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特許拒絶査定不服審判

2024-001104

高圧噴射撹拌工法を用いた汚染土壌浄化方法

審判番号
2024-001104
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-024674外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2024年01月23日
審決日
2025年12月02日
公報発行日
2026年02月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (B09C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020- 24674「高圧噴射撹拌工法を用いた汚染土壌浄化方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 9月 2日出願公開、特開2021-126640〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 8項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、令和2年2月17日を出願日とするものであり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

令和5年 8月10日付け 拒絶理由通知

同年10月17日 手続補正書及び意見書の提出

同年10月24日付け 拒絶査定

令和6年 1月23日 手続補正書及び審判請求書の提出

令和7年 6月18日付け 拒絶理由通知(当審)

同年 8月22日 手続補正書及び意見書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1~3に係る発明は、令和7年8月22日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
高圧噴射撹拌工法を用いて揮発油によって汚染された汚染土壌を原位置で浄化する高圧噴射撹拌工法を用いた汚染土壌浄化方法であって、
削孔機を用いて基礎にボーリング孔を形成し、該ボーリング孔を前記汚染土壌に連通させる工程と、
先端部に噴射孔を備えた注入ロッドを前記汚染土壌に挿入する工程と、
前記注入ロッドを回転させながら前記噴射孔から圧縮空気と共に硬化材のみを噴射して、前記汚染土壌中に柱状の改良体を造成する工程と、
を有し、
前記汚染土壌の一部は前記硬化材と置換されて回収されるとともに、残りの前記汚染土壌は硬化された前記改良体となり、
前記ボーリング孔の水平断面積は、前記注入ロッドの水平断面積よりも大きく形成され、前記ボーリング孔と前記注入ロッドとの間には、前記改良体の造成中に発生するスライムが通過する隙間が形成されていることを特徴とする高圧噴射撹拌工法を用いた汚染土壌浄化方法。」

第3 令和7年6月18日付け拒絶理由通知の理由の概要

同拒絶理由通知書に記載した理由1、2のうち、理由1の内容は、以下のとおりである。

理由1:(進歩性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記

引用例1:特開2011-147846号公報
引用例2:特開2012-188869号公報
引用例3:特開2017-115503号公報
引用例4:特開2016-191224号公報

本審決では、周知技術を示す文献として、以下の引用例5~8も引用する。

引用例5:特開2015-206214号公報
引用例6:特開2001-279667号公報
引用例7:特開2019-108759号公報
引用例8:特開2013-108352号公報

第4 当審の判断

当審は、第3に記載の理由1によって、本願は拒絶すべきものと判断する。

その理由について、以下、詳述する。

1 各引用例に記載された事項

(1)引用例1に記載された事項

ア 「【請求項1】
油汚染土壌に対して、油汚染対策を施す施工位置に口元管を設置する口元管設定工程と、
該施工位置にボーリングマシンにて造成管を計画深度まで削孔する造成管削孔工程と、
該造成管に設けた噴射口から油分分散材を高圧にて噴射させながら汚染土壌と混合撹拌し、そのとき発生する泥土を前記口元管より回収し貯泥槽に送る油分分散材高圧噴射工程と、
続きを表示(全12行)
を有し、前記汚染土壌の油分を分散・微細分することにより、油臭・油膜を除去する油汚染対策工法。
・・・
【請求項3】
請求項1に記載した油汚染対策工法であって、
前記油分分散材高圧噴射工程にて油臭・油膜を除去した土壌に対し、
前記造成管を計画深度まで再度挿入する造成管再度挿入工程と、
該造成管に設けた噴射口からセメント等硬化材を高圧にて噴射させながら混合撹拌し、そのとき発生する泥土を前記口元管より回収し貯泥槽に送る硬化材高圧噴射工程と
をさらに有し、それにより前記土壌を硬化させることを特徴とする油汚染対策工法。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンスタンド等の油汚染土壌の浄化対策に関する。」

・・・

【発明が解決しようとする課題】

【0010】

ガソリンスタンド等にて発生している油汚染土壌に対しての汚染対策工法としては、掘削除去が主たる対策として実施されている。しかし、土壌汚染対策法の改正に伴い、掘削除去する場合には多くの制約が義務づけられた。また、原位置における対策として実施されている土壌ガス吸引工法では対象地盤が通気帯(不飽和帯)に限定され、なおかつ、揮発性を有する成分に限定される。また、バイオレメディエーション工法では不飽和帯と飽和帯では採用工法が異なり、なおかつ浄化まで数ヶ月から数年は必要となる。

【0011】

本発明が解決しようとする課題は、比較的小規模な設備にて,不飽和帯・飽和帯の区別なく、数日の短期間にて油汚染地盤の浄化を完了させる工法を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0012】

上記課題を解決すべく本発明に係る油汚染対策工法は、油汚染土壌に油分分散材を高圧で噴射する。高圧噴流体による運動エネルギーにて地盤の組織を破壊し、油分を含んだ土壌と油分分散材を強制的に混合撹拌する。油分が分散微細化されることにより油膜を除去する。さらに油分分散材に含まれる消臭剤にて油臭を中和する。

【0013】

次に、油分分散材と油汚染土壌を混合撹拌した土壌に、さらにセメント系硬化材を高圧にて噴射し汚染土壌を硬化させる。それにより、一部残留している炭化水素を不溶化する。また、石油類地下タンクからの油分の再流出を防ぎ、再汚染を防止する。」

ウ 「【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る工法の実施形態を説明する。
【0017】
続きを表示(全18行)
図1は、油汚染土壌を鉛直面にて切断した断面を側方から見た断面図である。図1(a)は、ボーリングマシンにて造成管を計画深度まで削孔する工程を示す図である。図1(b)は、油分分散材を高圧噴射しながら汚染土壌と混合撹拌する工程を示す図である。図1(c)は、セメント系硬化材を高圧にて噴射させながら土壌を混合撹拌する工程を示す図である。
【0018】
第1工程(口元管設置工程)。まず、施工位置に口元管10を設置する。
第2工程(造成管削孔工程)。次に、ボーリングマシン20にて、造成管30を計画深度まで削孔する。
第3工程(油分分散材高圧噴射工程)。造成管30に設けた噴射口から油分分散材40を高圧(20~40MPa)にて噴射させながら汚染土壌と混合撹拌する。造成管30を首振り運動させながら、引き抜きつつ、油分散材40を高圧噴射することができる。このとき発生する泥土は、口元管10より回収し、貯泥槽50に送る。
第4工程(造成管再度挿入工程)油分散材高圧噴射工程の作業を計画範囲にて実施終了後、造成管30を計画深度まで再度挿入する。
第5工程(硬化材高圧噴射工程)セメント系硬化材60を高圧(20~40MPa)にて噴射させながら汚染土壌を混合撹拌する。造成管30を首振り運動させながら、引き抜きつつ、セメント系硬化材60を高圧噴射することができる。このとき発生する泥土は、口元管10より回収し、貯泥槽50に送る。
以上、第1工程から第5工程までの作業を計画本数繰り返す。
【実施例1】
【0019】
図2は、試験実施のために設けた油汚染模擬地盤の様子を示す概念図である。油汚染模擬地盤として2.0m×2.0mの穴を深さ3.0m掘削する。
GL-2.0~3.0m区間(地下2メートルから3メートルの範囲)に軽油を650リットル投入し土砂と撹拌し締め固める。
GL-1.0~2.0m区間(地下1メートルから2メートルの範囲)に軽油を350リットル投入し土砂と撹拌し締め固める。
表1に油汚染模擬地盤の性状を示す。」
エ 「【図1】
[図:0001431581000001.jpg]
」

