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特許拒絶査定不服審判

2024-004927

洗浄システム

審判番号
2024-004927
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-541359
請求日
2024年03月22日
審決日
2025年08月20日
公報発行日
2025年10月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社wash-plus
  • 【請求人代理人】植村 貴昭
審判長/審判官
  • 審判長 柿崎 拓
  • 審判官 窪田 治彦
  • 審判官 長馬 望
分類
P18 .121-WZ (D06F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

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特願2022-541359号「洗浄システム」拒絶査定不服審判事件〔令和4年2月10日国際公開、WO2022/029866〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 経緯の概略 本願は、2020年(令和2年)8月4日を国際出願日とする出願であって、その経緯は、概ね次のとおりである。 令和5年 9月 4日付け 拒絶理由通知書 令和5年 9月28日受付 意見書、手続補正書 令和6年 1月 9日付け 拒絶査定 令和6年 3月22日受付 拒絶査定不服審判請求書 令和7年 3月 3日付け 拒絶理由通知書 令和7年 3月27日受付 意見書、手続補正書 第2 本願発明 本願の請求項1~5に係る発明は、令和7年3月27日受付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 衣類を洗濯するための洗濯槽と、 強アルカリイオン水を前記洗濯槽に給水するための強アルカリイオン水給水手段と、 前記強アルカリイオン水給水手段による強アルカリイオン水の給水制御を実行する給水制御手段と、 前記洗濯槽から強アルカリイオン水の排水を行う排水部と、 前記洗濯槽からの強アルカリイオン水を中和するアルカリ排水中和剤を、前記排水部に注入するアルカリ排水中和剤注入手段と、 を備え、 前記強アルカリイオン水給水手段は、アルカリ性電解水を貯蔵するアルカリ性電解水貯蔵手段を備え、前記アルカリ性電解水貯蔵手段からのアルカリ性電解水を水道水で希釈することで、強アルカリイオン水を生成して前記洗濯槽に洗浄用として給水する ことを特徴とする洗浄システム。」 第3 当審にて通知した拒絶の理由の概要 当審にて令和7年3月3日付けで通知した拒絶の理由は次の理由を含むものである。すなわち、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例1に記載された発明及び引用例2~4に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 (引用例) 引用例1 特開2015-181765号公報 引用例2 特開2000-139804号公報 引用例3 実願昭57-18065号(実開昭58-119349号)のマイクロフィルム 引用例4 特開2020-993号公報 第4 当審にて通知した拒絶の理由についての判断 1 引用例1の記載事項 (1) 引用例1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審にて付与した。以下同様。)。 ・「【請求項1】 アルカリイオン水生成部と、 前記アルカリイオン水生成部へアルカリイオン水生成媒体を供給するアルカリイオン水生成媒体供給部と、 前記アルカリイオン水生成部で生成されたアルカリイオン水を貯留するアルカリイオン水貯留部と、 洗浄対象を洗浄する洗浄槽とを 備える洗浄システム。」 ・「【0001】 本発明は、衣類等を洗濯するための洗浄システムに関する。」 ・「【0015】 <第1の実施形態> 図1は、本発明の第1の実施形態に係る洗浄システムを示す説明図である。 【0016】 洗浄システム1は、アルカリイオン水生成部10と、アルカリイオン水生成部10へアルカリイオン水生成媒体21を供給するアルカリイオン水生成媒体供給部20と、アルカリイオン水生成部で生成されたアルカリイオン水を貯留するアルカリイオン水貯留部30と、洗浄対象を洗浄する洗浄槽100とを備える。洗浄槽100にはドラム槽200がある。 【0017】 洗浄槽100のドラム槽200には、第1配管50によって水が供給される。アルカリイオン水生成部10には第2配管51によって水が供給される。アルカリイオン水生成部10にはアルカリイオン水生成媒体供給部20からアルカリイオン水生成媒体21も供給される。このためアルカリイオン水生成媒体供給部20は、アルカリイオン水生成媒体21を複数個備える。アルカリイオン水生成媒体21は、水と反応し、例えばpH12.5以上のアルカリイオン水に変える。」 ・「【0019】 アルカリイオン水貯留部30から洗浄槽100のドラム槽200へは、第3配管52によってアルカリイオン水が供給される。