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特許拒絶査定不服審判

2024-001742

マグネットドラム及び磁気分離装置

審判番号
2024-001742
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-531200
請求日
2024年01月31日
審決日
2025年05月07日
公報発行日
2025年07月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】住友重機械ファインテック株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人雄渾
審判長/審判官
  • 審判長 原 賢一
  • 審判官 深草 祐一
  • 審判官 田口 裕健
分類
P18 .121-WZ (B03C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法49条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-531200「マグネットドラム及び磁気分離装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月23日国際公開、WO2020/017256〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(令和元年)6月25日(優先権主張 平成30年7月20日)を国際出願日とする出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和3年 6月 7日 手続補正書及び上申書(補正内容を説明する もの)の提出 令和5年 3月24日付け 拒絶理由通知 同年 8月 3日 手続補正書及び意見書の提出 同年10月27日付け 拒絶査定(以下、「原査定」という。) 令和6年 1月31日 手続補正書及び審判請求書の提出 第2 補正却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年1月31日提出の手続補正書によりなされた審判請求時の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の請求項1及び3の記載 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1及び3の記載は、次のとおりである。なお、下線は補正箇所である。 「【請求項1】 複数の磁石がホルダ上に周方向に沿って装着されたマグネットドラムであって、 前記ホルダ上の周方向に沿って磁極面が向かい合うように前記磁石が配置されており、 前記磁石は、径方向に移動しないように前記ホルダに係合されており、 前記ホルダは、磁石同士の間にヨークを挟設するヨーク固定部を備え、かつ、 前記磁石と前記ホルダは、凹部と凸部が嵌合することにより係止し、 前記凹部は、溝であり、前記溝は、前記ホルダの周方向と交差する方向に沿って形成されており、 前記溝が前記ホルダの周方向と交差する方向は、前記ホルダの軸方向であることを特徴とする、マグネットドラム。」 「【請求項3】 複数の磁石がホルダを介して周方向に沿って装着されたマグネットドラムであって、 前記ホルダと前記磁石は、凹部と凸部の嵌合により係止し、 前記ホルダは、磁石同士の間にヨークを挟設するヨーク固定部を備え、かつ、 周方向に隣接する2つの前記磁石の間には前記ホルダが設けられるとともに、 前記凹部は、溝であり、前記溝は、前記ホルダの周方向と交差する方向に沿って形成されており、 前記溝が前記ホルダの周方向と交差する方向は、前記ホルダの軸方向であることを特徴とする、マグネットドラム。」 (2)本件補正前の請求項1及び6の記載 上述の本件補正後の請求項1及び3は、それぞれ、本件補正前の独立請求項である請求項1及び6に対応する請求項であり、当該本件補正前の請求項1及び6の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 複数の磁石がホルダ上に周方向に沿って装着されたマグネットドラムであって、 前記ホルダ上の周方向に沿って磁極面が向かい合うように前記磁石が配置されており、 前記磁石は、径方向に移動しないように前記ホルダに係合されており、 周方向に隣接する2つの前記磁石の間には前記ホルダが設けられるとともに、 前記ホルダには前記磁石と係止するための溝が設けられ、前記溝は前記ホルダの軸方向に沿って形成されていることを特徴とする、マグネットドラム。」 「【請求項6】 複数の磁石がホルダを介して周方向に沿って装着されたマグネットドラムであって、 前記ホルダと前記磁石は、凹部と凸部の嵌合により係止し、 周方向に隣接する2つの前記磁石の間には前記ホルダが設けられるとともに、 前記凹部は、溝であり、前記溝は、前記ホルダの周方向と交差する方向に沿って形成されており、前記溝が、前記磁石の周方向の移動を制限することを特徴とする、マグネットドラム。」 2 補正の適否 (1)補正の目的 ア 請求項1について 本件補正により、本件補正前の請求項1に記載された「周方向に隣接する2つの前記磁石の間には前記ホルダが設けられるとともに、」との特定事項が、「前記ホルダは、磁石同士の間にヨークを挟設するヨーク固定部を備え、かつ、」との特定事項に変更されており、この変更は、「磁石の間」に「ヨーク」が存在する点と、「磁石の間」に設けられる「ホルダ」が「ヨーク固定部」を有する点とをさらに限定するものといえる。 また、本件補正により、本件補正前の請求項1に記載された「前記ホルダには前記磁石と係止するための溝が設けられ、前記溝は前記ホルダの軸方向に沿って形成されている」との特定事項が、「前記磁石と前記ホルダは、凹部と凸部が嵌合することにより係止し、前記凹部は、溝であり、前記溝は、前記ホルダの周方向と交差する方向に沿って形成されており、前記溝が前記ホルダの周方向と交差する方向は、前記ホルダの軸方向である」との特定事項に変更されており、この変更は、「ホルダ」における「磁石と係止するための溝」の形態を具体的に限定するものといえる。 そうすると、請求項1についての補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。 イ 請求項3(本件補正前の請求項6)について 本件補正後の請求項3には、本件補正前の請求項6に記載のない「前記ホルダは、磁石同士の間にヨークを挟設するヨーク固定部を備え、かつ、」との特定事項が追加されており、この特定事項は、本件補正前の請求項6における「磁石の間」の構成をさらに限定するものといえる。 