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特許拒絶査定不服審判

2024-000547

切削ツールを処理する方法及び切削ツール

審判番号
2024-000547
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-573133
請求日
2024年01月12日
審決日
2025年03月25日
公報発行日
2026年06月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】エービー サンドビック コロマント
  • 【請求人代理人】園田・小林弁理士法人
審判長/審判官
  • 審判長 鈴木 貴雄
  • 審判官 大山 健
  • 審判官 田々井 正吾
分類
P18 .113-Z (B24C) / P18 .121-Z (B24C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第1項第4号、特許法第17条の2第5項第4号、特許法第17条の2第5項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-573133「切削ツールを処理する方法及び切削ツール」拒絶査定不服審判事件〔2020年(令和2年)1月2日国際公開、WO2020/002664、令和3年11月4日国内公表、特表2021-529676〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(令和元年)6月28日(パリ条約による優先権主張(3件)外国庁受理2018年6月29日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。 1 令和2年12月28日 国内書面の提出 2 令和3年 2月25日 翻訳文の提出 3 令和5年 2月3日付け 拒絶の理由(以下「拒絶理由」という。)の通知 4 令和5年 5月15日 意見書及び手続補正書の提出 5 令和5年 9月 6日付け 拒絶をすべき旨の査定(以下「拒絶査定」という。) 6 令和6年 1月12日 拒絶査定不服審判の請求書及び手続補正書の提出 7 令和6年 7月17日 上申書の提出 第2 令和6年1月12日の手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年1月12日提出の手続補正書によりされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正がされた。(下線部は補正箇所である。) 「焼結炭化物又はサーメットの基板を含む切削ツールを処理する方法であって、 前記切削ツールを100℃以上の温度に加熱することと、 加熱された前記切削ツールにショットピーニングを行うことを含む、方法。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和5年5月15日提出の手続補正書により補正をした特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「焼結炭化物又はサーメットの基板を含む切削ツールを処理する方法であって、前記切削ツール(1)に、100℃以上の温度にてショットピーニングが行われ、前記ショットピーニングは、加熱された切削ツールに行われる、方法。」 2 補正の適否(その1:本件補正の目的) (1)本件補正の目的について 本件補正は、特許法第17条の2第1項第4号に掲げる拒絶査定不服審判の請求と同時にした補正であって、特許請求の範囲についての本件補正は、同条第5項の規定により、同項第1~4号に掲げる事項を目的とするものに限られる。 これに対して、本件補正前の請求項1に記載した「前記切削ツール(1)に、100℃以上の温度にてショットピーニングが行われ、前記ショットピーニングは、加熱された切削ツールに行われる」との発明特定事項と、本件補正後の請求項1に記載した「前記切削ツールを100℃以上の温度に加熱することと、加熱された前記切削ツールにショットピーニングを行うことを含む」との発明特定事項とは、本件補正前後のいずれについても、100℃以上の温度に加熱した切削ツールにショットピーニングを行うことを表現している点で変わりはない。むしろ、本件補正後では、ショットピーニングが施される切削工具が、加熱後からショットピーニングが行われるまでの間にわたって、100℃以上の温度に維持された状態であるかの限定が除かれている点で、本件補正は、請求項1の記載により特定される発明の範囲を拡張したものとも解釈される。さらにいえば、本件補正前の請求項1では「ショットピーニングが行われ」る工程のみが発明特定事項とされていたところ、請求項1に係る本件補正は、当該工程を限定するものではなく、「切削ツールを100℃以上の温度に加熱する」という新たな工程を追加して限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、いわゆる「限定的減縮」に該当するともいえない。 