(2)引用例2に記載された事項

ア 「【0003】
地盤改良工法には様々な方式のものが開発されており、概ね、地盤内に薬液を浸透注入することで止水性の向上を図る薬液注入工法と、地盤内の所定領域に拡がる土を切削しつつ原位置で硬化材と攪拌混合することで、強度が改善された改良体を地盤内に造成する方法とに大別されるが、後者の工法はさらに、攪拌翼を備えた攪拌混合装置で切削及び攪拌混合を行う方法と、硬化材とともに圧縮空気や水を高圧噴射することによって地盤内を切削しつつ攪拌混合を行う方法とに分類される。
【0004】
これらのうち、高圧噴射による攪拌混合方法は、ジェットグラウト工法あるいは高圧噴射攪拌工法と呼ばれており(以下、高圧噴射攪拌工法)、地盤内に挿入された多重管ロッドを回転させつつ前進又は後退させるとともに、該多重管ロッドに設けられた吐出口から硬化材や水あるいは圧縮空気を地盤内に高圧噴射することによって、地盤内に柱状の改良体を造成することができるようになっており、高圧噴射される流体の種類や噴射の仕方によって、JSG工法、CJG工法、CCP工法、RJP工法などさまざまな工法が開発されている。」
イ 「【0037】
図1は、本実施形態に係る改良体の造成方法を示したフローチャート、図2及び図3はその施工手順を示した断面図である。本実施形態に係る改良体の造成方法は、例えば既設の道路下にシールドトンネル等のあらたな地下構造物を構築するにあたり、その周辺地盤の強度を向上させるために適用されるものであって、まず図2(a)に示すように、改良体が形成されるべき地盤1内の領域にセメント分布領域2を先行形成する(セメント分布領域形成工程、ステップ101)。
【0038】
セメント分布領域2は、硬化後は改良体となるため、その改良体の予定形状に合わせて例えば円柱状に範囲設定すればよい。
続きを表示(全12行)
【0039】
セメント分布領域2を形成するには、JSG工法に従い、まず、地盤1にロッド3を挿入し、次いで、該ロッドを材軸回りに回転させかつ材軸に沿って上昇させながら、その下端近傍に設けられた吐出口4を介して第1の硬化材溶液としてのセメントミルクを圧縮空気とともに高圧噴射する。
【0040】
ロッド3は、材軸方向に沿って2つの流路が形成された二重管構造であって、各流路の基端側を地上に設置されたセメントミルク圧送装置及びコ/ンプレッサー(図示せず)にそれぞれ連通接続してあるとともに、先端を吐出口4に連通接続してあり、地上から別々に圧送されたセメントミルク及び圧縮空気を吐出口4から同時に噴出させることができるようになっている。
【0041】
このようにセメントミルクを吐出口4を介して圧縮空気とともに地盤1に高圧噴射すると、地盤1は、高圧噴射による噴流で切削されるとともに、切削された地盤1中の土がセメントミルクと原位置で攪拌混合され、高圧噴射終了後は、高圧噴射が開始された深さ位置から終了する深さ位置までの寸法を高さHとし、噴射圧や地盤性状で定まる吐出口4からの切削可能距離を半径Rとする円柱状のセメント分布領域2が同図(b)のように地盤1内に形成される。
【0042】
なお、セメントミルク及び圧縮空気の高圧噴射に伴い、地盤1内からスライム6が排出されるので、これを排泥ピット5でいったん貯留した後、図示しないポンプで適宜搬出する。」
ウ 「【図2】
[図:0001431581000002.jpg]
」

(3)引用例3に記載された事項

「【0019】
外壁部12には、複数の貫通孔16が縦設されており、図2に示す如く、外壁部の横幅方向に等間隔に配列されている。
これら貫通孔16は、コア孔として既存建物の解体作業に先立って穿設される。
本発明の貫通孔16は、図2に示すように、穿設箇所が相互に重ならない独立孔であり、従って躯体本体の強度を低下させる程度が少ない。
なお、本実施形態の貫通孔16は、後述の高圧噴射撹拌用パイプ30挿通用及び芯材24挿通用を兼用している。高圧噴射撹拌工法は、超高圧硬化剤を圧縮空気とともに回転させながら地中に噴射し、地盤を掘削しながら地盤中に円柱体状の硬化体を形成する方法であり、スクリュー式のアースオーガ―で地盤を掘削する工法と比較して大径の孔を掘削する必要がない。」

(4)引用例4に記載された事項

「【0023】
<高圧噴射撹拌工法>
本発明の適用対象である高圧噴射撹拌工法とは、図3に示すように、セメント等の硬化材を空気とともに高圧(例えば40MPa)で噴射して、地盤を強制的に切削しながら地盤改良体20を造成する工法である。この高圧噴射撹拌工法では、改良対象地盤中に貫入したロッド30を軸周りに回転又は揺動させながら、噴射口31から硬化材、水、空気等の噴射物を噴射することにより、円柱状、壁状、扇形、格子状等の所望形状の地盤改良体20を造成することができる。」

