特許拒絶査定不服審判
2024-001768
飛行体
- 審判番号
- 2024-001768
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-189807
- 請求日
- 2024年02月01日
- 審決日
- 2025年02月17日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社Liberaware
- 【請求人代理人】One ip弁理士法人
- 審判長/審判官
- 審判長 一ノ瀬 覚
- 審判官 高橋 学
- 審判官 小岩 智明
- 分類
- P18 .113-Z (B64C) / P18 .121-Z (B64C) / P18 .575-Z (B64C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-189807号「飛行体」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年4月22日出願公開、特開2021-62830号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年10月16日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年 6月 8日付け:拒絶理由通知書
同年 7月28日 :意見書、手続補正書の提出
同年10月26日付け:拒絶査定
令和6年 2月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年2月1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正の却下の決定
[補正の却下の結論]
令和6年2月1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「外周部及び内周部を有する円筒形状の本体部と、
前記本体部の内部に設けられ、少なくとも前記本体部の上方から下方に向かう気流を発生させるための揚力発生部と、
前記本体部の下部に変位可能に設けられた複数のフラップを有するフラップ部と、
前記複数のフラップの何れかを前記本体部の下部の通気口の一部を塞ぐように変位させて前記気流の向き変えることにより、移動方向を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、同時に複数の前記フラップを変位させて前記通気口の一部を塞ぐことにより、飛行体を水平方向に移動させるように構成される、飛行体。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和5年7月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「外周部及び内周部を有する円筒形状の本体部と、
前記本体部の内部に設けられ、少なくとも前記本体部の上方から下方に向かう気流を発生させるための揚力発生部と、
前記本体部の下部に変位可能に設けられた複数のフラップを有するフラップ部と、
前記複数のフラップの何れかを前記本体部の下部の通気口の一部を塞ぐように変位させて前記気流の向き変えることにより、移動方向を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、同時に複数の前記フラップを変位させて前記通気口の一部を塞ぐことができるように構成される、飛行体。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記制御部は同時に複数の前記フラップを変位させて前記通気口の一部を塞ぐこと」に関して、この制御によって「飛行体を水平方向に移動させる」との限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献について
ア 記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特許第6533848号公報(令和元年6月19日発行。以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当審において付したものである。
(ア)「【0022】
図3は、他の飛行体10の本体部100に対して有機ELディスプレイ200を形成した例である。図4に詳しく示されるように、本体部100は、外周部及び内周部を有する円筒形状を有している。図示されるように、飛行体10は、初期状態(初期位置:着陸状態)においては、上下方向(Z方向)に開口するように構成されている。」
(イ)「【0025】
図5によく示されるように、本実施の形態による飛行体10は、本体部100の内部に設けられ、少なくとも本体部100の上方から下方に向かう気流を発生させるためのプロペラ(揚力発生部)120を有している。本実施の形態においては、プロペラ120は反転プロペラを用いることとしている。」
(ウ)「【0029】
図2及び図4に示されるように、側面部102の下方の端部にはフラップ110が設けられている。フラップ110は、120度間隔で設けられている。フラップ110は、内側及び外側の方向に向けて(すなわち側面102の法線方向に)変位可能に設けられている。飛行体10の制御部(図示せず)は、フラップ部110(合議体注:「フラップ110」の誤記と認める。)を変位させて気流の向き変えることにより、移動方向を制御する。移動の方向については後述する。」
(エ)「【0046】
フライトコントローラは、飛行体の状態を制御するように構成された制御モジュールを含んでいる。例えば、制御モジュールは、6自由度(並進運動x、y及びz、並びに回転運動θx、θy及びθz)を有する飛行体の空間的配置、速度、および/または加速度を調整するために飛行体の推進機構(モータ等)を制御する。制御モジュールは、搭載部、センサ類の状態のうちの1つ以上を制御することができる。」
(オ)図4は、以下に示すとおりである。
「
[図:0001422100000001.jpg]
」
イ 認定事項
