前記判定ステップでは、前記ユーザの睡眠時において前記酸素飽和度が低呼吸状態と判定するための第一の閾値以下、かつ、無呼吸状態であると判定するための、第一の閾値よりも小さな第二の閾値超である場合、及び、前記呼吸数が低呼吸状態と判定するための第一の閾値以下、かつ、無呼吸状態であると判定するための、第一の閾値よりも小さな第二の閾値超である場合のうちの少なくともいずれかである場合、前記ユーザの呼吸状態を無呼吸状態ではない低呼吸状態であると判定する、情報処理方法。【請求項5】コンピュータを、睡眠時無呼吸症候群の治療に用いられる情報処理装置であって、ユーザの酸素飽和度及び呼吸数を含む生体情報を取得する生体情報取得部と、前記生体情報を基に前記ユーザの呼吸状態を判定する判定部と、機械学習により、前記生体情報及び前記ユーザの呼吸状態に応じた、前記ユーザに与える刺激を決定する決定部と、を備え、前記決定部は、前記刺激の種類、タイミング、及び強さを決定し、前記判定部は、前記ユーザの睡眠時において前記酸素飽和度が低呼吸状態と判定するための第一の閾値以下、かつ、無呼吸状態であると判定するための、第一の閾値よりも小さな第二の閾値超である場合、及び、前記呼吸数が低呼吸状態と判定するための第一の閾値以下、かつ、無呼吸状態であると判定するための、第一の閾値よりも小さな第二の閾値超である場合のうちの少なくともいずれかである場合、前記ユーザの呼吸状態を無呼吸状態ではない低呼吸状態であると判定する、情報処理装置、として機能させるためのプログラム。」
第5 引用文献等
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
原査定及び当審拒絶理由通知の拒絶の理由で引用された引用文献1には、図面とともに次の記載がある。下線は当審において付与した。
(引1ア)
「 請求の範囲[請求項1] ユーザが受容可能な刺激を発生する刺激発生部と、前記ユーザの生体情報を検出する検出部と、前記検出された生体情報をもとに最適な刺激を決定し、前記刺激発生部に発生させる制御部と続きを表示(全22行)を具備する睡眠補助装置。[請求項2] 請求項1に記載の睡眠補助装置であって、前記制御部は、複数の種類の刺激を前記刺激発生部に順番に発生させ、その都度前記検出された生体情報を評価して、前記睡眠導入のための最適な刺激を判定するように構成された睡眠補助装置。[請求項3] 請求項2に記載の睡眠補助装置であって、前記制御部は、睡眠中に前記検出された生体情報をもとに前記睡眠の障害要因の発生の有無を判定し、前記障害要因の発生が検出された場合に特定の刺激を前記刺激発生部に発生させるように構成された睡眠補助装置。[請求項4] 請求項3に記載の睡眠補助装置であって、前記検出部が、前記睡眠中、前記ユーザを発生源とする音を前記生体情報として検出するように構成され、前記制御部は、前記検出された音をもとに前記睡眠の障害要因の発生の有無を判定するように構成された睡眠補助装置。[請求項5] 請求項3に記載の睡眠補助装置であって、前記検出部が、前記睡眠中の前記ユーザの呼吸数を前記生体情報として検出するように構成され、前記制御部は、前記検出された呼吸数をもとに前記睡眠の障害要因の発生の有無を判定するように構成された睡眠補助装置。[請求項6] 請求項1に記載の睡眠補助装置であって、前記刺激発生部、前記刺激発生部、および前記制御部が、ユーザに着脱自在なユニットとして一体化されて構成される睡眠補助装置。」
(引1イ)
「[0017][1.睡眠補助装置の概念的な構成]図1は、本技術を採用した第1の実施形態である睡眠補助装置1(睡眠補助システム)の機能的な構成を示すブロック図である。同図に示すように、睡眠補助装置1(睡眠補助システム)は、生体情報検出部100、生体情報評価部200および刺激発生部300などを備える。[0018] 生体情報検出部100は、ユーザUの人体から生体情報を検出する。続きを表示(全25行)生体情報評価部200は、生体情報検出部100により検出された生体情報を評価して、ユーザUの睡眠プロセスの各段階において好適な触覚刺激や環境刺激を判定する。刺激発生部300は、生体情報評価部200にて判定された好適な刺激をユーザUに与える。・・・[0020][2.生体情報検出部100]生体情報検出部100は、ユーザUに接触される、あるいは装着される、あるいはユーザUが存在する環境に設置される1以上のセンサーなどを用いて構成される。生体情報検出部100は、より具体的には、次に挙げる生体情報のうち少なくとも1以上を検出対象とする。・・・[0023] (呼吸数)呼吸数は、一般に睡眠の状態が深いほど少なくなる。呼吸数は、呼吸状態を例えば胸部の伸縮などの動きを圧力の変化としてセンサーにより検出することによって測定される。呼吸数を測定する方法は、無呼吸症状を検出する場合に特に有効である。・・・[0030] [3.生体情報評価部200]生体情報評価部200は、CPU(Central Processing Unit)とメモリなどを有するコンピュータなどにより構成される。メモリには、CPUに実行させるプログラムおよび各種のデータが格納される。CPUはメモリに格納されたプログラムを実行することによって、生体情報検出部100から生体情報を取得し、評価して、刺激発生部300に発生させる刺激を決定する。[0031] ここで、睡眠プロセスを、寝入り(睡眠導入)、睡眠中、起床(睡眠からの覚醒)の各段階に分けて考える。[0032] 一般に、寝入り(睡眠導入)時、体動、心拍数、呼吸数、体温、筋電などの検出パラメータのレベルは徐々に低くなる。