したがって、本件補正後の発明特定事項は、補正前に比して技術的内容が狭められたものでなく、かつ本件補正後の発明特定事項には、補正前の「100℃以上の温度に加熱した切削ツールにショットピーニングが行われ」るとの発明特定事項を限定したものともいえないから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮、いわゆる限定的減縮には該当しない。 さらに、拒絶査定においては、令和5年2月3日付け拒絶理由通知書に記載した理由2(新規性)、及び理由3(進歩性)の拒絶理由により拒絶をすべきものとされたものであって、本件補正前の請求項1について発明特定事項が明瞭でない旨の事実は認められないし、拒絶理由としてその旨が示されてもいないから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明にも該当しない。 また、本件補正が、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除や第3号に掲げる誤記の訂正に該当しないことも明らかである。 (2)本件補正の目的についてのまとめ 上記(1)のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1~4号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもなく同項の規定に違反しているものである。 3 本件補正の適否(その2:独立特許要件) 上記2においては、本件補正が、特許法第17条の2第5項第1~4号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもないと判断したが、仮に、同項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する(すなわち、本件補正前の請求項1における「切削ツールを処理する方法」に関して、本件補正前の「ショットピーニングが行われ」る工程に、新たに「切削ツールを100℃以上の温度に加熱する」工程を追加するとの限定が、いわゆる「限定的減縮」に該当する)と解釈し得た場合に、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明1」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)についても、以下、検討する。 (1)本願補正発明1 上記1(1)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 (2)引用文献1の記載内容について ア 引用文献1の書誌事項 引用文献1は、本願の優先日前に頒布され、原査定でも引用文献1として引用した文献である。 特開平6-240303号公報(平成6年8月30日出願公開。) イ 引用文献1の記載事項(下線は、当審にて付した。) (ア)発明の詳細な説明 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、超硬合金、サーメット、セラミックなどの粉末合金で成る工具類や機械部品などの製品の表面層の処理法に関し、より詳しくは、サンドブラストないしはショットピーニング加工においてショット自体によって粉末合金の表面層の温度を上昇させて、粉末合金を構成する各種圧粉体のうちの結合剤の圧粉体を軟化させ且つショットの衝撃力により各種圧粉体の結合の強化を図る粉末合金の表面層の処理方法に関する。 【0002】 【従来の技術】粉末合金は、金属の粉末や炭化物、窒化物及び酸化物などの圧粉体を、それぞれの圧粉体の溶融点以下の温度で圧縮成形し、焼結して製品に仕上げた合金であり、高温に至るまで硬さ、強さが高く、耐摩耗性に優れ、切削工具、塑性加工工具などに成形されている。粉末合金の代表的なものとしては、超硬合金、サーメット、セラミックなどがあり、合金鋼や高速度鋼に比べて温度による硬さの低下が少ないので高速切削性に優れた性能を発揮する。 【0003】超硬合金は、硬質高融点金属である炭化タングステン(WC)の粉末の圧粉体を主成分とし、これにコバルト(Co)の粉末の圧粉体を結合剤として添加し、圧縮成形したのち高温で焼結したものである。また、前記主成分のWCのほかに、目的に応じて炭化チタン(TiC),炭化タンタル(TaC)などの圧粉体を配合し、これをTi,Co,C,TiNなどの結合剤で焼結したものもある。 【0004】サーメットは、セラミック(耐火物)とメタル(金属)を合わせた名称で、セラミックと超硬合金の両方の特性を持った中間的なものであり、TiC-Ni-Mo2C系サーメットやAl2O3系サーメットなどがある。TiC-Ni-Mo2C系サーメットは、高温強度に優れる炭化チタン(TiC)の圧粉体に、Mo-Niの合金の圧粉体を添加して焼結したものと、これに靭性や耐熱性を与えるために窒化チタン(TiN)を加えて焼結したものとがあり、前記Mo-Niの圧粉体のNiが結合剤となる。