特許拒絶査定不服審判
2023-021400
電磁波シールドフィルム
- 審判番号
- 2023-021400
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-502711
- 請求日
- 2023年12月15日
- 審決日
- 2024年08月19日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】タツタ電線株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人WisePlus
- 審判長/審判官
- 審判長 篠塚 隆
- 審判官 村松 貴士
- 審判官 野崎 大進
- 分類
- P18 .537-WY (H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-502711「電磁波シールドフィルム」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 3月16日国際公開、WO2023/038097、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2022年(令和4年)9月9日(優先権主張 2021年9月9日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和5年 1月13日 :手続補正書の提出
令和5年 2月22日付け:拒絶理由通知
令和5年 6月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 9月13日付け:拒絶査定(原査定)
令和5年12月15日 :審判請求書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和5年9月13日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
請求項1には「前記開口部のうち、前記第1開口部が占める数の割合(累積頻度)が30~90%であり、前記第2開口部が占める数の割合(累積頻度)が10~70%である」との記載があるが、本願明細書には「第1(2)開口部が占める数の割合」が66(34)%である唯一の事例しか開示されておらず、請求項1-5に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
令和5年6月27日提出の意見書において実証実験例1及び2が追加されたものの、実証実験例1及び2に基づく出願人の主張は考慮の対象となり得ない。
したがって、請求項1-5に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものでない。
第3 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、令和5年1月13日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-5は以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
接着剤層と、前記接着剤層の上に積層されたシールド層と、前記シールド層の上に積層された絶縁層とからなる電磁波シールドフィルムであって、
前記シールド層には、開口面積が1~5000μm2である複数の開口部が形成されており、
前記開口部は、開口面積が1μm2を超え、300μm2以下である第1開口部と、開口面積が300μm2を超え、5000μm2以下である第2開口部とを含み、
前記開口部のうち、前記第1開口部が占める数の割合(累積頻度)が30~90%であり、前記第2開口部が占める数の割合(累積頻度)が10~70%であることを特徴とする電磁波シールドフィルム。
【請求項2】
前記シールド層の開口率は、3~10%である請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項3】
JISK7129に準じた水蒸気透過度が、温度80℃、湿度95%RH、差圧1atmで、40g/m2・24h以上である請求項1又は2に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項4】
前記シールド層は、金属層からなる請求項1又は2に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項5】
前記金属層は、銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル、錫、パラジウム、クロム、チタン及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む請求項4に記載の電磁波シールドフィルム。」
第4 原査定について
1 サポート要件違反の判断枠組み
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点に立って、判断する。
2 サポート要件違反であるとされた特許請求の範囲の記載
原査定でサポート要件違反であるとされた特許請求の範囲の「前記開口部のうち、前記第1開口部が占める数の割合(累積頻度)が30~90%であり、前記第2開口部が占める数の割合(累積頻度)が10~70%である」という記載について、上記1の判断枠組みに基づいて検討する。
(1) 本願明細書の記載
「前記開口部のうち、前記第1開口部が占める数の割合(累積頻度)が30~90%であり、前記第2開口部が占める数の割合(累積頻度)が10~70%である」という記載に関し、本願明細書には以下の記載がある。(下線は当審が付加した。)
ア 「 【0009】
特許文献1及び特許文献2に記載の電磁波シールドフィルム(電磁波シールドシート)では、シールド層(金属層)と導電性接着剤層との間に揮発成分が溜まることを防止することができ、層間密着が破壊されることをある程度防ぐことができる。しかし、シールド層に開口部を形成すると電磁波シールド特性や耐屈曲性が低下する。特に、50GHz以上の高周波領域の信号を伝送する伝送回路に用いられる場合は、電磁波シールド特性が不充分になるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされた発明であり、本発明の目的は、耐屈曲性が充分に高く、かつ、高周波領域の信号を伝送する伝送回路に用いられたとしても電磁波シールド特性が充分に高い電磁波シールドフィルムを提供することである。」
イ 「 【0024】
電磁波シールドフィルム10では、開口部50のうち、第1開口部51が占める数の割合(累積頻度)が30~90%であり、第2開口部52が占める数の割合(累積頻度)が10~70%である。
なお、第1開口部51が占める数の割合(累積頻度)が30~80%であることが好ましく、第2開口部52が占める数の割合(累積頻度)が20~70%であることが好ましい。
このような範囲であると、揮発成分の透過性及び電磁波シールド特性を充分に向上させることができる。
開口部のうち、第1開口部が占める数の割合(累積頻度)が30%未満であると、第2開口部が占める割合が多くなるので、シールド特定(当審注:「シールド特性」の誤記と認められる。)が低下する。
開口部のうち、第1開口部が占める数の割合(累積頻度)が90%を超えると、第2開口部が占める割合が少なくなるので、揮発成分の透過性が低下する。」
(2) 判断
上記イの本願明細書の記載には、「前記開口部のうち、前記第1開口部が占める数の割合(累積頻度)が30~90%であり、前記第2開口部が占める数の割合(累積頻度)が10~70%である」という記載に対応する記載が存在しているから、本願発明1-5は、発明の詳細な説明に記載された発明である。
また、上記イの「開口部のうち、第1開口部が占める数の割合(累積頻度)が30%未満であると、第2開口部が占める割合が多くなるので、シールド特性が低下する」との記載、及び、「開口部のうち、第1開口部が占める数の割合(累積頻度)が90%を超えると、第2開口部が占める割合が少なくなるので、揮発成分の透過性が低下する」との記載の内容を否定する特段の根拠はないから、特許請求の範囲の「前記開口部のうち、前記第1開口部が占める数の割合(累積頻度)が30~90%であり、前記第2開口部が占める数の割合(累積頻度)が10~70%である」という記載は、「揮発成分が溜まることを防止する」ことと「電磁波シールド特性」を高くすることを両立させるという課題を解決するための構成であると認められる。したがって、本願発明1-5が、発明な詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものではないとまではいえない。
よって、特許請求の範囲はサポート要件違反であるとはいえない。
3 小括
したがって、原査定を維持することはできない。
第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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