生体情報評価部200は、睡眠導入に適した刺激をユーザUに与えるように刺激発生部300に対して制御指令を供給する。なお、睡眠導入に適した刺激とは、ユーザUをリラックスさせるのに適した刺激である。一般的に、ゆったりとしたテンポの刺激はリラックス効果があり、逆にスピーディで強めの刺激は覚醒効果があるされている。[0033] このようなユーザUをリラックスさせるのに適した刺激は個人差があるとともに、一人のユーザUであっても日によって異なる場合がある。生体情報評価部200には、睡眠導入のための複数の種類の刺激の波形パターンが予め用意されている。生体情報評価部200は、それらの複数の種類の刺激を順番に刺激発生部300に発生させ、その都度生体情報検出部100より取得した生体情報を評価して最適な刺激を決定する。[0034] 睡眠中は、体動、心拍数、呼吸数、体温、筋電などの検出パラメータのレベルが覚醒時よりは低い状態に保たれている。[0035] また、ユーザUの健全な睡眠を妨げる症状として、いびき、歯軋り、無呼吸症状などが知られている。生体情報検出部100は、いびきや歯軋りなどを音から検出するためにマイクロフォンを備え、さらに無呼吸症状を検出するために呼吸計を備える。[0036] 生体情報評価部200は、生体情報検出部100より取得した音のデータから、いびきや歯軋りの音を検出したとき、睡眠導入のための刺激よりも強度の高い刺激を刺激発生部300に発生させる。また同様に、生体情報評価部200は、生体情報検出部100より取得した単位時間当たりの呼吸数が予め決められた値よりも低い場合に、強度の高い刺激を刺激発生部300に発生させる。このとき与えられる刺激にユーザUは無意識に反応し、体の姿勢や位置を自ら変更することによって、いびき、歯軋り、無呼吸症状などを一時的に抑制することができる。[0037] 起床(睡眠からの覚醒)は、レム睡眠時に起きることが心地良いとされる。そこで、生体情報評価部200は、レム睡眠の周期を心拍数、呼吸数、体温、筋電、脳波などの検出パラメータにより推定し、このレム周期の推定結果とユーザUによって予め設定された起床時刻とから、設定起床時刻前であって設定起床時刻に最も近いレム睡眠時刻を推定する。生体情報評価部200は、この推定されたレム睡眠時刻に起床に適した刺激を刺激発生部300に発生させるように制御を行う。[0038] [4.刺激発生部300]刺激発生部300は、生体情報評価部200からの制御指令をもとにユーザUに様々な種類の刺激を与える。[0039] ユーザUに与えられる刺激として、例えば、ユーザUが触覚を通して受容する触覚刺激をはじめ、視覚刺激、聴覚刺激、温感刺激などが挙げられる。刺激は、強度や強度の変化のしかた、すなわち、振幅、周波数、加速度、間隔、リズムなどのパラメータの違いによって、ユーザUに心理的あるいは生体的に反応が異なる刺激として受容される。」
(引1ウ)
[0046]
図3は、この睡眠補助装置1(睡眠補助システム)の電気的な構成を示すブロック図である。
[0047] この睡眠補助装置1は、複数のアクチュエータ310,310,・・・,310と、通信インタフェース部101と、コントローラ102と、駆動回路103と、1以上のセンサー104と、ユーザインタフェース部105と、図示しないバッテリなどを備える。ここで、センサー104は生体情報検出部100に相当する。コントローラ102は生体情報評価部200に相当する。アクチュエータ310は刺激発生部300に相当する。
・・・
[0053] コントローラ102は、CPU111と、メモリ112と、時計113とを備える。
・・・
[0056] CPU111は、メモリ112に格納されたプログラムに従って、上記の生体情報評価部200としての機能を実行する。すなわち、CPU111は、生体情報検出部100に相当するセンサー104により検出された生体情報をもとに睡眠プロセスの段階に応じた最適な刺激を決定する。CPU111は、決定した刺激をユーザUに与えるように刺激発生部300に制御指令を出す。」
(引1エ)
「[0075] 図10は、睡眠補助装置1の動作のフローチャートである。[0076] 睡眠補助装置1の初回起動時に、ユーザUによって、時計115の時刻合わせなどの初期設定がユーザインタフェース部105を使って行われる(ステップS101)。[0077] 次に、ユーザUは、ユーザインタフェース部105を使ってa.起床時刻続きを表示(全15行)b.睡眠導入時の刺激の候補c.睡眠からの覚醒時の刺激の候補d.睡眠からの覚醒時に与えられる刺激に関するスヌーズ設定(オン/オフ、時間間隔、刺激の強度変化など)e.ユーザUの活動検出のスヌーズ設定(オン/オフ、時間間隔など)などのパラメータの設定を行う(ステップS102)。[0078] ユーザインタフェース部105を使ってパラメータの設定内容を確定するための入力操作がユーザUにより行われると、コントローラ102(CPU111)は、ユーザUにより設定されたパラメータ情報をメモリ112に保存する。そしてコントローラ102は、メモリ112に格納されたプログラムに従って、睡眠プロセスにおいてユーザUへのサービスを実行する。・・・[0091] (7-3.睡眠時の処理)図10のフローチャートの説明に戻る。コントローラ102は、ユーザUが睡眠の段階に入ったことを判定すると(ステップS107のYes)、健全な睡眠を妨げる要因である、いびき、無呼吸症状、歯軋りなどが発生していないかどうかを、マイクロフォンおよび呼吸計などのセンサー104によって検出された生体情報から判定する(ステップS)。[0092] コントローラ102は、いびき、無呼吸症状、歯軋りなどが発生していることを判定すると(ステップS109のYes)、ユーザUに姿勢を変更させて、上記の睡眠障害要因の発生を抑制するための刺激をユーザUに与えるように制御を行う(ステップS110)。この制御は、睡眠中は繰り返し行われる。このとき一定の刺激に体がなれて反応しなくなる場合も考えられるので、刺激の強度を次第に高くしたり、刺激の種類を変えたりしてもよい。」
