特許拒絶査定不服審判
2024-005570
データ記録装置
- 審判番号
- 2024-005570
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-008691
- 請求日
- 2024年04月04日
- 審決日
- 2024年11月26日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ダイハツ工業株式会社
- 【請求人代理人】赤澤 一博
- 審判長/審判官
- 審判長 山本 信平
- 審判官 倉橋 紀夫
- 審判官 北村 亮
- 分類
- P18 .121-WY (F02D) / P18 .536-WY (F02D) / P18 .537-WY (F02D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2020-8691「データ記録装置」拒絶査定不服審判事件〔令和3年8月10日出願公開、特開2021-116705、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年1月22日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 5年 8月31日付け:拒絶理由通知書
令和 5年10月19日提出:意見書、手続補正書
令和 5年12月28日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和 6年 4月 4日提出:審判請求書、手続補正書
第2 原査定の概要
原査定の概要は、次のとおりである。
1 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1~3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2014-20208号公報
引用文献2:特開2013-166399号公報
引用文献3:特開2017-166338号公報
2 本願発明は、不明確であり、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
3 本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
第3 本願発明
本願発明は、令和6年4月4日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
内燃機関が出力するエンジントルクをクラッチ及び手動変速機を介して駆動輪に伝達し走行する車両に搭載されるデータ記録装置であって、運転者によるクラッチペダルの踏込量の大きさをセンサを介して検出するとともに、車速が所定以下の低速運転時または停車時にエンジンストールが発生した場合において、ある一定以上のエンジン回転数から一定以上エンジン回転数が低下したことを感知しかつ前記センサを介して検出したクラッチペダルの踏込量がクラッチペダルを踏み込むことのできる最大値よりも小さいが半クラッチ状態で滑り摩擦しながら係合していたクラッチが切断されるような閾値以上であることを必要条件として当該条件が成立したときの前後の一定期間中に取得したフリーズフレームデータを記録することとし、前記センサを介して検出したクラッチペダルの踏込量が前記閾値未満であるならばフリーズフレームデータを記録しない、データ記録装置。」
第4 引用文献、引用発明
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は、当審が付与。以下同様。)。
(1)「【0001】
本発明は、車両情報管理システムに関し、さらに詳しくは、フリーズフレームデータを管理する車両情報管理システムに関する。」
(2)「【0016】
〈全体構成〉
図1は、自動二輪車1の全体構成を示すブロック図である。自動二輪車1は、エンジン3、キルスイッチ4、サイドスタンド5、クラッチレバー6および車両管理システム2を備えている。
【0017】
キルスイッチ4は、乗員の操作に応じて、車両管理システム2に含まれるECU23に信号を出力する。キルスイッチ4からの信号を受信するとECU23はエンジン3を停止させる。サイドスタンド5は、自動二輪車1を停車させる際に、自動二輪車1が転倒しないように車体を支持する。サイドスタンド5は、自動二輪車1の車体を支持する支持状態と、自動二輪車1の走行時に走行を阻害しないよう待機する待機状態とを取り得る。クラッチレバー6は、クラッチの切り替えを行う際に乗員によって操作される。クラッチレバー6が操作されると、クラッチが動力を伝達可能な状態と、動力を遮断する状態との間で切り替えられる。