(5)引用例5に記載された事項

ア 「【請求項1】
先端部に噴射孔を備えた注入ロッドを地盤に挿入し、該注入ロッドを回転させながら前記噴射孔から圧縮空気と共に硬化材を噴射して、地盤中に柱状の改良体を造成する高圧噴射撹拌工法に用いられる施工管理システムであって、
前記注入ロッドに接続され、硬化材に噴射圧力を付与する前記圧縮空気を供給するエア供給部と、
該エア供給部の供給風量を検出する風量検出部と、
該風量検出部で検出された風量値を設定基準値と比較した結果に基づいて信号を発信する信号発信部と、
を備えていることを特徴とする高圧噴射撹拌工法に用いられる施工管理システム。」
イ 「【0032】
次に、上述した高圧噴射撹拌工法に用いる施工管理システムの作用について、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、先ず、図示しない削孔機を用いて基礎10の適宜な位置にボーリング孔11を形成して、基礎10の直下の地盤Gに連通させる。次いで、地盤改良装置1によってボーリング孔11内に注入ロッド4を挿入し、高圧ポンプ2で硬化材Nを高圧で注入ロッド4の噴射孔4aへ圧入するとともに、コンプレッサ3を作動させて圧縮空気を所定風量(例えば1.5Nm3/分以上)で噴射孔4aに供給し、超高圧噴流水で地盤Gを掘削しつつ硬化材Nを噴射することで地盤G中に地盤改良体Kを造成する。そして、ボーリング孔11の注入ロッド4の外周側の隙間から排出される排泥(スライム)は、分岐部5を介して地上排泥管52に連結されるバキューム車6によって吸引され処理される。」
ウ 「【図1】
[図:0001431581000003.jpg]
」

(6)引用例6に記載された事項

ア 「【請求項1】 既設基礎に上下方向の貫通孔を穿設し、この貫通孔を用いて高圧噴射置換工法により既設基礎直下に円柱状の地盤改良体を構築し、既設基礎に穿設する貫通孔を用いてこの円柱状の地盤改良体の内部で周面近くに線材を螺旋状に配設し、また、円柱状の地盤改良体の内部で螺旋状に配設した線材の内側に鉛直方向の鋼材を配設することを特徴とした既設基礎直下の場所打ち杭構築工法。」

イ 「【0013】図4に示すように前記既設基礎(フーチング)1にφ150mm 程度の上下方向の貫通孔4aを穿設し、図5に示すようにこの貫通孔4aにロッド5を挿通して高圧噴射置換工法(空気と液体の力で土を切削し地盤を改良するジェットグラウト工法)により既設基礎1の直下に高強度(qu =150 ~200kgf/cm2 )の円柱状の地盤改良体3を構築する。
【0014】ジェットグラウト工法にはロッドとして2重管を使用して、空気をともなった超高圧硬化材液を地盤中に回転して噴射させ地盤を切削し、スライムを地表に排出させると同時に、円柱状の固結体を造成するJSG工法と、3重管を使用して、空気をともなった超高圧水を地盤中に回転して噴射させて地盤を切削し、そのスライムを地表に排出させるとともに硬化材を同時充填させ円柱状の固結体を造成するコラムジェットグラウト工法があるが、本発明に使用するのはそのどちらでもよい。」
ウ 「
[図:0001431581000004.jpg]
」

(7)引用例7に記載された事項

ア 「【0001】
本発明は、削孔されたボーリング孔の内部に挿入された固化材噴射ロッド(例えば、多重管ロッド)から固化材を噴射しつつ、固化材噴射ロッドを回転或いは回動しつつ軸方向に移動して(上昇させて或いは下降させて)改良体を造成する高圧噴射撹拌地盤改良工法で用いられ、固化材と原位置土を含む排泥(スライム)がボーリング孔を経由して地上側へ排出されるのを促進する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤改良工法では、例えば図9、図10で示す様に、地盤を切削して所定の深度までボーリング孔Hを削孔した後に、地盤改良装置100の固化材噴射ロッド11(例えば、二重管ロッド、多重管ロッド)をボーリング孔Hに挿入し、固化材噴射ロッド11を回転しながら地上側に引き上げて(矢印A)、且つ、固化材噴射ロッド11の固化材噴射ノズルから固化材スラリー(セメントミルク等)を噴射(符号J)して、改良体Kを造成する。
その際に、基本的に噴射する固化材スラリーの量に相当する原位置土(例えば粘土)と固化材スラリー(セメントミルク等)から成る粘性の高い排泥が、固化材噴射ロッド11の外周面とボーリング孔Hの内周面との間の円環状の空間(クリアランス)で構成される排泥排出経路を介して、地上側に排出される(矢印B)。」
イ 「【図9】
[図:0001431581000005.jpg]
」

(8)引用例8に記載された事項

「【0002】
従来、硬化材液を地中に噴射して固結体を造成する工法として、たとえば、改良するべき地盤にボーリング孔を切削し、先端にモニタを設けたロッドをボーリング孔内に挿入し、そのモニタに設けられたノズルから水平方向に地盤改良材(硬化材液)ジェットを噴射して、地盤の切削と改良材との混合を行い、地盤の切削・改良材との混合を行いつつロッドを回転しながら地上側へ引き上げるものがあった。これにより、地盤と地盤改良材との混合物からなり、ジェット到達距離と等しい半径方向寸法を有する円柱形の固結体(改良体)を造成することができる(たとえば、特許文献1)。
・・・
【0004】
このように、硬化材液が地中に噴射されると、切削された地盤と余剰な硬化材液が排泥として、通常ロッドの周囲を伝って地上に排出されるが、地盤が粘度の大きい土質(粘土地盤など)である場合や、ロッド周囲の地山が崩壊することにより、排泥を地上に排出するのが困難な場合があった。このように、排泥を地上に排出することができない場合には、地中内の圧力が高まり、周囲の地盤の隆起を引き起こすという問題が生じた。」

2 引用例1に記載された発明及び引用例2~8に記載された周知技術

(1)引用例1に記載された発明

引用例1の上記1(1)アには、請求項1を引用する請求項3として、以下の「油汚染対策工法」が記載されているといえる。

「油汚染土壌に対して、油汚染対策を施す施工位置に口元管を設置する口元管設定工程と、
該施工位置にボーリングマシンにて造成管を計画深度まで削孔する造成管削孔工程と、
該造成管に設けた噴射口から油分分散材を高圧にて噴射させながら汚染土壌と混合撹拌し、そのとき発生する泥土を前記口元管より回収し貯泥槽に送る油分分散材高圧噴射工程と、
を有し、前記汚染土壌の油分を分散・微細分することにより、油臭・油膜を除去する油汚染対策工法であって、
前記油分分散材高圧噴射工程にて油臭・油膜を除去した土壌に対し、
前記造成管を計画深度まで再度挿入する造成管再度挿入工程と、
該造成管に設けた噴射口からセメント等硬化材を高圧にて噴射させながら混合撹拌し、そのとき発生する泥土を前記口元管より回収し貯泥槽に送る硬化材高圧噴射工程と
をさらに有し、それにより前記土壌を硬化させる油汚染対策工法。」

ここで、同イの【0010】の「ガソリンスタンド等にて発生している油汚染土壌に対しての汚染対策工法としては、掘削除去が主たる対策として実施されている。・・・また、原位置における対策として実施されている土壌ガス吸引工法では対象地盤が通気帯(不飽和帯)に限定され、なおかつ、揮発性を有する成分に限定される。」との記載によれば、上記請求項1を引用する請求項3の「油汚染対策工法」は、原位置における対策として実施されている土壌ガス吸引工法の欠点を解決するものであるといえるから、「原位置における対策」を前提とするものであるといえる。