(引1オ)
「[0101] 本実施形態の睡眠補助装置1は、以上のように構成されていることから、次のような効果が期待できる。[0102] 1.睡眠補助装置1は、睡眠導入時にユーザUに合った刺激を自動的に探索して採用する。これにより、ユーザUを速やかに睡眠状態に導くことが期待できる。[0103] 2.睡眠補助装置1は、睡眠中にいびき、歯軋り、無呼吸症状などの症状が発生したことを検出し、ユーザUに姿勢を無意識に変えさせるための触覚刺激を与えることができる。これにより、いびき、歯軋り、無呼吸症状の発生を抑制することができる。」
(引1カ)図1
「[図:0001427573000001.jpg]」
(引1キ)図3
「[図:0001427573000002.jpg]」
(引1ク)図10
「[図:0001427573000003.jpg]」
(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)の記載及び図面を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。ここで、各構成単位末尾の括弧内には、主たる認定箇所となる引用文献1の記載箇所を示す。
「生体情報検出部100、生体情報評価部200および刺激発生部300などを備える睡眠補助装置1(睡眠補助システム)であって、([0017])生体情報検出部100は、ユーザUの人体から生体情報を検出し、生体情報評価部200は、生体情報検出部100により検出された生体情報を評価して、ユーザUの睡眠プロセスの各段階において好適な触覚刺激や環境刺激を判定し、刺激発生部300は、生体情報評価部200にて判定された好適な刺激をユーザUに与え、([0018])生体情報検出部100は、1以上のセンサーなどを用いて構成され、呼吸数を含む生体情報のうち少なくとも1以上を検出対象とし、呼吸数を測定する方法は、無呼吸症状を検出する場合に特に有効であり、([0020]、[0023])生体情報評価部200は、CPUとメモリなどを有するコンピュータなどにより構成され、([0030] )続きを表示(全18行)ここで、睡眠プロセスを、寝入り(睡眠導入)、睡眠中、起床(睡眠からの覚醒)の各段階に分けて考え、([0031])睡眠中は、体動、心拍数、呼吸数、体温、筋電などの検出パラメータのレベルが覚醒時よりは低い状態に保たれており、([0034])また、ユーザUの健全な睡眠を妨げる症状として、いびき、歯軋り、無呼吸症状などが知られており、生体情報検出部100は、いびきや歯軋りなどを音から検出するためにマイクロフォンを備え、さらに無呼吸症状を検出するために呼吸計を備え、([0035])生体情報評価部200は、生体情報検出部100より取得した音のデータから、いびきや歯軋りの音を検出したとき、睡眠導入のための刺激よりも強度の高い刺激を刺激発生部300に発生させ、また同様に、生体情報評価部200は、生体情報検出部100より取得した単位時間当たりの呼吸数が予め決められた値よりも低い場合に、強度の高い刺激を刺激発生部300に発生させ、このとき与えられる刺激にユーザUは無意識に反応し、体の姿勢や位置を自ら変更することによって、いびき、歯軋り、無呼吸症状などを一時的に抑制することができ、([0036])刺激発生部300は、生体情報評価部200からの制御指令をもとにユーザUに様々な種類の刺激を与え、([0038])ユーザUに与えられる刺激として、例えば、ユーザUが触覚を通して受容する触覚刺激をはじめ、視覚刺激、聴覚刺激、温感刺激などが挙げられ、刺激は、強度や強度の変化のしかた、すなわち、振幅、周波数、加速度、間隔、リズムなどのパラメータの違いによって、ユーザUに心理的あるいは生体的に反応が異なる刺激として受容され、([0039])この睡眠補助装置1(睡眠補助システム)の電気的な構成を示すと、([0046])この睡眠補助装置1は、複数のアクチュエータ310,310,・・・,310と、通信インタフェース部101と、コントローラ102と、駆動回路103と、1以上のセンサー104と、ユーザインタフェース部105と、バッテリなどを備え、ここで、センサー104は生体情報検出部100に相当し、コントローラ102は生体情報評価部200に相当し、アクチュエータ310は刺激発生部300に相当し、([0047])コントローラ102は、CPU111と、メモリ112と、時計113とを備え、([0053])CPU111は、メモリ112に格納されたプログラムに従って、生体情報評価部200としての機能を実行し、すなわち、CPU111は、生体情報検出部100に相当するセンサー104により検出された生体情報をもとに睡眠プロセスの段階に応じた最適な刺激を決定し、CPU111は、決定した刺激をユーザUに与えるように刺激発生部300に制御指令を出し、([0056])睡眠補助装置1の動作を示すと、([0075])コントローラ102は、ユーザUが睡眠の段階に入ったことを判定すると、健全な睡眠を妨げる要因である、いびき、無呼吸症状、歯軋りなどが発生していないかどうかを、マイクロフォンおよび呼吸計などのセンサー104によって検出された生体情報から判定し、([0091])コントローラ102は、いびき、無呼吸症状、歯軋りなどが発生していることを判定すると、ユーザUに姿勢を変更させて、上記の睡眠障害要因の発生を抑制するための刺激をユーザUに与えるように制御を行い、この制御は、睡眠中は繰り返し行われ、このとき一定の刺激に体がなれて反応しなくなる場合も考えられるので、刺激の強度を次第に高くしたり、刺激の種類を変えたりしてもよい、([0092])睡眠補助装置1(睡眠補助システム)。」