また、本件補正により、本件補正前の請求項6に記載された「前記凹部は、溝であり、前記溝は、前記ホルダの周方向と交差する方向に沿って形成されており、前記溝が、前記磁石の周方向の移動を制限する」との特定事項が、「前記凹部は、溝であり、前記溝は、前記ホルダの周方向と交差する方向に沿って形成されており、前記溝が前記ホルダの周方向と交差する方向は、前記ホルダの軸方向である」との特定事項に変更されている。そして、本願明細書【0031】において「ホルダ20に設ける溝の方向は、ホルダ20の軸方向とする・・・。これにより、・・・磁石3がホルダ20の周方向に移動することをより抑制する」との説明がなされていることも踏まえれば、この「溝」に関する変更は、「溝」により「磁石の周方向の移動を制限する」ための形態を具体的に限定するものといえる。 そうすると、請求項3についての補正も、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。 ウ 以上のとおり、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものといえるところ、本件補正後の請求項1及び3に係る発明(以下、それぞれ「補正発明1」及び「補正発明3」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下、検討する。 (2)独立特許要件 ア 引用文献等に記載された事項 本願優先日前に頒布され、下記第3の2で述べる原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(特開2009-172590号公報)、周知文献A(国際公開第2011/040247号)、周知文献B(中国実用新案第204993002号明細書)と、周知技術を示すものとして当審にて引用する周知文献C(特開2017-227252号公報)には、以下の事項が記載されている。 なお、下線は当審にて付したものであり、「・・・」は記載の省略を表す。 (ア)引用文献1(特開2009-172590号公報)の記載事項 引用文献1には、以下の記載がある。 a 「【請求項1】 複数の磁石を配置した内筒を内蔵し、固定された該内筒の周囲を非磁性材からなる外筒が回転するようにしてある回転ドラムを備え、処理済クーラント液中の不要物を分離する回転ドラム型磁気分離装置において、 前記内筒は、 隣接する2つの磁石が同極同士で互いに向い合うよう、複数の磁石を周面の略4分の3に、略環状の磁石列として配置してあることを特徴とする回転ドラム型磁気分離装置。」 【請求項2】 前記複数の磁石のうち、周方向に隣接する2つの磁石間に、磁性材又は非磁性材で構成されたヨークを挟設するようにしてあることを特徴とする請求項1記載の回転ドラム型磁気分離装置。 ・・・ 【請求項9】 前記複数の磁石は、アリ溝を介して前記内筒に固着するようにしてあることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の回転ドラム型磁気分離装置。」 b 「【0010】 第1発明では、複数の磁石を配置した内筒を内蔵し、固定された該内筒の周囲を非磁性材からなる外筒が回転するようにしてある回転ドラムを備えている。隣接する2つの磁石が同極同士で互いに向い合うよう、複数の磁石を周面の略4分の3に、略環状の磁石列として配置することにより、磁束が反発しあい、磁束密度が大きくなる。非磁性体中に微量の磁性体が含まれている場合、このようにして発生した強力な磁力により磁性体成分を吸着することができ、従来の回転ドラムでは吸着することができなかった非磁性体を吸着して分離することができる。したがって、二次的に非磁性体のみを分離する装置を別途設ける必要がなくなり、低コストの回転ドラム型磁気分離装置を提供することが可能となる。 【0011】 また、第2発明に係る回転ドラム型磁気分離装置は、第1発明において、前記複数の磁石のうち、周方向に隣接する2つの磁石間に、磁性材又は非磁性材で構成されたヨークを挟設するようにしてあることを特徴とする。 【0012】 第2発明では、周方向に隣接する2つの磁石間に、磁性材又は非磁性材で構成されたヨークを挟設することにより、ヨークの先端部分から磁束の反発により強い磁束密度を有する磁力線が出やすくなり、より回転ドラムの外周面近傍の磁束密度を大きくすることが可能となる。 ・・・ 【0025】 また、第9発明に係る回転ドラム型磁気分離装置は、第1乃至第8発明のいずれか1つにおいて、前記複数の磁石は、アリ溝を介して前記内筒に固着するようにしてあることを特徴とする。 【0026】 第9発明では、複数の磁石は、アリ溝を介して内筒に固着してある。アリ溝を介することにより、半径方向に強力な磁力が作用した場合であっても、磁石が半径方向へ飛び出すおそれがなく、安全に製造することが可能となる。」 c 「【0036】 以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳細に説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る回転ドラム型磁気分離装置の構成を示す回転ドラムの回転軸に直交する面での断面図である。図2に示すように、本実施の形態に係る回転ドラム型磁気分離装置は、箱型の本体1内にクーラント液を溜め置く液溜め部2が設けられている。液溜め部2を二分するように、本体1の中央部近傍に回転ドラム3が略水平方向に回転することが可能に軸支されている。 【0037】 回転ドラム3は、ステンレス鋼等の非磁性材からなる円筒体をなしており、外周面に複数の磁石4、4、・・・を所定の配列で配置してある内筒5を外筒9の内部に同軸に固定してある。複数の磁石4、4、・・・の極性は、従来とは異なり、回転ドラム3の外周面近傍に略1テスラの大磁束を発生させるよう工夫して配置されている。 【0038】 図3は、本発明の実施の形態に係る回転ドラム型磁気分離装置の回転ドラム3の内筒5の構成を示す回転軸方向から見た正面図である。図3に示すように、磁石ホルダ11を介して、隣接する2つの磁石4、4が同極同士で互いに向い合うよう、複数の磁石4、4、・・・を周面の略4分の3に、略環状の磁石列として配置してある。すなわち周方向にN極、S極が配置されるよう複数の磁石4、4、・・・を配置し、同極同士が互いに向かい合うように配置されている。 【0039】 このように複数の磁石4、4、・・・を配置することにより、隣接する2つの磁石4、4間の磁束は、互いに反発し合い、そのほとんどが半径方向に外部へ出ることとなる。つまり、外部に出る有効磁束EMが著しく増大することになる。