そして、上記の「油汚染対策」、「油汚染対策工法」は、引用例1の同イの【0001】の「本発明は、ガソリンスタンド等の油汚染土壌の浄化対策に関する。」との記載によれば、それぞれ、「油汚染浄化対策」、「油汚染浄化対策工法」であるといえる。

そうすると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「油汚染土壌に対して、油汚染浄化対策を施す施工位置に口元管を設置する口元管設定工程と、
該施工位置にボーリングマシンにて造成管を計画深度まで削孔する造成管削孔工程と、
該造成管に設けた噴射口から油分分散材を高圧にて噴射させながら汚染土壌と混合撹拌し、そのとき発生する泥土を前記口元管より回収し貯泥槽に送る油分分散材高圧噴射工程と、
を有し、前記汚染土壌の油分を分散・微細分することにより、油臭・油膜を除去する原位置における油汚染浄化対策工法であって、
前記油分分散材高圧噴射工程にて油臭・油膜を除去した土壌に対し、
前記造成管を計画深度まで再度挿入する造成管再度挿入工程と、
該造成管に設けた噴射口からセメント等硬化材を高圧にて噴射させながら混合撹拌し、そのとき発生する泥土を前記口元管より回収し貯泥槽に送る硬化材高圧噴射工程と
をさらに有し、それにより前記土壌を硬化させる油汚染浄化対策工法。」

(2)引用例2~8に記載された周知技術

ア 周知技術1

引用例5の上記1(5)イの【0032】の「次に、上述した高圧噴射撹拌工法に用いる施工管理システムの作用について、図面に基づいて説明する。

図1に示すように、先ず、図示しない削孔機を用いて基礎10の適宜な位置にボーリング孔11を形成して、基礎10の直下の地盤Gに連通させる。次いで、地盤改良装置1によってボーリング孔11内に注入ロッド4を挿入し、高圧ポンプ2で硬化材Nを高圧で注入ロッド4の噴射孔4aへ圧入するとともに、コンプレッサ3を作動させて圧縮空気を所定風量(例えば1.5Nm3/分以上)で噴射孔4aに供給し、超高圧噴流水で地盤Gを掘削しつつ硬化材Nを噴射することで地盤G中に地盤改良体Kを造成する。」との記載によれば、引用例5には、高圧噴射撹拌工法を行うにおいて、基礎にボーリング孔を形成して、基礎の直下の地盤に連通させ、ボーリング孔内に注入ロッドを挿入し、注入ロッドからの超高圧噴流水で地盤を掘削しつつ硬化材を噴射することで地盤中に地盤改良体を造成すること、が記載されている。

引用例6の上記1(6)イの【0013】、【0014】の「図4に示すように前記既設基礎(フーチング)1にφ150mm 程度の上下方向の貫通孔4aを穿設し、図5に示すようにこの貫通孔4aにロッド5を挿通して高圧噴射置換工法(空気と液体の力で土を切削し地盤を改良するジェットグラウト工法)により既設基礎1の直下に高強度(qu =150 ~200kgf/cm2 )の円柱状の地盤改良体3を構築する。」、「ジェットグラウト工法にはロッドとして2重管を使用して、空気をともなった超高圧硬化材液を地盤中に回転して噴射させ地盤を切削し、スライムを地表に排出させると同時に、円柱状の固結体を造成するJSG工法と、3重管を使用して、空気をともなった超高圧水を地盤中に回転して噴射させて地盤を切削し、そのスライムを地表に排出させるとともに硬化材を同時充填させ円柱状の固結体を造成するコラムジェットグラウト工法があるが、本発明に使用するのはそのどちらでもよい。」との記載によれば、引用例6には、高圧噴射置換工法を行うにおいて、基礎に貫通孔を穿設し、基礎の直下の地盤に連通させ、貫通孔内にロッドを挿通し、ロッドからの空気をともなった超高圧硬化材液で地盤を切削し地盤中に円柱状の固結体を造成することが記載されている。

ここで、引用例6に記載される技術における、空気をともなった超高圧硬化材液を地盤中に噴射させ地盤を切削し、固結体を造成している「高圧噴射置換工法」、「貫通孔」は、それぞれ、「高圧噴射撹拌工法」、「ボーリング孔」であるといえる。また、引用文献5、6に記載される技術において、「地盤」は、「土壌」ということができる。

そうすると、上記引用例5、6の記載によれば、引用例5、6には、以下の周知技術1が記載されているといえる。

「高圧噴射撹拌工法において、基礎下部に、対象とする土壌が存在する場合、基礎にボーリング孔を形成し、該ボーリング孔を前記土壌に連通させること。」

イ 周知技術2

引用例2の上記1(2)アの【0004】には、「これらのうち、高圧噴射による攪拌混合方法は、ジェットグラウト工法あるいは高圧噴射攪拌工法と呼ばれており(以下、高圧噴射攪拌工法)、地盤内に挿入された多重管ロッドを回転させつつ前進又は後退させるとともに、該多重管ロッドに設けられた吐出口から硬化材や水あるいは圧縮空気を地盤内に高圧噴射することによって、地盤内に柱状の改良体を造成することができるようになっており、高圧噴射される流体の種類や噴射の仕方によって、JSG工法、CJG工法、CCP工法、RJP工法などさまざまな工法が開発されている。」との記載、同イの【0039】には、「セメント分布領域2を形成するには、JSG工法に従い、まず、地盤1にロッド3を挿入し、次いで、該ロッドを材軸回りに回転させかつ材軸に沿って上昇させながら、その下端近傍に設けられた吐出口4を介して第1の硬化材溶液としてのセメントミルクを圧縮空気とともに高圧噴射する。」との記載があり、

引用例3の上記1(3)の【0019】には、「本実施形態の貫通孔16は、後述の高圧噴射撹拌用パイプ30挿通用及び芯材24挿通用を兼用している。高圧噴射撹拌工法は、超高圧硬化剤を圧縮空気とともに回転させながら地中に噴射し、地盤を掘削しながら地盤中に円柱体状の硬化体を形成する方法であり、スクリュー式のアースオーガ―で地盤を掘削する工法と比較して大径の孔を掘削する必要がない。」との記載があり、

引用例4の上記1(4)の【0023】には、「本発明の適用対象である高圧噴射撹拌工法とは、図3に示すように、セメント等の硬化材を空気とともに高圧(例えば40MPa)で噴射して、地盤を強制的に切削しながら地盤改良体20を造成する工法である。この高圧噴射撹拌工法では、改良対象地盤中に貫入したロッド30を軸周りに回転又は揺動させながら、噴射口31から硬化材、水、空気等の噴射物を噴射することにより、円柱状、壁状、扇形、格子状等の所望形状の地盤改良体20を造成することができる。」との記載があり、