アルカリイオン水の供給は、ポンプ(図示せず)によって行われる。第3配管52には、調整弁40が設けられる。調整弁40は、アルカリイオン水貯留部30からドラム槽200へのアルカリイオン水の量を調整する。これにより、第1配管50からの給水量と第3配管52からのアルカリイオン水の給水量の比を調整する。水とアルカリイオン水の量の比を調整することで、洗浄槽において、衣服などの洗浄対象に適した水素イオン濃度で洗浄することができる。 【0020】 第1配管50からの給水量と第3配管52からのアルカリイオン水の給水量の比は、5対1であることが好ましい。なお、第1配管50からの水はpH7程度あり、第3配管52からのアルカリイオン水はpH12.5程度となっている。これらの水とアルカリイオン水を5対1で洗浄槽100に供給することで、pH12程度のアルカリイオン水とし、洗剤なしで、衣類等を洗浄する。」 ・「【0026】 また、本発明では、pH10を超える強アルカリイオン水と定義する洗浄に適したアルカリイオン水で洗浄を行う。さらに本発明では、除菌作用もあるpH12を超える強アルカリイオン水で洗浄するのが好ましい。衣服等の汚れは、酸性であるため、洗浄する際の水のアルカリ性が強いほど、汚れを落とします。特にpH12以上のアルカリイオン水であれば、油汚れやタバコのヤニも分解洗浄する。」 ・「【図1】 [図:0001427500000001.jpg] 」 ・「【0028】 次に、図2~図7に基づいて、本発明の第1の実施形態に係る洗浄システムでの処理について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る洗浄システムの制御ブロック図である。 【0029】 洗浄システムは、調整弁40と調整弁50Aと、洗濯槽100に備えられた入力部101と、入力部101からの信号に応じて、調整弁40と調整弁50Aを制御する制御部60から構成される。」 ・「【図2】 [図:0001427500000002.jpg] 」 ・「【0030】 次に図3に基づいて、本発明の第1の実施形態に係る洗浄システムでの処理について詳細に説明する。図3は、本発明の第1の実施形態に係る洗浄システムの処理フロー図である。ここで、洗浄システムとしてコイン式洗濯機を想定している。 【0031】 まず、利用者により、コイン式洗濯機に備えられたコイン入れにコインが投入されたが判断される(ステップST10)。コインの投入があると、調整弁40が開放されアルカリイオン水が洗浄槽100へ供給される。調整弁50Aも開放され水道水が洗浄槽100へ供給される。同時に、調整弁40と調整弁50Aのタイマがカウントを始める(ステップST11)。 【0032】 タイマのカウントTが所定の時間t1より大きいか否かが判断される(ステップST12)。タイマのカウントTが所定の時間t1より大きくなったとき(ステップST12でYes)、制御部60が調整弁40を閉じる(ステップST13)。 【0033】 タイマのカウントTが所定の時間t2より大きいか否かが判断される(ステップST14)。タイマのカウントTが所定の時間t2より大きくなったとき(ステップST14でYes)、制御部60が調整弁50Aを閉じる(ステップST15)。 【0034】 洗浄槽100が回転し、洗濯物を洗浄する(ステップST16)。」 ・「【図3】 [図:0001427500000003.jpg] 」 ・「【0036】 次に図4~図7に基づいて、本発明の第1の実施形態に係る洗浄システムでの別の処理について詳細に説明する。図4は、本発明の第1の実施形態に係る洗浄システムの別の処理メインフロー図である。図5は、本発明の第1の実施形態に係る洗浄システムの内容確認のサブルーチンのフロー図である。図6は、本発明の第1の実施形態に係る洗浄システムの洗浄工程のサブルーチンのフロー図である。 【0037】 図4に沿って、本発明の第1の実施形態に係る洗浄システムの別の処理メインフローを説明する。まず、利用者により、コイン式洗濯機に備えられたコイン入れにコインが投入されたが判断される(ステップST10)。コインの投入があると、内容確認が行われる(ステップST100)。内容確認が終わると洗浄工程により、洗濯物の洗浄が行われる(ステップST200)。洗浄後、すすぎ工程により、すすぎが行われる(ステップST17)。最後に乾燥工程により洗濯物の乾燥が行われる(ステップST18)。 【0038】 次に、図5に沿って、内容確認のサブルーチンのフローについて説明する。内容確認サブルーチンでは、まず、洗濯物重量が計測される(ステップST110)。計測された洗濯物重量に基づいて、洗濯時に必要な水量Mが算出される(ステップST111)。水量Mに対してのアルカリイオン水の比率Kが決定される(ステップST112)。 【0039】 水量Mとアルカリイオン水の比率Kに応じて、調整弁40の開放時間t1と調整弁50Aの開放時間t2が決定される(ステップST113)。 【0040】 次に、図6に沿って、洗濯工程のサブルーチンのフローについて説明する。洗濯工程サブルーチンでは、調整弁40が開放されアルカリイオン水が洗浄槽100へ供給される。調整弁50Aも開放され水道水が洗浄槽100へ供給される。