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特許拒絶査定不服審判

2024-001612

コンクリート床版及びコンクリート床版の形成方法

審判番号
2024-001612
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-188547外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2024年01月30日
審決日
2025年01月17日
公報発行日
2025年02月28日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (E01D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-188547「コンクリート床版及びコンクリート床版の形成方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 4月22日出願公開、特開2021- 63378、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和元年10月15日の出願であって、令和5年2月22日付けで拒絶理由通知がされ、同年4月21日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年7月4日付けで改めて最初の拒絶理由通知がされ、同年9月5日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年11月2日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和6年1月30日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和5年11月2日)の概要は次のとおりである。 1.(進歩性)この出願の請求項1~6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2017-82496号公報 2.特開2018-76654号公報 第3 本願発明 本願請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」から「本願発明6」という。)は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されたものに対して、令和5年9月5日受付の手続補正書によって請求項1、4、6に対する補正がなされた以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 橋桁の上に複数のプレキャスト版を配列し、前記橋桁の軸線方向にプレストレスを導入して複数の前記プレキャスト版を接合したコンクリート床版であって、 それぞれが所定数の標準プレキャスト版からなる複数の標準部と、連結プレキャスト版又は現場打設されたコンクリートで形成された連結部と、が前記橋桁の軸線方向に連続して交互に設けられ、 それぞれの標準部毎に配置され、前記橋桁の軸線方向にプレストレスを導入する緊張材が、それぞれの標準部の両側で隣接する前記連結部にわたって配置され、 前記連結部を挟んで隣り合う2つの標準部に配置されたそれぞれの前記緊張材は、2つの前記標準部の間の前記連結部内で橋桁の軸線方向の配置範囲が重複するように配置されており、 それぞれの前記緊張材は、両端が、それぞれの前記標準部の両側に隣接する前記連結部に定着具によって定着されるとともに、前記標準部と前記連結部との接合部付近には該標準部に緊張力を定着することができる接合部定着具が配置されていることを特徴とするコンクリート床版。 【請求項2】 前記緊張材は、前記標準部に配置された標準部緊張材と、該標準部緊張材に接続具によって接続され、前記連結部に配置された連結部緊張材とからなり、 前記標準部緊張材は緊張力を導入した状態で前記接合部定着具によって前記標準部に定着されており、 前記連結部緊張材は、緊張力を導入した状態で前記定着具によって前記連結部に定着されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート床版。 【請求項3】 前記緊張材は、前記標準部から前記連結部にわたって連続するものであり、緊張力が導入された状態で両端部が前記定着具によって前記連結部に定着されており、 前記標準部と前記連結部との接合部付近には、前記接合部定着具が前記標準部に前記緊張材の緊張力を定着することが可能に装着されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート床版。 【請求項4】 橋桁の上に、複数の標準プレキャスト版が連続して配列された標準部を、前記橋桁の軸線方向に間隔を開けて複数を形成し、 前記標準部毎に配置した標準部緊張材の緊張力によってそれぞれの標準部に前記橋桁の軸線方向のプレストレスを導入し、該標準部緊張材の両端を接合部定着具によって前記標準部に定着し、 前記標準部の間に、連結プレキャスト版を配置し、 前記連結プレキャスト版の両側に隣接する前記標準部に配置された前記標準部緊張材のそれぞれに連結部緊張材を接続し、2つの前記標準部の間で2つの前記標準部緊張材のそれぞれに接続された双方の連結部緊張材が前記橋桁の軸線方向における配置範囲の少なくとも一部が重複するように配置し、 前記連結プレキャスト版と隣接する前記標準部との間にモルタル又はコンクリートを充填して前記連結プレキャスト版が該標準部と接合された連結部を形成し、 前記標準部緊張材と接続した前記連結部緊張材に緊張力を導入して前記連結部に定着し、該連結部を両側に隣接する前記標準部の双方と一体となるように結合することを特徴とするコンクリート床版の形成方法。 【請求項5】 橋桁の上に、第1の標準部を構成する複数の標準プレキャスト版を連続して配列するとともに端部に隣接して第1の連結プレキャスト版を配列し、 第1の標準部から第1の連結プレキャスト版に連続する第1の緊張材を配置し、緊張力を導入して両端部を定着し、 第1の標準部と第1の連結プレキャスト版との接合部には、既に緊張力が導入された第1の緊張材の連続する部分に接合部定着具を、前記標準プレキャスト版側に定着が可能に装着し、 第1の連結プレキャスト版の第1の標準部が隣接する側の反対側に、第2の標準部を構成する複数の標準プレキャスト版を配列するとともに、端部に第2の連結プレキャスト版を配列し、 第1の連結プレキャスト版内で第1の緊張材と橋桁の軸線方向の配置範囲が重複し、第2の連結プレキャスト版までに連続する第2の緊張材を配置し、 第2の緊張材に緊張力を導入して両端部を第1の連結プレキャスト版及び第2の連結プレキャスト版に定着し、 第2の標準部を構成する標準プレキャスト版と第1の連結プレキャスト版及び第2の連結プレキャスト版との接合部には、第2の緊張材に接合部定着具を、前記標準プレキャスト版側に定着が可能に装着すること、を特徴とするコンクリート床版の形成方法。 【請求項6】 橋桁の上に、複数の標準プレキャスト版が連続して配列された標準部を、前記橋桁の軸線方向に間隔を開けて複数を形成し、 前記標準部毎に配置した標準部緊張材の緊張力によってそれぞれの標準部に前記橋桁の軸線方向のプレストレスを導入し、該標準部緊張材を接合部定着具によって前記標準部に定着し、 隣接する2つの前記標準部の間で、双方の標準部に配置された前記標準部緊張材のそれぞれに連結部緊張材を接続し、双方の前記連結部緊張材は前記橋桁の軸線方向の配置範囲が重複するように配置し、 前記標準部の間に、一方の標準部と密接し、他方とは離隔されるようにコンクリートを打設して連結部を形成し、 前記連結部と密接する標準部に配置された前記標準部緊張材と接続した前記連結部緊張材に緊張力を導入して前記連結部に定着し、該連結部を隣接する前記標準部の一方と一体となるように結合し、 その後に、隣接する前記標準部の他方と前記連結部との間にモルタル又はコンクリートを充填し、 前記連結部緊張材の他方に緊張力を導入して前記連結部に定着し、該連結部を隣接する前記標準部の他方と一体となるように接合することを特徴とするコンクリート床版の形成方法。