特許拒絶査定不服審判
2024-000370
培養微細藻類を含む繊維及びその製造方法、並びにその繊維を含む糸、織物及び衣服
- 審判番号
- 2024-000370
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-527110外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年01月11日
- 審決日
- 2025年08月21日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アルガライフ リミテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人大島特許事務所
- 分類
- P18 .113-WZ (D01F) / P18 .121-WZ (D01F) / P18 .57 -WZ (D01F) / P18 .575-WZ (D01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条、特許法第164条、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-527110「培養微細藻類を含む繊維及びその製造方法、並びにその繊維を含む糸、織物及び衣服」拒絶査定不服審判事件〔2019年(令和1年)5月23日国際公開、WO2019/097518、令和 3年 2月 4日国内公表、特表2021-503049〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)11月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年(平成29年)11月15日(以下、「優先日」という。)、米国)を国際出願日とする出願であって、令和3年11月10日に審査請求されると同時に手続補正がなされ、令和4年10月13日付けで拒絶の理由が通知され、令和5年1月18日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年3月31日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月4日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年9月5日付けで拒絶査定(謄本送達日同年9月12日。以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して令和6年1月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、同年3月6日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされたものである。
第2 令和6年1月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年1月11日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所を示すものとして請求人が付与したものである。)
「 【請求項1】
少なくとも1つの培養微細藻類を含む繊維であって、
前記少なくとも1つの培養微細藻類は、統制及び管理された人工の環境で培養された、皮膚の状態に対して有益な成分を含む微細藻類であり、
前記繊維は、衣服に使用される織物の繊維であり、
前記繊維が、セルロースベースの繊維、タンパク質ベースの繊維、石油ベースの繊維、及びそれらの任意の組み合わせのうちから選択される、繊維。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維であって、
前記少なくとも1つの培養微細藻類が、紅藻類、褐藻類、緑藻類、藍藻類、及びそれらの混合物から選択される、繊維。
【請求項3】
請求項1~2のいずれかに記載の繊維であって、
前記少なくとも1つの培養微細藻類が、繊維の少なくとも5%を構成する繊維。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の繊維であって、
セルロースベースの繊維である繊維。
【請求項5】
請求項4に記載の繊維であって、
前記繊維が、ビスコース、リヨセル、キュプロ、アセテート、モダール、ニトロセルロース、及びそれらの組み合わせから選択される繊維。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかに記載の繊維であって、
タンパク質ベースの繊維、石油ベースの繊維、及びそれらの任意の組み合わせのうちから選択される繊維。
【請求項7】
請求項1~3のいずれかに記載の繊維であって、
溶融紡糸、乾式紡糸、湿式紡糸、及びそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つによって形成される繊維。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の繊維であって、
セルロース、糖類、タンパク質、アミノ酸、ビタミン、金属イオン、繊維、不飽和脂肪酸、抗刺激剤、抗炎症剤、抗酸化剤、抗ウイルス剤、またはゼアキサンチン、フロリドシドのうちの少なくとも1つをさらに含む繊維。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の繊維を含む糸。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載の繊維を含む織物。
【請求項11】
請求項10に記載の織物であって、
織物、不織布、編物及びそれらの組み合わせから選択される織物。
【請求項12】
請求項1~8のいずれかに記載の繊維を含む衣服。
【請求項13】
繊維を製造する方法であって、
前記繊維は、衣服に使用される織物の繊維であり、
前記方法は、
(a)少なくとも1つの培養微細藻類を少なくとも5%含む基材を準備するステップであって、前記少なくとも1つの培養微細藻類は、統制及び管理された人工の環境で培養された、皮膚の状態に対して有益な成分を含む微細藻類である、該準備するステップと、
(b)前記基材からスピナレットによって繊維を形成するステップと、
(c)形成された繊維を固定するステップと、
(d)固定された繊維に後処理を施すステップと、を含む繊維の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
前記基材が、少なくとも1つのタンパク質ベースポリマー及び/または石油ベースポリマーを含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
前記基材が、前記ステップ(a)で溶融される方法。
【請求項16】
請求項13~15のいずれかに記載の方法であって、
前記ステップ(c)の繊維固定が気流冷却によって行われる方法。
【請求項17】
請求項13~15のいずれかに記載の方法であって、
前記ステップ(d)の繊維後処理が延伸によって行われる方法。
【請求項18】
請求項13に記載の方法であって、
前記基材が、少なくとも1つのセルロースベースの材料を含む方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、
