特許拒絶査定不服審判
2024-005297
電磁波シールドフィルム
- 審判番号
- 2024-005297
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-503671
- 請求日
- 2024年03月29日
- 審決日
- 2024年11月25日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】タツタ電線株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人G-chemical
- 審判長/審判官
- 審判長 篠塚 隆
- 審判官 伊藤 隆夫
- 審判官 北元 健太
- 分類
- P18 .121-WY (H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-503671「電磁波シールドフィルム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 9月 2日国際公開、WO2021/172396、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)2月25日(優先権主張 令和2年2月25日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 5年 7月26日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 9月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和 5年12月27日付け:拒絶査定
令和 6年 3月29日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和 5年12月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願の請求項1-3に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.国際公開第2018/147426号
第3 本願発明
本願の請求項1-3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は、令和 6年 3月29日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
導電性接着剤層、シールド層、および絶縁層がこの順に積層され、
前記絶縁層のISO14577-1に基づくマルテンス硬さに対する、前記導電性接着剤層のISO14577-1に基づくマルテンス硬さの比[導電性接着剤層/絶縁層]が、0.5以上であり、
グランド部材を電磁波シールドフィルムの上に配置し、前記グランド部材の突起が前記絶縁層を貫くように押し付けて使用される、電磁波シールドフィルム。」
また、本願発明2、3は、本願発明1を減縮した発明である。
第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。)
「[0042] (第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係るシールドフィルム70について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るシールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、シールドフィルム70は、接着剤層71と、接着剤層71に積層されたシールド層72と、シールド層72に積層された絶縁層73とからなるシールドフィルムであって、シールド層72と絶縁層73との間には、第1低融点金属層74が形成されていることを特徴とする。
また、接着剤層71は導電性接着剤層である。」
「[0048] グランド部材1は、シールドプリント配線板50に配置されることになるが、この際、図4(a)に示すように、グランド部材1を、グランド部材1の導電性突起20が、シールドフィルム70の絶縁層73及びシールド層72を貫くように、シールドフィルム70に押し付けて配置してもよい。また、図4(b)に示すように、グランド部材1を、グランド部材1の導電性突起20が、シールドフィルム70の絶縁層73を貫くが、シールドフィルム70のシールド層72を貫かないように、シールドフィルム70に押し付けて配置してもよい。
また、図4(a)及び(b)に示すように、グランド部材1の外部接続部材10は、外部グランドGNDに接続されることになる。」
「[0061] シールドフィルム70のシールド層72は、電気信号からの不要輻射や外部からの電磁波などのノイズを遮蔽するシールド効果を示せばどのような材料からなっていてもよい。例えば、シールド層72は、等方導電性樹脂や、金属からなっていてもよい。
シールド層72が金属からなる場合、金属箔や蒸着膜等の金属層であってもよく、層状に形成された導電性粒子の集合体であってもよい。シールド層72が金属層である場合には、金属を構成する材料としては、ニッケル、銅、銀、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが望ましい。
シールド層72が導電性粒子の集合体である場合には、上述した接着剤層71を構成する導電性微粒子と同じ導電性微粒子を用いることができる。
これらの材料は導電性が高くシールド層として適した材料である。」
「[図1]
