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特許拒絶査定不服審判

2024-003413

浮力で位置エネルギーを得た発電機を運動エネルギーに変えて発電する

審判番号
2024-003413
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-050805
請求日
2024年01月31日
審決日
2025年08月20日
公報発行日
2025年11月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】久保田 直男
審判長/審判官
  • 審判長 小川 恭司
  • 審判官 石井 孝明
  • 審判官 山田 由希子
分類
P18 .537-Z (F03B) / P18 .113-Z (F03B) / P18 .121-Z (F03B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法49条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第1項第4号、特許法第36条第6項第1号、特許法第2条第3項、特許法第29条、特許法第49条
データ出所
審決公報(XML)

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特願2021- 50805「浮力で位置エネルギーを得た発電機を運動エネルギーに変えて発電する」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 8月19日出願公開、特開2022-121339〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和3年2月8日の出願であって、その経緯は次のとおりである。 令和3年 5月11日付け 手続補正指令書(方式) 令和3年 7月 9日 手続補正書(明細書全文の変更) 令和5年 5月 1日付け 拒絶理由通知書 令和5年 7月13日 期間延長請求書 令和5年 8月14日 意見書及び手続補正書(明細書全文の変更) 令和5年10月16日付け 拒絶査定(以下「本件査定」ということがある) 令和6年 1月31日 審判請求書 令和6年 4月 8日付け 手続補正指令書(方式) 令和6年 6月24日 手続補正書(審判請求書の請求の理由の変更) 令和6年 9月 2日付け 手続補正指令書(方式) 令和6年10月 6日 手続補正書(審判請求書の請求の理由の変更) 第2 本願の各請求項に係る発明について 1.本願の願書に添付した特許請求の範囲について補正がされたか否かについて 特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という)について補正をすることができるが、拒絶査定不服審判を請求する場合において、明細書等の補正が許されるのは、その審判の請求と同時にするときに限られるところ(特許法第17条の2第1項第4号)、上記第1によれば、請求人が令和6年1月31日提出の審判請求書による審判の請求と同時に明細書等の補正をした事実は認められない。 また、出願の時から、審判の請求の時までに、特許請求の範囲が補正された事実も認められない。 2.本願の各請求項に係る発明について そうすると、本願の請求項1~3に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1~3に記載された次の事項により特定されるものである。 「【請求項1】 発電機が位置エネルギーをもつまでの高さまで水位が必要とする箱型の建物の中に水を張り底面から空気をおくり出す。 空気をおくり出す方法は箱型の上部から底面まで空気専用の管を敷く。そして一定の間隔で空気を放出する。 【請求項2】 その箱型の建物の内側の上部と下部に歯車を2枚ずつ設置しそれぞれチェーンをはめる そしてチェーンに一定の間隔にて下向きに開口している空気を受けとめる箱を設置する。そして箱型の建物の外側にも上部と下部に歯車を設置し上部の歯車だけ内部の歯車と連動させる。外側も同じくチェーンをはめる。そして同じ物を外側に設置し、チェーンとチェーンの間に一定の間隔で直線の棒で継ぎ、上下の向きが変わらないゴンドラを設置する。