(ア)前記ア(ア)~(ウ)から、飛行体10は、外周部及び内周部を有する円筒形状の本体部100と、本体部100の内部に設けられ、少なくとも本体部100の上方から下方に向かう気流を発生させるための揚力発生部と、制御部と、を有しているといえる。
(イ)前記ア(ウ)、(オ)から、本体部100の側面部102の下方の端部に、フラップ110が設けられているといえる。
ウ 引用発明
前記ア、イから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(なお、括弧内は、主な参照箇所を示す。)。
「外周部及び内周部を有する円筒形状の本体部100と、前記本体部100の内部に設けられ、少なくとも前記本体部100の上方から下方に向かう気流を発生させるための揚力発生部と、制御部と、を有し(前記イ(ア))、
前記本体部100の側面部102の下方の端部に、フラップ110が120度間隔で、内側及び外側の方向に向けて変位可能に設けられ(前記イ(イ)、段落【0029】)、
前記制御部は、前記フラップ110を変位させて気流の向き変えることにより、移動方向を制御する(段落【0029】)、
飛行体10。」
(3)本件補正発明と引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「飛行体10」は前者の「飛行体」に相当し、以下同様に、後者の「外周部」が前者の「外周部」に、後者の「内周部」が前者の「内周部」に、後者の「円筒形状」が前者の「円筒形状」に、後者の「本体部100」が前者の「本体部」に、後者の「内部」が前者の「内部」に、後者の「上方」が前者の「上方」に、後者の「下方」が前者の「下方」に、後者の「気流」が前者の「気流」に、後者の「揚力発生部」が前者の「揚力発生部」に、後者の「制御部」が前者の「制御部」に、後者の「下方の端部」が前者の「下部」に、後者の「変位可能」が前者の「変位可能」に、後者の「フラップ110」が前者の「フラップ」に、後者の「移動方向」が前者の「移動方向」に、それぞれ相当する。
以上の相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。
イ 後者の「外周部及び内周部を有する円筒形状の本体部100」は、前者の「外周部及び内周部を有する円筒形状の本体部」に相当する。
ウ 後者の「前記本体部100の内部に設けられ、少なくとも前記本体部100の上方から下方に向かう気流を発生させるための揚力発生部」は、前者の「前記本体部の内部に設けられ、少なくとも前記本体部の上方から下方に向かう気流を発生させるための揚力発生部」に相当する。
エ 後者の「前記本体部100の側面部102の下方の端部」は、前者の「前記本体部の下部」に相当する。
オ 後者の「円筒形状の本体部100」「を有し、」「前記本体部100の側面部102の下方の端部にフラップ110が120度間隔で」「設けられ」ることは、「前記本体部100の側面部102の下方の端部に」は、3つの「フラップ110」が「設けられ」ることであるところ、後者のこれら3つの「フラップ110」の全体が前者の「複数のフラップを有するフラップ部」に相当する。
したがって、後者の「円筒形状の本体部100」「を有し、」「前記本体部100の側面部102の下方の端部にフラップ110が120度間隔で」「変位可能に設けられ」ることは、前者の「前記本体部の下部に変位可能に設けられた複数のフラップを有するフラップ部」「を備え」ることに相当する。
カ 前記オから、後者の「制御部」「を有し、」「フラップ110が」「内側及び外側の方向に向けて変位可能に設けられ、」「前記制御部は、フラップ110を変位させて気流の向き変えることにより、移動方向を制御する」ことにおいて、「前記制御部」は、3つの「フラップ110」の何れかを「変位させて」いるといえる。
そうすると、後者の「制御部」「を有し、」「フラップ110が」「内側及び外側の方向に向けて変位可能に設けられ、」「前記制御部は、フラップ110を変位させて気流の向き変えることにより、移動方向を制御する」ことと、前者の「前記複数のフラップの何れかを前記本体部の下部の通気口の一部を塞ぐように変位させて前記気流の向き変えることにより、移動方向を制御する制御部」「を備え」ることとは、「前記複数のフラップの何れかを変位させて前記気流の向き変えることにより、移動方向を制御する制御部」「を備える」ことにおいて、共通する。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、
「外周部及び内周部を有する円筒形状の本体部と、
前記本体部の内部に設けられ、少なくとも前記本体部の上方から下方に向かう気流を発生させるための揚力発生部と、
前記本体部の下部に変位可能に設けられた複数のフラップを有するフラップ部と、
前記複数のフラップの何れかを変位させて前記気流の向き変えることにより、移動方向を制御する制御部と、を備える
飛行体。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)
「複数のフラップの何れかを変位させ」ること、及び「制御部」について、本件補正発明が、複数のフラップの何れかを「前記本体部の下部の通気口の一部を塞ぐように変位させて」おり、制御部は、「同時に複数の前記フラップを変位させて前記通気口の一部を塞ぐことにより、飛行体を水平方向に移動させるように構成される」のに対して、引用発明では、フラップ110が、「内側及び外側の方向に向けて」変位可能に設けられ、制御部は、「フラップ110を変位させて気流の向き変えることにより、移動方向を制御する」としか特定されていない点。
(4)相違点についての検討
前記(2)ア(オ)の図4を踏まえると、引用発明における円筒形状の本体部100の内部には内周部によって囲まれた貫通孔が形成され、本体部100の上端及び下端には、当該貫通孔によって、それぞれに開口が形成されていることは明らかである。
そうすると、引用発明においては、揚力発生部によって発生した気流は、円筒形状の本体部100の上方から下方に向かって流れているのであるから、本体部100の上端の開口及び下端の開口は、気流の入出口、すなわち、通気口であるといえる。