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について (1)引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている(以下、下線は当審で付した。)。 ア 段落【0001】、【0015】~【0016】 「【0001】 本願発明は、プレストレスによる緊張力を導入するプレキャスト床版に関する技術であり、より具体的には、グループ化された複数のプレキャスト床版ごとに部分的にプレストレスによる緊張力を導入する鋼橋の床版構造、当該構造のうち任意のプレキャスト床版を取り替える方法、そして当該構造に用いるプレキャスト床版に関する技術である。」 「【0015】 本願発明は、定着プレキャスト床版と中間プレキャスト床版の2種類のプレキャスト床版を用意するとともに、中間プレキャスト床版の底面より下方に突出した定着プレキャスト床版の定着面で、緊張材(高張力鋼材、あるいはカーボンファイバーやアラミド繊維)を定着させる、というこれまでにない発想に基づいて行われたものである。 【0016】 本願発明の鋼橋の床版構造は、緊張材が定着される「定着プレキャスト床版」と緊張材が定着されない「中間プレキャスト床版」からなる鋼橋の床版構造である。これら定着プレキャスト床版と中間プレキャスト床版には、緊張材が挿通される緊張材挿通孔が設けられる。また、両端部に配置される定着プレキャスト床版と、その中間に配置される中間プレキャスト床版が、橋軸方向に連結されてなるセグメントを備えており、このセグメントが橋軸方向に隣接するセグメントの定着プレキャスト床版を含むことで、隣接する2つのセグメントは橋軸方向に一部重複して配列される。さらにセグメントは、セグメントごとに用意されるセグメント緊張材によってそれぞれ独立して緊張される。定着プレキャスト床版は、中間プレキャスト床版の底面より下方に突出したセグメント緊張材を定着させるための定着面を有するとともに、この定着面に緊張材挿通孔の開口部が設けられる。セグメント緊張材は、緊張対象となるセグメントの定着プレキャスト床版の定着面で定着され、隣接する2つのセグメントを緊張するそれぞれのセグメント緊張材が交錯して配置される。セグメント緊張材を緊張せしめるとともに、定着プレキャスト床版にてこのセグメント緊張材を定着させることで、橋軸方向に連続的に緊張力をプレキャスト床版に導入する。」 イ 段落【0031】~【0032】 「【0031】 1.鋼橋の床版構造、及びプレキャスト床版 はじめに、本願発明の鋼橋の床版構造とこの構造に用いるプレキャスト床版について説明する。図1は、本願発明の鋼橋の床版構造を橋軸直角方向に見た断面図である。この図に示すように本願発明の鋼橋の床版構造は、プレキャスト床版100と、これを支持する主桁200によって主に構成される。プレキャスト床版100は、コンクリート製のプレキャストコンクリート床版とするのが一般的であるが、本願発明では他の材料からなる製品を用いることもできることから、単に「プレキャスト床版100」と表現している。このプレキャスト床版100には、高張力鋼材(以下、「PC鋼より線」として説明する。)を挿通するための「緊張材挿通孔101」が橋軸方向に貫通しており、この緊張材挿通孔101は1本のみとすることもできるが、通常は橋幅に応じて橋軸断面方向に複数本(図では10本)設けられる。また主桁200は、鋼製の部材でありI形鋼を用いるのが一般的であるが、橋梁の規模に応じてH形鋼を用いることもでき、その他箱桁やトラス、アーチの床組構造とすることもできる。 【0032】 (プレキャスト床版の固定) プレキャスト床版100は、大きく2種類の手法によって主桁200上に固定される。その1つが図2示す「接着固定」であり、もう1つが図3に示す「非接着固定」である。なお図2、図3ともに、主桁200部分を橋軸直角方向に見た詳細断面図である。」 ウ 段落【0034】~【0036】 「【0034】 次に図3を参照しながら、非接着固定について説明する。プレキャスト床版100と主桁200を非接着固定する場合は、連結治具400が用いられる。また、非接着固定する場合のプレキャスト床版100の底面には、主桁200上に位置する部分にボルト401が挿通されるボルト挿通孔103が設置される。このボルト孔103内周面にはネジが切られている。さらにプレキャスト床版100の底面には、埋設された固定アンカー402にプレート403が固定されている。このプレート403にはボルト401を通すためのボルト孔が設けられている。また、プレキャスト床版100を載置する主桁200の上フランジ201にも、ボルト401を通すためのボルト孔が設けられている。このボルト孔は、プレキャスト床版100のボルト挿通孔103と位置を合わせやすいように長穴とするとよい。そして、プレキャスト床版100が主桁200上に設置され、主桁200の上フランジ201背面(下側)から、上フランジ201とプレート403それぞれのボルト孔を通過させ、ボルト挿通孔103にボルト401を螺合させる。このとき、ボルト401頭部と、上フランジ201との間に、支圧板404を挿入してもよい。モルタル等の充填材300を用いることなく、ボルト401によってプレキャスト床版100と主桁200を固定することで、着脱が容易な非接着固定となるわけである。なお、充填材300を用いることなく、プレキャスト床版100と主桁200を固定する手法であれば、図3に限らず種々の手法を採用することができ、特にプレート403の構造や設置、あるいはボルト401の数などは、状況に応じて適宜設計することができる。 【0035】 (プレキャスト床版の種類) 本願発明の鋼橋の床版構造では、2種類のプレキャスト床版100が用いられる。1つはPC鋼より線を定着するために用いられる「定着プレキャスト床版」であり、もう1つはPC鋼より線を挿通するだけで定着されない「中間プレキャスト床版」である。また、定着プレキャスト床版には、さらに単独緊張タイプと共有緊張タイプのものがある。図4と図5は、それぞれ定着プレキャスト床版と中間プレキャスト床版110を示す断面図であり、図4では単独緊張タイプの定着プレキャスト床版(以下、「単独定着プレキャスト床版120」という。)の場合を示し、図4では共有緊張タイプの定着プレキャスト床版(以下、「共有定着プレキャスト床版130」という。)の場合を示している。なお図4、図5ともに、橋軸直角方向に見た断面図であり、実際に主桁200上に配置したときの姿勢を示している。 【0036】 図4と図5に示すように、中間プレキャスト床版110には橋軸方向に直線状に貫通する緊張材挿通孔111が設けられている。なお、この図では1本の緊張材挿通孔111を示しているが、実際には図1に示すように複数本が設けられることもある。いずれにしろ中間プレキャスト床版110には、直線状である1種類の緊張材挿通孔111が設けられる。」 エ 段落【0038】~【0039】 「【0038】 図5に示すように、共有定着プレキャスト床版130には、左下方に曲がる曲線状の「第1の緊張材挿通孔131a」と、右下方に曲がる曲線状の「第2の緊張材挿通孔131b」が設けられる。それぞれの用途については後述する。なお、この図では1組(第1の緊張材挿通孔131aと第2の緊張材挿通孔131b)の緊張材挿通孔を示しているが、実際には図1に示すように複数組が設けられることもある。