このTiC-Ni-Mo2C系サーメットは切削工具材として用いられており、WC系超硬合金より靭性は劣るが、硬さ、耐摩耗性が大きく、高速切削用に適する。 ・・・ 【0007】 【発明が解決しようとする課題】従来の粉末合金で成る工具類や機械部品などの製品においては、粉末合金自体が各種の圧粉体を圧縮成形し高温で焼結したものであるので、各圧粉体間に微小な空間が生じてしまう。例えば、超硬合金は、Ti,Co,C,TiNなどの結合剤が完全に溶けてWCと結合しているのではなく、WCと結合剤の接触部分が高温で圧着された状態であり、WCと結合剤のそれぞれの比重と混合比と超硬合金の密度から計算すると粉末合金全体の体積の約2~5%はWCと結合剤の個々の粒子間の微小な空間で占めている。粉末合金の他の代表的なものであるサーメットも前述した超硬合金と同様に各圧粉体間に微小な空間が生じる。この微小な空間が粉末合金で成る工具類(例えば、バイトやフライスのチップ)の刃先のへたりやチッピングの原因となり粉末合金で成る製品の耐久性の低下をもたらすという問題点があった。 ・・・ 【0017】本発明は叙上の問題点を解決するために開発されたもので、粉末合金の表面付近の組織を変化させ且つ各圧粉体間の組織を微細化させて各圧粉体間の密着性を高め、粉末合金の耐摩耗性及び耐久性をより一層向上させることを目的とする。また、粉末合金にCVD又はPVDコーティングを施すものにおいては、粉末合金の表面層での結合剤の析出現象を低下せしめて、CVD又はPVDコーティングによる本来の効果を向上させることを目的とする。 【0018】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の粉末合金の表面層の処理法においては、サンドブラストないしはショットピーニングにおいてショットを高速に噴射させると、被加工物たる製品の噴射面に発熱が生じ、製品の噴射表面温度がショットの噴射速度の増加に伴って上昇することに基づいて為されたもので、複数の各種圧粉体から成る粉末合金の製品の表面に、各種圧粉体のうち最高硬度の圧粉体の硬度と同等以上の硬度を有する40~200μのショットを噴射速度50m/sec以上で噴射し、前記粉末合金の表面付近の温度を、各種圧粉体のうち結合剤となる圧粉体の再結晶温度以上に上昇させ、後続するショットの加圧力で粉末合金の表面付近の前記高硬度の圧粉体の配置状態を変化させることを特徴とする。次いでこの粉末合金の表面にPVDコーティング又はCVDコーティングを施すものである。 ・・・ 【0022】 【実施例】以下、粉末合金の代表的な超硬合金の場合について図面を参照して説明し、サーメットなど他の粉末合金については省略する。 【0023】フライス加工用の超硬合金チップ(以下、「超硬チップ」という)の表面に、図5に示すような重力式ブラスト加工装置30(以下、「重力式装置」という)を用いてブラスト加工処理を行った。なお、ブラスト加工装置としては、直圧式ブラスト加工装置を用いてもよい。 【0024】重力式装置30は、被加工物Wを出し入れする出入口35を備えたキャビネット31内にショット等の研磨材36を噴出するノズル32が設けられ、このノズル32には管44を連結し、この管44は図示せざる圧縮機に連通しており、この圧縮機から圧縮空気が供給される。キャビネット31の下部にはホッパ38が設けられ、ホッパ38の最下端は導管43を介してキャビネット31の上方に設置された回収タンク33の上方側面に連通し、回収タンク33の下端は管41を介して前記ノズル32へ連通される。回収タンク33内の研磨材は重力あるいは所定の圧力を受けて回収タンク33から落下し、前記管44を介してノズル32へ供給された圧縮空気と共にキャビネット31内へ噴射される。 【0025】回収タンク33内には、研磨材36として被加工物Wたる超硬チップの母材の超硬合金のWCの圧粉体の硬度より高い硬度HRC65を有し且つショット粒径が44μの硬質ビーズで成るショットを投入する。なお、本実施例ではショットはガラスとセラミックから成る球状のセラミック入りビーズを使用しているが、超硬合金の高硬度の圧粉体であるWC以上の硬度を有し且つ球状のガラスビーズあるいはステンレスなどの他の材料であっても良い。 【0026】被加工物Wたる超硬チップを出入口35からキャビネット31内へ投入し、前記ショットはノズル32より噴射圧力6kg/cm2、噴射速度80m/sec、噴射距離100mmで超硬チップの表面へ10~20秒間噴射される。特に前記超硬チップの先端のコーナ部には5~6秒間噴射される。 【0027】噴射された研磨材36およびこのとき発生した粉塵37は、キャビネット31の下部のホッパ38に落下し、導管43内に生じている上昇気流によって上昇して回収タンク内に送られ、この回収タンク内研磨材36が回収される。回収タンク33内の粉塵37は回収タンク33内の気流によって回収タンク33の上端から管42を介してダストコレクタ34へ導かれ、ダストコレクタ34の底部に集積され、正常な空気がダストコレクタ34の上部に設けられた排風機39から放出される。 