同時に、調整弁40と調整弁50Aのタイマがカウントを始める(ステップST210)。 【0041】 タイマのカウントTが所定の時間t1より大きいか否かが判断される(ステップST211)。タイマのカウントTが所定の時間t1より大きくなったとき(ステップST211でYes)、制御部60が調整弁40を閉じる(ステップST212)。 【0042】 タイマのカウントTが所定の時間t2より大きいか否かが判断される(ステップST213)。タイマのカウントTが所定の時間t2より大きくなったとき(ステップST213でYes)、制御部60が調整弁50Aを閉じる(ステップST214)。 【0043】 洗浄槽100が回転し、洗濯物を洗浄する(ステップST215)。洗浄後は、上述したように、すすぎ工程により、すすぎが行われ(ステップST17)、最後に乾燥工程により洗濯物の乾燥が行われる(ステップST18)。」 ・「【図4】 [図:0001427500000004.jpg] 【図5】 [図:0001427500000005.jpg] 【図6】 [図:0001427500000006.jpg] 」 (2)ア 引用例1に記載された洗浄システムは、「衣類等を洗濯するための洗浄システム」(【0001】)で、「洗浄システム1は、…洗浄対象を洗浄する洗浄槽100とを備え」(【0016】)、「洗浄槽において、衣服などの洗浄対象に適した水素イオン濃度で洗浄する」(【0019】)こと、「これらの水とアルカリイオン水を5対1で洗浄槽100に供給することで、pH12程度のアルカリイオン水とし、洗剤なしで、衣類等を洗浄する」(【0020】)ことから、洗浄システム1は、衣類等を洗浄する洗浄槽100を備えることがわかる。 イ 「洗浄システム1は、アルカリイオン水生成部10と、アルカリイオン水生成部10へアルカリイオン水生成媒体21を供給するアルカリイオン水生成媒体供給部20と、アルカリイオン水生成部で生成されたアルカリイオン水を貯留するアルカリイオン水貯留部30と、洗浄対象を洗浄する洗浄槽100とを備え」(【0016】)、「アルカリイオン水貯留部30から洗浄槽100のドラム槽200へは、第3配管52によってアルカリイオン水が供給され…第3配管52には、調整弁40が設けられる」(【0019】)ことから、洗浄システム1は、アルカリイオン水を洗浄槽100に供給するための、アルカリイオン水生成部10、アルカリイオン水生成媒体供給部20、アルカリイオン水貯留部30、第3配管52及び調整弁40を備えることがわかる。 ウ 「洗浄槽100のドラム槽200には、第1配管50によって水が供給される」(【0017】)こと、「コインの投入があると、…調整弁50Aも開放され水道水が洗浄槽100へ供給される」(【0031】)こと、「洗濯工程サブルーチンでは、…調整弁50Aも開放され水道水が洗浄槽100へ供給される」(【0040】)ことから、洗浄システム1は、水道水を洗浄槽100に供給するための、第1配管50及び調整弁50Aを備えることがわかる。 エ 「洗浄システムは、調整弁40と調整弁50Aと、洗濯槽100に備えられた入力部101と、入力部101からの信号に応じて、調整弁40と調整弁50Aを制御する制御部60から構成される」(【0029】)ことから、洗浄システム1は、調整弁40及び調整弁50Aを調整する制御部60を備えることがわかる。 オ 引用例1には、洗浄システムの排水に関し特段記載されていないが、洗浄システム1が洗濯槽100から排水を行う手段を備えていることは、技術的に明らかである。 カ 「洗浄槽100のドラム槽200には、第1配管50によって水が供給される」(【0017】)こと、「アルカリイオン水貯留部30から洗浄槽100のドラム槽200へは、第3配管52によってアルカリイオン水が供給される。…第3配管52には、調整弁40が設けられる。調整弁40は、アルカリイオン水貯留部30からドラム槽200へのアルカリイオン水の量を調整する。これにより、第1配管50からの給水量と第3配管52からのアルカリイオン水の給水量の比を調整する。水とアルカリイオン水の量の比を調整することで、洗浄槽において、衣服などの洗浄対象に適した水素イオン濃度で洗浄することができる。」(【0019】)こと、「コインの投入があると、調整弁40が開放されアルカリイオン水が洗浄槽100へ供給される。調整弁50Aも開放され水道水が洗浄槽100へ供給される」(【0031】)こと、「洗濯工程サブルーチンでは、調整弁40が開放されアルカリイオン水が洗浄槽100へ供給される。調整弁50Aも開放され水道水が洗浄槽100へ供給される」(【0040】)ことから、洗浄システム1は、アルカリイオン水貯留部30から洗浄槽100に第3配管52によってアルカリイオン水が供給され、洗浄槽100に第1配管50によって水道水が供給され、調整弁40及び調整弁50Aを調整することよって、洗浄対象に適した水素イオン濃度で洗浄するものであることがわかる。 