また、中間プレキャスト床版110の底面112に比して共有定着プレキャスト床版130の底面132は下方に位置しており、さらに共有定着プレキャスト床版130の左下端には、中間プレキャスト床版110の底面112より下方に突出した「第1の定着面133a」が設けられ、右下端にはやはり中間プレキャスト床版110の底面112より下方に突出した「第2の定着面133b」が設けられている。そして、第1の定着面133aには第1の緊張材挿通孔131aの開口部134aが設けられ、第2の定着面133bには第2の緊張材挿通孔131bの開口部134bが設けられている。 【0039】 (セグメント) 本願発明の鋼橋の床版構造は、床版全体にわたって橋軸方向に緊張するのではなく、橋軸方向に分割したセグメント単位で緊張するのが1つの技術的特徴となっている。そこで、ここではセグメントについて説明する。なお既述のとおり本願発明では、定着プレキャスト床版として単独定着プレキャスト床版120と共有定着プレキャスト床版130の2タイプを用いることとしており、セグメントも定着プレキャスト床版のタイプに応じた2つの形式がある。なおここでは便宜上、単独定着プレキャスト床版120を用いたたセグメントを「単独セグメント」と、共有定着プレキャスト床版130を用いたセグメントを「共有セグメント」ということとする。」 オ 段落【0047】~【0050】 「【0047】 図10は、共有セグメントSG2を用いた場合の鋼橋の床版全体を示す平面図である。この図に示すように床版全体は、複数の共有セグメントSG2が一部重複しながら橋軸方向に並べられて配置されることで構成される。またこの共有セグメントSG2は、図10や図11に示すように、共有定着プレキャスト床版130と中間プレキャスト床版110で構成される。なお図11は、共有セグメントSG2と、この共有セグメントSG2を緊張するセグメント緊張材を示す橋軸方向の断面図である。この図からも分かるように共有セグメントSG2は、両端に共有定着プレキャスト床版130が配置され、その共有定着プレキャスト床版130の間に複数の中間プレキャスト床版110(図11では7個)が配置される。 【0048】 共有セグメントSG2は、橋軸方向に直列して配置されるのではなく、既述のとおり一部が重複ながら橋軸方向に並べられる。具体的には、1つの共有定着プレキャスト床版130が、隣接する2つの共有セグメントSG2によって共有されることで共有セグメントSG2は一部重複する。ある共有セグメントSG2に着目したとき、その共有セグメントSG2用の共有定着プレキャスト床版130が両端に配置され、その共有定着プレキャスト床版130は隣接する単独セグメントSG1用の共有定着プレキャスト床版130ともなるわけである。 【0049】 図11に示すように、共有セグメントSG2は当該セグメントしとして独立して緊張されプレストレス力が与えられる。つまり図10の場合、省略している部分を除くと左側で4箇所、右側で3箇所それぞれにプレストレス力が与えられるわけである。そして、このセグメントを緊張する緊張材510は、中間プレキャスト床版110と共有定着プレキャスト床版130の緊張材挿通孔101に挿通され、共有定着プレキャスト床版130の定着面で定着治具520によって定着される。 【0050】 このとき、セグメント緊張材510は張対象セグメントのうち両端に配置された共有定着プレキャスト床版130を用いて定着する。具体的には、セグメント緊張材510の右端側は、緊張対象セグメントの右端に位置する共有定着プレキャスト床版130を用いて定着し、セグメント緊張材510の左端側は、緊張対象セグメントの左端に位置する共有定着プレキャスト床版130を用いて定着する。なお、共有セグメントSG2は一部重複して配置されることから、共有定着プレキャスト床版130は、緊張対象セグメントのセグメント緊張材510を挿通するための緊張材挿通孔101(図5では緊張材挿通孔131a)と、緊張隣接セグメントのセグメント緊張材510を挿通するための緊張材挿通孔101(図5では緊張材挿通孔131b)が必要であり、これら2本の緊張材挿通孔101は交差するように配置される。さらに共有定着プレキャスト床版130は、右側に隣接する共有セグメントSG2のセグメント緊張材510を定着させるための定着面(図5では第1の定着面133a)と、左側に隣接する共有セグメントSG2のセグメント緊張材510を定着させるための定着面(図5では第2の定着面133b)が必要である。」 カ 段落【0065】~【0068】 「【0065】 (取替対象プレキャスト床版のみを撤去し、セグメント緊張材で緊張するケース) 図20は、取替対象プレキャスト床版のみを撤去し、セグメント緊張材で緊張するケースにおける本願発明の鋼橋の床版取替え方法の主な工程の流れを示すフロー図であり、さらに図21と図22は単独セグメントSG1の場合のステップ図、図23は共有セグメントSG2の場合のステップ図である。なお図21は、緊張対象セグメント用の単独定着プレキャスト床版120と緊張隣接セグメント用の単独定着プレキャスト床版120との間に中間プレキャスト床版110を配置したケースであり、図22は、2つの単独定着プレキャスト床版120が連続配置されたケースである。以下、これらの図を参照しながら詳しく説明する。 【0066】 まず、損傷等によって「取替対象プレキャスト床版」と認定されると、その取替対象プレキャスト床版を含む「取替対象セグメント」のセグメント緊張材510によるプレストレス力(緊張力)を解除し、当該セグメント緊張材510を除去する(Step31:緊張材除去工程)。 【0067】 セグメント緊張材510による緊張が解除されると、取替対象プレキャスト床版を撤去し(Step32:プレキャスト床版撤去工程)、同じ位置に同じ種類(中間プレキャスト床版110、単独定着プレキャスト床版120、共有単独定着プレキャスト床版130)のプレキャスト床版100を新たに設置する(Step33:プレキャスト床版設置工程)。 【0068】 新規のプレキャスト床版100が設置できると、その新設のプレキャスト床版100を含む取替対象セグメントに対して、セグメント緊張材510によって新たにプレストレス力が導入される(Step34:緊張工程)。最後に、接着固定(図2)または非接着固定(図3)によって、新規に設置したプレキャスト床版100と主桁200を固定(合成)する(Step35:桁合成工程)。」 (2)引用発明について したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明A」および「引用発明B」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明A) 「鋼橋の床版構造は、プレキャスト床版100と、これを支持する主桁200によって主に構成され、プレキャスト床版100は、コンクリート製のプレキャストコンクリート床版とし(段落【0031】)、 プレキャスト床版100は、主桁200上に固定され(段落【0032】)、 2種類のプレキャスト床版100が用いられ、1つはPC鋼より線を定着するために用いられる「定着プレキャスト床版」であり、もう1つはPC鋼より線を挿通するだけで定着されない「中間プレキャスト床版」であり、定着プレキャスト床版には、共有緊張タイプのものがあり、共有緊張タイプの定着プレキャスト床版は共有定着プレキャスト床版130といい(段落【0035】)、共有定着プレキャスト床版130には、左下方に曲がる曲線状の「第1の緊張材挿通孔131a」と、右下方に曲がる曲線状の「第2の緊張材挿通孔131b」が設けられ(段落【0038】)、鋼橋の床版構造は、橋軸方向に分割したセグメント単位で緊張するのが1つの技術的特徴となっており(段落【0039】)、 床版全体は、複数の共有セグメントSG2が一部重複しながら橋軸方向に並べられて配置されることで構成され、共有セグメントSG2は、共有定着プレキャスト床版130と中間プレキャスト床版110で構成され、両端に共有定着プレキャスト床版130が配置され、その共有定着プレキャスト床版130の間に複数の中間プレキャスト床版110が7個配置され(段落【0047】)、 