引用例5の上記1(5)イの【0032】には、「次に、上述した高圧噴射撹拌工法に用いる施工管理システムの作用について、図面に基づいて説明する。・・・次いで、地盤改良装置1によってボーリング孔11内に注入ロッド4を挿入し、高圧ポンプ2で硬化材Nを高圧で注入ロッド4の噴射孔4aへ圧入するとともに、コンプレッサ3を作動させて圧縮空気を所定風量(例えば1.5Nm3/分以上)で噴射孔4aに供給し、超高圧噴流水で地盤Gを掘削しつつ硬化材Nを噴射することで地盤G中に地盤改良体Kを造成する。」との記載がある。

引用例2~5には、高圧噴射撹拌工法で地盤中に、改良体(硬化体)を造成(形成)するのに、硬化材(硬化剤)と圧縮空気を注入ロッド(多重管ロッド、高圧噴射撹拌用パイプ、ロッド)から噴射していることが記載されているといえるところ、「地盤」は「土壌」ということができ、圧縮空気以外は、「硬化材」のみが、噴射されていることになり、噴射は、注入ロッド等の噴射孔を介して行われているといえるから、引用例2~5には、以下の周知技術2が記載されているといえる。

「高圧噴射撹拌工法で、土壌中に改良体を造成するにおいて、注入ロッドの噴射孔から圧縮空気と共に硬化材のみを噴射すること。」

ウ 周知技術3

引用例5の上記1(5)イの【0032】には、「次に、上述した高圧噴射撹拌工法に用いる施工管理システムの作用について、図面に基づいて説明する。

・・・次いで、地盤改良装置1によってボーリング孔11内に注入ロッド4を挿入し、高圧ポンプ2で硬化材Nを高圧で注入ロッド4の噴射孔4aへ圧入するとともに、コンプレッサ3を作動させて圧縮空気を所定風量(例えば1.5Nm3/分以上)で噴射孔4aに供給し、超高圧噴流水で地盤Gを掘削しつつ硬化材Nを噴射することで地盤G中に地盤改良体Kを造成する。そして、ボーリング孔11の注入ロッド4の外周側の隙間から排出される排泥(スライム)は、分岐部5を介して地上排泥管52に連結されるバキューム車6によって吸引され処理される。」との記載があり、

引用例7の上記1(7)アの【0001】には、「本発明は、削孔されたボーリング孔の内部に挿入された固化材噴射ロッド(例えば、多重管ロッド)から固化材を噴射しつつ、固化材噴射ロッドを回転或いは回動しつつ軸方向に移動して(上昇させて或いは下降させて)改良体を造成する高圧噴射撹拌地盤改良工法で用いられ、固化材と原位置土を含む排泥(スライム)がボーリング孔を経由して地上側へ排出されるのを促進する技術に関する。」との記載、同アの【0002】には、「地盤改良工法では、例えば図9、図10で示す様に、地盤を切削して所定の深度までボーリング孔Hを削孔した後に、地盤改良装置100の固化材噴射ロッド11(例えば、二重管ロッド、多重管ロッド)をボーリング孔Hに挿入し、固化材噴射ロッド11を回転しながら地上側に引き上げて(矢印A)、且つ、固化材噴射ロッド11の固化材噴射ノズルから固化材スラリー(セメントミルク等)を噴射(符号J)して、改良体Kを造成する。

その際に、基本的に噴射する固化材スラリーの量に相当する原位置土(例えば粘土)と固化材スラリー(セメントミルク等)から成る粘性の高い排泥が、固化材噴射ロッド11の外周面とボーリング孔Hの内周面との間の円環状の空間(クリアランス)で構成される排泥排出経路を介して、地上側に排出される(矢印B)。」との記載があり、

引用例8の上記1(8)の【0002】には、「従来、硬化材液を地中に噴射して固結体を造成する工法として、たとえば、改良するべき地盤にボーリング孔を切削し、先端にモニタを設けたロッドをボーリング孔内に挿入し、そのモニタに設けられたノズルから水平方向に地盤改良材(硬化材液)ジェットを噴射して、地盤の切削と改良材との混合を行い、地盤の切削・改良材との混合を行いつつロッドを回転しながら地上側へ引き上げるものがあった。これにより、地盤と地盤改良材との混合物からなり、ジェット到達距離と等しい半径方向寸法を有する円柱形の固結体(改良体)を造成することができる(たとえば、特許文献1)。」との記載、【0004】には、「このように、硬化材液が地中に噴射されると、切削された地盤と余剰な硬化材液が排泥として、通常ロッドの周囲を伝って地上に排出されるが、地盤が粘度の大きい土質(粘土地盤など)である場合や、ロッド周囲の地山が崩壊することにより、排泥を地上に排出するのが困難な場合があった。」との記載がある。

ここで、引用例8に記載される技術において、「ノズルから水平方向に地盤改良材(硬化材液)ジェットを噴射して、地盤の切削と改良材との混合を行い、地盤の切削・改良材との混合を行いつつロッドを回転しながら地上側へ引き上げ」、「円柱形の固結体(改良体)を造成すること」は、「高圧噴射撹拌工法」であるといえる。

以上の記載によれば、引用例5、7、8には、高圧噴射撹拌工法で地盤(土壌)中に改良体を造成する際に発生するスライム(排泥)が、ボーリング孔と注入ロッド(固化材噴射ロッド、ロッド)との間の隙間を通過して排出されることが記載されているといえるところ、ボーリング孔と注入ロッドとの間の隙間があるということは、ボーリング孔の水平断面積を、注入ロッドの水平断面積よりも大きく形成されているということであるから、引用例5、7、8には、以下の周知技術3が記載されているといえる。

「高圧噴射撹拌工法で土壌中に改良体を造成中に発生するスライムを排出するのに、ボーリング孔の水平断面積を、注入ロッドの水平断面積よりも大きく形成し、前記ボーリング孔と前記注入ロッドとの間に、改良体の造成中に発生するスライムが通過する隙間を形成すること。」

3 対比・判断

(1)本願発明と引用発明との対比

本願発明と引用発明を対比する。

ア 引用発明の「油」は、本願発明の「揮発油」と、「油」である点で共通し、引用発明の「油汚染土壌」は、本願発明の「揮発油によって汚染された汚染土壌」と、「油によって汚染された汚染土壌」の点で共通する。そして、引用発明の「油臭・油膜を除去する原位置における油汚染浄化対策工法」は、本願発明の「揮発油によって汚染された汚染土壌を原位置で浄化する」「汚染土壌浄化方法」と、「油によって汚染された汚染土壌を原位置で浄化する」「汚染土壌浄化方法」の点で共通する。さらに、引用発明の「該造成管に設けた噴射口からセメント等硬化材を高圧にて噴射させながら混合撹拌」することは、本願発明の「高圧噴射撹拌工法」であるといえる。