キ そうすると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明) 「衣類等を洗浄するための洗浄槽100と、 アルカリイオン水を前記洗浄槽100に供給するための、アルカリイオン水生成部10、アルカリイオン水生成媒体供給部20、アルカリイオン水貯留部30、第3配管52及び調整弁40と、 水道水を前記洗浄槽100に供給するための、第1配管50及び調整弁50Aと、 前記調整弁40及び前記調整弁50Aを調整する制御部60と、 前記洗濯槽100から排水を行う手段と、 を備え、 前記アルカリイオン水貯留部30から前記洗浄槽100に前記第3配管52によってアルカリイオン水が供給され、前記洗浄槽100に前記第1配管50によって水道水が供給され、前記調整弁40及び前記調整弁50Aを調整することよって、洗浄対象に適した水素イオン濃度で洗浄する、 洗浄システム1。」 2 引用例2の記載事項 引用例2には、以下の事項が記載されている。 ・「【0002】 【従来の技術】一般に、洗浄水タンクを備え、この洗浄水タンクの洗浄水を循環させて食器を洗浄すると共に、すすぎ水を供給して食器のすすぎ洗いを行い、このすすぎ水を前記洗浄水タンクに回収し、この洗浄水タンクのオーバーフロー水を熱回収槽に導き、この熱回収槽の排水を外部に排水するように構成した食器洗浄装置が知られている(特公平2-24134号公報)。 【0003】この種の食器洗浄装置では、排水のPHが11程度あるのが一般的であり、そのまゝ外部に排水することは好ましくない。」 ・「【0007】この種の食器洗浄装置では、排水のPHがおよそ10~11の範囲にあり、強アルカリ性になっている。PHに関する排水基準は地域によって異なるものゝ、ほぼPH5.0~8.5に定められているので、基準値の上限をクリアするためには、100倍以上に希釈するか、或いは中和しなければならない。」 ・「【0012】図1において、1は食器洗浄機を示している。この食器洗浄機1は、洗浄室1a内に、ラック2に載せた食器3を置いて、当該洗浄室1a内で食器3を洗浄する洗浄機であり、本体11と洗浄水タンク13とを備えている。 【0013】本体1の洗浄室1aの上部空間には、回動自在な上洗浄ノズル4、及び上すすぎノズル5が設けられ、洗浄室1aの下部空間には、回動自在な下洗浄ノズル6、及び下すすぎノズル7が設けられている。 【0014】洗浄サイクルは、洗浄水タンク13に付設された洗浄水ポンプ17を介して洗浄水タンク13の洗浄水を汲み上げ、この洗浄水を洗浄水管15を介して、洗浄室1aの上洗浄ノズル4、及び下洗浄ノズル6に導き、上洗浄ノズル4、及び下洗浄ノズル6から食器3に噴射して行われる。食器3を洗浄した洗浄水はフィルタ19で濾過されて洗浄水タンク13に戻される。 【0015】この洗浄水タンク13の上部には当該洗浄水タンク13のオーバーフロー水を排水するオーバーフロー水排水管21が取り付けられ、このオーバーフロー水排水管21の下流には熱回収槽23が設置されている。」 ・「【0020】この実施形態では、図2に示すように、熱回収槽23の内部の最下流域に仕切板35で仕切られた排水中和槽37が設けられている。 【0021】この排水中和槽37には排水のPH値を検出するPH電極(PHセンサ)39が設けられ、このPHセンサ39は中和剤の充填された中和剤タンク41の制御部43に信号線45を介して接続されている。 【0022】この種の食器洗浄装置では、排水のPHがおよそ10~11の範囲にあり、強アルカリ性になっている。PHに関する排水基準は地域によって異なるものゝ、ほぼPH5.0~8.5に定められているので、基準値の上限をクリアするためには、100倍以上に希釈するか、或いは中和しなければならない。 【0023】この実施形態では、熱回収槽23の排水管23aからの外部排水に関し、PHセンサ39が作動して、排水中和槽37の排水PHが設定値以上に高くなった場合には、中和剤タンク41の制御部43に信号が送られ、この信号に基づいて図示を省略した注入弁が開かれる。従って、排水中和槽37に注入管47を介して中和剤が注入される。排水中和槽37の排水PHが設定値内に収まると、注入弁が閉じられて、中和剤の注入が停止される。 【0024】これによれば、排水中和槽37のPHが、ほぼ設定値内に管理されるので、熱回収槽23の排水管23aを通じて外部に排水される水のPHが、PHに関する排水基準を上回ることがない。」 ・「【図1】 [図:0001427500000007.jpg] 【図2】 [図:0001427500000008.jpg] 」 3 引用例3の記載事項 引用例3には、以下の事項が記載されている。 ・「本考案は、自動洗浄機の排水処理装置に関する。詳しくは食器、機械の精密部品、あるいはプラスチツク製、アルミ製、鉄製、木製等のコンテナー、篭等の自動洗浄機の排水処理装置に関する。 自動洗浄機において洗浄剤としてアルカリ性の洗浄剤を用いるとアルカリ性排水公害の問題を生じる。最近、公害に関する問題は大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染を問わず種々の面で世間一般の人々の関心が高くなつてきており、そのためのトラブルも多発している。一方、生活環境に被害を及ぼすものについては法的にも厳しく規制されるに到つている。しかしながら、未だ十分とは言えず、更に規制を強化しなければ現状の生活環境すら維持できなくなるおそれが充分にあり、これがため、公的機関を中心に規制強化の検討がなされているのが実情である。現在の水質汚濁防止法の規制は一日当りの平均的な排水量が50m3以上の工場又は事業所が基本的な対象となつているため、必ずしも充分に規制されない欠点を有している。