1つの共有定着プレキャスト床版130が、隣接する2つの共有セグメントSG2によって共有されることで共有セグメントSG2は一部重複し(段落【0048】)、 共有セグメントSG2は当該セグメントしとして独立して緊張されプレストレス力が与えられ、セグメントを緊張する緊張材510は、中間プレキャスト床版110と共有定着プレキャスト床版130の緊張材挿通孔101に挿通され、共有定着プレキャスト床版130の定着面で定着治具520によって定着され(段落【0049】)、 セグメント緊張材510の右端側は、緊張対象セグメントの右端に位置する共有定着プレキャスト床版130を用いて定着し、セグメント緊張材510の左端側は、緊張対象セグメントの左端に位置する共有定着プレキャスト床版130を用いて定着し、共有セグメントSG2は一部重複して配置されることから、共有定着プレキャスト床版130は、緊張対象セグメントのセグメント緊張材510を挿通するための緊張材挿通孔101と、緊張隣接セグメントのセグメント緊張材510を挿通するための緊張材挿通孔101が必要であり、これら2本の緊張材挿通孔101は交差するように配置され(段落【0050】)、 取替対象プレキャスト床版を含む「取替対象セグメント」のセグメント緊張材510によるプレストレス力(緊張力)を解除し、当該セグメント緊張材510を除去する(段落【0066】)、 鋼橋の床版構造(段落【0031】)。」 (引用発明B) 「鋼橋の床版構造は、プレキャスト床版100と、これを支持する主桁200によって主に構成され(段落【0031】)、 プレキャスト床版100を、主桁200上に固定し(段落【0032】)、 2種類のプレキャスト床版100が用いられ、1つはPC鋼より線を定着するために用いられる「定着プレキャスト床版」であり、もう1つはPC鋼より線を挿通するだけで定着されない「中間プレキャスト床版」であり、定着プレキャスト床版には、共有緊張タイプのものがあり、共有緊張タイプの定着プレキャスト床版は共有定着プレキャスト床版130といい(段落【0035】)、共有定着プレキャスト床版130には、左下方に曲がる曲線状の「第1の緊張材挿通孔131a」と、右下方に曲がる曲線状の「第2の緊張材挿通孔131b」が設けられ(段落【0038】)、鋼橋の床版構造は、橋軸方向に分割したセグメント単位で緊張し(段落【0039】)、 床版全体は、複数の共有セグメントSG2を一部重複しながら橋軸方向に並べて配置し、共有セグメントSG2は、共有定着プレキャスト床版130と中間プレキャスト床版110で構成され、両端に共有定着プレキャスト床版130を配置し、その共有定着プレキャスト床版130の間に複数の中間プレキャスト床版110を7個配置し(段落【0047】)、 1つの共有定着プレキャスト床版130が、隣接する2つの共有セグメントSG2によって共有されることで共有セグメントSG2は一部重複し(段落【0048】)、 共有セグメントSG2は当該セグメントしとして独立して緊張されプレストレス力が与えられ、セグメントを緊張する緊張材510は、中間プレキャスト床版110と共有定着プレキャスト床版130の緊張材挿通孔101に挿通され、共有定着プレキャスト床版130の定着面で定着治具520によって定着され(段落【0049】)、 セグメント緊張材510の右端側は、緊張対象セグメントの右端に位置する共有定着プレキャスト床版130を用いて定着し、セグメント緊張材510の左端側は、緊張対象セグメントの左端に位置する共有定着プレキャスト床版130を用いて定着し、共有セグメントSG2は一部重複して配置されることから、共有定着プレキャスト床版130は、緊張対象セグメントのセグメント緊張材510を挿通するための緊張材挿通孔101と、緊張隣接セグメントのセグメント緊張材510を挿通するための緊張材挿通孔101が必要であり、これら2本の緊張材挿通孔101は交差するように配置され(段落【0050】)、 取替対象プレキャスト床版を含む「取替対象セグメント」のセグメント緊張材510によるプレストレス力(緊張力)を解除し、当該セグメント緊張材510を除去する(段落【0066】)、 鋼橋の床版構造に用いるプレキャスト床版(段落【0031】)の形成方法。」 2 引用文献2について (1)引用文献2の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。 ア 段落【0025】~【0028】 「【0025】 以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。 図1は、本発明の補修方法を適用することができるコンクリートの床版の一例を示す概略斜視図である。 この床版は、道路橋の床版として用いられるものであり、複数の鋼桁1を架け渡した上にプレキャストコンクリート版2を並べて形成されるものである。 【0026】 上記鋼桁1は、上フランジ11と下フランジ12とこれらを上下に連結するウェブ13とを有し、断面がほぼI型となっており、橋の幅方向に所定の間隔を設けて複数が配列されている。これらの鋼桁1は、両端付近の二点に支承(図示しない)を設けて単純支持されたものであってもよいし、複数の径間に連続した連続桁とされるもの、ラーメン構造とされるもの等であってもよい。 【0027】 上記プレキャストコンクリート版2は、予め工場又は製作ヤード等においてコンクリートを打設し、形成されたものであって、鉄筋コンクリート構造又は鋼桁1の軸線と直角方向に緊張材が配置されたプレストレストコンクリート構造とされる。また、多数の繊維がコンクリートにほぼ一様に混入された繊維補強コンクリートで形成されたものであってもよい。 プレストレストコンクリート構造とするときには、プレストレスをいわゆるポストテンション方式として導入するものであっても、いわゆるプレテンション方式として導入するものであってもよいが、プレテンション方式とするのが望ましい。 【0028】 上記プレキャストコンクリート版2は、鋼桁1の軸線方向の寸法が所定の値に設定されており、鋼桁の軸線と直角となる方向には、橋の幅員にほぼ相当する長さとなっている。これらのプレキャストコンクリート版2を、図1に示すように吊り支持し、複数が配列された鋼桁1上に架け渡すように載置する。このときプレキャストコンクリート版2の両端部が橋の両側で鋼桁1より張り出すように支持される。そして、複数のプレキャストコンクリート版2が鋼桁1の軸線方向に順次に配列される。プレキャストコンクリート版2には鋼桁1の軸線方向に配置する緊張材を挿通するための貫通孔(図示しない)が複数設けられており、鋼桁1の軸線方向に所定数のプレキャストコンクリート版2の配列が完了した後、軸線方向の緊張材が貫通孔に挿通される。これらの緊張材に緊張力を導入することによって軸線方向に隣り合うプレキャストコンクリート版2を互いに連結するとともに、軸線方向のプレストレスが導入される。」 イ 段落【0031】 「【0031】 図2は、本発明の一実施形態である床版の補修方法を示す概略断面図である。 この補修方法は、プレキャストコンクリート版2が配列され、鋼桁1の軸線方向にプレストレスが導入された床版の一部に損傷が生じたときに、損傷部分22を含むプレキャストコンクリート版2aを撤去し、図2(b)に示すように新たに製作したプレキャストコンクリート版2bに取り替えることによって修復するものである。そして、修復した部分及びその両側の既存の部分にわたって、鋼桁1の軸線方向のプレストレスを導入する。」 ウ 段落【0047】~【0049】 「【0047】 次に、本発明に係る床版の補修方法の他の実施形態について説明する。 この補修方法も、図2に示すように、損傷部分22を含むプレキャストコンクリート版2aを撤去し、新たに製作したプレキャストコンクリート版2bによって修復するものであり、補修した部分に、その両側の補修を行っていない部分と連続するように鋼桁1の軸線方向のプレストレスを導入するものである。 