そうすると、引用発明の「油汚染土壌」に対して、「該造成管に設けた噴射口からセメント等硬化材を高圧にて噴射させながら混合撹拌」することを含む「油臭・油膜を除去する原位置における油汚染対策工法」は、本願発明の「高圧噴射撹拌工法を用いて揮発油によって汚染された汚染土壌を原位置で浄化する高圧噴射撹拌工法を用いた汚染土壌浄化方法」と、「高圧噴射撹拌工法を用いて油によって汚染された汚染土壌を原位置で浄化する高圧噴射撹拌工法を用いた汚染土壌浄化方法」の点で共通する。

イ 引用発明の「該施工位置にボーリングマシンにて造成管を計画深度まで削孔する造成管削孔工程」において、「ボーリングマシン」は、本願発明の「削孔機」に相当する。また、「計画深度」とは、引用例1の上記1(1)ウの【0017】の「図1は、油汚染土壌を鉛直面にて切断した断面を側方から見た断面図である。図1(a)は、ボーリングマシンにて造成管を計画深度まで削孔する工程を示す図である。」との記載や、同エの図1(a)を参照すると、引用発明における「汚染土壌」が存在する深度であるといえる。さらに、引用発明では、造成管(削孔だけを行うものではない)により削孔が行われるが、形成された孔は、本願発明の「ボーリング孔」に相当する。

そうすると、引用発明の「該施工位置にボーリングマシンにて造成管を計画深度まで削孔する造成管削孔工程」は、本願発明の「削孔機を用いて基礎にボーリング孔を形成し、該ボーリング孔を前記汚染土壌に連通させる工程」と、「削孔機を用いてボーリング孔を形成し、該ボーリング孔を前記汚染土壌に連通させる工程」の点で共通する。

ウ 引用発明の「前記油分分散材高圧噴射工程にて油臭・油膜を除去した土壌に対し、前記造成管を計画深度まで再度挿入する造成管再度挿入工程」に用いられる「噴射口」が設けられた「造成管」は、引用例1の上記1(1)エの例えば【図1】(c)によれば、「噴射口」が「造成管」の先端に設けられていることが見て取れるから、本願発明の「先端部に噴射孔を備えた注入ロッド」に相当する。

また、この工程における「油分分散材高圧噴射工程にて油臭・油膜を除去した土壌」は、同イの【0013】の「次に、油分分散材と油汚染土壌を混合撹拌した土壌に、さらにセメント系硬化材を高圧にて噴射し汚染土壌を硬化させる。それにより、一部残留している炭化水素を不溶化する。また、石油類地下タンクからの油分の再流出を防ぎ、再汚染を防止する」との記載によれば、炭化水素(油)がまだ含まれているものであるから、引用発明の「原位置における油汚染対策工法」で対象とする「油汚染土壌」に含まれるものであるといえる。

そうすると、引用発明の「前記油分分散材高圧噴射工程にて油臭・油膜を除去した土壌に対し」、「噴射口」が設けられた「前記造成管を計画深度まで再度挿入する造成管再度挿入工程」は、本願発明の「先端部に噴射孔を備えた注入ロッドを前記汚染土壌に挿入する工程」に相当する。

エ 引用例1の上記1(1)エの例えば【図1】(c)によれば、引用発明では、硬化材高圧噴射工程で、柱状の「硬化」した「土壌」が形成されるといえ、これは、本願発明の「柱状の改良体」に相当する。そして、引用発明において、柱状の「硬化」した「土壌」を形成するには、「造成管」は回転しながら、「噴射口からセメント等硬化材を高圧にて噴射させながら混合撹拌」しているといえる。また、引用発明の「噴射口からセメント等硬化材を高圧にて噴射」することは、本願発明の「前記噴射孔から圧縮空気と共に硬化材のみを噴射」することと、「噴射孔から硬化材のみを噴射」することで共通している。

そうすると、引用発明の「該造成管に設けた噴射口からセメント等硬化材を高圧にて噴射させながら混合撹拌し」、「それにより前記土壌を硬化させる」「硬化材高圧噴射工程」は、本願発明の「前記注入ロッドを回転させながら前記噴射孔から圧縮空気と共に硬化材のみを噴射して、前記汚染土壌中に柱状の改良体を造成する工程」と、「前記注入ロッドを回転させながら前記噴射孔から硬化材のみを噴射して、前記汚染土壌中に柱状の改良体を造成する工程」の点で共通する。

オ 引用発明の「セメント等硬化材を高圧にて噴射させながら混合撹拌し、そのとき発生する泥土を前記口元管より回収し貯泥槽に送」ることにおいて、「発生する泥土」は、「汚染土壌」といえるところ、これは、「セメント等硬化材」が「油汚染対策工法」を施す領域に噴射されて生じた、硬化した「土壌」(本願発明の「硬化された前記改良体」に相当する。)以外のものが、「泥土」として発生したものであるといえる。

また、上述の「発生する泥土」は、本願発明の「前記改良体の造成中に発生するスライム」に相当するものであるところ、引用発明において、この「発生する泥土」が「回収」されるということは、上記イで述べた、本願発明の「ボーリング孔」に相当する、造成管により削孔が行われることにより形成された孔のいずれかの箇所を、「発生する泥土」が通過しているといえる。

そうすると、引用発明の「セメント等硬化材を高圧にて噴射させながら混合撹拌し、そのとき発生する泥土を前記口元管より回収し貯泥槽に送」り、「それにより前記土壌を硬化させる」ことは、本願発明の「前記汚染土壌の一部は前記硬化材と置換されて回収されるとともに、残りの前記汚染土壌は硬化された前記改良体とな」ることに相当する。

また、引用発明の「セメント等硬化材を高圧にて噴射させながら混合撹拌し、そのとき発生する泥土を前記口元管より回収し貯泥槽に送」ることは、本願発明の「前記ボーリング孔の水平断面積は、前記注入ロッドの水平断面積よりも大きく形成され、前記ボーリング孔と前記注入ロッドとの間に」「形成されている」「隙間」を、「前記改良体の造成中に発生するスライムが通過する」ことと、「前記ボーリング孔を前記改良体の造成中に発生するスライムが通過する」点で共通する。

カ 以上によれば、本願発明と引用発明は、「高圧噴射撹拌工法を用いて油によって汚染された汚染土壌を原位置で浄化する高圧噴射撹拌工法を用いた汚染土壌浄化方法であって、