また、前記(2)ア(オ)の図4から、引用発明における円筒形状の本体部100を、その中心軸に沿う方向からみると、本体部100の上端の開口と下端の開口とは、ほぼ重なる位置にあり、両者の直径も、略同じであると認められる。
したがって、前記(2)ア(オ)の図4に示されるフラップ110の大きさと本体部100の上端の開口の大きさに鑑みれば、引用発明において、フラップ110を内側の方向に向けて変位させた場合に、その中心軸線方向に沿って、本体部100を下方からみると、フラップ110によって、本体部100の下端の開口の一部が覆われることになると認められる。
そして、「塞ぐ」には、「ふたをする、とじる、おおう」という意味がある(岩波書店 広辞苑 第五版)ことを踏まえると、引用発明において、前述のように、フラップ110が本体部100の下端の開口の一部を覆うことは、すなわち、フラップ110が本体部100の下端の開口の一部を塞ぐことであるといえる。
一方、前記(2)ア(エ)には、引用発明における飛行体10が、並進運動x、y及びzをすることが記載されているところ、前記(2)ア(オ)の図4から、並進運動x、yが水平方向の移動、並進運動zが上下方向の移動に当たるといえる。
そして、引用発明において、本体部100の上方から下方に向かって流れる気流が、フラップ110によって遮られることなく、本体部100の下端の開口の面内で一様に下方に向かって流れるのであれば、上方から下方に向かって流れる気流によって飛行体10が上下方向に移動することとなるのは、明らかである。
そうすると、引用発明において、飛行体10の水平方向の移動は、フラップ110の変位による気流の向きの変化に起因して生じるものであると認められる。
そして、引用発明において、フラップ110を内側の方向に向けて変位させた場合には、前述したようにフラップ110が本体部100の下端の開口の一部を塞ぐことになるので、本体部100の上方から下方に向かって流れる気流の向きに変化が生じることは明らかである。
したがって、引用発明において、少なくとも、フラップ110を内側の方向に向けて変位させて、フラップ110によって本体部100の下端の開口の一部を塞ぐようにすることで、飛行体10を水平方向に移動させることが可能であると認められる。
また、引用発明において、本体部100の下方の端部に120度間隔で3つのフラップ110が設けられているところ、水平方向の移動における移動方向が、内側の方向に向けて変位したフラップ110の位置、すなわち、気流の向きの変化の生じる位置に依存することも明らかである。
そして、一般に、引用発明のようなドローンと呼ばれる飛行体において、水平方向における様々な方向への移動が望まれることは、技術常識であるといえる。
以上のことから、引用発明は、3つのフラップ110のそれぞれが、内側の方向に向けて自在に変位するように制御されることによって、水平方向における様々な方向へ飛行体10が移動するものであると認められるところ、このような3つのフラップ110の制御には、当然に、2つのフラップ110を同時に内側の方向に向けて変位させて、本体部100の下端の開口の一部を塞ぐような制御も含まれていると解するのが相当である。
したがって、前記相違点は、実質的な相違点ではなく、本件補正発明は引用発明であるといえる。
仮に、引用発明における3つのフラップ110の制御に、前述のような制御が含まれていないとしても、前記技術常識を踏まえ、引用発明において、3つのフラップ110のそれぞれを内側の方向に向けて自在に変位させるような制御を行い、同時に、2つのフラップ110を内側の方向に向けて変位させて、本体部100の下端の開口の一部を塞ぐことを可能とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、本件補正発明における「前記フラップを変位させて前記通気口の一部を塞ぐこと」が本願の図14のフラップ110B、Cに示される状態を意味するとしても、前述のように、引用発明において、3つのフラップ110のそれぞれを内側の方向に向けて自在に変位するような制御を行うに際し、3つのフラップ110を前記状態となるまで、内側の方向に向けて変位させることが格別なことであるとはいえない。
したがって、本件補正発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
又は、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和6年2月1日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~9に係る発明は、令和5年7月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下の理由1、2を含むものである。
理由1.この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2.この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者という。」)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特許第6533848号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「飛行体を水平方向に移動させる」ことに係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明であるか、又は引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明であるか、又は引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないか、又は、同条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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