このため、施設ごとの見直しを実施する事により規制を強化する運びになつており、事実、水質規制の強化に関する答申が昭和56年6月に中央公害対策審議会から環境庁長官になされている。」(1頁下から8行~2頁下から4行) ・「第1図は本考案の排水処理装置を付設した自動食器洗浄機の略示正面図であり、洗浄ラツク内に入れられた食器6が、洗浄剤ホツパー7から洗浄ポンプ12により洗浄ノズル8を経て供給される洗浄剤により洗浄され、その後温水タンク9からすすぎポンプ10によりノズル11を経て供給されるすすぎ水によりすすぎが行なわれる。…通常の運転の場合、洗浄(45秒)-停止(5秒)-すすぎ(12秒)のサイクルで洗浄し、運転時、すすぎ水量の分(通常は7l~12l/サイクル)だけ、洗浄タンク5から排水がオーバーフローする。本考案の装置においてはすすぎラインの電磁弁1の後にベンチユリー2を取りつけることにより、すすぎ用の電磁弁1が開いたとき、すすぎ水の一部がベンチユリー2に送り込まれ、ベンチユリー2の吸引作用により、酸溶解槽3から酸の溶液(硫酸水素ナトリウム溶液)が自動的に吸引され、小型の中和槽4で洗浄タンク5からオーバーフローした排水が中和される。 中和に使用される酸の溶液(硫酸水素ナトリウム溶液)の使用量の調整はベンチユリー2を通過する水量の調整で行なわれる。 洗浄機で使用されるアルカリ洗浄剤はホツパー7で溶解される粉末状のもの、あるいは定量ポンプで一定量供給される液状の形態等のもの、いずれの形態のものでも、使用するアルカリ洗浄剤の特性にみあつた排水が洗浄タンク5から排出されるため、中和用に使用する酸の量は適宜、調節すれば良く、仮に一般的に使用されている洗浄剤の濃度0.2wt%が変更されても、それにあわせて酸の供給量を加減すれば簡単に中和が可能である。」(3頁下から4行~5頁下から8行) ・「 [図:0001427500000009.jpg] 」 4 引用例4の記載事項 引用例4には、以下の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 アルカリイオン水生成媒体供給部と、 前記アルカリイオン水生成媒体を生活用水に混合し、電圧をかけることによって、アルカリイオン水のみを生成するアルカリイオン水生成部と、 前記アルカリイオン水生成部で生成されたアルカリイオン水を、密封されかつ持ち運び可能なアルカリイオン水搬送容器に、注入する注入部と、 を有するシステム。」 ・「【0066】 以上のシステムでは、ある程度規模の有るアルカリイオン水を消費するシステムを念頭に置いていたが、アルカリイオン水は今後、各家庭の洗濯にも使用可能である。 さらに、食器若しくは食品の洗浄、手洗い、機械の洗浄、除菌用薬品の代用等に利用可能である。 そのような実施形態を以下説明していく。」 ・「【0067】 図6は、家庭用の洗濯機200においてアルカリイオン水を供給するシステムの説明図である。 【0068】 家庭用の洗濯機200は、通常、水道水に各種の洗剤を投入して衣類等が洗浄される。 しかし、本実施形態の様に小分けされたアルカリイオン水搬送容器101が発明された。 そのような小分けされたアルカリイオン水搬送容器101があれば、家庭でもアルカリイオン水での洗濯が可能となる。 【0069】 図6のように、洗濯機200の洗浄室203に供給する、洗濯用の水に、アルカリイオン水を混ぜることによってこれが可能である。 アルカリイオン水搬送容器101からのアルカリイオン水の流れを制御する洗濯機第2制御弁202があれば足りる。なお、水道水等の水は、洗濯機第1制御弁201で制御される。 ここで、洗濯機第2制御弁202は、洗濯機が洗浄モードの際に水道水等が供給される間に開弁されて、アルカリイオン水を供給する。他方、ゆすぎモードの際には同じように水道水等が供給される場合には、開弁されない。 もっとも、アルカリイオン水は洗剤の様に衣類に残留してアトピー等を誘発することはないので、ゆすぎモードにおいても使用することは技術的に問題ない。問題が有るとすれば経済的に無駄であるというだけである。この点も安くより高濃度のアルカリイオン水を作れるようになれば解決可能ではある。」 ・「【図6】 [図:0001427500000010.jpg] 」 ・「【0071】 図7は、洗濯機200にアルカリイオン水を供給するシステムの他の実施形態である。 【0072】 図7(a)のように、第1水道水配管208aと第2水道水配管208bとの間に、水道水制御弁206を設ける。 この第1水道水配管208aと第2水道水配管208bは、洗濯機側の第3水道側配管208cとで、水道水配管208を構成する。なお、第3水道側配管208cは、後述の様にアルカリイオン水も通過するので、水道専用というわけではない。 また、アルカリイオン水搬送容器101に挿入されるアルカリイオン水配管205を有する。 アルカリイオン水配管205は、アルカリイオン水配管205と、アルカリイオン水弁210を有している。 またアルカリイオン水配管205は、第1アルカリイオン水配管205aと第2アルカリイオン水配管205bとを有している。そして、第1アルカリイオン水配管205aと第2アルカリイオン水配管205bとの間に、アルカリイオン水弁210が配置されている。 