【0018】
車両情報管理システム2は、複数の検出センサ21およびECU(電子制御ユニット)23を備えている。複数の検出センサ21は、自動二輪車1のエンジン3や電源等に取り付けられている。各検出センサ21は、それぞれ車両の状態に関するパラメータを検出する。例えば、複数の検出センサ21には、車速を検出する車速センサやスロットルセンサ等、様々なセンサが含まれている。複数の検出センサ21は、ECU23に接続されている。
【0019】
ECU23は、自動二輪車1に設けられたエンジン3等を制御する。ECU23は、取得部231、レバー検出部237、エンジン状態検出部232、操作検出部233、診断データ作成部234、更新部235および記憶部24を備えている。
【0020】
取得部231は、各検出センサ21から車両の状態に関するパラメータを取得する。エンジン状態検出部232は、エンジン3の状態を検出する。エンジン状態検出部232は、エンジンストールが発生しているか否かを検出する。エンジン状態検出部232は、エンジン3に接続されている。エンジン状態検出部232は、回転速度検出部232aおよび判断部232bを含んでいる。回転速度検出部232aは、エンジン3の回転速度を検出する。判断部232bは、回転速度検出部232aの検出結果が予め定められた第1閾値よりも小さいか否かを判断する。エンジン状態検出部232は、エンジン3の回転速度が第1閾値よりも小さい場合に、エンジンストールが発生したと判断する。
【0021】
レバー検出部237は、乗員のクラッチレバー6の操作を検出する。レバー検出部237は、クラッチレバー6に接続されている。
【0022】
操作検出部233は、乗員の自動二輪車1に対する操作を検出する。操作検出部233は、エンジンストールの発生原因となる乗員の自動二輪車1に対する操作を検出する。操作検出部233には、スイッチ検出部250、スタンド状態検出部251、時間検出部252、起因判断部253および転倒検出部254が含まれている。操作検出部233は、診断データ作成部234に接続されている。」
(3)「【0024】
時間検出部252は、クラッチレバー6が操作された後に、エンジン3が停止したときに、レバー検出部237がクラッチレバー6の操作を検出したときからエンジン3が停止するまでの時間を検出する。起因判断部253は、時間検出部252で検出された時間が予め定められた第2閾値以下か否かを判断する。」
(4)「【0026】
診断データ作成部234は、各検出センサ21によって検出されたパラメータに基づいて診断データを作成する。診断データ作成部234は、パラメータを予め定められた順番に並べて診断データを作成する。診断データ作成部234は、操作検出部233およびエンジン状態検出部232の検出結果に基づいて、乗員の車両に対する操作に起因してエンジンストールが発生していると判断される場合には、診断データを作成しない。診断データ作成部234は、操作検出部233およびエンジン状態検出部232の検出結果に基づいて、乗員の車両に対する操作に起因せずにエンジンストールが発生したと判断される場合には、診断データを作成する。」
(5)「【0028】
記憶部24は、診断データを格納する。記憶部24は診断データを格納可能な複数の記憶領域を含んでいる。記憶部24には、起因データが予め格納されている。
【0029】
図2は、各記憶領域に格納された診断データの一例を示す。記憶部24に含まれる3つの記憶領域には、それぞれ1つの診断データが格納されている。各記憶領域には、1つの診断データを格納可能である。図2に示す診断データの項目や数値は単なる例示であり、これに限られない。例えば、診断データの項目の数が図2の例とは異なっていてもよい。診断データは、車速やバッテリ電圧等、車体の状態に関する複数のパラメータから構成されている。」
(6)「【0031】
エンジン状態検出部232は、回転速度検出部232aの検出結果に基づいて、エンジンストールが発生したか否かを判断する(ステップS1)。エンジンストールが発生していない場合(ステップS1のNO)には、ステップ1に戻る。一方で、エンジンストールが発生した場合(ステップS1のYES)には、乗員の操作に起因してエンジンストールが発生したか否かが判断される。乗員の操作に起因してエンジンストールが発生したか否かを判断する動作を以下に説明する。