そのゴンドラに発電機を乗せ位置エネルギを持たせる 【請求項3】 位置エネルギーと持った発電機を運動エネルギーに変える為に歯車をつけ歯車に噛むレールを敷き、その上に置く発電機には大きい歯車と小さい歯車を設置しチェーンで継ぐ小さい歯車を発電機に連動させ電気を作る」 3.請求人の主張について (1)請求人の主張 請求人は、令和6年10月6日提出の手続補正書において、次のとおり主張しているので、この主張について検討する。 「(2)補正の根拠の明示 令和6年6月24日付けの手続補正書内容の「発電機が位置エネルギーをもつまでの高さまで水位が必要とする箱型の建物の中に水を張り底面から空気をおくり出し、下向きに開口している空気を受けとめる箱を設置し、そして上下の向きが変わらないゴンドラを設置連動させ、ゴンドラに発電機を乗せ位置エネルギーを持たせ、発電機を運動エネルギー変え電気を作る。」は、出願当初の特許請求の範囲に基づくものである。」 (2)上記(1)の主張の検討 請求人の上記(1)の主張によれば、請求人は特許請求の範囲を補正したかのようであり、確かに、令和6年6月24日提出の手続補正書には「(補正対象書類名)特許請求の範囲 (補正対象項目名)全文 (補正方法)変更」との記載が認められる。 しかし、上記1において説示したとおり、拒絶査定不服審判を請求する場合において、明細書等の補正が許されるのは、その審判の請求と同時にするときに限られるところ、令和6年6月24日提出の手続補正書は、提出日から明らかなとおり、令和6年1月31日の審判の請求の時に提出されたものではない。 それは措いて、令和6年6月24日提出の手続補正書の内容について検討すると、令和6年6月24日提出の手続補正書は、「【補正対象書類名】 審判請求書 【補正対象項目名】 請求の理由 【補正方法】 変更」と記載されているとおり、審判請求書の請求の理由を補正する書類であって、特許請求の範囲を補正するものではない。 しかも、審判請求書の請求の理由は、令和6年10月6日提出の手続補正書により再度補正されている。 以上のとおりであるから、請求人の上記主張は、適法な特許請求の範囲の補正がなされていない点で主張の前提を欠くから採用することができない。 第3 原査定の拒絶の理由 令和5年5月1日付け拒絶理由通知書に記載された理由1~6のうち、拒絶査定の理由となった理由2、理由3、理由5及び理由6は、概略、次のとおりである。 1.理由2 請求項2に記載の「ゴンドラに発電機を乗せ位置エネルギを持たせる」事項は、発明の詳細な説明に記載も示唆もされていないため、請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。 2.理由3 本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (1)請求項1-3 請求項1-3の記載からは、これらが「物の発明」、「方法の発明」及び「物を生産する方法の発明」のうちのいずれのカテゴリーに属するのかを把握することができない。 (2)請求項1 〔1-1〕「発電機が位置エネルギーをもつまでの高さ」が、どの程度の高さであるのかが不明である。 〔1-2〕「水位が必要とする箱型の建物」という記載において、「必要とする」の主語が「水位」となっており、当該記載の意味が不明である。 〔1-3〕 「空気をおくり出す方法は箱型の上部から底面まで空気専用の管を敷く。」という記載において、「敷く」の主語が「空気をおくり出す方法」となっており、当該記載の意味が不明である。 (3)請求項2 〔2-1〕「同じ物を外側に設置し」という記載において、「同じ物」とは何なのかが不明である。 〔2-2〕「チェーンとチェーンの間に一定の間隔で直線の棒で継ぎ」という記載までの部分では以下の4つのチェーンが特定されているところ、「チェーンとチェーン」という記載において、これらのうちのどの2つのチェーンを指しているのかが不明である。 (1)箱型の建物の内側の歯車に設置する2つのチェーンのうちの一方 (2)箱型の建物の内側の歯車に設置する2つのチェーンのうちの他方 (3)箱型の建物の外側の歯車に設置するチェーン (4)(3)のチェーンと「同じ物を外側に設置し」たもの 〔2-3〕末尾に句点(「。」)がない。 (4)請求項3 〔3-1〕「歯車をつけ」とあるが、何に歯車を付けるのかが不明である。 〔3-2〕「歯車をつけ」の歯車と、発電機に設置する「大きい歯車と小さい歯車」が同一であるのか別物であるのかが不明である。 