【0028】上記のブラスト加工処理条件をまとめると下表のようになる。 【0029】 【表1】 実施例1 [図:0001435527000001.jpg] 【0030】上記の条件でブラストされた超硬チップの表面付近の温度は上昇し、超硬合金の表面層の組織に変化が生じ、より一層耐久性及び耐摩耗性に富む超硬チップを得る結果に至ったのである。 ・・・ 【0045】上記条件で超硬合金の表面にブラスト加工を行うと、ショットの衝撃力によって超硬合金の表面層の温度が上昇して結合剤のCoが著しく軟化する温度すなわちCoの再結晶温度以上の700℃に達し、このCoが軟化した状態になって始めてショットの衝撃力はさらに表面層のWCとCoのそれぞれの圧粉体の配置状態を変化させることになり、超硬合金の表面層の温度上昇以外の他の効果を発揮する。 【0046】炭化タングステン(WC)の概略寸法は1~2μ以下であり、ショット粒径44μに比して相対的にはるかに小さいので、軟化したCoと共に混在するWCはほとんど平滑な面で加圧される状態と同様になる。すなわち、WCに対して1万倍以上の体積のショットがWCに高速で衝突するので、個々のWCの粒子に対する単位面積当たりの衝撃力は非常に大きくなり、そのために超硬合金の表面層の温度が上昇してCoの再結晶温度に達しCoが軟化した状態では、前記ショットの衝撃力により表面層のWCの個々の粒子の向きが変化して各WCの粒子の平坦面が超硬合金の表面に揃えられる。と同時に、WCの個々の粒子は相対的に大きな体積のショットにより大きな衝撃力(単位面積当たりの)を受け、結合剤が微細化することになるので、各圧粉体間の微小な空間が減少し、WCとCoの個々の粒子間の組織が密着する。 【0047】したがって、本実施例の超硬チップは上述したようにWCの粒子の表面が平滑化され、各圧粉体WCとCoの個々の粒子間の組織が密着して、WCの個々の粒子は超硬合金の表面から剥離しにくくなるので、切削加工中に脱落するWCが減少し、超硬合チップの耐久性が増大することになったものと考えられる。 ・・・ 【0053】なお、サーメットで成る工具類や機械部品などの製品に上記条件でショットピーニングした場合も、前述の超硬合金と同様の理由で同様の効果が認められる。 【0054】 【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。 【0055】(1)粉末合金の表面付近の結合剤を微細化するよう変化させ且つ各圧粉体間の微小な空間を減少させて各圧粉体間の組織の密着性を高めることができ、粉末合金の耐摩耗性及び耐久性をより一層向上させることができた。 【0056】(2)また、粉末合金の表面層の高硬度の圧粉体の表面を精密に平滑化して高硬度の圧粉体の平坦面を粉末合金の表面に揃えることにより、切削加工中における前記高硬度の圧粉体の脱落の可能性を減少せしめ、粉末合金の耐摩耗性及び耐久性をより一層向上させることができた。 【0057】(3)また、粉末合金の表面層の処理法でブラスト加工処理を施した粉末合金の切削工具においては、耐摩耗性、構成刃先の抑制効果、耐チッピング性などの機械的特性が全体的に向上するので、前記切削工具によって切削加工した被切削物の寸法精度や表面アラサなどの品質特性を向上することを可能にした。」 (イ)図面 【図5】 [図:0001435527000002.jpg] ウ 引用文献1の記載事項の整理 (ア)段落0001~0004、0022、0053の記載からみて、引用文献1には、超硬合金又はサーメットを含む粉末合金の切削工具を処理する方法について記載されている。 (イ)段落0001、0018、0030、0045、0053の記載からみて、上記(ア)の切削工具を処理する方法においては、ショットを高速に噴射させることによる衝撃力により、切削工具の表面層を700℃に達する温度に加熱することが含まれると把握される。 (ウ)上記(ア)の切削工具を処理する方法において、段落0018に「本発明の粉末合金の表面層の処理法」として記載された「サンドブラストないしはショットピーニング」(以下「ショットピーニング」という。)は、段落0025、0029の記載からみて、ショットとしてガラス、セラミック、ステンレス等の硬質材料の球状のビーズを使用していることがわかる。 (エ)段落0001、0018、0045、0053の記載からみて、上記(ア)の切削工具を処理する方法は、ショットを高速に噴射させることによる衝撃力により700℃に達する温度に加熱された切削工具に、さらに後続するショットピーニングを行うこと(特に、段落0018、0045参照。)を含むと認められる。そして、段落0046~0047の記載から、超硬合金の表面層の温度が上昇してCoの再結晶温度に達しCoが軟化した状態において、後続するショットピーニングを行うことにより、表面層のWCの個々の粒子の向きが変化して各WCの粒子の平坦面が超硬合金の表面に揃えられると同時に、WCの各圧粉体間の微小な空間が減少し、WCとCoの個々の粒子間の組織が密着する効果を発揮するといえる。 