【0032】
エンジンストールが発生する前の所定期間にキルスイッチ4が押されたか否かが判断される(ステップS2)。キルスイッチ4が押された場合には、乗員の操作に起因してエンジンストールが発生したと判断し、ステップ1に戻る(ステップS2のYES)。一方で、キルスイッチ4が押されていない場合(ステップS2のNO)には、エンジンストールが発生する前の所定期間にサイドスタンド5が待機状態から支持状態に変わったか否かが判断される(ステップS3)。サイドスタンド5が待機状態から支持状態に変わった場合(ステップS3のYES)には、乗員の操作に起因してエンジンストールが発生したと判断し、ステップ1に戻る。一方で、サイドスタンド5が待機状態から支持状態に変わっていない場合(ステップS3のNO)には、クラッチレバー6が操作されたときからエンジンストールが発生するまでの時間が第2閾値以下か否かが判断される(ステップS4)。
【0033】
クラッチレバー6が操作されたときからエンジンストールが発生するまでの時間が第2閾値以下の場合(ステップS4のNO)には、エンジンストールは乗員の操作に起因すると判断し、ステップ1に戻る。一方で、クラッチレバー6が操作されたときからエンジンストールが発生するまでの時間が第2閾値よりも大きい場合(ステップS4のYES)には、自動二輪車1が転倒したか否かが判断される(ステップS5)。自動二輪車1が転倒していると判断された場合(ステップS5のYES)には、エンジンストールが乗員の操作に起因すると判断し、ステップ1に戻る。一方で、自動二輪車1が転倒していない場合(ステップS5のNO)には、エンジンストールは乗員の操作に起因しないと判断され、診断データを記憶部24に格納する動作が行われる。
【0034】
乗員の操作に起因せずにエンジンストールが発生したと判断される(ステップS2のNO、ステップS3のNO、ステップS4のYES、ステップS5のNO)と、各検出センサ21によって取得されたパラメータに基づいて、診断データ作成部234は診断データを作成する(ステップS6)。診断データ作成部234によって診断データが作成されると、更新部235は、記憶部24に診断データを格納する(ステップS7)。」
2 引用発明について
引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「エンジン3及びクラッチレバー6を備えた自動二輪車1に備えられた車両管理システム2であって、レバー検出部237が乗員のクラッチレバー6の操作を検出するとともに、エンジン3の回転速度が第1閾値よりも小さい場合に、エンジンストールが発生したと判断し、検出部237がクラッチレバー6の操作を検出したときからエンジンストールが発生するまでの時間が第2閾値よりも大きい場合に診断データを作成し記憶部24に格納し、検出部237がクラッチレバー6の操作を検出したときからエンジンストールが発生するまでの時間が第2閾値以下の場合診断データを作成しない、車両管理システム2。」
2 引用文献2の記載事項
(1)「【0023】
この車両は、エンジンE/Gと、手動変速機M/Tと、クラッチC/Tとを備えている。エンジンE/Gは、周知の内燃機関の1つであり、例えば、ガソリンを燃料として使用するガソリンエンジン、軽油を燃料として使用するディーゼルエンジンである。エンジンE/Gの出力軸Aeは、フライホイールF/W、及び、クラッチC/Tを介して、手動変速機M/Tの入力軸Aiと接続されている。」
(2)「【0029】
また、本装置は、クラッチペダルCPの操作量(後述するクラッチストローク)を検出するクラッチ操作量センサP1と、ブレーキペダルBPの操作の有無を検出するブレーキセンサP2と、アクセルペダルAPの操作量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサP3と、シフトレバーSLの位置を検出するシフト位置センサP4と、車両の車速を検出する車速センサP5とを備えている。」
(3)「【0031】
(クラッチトルクとクラッチペダルCPの操作量との関係)