〔3-3〕請求項3は、請求項2を引用するような記載ではなく、また、請求項3に記載のチェーンと、請求項2のチェーンが同一であるとは記載されておらず、別物であるとみとめられるところ、請求項3に記載の発明において、発電機がどのように駆動力を得るのかが不明である。 〔3-4〕「位置エネルギーと持った発電機」という記載の意味が不明である。 〔3-5〕末尾に句点(「。」)がない。 3.理由5及び理由6 本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 また、本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:国際公開第2020/256155号 第4 当審における判断 1.理由2(特許法36条6項1号違反)について (1)発明の詳細な説明の記載 本願の明細書は、令和5年8月14日提出の手続補正書により補正されているところ、その明細書の発明の詳細な説明には、次の事項が記載されている。 「【技術分野】 発電方法 【背景技術】 水力、水蒸気など発電機を回して発電するしくみを応用したもの 【発明の概要】 二酸化炭素を出さない発電 【課題を解決する手段】 (請求項1)箱型の建物に水を入れる(図1)箱型の建物の内側に上部と下部に計4箇所歯車を設置し、それぞれにチェーンをはめる。(図1)そのチェーンの間に向きの変わらない箱を一定の間隔で設置し、下の部分を開口する。(図1)箱型の建物の内側に上部から底面に空気専用管を設置する。空気を送り込む時、一定の間隔を作る為にシャッターを開け閉めする。 (請求項2)前記箱型の建物の外側に上部と下部に計4箇所、歯車を設置しそれぞれにチェーンをはめる。そのチェーンの間に棒を設置し、ゴンドラを設置する。(図1) (請求項3)発電機に歯車を4枚取り付ける。その2枚は大の歯車にする。その大の歯車に連動する小の歯車を内側に取り付ける。発電機にも小さい歯車をつけ、その内側の歯車と小さい歯車をチェーンで継ぐ。発電機には電気を送電するパンタグラフを設置する。発電機に歯車をつけた部分に接触するレールを敷き歯車で噛ます。それと同時に送電線を敷く。」 上記本願明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、発明の詳細な説明には本願発明が解決しようとする課題について明示的に記載されているわけではないが、「【課題を解決する手段】」の直前に「【発明の概要】 二酸化炭素を出さない発電」と記載されていることからみて、「二酸化炭素を出さない発電」をすることが、本願発明が解決しようとする課題(以下、単に「課題」という)であると認められる。 そして、この課題は、請求人の「本願発明は、この構成を採用することにより、脱炭素という格別な作用効果を奏するものである」(令和6年10月6日提出の手続補正書により補正された審判請求書の請求の理由)という主張とも整合する。 (2) 判断 ア 本願の請求項2には「そのゴンドラに発電機を乗せ位置エネルギを持たせる」と記載されているが、上記(1)によれば、発明の詳細な説明には、そもそも「ゴンドラに発電機を乗せ」及び「位置エネルギ」という文言そのものが存在しないから、「そのゴンドラに発電機を乗せ位置エネルギを持たせる」事項が記載又は示唆されていないことは明らかである。 イ さらに、「そのゴンドラに発電機を乗せ位置エネルギを持たせる」について、上記(1)で認定した本願発明が解決しようとする課題である「二酸化炭素を出さない発電」をするという観点からも検討する。 (ア)まず、「ゴンドラ」について着目すると、発明の詳細な説明には、「ゴンドラ」に関し、「(請求項1)箱型の建物に水を入れる(図1)箱型の建物の内側に上部と下部に計4箇所歯車を設置し、それぞれにチェーンをはめる。(図1)そのチェーンの間に向きの変わらない箱を一定の間隔で設置し、下の部分を開口する。(図1)箱型の建物の内側に上部から底面に空気専用管を設置する。空気を送り込む時、一定の間隔を作る為にシャッターを開け閉めする。 (請求項2)前記箱型の建物の外側に上部と下部に計4箇所、歯車を設置しそれぞれにチェーンをはめる。そのチェーンの間に棒を設置し、ゴンドラを設置する。(図1)」との記載が認められるが、「ゴンドラ」は、「水を入れ」た「箱形のの建物」「の外側に上部と下部に計4箇所、歯車を設置しそれぞれにチェーンをはめる。そのチェーンの間に棒を設置し」て「設置する」ものにとどまり、そもそも「ゴンドラ」が動くのか否か、また、動く場合には、そのエネルギ源が不明である。 