この補修方法でも、図8(a)に示すように、損傷部分を含むプレキャストコンクリート版2aの、他の取り替えないプレキャストコンクリート版2c,2dとの隣接部分23を斫り、鋼桁1の軸線方向に配置されている既設緊張材31を二か所で露出させる。この既設緊張材31には、図8(b)に示すように、取り替えないプレキャストコンクリート版2c,2dと隣接する部分において中間定着具71を強固に固着する。中間定着具71は既設緊張材31に導入されている緊張力を取り替えないプレキャストコンクリート版2c,2dに伝達して既設緊張材31を定着することができるように、取り替えないプレキャストコンクリート版2c,2dに密接して固着するか、もしくはプレキャストコンクリート版2c,2dとの間にモルタル等を充填する。」 「【0048】 この補修方法で用いられる中間定着具71は、第1の鋼ブロック71aと第2の鋼ブロック71bとを有するものであり、これらを既設緊張材31の側方から対向させ、互いに結合して既設緊張材31に固着することができるものであるが、新設緊張材を定着するための筒状部は備えていない。 これらの中間定着具71が固着されると、図8(c)に示すように、これらの間で既設緊張材31を切断し、プレキャストコンクリート版2aを撤去する。」 「【0049】 損傷しているプレキャストコンクリート版2aを除去した後には、図9(a)に示すように新たに製作したプレキャストコンクリート版2bを配設する。このプレキャストコンクリート版2bには、既設緊張材31が中間定着具71によって定着された部分と対応する位置に切り欠き25が設けられ、中間定着具71と干渉することなく所定の位置に配置することができるものとなっている。また、このプレキャストコンクリート版2bには、切断された既設緊張材31の延長線上となる位置に新設緊張材を挿通するダクト72,73が形成されている。一方、このプレキャストコンクリート版2bには、二つの中間定着具71が設けられた位置の中間部分にアンカー部材が埋め込まれている。このアンカー部材74が有する二つの筒状部75,76にそれぞれ上記ダクト72,73が連通している。」 エ 段落【0052】 「【0052】 新設緊張材35A,35Bは、図9(b)に示すように、アンカー部材74の二つの筒状部75,76に、露出している緊張側の端面から挿入し、プレキャストコンクリート版2bに設けられたダクト72,73を通して切断された双方の既設緊張材31にそれぞれ突き合わせる。そして、接続具77を用いて新設緊張材35A,35Bと既設緊張材31とを接続する。プレキャストコンクリート版2bのダクト72,73から中間定着具71までの露出した新設緊張材35、接続具77及び既設緊張材31はシース等によって被覆して、図9(c)に示すように新たに製作されたプレキャストコンクリート版2bの切り欠き25内にコンクリート30を打設する。打設したコンクリート30が硬化した後、図9(c)に示すように、二つの新設緊張材35A,35Bを互いに反対方向に緊張し、緊張力Pが導入された状態でアンカー部材74に定着する。これにより、切断によって分割された既設緊張材31の緊張力は新設緊張材35を介して連続するものとなり、取り替えられたプレキャストコンクリート版2bには既存のプレキャストコンクリート版2c,2dから連続するようにプレストレスが導入される。」 (2)引用文献2に記載された技術的事項について 上記記載から、引用文献2には、以下の技術的事項(以下「引用文献2記載技術」という。)が記載されていると認められる。 (引用文献2記載技術) 「損傷部分を含むプレキャストコンクリート版2aの、他の取り替えないプレキャストコンクリート版2c,2dとの隣接部分23を斫り、鋼桁1の軸線方向に配置されている既設緊張材31を二か所で露出させ、既設緊張材31に、取り替えないプレキャストコンクリート版2c,2dと隣接する部分において中間定着具71を強固に固着し(段落【0047】)、 これらの中間定着具71が固着されると、これらの間で既設緊張材31を切断し、プレキャストコンクリート版2aを撤去し(段落【0048】)、 新たに製作したプレキャストコンクリート版2bを配設し(段落【0049】)、 新設緊張材35A,35Bは、アンカー部材74の二つの筒状部75,76に、露出している緊張側の端面から挿入し、プレキャストコンクリート版2bに設けられたダクト72,73を通して切断された双方の既設緊張材31にそれぞれ突き合わせて、接続具77を用いて新設緊張材35A,35Bと既設緊張材31とを接続し、二つの新設緊張材35A,35Bを互いに反対方向に緊張し、定着する(段落【0052】)、 床版の補修方法(段落【0047】)。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明Aとを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明Aにおける「プレキャスト床版」、「橋軸方向」、「プレストレス力」、「プレキャストコンクリート床版」は、それぞれ、本願発明1における「プレキャスト版」、「橋桁の軸線方向」、「プレストレス」、「コンクリート床版」に相当する。 また、引用発明Aにおいて、「主桁200」は、プレキャスト床版100とともに、「鋼橋」の床版構造を構成するものであるから、本願発明1における「橋桁」に相当する。 さらに、引用発明Aの「プレキャスト床版」は、少なくとも1つの共有セグメントの両端に共有定着プレキャスト床版、及び、それらの間に7つの中間プレキャスト床版があるところ、「定着プレキャスト床版」と「中間プレキャスト床版」とを含むことから、本願発明1の「プレキャスト床版」と、「複数」のものからなる点において一致する。 また、引用発明Aにおいて、「主桁上に固定」「支持」し「プレキャスト床版を」「並べ」「て配置する」ことは、「定着プレキャスト床版」と「中間プレキャスト床版」とを含む「プレキャスト床版」を「主桁上に固定」して橋軸方向に「並べられて配置」することから、本願発明1の「橋桁の上に複数のプレキャスト版を配列」することに相当する。 イ 引用発明Aにおける「プレキャストコンクリート床版」は、一の共有セグメントSG2において、両端の共有定着プレキャスト床版と、その間の7つの中間プレキャスト床版と、を「橋軸方向に並べ」て、「プレストレス力」が「与え」られ、一の共有セグメントとして独立して緊張「定着」されるものであるから、引用発明Aにおける「橋軸方向に並べ」「プレストレス力」が「与え」られ、「プレキャスト床版」を「定着」した「プレキャストコンクリート床版」は、本願発明1における「橋桁の軸線方向にプレストレスを導入して複数の前記プレキャスト版を接合したコンクリート床版」に相当する。 ウ 引用発明Aにおいて、「複数の中間プレキャスト床版」は、一の共有セグメントの両端に設けた共有定着プレキャスト床版の間に7つ配置し、当該一の共有セグメントにおける床版の多くの部分をなすものであるから、本願発明1における「所定数の標準プレキャスト版」及び「標準部」に相当する。 また、引用発明Aにおける「共有定着プレキャスト床版」は、「PC鋼より線を定着するために用いられ」るものであって、一の共有セグメントの両端に位置し緊張材によりセグメント単位で定着されプレストレスが導入されるものであるから、「連結プレキャスト床版で形成された連結部」に相当する。 エ 引用発明Aにおいて、一の共有セグメントを構成する7つの中間プレキャスト床版に対し隣接する共有定着プレキャスト床版の、当該中間プレキャスト床版に対する反対側には、隣接する共有セグメントの7つの中間プレキャスト床版が連なり配置され、さらに、上記一の共有セグメントを構成する7つの中間プレキャスト床版に対し隣接する共有定着プレキャスト床版と反対側には、別の共有定着プレキャスト床版が配置され、また、引用発明Aにおける何れの共有セグメントにおいても、中間プレキャスト床版は7つ配置される。 