2 引用文献2
原査定及び当審拒絶理由通知の拒絶の理由で引用された引用文献2には、図面とともに次の記載がある。
(引2ア)
「【0012】図1に、本実施形態のシステム構成の一例を示す。本実施形態は、利用者側装置10と、睡眠支援装置100とをネットワーク80により接続した構成を備える。利用者側装置10は、ルータ50と、ルータ50に接続されたアクセスポイント60とで構成されるWLAN(Wireless LAN)70を経由してネットワーク80に接続している。ネットワーク80は、インターネット(Internet)、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)やVPN(Virtual Private Network)などの任意の種類の通信網を採用できる。【0013】図2に、利用者側装置10の構成の一例を示す。利用者側装置10は、スマートフォン11と、刺激付与装置20と、睡眠深度測定装置30とを備える。スマートフォン11と、刺激付与装置20とは、Wi-Fi(Wireless Fidelity)、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信等の無線通信方式でアクセスポイント60と双方向無線通信を行う。睡眠深度測定装置30は、有線によってルータ50に接続している。なお、スマートフォン11は、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)、タブレット端末等の携帯端末であってもよい。また、スマートフォン11とノートPC(Personal computer)やデスクトップPCとを併用することもできる。デスクトップPCをスマートフォン11と併用する場合、デスクトップPCは、有線でルータ50に接続される。続きを表示(全27行)【0014】スマートフォン11は、操作部12と、表示部13とを備える。操作部12は、利用者からの操作入力を受け付ける機能部である。利用者が操作部12を操作して入力する操作情報には、体調情報、設定情報及び基本登録情報が含まれる。体調情報には、前日の睡眠時間、体の疲れ度合い、緊張状態等が含まれる。設定情報には、利用者が個別に設定する就寝予定時間、季節変動情報(温度、湿度)等が含まれる。基本登録情報は、本システムの利用者が利用者登録を行う際に登録する情報である。基本登録情報には、ペア設定する利用者のID、歯ぎしりの有無の設定、スマートフォン11のメールアドレス等が含まれる。ペア設定する利用者のIDとは、一緒の寝室で就寝する、家族や夫婦等の他の利用者のIDである。歯ぎしりの有無の設定とは、就寝時に歯ぎしりをする利用者であるか否かを登録した情報である。操作部12で受け付けられた体調情報、設定情報、基本登録情報は、スマートフォン11によりネットワーク80を経由して睡眠支援装置100に送信される。表示部13には、操作部12で入力を受け付けた情報や、睡眠支援装置100から送信された情報が表示される。【0015】また、スマートフォン11には、加速度センサ(不図示)が搭載されている。本システムの利用者が、就寝の際にスマートフォン11を枕元等の利用者の身近な場所に置いて就寝することで、スマートフォン11は、加速度センサにより利用者の体動による寝具の動きを検知する。スマートフォン11は、加速度センサにより検知した寝具の動きに基づいて、利用者の入眠時間、又は起床時間を判定する。スマートフォン11は、判定した入眠時間の情報、又は起床時間の情報をネットワーク80を介して睡眠支援装置100に送信する。・・・【0023】次に、図4を参照しながら睡眠支援装置100の備える機能ブロック170について説明する。機能ブロック170とは、制御部110のCPU111、RAM131などのハードウェアと、制御プログラムとの協働によって実現される処理を、一連の処理で実現される機能ごとにまとめたブロックである。睡眠支援装置100は、機能ブロック170として、入力部201、データ解析部202、予測睡眠モデル選択部203、補正判定部204、重畳判定部205、変更就寝時間通知部206、刺激指示部207、出力部208を備える。・・・【0025】データ解析部202は、入力部201と、予測睡眠モデル選択部203と、補正判定部204と、RAM113とに接続している。データ解析部202は、入力部201が出力したデータを入力し、入力したデータをRAM113に保存する。また、データ解析部202は、入力したデータを解析して、入力したデータがスマートフォン11から送信された体調情報や、設定情報であると判定した場合、入力したデータを予測睡眠モデル選択部203に出力する。また、データ解析部202は、入力したデータが、スマートフォン11で判定された入眠時間の情報、起床時間の情報や、睡眠深度測定装置30で測定された脳波の波形データであると判定した場合、入力したデータを補正判定部204に出力する。