仮に、「そのチェーンの間に」「下の部分を開口」した「向きの変わらない箱を一定の間隔で設置し」、「空気を送り込む」ことに伴い「向きの変わらない箱」が動き、その結果として「ゴンドラ」が動くものであったとしても、「空気を送り込む」手段について、「空気専用管を設置する」以外のことは不明であるから、「空気を送り込む」エネルギ源は不明である。 (イ)次に、「発電機」について着目すると、「発電機」とは「機械力によって電力を発生する機械。」(広辞苑第7版)を意味するにとどまるから、「発電機」と記載したことにより、ただちに機械力を発生するエネルギについて特定することはなく、また、機械力を発生するエネルギが「位置エネルギ」であると仮定しても、「位置エネルギ」(位置エネルギー)とは「力が働いている場で、大きさが位置だけで決まるエネルギー。基準点から高さhにある質量mの位置エネルギーは、gを重力加速度とすると、mghになる。運動エネルギーとの和が一定のとき、力学的エネルギーの保存則が成り立つという。ポテンシャル・エネルギー。」(広辞苑第7版)を意味するにとどまり、発電機を基準点から高さhにあるようにするためのエネルギは特定されないところ、発明の詳細な説明には、発電機を基準点から高さhにあるようにするためのエネルギ源について何も記載されていない。 (ウ)以上によれば、請求項2に係る発明の「そのゴンドラに発電機を乗せ位置エネルギを持たせる」ことにより、ただちに「二酸化炭素を出さない発電」をすると当業者が認識できるとも認められない。 (3)まとめ 以上のとおり、請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 2.理由3(特許法36条6項2号違反)について (1)上記第3の2(1)について ア 特許法第2条第3項では特許法上の「実施」について、「物の発明」(同条同項1号)、「方法の発明」(同条同項2号)及び「物を生産する方法の発明」(同条同項3号)に区分して定義し、これを前提として、同法第68条においては「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する」(下線は当審合議体が理解の便宜の為に付した。以下同様。)と規定されているところ、請求項に係る発明が上記「物の発明」、「方法の発明」及び「物を生産する方法の発明」のいずれのカテゴリーの発明に該当するのかが不明確である場合や、請求項に係る発明が上記「物の発明」、「方法の発明」及び「物を生産する方法の発明」のいずれのカテゴリーの発明に該当するともいえない場合には、そのような発明に特許を付与することは「業として特許発明の実施をする権利」の及ぶ範囲が不明確になり、第三者に不測の不利益を与えることになるから、適切ではない。 イ 前記アを踏まえ、本願の請求項1-3に係る発明について検討する。 (ア)請求項1には「発電機が位置エネルギーをもつまでの高さまで水位が必要とする箱型の建物の中に水を張り底面から空気をおくり出す。空気をおくり出す方法は箱型の上部から底面まで空気専用の管を敷く。そして一定の間隔で空気を放出する。」と記載されているところ、接続詞「そして」は「そうして」の約であり「前を受けて次が続く意味を示す。」(広辞苑第7版)から、上記記載の文脈からみて「・・・空気をおくり出す」という動作に続いて「・・・空気を放出する」という動作が続くのであろうことまでは理解されるものの、この一連の動作が「物」、「方法」及び「物を生産する方法」のいずれについて説明をしたものであるのかを特定するに足る記載がないため、請求項1に係る発明が上記「物の発明」、「方法の発明」及び「物を生産する方法の発明」のいずれに該当するのかが不明である。 (イ)請求項2には「その箱型の建物の内側の上部と下部に歯車を2枚ずつ設置しそれぞれチェーンをはめる そしてチェーンに一定の間隔にて下向きに開口している空気を受けとめる箱を設置する。そして箱型の建物の外側にも上部と下部に歯車を設置し上部の歯車だけ内部の歯車と連動させる。外側も同じくチェーンをはめる。そして同じ物を外側に設置し、チェーンとチェーンの間に一定の間隔で直線の棒で継ぎ、上下の向きが変わらないゴンドラを設置する。そのゴンドラに発電機を乗せ位置エネルギを持たせる」と記載されているところ、接続詞「そして」は上記(ア)で示したとおりであるから、上記記載の文脈からみて、「・・・チェーンをはめる」、「・・・箱を設置する」、「箱型の建物の外側にも上部と下部に歯車を設置し上部の歯車だけ内部の歯車と連動させる。