そうすると、引用発明Aと本願発明1とは、「それぞれが所定数の標準プレキャスト版からなる複数の標準部と、連結プレキャスト版で形成された連結部と、が前記橋桁の軸線方向に連続して交互に設けられ」という点において一致する。 オ 引用発明Aにおける「複数の中間プレキャスト床版」、「橋軸方向」、「プレストレス力」は、それぞれ、本願発明1における「標準部」、「橋桁の軸線方向」、「プレストレス」に相当する。 また、引用発明Aにおける「緊張材」は、複数の中間プレキャスト床版の緊張材挿通孔に「挿通され」「橋軸方向にプレストレス力が与えられる」ものであるから、本願発明1における「緊張材」と、「標準部」に「配置され」「橋桁の軸線方向にプレストレスを導入する」点において一致する。 そして、引用発明Aの「緊張材」は、緊張対象セグメントにおける中間プレキャスト床版及び前記緊張対象セグメントの右端と左端に位置する共有定着プレキャスト床版に一の「緊張材」が挿通され、また、緊張隣接セグメントの中間プレキャスト床版に他の「緊張材」が挿通されることから、引用発明Aにおける一の「緊張材」及び他の「緊張材」は、本願発明1における「それぞれ」の緊張材に相当する。 また、引用発明Aにおいて、緊張対象セグメントの「中間プレキャスト床版」及び緊張隣接セグメントの「中間プレキャスト床版」に、一の緊張材及び他の緊張材が「挿通され」ることは、本願発明1における、緊張材が「それぞれの標準部毎に配置され」ることに相当する。 さらに、引用発明Aにおける「緊張材」は、セグメント単位で橋軸方向にプレストレス力を与えるものであるところ、隣接する2つの共有セグメントに配置される中間プレキャスト床版に一の緊張材及び他の緊張材が挿通され、隣接する2つの共有セグメントが共有する共有定着プレキャスト床版に定着されるから、本願発明1における「緊張材」と、「それぞれの標準部毎に配置され、橋桁の軸線方向にプレストレス力を導入する」ものである点において一致する。 カ 上記「オ」を踏まえると、引用発明Aにおいて、「緊張材510」が、「両端に共有定着プレキャスト床版を設け、その共有定着プレキャスト床版の間に複数の中間プレキャスト床版」を設けたセグメントに「挿通され」ることは、本願発明1における、「標準部の両側で隣接する連結部にわたって配置され」ることに相当する。 また、引用発明Aにおける「緊張材510」は、上記「オ」と同様に、一の共有セグメントに一の「緊張材」が挿通されるとともにとともに、隣接する共有セグメントに他の「緊張材」が挿通されることから、引用発明Aにおける一の「緊張材」及び他の「緊張材」は、本願発明1における「それぞれ」の緊張材に相当する。 さらに、引用発明Aにおいて、前記一の「緊張材」及び前記他の「緊張材」は、各セグメントを構成する中間プレキャスト床版及びその左右端に位置する共有定着プレキャスト床版に挿通されるから、引用発明Aと本願発明1とは、「それぞれの」「緊張材が、それぞれの標準部の両側で隣接する前記連結部にわたって配置され」る点において一致する。 キ 上記「オ」を踏まえると、引用発明Aにおいて、「緊張対象セグメント」の「複数の中間プレキャスト床版」と「緊張隣接セグメント」の「複数の中間プレキャスト床版」を併せたものは、「緊張対象セグメント」の「複数の中間プレキャスト床版」と「緊張隣接セグメント」の「複数の中間プレキャスト床版」との間に共有定着プレキャスト床版を配置することから、本願発明1における「2つの標準部」に相当する。 また、引用発明Aにおける緊張材は、上記「エ」、「オ」を踏まえると、一の共有セグメントを構成する中間プレキャスト床版及び共有定着プレキャスト床版に一の「緊張材」が挿通され、また、前記共有定着プレキャスト床版から隣接する他の共有セグメントの中間プレキャストにかけて他の「緊張材」が挿通されるから、引用発明における一の「緊張材」及び他の「緊張材」は、本願発明1における「連結部を挟んで隣り合う2つの標準部に配置された」「それぞれの緊張材」に相当する。 さらに、引用発明Aにおける「緊張材」は、「緊張対象セグメント」の「中間プレキャスト床版」および「緊張隣接セグメント」の「中間プレキャスト床版」の間にある「共有定着プレキャスト床版」に「交差するように配置」した「2本の緊張材挿通孔」に挿通され、前記「エ」で示したように、前記「共有定着プレキャスト床版」と、「中間プレキャスト床版」の反対側にある「共有定着プレキャスト床版」と、に定着されることから、「共有定着プレキャスト床版」の内部において、両セグメントにそれぞれ配置された2つの緊張材の橋軸方向の配置範囲が側面視において重なるものと解することができる。 そうすると、引用発明Aと本願発明1とは、「緊張材が、2つの標準部の間の連結部内で橋桁の軸線方向の配置範囲が重複するように配置され」る点において一致する。 ク 引用発明Aにおける「定着治具」は、本願発明1における「定着具」に相当する。 また、引用発明Aにおいて、セグメント緊張材の「右端側」及び「左端側」は、本願発明1における「緊張材の両端」に相当する。 さらに、引用発明Aにおいて、「セグメント緊張材」は、上記「カ」を踏まえると、一の共有セグメントに一の「緊張材」が挿通されるとともに、隣接する共有セグメントに他の「緊張材」が挿通されるから、引用発明における一の「緊張材」及び他の「緊張材」が、本願発明1の「それぞれの緊張材」に相当する。 また、引用発明Aにおいて、セグメント緊張材の「右端側」および「左端側」が、共有セグメントの両端に位置する「共有定着プレキャスト床版の定着面で定着治具によって定着され」ることは、上記「キ」を踏まえると、隣接した共有セグメントが共有する共有定着プレキャスト床版において、一の緊張材及び他の緊張材を定着するものといえるから、本願発明1における「それぞれの緊張材の両端が、それぞれの標準部の両側に隣接する連結部に定着具で定着される」ことに相当する。 したがって、本願発明1と引用発明Aとの間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「橋桁の上に複数のプレキャスト版を配列し、前記橋桁の軸線方向にプレストレスを導入して複数の前記プレキャスト版を接合したコンクリート床版であって、 それぞれが所定数の標準プレキャスト版からなる複数の標準部と、連結プレキャスト版で形成された連結部と、が前記橋桁の軸線方向に連続して交互に設けられ、 それぞれの標準部毎に配置され、前記橋桁の軸線方向にプレストレスを導入する緊張材が、それぞれの標準部の両側で隣接する前記連結部にわたって配置され、 前記連結部を挟んで隣り合う2つの標準部に配置されたそれぞれの前記緊張材は、2つの前記標準部の間の前記連結部内で橋桁の軸線方向の配置範囲が重複するように配置されており、 それぞれの前記緊張材は、両端が、それぞれの前記標準部の両側に隣接する前記連結部に定着具によって定着されるコンクリート床版。」 (相違点) 「それぞれの緊張材」について、本願発明1では、「標準部と前記連結部との接合部付近には該標準部に緊張力を定着することができる接合部定着具が配置されている」のに対し、引用発明Aでは、標準部と連結部との接合部付近にそのような「接合部定着具」が配置されていない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討すると、引用発明Aにおいては、損傷した取替対象プレキャスト床版を撤去する際、その「取替対象プレキャスト床版を含む取替対象セグメントのセグメント緊張材」によるプレストレス力を解除して、当該セグメント緊張材を除去し、新規のプレキャスト床版が設置すると、その新設のプレキャスト床版を含む取替対象セグメントに対し、セグメント緊張材によって新たにプレストレス力を導入するものであることから、引用発明Aは、共有定着プレキャスト床版と中間プレキャスト床版で構成される「1つのセグメント全体の緊張材」を除去するものである。 