・・・【0031】補正判定部204は、データ解析部202と、予測睡眠モデル選択部203と、重畳判定部205とに接続している。補正判定部204は、データ解析部202から入力した入眠時間の情報や、睡眠深度測定装置30で測定された脳波の波形データに基づいて、予測睡眠モデル選択部203が選択した予測睡眠モデルの補正が必要であるか否かを判定する。利用者が設定した就寝予定時間と、実際の入眠時間とにずれが生じている場合、予測睡眠モデル選択部203により選択された予測睡眠モデルは、利用者の睡眠リズムを適切に表していない場合がある。このため、補正判定部204は、設定情報で設定された就寝予定時間と、スマートフォン11の判定した入眠時間との時間差を算出し、算出し時間差が所定時間(例えば、5分)以上離れているか否かを判定する。補正判定部204は、就寝予定時間と入眠時間との差が所定時間以上離れていると判定した場合には、予測睡眠モデルの補正が必要と判定する。補正判定部204は、予測睡眠モデルの補正が必要と判定した場合、その旨と、入眠時間の情報とを予測睡眠モデル選択部203に出力する。予測睡眠モデル選択部203は、補正判定部204から補正の必要ありとの通知を受けた場合、補正判定部204から入力した入眠時間の情報に基づいて予測睡眠モデルを新たに選択する。・・・【0034】重畳判定部205は、予測睡眠モデル選択部203と、補正判定部204と、変更就寝時間通知部206と、刺激指示部207とに接続している。重畳判定部205は、予測睡眠モデル選択部203から、予測睡眠モデル選択部203が選択した利用者の予測睡眠モデルを入力する。重畳判定部205は、ペア設定された利用者同士の予測睡眠モデルを用いて、第1の利用者の睡眠が覚醒しやすい睡眠段階と、第2の利用者の睡眠中に第2の利用者が生体現象を起こしやすい睡眠段階とが重畳するか否かを判定する。生体現象とは、一緒に寝ている他人の睡眠を阻害する生体現象であり、例えば、歯ぎしり、体動や寝言が含まれる。なお、本実施形態では、歯ぎしりを対象とし、歯ぎしりや寝言については後述する。・・・【0037】重畳判定部205は、ペア設定された利用者のうち、第1の利用者の睡眠が覚醒しやすい睡眠段階と、第2の利用者の歯ぎしりが発生する睡眠段階とが重畳するか否かを判定する。なお、第1の利用者とは、ペア設定された利用者IDの利用者のうち、利用者管理テーブルの「歯ぎしりの有無の設定」欄に、歯ぎしりをしないと登録した利用者が該当する。また、第2の利用者は、ペア設定された利用者IDの利用者のうち、利用者管理テーブルの「歯ぎしりの有無の設定」欄に、歯ぎしりをすると登録された利用者が該当する。第2の利用者の腕には、刺激付与装置20が装着される。また、本実施形態では、ペア設定される利用者を第1の利用者と第2の利用者との2人として説明するが、ペア設定は、3人以上の複数人であってもよい。すなわち、第1の利用者、第2の利用者ともに複数人を登録してもよい。・・・【0040】刺激指示部207は、重畳判定部205から睡眠段階が重畳するとの通知を受けた場合、刺激付与装置20を振動させる信号(以下、振動指示信号と呼ぶ)を生成し、所定のタイミングで該当の利用者の刺激付与装置20に送信する。振動指示信号には、振動の強さを示す振動強度と、振動の持続時間とを設定する情報と、当該振動指示信号を送信する刺激付与装置20の識別情報とが含まれる。刺激指示部207は、生成した振動指示信号を出力部208に出力する。出力部208は、刺激指示部207から入力した振動指示信号を、ネットワークI/F140を介してネットワーク80に出力する。振動指示信号は、ネットワーク80を介して利用者の刺激付与装置20に送られる。」
(引2イ)図1
「[図:0001427573000004.jpg]」
3 引用文献3
原査定及び当審拒絶理由通知の拒絶の理由で引用された引用文献3には、次の記載がある。
(引3ア)
「【0016】<第1実施形態>図1は、本発明の第1実施形態に係る測定装置100の側面図である。第1実施形態の測定装置100は、被験者の呼吸状態を評価する測定機器であり、被験者の身体のうち測定対象となる部位(以下「測定部位」という)Mに装着される。第1実施形態の測定装置100は、筐体部12とベルト14とを具備する腕時計型の携帯機器であり、測定部位Mの例示である手首にベルト14を巻回することで被験者の手首に装着可能である。【0017】続きを表示(全18行)第1実施形態の測定装置100は、被験者の睡眠時の無呼吸状態を評価する。・・・・・・【0019】図2は、測定装置100の機能に着目した構成図である。図2に例示される通り、第1実施形態の測定装置100は、表示装置22と検出装置24と制御装置26と記憶装置28とを具備する。制御装置26および記憶装置28は筐体部12の内部に設置される。表示装置(例えば液晶表示パネル)22は、図1に例示される通り、筐体部12の表面(例えば測定部位Mとは反対側の表面)に設置され、測定結果を含む各種の画像を制御装置26による制御のもとで表示する。【0020】図2の検出装置24は、測定部位Mの状態に応じた検出信号Pを生成するセンサーモジュールであり、例えば筐体部12のうち測定部位Mとの対向面(以下「検出面」という)18に設置される。検出面18は、平面または曲面である。本実施形態の検出装置24は、酸素飽和度の算定と胸腔拡張動作の有無の判定とに使用される第1検出信号P1および第2検出信号P2を生成する。