第1アルカリイオン水配管205aは、アルカリイオン水搬送容器101に アルカリイオン水配管205と水道水配管208との接続部分にディフーザ209が設けられている。 このディフーザ209は、水道水が勢いよく流れると、ポンプ作用を発揮して、アルカリイオン水を吸い上げて搬送することが可能である。 【0073】 図7(b)のように、ディフーザ209の代わりにポンプ207を用いることも可能である。その方がより確実にアルカリイオン水を搬送できる。他方、ディフーザ209の場合、ポンプ207を必要としないので、電源を必要とせず、コスト的にも安くすることができるというメリットがある。」 ・「【図7】 [図:0001427500000011.jpg] 」 ・「【0076】 図8は、洗濯機200でアルカリイオン水による洗浄を可能とするアタッチメント器具(混合部51)の一例の説明図である。 【0077】 洗濯機200は、水道水取入れの為に、水道の蛇口と洗濯機200とをつなぐ水道配管部材308を有してる。 水道配管部材308の一端部は水道の蛇口等に取り付けられる。 水道配管部材308の他端部は、図8のようにネジ形状を有している雄ネジ形状部材307を有している。 この雄ネジ形状部材307が、通常は洗濯機200の雌ネジ形状部分314に挿入されることによって、水道水を洗濯機200に供給している。 【0078】 水道配管部材308と、洗濯機200の雌ネジ形状部分314との間に、混合部51を挿入することによって、アルカリイオン水と水道水とを、所定の割合で混合することができる。 【0079】 混合部51は、混合部雌ネジ形状部材309、混合部第1配管310、混合部ディフーザ311、混合部第2配管312、混合部雄ネジ形状部材313、アルカリイオン水計量容器304、混合部第3配管316、計量容器逆止弁306、搬送容器側連通路302、アルカリイオン水調整弁303、搬送容器側端部301を有している。 【0080】 混合部ディフーザ311は、洗濯機200側に進むにしたがって管路断面積が徐々に狭まる第1ディフーザ部311aを有している。同様に、混合部ディフーザ311は、洗濯機200側に進むにしたがって管路断面積が徐々に狭まる第2ディフーザ部311bを有している。 第1ディフーザ部311aは、水道水が内部を通過するための物である。 他方、第2ディフーザ部311bは、アルカリイオン水が通過するものである。 混合部ディフーザ311の、流路下流方向(洗濯機200側方向)には、混合部第1配管310よりも流路断面積が狭い混合部第2配管312が形成されている。 このような構造を有することから、第1ディフーザ部311a内を水道水が流れると、流速を増して水道水が流れることになる。そうすると、ディフーザ効果によって、第2ディフーザ部311b内のアルカリイオン水も吸引されることになる。 これによって、動力などを必要とせずに、アルカリイオン水に対してポンプ作用を奏させることが可能となる。 【0081】 そして、水道水とアルカリイオン水が混合された希釈水は、混合部雄ネジ形状部材313を介して、洗濯機200に導入されることになる。」 ・「【0089】 次に、ユーザは通常の洗濯を始める。 洗濯機200は、最初に、水道水を洗浄の為に導入することから水道水を導入することになる。 その際、前述の混合部ディフーザ311の効果によって、アルカリイオン水(計量容器内部空間305のアルカリイオン水)を吸引する。 その為、洗濯の最初に行う洗浄モードの際に、アルカリイオン水が導入される。 なお、計量容器内部空間305のアルカリイオン水が吸い出されるのに従って、計量容器逆止弁306から空気が導入される。 つまり、、計量容器内部空間305のアルカリイオン水がすべて吸い出された後は、空気が混合部ディフーザ311から吸い出されることになるが、通常の洗濯機は、水の重さで計量しているので、空気が水道水にまざっても問題は生じない。 ここで、水道水にアルカリイオン水を入れる割合(速度)は、第2ディフーザ部311bの断面積、混合部第2配管312の断面積などから調整可能である。 比較的断面積を小さくした方が好適であることは言うまでもない。」 ・「【図8】 [図:0001427500000012.jpg] 」 ・「【0093】 上記実施形態では、衣類の洗濯に限定していた。 しかしながら、本件技術は上位では、強アルカリのアルカリイオン水を小分けにして、消費地に搬送して、それを消費地で希釈して利用するという技術思想である。 その為、衣類の洗濯に限定されるものではない。 そのような実施形態を以下に示す。 【0094】 図9は、洗濯以外にアルカリイオン水を利用する場合の一例の説明図である。 【0095】 図9の様に、水道水にアルカリイオン水を加えて、蛇口などから出すことによって、食品(野菜等)の洗浄を行うことも可能である。 また、食器の洗浄も行うことが可能である。 食洗器の洗剤代わりにすることも可能である。」 5 対比及び判断 (1) 対比 本願発明と引用発明とを、その機能に照らして対比する。 ア 引用発明の「衣類等を洗浄するための洗浄槽100」は、本願発明の「衣類を洗濯するための洗濯槽」に相当する。 