一方、引用文献2記載技術は、損傷したプレキャストコンクリート版の、他の取り替えないプレキャストコンクリート版との隣接部分を斫り、鋼桁の軸線方向に配置される既設緊張材を二か所で露出させ、前記隣接部分に中間定着具をそれぞれ固着し、前記中間定着具の間で既設緊張材を切断するものであることから、鋼桁の軸線方向に配置される既設緊張材のうち、中間定着具の間にある当該既設緊張材によるプレストレス力を部分的に解除し、当該既設緊張材のみを「部分的」に撤去するものであるから、引用文献2記載技術には、引用発明Aに適用する動機付けが存在するものとはいえない。 そうすると、引用発明Aにおいて、「1つのセグメント全体」に配置された緊張材によるプレストレス力を解除するものに、中間定着具の間にある緊張材を「部分的」に撤去する引用文献2記載技術を適用する動機付けが存在するものとはいえない。 仮に、引用発明Aに引用文献2記載技術を適用する動機付けが存在していたとしても、引用文献2記載技術を引用発明Aに適用すると、引用発明Aにおいて、共有定着プレキャスト床版と中間プレキャスト床版との接合部付近に中間定着具が定着されてしまい、1つのセグメント全体に配置された緊張材を除去できなくなるから、引用発明Aには、引用文献2記載技術の適用を阻害する要因があるものといえる。 以上のことからすると、本願発明1は、当業者であっても引用発明A及び引用文献2記載技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 2 本願発明2、3について 本願発明2、3は、本願発明1を引用する発明であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3 本願発明4について (1)対比 本願発明4と引用発明Bとを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明Bにおける「プレキャスト床版」、「橋軸方向」は、それぞれ、本願発明4における「プレキャスト版」、「橋桁の軸線方向」に相当し、引用発明Bにおける「主桁200」は、プレキャスト床版とともに、「鋼橋」の床版構造を構成するものであるから、本願発明4における「橋桁」に相当する。 また、引用発明Bにおけるプレキャスト床版を支持し「主桁上に固定され」は、本願発明4のプレキャスト床版を「橋桁上に」「形成し」に相当する。 さらに、引用発明Bにおいて、「中間プレキャスト床版」は、共有セグメントの両端に設けた共有定着プレキャスト床版の間に位置し、当該共有セグメントにおける床版の多くの部分をなすものといえるから、本願発明4における「標準プレキャスト版」および「標準部」に相当する。 また、引用発明Bにおける「中間プレキャスト床版」は、少なくとも1つの共有セグメントの両端にある共有定着プレキャスト床版の間に7つ連続して並べて配置するから、引用発明Bと本願発明4とは、「複数の標準プレキャスト床版が連続して配列された標準部」という点において一致する。 そして、引用発明Bにおいて、複数の共有セグメントは、1つの共有定着プレキャスト床版を隣接する2つの共有セグメントによって共有することで、共有セグメントを一部重複させながら橋軸方向に並べられて配置され床版全体を構成するところ、引用発明Bにおいて、複数の共有セグメントのそれぞれの「複数の中間プレキャスト床版」を、「橋軸方向に」「並べられて配置」することは、共有定着プレキャスト床版によって「間隔を開けて」それぞれの「複数の中間プレキャスト床版」を配置するものと解せるから、本願発明4において、「標準部を、橋桁の軸線方向に間隔を開けて複数を形成し」に相当する。 そうすると、引用発明Bと本願発明4とは、「橋桁の上に、複数の標準プレキャスト版が連続して配置された標準部を、橋桁の軸線方向に間隔を開けて複数を形成し」という点において一致する。 イ 引用発明Bにおける「橋軸方向」は、本願発明4における「橋桁の軸線方向」に相当し、また、引用発明Bにおける「プレストレス力」は、本願発明4における「緊張力」及び「プレストレス」に相当する。 また、引用発明Bにおける、「プレストレス力」が「与え」られることは、プレキャスト床版に挿通した緊張材を緊張した後に定着することで、緊張力を付与するものであるから、本願発明4における「プレストレスを導入し」に相当する。 また、上記「ア」を踏まえると、引用発明Bにおいて、「緊張材」は、「複数の中間プレキャスト床版」に挿通されるものであることから、本願発明4における「標準部緊張材」に相当する。 そして、引用発明Bにおいて、「複数の中間プレキャスト床版」に「挿通した緊張材」の「プレストレス力」によって「複数の中間プレキャスト床版に橋軸方向のプレストレス力」を「与え」ることは、本願発明4における「標準部」に「配置した標準部緊張材」の「緊張力」によって「標準部に前記橋桁の軸線方向のプレストレス」を「導入する」ことに相当する。 さらに、引用発明Bにおいて、緊張対象セグメントにおける中間プレキャスト床版及び前記セグメントの右端と左端に位置する共有定着プレキャスト床版に一の「緊張材」が挿通され、また、隣接する共有セグメントの中間プレキャスト床版に他の「緊張材」が挿通されることから、引用発明Bにおける各セグメントの「中間プレキャスト床版」に挿通する一の「緊張材」及び他の「緊張材」は、本願発明4における、「標準部毎に」配置した「標準部緊張材」に相当する。 また、引用発明Bにおいては、セグメント毎に一の緊張材及び他の緊張材を緊張することから、各セグメントの「中間プレキャスト床版」に橋軸方向のプレストレス力を与えるものと解することができる。 そうすると、引用発明Bと本願発明4とは、「標準部毎に配置した標準部緊張材の緊張力によってそれぞれの標準部に前記橋桁の軸線方向のプレストレスを導入し」という点において一致する。 ウ 引用発明Bにおいて、「緊張対象セグメント」の「複数の中間プレキャスト床版」と、このセグメントに隣接する「緊張隣接セグメント」の「複数の中間プレキャスト床版」とは、本願発明4における「2つの標準部」に相当する。 また、引用発明Bにおいて、「複数の中間プレキャスト床版」の緊張材挿通孔に「挿通」する「緊張材」は、上記「イ」を踏まえると、各セグメント毎に一の「緊張材」と他の「緊張材」とがあることから、引用発明Bにおける一の「緊張材」及び他の「緊張材」は、本願発明4における「2つの標準部緊張材のそれぞれ」に相当する。 さらに、引用発明Bにおいて、「緊張材」は、「緊張対象セグメント」および「緊張隣接セグメント」で共有される「共有定着プレキャスト床版」に「交差するように配置」した「2本の緊張材挿通孔」に挿通され、セグメント単位で緊張され定着されることから、「緊張対象セグメント」の「中間プレキャスト床版」および「緊張隣接セグメント」の「中間プレキャスト床版」の間にある「共有定着プレキャスト床版」の内部において、両セグメントにそれぞれ配置された2つの緊張材の橋軸方向の配置範囲が側面視において少なくとも一部重なるものと解することができる。 そうすると、引用発明Bと本願発明4とは、「2つの標準部の間で2つの標準部緊張材のそれぞれ」「が連結部内で橋桁の軸線方向の配置範囲が重複するように配置され」に相当する。 エ 引用発明Bにおける「プレストレス力」、「定着し」は、本願発明4における「緊張力」、「定着し」に相当する。 また、引用発明Bにおける「共有定着プレキャスト床版」は、「PC鋼より線を定着するために用いられ」るものであって、共有セグメントの両端に位置するものであるから、本願発明4の「連結部」に相当する。 そして、引用発明Bにおいて、「プレストレス力」を「与え」て「共有定着プレキャスト床版」に「定着し」は、緊張材によるプレストレス力を与えて共有定着プレキャスト床版で定着するものであるから、本願発明4における「緊張力を導入して連結部に定着し」に相当する。 