検出装置24は、図2に例示される通り、発光部Eと受光部Rとを具備する。発光部Eと受光部Rとは、測定部位Mに対向する検出面18に設置される。・・・【0030】図2の制御装置26は、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の演算処理装置であり、測定装置100の全体を制御する。記憶装置28は、例えば不揮発性の半導体メモリーで構成され、制御装置26が実行するプログラムと制御装置26が使用する各種のデータ(例えば酸素飽和度を特定するためのテーブルおよび測定結果を記録するテーブル)とを記憶する。第1実施形態の制御装置26は、記憶装置28に記憶されたプログラムを実行することで、被験者の酸素飽和度を算定するための算定部61と、被験者の無呼吸状態がOSASかCSACかを判別する判定部63と、測定装置100の測定結果を計数する計数部65とを実現する。なお、制御装置26の機能を複数の集積回路に分散した構成、または、制御装置26の一部もしくは全部の機能を専用の電子回路で実現した構成も採用され得る。また、図2では制御装置26と記憶装置28とを別体の要素として図示したが、記憶装置28を内包する制御装置26を例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により実現することも可能である。【0031】算定部61は、検出装置24が生成した検出信号Pから被験者の酸素飽和度を算定する。算定部61による酸素飽和度の特定には公知の技術が任意に採用され得る。・・・・・・【0033】判定部63は、被験者が無呼吸状態にあるか否かの判定と、無呼吸状態がOSASかCSASの何れであるかの判別とを実行する。第1に、判定部63は、被験者が無呼吸状態にあるか否かを判定する。具体的には、判定部63は、算定部61が算定した酸素飽和度が低下したか否かの判定結果に応じて、無呼吸状態か否かを判定する。第1実施形態において酸素飽和度が低下したか否かの判定は、酸素飽和度と所定の閾値との比較結果に応じて行われる。閾値は、正常な呼吸状態のもとで一般に観測される酸素飽和度を下回る所定値(例えば90%~95%程度の範囲内の数値)に設定される。判定部63は、酸素飽和度が閾値を下回る場合には無呼吸状態と判定し、酸素飽和度が閾値を上回る場合には正常な呼吸状態と判定する。」
第4 当審の判断
1 理由1(明確性要件)について
本件補正により、本願発明1~5の「判定部」又は「判定ステップ」について、「前記ユーザの睡眠時において前記酸素飽和度が低呼吸状態と判定するための第一の閾値以下、かつ、無呼吸状態であると判定するための、第一の閾値よりも小さな第二の閾値超である場合、及び、前記呼吸数が低呼吸状態と判定するための第一の閾値以下、かつ、無呼吸状態であると判定するための、第一の閾値よりも小さな第二の閾値超である場合のうちの少なくともいずれかである場合、前記ユーザの呼吸状態を無呼吸状態ではない低呼吸状態であると判定する」との補正がなされたことで、上記第3の1における拒絶の理由(理由1)は解消された。
2 理由2(進歩性欠如)について
2-1 本願発明1
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。下線は、当審において付与した。
ア 治療システム
引用発明([0091]、[0092])では、「睡眠の段階」における「無呼吸症状」「の睡眠障害」は、本願発明1の「睡眠時無呼吸症候群」に相当する。
また、本願明細書の「【0048】本実施形態に係る睡眠時無呼吸症候群治療システムによれば、生体情報に基づき、機械学習によりユーザに与える刺激が決定される。当該刺激によって、無呼吸状態を回避することができる。」の記載によれば、本願発明1の「睡眠時無呼吸症候群の治療システム」における「睡眠時無呼吸症候群の治療」は、「無呼吸状態を回避することができる」「刺激」を「ユーザに与える」ことである、と解することができる。
すると、当該理解を踏まえると、引用発明([0017] 、[0091] 、[0092])の「睡眠の段階」における「無呼吸症状」「の睡眠障害要因の発生を抑制するための刺激をユーザUに与える」「睡眠補助システム」は、本願発明1の「睡眠時無呼吸症候群の治療システム」に相当する。
イ 情報処理装置
引用発明([0018])の「生体情報検出部100」と「生体情報評価部200」は、「生体情報を検出し」「評価」する処理機能を有するから、本願発明1の「情報処理装置」に相当する。
ウ 刺激付与装置(1)
引用発明([0018])の「刺激発生部300」は、「刺激をユーザUに与え」る機能を有するから、本願発明1の「刺激付与装置」に相当する。
エ 生体情報取得部
本願明細書の「【0019】
(生体情報取得部110)
生体情報取得部110は、ユーザの生体情報を取得する。生体情報は、ユーザの生命に関する情報であり、生体情報としては、例えば、酸素飽和度、呼吸数、体温、及び心拍数等が挙げられる。・・・
【0020】
酸素飽和度は、酸素飽和度取得部111によって取得される。酸素飽和度取得部111は、酸素飽和度を測定する公知のセンサによって実現される。
【0021】
呼吸数は、単位時間当たり(例えば1分間当たり)の呼吸数であり、呼吸数取得部112によって取得される。呼吸数は、例えば、ユーザに装着された、加速度センサ及びジャイロスコープによってユーザの動きを検出することで測定することができる。
【0022】