外側も同じくチェーンをはめる」、「・・・ゴンドラを設置する」、「そのゴンドラに発電機を乗せ位置エネルギを持たせる」という各動作が続くのであろうことまでは理解されるものの、この一連の動作が「物」、「方法」及び「物を生産する方法」のいずれについて説明をしたものであるのかを特定するに足る記載がないため、請求項2に係る発明が上記「物の発明」、「方法の発明」及び「物を生産する方法の発明」のいずれに該当するのかが不明である。 (ウ)請求項3は「位置エネルギーと持った発電機を運動エネルギーに変える為に歯車をつけ歯車に噛むレールを敷き、その上に置く発電機には大きい歯車と小さい歯車を設置しチェーンで継ぐ小さい歯車を発電機に連動させ電気を作る」と記載されているから、その文末の記載からみて「電気を作る」ことまでは理解できるものの、「物」、「方法」及び「物を生産する方法」のいずれについて説明をしたものであるのかを特定するに足る記載がないため、請求項3に係る発明が上記「物の発明」、「方法の発明」及び「物を生産する方法の発明」のいずれに該当するのかが不明である。 ウ 上記イのとおりであるから、本願の請求項1-3に係る発明は不明確である。 (2)上記第3の2(2)〔1-2〕について 請求項1には「水位が必要とする箱型の建物」と記載されているが、そもそも、「建物」を修飾する「箱形」が「水位が必要とする」により修飾されているのか、「建物」が「水位が必要とする」及び「箱形の」の双方により修飾されているのかが判然としない。 それは措くとして、前記「水位が必要とする」について着目すると、「水位」とは「河川・海岸・湖沼・貯水池・ダム湖・水槽などの水面の位置をある基準からの高さによって示したもの。」(広辞苑第7版)を意味し、すなわち“程度”を表す用語であるから、「水位」そのものに要・不要という概念はない。 そうすると、前記「水位が必要とする」の意味が不明である。 その結果、「水位が必要とする」により直接的又は間接的に修飾される「建物」がどのような建物であるのかも不明である。 (3)上記第3の2(3)〔2-1〕について 請求項2には「そして箱型の建物の外側にも上部と下部に歯車を設置し上部の歯車だけ内部の歯車と連動させる。外側も同じくチェーンをはめる。そして同じ物を外側に設置し、チェーンとチェーンの間に一定の間隔で直線の棒で継ぎ、上下の向きが変わらないゴンドラを設置する。」と記載されているところ、接続詞「そして」は上記(1)イ(ア)に示したとおりであるから、上記記載の文脈からみて、「同じ物」とは、その前に記載されている範囲内のものであることまでは理解できる。 しかし、「同じ物」の直前の一文は「外側も同じくチェーンをはめる」ことのみが記載され、「チェーンをはめる」ことは、一対の歯車の存在が前提となるから、さらに、その前の一文を参照すると「箱型の建物の外側にも上部と下部に歯車を設置し」及び「上部の歯車だけ内部の歯車と連動させる」いう2つの特定事項の存在が認められる。 「チェーンをはめる」ことのみに着目すれば「箱型の建物の外側にも上部と下部に歯車を設置し」のみで足りるところ、「同じ物」が、「箱型の建物の外側にも上部と下部に歯車を設置し」「チェーンをはめる」ものであるのか、「箱型の建物の外側にも上部と下部に歯車を設置し」「上部の歯車だけ内部の歯車と連動させ」「チェーンをはめる」ものであるのかが不明である。 (4)上記第3の2(4)について ア 上記第3の2(4)〔3-1〕及び〔3-4〕について (ア)請求項3には「位置エネルギーと持った発電機を運動エネルギーに変える為に歯車をつけ」と記載されている。 (イ)まず、「位置エネルギーと持った発電機を運動エネルギーに変える」については、格助詞「を」の直前の「位置エネルギーと持った発電機」が「運動エネルギーに変え」られる対象であることが理解できる。 しかし、「位置エネルギーと持った発電機」については、「位置エネルギー」及び「持った発電機」という2つの名詞が、「対等の資格の物事を列挙する」格助詞である「と」を挟んで記載されているところ、「持った発電機」とは、「発電機」が何を持っているのかが不明である。 それは措くとしても、上記1(2)イにおいても示すとおり、「発電機」とは「機械力によって電力を発生する機械。」であって、それそのものが「運動エネルギー」に変わることはないから、「運動エネルギーに変え」られる対象としての「位置エネルギーと持った発電機」は全体として意味が不明な記載である。 (ウ)上記(ア)の請求項3の記載によれば、「歯車をつけ」る目的が「位置エネルギーと持った発電機を運動エネルギーに変える為」であることは理解できるものの、上記(イ)のとおり「位置エネルギーと持った発電機」の意味が不明であるから、「位置エネルギーと持った発電機を運動エネルギーに変える為」という目的自体が理解できない。 そうすると、その目的が理解できない状態で単に「歯車をつけ」と記載されても、何に歯車をつけるのかが不明である。 イ 上記第3の2(4)〔3-2〕について 請求項3の「歯車をつけ」の「歯車」と、「発電機に設置し」た「大きい歯車と小さい歯車」の異同が不明である。 ウ 上記第3の2(4)〔3-3〕について 上記1(2)イにおいても示すとおり、「発電機」とは「機械力によって電力を発生する機械。」であるところ、請求項3に記載された「発電機」に関しては、上記ア(イ)のとおり「運動エネルギー」を得ることについて理解することができず、他に電力を発生するに足る機械力を示す記載もないから、請求項3に記載の発明において、「発電機」がどのようにして機械力を得るのか、換言すれば「発電機」がどのように駆動力を得るのかが不明である。 (5)まとめ 以上(1)~(4)のとおり、本願の請求項1~3に係る発明は明確ではないから、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 3 理由5(特許法29条1項3号)及び理由6(特許法第29条第2項)について (1)はじめに 上記2(5)のとおり、本願の請求項1に係る発明は明確ではなく、本来であれば、理由5及び理由6について判断することは困難である。 しかし、審査において、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮して請求項1に係る発明を認定し、この認定を前提に拒絶査定されているところ、これに対して、審判請求人は、拒絶査定における請求項1に係る発明の認定について何らの主張をしていないこと、また、上記1(1)に摘記したとおり、本件の明細書には「【技術分野】 発電方法」との記載が認められ、明細書に記載された発明は方法の発明を意図しているものと推察されることに鑑み、当審においても、拒絶査定において認定された請求項1に係る発明を前提に、理由5及び理由6についても一応検討する。 (2)本願の請求項1に係る発明 理由5及び理由6について検討するにあたっては、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」ということがある)は、拒絶査定において認定された次のとおりのものと認める。 「箱型の建物の中に水を張り底面から空気をおくり出す方法であって、 前記空気をおくり出す方法は、前記箱型の建物の上部から底面まで空気専用の管を敷き、前記空気専用の管から箱型の建物の中に張った水中に一定の間隔で空気を放出する、方法。」 (3)引用文献1に記載された事項 本願出願前に国際公開された引用文献1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審合議体において付した。 ア「[0020] (エネルギー変換装置) 以下、本発明の一実施形態に係るエネルギー変換装置について、図面を参照して説明する。図1に示すように、エネルギー変換装置1は、液タンク11と、気体受け部12と、ノズル13と、ガスボンベ14と、出力手段3と、回収装置4とを備えている。このエネルギー変換装置1は、液体10が貯蔵された液タンク11内に一次エネルギー源としての圧縮気体を噴出し、生じる浮力による移動エネルギーを、液タンク11から出力可能な二次エネルギーに変換する装置である。 [0021] 液タンク11は、密封可能なタンクであり、通常は密封状態で使用される。液タンク11には、液体10が貯蔵されている。液体10は、例えば、水が好適に用いられるが、水に限られず任意の液体を用いることができる。液タンク1の大きさは、例えば2~3mであるが、これに限定されるものではない。液タンク11の内部には、液体10による浮力を用いて回転運動を発生させる動力機構31が設置されている。動力機構31は、上下方向に長いリング状に配置されたベルト31aと、ベルト31aが架けられた上下2つのギア31bと、ベルト31aの移動によって回転するギア31bとを備えている。上側のギヤ31bは、図1では液体10内に埋没しているが、その上部が液面から上に出ていてもよく、例えば、ギヤ31bの上半分近くまで液面から出ていてもよい。