イ 引用発明の「アルカリイオン水生成部10、アルカリイオン水貯留部、アルカリイオン水生成媒体供給部20、アルカリイオン水貯留部30、第3配管52及び調整弁40」、「第1配管50及び調整弁50A」は、洗浄槽100に強アルカリイオン水(引用例1【0026】)を供給するための手段であるから、本願発明の「強アルカリイオン水給水手段」に相当する。 ウ 引用発明の「制御部60」は、調整弁40及び調整弁50Aを調整することから、本願発明の「給水制御手段」に相当する。 エ 引用発明の「排水を行う手段」は、本願発明の「排水部」に相当する。 オ 引用発明の「アルカリイオン水貯留部30」は、本願発明の「アルカリ性電解水貯蔵手段」に相当する。 カ 以上のとおりであるから、本願発明と、引用発明とは、以下の点で一致し、相違する。 (一致点) 「衣類を洗濯するための洗濯槽と、 強アルカリイオン水を前記洗濯槽に給水するための強アルカリイオン水給水手段と、 前記強アルカリイオン水給水手段による強アルカリイオン水の給水制御を実行する給水制御手段と、 前記洗濯槽から強アルカリイオン水の排水を行う排水部と、 を備え、 前記強アルカリイオン水給水手段は、アルカリ性電解水を貯蔵するアルカリ性電解水貯蔵手段を備える、 洗浄システム。」 (相違点1) 本願発明は、「前記洗濯槽からの強アルカリイオン水を中和するアルカリ排水中和剤を、前記排水部に注入するアルカリ排水中和剤注入手段」を備えるのに対し、引用発明はそのように構成されていない点。 (相違点2) 本願発明は、強アルカリイオン水給水手段が、「前記アルカリ性電解水貯蔵手段からのアルカリ性電解水を水道水で希釈することで、強アルカリイオン水を生成して前記洗濯槽に洗浄用として給水する」のに対し、引用発明は、「前記アルカリイオン水貯留部30から前記洗浄槽100に前記第3配管52によってアルカリイオン水が供給され、前記洗浄槽100に前記第1配管50によって水道水が供給され、前記調整弁40及び前記調整弁50Aを調整することよって、洗浄対象に適した水素イオン濃度で洗浄する」点。 (2) 判断 そこで、相違点について検討する。 ア 相違点1について 洗浄に用いた後の排水が強アルカリ性である場合、そのまま排出することが適切でないことは広く知られており(例えば、引用例2(前記2(【0002】、【0003】、【0007】、【0022】))、引用例3(前記3(1頁下から3行~2頁下から4行))、強アルカリイオン水を洗浄に利用する引用発明においても、洗浄に用いた後の排水が強アルカリ性であり得ることから、洗浄後の排水に関し、同様の課題が内在することは技術的に明らかである。 そして、そのような課題に対応するために、引用例2には、食器洗浄機に関し、中和剤タンク41から排水中和槽37に中和剤を注入し、中和後に排出する点が記載され(前記2(【0012】~【0025】、図1、2))、引用例3には、自動食器洗浄機に関し、酸溶液槽3からの酸の溶液で中和槽4において排水を中和する点が記載されている(前記3(3頁下から4行~7頁1行、第1図))。 そうすると、引用発明において、洗浄後の排水を中和するために、引用例2、3に記載されて事項を適用し、排水を行う手段に中和剤を注入するための手段を設けること、すなわち、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到することができた事項である。 イ 相違点2について 引用発明は、第1配管50からの給水量と第3配管52からのアルカリイオン水の給水量の比を調整し、洗浄槽100に供給するものであるから、アルカリイオン水が水道水により希釈されたものにより洗浄しているといえるものである。 そして、引用例4には、アルカリイオン水を水道水で希釈後に洗濯機に導入する点が記載されている(前記4(【0067】~【0092】、図6~図8))。 そうすると、引用発明において、引用例4に記載された事項を適用し、アルカリイオン水貯留部30からのアルカリイオン水を水道水で希釈後に、洗浄槽100に洗浄用として給水すること、すなわち、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到することができた事項である。 ウ 本願発明の奏する効果をみても、引用発明、引用例2~4に記載された事項から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものとは認められない。 エ 請求人の主張について (ア) 請求人は、概ね、次のように主張している(令和7年3月27日受付意見書)。 ・排水が強アルカリ性である場合、そのまま排出することが適切でないことは広く知られているとの認定は強引である。広く知られているとしても、その課題があるから当然に解決すべく何らかの技術を適用して解決するものではない。 ・引用例2、3に記載されたものは、いずれも、食器の洗浄機であり、衣類の洗浄用ではない。引用例2、3には、衣類の洗濯について記載はない。引用発明とは技術分野が異なっており適用することはできない。 ・引用例1には、上記の広く知られている内容について記載も示唆もないから、引用発明に引用例2、3に記載された事項を適用する動機付けがない。 ・引用発明において、「広く知られている」として課題を抽出し、その課題を解決するために、技術分野の異なる引用例2、3に記載された食洗器の技術を適用することは、2段階の創作になっており、容易の容易になっている。 (イ) 請求人のこれらの主張について検討する。 公共用水域の水質汚濁に係る環境上の条件につき人の健康を保護し及び生活環境を保全する上で維持することが望ましい環境基準に関し、生活環境の保全に関する環境基準として、pH(水素イオン濃度)等の基準値が定められているとおり(水質汚濁に係る環境基準(環境庁告示59号))、公共用水域の水質が酸性又はアルカリ性になると、水利用の支障があるほか、水中に生息する生物に影響を及ぼすことは明らかである。そのため、例えば、引用例2に「PHに関する排水基準は地域によって異なるものゝ、ほぼPH5.0~8.5に定められている」と記載され(【0007】、【0022】)、引用例3に水質汚濁防止法による規制がある旨記載されているように(2頁5行~下から4行)、排水について法令や条例に基づきpH(水素イオン濃度)に関する基準値が定められている(排出基準を定める省令(昭和46年総理府令35号)、下水道法施行令(昭和34年政令147号)、東京都下水道条例、都民の健康と安全を確保する環境に関する条例、大阪市下水道条例等)。こうした事項は、排水に係る技術の分野における通常の知識を有する者であれば一般的に承知している事項であるから、洗浄に用いた後の排水が強アルカリ性である場合、そのまま排出することが適切でないことは、排水に係る技術の分野における通常の知識を有する者に広く知られている事項といえる。 この点、例えば、拒絶査定の理由に引用した特開2003-144793号公報(【0023】、本願明細書開示の特許文献1に該当)や、特開2003-19391号公報(【0010】、【0036】)に、アルカリイオン水と酸性イオン水のようなイオン水を用いた洗濯装置において、アルカリイオン水と酸性イオン水とを混合して放流する点が記載されているところ、これは、上記の事項を踏まえ、環境に対する影響を考慮したものであることが窺え、引用例2、3に記載のような食器の洗浄に係る技術分野だけでなく、衣類の洗浄に係る技術分野においても、洗浄に用いた後の排水が強アルカリ性である場合の課題について認識されているものと解される。 であるから、強アルカリイオン水を洗浄に利用する引用発明においても、洗浄後の排水に関し、同様の課題が内在することは技術的に明らかで、中和が代表的な手法であることも踏まえれば、引用発明にはその課題を解決するため、排水を中和するための策を講ずる動機付けは十分に認められる。 そして、引用発明と引用例2、3に記載された事項とは、ともに洗浄に関する技術であり、洗浄に用いた後の排水が強アルカリ性であり得る点で共通している。 また、引用例4(前記4(【0066】、【0095】))、上記特開2003-19391号公報(【0043】)にも記載されているように、アルカリイオン水により衣類だけでなく食器等の洗浄も可能であるから、引用発明は、食器の洗浄に係る引用例2、3に記載された事項と技術的に十分に近接している。 さらに、拒絶査定の理由に引用した上記の文献に、アルカリイオン水と酸性イオン水のようなイオン水を用いた洗濯装置において、アルカリイオン水と酸性イオン水とを混合して放流する点が記載されているように、衣類の洗浄に係る技術分野においても排水の中和が従前より行われており、排水を行う手段に中和剤を注入するための手段を設ける点が、引用例2、3に記載のような食器の洗浄に限定されるものではないことは技術的に明らかである(なお、引用例3に記載された技術は、食器だけでなく、機械の精密部品、プラスチツク製、アルミ製、鉄製、木製等のコンテナー、篭等の自動洗浄機の排水処理装置に関するものであって、食器の洗浄に限定された技術ではない。)。 技術内容の共通性、近接性に鑑みれば、引用例2、3に記載された事項は、引用発明において、洗浄後の排水に関する課題を解決する上で十分に参考になる技術であって、引用発明に引用例2、3に記載された事項を適用することを妨げる事情は特段認められない。 また、請求人は、引用発明において、「広く知られている」として課題を抽出し、その課題を解決するために、技術分野の異なる引用例2、3に記載された食洗器の技術を適用することは、2段階の創作になっていると主張するが、上述のように、引用発明がそもそも有している課題を解決するために当該課題を解決する手段を適用することは、「2段階の創作」であるとはいえない。 このように、引用発明には課題が内在し、引用例2、3に記載された事項を適用する動機付けが認められるのであって、既に述べたとおり、引用発明に引用例2、3に記載された事項を適用し、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものである。 よって、請求人の主張は採用することができない。 オ 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び引用例2、3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2、3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-004927

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