ユーザの体温及び心拍数は、それぞれ体温取得部113、心拍数取得部114によって取得される。体温及び心拍数は、公知の方法で取得されてよい。
【0023】
また、生体情報取得部110は、ユーザが発する音声情報、例えばいびきの有無、及び、ユーザの動きに関する情報(動作情報)、例えば、寝返りの有無を取得してもよい。音声情報は、例えば、マイクなどの集音装置により取得することができる。動作情報は、加速度センサ及びジャイロスコープにより取得することができる。音声情報及び動作情報は、生体情報に含まれる。」との記載によれば、本願発明1の「生体情報取得部」は、ユーザから生体情報を取得(検出)するセンサ等と解することができる。
当該理解を踏まえると、引用発明([0018])の「生体情報検出部100」は、本願発明1の「前記情報処理装置」が「備え」る「生体情報取得部」に相当する。また、引用発明([0018]、[0020]、[0023])の「ユーザUの人体から」「呼吸数を含む」「生体情報を検出」することは、本願発明1の「前記情報処理装置」が「備え」る、「ユーザの」「呼吸数を含む生体情報を取得する」ことに相当する。
すると、引用発明の「ユーザUの人体から」「呼吸数を含む」「生体情報を検出」する「生体情報検出部100」と、本願発明1の「前記情報処理装置」が「備え」る、「ユーザの酸素飽和度及び呼吸数を含む生体情報を取得する生体情報取得部」とは、「前記情報処理装置」が「備え」る、「ユーザの」「呼吸数を含む生体情報を取得する生体情報取得部」の点で共通する。
オ 判定部(1)
引用発明([0091])の「無呼吸症状」「が発生していないかどうか」の状態は、本願発明1の「呼吸状態」に相当する。
すると、引用発明([0056]、[0091])の「生体情報評価部200」が「実行」する、「呼吸数」「から」「無呼吸症状」「が発生していないかどうか」の状態を「判定」する「判定」「機能」は、本願発明1の「前記情報処理装置」が「備え」る、「前記生体情報を基に前記ユーザの呼吸状態を判定する判定部」に相当する。
カ 決定部(1)
引用発明([0056]、[0091]、[0092])の「生体情報評価部200」が「実行」する、「呼吸数」「から」「無呼吸症状」「が発生している」状態である「ことを判定すると、」「ユーザUに与える」「最適な刺激を決定」することは、「呼吸数」及び「無呼吸症状」「が発生していないかどうか」の状態に応じた、「ユーザUに与える」「最適な刺激を決定」することを意味する。
すると、引用発明の「生体情報評価部200」が「実行」する、「呼吸数」「から」「無呼吸症状」「が発生している」状態である「ことを判定すると、」「ユーザUに与える」「最適な刺激を決定」する「決定」「機能」と、本願発明1の「前記情報処理装置」が「備え」る、「機械学習により、前記生体情報及び前記ユーザの呼吸状態に応じた、前記ユーザに与える刺激を決定する決定部」とは、「前記情報処理装置」が「備え」る、「前記生体情報及び前記ユーザの呼吸状態に応じた、前記ユーザに与える刺激を決定する決定部」の点で共通する。
キ 決定部(2)
引用発明([0038]、[0039])の「刺激発生部300は、生体情報評価部200からの制御指令をもとにユーザUに様々な種類の刺激を与え、」「ユーザUに与えられる刺激として、例えば、ユーザUが触覚を通して受容する触覚刺激をはじめ、視覚刺激、聴覚刺激、温感刺激などが挙げられ、刺激は、強度や強度の変化のしかた、すなわち、振幅、周波数、加速度、間隔、リズムなどのパラメータの違いによって、ユーザUに心理的あるいは生体的に反応が異なる刺激として受容され」るところ、引用発明([0036])の「生体情報評価部200は、生体情報検出部100より取得した単位時間当たりの呼吸数が予め決められた値よりも低い場合に、」「睡眠導入のための刺激よりも」「強度の高い刺激を刺激発生部300に発生させ」ることから、引用発明において「最適な刺激」を「ユーザUに与える」ためには、「最適な刺激」の「種類」(「例えば、ユーザUが触覚を通して受容する触覚刺激をはじめ、視覚刺激、聴覚刺激、温感刺激など」)、「強度」(「睡眠導入のための刺激よりも」「強度の高い刺激」)、タイミング等を、具体的に「決定」する必要がある。
すると、上記カで説示した引用発明の「決定」「機能」が、「ユーザUに与える」「最適な刺激」の「種類」、「強度」、タイミング等を、具体的に「決定」していることは明らかであるから、引用発明の「決定」機能が、本願発明1の「前記決定部は、前記刺激の種類、タイミング、及び強さを決定」することに相当する構成を備えていることは明らかである。
ク 刺激付与装置(2)
上記キでの対比を踏まえると、上記ウで説示した引用発明の「刺激発生部300」が、本願発明1の「前記刺激付与装置は、前記刺激の種類、タイミング、及び強さに基づいて前記ユーザに刺激を与え」ることに相当する構成を備えていることは明らかである。
ケ 判定部(2)
引用発明([0036])では、「評価部200は、生体情報検出部100より取得した単位時間当たりの呼吸数が予め決められた値よりも低い場合に、強度の高い刺激を刺激発生部300に発生させ、このとき与えられる刺激にユーザUは無意識に反応し、体の姿勢や位置を自ら変更することによって、いびき、歯軋り、無呼吸症状などを一時的に抑制することができ」る。そして、ここでの「予め決められた値」は、上記アでの説示を踏まえると、睡眠障害要因の発生(引用文献1の図10のS110)、例えば、無呼吸状態を含む低呼吸状態にある睡眠時無呼吸症候群の患者の症状を抑制するための刺激を付与するかの閾値であるから、引用発明([0036])の「予め決められた値」は、本願発明1の「低呼吸状態と判定するための第一の閾値」に相当する。