図4は、本発明の実施の形態に係る回転ドラム型磁気分離装置の内筒5での磁束の方向と流れを示す回転軸方向から見た部分模式図である。 【0040】 図4では、隣接する2つの磁石4、4の間に、例えばSPCCで構成されているヨーク10、10、・・・を挟設してある。ヨーク10、10、・・・を挟設することで、外部に出る有効磁束EMの方向をより容易に制御することができる。ヨーク10、10、・・・の材質については、SPCCのような磁性材であっても良いし、非磁性材であっても良い。 【0041】 図4に示すように、隣接する2つの磁石4、4間の磁束が互いに対向している場合には反発し合い、そのほとんどが半径方向に外部へ飛び出し、隣接するヨーク10、10、・・・方向へと回り込む。隣接する2つの磁石4、4間の磁束が互いに対向していない場合には、外部からの磁束を引き込む。つまり、外部に出た磁束を引き込むことになる。 ・・・ 【0045】 図5は、本発明の実施の形態に係る回転ドラム型磁気分離装置の回転ドラム3に用いる磁石ホルダ11の構成を示す斜視図である。磁石ホルダ11は、ステンレス(例えばSUS304)、Cu、Al、しんちゅう等の非磁性材で構成されており、図5に示すように、互いに反発しあう磁石4、4、・・・を確実かつ安全に固定するために、アリ溝12を介して磁石4、4、・・・を装着するようになっている。同様にヨーク10、10、・・・についてもアリ溝13を介して装着するようになっている。 【0046】 図6は、本発明の実施の形態に係る回転ドラム型磁気分離装置の回転ドラム3に用いる磁石ホルダ11へ磁石4、4、・・・及びヨーク10、10、・・・を装着する状態を模式的に示す斜視図である。例えば図6に示す矢印の方向に、まず一のヨーク10を一のアリ溝13に嵌め込み、次に一の磁石4を一のアリ溝12に嵌め込む。以下、順次ヨーク10と磁石4とを交互にアリ溝13、12に嵌め込むことにより、互いに反発しあう磁石4、4、・・・が周方向に飛び出ることなく磁石4、4、・・・を磁石ホルダ11へ固着することができる。 【0047】 図7は、本発明の実施の形態に係る回転ドラム型磁気分離装置の回転ドラム3に用いる磁石ホルダ11へ磁石4、4、・・・及びヨーク10、10、・・・を装着した状態を模式的に示す斜視図である。図7に示すように、磁石4、4、・・・及びヨーク10、10、・・・が互いに密着して磁石ホルダ11に装着されている。磁石4、4、・・・の磁石ホルダ11への固着方法がアリ溝を介する方法に限定されるものでないことは言うまでもない。」 d 「【図3】 [図:0001424209000001.jpg] 【図4】 [図:0001424209000002.jpg] 【図5】 [図:0001424209000003.jpg] 【図6】 [図:0001424209000004.jpg] 」 (イ)周知文献A(国際公開第2011/040247号)の記載事項 周知文献Aには、以下の記載がある。 「[0014] 実施の形態1. 図1~8にはこの発明のランデル型回転機の第1の実施の形態を示してある。本実施例のランデル型回転機はブラシレス回転機であって、ほぼ中空円筒形の固定子1と、固定子1内で回転できるように固定子1と同軸に支持された回転子2とを備えている。固定子1は、中空円筒形の枠体3と、枠体3の円筒部分の内周面に固着された複数の固定子磁極4を持つ固定子鉄心5と、固定子磁極4に巻回された固定子コイル6とを備えている。 [0015] 回転子2は、軸受7によって固定子1と同軸に支持されて固定子1に対して回転できる回転軸8と、回転軸8上に焼嵌めなどによって固着されて、複数の磁極9を持ち固定子1内で固定子1に対して回転する回転子鉄心10と、回転子鉄心10の複数の磁極9の間に磁極の方向を交互に変えて配置され、周方向に着磁されて磁極9間の磁束の漏洩を減少させる永久磁石11とを備えている。永久磁石11は、焼結フェライトもしくは絶縁体で成形した希土類ボンド磁石で作れば、磁石部に渦電流を発生せず無駄な損失がなく、高効率化できる。磁極9は、固定子磁極4に径方向に対面するように周方向に互いに離間して配置されていて、固定子磁極4に対して空隙を介して磁気的に結合され得るようにしてある。ランデル型回転機はまた、回転子鉄心10の磁極9の径方向内側に設けられて、固定子1の枠体に磁性台座29を介して支持され、回転子鉄心10および固定子鉄心5内に磁束を発生させる界磁コイル12を備えている。 [0016] この発明のランデル型回転機の回転子鉄心10は、回転軸8上で同軸に支持され、互いに離間した円板状の第1の磁性端板13および第2の磁性端板14と、一端が第1の磁性端板13に磁気的および機械的に結合されて、他端が第2の磁性端板14に向かって軸方向に延びて第2の磁性端板14に対して磁気的に分離され、互いに周方向に間隔を置いて配置された複数の第1の磁極部材15と、一端が第2の磁性端板14に磁気的および機械的に結合されて、他端が第1の磁性端板13に向かって軸方向に延びて第1の磁性端板13に対して磁気的に分離され、互いに周方向に間隔を置いて配置され、それぞれ第1の磁極部材15の間に挿入されて第1の磁極部材15と協働して上述の回転子2の磁極9を構成する複数の第2の磁極部材16と、第1および第2の磁性端板13、14間に設けられて第1および第2の磁極部材15、16をほぼそれらの全長に亘って支持する非磁性の保持体17とを備えている。 [0017] 第1および第2の磁性端板13および14ならびに第1および第2の磁極部材15および16は、いずれも軸方向に積層された複数の磁性板の積層体で構成されていて、図示の例では、非磁性の円筒形部材である保持体17による保持と共に、積層体を貫通して締結する締結手段である締結ボルト(通しボルト)18および締結ボルト(通しボルト)18aなどによる保持によって、永久磁石11と共に強固に組み立てられて保持されている。すなわち、第1の磁性端板13は内周縁で回転軸8に焼き嵌めなどによって強固に固着されており、第1の磁性端板13に対向して平行に離間した第2の磁性端板14が配置されている。第1の磁性端板13の平面形は、図4に示すように、外周縁部に後に詳述する目的のための切欠19が設けられていて、切欠19の間に固定子磁極4の数に対応した数の凸部20が形成されており、第2の磁性端板14の平面形は、図8に示すように、第1の磁性端板13に対して、切欠19と凸部20とを持つ点で平面形は同様であるが切欠19と凸部20とが互いに軸方向に対応するように位相がずらされており、またより大きな直径の内周縁21を持っている。 [0018] 第1の磁性端板13と第2の磁性端板14との間には、図5~図7に示すような、ほぼ円筒形で、外周部に軸方向に延びたダブテイル溝22を持つ保持体17が配置されていて、締結ボルト18aによって締結されている。