以下、図2、及び図3を参照しながら、クラッチC/Tにおける、クラッチトルクとクラッチペダルCPの操作量との関係について説明する。図2は、クラッチペダルCPが操作される際のクラッチペダルCPの位置移動について説明するための図である。クラッチペダルCPは、車両の運転者の足により踏み込まれることで、踏み込み方向へ移動可能となっている。また、クラッチペダルCPは、踏み込み方向に対抗し付勢力が発生するようになっており、クラッチペダルCPを踏み戻したときには、その付勢力により足と一体的に踏み戻し方向(踏み込み方向とは逆の方向)へ移動可能となっている。
【0032】
クラッチC/Tの軸方向位置は、クラッチペダルCPの踏み込み方向への操作量が大きいほど、フライホイールF/Wから離間する方向への移動量がより大きくなるよう、例えば、バイ・ワイヤ方式により調整される。クラッチC/T(クラッチディスク)は、クラッチペダルCPの踏み込み方向への操作量が最大であるとき、フライホイールF/Wから最も離れたところに位置するようになっている。
【0033】
以下、踏み込み方向への操作量が最大であるときの、クラッチペダルCPの位置を「原位置」と呼ぶ。また、クラッチペダルCPの「原位置」からの踏み戻し方向への移動量(操作量)をクラッチストロークと呼ぶ。即ち、クラッチペダルCPが「原位置」にあるとき、クラッチストロークが「0」となる。従って、クラッチストロークが「0」から増大していくと(クラッチペダルCPが「原位置」から踏み戻し方向へ位置移動するよう操作されると)、離間していたクラッチC/T(クラッチディスク)が、フライホイールF/Wに近づいていくようになっている。
【0034】
図3は、クラッチトルクとクラッチストロークとの関係を示す図である。クラッチストロークが「0~p(>0)」の領域では、クラッチトルクが「0」に維持され、エンジンE/Gの出力軸Aeと手動変速機M/Tの入力軸Aiとの間で動力が伝達されない。この領域を「分断領域」と呼ぶ。
【0035】
クラッチストロークが「p」よりも大きい領域では、クラッチトルクが「0」よりも大きく、エンジンE/Gの出力軸Aeと手動変速機M/Tの入力軸Aiとの間で動力が伝達される。この領域において、クラッチストロークが「p~q(>p)」の領域では、クラッチトルクはクラッチストロークが大きいほど大きくなる。この領域を「半接合領域」と呼ぶ。クラッチストロークが「q」よりも大きい領域では、クラッチトルクはゼロより大きい所定値(最大値)に維持される。この領域を「接合領域」と呼ぶ。即ち、クラッチストローク「p」に対応するアクセルペダルCPの位置は、クラッチトルクがゼロから増加開始する位置に相当する。」
(4)「【図5】
[図:0001417524000001.jpg]
」
3 引用文献3の記載事項
(1)「【0011】
(車両の説明)
図1に基づき、本発明の実施形態による車両用駆動装置1が搭載された車両100について説明する。図1において、太線は各装置間の機械的な接続を示し、破線による矢印は制御用の信号線を示している。図1に示すように、車両100には、エンジン2、クラッチ3、マニュアルトランスミッション4、デファレンシャル17が、この順番に、直列に設けられている。デファレンシャル17には、車両100の駆動輪18R、18Lが接続されている。なお、駆動輪18R、18Lは、車両100の前輪又は後輪、或いは、前後輪である。また、車両100は、制御部10、アクセルペダル51、アクセルストロークセンサ52、クラッチペダル53、クラッチストロークセンサ54、及びマスタシリンダ55を有している。」
(2)「【0016】
クラッチペダル53(クラッチ操作部)は、クラッチ3を切断状態又は接続状態とし、クラッチ3が伝達可能なトルクであるクラッチトルクTcを可変に操作するためのものである。マスタシリンダ55は、クラッチペダル53のストロークに応じた作動圧を発生させる。クラッチストロークセンサ54(クラッチストローク検出部)は、クラッチペダル53のストロークであるクラッチストロークStcを検出し、その検出信号を制御部10に出力する。」
(3)「【0042】