すると、上記オで説示した引用発明([0036]、[0091]、[0092])の「判定」「機能」が、「ユーザU」の「睡眠の段階」において、「単位時間当たりの呼吸数が予め決められた値よりも低い場合に、」「無呼吸症状が発生している」低呼吸状態である「ことを判定する」ことと、本願発明1の「前記判定部は、前記ユーザの睡眠時において前記酸素飽和度が低呼吸状態と判定するための第一の閾値以下、かつ、無呼吸状態であると判定するための、第一の閾値よりも小さな第二の閾値超である場合、及び、前記呼吸数が低呼吸状態と判定するための第一の閾値以下、かつ、無呼吸状態であると判定するための、第一の閾値よりも小さな第二の閾値超である場合のうちの少なくともいずれかである場合、前記ユーザの呼吸状態を無呼吸状態ではない低呼吸状態であると判定」することとは、「前記判定部は、前記ユーザの睡眠時において」「前記呼吸数が低呼吸状態と判定するための第一の閾値以下」「である場合、前記ユーザの呼吸状態を」「低呼吸状態であると判定」することの点で共通する。
コ 刺激付与装置(3)
上記ケでの対比を踏まえると、上記ウで説示した引用発明の「刺激発生部300」は、本願発明1の「前記刺激付与装置は、前記ユーザの呼吸状態が無呼吸状態ではない低呼吸状態であると判断された場合に、前記ユーザに前記刺激を与える、」のうち、「前記刺激付与装置は、前記ユーザの呼吸状態が」「低呼吸状態であると判断された場合に、前記ユーザに前記刺激を与える、」の要件を満たす。
(2)一致点・相違点
上記(1)での対比を踏まえると、本願発明1と引用発明とは、次のアの点で一致し、次のイの各点で相違する。
ア 一致点
「睡眠時無呼吸症候群の治療システムであって、情報処理装置と、刺激付与装置と、を備え、前記情報処理装置は、ユーザの」「呼吸数を含む生体情報を取得する生体情報取得部と、前記生体情報を基に前記ユーザの呼吸状態を判定する判定部と、」
「前記生体情報及び前記ユーザの呼吸状態に応じた、前記ユーザに与える刺激を決定する決定部と、を備え、前記決定部は、前記刺激の種類、タイミング、及び強さを決定し、前記刺激付与装置は、前記刺激の種類、タイミング、及び強さに基づいて前記ユーザに刺激を与え、前記判定部は、前記ユーザの睡眠時において」「前記呼吸数が低呼吸状態と判定するための第一の閾値以下」「である場合、前記ユーザの呼吸状態を」「低呼吸状態であると判定し、前記刺激付与装置は、前記ユーザの呼吸状態が」「低呼吸状態であると判断された場合に、前記ユーザに前記刺激を与える、睡眠時無呼吸症候群治療システム。」
イ 相違点
(ア)相違点1
生体情報取得部が取得する生体情報に、本願発明1では、ユーザの「酸素飽和度」を含むのに対し、引用発明では、酸素飽和度を含むか不明な点。
(イ)相違点2
前記ユーザに与える刺激は、本願発明1では、「機械学習により」決定するのに対し、引用発明では、どのように「最適な刺激を決定」するのか、不明である点。
(ウ)相違点3
本願発明1では、「前記ユーザの睡眠時において前記酸素飽和度が低呼吸状態と判定するための第一の閾値以下、かつ、無呼吸状態であると判定するための、第一の閾値よりも小さな第二の閾値超である場合、及び、前記呼吸数が低呼吸状態と判定するための第一の閾値以下、かつ、無呼吸状態であると判定するための、第一の閾値よりも小さな第二の閾値超である場合のうちの少なくともいずれかである場合、前記ユーザの呼吸状態を無呼吸状態ではない低呼吸状態であると判定し、」「前記ユーザの呼吸状態が無呼吸状態ではない低呼吸状態であると判断された場合に、前記ユーザに前記刺激を与える」のに対し、引用発明では、無呼吸状態ではない低呼吸状態を判定しておらず、そのため、ユーザへの刺激を、無呼吸状態ではない低呼吸状態と判断された場合に与えていない点。
(3)判断
事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討すると、相違点3に係る本願発明1の構成は、上記引用文献1~3には記載されておらず、本願出願日前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
(4)小括
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2-2 本願発明2
本願発明2は、請求項1の記載を全て引用する従属請求項であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2-3 本願発明3~5
本願発明3~5は、請求項1とカテゴリ表現が異なるだけの請求項であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
3 原査定についての判断
本件補正により、補正後の請求項1~5は、相違点3の構成を有するものとなった。そして、当該相違点3の構成は、上記引用文献1~3には記載されておらず、本願出願日前において周知技術であるともいえないので、本願発明1~5は、当業者であっても、原査定における引用文献1~3に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。
第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-007930