どれだけ出すかについては、気体受け部12における気体による浮力の有効性と、ギヤ31bの回転に対する抵抗、例えば液体10が気体受け部12に及ぼす抵抗などとの兼ね合いなどによって、適宜決めればよい。」 イ「[0023] ノズル13は、液タンク11内において、下部に位置する気体受け部12の下方から圧縮気体を噴出する。圧縮気体は、気体受け部12に捕獲されて気体受け部12に浮力を与える。気体受け部12は、液体10からの浮力を受けるが、上方に移動する際、ノズル13から噴出される圧縮気体を受けることにより、下方に移動する場合よりも、より大きな浮力を受けることになる。ノズル13は、図1では1本だけ図示されているが、1本に限られず複数本としてもよい。例えば、上向きシャワーノズルのように、ノズル13の複数の開口を、気体受け部12の下向き開口の全面に分布させることにより、広い面積から気体を気体受け部12内に出してもよい。」 ウ「[0025] ガスボンベ14は、一次エネルギー源としての圧縮気体を貯留し、その圧縮気体をノズル13に送出する。ガスボンベ14は、開閉制御されるバルブ14aを介在してノズル13から圧縮気体を噴出する。バルブ14aは、気体受け部12が所定の位置に来たときにだけ開くように制御される。これにより、圧縮気体が、効率よく気体受け部12に補足されるので圧縮気体の消費が抑制され、また液体10に気泡が混じるのを抑制して液体10の密度を高く維持できるので液体10本来の浮力を有効利用できる。」 エ「[0029] 回収装置4は、液タンク11から気体をガスボンベ14に戻す装置である。液タンク11の上部の空間は、気体が滞留するガス室15となっている。回収装置4は、そのガス室15に滞留している気体を、圧縮気体生成器5を介してガスボンベ14に送り込む。ガス室15内の気体は、ノズル13から創出された気体と、液体10の蒸気などである。」 オ「[0032] 次に、エネルギー変換装置1の動作を説明する。本装置の動作ガスつまり圧縮気体は、空気であるとして説明するが、空気に限定されない。また、液体10が、水を想定して説明する。動力機構31が設置された液タンク11に水を注入し、ガスボンベ14などの配管を、ノズル13に接続し、回収装置4の配管をガス室15に接続して、圧縮気体生成器5を動作させて圧縮気体を準備する。三方弁41でガス室15のガス圧を調整しながら、さらに、バルブ14aを調整しながらノズル13に圧縮気体を送出する。」 カ「[0040] 次に、図3を参照して、別の実施形態を説明する。この実施形態のエネルギー変換装置1は、図1の実施形態における発電装置32に替えて、ギヤ31bの回転エネルギーを機械的に外部に取り出す伝達機構30を備えている。本例において、液タンク11は地下に設置されているが、地下に設置することに限られず、半地下や地上などに接地してもよい。図1のエネルギー変換装置1についても同様である」 キ「 [図:0001428644000001.jpg] 」 ク「 [図:0001428644000002.jpg] 」 ケ 上記アの「液タンク11は、密封可能なタンクであり、通常は密封状態で使用される。液タンク11には、液体10が貯蔵されている。液体10は、例えば、水が好適に用いられる」から、液タンク11の中には水が張られているものと認められる。 コ 上記イの「ノズル13は、液タンク11内において、下部に位置する気体受け部12の下方から圧縮気体を噴出する」及び上記クから、ノズル13は液タンク11の底面に設けられているものと認められる。 サ 上記エの「液タンク11の上部の空間は、気体が滞留するガス室15となっている。回収装置4は、そのガス室15に滞留している気体を、圧縮気体生成器5を介してガスボンベ14に送り込む」、上記オの「本装置の動作ガスつまり圧縮気体は、空気である」及び「ガスボンベ14などの配管を、ノズル13に接続し、回収装置4の配管をガス室15に接続して」との記載及び上記キ及びク並びに「配管」とは「水道・ガスなどの管を配置すること。」(広辞苑第7版)を意味することから、液タンク11の上部から底面まで空気専用の管が敷かれているものと認められる。 シ 上記ウの「ガスボンベ14は、開閉制御されるバルブ14aを介在してノズル13から圧縮気体を噴出する。バルブ14aは、気体受け部12が所定の位置に来たときにだけ開くように制御される。」から、上記空気専用の管から液タンク11の中に張った水中に一定の間隔で空気を放出されるものと認められる。 (4)引用文献1に記載された発明 上記(3)から、引用文献1には、以下の発明が(以下「引用発明」という)記載されていると認められる。 