ステップS12において、発進判断部10hは、後述の半クラッチ判断部10gがクラッチ3が半クラッチであると判断した場合には(ステップS12:YES)、プログラムをステップS13に進める。一方で、発進判断部10hは、後述の半クラッチ判断部10gがクラッチ3が半クラッチでないと判断した場合には(ステップS12:NO)、プログラムをステップS22に進める。半クラッチ判断部10gは、図5に示すように、クラッチストロークセンサ54によって検出されたクラッチストロークStcが、第一ストロークSt1以上であり、第二ストロークSt2以下である場合に、クラッチ3が半クラッチであると判断する。第一ストロークSt1とは、0よりも大きい値に設定されたストロークであり、具体的には、タッチ点Sttよりも微少な所定値だけ小さいストロークである。タッチ点Sttとは、クラッチストロークStcがタッチ点Sttよりも小さい領域から増大した場合に、クラッチトルクTcが0から増大を開始する点である。第二ストロークSt2は、クラッチペダル53の最大ストロークよりも小さい値に設定されたストロークであり、具体的には、完全係合点Steよりも微少な所定値だけ大きいストロークである。勿論、第二ストロークSt2は、第一ストロークSt1よりも大きい。完全係合点Peとは、クラッチストロークStcが完全係合点Peよりも小さい領域から増大した場合に、クラッチトルクTcが最大クラッチトルクTcmaxに達するストロークである。なお、最大クラッチトルクTcmaxは、クラッチ3が発生させることができる最大のクラッチトルクTcである。」
第5 対比、判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「エンジン3」は前者の「内燃機関」に相当し、以下同様に「自動二輪車1」は「車両」に、「備えられた」態様は「搭載される」態様に、「車両管理システム2」は「データ記録装置に、それぞれ相当する。また、後者の「エンジン3及びクラッチレバー6を備えた自動二輪車1」は、技術常識から、エンジン3が出力するエンジントルクをクラッチ及び手動変速機を介して駆動輪に伝達し走行するといえるから、前者の「内燃機関が出力するエンジントルクをクラッチ及び手動変速機を介して駆動輪に伝達し走行する車両」と、「内燃機関が出力するエンジントルクをクラッチを介して駆動輪に伝達し走行する車両」という限りにおいて一致する。
後者の「レバー検出部237が乗員のクラッチレバー6の操作を検出する」態様と前者の「運転者によるクラッチペダルの踏込量の大きさをセンサを介して検出する」態様とは、「運転者によるクラッチペダルの操作をセンサを介して検出する」態様の限りにおいて一致する。
後者の「エンジン3の回転速度が第1閾値よりも小さい場合に、エンジンストールが発生したと判断し」という態様は前者の「車速が所定以下の低速運転時または停車時にエンジンストールが発生した場合において」という態様に相当する。
後者の「検出部237がクラッチレバー6の操作を検出したときからエンジンストールが発生するまでの時間が第2閾値よりも大きい場合に診断データを作成し記憶部24に格納し、検出部237がクラッチレバー6の操作を検出したときからエンジンストールが発生するまでの時間が第2閾値以下の場合診断データを作成しない」態様と前者の「ある一定以上のエンジン回転数から一定以上エンジン回転数が低下したことを感知しかつ前記センサを介して検出したクラッチペダルの踏込量がクラッチペダルを踏み込むことのできる最大値よりも小さいが半クラッチ状態で滑り摩擦しながら係合していたクラッチが切断されるような閾値以上であることを必要条件として当該条件が成立したときの前後の一定期間中に取得したフリーズフレームデータを記録することとし、前記センサを介して検出したクラッチペダルの踏込量が前記閾値未満であるならばフリーズフレームデータを記録しない」態様とは、「条件1が成立したときに取得したフリーズフレームデータを記録することとし、条件2が成立したときはフリーズフレームデータを記録しない」態様という限りにおいて一致する。
よって、両者は、
「内燃機関が出力するエンジントルクをクラッチを介して駆動輪に伝達し走行する車両に搭載されるデータ記録装置であって、運転者によるクラッチペダルの操作をセンサを介して検出するとともに、車速が所定以下の低速運転時または停車時にエンジンストールが発生した場合において、条件1が成立したときに取得したフリーズフレームデータを記録することとし、条件2が成立したときにフリーズフレームデータを記録しない、データ記録装置。」
という点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
車両に関し、本願発明は、エンジントルクをさらに「手動変速機を介して駆動輪に伝達し」ているのに対し、引用発明は、そのように伝達しているか不明な点。
[相違点2]
検出する態様に関し、本願発明は、「クラッチペダルの踏込量の大きさ」を検出しているのに対し、引用発明は、クラッチレバー6の操作を検出している点。
[相違点3]