エ 引用文献1記載の発明 上記イ~ウより、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1A」という。)が、記載されている 「超硬合金又はサーメットを含む粉末合金の切削工具を処理する方法であって、 前記切削工具の表面層を、ショットを高速に噴射させることによる衝撃力により700℃に達する温度に加熱することと、 ショットにより加熱された前記切削工具に、さらに後続するショットピーニングを行うことを含む、方法。」 (3)本願補正発明1と引用発明1Aの対比 ア 引用発明1Aの「超硬合金」は、引用文献1の段落0003に、炭化タングステン(WC)の粉末の圧粉体を主成分とし、Ti、Co、C、TiNなどの結合剤で焼結したものである旨が記載されており、本願明細書の段落0063の記載内容に照らせば、本願補正発明1の「焼結炭化物」に相当し、引用発明1Aの「切削工具」は本願補正発明1の「切削ツール」に相当する。そして、引用発明1Aの「超硬合金又はサーメットを含む粉末合金の切削工具」は、「超硬合金又はサーメットを含む粉末合金」が切削工具の基板を構成することが把握されるから、本願補正発明1の「焼結炭化物又はサーメットの基板を含む切削ツール」に相当する。 イ 引用発明1Aの「前記切削工具の表面層を、ショットを高速に噴射させることによる衝撃力により700℃に達する温度に加熱すること」は、本願補正発明1の「前記切削ツールを100℃以上の温度に加熱すること」に相当する。なお、付言すれば、本件補正後の請求項1においては、切削ツールを加熱するための手段については何ら限定されていないが、特許請求の範囲の「切削ツールを加熱する」との記載から、発明の詳細な説明を参酌するまでもなく、すなわち、その加熱手段まで限定解釈しなくとも、その技術的意義を一義的に明確に理解することができるものである(最高裁第二小判決平成3年3月8日、昭和62(行ツ)3「リパーゼ事件」を参照。)。 ウ 引用発明1Aの「ショットにより加熱された前記切削工具に、さらに後続するショットピーニングを行うこと」に関し、 (ア)後続するショットピーニングに用いられるショットには、ガラス、セラミック、ステンレス等の硬質材料の球状のビーズを使用していること(上記(2)ウ(ウ)参照。)、 (イ)当該硬質材料の球状のビーズは、本願明細書の段落0071で定義された「ショットピーニング」に使用される「媒体は、酸化物、スチール、又は焼結炭化物などの硬質材料のビーズとすることができる」点と同様であること、 (ウ)後続するショットピーニングは、引用文献1の段落0045~0046の記載からみて、ショットの衝撃力によって超硬合金の表面層の温度が上昇して700℃に達した(加熱された)状態でのショットの衝撃力により、さらに表面層のWCとCoのそれぞれの圧粉体の配置状態を変化させて各WCの粒子の平坦面が超硬合金の表面に揃えられると同時に、WCの各圧粉体間の微小な空間が減少し、WCとCoの個々の粒子間の組織が密着する効果を発揮するもの(上記(2)ウ(エ)参照。)、すなわち、ショットによって超合金の表面層の温度が700℃に達した(加熱された)状態で、さらにショットの衝撃力が作用すること、及び、 (エ)当該作用・効果は、本願明細書の段落0071で定義された「ショットピーニング」に係る「典型的には円形状を有するビーズと呼ばれる粒子を含む媒体を用いての衝撃加工が行われること」と同様であること、 を踏まえると、引用発明1Aにおける「ショットピーニングにより加熱された前記切削工具に、さらに後続するショットピーニングを行うこと」は、本願補正発明1の「加熱された前記切削ツールにショットピーニングを行うこと」に相当する。 エ 上記ア~ウより、本願補正発明1と引用発明1Aとの間には、相違点がないといえる。 (4)本願補正発明1の新規性について 上記(3)のとおり、本願補正発明1と引用発明1Aとの間には相違点がなく、本願補正発明1は、引用発明1Aと同一であるから、本願補正発明1は引用文献1に記載された発明であって特許法第29条第1項第3号に該当し、同項の規定により特許を受けることができない。 (5)本件補正の独立特許要件についてのまとめ したがって、本願補正発明1は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するものである。 4 本件補正についてのむすび 以上、上記2及び3のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定、あるいは特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~30に係る発明は、令和5年5月15日提出の手続補正書により補正をした特許請求の範囲の請求項1~30に記載した事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、前記第2[理由]1(2)に記載した事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定の拒絶理由 原査定の理由となった拒絶理由は、本願の請求項1~30に係る発明を対象とするものであるところ、そのうち請求項1に係る発明に対する拒絶理由は以下のとおりである。