さらに、引用発明Bにおいて、セグメント緊張材の右側端を「緊張対象セグメント」の右側に位置する「共有定着プレキャスト床版」に定着し、セグメント緊張材の左端側を「緊張対象セグメント」の左側に位置する「共有定着プレキャスト床版」に定着することは、中間プレキャスト床版と共有定着プレキャスト床版に緊張材を挿通し、緊張力を導入した後、定着し、共有定着プレキャスト床版と中間プレキャスト床版とを一体化することが当然のことであるから、本願発明4における「連結部を両側に隣接する標準部」「と一体となるように結合する」ことに相当する。 そして、引用発明Bにおいては、一の共有セグメントを構成する中間プレキャスト床版に対して隣接する共有定着プレキャスト床版の、当該中間プレキャスト床版に対する反対側には、隣接する他の共有セグメントの中間プレキャスト床版が連なり配置され、さらに前記隣接する共有定着プレキャスト床版とは反対側には、別の共有定着プレキャスト床版が配置され、緊張材を共有セグメントの両端にある共有定着プレキャスト床版にセグメント単位で定着することから、「共有定着プレキャスト床版」の両端に位置した緊張対象セグメントの中間プレキャスト床版及び緊張隣接セグメントの中間プレキャスト床版を一体化するものと解することができる。 そうすると、引用発明Bと本願発明4とは、「緊張力を導入して連結部に定着し、該連結部を両側に隣接する標準部の双方と一体となるように結合する」点において一致する。 したがって、本願発明4と引用発明Bとの間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「橋桁の上に、複数の標準プレキャスト版が連続して配列された標準部を、前記橋桁の軸線方向に間隔を開けて複数を形成し、 前記標準部毎に配置した標準部緊張材の緊張力によってそれぞれの標準部に前記橋桁の軸線方向のプレストレスを導入し、 2つの前記標準部の間で2つの前記標準部緊張材が前記橋桁の軸線方向における配置範囲の少なくとも一部が重複するように配置し、 緊張力を導入して前記連結部に定着し、該連結部を両側に隣接する前記標準部の双方と一体となるように結合することを特徴とするコンクリート床版の形成方法。」 (相違点1) 「緊張材」について、本願発明4は、「標準部」緊張材の「両端を接合部定着具によって前記標準部に定着」するものであるのに対し、引用発明Bは、標準部から連結部まで挿通されるものであって、「標準部連結材の両端を接合部定着具によって前記標準部に定着」するものではない点。 (相違点2) 本願発明4は、「標準部の間に、連結プレキャスト版を配置する」のに対し、引用発明Bは、そのように配置するものであるか否か不明な点。 (相違点3) 本願発明4は、「連結プレキャスト版の両側に隣接する前記標準部に配置された標準部緊張材のそれぞれに連結部緊張材を接続し」「2つの前記標準部緊張材のそれぞれに接続された双方の連結部緊張材」を配置するのに対し、引用発明Bは、緊張材が標準部から連結部まで挿通されて配置するものであって、「連結プレキャスト版の両側に隣接する前記標準部に配置された標準部緊張材のそれぞれに連結部緊張材を接続し」「2つの前記標準部緊張材のそれぞれに接続された双方の連結部緊張材」を配置するものではない点。 (相違点4) 本願発明4は、「連結プレキャスト版と隣接する前記標準部との間にモルタル又はコンクリートを充填して前記連結プレキャスト版が該標準部と接合された連結部を形成」するのに対し、引用発明Bは、そのようなものであるか否か不明な点。 (相違点5) 連結部に定着する緊張材について、本願発明4では、「標準部緊張材と接続した前記連結部緊張材」であるのに対し、引用発明Bでは、セグメントを構成する標準部から連結部にかけて緊張されるセグメント緊張材である点で相違する。 (2)相違点1~5についての判断 上記相違点1~5のうち相違点1について検討すると、引用発明Bにおいては、損傷した取替対象プレキャスト床版を撤去する際、その「取替対象プレキャスト床版を含む取替対象セグメントのセグメント緊張材」によるプレストレス力を解除して、当該セグメント緊張材を除去し、新規のプレキャスト床版が設置すると、その新設のプレキャスト床版を含む取替対象セグメントに対し、セグメント緊張材によって新たにプレストレス力を導入するものであることから、引用発明Bは、共有定着プレキャスト床版と中間プレキャスト床版で構成される「1つのセグメント全体の緊張材」を除去するものである。 一方、引用文献2記載技術は、損傷したプレキャストコンクリート版の、他の取り替えないプレキャストコンクリート版との隣接部分を斫り、鋼桁の軸線方向に配置される既設緊張材を二か所で露出させ、前記隣接部分に中間定着具をそれぞれ固着し、前記中間定着具の間で既設緊張材を切断するものであることから、鋼桁の軸線方向に配置される既設緊張材のうち、中間定着具の間にある当該既設緊張材によるプレストレス力を部分的に解除して、当該緊張材のみを「部分的」に撤去するものであるから、引用文献2記載技術には、引用発明Bに適用する動機付けが存在するものとはいえない。 そうすると、引用発明Bにおいて、「1つのセグメント全体」に配置された緊張材によるプレストレス力を解除するものに、中間定着具の間にある緊張材を「部分的」に撤去する引用文献2記載技術を適用する動機付けが存在するものとはいえない。 仮に、引用発明Bに引用文献2記載技術を適用する動機付けが存在していたとしても、引用文献2記載技術を引用発明Bに適用すると、引用発明Bにおいて、共有定着プレキャスト床版と中間プレキャスト床版との接合部付近に中間定着具が定着されてしまい、1つのセグメント全体に配置された緊張材を除去できなくなるから、引用発明Bには、引用文献2記載技術の適用を阻害する要因があるものといえる。 以上のことからすると、本願発明4は、当業者であっても引用発明B及び引用文献2記載技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 してみれば、上記相違点2~5について判断するまでもなく、本願発明4は、当業者であっても引用発明B及び引用文献2記載技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 4 本願発明5、6について 本願発明5、6は、「接合部定着具」に係る構成として、「第1の標準部と第1の連結プレキャスト版との接合部には、既に緊張力が導入された第1の緊張材の連続する部分に接合部定着具を、前記標準プレキャスト版側に定着が可能に装着し」(本願発明5)、「第1の標準部と第1の連結プレキャスト版との接合部には、既に緊張力が導入された第1の緊張材の連続する部分に接合部定着具を、前記標準プレキャスト版側に定着が可能に装着し」(本願発明6)をそれぞれ備えていることから、前記3(2)で示した検討を踏まえると、本願発明5、6は、当業者であっても引用発明B及び引用文献2記載技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 したがって、本願発明5、6については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることができない。 また、他に本願発明5、6を拒絶すべき理由を発見しない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1~6は、当業者が引用発明AまたはB、及び引用文献2記載技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願発明1~6を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-001612

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