条件1に関し、本願発明は、「ある一定以上のエンジン回転数から一定以上エンジン回転数が低下したことを感知しかつ前記センサを介して検出したクラッチペダルの踏込量がクラッチペダルを踏み込むことのできる最大値よりも小さいが半クラッチ状態で滑り摩擦しながら係合していたクラッチが切断されるような閾値以上であることを必要条件」としているのに対し、引用発明は、検出部237がクラッチレバー6の操作を検出したときからエンジンストールが発生するまでの時間が第2閾値よりも大きい場合であり、また、条件2に関し、本願発明は、「前記センサを介して検出したクラッチペダルの踏込量が前記閾値未満である」ことであるのに対し、引用発明は、「検出部237がクラッチレバー6の操作を検出したときからエンジンストールが発生するまでの時間が第2閾値以下の場合」である点。
[相違点4]
フリーズフレームデータを記録する態様に関し、本願発明は、「当該条件が成立したときの前後の一定期間中に取得したフリーズフレームデータを記録する」のに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
2 相違点についての判断
事案に鑑み、相違点3について、以下検討する。
相違点3に係る本願発明の発明特定事項は、引用文献1~3には記載も示唆もされておらず、また、周知技術、慣用技術又は技術常識であるとする証拠もない。
例えば、引用文献2に記載されたクラッチストロークの「p」や引用文献3に記載された「第一ストロークSt1」は、本願発明の「クラッチペダルを踏み込むことのできる最大値よりも小さいが半クラッチ状態で滑り摩擦しながら係合していたクラッチが切断されるような閾値」であるといえるが、引用文献2及び3の記載事項は、当該閾値以上であることを条件として、フリーズフレームデータ等を記録するものではなく、また、当該閾値未満であることを条件として、フリーズフレームデータ等を記録しないものでもない。よって、当業者であっても引用発明に引用文献2の記載事項及び引用文献3の記載事項を採用して相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることが容易とはいえない。
さらに、相違点3に係る本願発明の発明特定事項は、当業者が適宜なし得る事項ともいえない。
したがって、相違点1、2及び4について検討するまでもなく、本願発明は、当業者が引用発明、引用文献2の記載事項及び引用文献3の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。
第6 原査定について
1 理由1(特許法第29条第2項)について
上記第5で判断したとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2の記載事項及び引用文献3の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。
よって、原査定の理由1を維持することはできない。
2 理由2(特許法第36条第6項第2号)及び理由3(同法同条第4項第1号)について
審判請求時の補正によって、補正前の「必要条件」は、より具体化、明確化された。
そして、上記補正により追加された「ある一定以上のエンジン回転数から一定以上エンジン回転数が低下したことを感知し」という態様は、本願の発明の詳細な説明の【0027】の
「ECU0は、ある一定以上のエンジン回転数(例えば、内燃機関100の自律回転を維持できる最低限のアイドル回転数)から一定以上(たとえば、100rpmないし200rpm以上)エンジン回転数が低下したことを感知したときに、エンジンストールが起こったと判断する。」
という記載を参酌すると、エンジンストールが起こったと判断されたとき又は判断される直前であると理解でき、本願発明は、概略、エンジンストールが起こったと判断されたときのクラッチペダルの踏込量に基づいてフリーズフレームデータを記録するか否か判断するデータ記録装置であると明確に理解できる。
よって、本願発明は、明確である。
そして、本願の発明の詳細な説明も、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
したがって、原査定の理由2及び3を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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