なお、理由A(新規性)は原査定における理由2、理由B(進歩性)は原査定における理由3である。(令和5年2月3日付け拒絶理由通知書で通知された理由1(明確性)は、原査定の理由とはなっていない。) A.(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 B.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3 引用文献1の記載内容について (1)引用文献1の書誌事項 引用文献1は、上記第2の3(2)アにおける引用文献1と同じである。 特開平6-240303号公報 (2)引用文献1の記載事項 上記第2の3(2)イと同じである。 (3)引用文献1の記載事項の整理 ア 段落0001~0004、0022、0053の記載からみて、引用文献1には、超硬合金又はサーメットを含む粉末合金の切削工具を処理する方法について記載されている。 イ 上記アの切削工具を処理する方法において、段落0018に「本発明の粉末合金の表面層の処理法」として記載された「サンドブラストないしはショットピーニング」は、段落0025、0029に記載されたショットとしてガラス、セラミック、ステンレス等の硬質材料の球状のビーズを使用しているから、本願明細書の段落0071で定義された「ショットピーニング」に該当する。 そして、段落0001、0018、0045、0053の記載からみて、上記アの切削工具を処理する方法は、ショットピーニングにより700℃に加熱された切削工具にさらにショットピーニングを行っていること(特に、段落0045参照。)が認められる。 (4)上記(2)~(3)より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1B」という。)が記載されている。 「超硬合金又はサーメットを含む粉末合金の切削工具を処理する方法であって、前記切削工具に、表面層が700℃に達する温度にてさらに後続するショットピーニングが行われ、前記さらに後続するショットピーニングは、ショットにより加熱された切削工具に行われる、方法。」 4 本願発明1と引用発明1Bの対比 (1)引用発明1Bの「超硬合金」は、上記第2の3(3)アと同様の理由により、本願発明1の「焼結炭化物」に相当し、以下同様に、引用発明1Bの「切削工具」は、本願発明1の「切削ツール」に、引用発明1Bの「超硬合金又はサーメットを含む粉末合金の切削工具」は、本願発明1の「焼結炭化物又はサーメットの基板を含む切削ツール」に、それぞれ相当する。 (2)引用発明1Bの「前記切削工具に、表面層が700℃に達する温度にてさらに後続するショットピーニングが行われ」る点は、上記第2の3(3)ウと同様の理由により、本願発明1の「前記切削ツール(1)に、100℃以上の温度にてショットピーニングが行われ」る点に相当する。 (3)引用発明1Bの「前記さらに後続するショットピーニングは、ショットにより加熱された切削工具に行われる」点は、上記第2の3(3)イと同様の理由により、本願発明1の「前記ショットピーニングは、加熱された切削ツールに行われる」点に相当する。 (4)上記(1)~(3)より、本願発明1と引用発明1Bとの間には、相違点がないといえる。 5 本願発明1の新規性について 上記4のとおり、本願発明1は、引用発明1Bと同一であるから、本願発明1は引用文献1に記載された発明であって特許法第29条第1項第3号に該当し、同項の規定により特許を受けることができない。 第4 令和6年7月17日提出の上申書の主張について 1 本願補正発明1の新規性・進歩性について 請求人は、令和6年7月17日提出の上申書(以下、単に「上申書」という。)において、本件補正により補正をした請求項1~30に係る発明について、新規性及び進歩性を有する旨の主張をする。 しかしながら、上記第2の3(4)のとおり、本件補正により補正をした請求項1~30に係る発明のうち、本願補正発明1(請求項1)は、新規性を有していないから、請求項2~30に係る発明について検討するまでもなく、請求人の主張を採用することはできない。 2 請求人が上申書で用意した補正案について (1)補正案の内容 請求人は、上申書において、請求時に補正された本願補正発明1をさらに補正する用意がある旨を述べ、次の補正案(以下、この補正案による発明を「上申書補正案発明」という。下線は本願補正発明1からの補正箇所。)を提示した。 「焼結炭化物又はサーメットの基板を含む切削ツールを処理する方法であって、 ショットピーニングの前に前記切削ツールを100℃以上の温度に加熱することと、 加熱された前記切削ツールにショットピーニングを行うことを含む、方法。」 この上申書補正案発明は、本件審判の審理の対象ではないが、当該発明が進歩性を具備する旨の請求人の主張に鑑み、以下検討する。 (2)上申書補正案発明と引用発明1Aの対比 上記補正案は本願補正発明1の「前記切削ツールを100℃以上の温度に加熱すること」について「ショットピーニングの前」であることを限定するものである。 したがって、上記第2の3(4)のとおり、本願補正発明1と引用発明1Aが同一であることを勘案して、上申書補正案発明を引用発明1Aと対比すると、以下の(3)の点で相違し、その余の点で一致する。 (3)相違点 切削ツールを100℃以上の温度に加熱することについて、上申書補正案発明が「ショットピーニングの前に」加熱するのに対して、引用発明1Aは「ショットによって」加熱する点。 (4)引用文献2 ア 引用文献2の書誌事項 次の文献は、本願の優先日前に頒布され、この上申書の主張に対して、新たに引用する文献である。 特開昭61-264105号公報(昭和61年11月22日出願公開。以下「引用文献2」という。) イ 引用文献2の記載事項 (ア)「〔産業上の利用分野〕 本発明は、高強度焼結部材の製造方法に関し、詳しくは、焼結された焼結部材に対して高周波加熱等の加熱手段により加熱軟化させた後、その表面部に対してショットピーニング処理を施こすことによって、加熱軟化された表面部のみを圧密化させるとともに加熱軟化されていない内部に対しては空孔の多い状態として、焼結部材の有する低価格性、軽量特性、低騒音特性を損なうことなく、焼結部材の強度特性を著しく改善することのできる高強度焼結部材の製造方法にかかる。」(第1ページ右下欄第6~16行) (イ)「従って、本発明の技術的課題とするところは、焼結部材の製造工程において、焼結された焼結部材の表面部に対して、高周波加熱等の表面加熱手段により焼結部材の表面部を加熱軟化させた状態でショットピーニング処理を施こすことにより、焼結された焼結部材の表面部のみに対する圧密化を図るとともに加熱軟化されていない内部に対しては空孔の多い状態とすることによって、焼結部材の有する低価格性、軽量特性、低騒音特性を損なうことなく、焼結部材の引張強度、疲労強度等の強度特性を優れたものとすることにある。」(第2ページ左下欄第8~18行) (ウ)「〔問題点を解決するための手段〕 このような従来の技術における問題点に鑑み、本発明における従来の技術の問題点を解決するための手段は、粉末冶金用金属粉末原料を圧粉成形して圧粉成形体を形成する工程と、 前記圧粉成形体を焼結反応が充分に進行する温度範囲にて加熱焼結させる工程と、 上述により焼結された焼結部材の表面部に対して、高周波加熱等の表面加熱手段により加熱軟化させる工程と、 加熱軟化された焼結部材の表面部に対してショットピーニング処理を施こす工程とからなる高強度焼結部材の製造方法であって、 上述の加熱軟化された前記焼結部材の表面部に対してショットピーニング処理を施こす工程において、表面部に対する高周波加熱等の表面加熱手段により表面部と内部とにおいて変形抵抗の異なる状態に加熱された前記焼結部材に対してショットピーニング処理を施こすことによって、加熱軟化された表面部のみを圧密化させるとともに、加熱軟化されていない内部に対しては空孔の多い状態とすることを特徴とする高強度焼結部材の製造方法からなっている。」(第2ページ左下欄第19行~第3ページ左上欄第1行) (エ)「本発明法において粉末冶金用金属粉末原料としては特に限定されるものでなく、通常の焼結部材を製造するために使用される従来の粉末冶金用金属粉末原料を好適に適用することができる。」(第3ページ左上欄第4~7行) (オ)「次に、焼結された焼結部材の表面部を高周波加熱等の表面加熱手段により加熱軟化させた後、焼結部材の加熱軟化された表面部に対してショットピーニング処理する工程は、第1図に示すように焼結部材の表面部は、表面部温度aが高周波加熱等の表面加熱手段により所定の表面部加熱時間cだけ加熱されて変形抵抗の小さい高温の状態にあり、焼結部材の内部は内部温度bが変形抵抗の大きい低温の状態で所定のショットピーニング処理時間dだけショットピーニング処理を施こすことによって、焼結部材の加熱軟化された表面部のみを圧密化させるとともに、加熱軟化されていない内部に対しては空孔の多い状態とすることができるのである。」(第3ページ右上欄第19行~左下欄第12行) (カ)「このように本発明法による高強度焼結部材の製造方法によれば、加熱軟化された焼結部材の表面部における空孔を確実に圧潰することができることから、焼結部材の引張強度、疲労強度等の強度特性を著しく向上させることができるばかりでなく、焼結部材の内部に対しては変形抵抗の大きい低温の状態でショットピーニング処理を施こすこととなることから、焼結部材の低価格性、軽量特性、低騒音特性を損なうことがないのである。」(第3ページ左下欄第13行~右下欄第1行) (キ)「ついで、第3図に示すように焼結された焼結歯車1を高周波加熱コイル2により包囲させた状態で通電し、焼結された焼結歯車1の表面部のみを加熱軟化させた。 