ダブテイル溝22内には図6に示すような平面形の多数の磁性板の積層体である第1および第2の磁極部材15、16のダブテイル23が挿入されていて、第1および第2の磁極部材15および16を径方向および周方向に固定している。図3に最も良く示されているように、第1の磁極部材15は一端(図3で左側端)で第1の磁性端板13に直接当接していて、他端(図3で右側端)が第2の磁性端板14に向かって軸方向に延びて、第2の磁性端板14との間に空間すなわち空隙24を形成している。第2の磁極部材16は同様に、一端(図3で右側端)で第2の磁性端板14に直接当接していて、他端(図3で左側端)が第1の磁性端板13に向かって軸方向に延びて、第1の磁性端板13との間に空隙24を形成している。積層体である第1および第2の磁極部材15および16を軸方向に固定するために、締結ボルト18が第1および第2の磁性端板13および14の凸部20のボルト穴25と、第1および第2の磁極部材15および16のボルト穴26とに通されている。締結ボルト18の頭部27は第1および第2の磁極部材15および16の他端の端面から突出して磁束漏洩の原因とならないようにしてある。 [0019] 上述のように軸方向に平行に周方向に交互に配置された第1および第2の磁極部材15および16は、ダブテイル23と保持体17のダブテイル溝22との係合により径方向および周方向に支持され、また締結ボルト18による第1および第2の磁性端板13および14への締結により径方向、周方向に加えて軸方向にも支持されている。このように支持された第1および第2の磁極部材15および16は、互いに軸方向反対側から延びて先端部が互いに噛み合うように組み合わされていて、ランデル型の磁気鉄心を構成している。 ・・・ [0021] このように、回転軸8上に固着された第1の磁性端板13上に締結ボルト18によって支持された第1の磁極部材15と、回転軸8から離間した内周縁21を持つ第2の磁性端板14上に締結ボルト18によって支持された第2の磁極部材16とは、いずれも保持体17の外周に軸方向全長に亘って形成されたダブテイル溝22にダブテイル23が係合することによって支持されている。また、第1および第2の磁極部材15および16の間に支持されている永久磁石11は、第1および第2の磁極部材15および16と保持体17とによってほぼ全長に亘って支持されている。さらに、このような組立体全体が、保持体17を貫通して第1および第2の磁性端板13および14に締結された締結ボルト18aによって締結されている。従って、回転子鉄心10は全体として剛性の高い組立体となっていて、軸方向寸法が大きな場合にも充分な機械的強度が得られる。また、回転子鉄心10は、それぞれ別個の第1および第2の磁性端板13および14と、第1および第2の磁極部材15および16と、組み立て用のダブテイル溝22を持つ保持体17とで構成したため、製造、組立が容易である。更に、回転子鉄心10が、磁性板の積層体で構成されているので、軸方向磁気連結用磁性体内部を通過する磁束変動によって生じる、軸方向磁気連結用磁性体内部の渦電流損が無くなる。 ・・・ [0023] 第1および第2の磁性端板13および14の外周縁部には切欠19と凸部20とが形成されているが、切欠19の形状は、図5あるいは7に示すような、保持体17のダブテイル溝22に一つ置きに第1あるいは第2の磁極部材15あるいは16を挿入した状態で形成される凹部部分の外形線に対して同じあるいは僅かに大きなほぼ同一形状であり、保持体17のダブテイル溝22の軸方向延長位置に対応して設けられている。このため、回転子2の組立時に部品を軸方向に順次挿入して組み立てることができ、組み立て作業が容易である。 ・・・ [0026] 実施の形態3. 図10~17に示すこの発明の第3の実施の形態のランデル型回転機においては、回転子鉄心10が、第1および第2の磁性端板31および32と、第1および第2の磁極部材15および16の他端(磁極の先端部、すなわち第1あるいは第2の磁性端板31あるいは32に結合されてない側の端部)との間に、周方向に長く、軸方向に着磁された永久磁石33を備えている。すなわち、図1~8に示すランデル型回転機における、第1および第2の磁極部材15および16の先端部と第1および第2の磁性端板13および14との間に形成された空隙24に、永久磁石33が設けられている。永久磁石33は、図11、12および14などから明らかなように、周方向に長く、第1および第2の磁極部材15および16の先端部に側面から当接する端面を持つほぼ直方体のブロック状のものであり、第1および第2の磁極部材15および16と同様に、保持体17のダブテイル溝22に係合して保持されるダブテイル23を持っている。 ・・・ [0029] また、永久磁石33の軸方向に面する2つの面は、第1あるいは第2の磁性端板31あるいは32と第1および第2の磁極部材15および16の先端とにより支持され、永久磁石33の周方向に面する2つの端面は、第1および第2の磁極部材15および16の側面により支持され、永久磁石33の径方向内側の面は、図14および16に示すような保持体17の外周面によって支持されている。永久磁石33はまたそのダブテイル23が、保持体17の外周面に設けられたダブテイル溝22に係合していて径方向に支持されている。このように、永久磁石33は別個の特別の新規に用意した機構によって支持されるのではなく、回転子鉄心10の構成に必要な構成要素によって支持されているので、ランデル型回転機を新規の部品作成の必要が無く、低コストで量産性に優れたものとすることができる。 [0030] 組み立て作業においても、図11で紙面奥側から順次手前に部品を組み立ていくような一方向組み立てが可能となると量産性が高まるが、その場合でも、保持体17の共通のダブテイル溝22に、永久磁石33→第1および第2の磁極部材15および16→永久磁石11→永久磁石33の順番で挿入できるので、非磁性の保持体17の加工断面の形状は単純でよく、部品構造を簡単化でき、また一方向組み立て性も向上し、量産性を高めることができる。」 「[図2] [図:0001424209000005.jpg] [図5] [図:0001424209000006.jpg] [図11] [図:0001424209000007.jpg] [図14] [図:0001424209000008.jpg] 」 (ウ)周知文献B(中国実用新案第204993002号明細書)の記載事項 周知文献Bには、以下の記載がある。 