[図:0001417521000001.jpg]
」
「[図4]
[図:0001417521000002.jpg]
」
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「シールドフィルム70は、接着剤層71と、接着剤層71に積層されたシールド層72と、シールド層72に積層された絶縁層73とからなるシールドフィルムであって、
接着剤層71は導電性接着剤層であり、
グランド部材1を、グランド部材1の導電性突起20が、シールドフィルム70の絶縁層73を貫くように、シールドフィルム70に押し付けて配置し、
シールドフィルム70のシールド層72は、外部からの電磁波などのノイズを遮蔽するシールド効果を示せばどのような材料からなっていてもよい
シールドフィルム70」
第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「シールドフィルム70」の「シールド層72」は、「外部からの電磁波などのノイズを遮蔽するシールド効果を示」すから、「シールドフィルム70」は、「電磁波シールドフィルム」といえる。
イ 引用発明の「シールドフィルム70」は、「接着剤層71と、接着剤層71に積層されたシールド層72と、シールド層72に積層された絶縁層73とからなるシールドフィルム」であり、「接着剤層71」は「導電性接着剤層」である。そうすると、引用発明の「シールドフィルム70」と本願発明1の「電磁波シールドフィルム」とは、「導電性接着剤層、シールド層、および絶縁層がこの順に積層され」る点で一致する。
ウ 引用発明の「グランド部材1」は、「グランド部材1を、グランド部材1の導電性突起20が、シールドフィルム70の絶縁層73を貫くように、シールドフィルム70に押し付けて配置」されるものであるから、引用発明の「シールドフィルム70」と本願発明1の「電磁波シールドフィルム」とは、「グランド部材を電磁波シールドフィルムの上に配置し、前記グランド部材の突起が前記絶縁層を貫くように押し付けて使用される」点で共通する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
【一致点】
「導電性接着剤層、シールド層、および絶縁層がこの順に積層され、
グランド部材を電磁波シールドフィルムの上に配置し、前記グランド部材の突起が前記絶縁層を貫くように押し付けて使用される、電磁波シールドフィルム。」
【相違点】
本願発明1は、「前記絶縁層のISO14577-1に基づくマルテンス硬さに対する、前記導電性接着剤層のISO14577-1に基づくマルテンス硬さの比[導電性接着剤層/絶縁層]が、0.5以上であ」るのに対し、引用発明においては、「絶縁層」と「導電性接着剤層」の硬さの比に関する特定がされていない点。
(2)相違点についての判断
本願発明1の「前記絶縁層のISO14577-1に基づくマルテンス硬さに対する、前記導電性接着剤層のISO14577-1に基づくマルテンス硬さの比[導電性接着剤層/絶縁層]が、0.5以上」とすることによって得られる効果に関しては、本願明細書に以下の記載がある。
「上記電磁波シールドフィルムにおいて、上記マルテンス硬さの比が0.3以上であることは、絶縁層に対して、導電性接着剤層のマルテンス硬さが比較的大きいことを示す。グランド部材の突起が絶縁層を貫くように押しつけられる際、突起から、積層された絶縁層、シールド層、および導電性接着剤層に対して局所的に圧力がかかる。この際、絶縁層のマルテンス硬さが比較的低いことにより、上記圧力が絶縁層に局所的にかかり、グランド部材の突起は容易に絶縁層を貫くことができる。そして、グランド部材の突起が絶縁層を貫いてシールド層に接触した際、シールド層の背面側に位置する導電性接着剤層のマルテンス硬さが比較的高いことにより、シールド層を介して局所的にかかった圧力によっても導電性接着剤層が変形しにくく、導電性接着剤層中の導電性粒子とシールド層、または導電性粒子とプリント配線板との接触が損なわれにくい。このため、上記構造を有する電磁波シールドフィルムは、絶縁層を貫いたグランド部材の突起が安定してシールド層に接触でき、グランド部材を電磁波シールドフィルムの上に配置する際に、容易にグランド部材とシールド層の間で優れた導電性を発揮させることができる。」(段落[0012])
そして、「絶縁層」と「導電性接着剤層」の硬さの比を上記相違点のように数値限定することについては、引用文献1には記載も示唆もされておらず、本願の出願前から既に周知の技術事項であったともいえない。
また、このような数値限定により得られる上記の効果は、引用文献1の記載からは、当業者が予測し得ない有利な効果といえるから、上記相違点が単なる設計的事項であったともいうことはできない。
よって、引用発明の「シールドフィルム70」を上記相違点のように構成することは、当業者であっても、容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
2.本願発明2、3について
本願発明2、3も、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 原査定について
上記第5で説示したとおり、本願発明1-3は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものでない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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