削孔機を用いてボーリング孔を形成し、該ボーリング孔を前記汚染土壌に連通させる工程と、

先端部に噴射孔を備えた注入ロッドを前記汚染土壌に挿入する工程と、

前記注入ロッドを回転させながら前記噴射孔から硬化材のみを噴射して、前記汚染土壌中に柱状の改良体を造成する工程と、

を有し、

前記汚染土壌の一部は前記硬化材と置換されて回収されるとともに、残りの前記汚染土壌は硬化された前記改良体となり、

前記ボーリング孔を前記改良体の造成中に発生するスライムが通過する、高圧噴射撹拌工法を用いた汚染土壌浄化方法。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。

<相違点1>

油が、本願発明では、「揮発油」であるのに対し、引用発明では、「揮発油」であるのか明らかでない点。

<相違点2>

ボーリング孔を汚染土壌に連通させるのに、本願発明では、基礎にボーリング孔を形成しているのに対し、引用発明では、基礎にボーリング孔を形成しているのか明らかでない点。

<相違点3>

高圧噴射撹拌工法で噴射孔から硬化材のみを噴射するのに、本願発明は、圧縮空気と共に噴射しているのに対し、引用発明では、圧縮空気と共に噴射しているのか明らかでない点。

<相違点4>

ボーリング孔を改良体の造成中に発生するスライムが通過することについて、本願発明では、「前記ボーリング孔の水平断面積は、前記注入ロッドの水平断面積よりも大きく形成され、前記ボーリング孔と前記注入ロッドとの間に」「形成されている」「隙間」を、「前記改良体の造成中に発生するスライムが通過する」のに対し、引用発明では、造成管により削孔が行われることにより形成された孔のどの箇所を、「発生する泥土」が通過しているのか明らかでない点。

(2)相違点に対する判断

ア 相違点1について

引用例1の上記1(1)イの【0010】の「ガソリンスタンド等にて発生している油汚染土壌に対しての汚染対策工法としては、掘削除去が主たる対策として実施されている。しかし、土壌汚染対策法の改正に伴い、掘削除去する場合には多くの制約が義務づけられた。また、原位置における対策として実施されている土壌ガス吸引工法では対象地盤が通気帯(不飽和帯)に限定され、なおかつ、揮発性を有する成分に限定される。また、バイオレメディエーション工法では不飽和帯と飽和帯では採用工法が異なり、なおかつ浄化まで数ヶ月から数年は必要となる。」との記載、同イの【0011】の「本発明が解決しようとする課題は、比較的小規模な設備にて,不飽和帯・飽和帯の区別なく、数日の短期間にて油汚染地盤の浄化を完了させる工法を提供することにある。」との記載によれば、引用発明の「油汚染浄化対策工法」は、「ガソリンスタンド等にて発生している油汚染土壌」を対象とするものである。引用発明では、同ウの【0019】に記載されているように実施例では、油として「軽油」でその効果が確認されているが、ガソリンスタンド等にて発生している油汚染に、「ガソリンスタンド」とあるとおり、「ガソリン」等の「揮発油」が含まれていることは明らかである。また、従来の「土壌ガス吸引工法」では、対象地盤が通気帯(不飽和帯)に限定され、なおかつ、揮発性を有する成分に限定されていたところ、引用発明は、従来の土壌ガス吸引工法の欠点を解決したものであるといえるから、従来の土壌ガス吸引工法で処理できる対象が揮発性を有する成分に限定されていたのに対し、引用発明では、揮発性の有無にかかわらず油を浄化の対象にできることが理解できる。

そうすると、引用発明において、浄化の対象とする油に、「揮発油」が含まれることは、引用例1に記載されているに等しい事項であるといえる。仮に、そうではないとしても、「ガソリンスタンド等にて発生している油汚染土壌」を対象とする引用発明において、ガソリンスタンド等にて発生している油汚染に含まれることが明らかな、「ガソリン」等の揮発油も浄化の対象とすることは、当業者ならば容易に想到し得ることであるといえる。

以上によれば、上記相違点1は、実質的な相違点ではないか、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。

イ 相違点2について

本願発明の「基礎」について、本願明細書では、【0021】に「地盤改良装置1は、不図示の基礎上に設けられ、所定の深さまで貫入させたときに、高圧ポンプ3によって注入ロッド2の噴射孔2aへ向けて硬化材Nを圧入して高圧噴射させる構成となっている。」との記載、【0026】に、「図1に示すように、汚染土壌浄化方法の作業手順としては、先ず、削孔機(図示省略)を用いて基礎の適宜な位置にボーリング孔11を形成して、基礎の直下の汚染土壌Gに連通させる。」との記載があるだけであり、「基礎」に関する具体的な説明はない。ここで、本願明細書には、本願発明の「汚染土壌浄化方法」の実施のために「基礎」を形成する旨の記載はないこと、上記【0026】で言及している【図1】に「基礎」を示す符号はないが、ボーリング孔11が設けられている斜線部が「基礎」と解されるところ、この斜線部が、設置される地盤改良装置1等の下部だけでなく土壌一面を覆っていること、さらに、この「基礎」に対してボーリング孔11を設けることから(「汚染土壌浄化方法」の実施のために「基礎」を形成するのであれば、ボーリング孔11を設ける位置に「基礎」を設ける必要はない。)、この「基礎」は、汚染土壌の上部にもともと設置されているものと解される。

他方、引用発明は、「ガソリンスタンド等にて発生している油汚染土壌」を対象とするものであり、ガソリンスタンドでは、土壌上面は、コンクリート等で固められておりこれは「基礎」といえるものであるといえる。

そうすると、「ガソリンスタンド等にて発生している油汚染土壌」を浄化する引用発明も、造成管を汚染土壌に連通させるのに、基礎に孔(ボーリング孔)を形成しているといえる。仮にそうではないとしても、「ガソリンスタンド等にて発生している油汚染土壌」を浄化するのに、造成管を汚染土壌に連通させるのに、基礎に孔(ボーリング孔)を形成することは、当業者ならば容易に想到し得るといえる。

さらに、上記(1)アで述べたように、引用発明は、「高圧噴射撹拌工法」によるものである。そして、対象とする土壌が汚染土壌であるか否かの点で違いはあるが、土壌を硬化させる点では、引用発明での「高圧噴射撹拌工法」は、一般的な「高圧噴射撹拌工法」と何ら変わるものではなく、一般的な「高圧噴射撹拌工法」で用いられている技術を適宜採用することができるといえる。