「 [図:0001424209000009.jpg] 」 (当審訳:「[0015] 図1と図2を参照して、4極永久磁石同期モータを例とする省エネルギー永久磁石同期モータは、ハウジング1、固定子2及び永久磁石回転子3を含み、前記ハウジング1の両端が端部キャップ4により密封され、端部キャップ4とハウジング1がボルトにより固定接続され、ハウジング1の下方に固定脚5が設けられており、ハウジングの内部に固定子2が設けられており、固定子2の内部に永久磁石回転子3が設けられており、前記永久磁石回転子3が回転軸6及び鋳造鉄心7を含み、前記鋳造鉄心7の外周上にダブテイル溝8が設けられ、磁石固定台9及び磁気分極溝10があり、前記ダブテイル溝8内に永久磁石11が嵌め込まれ、永久磁石の高さの1/2がダブテイル溝8内にあり、残り1/2がダブテイル溝8外に突出しており、前記磁気分極溝が永久磁石回転子の極数に応じて設定され、永久磁石回転子が4極であり、4つの磁気分極溝が設けられ、永久磁石回転子3の各極には、同極性の永久磁石が複数個設けられており、前記鋳造鉄心7、ダブテイル溝8、磁石固定台9及び磁気分極溝10が一体鋳造成型されている。本実用新案の省エネルギー永久磁石同期モータは、構造がコンパクトであり、永久磁石回転子が鋳造鉄心を採用し、作製が容易であり、コストが大幅に低減されるものであり、鋳造鉄心の外周上にダブテイル溝が設けられ、磁石固定台及び分極溝があり、ダブテイル溝内に永久磁石が嵌め込まれ、永久磁石の高さの1/2がダブテイル溝8内にあり、残り1/2がダブテイル溝8外に突出しており、歯溝型を形成しており、同時に鋳造鉄心の外周上に磁気分極溝が設けられており、磁気分極溝が永久磁石回転子の極数に応じて設定され、永久磁石回転子の各極には、同極性の永久磁石が複数個設けられているため、永久磁石の磁束利用率が高まり、同時にトルクが効果的に増加し、小電流でモータを始動でき、始動が便利であり、エネルギーを節約し、本案の目的とするコスト低減を達成できる。前記鋳造鉄心の内部は中空であり、回転子の放熱に便利であり、同時にコストを低減できる。」) 「 [図:0001424209000010.jpg] [図:0001424209000011.jpg] 」(図1、図2) (エ)周知文献C(特開2017-227252号公報)の記載事項 引用文献Cには、以下の記載がある。 「【0026】 次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。図1は本発明のスライド装置の全体斜視図であり、図2及び図3はその要部の断面図であり、図中符号1はレールガイド、2は可動体、3は移動テーブル、4は重り、5,6は永久磁石、7は浮上防止手段をそれぞれ示している。 【0027】 本発明のスライド装置は、レールガイド1と、該レールガイド1に沿って摺動案内される可動体2とを備え、前記レールガイド1と可動体2の少なくとも一部が常に接触状態で摺動するように摺動面を有するとともに、前記レールガイド1と可動体2とに同極性が対面するように永久磁石5,6を配設し、該永久磁石5,6による反発力で前記可動体2の荷重を軽減し、摺動面の摩擦抵抗を低減するという構成である。 ・・・ 【0033】 本実施形態では、前記レールガイド1のアリ8と前記移動テーブル3のアリ溝9とが嵌合することによって、前記永久磁石5,6の反発力があっても、前記アリ8の斜面12,12と前記アリ溝9の斜面15,15が接触しているので、前記移動テーブル3が前記レールガイド1から浮上することがない。つまり、前記アリ8の斜面12,12と前記アリ溝9の斜面15,15が、摺動面を備えた係止部となり、前記浮上防止手段7を構成するのである。前記アリ8とアリ溝9による嵌合構造は、ガイド機能と浮上防止機能を備えているが、これと同等の機能を単独で若しくは組み合わせて備える構造を採用することも可能である。」 「【図1】 [図:0001424209000012.jpg] 【図2】 [図:0001424209000013.jpg] 」 イ 引用文献1に記載された発明 上記ア(ア)aによれば、引用文献1には、同文献の請求項1、2を直列的に引用する請求項9に係る発明として、以下の回転ドラム型磁気分離装置が記載されている。 「複数の磁石を配置した内筒を内蔵し、固定された該内筒の周囲を非磁性材からなる外筒が回転するようにしてある回転ドラムを備え、処理済クーラント液中の不要物を分離する回転ドラム型磁気分離装置において、 前記内筒は、 隣接する2つの磁石が同極同士で互いに向い合うよう、複数の磁石を周面の略4分の3に、略環状の磁石列として配置してあり、 前記複数の磁石のうち、周方向に隣接する2つの磁石間に、磁性材又は非磁性材で構成されたヨークを挟設するようにしてあり、 前記複数の磁石は、アリ溝を介して前記内筒に固着するようにしてある、 回転ドラム型磁気分離装置。」 ここで、上記ア(ア)bの【0026】からすれば、上記「アリ溝」による固着は、「磁石が半径方向へ飛び出」さないようにするためのものである。また、上記ア(ア)cの【0045】における「磁石ホルダ11は、・・・アリ溝12を介して磁石4、4、・・・を装着する」との記載を踏まえれば、上記「回転ドラム型磁気分離装置」における「複数の磁石」が「アリ溝を介して」「内筒に固着する」部位は、「磁石ホルダ」と呼称することができる。また、同【0045】における「同様にヨーク10、10、・・・についてもアリ溝13を介して装着する」との記載を踏まえれば、上記「回転ドラム型磁気分離装置」における「2つの磁石間」の「ヨーク」は、上記「磁石ホルダ」に「アリ溝を介して」固着されているといえる。そして、上記「回転ドラム型磁気分離装置」に備えられる「回転ドラム」に着目すると、引用文献1には、以下の発明が記載されているといえる。 「複数の磁石を配置した内筒を内蔵し、固定された該内筒の周囲を非磁性材からなる外筒が回転するようにしてある回転ドラムにおいて、 前記内筒は、 隣接する2つの磁石が同極同士で互いに向い合うよう、複数の磁石を周面の略4分の3に、略環状の磁石列として配置してあり、 前記複数の磁石のうち、周方向に隣接する2つの磁石間に、磁性材又は非磁性材で構成されたヨークを挟設するようにしてあり、 前記複数の磁石は、磁石が半径方向へ飛び出さないように、アリ溝を介して前記内筒の磁石ホルダに固着するようにしてあり、 前記ヨークは、アリ溝を介して前記内筒の磁石ホルダに固着するようにしてある、 回転ドラム。」 (以下、「引用発明」という。) ウ 補正発明3について (ア)対比 事案にかんがみ、まず、補正発明3について検討する。以下、補正発明3と引用発明を対比する。 a 引用発明の「回転ドラム」は、「複数の磁石を配置した内筒を内蔵」していることから、「マグネットドラム」であるといえる。 b 引用発明の「磁石ホルダ」は、「複数の磁石」を固着するものであるから、補正発明3の「ホルダ」に相当する。 