次に、第4図に示すように表面部のみが加熱軟化された焼結歯車1に対してアークバイト0.4mmの強さのショットピーニング処理を実施して、焼結歯車1の表面部のみを圧密化させた。 なお、この時焼結歯車1の内部の温度は表面部に比較して低いことから変形抵抗が大きく、ショットピーニング処理による空孔の圧密化は殆ど進行しない。」(第4ページ左上欄第15行~右上欄第6行) (ク)「〔発明の効果〕 以上により明らかなように、本発明にかかる高強度焼結部材の製造方法によれば、焼結部材の製造工程において、焼結された焼結部材の表面部に対して、高周波加熱等の表面加熱手段により焼結部材の表面部を加熱軟化させた状態でショットピーニング処理を施こすことにより、焼結された焼結部材の表面部のみに対する圧密化を図るとともに加熱軟化されていない内部に対しては空孔の多い状態とすることによって、焼結部材の有する低価格性、軽量特性、低騒音特性を損なうことなく、焼結部材の引張強度、疲労強度等の強度特性を優れたものとすることができる利点がある。」(第4ページ左下欄第8~20行) (ケ)第1図(第5ページ) [図:0001435527000003.jpg] (コ)第2図(第5ページ) [図:0001435527000004.jpg] (サ)第3図(第5ページ) [図:0001435527000005.jpg] (シ)第4図(第5ページ) [図:0001435527000006.jpg] ウ 引用文献2の記載事項の整理 (ア)引用文献2には、上記イ(ア)の記載からみて、焼結部材を処理する方法について、記載されている。 (イ)上記イ(オ)、(キ)、(ケ)の記載からみて、上記(ア)の焼結部材を処理する方法においては、ショットピーニングの前に焼結部材を高周波加熱により1200℃の温度に加熱する。 (ウ)上記イ(ア)~(ウ)、(オ)、(キ)~(ク)の記載からみて、上記(ア)の焼結部材を処理する方法においては、加熱された焼結部材にショットピーニングを行う。 エ 引用文献2に記載された技術的事項 上記イ~ウより、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2記載の技術的事項」という。)が記載されている。 加熱された焼結部材にショットピーニングを行うことで焼結部材を処理する方法において、「ショットピーニングの前に前記焼結部材を高周波加熱により1200℃の温度に加熱すること。」 オ 相違点の検討 引用発明1Aは、ショットにより加熱された粉末合金の表面部に対してさらに後続するショットピーニングを施すことで、加熱により軟化された切削工具の表面層の圧粉体の粒子間の組織が密着して、粉末合金の耐摩耗性及び耐久性を向上させるもの(上記第2の3(2)イ(ア)の段落0001、0017~0018、0045、0055)である。 そして、上記引用文献2記載の技術的事項は、加熱された粉末合金(焼結部材)の表面部に対してショットピーニング処理を施すことによって、加熱軟化された表面部のみを圧密化させて、粉末合金の強度特性を改善するもの(上記イ(ア)~(オ)、(カ)、(ク))であるから、引用発明1Aと課題、作用、機能が共通する。なお、引用文献2の実施例として示されている粉末合金は、切削工具ではなく歯車であるものの、引用文献2は、引用発明1Aと共通する粉末合金の処理について、さらに「ショットピーニングの前」に粉末合金を高周波加熱により1200℃、すなわち100℃以上の温度に加熱することを開示しているといえる。 そうすると、「ショットによって」加熱する引用発明1Aに関し、少なくとも切削工具の温度が100℃に達するまでの加熱手段として引用文献2記載の技術的事項を適用し、高周波加熱により100℃以上の温度に加熱した後に「ショットピーニングを行う」ことで上申書補正案発明に想到することは、当業者が容易になし得たことである。そして、切削工具表面層に、ショットにより加熱するだけでなく、それに先んじて異なる加熱手段で加熱すれば、切削工具表面層の加熱軟化の度合い・速度を高め、粉末合金の圧粉体の粒子間の組織の密着をより効率よく促進させることができることは明らかであるから、このような適用を妨げる事情も認められない。 したがって、上申書補正案発明は、引用発明1A及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、仮に、当審より拒絶の理由を通知し、本願補正発明1をこの上申書補正案発明へと補正をする機会を与えたとしても、特許法第29条第2項の規定により依然として特許を受けることができない。そのため、上申書補正案発明の内容で本願の拒絶理由が解消するという請求人の主張を採用することができない。 3 小括 よって、請求人の上申書の主張はいずれも採用することができない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当し、同項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-000547

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