そして、上記2(2)アで述べたように、高圧噴射撹拌工法において、基礎下部に、対象とする土壌が存在する場合、基礎にボーリング孔を形成し、該ボーリング孔を前記土壌に連通させることは、周知技術であるから、引用発明において、基礎下部に、油汚染土壌が存在する場合、基礎にボーリング孔を形成し、該ボーリング孔を前記油汚染土壌に連通させることは、当業者ならば容易に想到し得るといえる。

そうすると、上記相違点2は、実質的な相違点ではないか、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。

ウ 相違点3について

上記イで述べたように、引用発明において、一般的な「高圧噴射撹拌工法」で用いられている技術を適宜採用することができるといえるところ、上記2(2)イで述べたように、高圧噴射撹拌工法で、土壌中に改良体を造成するにおいて、注入ロッドの噴射孔から圧縮空気と共に硬化材のみを噴射することは、周知技術であるから、引用発明において、高圧噴射撹拌工法で噴射孔から硬化材のみを噴射するのに、圧縮空気と共に噴射することは、当業者ならば容易に想到し得るといえる。

そうすると、引用発明において、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。

エ 相違点4について

上記イで述べたように、引用発明において、一般的な「高圧噴射撹拌工法」で用いられている技術を適宜採用することができるといえるところ、上記2(2)ウで述べたように、高圧噴射撹拌工法で土壌中に改良体を造成中に発生するスライムを排出するのに、ボーリング孔の水平断面積を、注入ロッドの水平断面積よりも大きく形成し、前記ボーリング孔と前記注入ロッドとの間に、改良体の造成中に発生するスライムが通過する隙間を形成することは、周知技術であるから、引用発明において、造成管により形成される孔に土壌を硬化する際に発生する泥土を通過させるのに、前記造成管により形成される孔の水平断面積を、造成管の水平断面積よりも大きく形成し、前記造成管により形成される孔と前記造成管との間に形成されている隙間を、土壌を硬化させる際に発生する泥土が通過するものとすることは、当業者ならば容易に想到し得るといえる。

そうすると、引用発明において、上記相違点4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。

オ 本願発明の効果について

本願明細書には、【発明の効果】として、【0015】に「本発明の高圧噴射撹拌工法を用いた汚染土壌浄化方法によれば、処理作業時における引火を防止でき、かつ高濃度のガソリン等の炭化水素油を含む汚染土壌を効果的に浄化することができる。」との記載があり、【0008】には、この効果をさらに、本願発明に対応する具体的な効果とした、「本発明では、先端部に噴射孔を備えた注入ロッドを汚染土壌に挿入し、その注入ロッドを回転させながら噴射孔から圧縮空気と共に硬化材を噴射することにより、炭化水素油を含有した汚染土壌と硬化材とが混合、攪拌されて汚染土壌中に柱状の改良体を造成することで汚染土壌を効率よく浄化することができる(当審注:以下、「効果1」とする。)。

このような高圧噴射攪拌工法を炭化水素油を含む汚染土壌に適用することによって、例えば汚染土壌の略半分は硬化材に置換されて回収することができ、残りの汚染土壌は硬化された改良体として残置されるが、炭化水素油を含む汚染土壌中の汚染物質であるベンゼンの揮発濃度や溶出量を基準値以下に低下することができる(当審注:以下、「効果2」とする。)。また、浄化作業が地中で行われるため、汚染土壌中の炭化水素油への引火を抑制できるうえ、炭化水素油を含む汚染土壌が作業員に暴露することを防ぐことができる(当審注:以下、「効果3」とする。)。」との記載がある。

上記効果1~3について検討すると、これらの効果は、結局のところ、上記【0008】に記載されているように、高圧噴射撹拌工法を炭化水素油を含む汚染土壌に適用することによって奏されるものであるといえる。

そして、引用発明も、油汚染土壌の浄化に、高圧噴射撹拌工法を適用したものであるといえるから、引用発明も、上記の本願発明の効果と同様の効果を奏するものであるといえる。

具体的には、上記効果1は、炭化水素油を含有した汚染土壌と硬化材とが混合、撹拌されて汚染土壌中に柱状の改良体を造成することで奏されるものであるが、引用発明も、「油汚染土壌に対して」、「該造成管に設けた噴射口からセメント等硬化材を高圧にて噴射させながら混合撹拌し」、「それにより前記土壌を硬化させる」ものであり、本願発明と同様に、汚染土壌中に柱状の改良体を造成するものであるから、上記効果1を奏するものであるといえる。

上記効果2は、高圧噴射撹拌工法を炭化水素油を含む汚染土壌に適用することによって奏されるものであるが、引用発明も、「該造成管に設けた噴射口からセメント等硬化材を高圧にて噴射させながら混合撹拌し、そのとき発生する泥土を前記口元管より回収し貯泥槽に送る硬化材高圧噴射工程とをさらに有し、それにより前記土壌を硬化させる」ものであり、汚染土壌の所定割合は硬化材に置換されて泥土として回収することができ、残りの汚染土壌は硬化されたものとして残置されるものであるから、上記効果2を奏するものであるといえる。

上記効果3は、浄化作業が地中で行われることによって奏されるものであるが、引用発明も、浄化は地中で行われるものであるから、上記効果3を奏するものであるといえる。

そうすると、本願発明の効果は、引用発明でも奏される効果であるか、引用発明に、高圧噴射攪拌工法における周知技術を適用したものから、当業者が容易に予測できる効果に過ぎないから、格別なものであるとはいえない。

(3)小括

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2~8に記載される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)令和7年8月22日に提出された意見書における審判請求人の主張に対する当審の判断

審判請求人は、本願発明の効果として、上記(2)オで述べた効果1~3と共に、「先に注入ロッドよりも径が大きいボーリング孔を形成し、そこに注入ロッドを挿入することで、スライムを効率的にスライムピットへ搬送することができる」効果を主張し、これに対し、具体的には、引用例2には、本願発明の注入ロッドに相当するロッドが直接地盤に挿入される構成、つまり、ロッドがボーリングロッドと噴射ロッドを兼用のものが記載されているだけであり、本願発明のように効率的にスライムを搬送することができないことから、本願発明の効果が格別である旨を主張している。

しかしながら、上記効果1~3が、格別なものではないことは、上記(2)オで述べたとおりである。

また、先に注入ロッドよりも径が大きいボーリング孔を形成し、そこに注入ロッドを挿入することで、ボーリング孔と注入ロッドの間の隙間からスライムを搬送することは、2(2)ウで述べたように高圧噴射撹拌工法における周知技術であり、「先に注入ロッドよりも径が大きいボーリング孔を形成し、そこに注入ロッドを挿入することで、スライムを効率的にスライムピットへ搬送することができる」効果は、この周知技術によって得られる効果に過ぎないから、格別なものとはいえない。

そうすると、上記意見書での審判請求人の主張は、採用することができない。

第5 むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び引用例2~8に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2024-001104

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