c 引用発明の「複数の磁石」は、「回転ドラム」の「内筒」の「周面の略4分の3に、略環状の磁石列として配置」され、「内筒の磁石ホルダに固着」されているのであるから、補正発明3の「複数の磁石」と同じく、「マグネットドラム」において「ホルダを介して周方向に沿って装着された」ものといえる。 d 引用発明の「複数の磁石」は、「磁石ホルダ」に「アリ溝を介して」固着されており、「アリ溝」による固着構造は、凹部と凸部の嵌合により係止する構造であるといえるから、引用発明の「磁石ホルダ」及び「複数の磁石」と、補正発明3の「ホルダ」及び「磁石」とは、「凹部と凸部の嵌合により係止し、」「前記凹部は、溝であ」るとの構造を備える点で共通している。 e 引用発明では、「周方向に隣接する2つの磁石間に、磁性材又は非磁性材で構成されたヨークを挟設する」ために、「ヨーク」が「アリ溝を介して前記内筒の磁石ホルダに固着」されており、この「磁石ホルダ」の「アリ溝」は「ヨーク固定部」と呼称できるから、引用発明の「磁石ホルダ」は、補正発明3の「ホルダ」と同じく、「磁石同士の間にヨークを挟設するヨーク固定部を備え」ているといえる。さらに、当該磁石同士の間にある「アリ溝」は「磁石ホルダ」に形成されているのであるから、引用発明の「周方向に隣接する2つの磁石間」には、当然「ホルダが設けられ」ているといえる。 f そうすると、補正発明3と引用発明は、 「複数の磁石がホルダを介して周方向に沿って装着されたマグネットドラムであって、 前記ホルダと前記磁石は、凹部と凸部の嵌合により係止し、 前記ホルダは、磁石同士の間にヨークを挟設するヨーク固定部を備え、かつ、 周方向に隣接する2つの前記磁石の間には前記ホルダが設けられるとともに、 前記凹部は、溝である、 マグネットドラム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 磁石を係止する溝が、補正発明3では、「ホルダの周方向と交差する方向に沿って形成されており」、その方向とは「ホルダの軸方向である」のに対し、引用発明では、どの方向に形成されるかが定められていない点。 (イ)相違点に対する判断 a 「アリ溝」は、「ダブテイル溝」とも呼ばれ、溝の奥側に向かうほど広くなるようなハの字形状の断面を有する溝のことを指し、当該形状に対応した突起と噛み合わせることで、溝の方向以外に移動しないように溝側の部品と突起側の部品とを嵌合できる構造として、多様な分野において一般的に採用されているものである。 ここで、引用発明における「アリ溝」の形成目的は、「磁石が半径方向へ飛び出さないように」することであるが、これは、「アリ溝」をドラム内筒の外周面に形成しさえすれば、達成されるものである。そうすると、引用発明における「アリ溝」の具体的な方向は、任意であってよく、実際に溝を形成する際に、磁石の配置数、磁石の形状、磁石配置時の操作性等を勘案して、適宜の方向が選択されることになるといえる。 例えば、上記ア(ア)dに示す引用文献1の【図5】の磁石配置のように、磁石同士の内筒周方向の間隔が比較的広い場合は、アリ溝の方向として周方向を選択し、当該周方向に沿って磁石を差し込むことが可能である一方、磁石同士の周方向の間隔が狭く、周方向に磁石を差し込めない場合は、アリ溝の方向として周方向に直交する軸方向を選択するほかない。また、軸方向に長い磁石を用いる場合等では、アリ溝の方向として軸方向を選択し、磁石長辺を当該軸方向に沿ってアリ溝に差し込む方が、磁石短辺を周方向に沿って差し込むよりも噛み合い部を長くとれるため、固定時の安定性を高くしやすく、半径方向への飛び出しを防止する上で好適となり得るといえる。 b 加えて、上記ア(イ)の特に下線部に示すとおり、周知文献Aには、ランデル形回転機において、「ほぼ円筒形で、外周部に軸方向に延びたダブテイル溝22を持つ保持体17」の「ダブテイル溝」に磁極部材や永久磁石を係合することにより、「径方向および周方向」に固定又は支持する技術が記載されている。また、上記ア(ウ)の特に下線部に示すとおり、周知文献Bには、永久磁石同期モータにおいて、「鋳造鉄心7の外周上にダブテイル溝8が設けられ」、「前記ダブテイル溝8内に永久磁石11が嵌め込まれ」る構造が記載されており、同文献の図2も踏まえれば、当該「タブテイル溝」は、円筒形の鉄心の軸方向に沿って形成されていることが読み取れる。これらの記載からすれば、円筒形部品の外周方向に沿って磁石等の磁性部材を配置する際に、円筒の軸方向に形成したダブテイル溝すなわちアリ溝に嵌合させて係止する構造は、当業者に周知であったといえる。 c 上述のように、引用発明のアリ溝の形成方向は、磁石配置に係る事情等を勘案して任意に選択できるものであるし、円筒形部品の外周方向に沿って磁石等の磁性部材を配置するために、円筒の軸方向にアリ溝を形成した構造も、当業者に周知のものであるところ、円筒形となるホルダ上に磁石を係止する引用発明において、上記周知構造のように、アリ溝の方向として軸方向とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。 (ウ)補正発明3の効果について a 補正発明3における「軸方向」に形成した「溝」の効果は、本願明細書【0016】の記載によれば、「組み立て時における磁石の移動を抑制し、マグネットドラムの組み立てを容易に行うことができる」とともに「組み立て後のマグネットドラムにおいて、磁石の配置の変化を抑制し、マグネットドラムの設計上の機能を損なわないようにすることができる」というものであり、具体的には、同【0031】及び【0032】の記載によれば、「磁石3がホルダ20の周方向に移動する作用に対して、磁石3を係止する方向が直交する状態となるため、磁石3がホルダ20の周方向に移動することをより抑制することが可能とな」り、「ホルダ20上の周方向における磁石3の移動を制限するだけではなく、磁石3の反発力によりホルダ20の外側に向かって働く力に対しても、磁石3の移動を抑制することが可能となる」というものである。ここで、「ホルダ20の外側に向か」う方向とは、同【0004】の「半径方向(外側方向)」との記載からも明らかなとおり、ホルダ又はドラムの径方向のことである。 b まず、引用発明における「アリ溝」は、「磁石が半径方向へ飛び出さないように」するものであるから、引用発明は、補正発明3の「磁石3の反発力によりホルダ20の外側に向かって働く力に対しても、磁石3の移動を抑制することが可能となる」と同じ効果を奏するものといえる。 