「液タンク11の中に水を張り底面に設けられているノズル13から圧縮空気を噴出する方法であって、前記空気をおくり出す方法は、前記液タンク11の上部から底面まで空気専用の管を敷き、前記空気専用の管から液タンク11の中に張った水中に一定の間隔で空気を放出する、方法。」 (5)対比 本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。 「箱」とは「物を納めておく器。」を意味し、「建物」とは「建築物。建造物。」すなわち「建物・橋・塔など、建造したもの。」を意味するところ(以上、広辞苑第7版)、引用発明の「液タンク11」は、「液タンク11には、液体10が貯蔵されている。液体10は、例えば、水が好適に用いられる」(上記(3)ア)ものであり、「液タンク11は地下に設置されているが、地下に設置することに限られず、半地下や地上などに接地してもよい」(上記(3)カ)ものであるから、本願発明の「箱形の建物」に相当する。 また、引用発明の「底面に設けられているノズル13から圧縮空気を噴出する」ことは、本願発明の「底面から空気をおくり出す」ことに相当する。 そうすると、本願発明と引用発明とは全ての点で一致する。 (6)まとめ 請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 また、請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4 請求人の主張について (1)請求人は、理由2及び理由3について、主張をしていない。 (2)請求人は「(1)本願発明の説明 本願発明は、特許請求の範囲に記載された「位置エネルギーをもつ高さ」の構成のうち発電機を水と空気を使って高位置まで持ってゆくことを特徴とするものであってこのような構成を採用したことにより発電機に運動エネルギーを持たせるという顕著な作用効果を奏するものである。」と主張する。 しかし、請求項1に係る発明には「発電機を水と空気を使って高位置まで持ってゆく」という発明特定事項は存在しないから、請求人の主張は、請求項1に係る発明に基づくものではなく、採用することができない。 (3)請求人は「(3)引用発明の説明 ▲1▼特開2012-195516号公報▲2▼特開昭61-292970号公報▲3▼特開2013-058736号公報▲4▼特開2006-086313号公報▲5▼特開2017-041981号公報▲6▼登録実用新案第3164002号公報の引用文献は本願発明の「発電機に位置エネルギーを持たせ、運動エネルギーに変えて発電する」ための手段であり、本望ではない。」と主張する。 しかし、令和5年10月16日付けの拒絶査定において引用された文献は、国際公開第2020/256155号であるところ、請求人が挙げる文献はいずれも本件査定とは無関係な文献であるから、請求人の主張はその前提に誤りがあり採用することができない。 (4)請求人は「本願発明と引用刊行物に記載の発明とは、おもに発電する装置や空気をおくり出す装置のしくみにて一致し、本願発明と引用刊行物は一見類似しているが、その機能を全く異するものであって、「発電機を位置エネルギーから運動エネルギーに変えて発電する」という技術的課題を解決する意図のもとに引用刊行物に記載のものを採用することは、当業者といえども到底想致し得ることではない。しかも、本願発明は、この構成を採用することにより、脱炭素という格別な作用効果を奏するものである。」と主張する。 しかし、請求項1に係る発明は、上記3(2)のとおり、空気をおくり出す方法、すなわち空気をおくり出す装置のしくみであり、請求人も認めるとおり、請求項1に係る発明は引用発明と空気をおくり出す装置のしくみにて一致している。 そして、請求人の主張する「発電機を位置エネルギーから運動エネルギーに変えて発電する」ということの意味自体が不明であるが、それは措いても、請求項1に係る発明には「発電機を位置エネルギーから運動エネルギーに変えて発電する」という発明特定事項は存在しないから、請求人の主張は、請求項1に係る発明に基づくものではなく、採用することができない。 第5 むすび 以上によれば、本願は、特許法第49条4号及び同条2号に該当するから、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-003413

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