c また、上記ア(イ)の周知文献Aの【0019】及び【0023】に記載されているように、円筒形部品の軸方向に形成したアリ溝(ダブテイル溝)によれば、磁性部品を「径方向および周方向」に固定できること、また、磁性部品を軸方向に順次挿入して組み立てられるため組み立て作業が容易であることは、当業者に知られた事実である。ここで、当該「径方向」に固定できるとは、円筒形部品上に配置された磁性部品に加わる半径方向への力に抗して移動が抑制されることであり、当該「周方向」に固定できるとは、円筒形部品状に配置された磁性部品に加わる周方向への力に抗して移動が抑制されるということである。 さらに、上記ア(エ)の周知文献Cの【0033】に示されているように、「アリ8とアリ溝9による嵌合構造」が、「ガイド機能」すなわち溝が形成された方向への移動補助機能と、「浮上防止機能」すなわち磁石の「反発力」に抗して溝に固定する機能とを有することも、当業者に知られた事実である。 d 以上の事実が当業者に知られていたことも踏まえれば、引用発明において、アリ溝の形成方向をドラムの軸方向とした際には、磁石が「径方向および周方向」に固定(つまり、移動又は配置の変化を抑制)されることや、アリ溝の「ガイド機能」により、磁石を「径方向および周方向」に固定しつつ溝方向に順次挿入して容易に組み立てられることは、当業者であれば十分予測し得る事項といえる。そうすると、「組み立て時における磁石の移動を抑制し、マグネットドラムの組み立てを容易に行うことができる」とともに「組み立て後のマグネットドラムにおいて、磁石の配置の変化を抑制し、マグネットドラムの設計上の機能を損なわないようにすることができ」、具体的には「周方向」及び「径方向」の移動又は配置の変化を抑制できるという、上述の補正発明3の効果は、当業者の予測を超える格別顕著なものとはいえない。 (エ)審判請求書における請求人の主張について a 請求人の主張の内容 請求人は、上記相違点1に係る「前記溝が前記ホルダの周方向と交差する方向は、前記ホルダの軸方向である」との構成に関し、審判請求書4-3.(1)において、次の(a)~(d)のように主張している。なお、同(1)は、補正発明1に関して主張する項目であるが、補正発明3に関しても、同(3)において、補正発明1と「同様」として以下の主張がそのまま引用されている。 (a)「本願発明は、組み立て時における磁石の移動を抑制するだけでなく、組み立て後の磁石の周方向への配置の変化を抑制し、マグネットドラムの設計上の機能を損なわないようにするものであり(本願明細書段落[0006]、[0007])、溝の方向がホルダの軸方向であることは、この発明を実現するための技術的意義を有するものであって、単なる設計的事項ではない。」 (b)「引用文献1の段落[0046]・・・には、磁石ホルダへの磁石及びヨークの装着の手順が記載されており、具体的には、まずは一のヨークを一のアリ溝13に嵌め込み、次に一の磁石を一のアリ溝12に嵌めこむことが記載されている。そして、順次、ヨークと磁石を交互に嵌め込むことによって、互いに反発しあう磁石が周方向に飛び出ることなく磁石を磁石ホルダへ固着できることが記載されている。つまりは、引用文献1・・・に記載された発明では、組み立て時における磁石の周方向への飛び出しを抑制することは記載されているが、組み立て後の磁石の周方向への配置の変化について何ら着目していない。 してみると、引用文献1・・・に記載された発明において、アリ溝12の方向を磁石ホルダの軸方向へ変更する動機はない。」 (c)「周知文献Aは、自動車用発電機に用いられるランデル型回転機に関する発明であり、周知文献Bは、省エネルギー永久磁石同期モータに関する発明である。すなわち、周知文献A、Bに記載された発明は、引用文献1・・・に記載された回転ドラム型磁気分離装置の発明とは技術分野が異なるものであるから、引用文献1・・・に記載された発明の技術分野における周知技術ではない。よって、審査官殿の周知技術の認定は誤りである。 さらに、引用文献1・・・に記載された発明において、周知文献A、Bに記載された発明を適用する動機もない。」 (d)「本願発明1の効果について検討すると、本願発明1は、組み立て後のマグネットドラムにおいて、磁石の配置の変化を抑制し、マグネットドラムの設計上の機能を損なわないようにすることができるという有利な効果がある。 一方、引用文献1・・・に記載された発明は、組み立て後の磁石の配置の変化について記載も示唆もされていないことから、上記本願発明1の有利な効果は、引用文献1・・・に記載された発明の効果と比較して異質なものであり、出願時の技術水準に基づいて当業者が予測できたものではない。」 b 請求人の主張に対する当審の判断 (a)上記a(a)の主張に対して 引用発明のアリ溝は、磁石を磁石ホルダに固着させるために設けるものであり、上記(イ)aでも述べたとおり、このアリ溝の具体的な方向は、当業者であれば、磁石を固着できるような溝として適宜選択できる事項といえる。そして、上記(イ)bのとおり、「軸方向」に形成されたアリ溝は、当業者に周知のものであるところ、引用発明のアリ溝の具体的な設計の際に、当該周知のアリ溝を採用することに何ら困難な点はなく、また、上記(ウ)のとおり、当該構成による効果も格別なものとはいえない。 (b)上記a(b)の主張に対して 引用発明の認定の基礎となった請求項9には、「前記複数の磁石は、アリ溝を介して前記内筒に固着するようにしてある」と記載され、特にアリ溝の方向については限定されていないこと、また、引用発明では「磁石が半径方向へ飛び出さないように」アリ溝を設けていることを考慮すると、アリ溝の構造や磁石装着手順は、上記ア(ア)cの【0046】や同dの【図6】に記載されるような磁石装着手順や周方向に形成した「アリ溝12」に限定されているわけではない。そして、上記(イ)aでも述べたように、引用発明のアリ溝の具体的な構成は、当業者であれば適宜設計可能な事項であるとともに、上記(イ)bのとおり、軸方向のアリ溝も当業者に周知であるから、引用発明のアリ溝として軸方向の溝を採用することが、当業者にとって想起し得ないことであるとはいえない。 (c)上記a(c)の主張に対して 周知文献A及びBに記載されたアリ溝(ダブテイル溝)による磁石等の固着技術は、引用発明におけるアリ溝による固着技術と、円筒形部品の外周面に沿って磁石を固着させるためのものという点で共通しているし、周知文献A及びBに記載される円筒形部品の外周面に沿って磁石を配置する際に、アリ溝をどのように設けるかという点が、「自動車用発電機に用いられるランデル型回転機」或いは「省エネルギー永久磁石同期モータ」に特有の技術であるということもできない。そのため、周知文献A及びBに記載されたアリ溝に関する技術的事項は、当業者であれば、引用発明のアリ溝を設計する際に十分考慮できる事項であるといえる。 (d)上記a(d)の主張に対して 上記(ウ)で述べたとおり、軸方向に形成した溝によって磁石の配置の変化、すなわち、磁石の半径方向及び軸方向への変化を抑制するという効果は、引用発明においてアリ溝の方向を軸方向としたものから、当業者が十分に予測できるものである。 c 上記bのとおりであるから、請求人の審判請求書での主張を採用することはできない。 エ 補正発明1について (ア)対比 補正発明1と引用発明とを対比する。 a 上記ウ(ア)aと同様に、引用発明の「回転ドラム」は、「マグネットドラム」であるといえ、上記ウ(ア)bと同様に、引用発明の「磁石ホルダ」は、補正発明1の「ホルダ」に相当する。 b 引用発明の「複数の磁石」は、「回転ドラム」の「内筒」の「周面の略4分の3に、略環状の磁石列として配置」され、「内筒の磁石ホルダに固着」されているのであるから、補正発明1の「複数の磁石」と同じく、「マグネットドラム」において「ホルダ上に周方向に沿って装着された」ものといえる。 c 引用発明の「隣接する2つの磁石が同極同士で互いに向い合うよう、」「略環状の磁石列として配置してあり」との構成は、補正発明1の「前記ホルダ上の周方向に沿って磁極面が向かい合うように前記磁石が配置されており」との構成に相当する。 エ 引用発明の「磁石ホルダ」及び「複数の磁石」は、「磁石が半径方向へ飛び出さないように、アリ溝を介して」固着されているところ、「アリ溝」による固着構造は、「凹部と凸部の嵌合により係止」する構造であるといえるから、引用発明の「磁石ホルダ」及び「複数の磁石」と、補正発明1の「ホルダ」及び「磁石」とは、「前記磁石は、径方向に移動しないように前記ホルダに係合されており、」「凹部と凸部の嵌合により係止し、」「前記凹部は、溝であ」るとの構造を備える点で共通している。 オ 上記ウ(ア)eと同様に、引用発明の「磁石ホルダ」は、補正発明1の「ホルダ」と同じく、「磁石同士の間にヨークを挟設するヨーク固定部を備え」ているといえる。 カ そうすると、補正発明1と引用発明は、 「複数の磁石がホルダ上に周方向に沿って装着されたマグネットドラムであって、 前記ホルダ上の周方向に沿って磁極面が向かい合うように前記磁石が配置されており、 前記磁石は、径方向に移動しないように前記ホルダに係合されており、 前記ホルダは、磁石同士の間にヨークを挟設するヨーク固定部を備え、かつ、 前記磁石と前記ホルダは、凹部と凸部が嵌合することにより係止し、 前記凹部は、溝である、 マグネットドラム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2> 磁石を係止する溝が、補正発明1では、ホルダの周方向と交差するホルダの軸方向に沿って形成されているのに対し、引用発明では、どの方向に形成されるかが定められていない点。 (イ)相違点に対する判断 そして、上記相違点2は、上記相違点1と同じ内容であるところ、上記ウ(イ)で検討したとおり、引用発明において相違点2に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 (ウ)補正発明1の効果について 補正発明1における「軸方向」に形成した「溝」の効果は、補正発明3の「溝」の効果と同じであるところ、上記ウ(ウ)で検討したとおり、補正発明1の効果は、当業者の予測を超える格別顕著なものとはいえない。 (エ)審判請求書における請求人の主張について 請求人は、審判請求書4-3.(1)において、補正発明1の進歩性に関する主張を行っているが、上記ウ(エ)で検討したとおり、当該主張を採用することはできない。 オ 小括 以上のとおり、補正発明1及び3は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 3 本件補正についてのむすび 補正発明1及び3は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1及び6に係る発明は、令和5年8月3日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1及び6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明6」という。)は、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、令和5年3月24日付け拒絶理由通知書に記載された理由2であって、その理由2のうち、引用文献1に基づく理由の内容は、以下のとおりである。 理由2:(進歩性)本願発明は、本願出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:特開2009-172590号公報 周知文献A:国際公開第2011/040247号(周知技術を示す文献) 周知文献B:中国実用新案第204993002号明細書(周知技術を示す文献) なお、本願発明1及び6に対する進歩性の判断では、上記第2の[理由]2(2)での独立特許要件の判断で引用した次の文献も、同じく引用する。 周知文献C:特開2017-227252号公報(周知技術を示す文献) 3 引用文献等に記載された事項 引用文献1及び周知文献A~Cの記載事項は、上記第2の[理由]2(2)アに示したとおりである。 4 対比・判断 上記第2の[理由]2(1)において検討したとおり、補正発明1は、本願発明1において「磁石の間」及び「磁石と係止するための溝」の構成をさらに限定したものであり、補正発明3は、本願発明6における「磁石の間」及び「溝」の構成をさらに限定したものであるところ、逆に、本願発明1及び6は、それぞれ補正発明1及び3の「磁石の間」及び「溝」の構成を拡張したものにあたるといえる。 そして、本願発明1及び6の構成を限定したものである補正発明1及び3が、上記第2の[理由]2(2)ウ及びエに記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1及び6も、補正発明1及び3と同様に、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明1及び6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、同法第49条第2号に該当するから、その他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり、審決する。

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2024-001742

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