前記基材が、少なくとも1つの溶媒に溶解されている方法。
【請求項20】
請求項13または19に記載の方法であって、
前記ステップ(c)の繊維固定が、
前記基材が溶解された少なくとも1つの溶媒の蒸発または前記少なくとも1つの溶媒の沈殿によって行われる方法。
【請求項21】
請求項13、18、19、及び20のいずれかに記載の方法であって、
前記ステップ(d)の繊維の後処理が、延伸、洗浄、乾燥、及びそれらの任意の組み合わせによって行われる方法。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和5年7月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
少なくとも1つの培養微細藻類を含む繊維であって、
前記少なくとも1つの培養微細藻類は、海洋外で採取されたものであり、
前記繊維は、織物の繊維であり、
前記繊維が、セルロースベースの繊維、タンパク質ベースの繊維、石油ベースの繊維、及びそれらの任意の組み合わせのうちから選択される、繊維。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維であって、
前記少なくとも1つの培養微細藻類が、紅藻類、褐藻類、緑藻類、藍藻類、及びそれらの混合物から選択される、繊維。
【請求項3】
請求項1~2のいずれかに記載の繊維であって、
前記少なくとも1つの培養微細藻類が、繊維の少なくとも5%を構成する繊維。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の繊維であって、
セルロースベースの繊維である繊維。
【請求項5】
請求項4に記載の繊維であって、
前記繊維が、ビスコース、リヨセル、キュプロ、アセテート、モダール、ニトロセルロース、及びそれらの組み合わせから選択される繊維。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかに記載の繊維であって、
タンパク質ベースの繊維、石油ベースの繊維、及びそれらの任意の組み合わせのうちから選択される繊維。
【請求項7】
請求項1~3のいずれかに記載の繊維であって、
溶融紡糸、乾式紡糸、湿式紡糸、及びそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つによって形成される繊維。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の繊維であって、
セルロース、糖類、タンパク質、アミノ酸、ビタミン、金属イオン、繊維、不飽和脂肪酸、抗刺激剤、抗炎症剤、抗酸化剤、抗ウイルス剤、またはゼアキサンチン、フロリドシドのうちの少なくとも1つをさらに含む繊維。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の繊維を含む糸。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載の繊維を含む織物。
【請求項11】
請求項10に記載の織物であって、
織物、不織布、編物及びそれらの組み合わせから選択される織物。
【請求項12】
請求項1~8のいずれかに記載の繊維を含む衣服。
【請求項13】
繊維を製造する方法であって、
前記繊維は、織物の繊維であり、
前記方法は、
(a)海洋外で採取された、少なくとも1つの培養微細藻類を少なくとも5%含む基材を準備するステップと、
(b)前記基材からスピナレットによって繊維を形成するステップと、
(c)形成された繊維を固定するステップと、
(d)固定された繊維に後処理を施すステップと、を含む繊維の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
前記基材が、少なくとも1つのタンパク質ベースポリマー及び/または石油ベースポリマーを含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
前記基材が、前記ステップ(a)で溶融される方法。
【請求項16】
請求項13~15のいずれかに記載の方法であって、
前記ステップ(c)の繊維固定が気流冷却によって行われる方法。
【請求項17】
請求項13~15のいずれかに記載の方法であって、
前記ステップ(d)の繊維後処理が延伸によって行われる方法。
【請求項18】
請求項13に記載の方法であって、
前記基材が、少なくとも1つのセルロースベースの材料を含む方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、
前記基材が、少なくとも1つの溶媒に溶解されている方法。
【請求項20】
請求項13または19に記載の方法であって、
前記ステップ(c)の繊維固定が、
前記少なくとも1つの溶媒の蒸発または前記少なくとも1つの溶媒の沈殿によって行われる方法。
【請求項21】
請求項13、18、19、及び20のいずれかに記載の方法であって、
前記ステップ(d)の繊維の後処理が、延伸、洗浄、乾燥、及びそれらの任意の組み合わせによって行われる方法。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)
2 補正の適否
(1)補正事項
本件補正は、次の補正事項1~4を含む。
ア 補正事項1
本件補正前の請求項1に記載された、「前記少なくとも1つの培養微細藻類は、海洋外で採取されたものであり、」との記載を、本件補正後に、「前記少なくとも1つの培養微細藻類は、統制及び管理された人工の環境で培養された、皮膚の状態に対して有益な成分を含む微細藻類であり、」とする補正。
イ 補正事項2
本件補正前の請求項1及び13に記載された、「前記繊維は、織物の繊維であり、」との記載を、本件補正後に、「前記繊維は、衣服に使用される織物の繊維であり、」とする補正。
ウ 補正事項3
本件補正前の請求項13に記載された、「(a)海洋外で採取された、少なくとも1つの培養微細藻類を少なくとも5%含む基材を準備するステップ」との記載を、本件補正後に、「(a)少なくとも1つの培養微細藻類を少なくとも5%含む基材を準備するステップであって、前記少なくとも1つの培養微細藻類は、統制及び管理された人工の環境で培養された、皮膚の状態に対して有益な成分を含む微細藻類である、該準備するステップ」とする補正。
エ 補正事項4
本件補正前の請求項20に記載された、「前記少なくとも1つの溶媒の蒸発または前記少なくとも1つの溶媒の沈殿によって行われる方法」との記載を、本件補正後に、「前記基材が溶解された少なくとも1つの溶媒の蒸発または前記少なくとも1つの溶媒の沈殿によって行われる方法」とする補正。
(2)本件補正の目的について
本件補正の目的を、補正事項毎に検討する。
ア 補正事項1及び3について
補正事項1及び3は、本件補正前の請求項1及び13の記載において、「培養微細藻類」が、「海洋外で採取された」ものから、本件補正後の請求項1及び13において、「統制及び管理された人工の環境で培養された、皮膚の状態に対して有益な成分を含む微細藻類であ」ることに変更するものである。
すなわち、「培養微細藻類」が、本件補正前においては「海洋外で採取された」ものであることが限定されていたのに対し、本件補正後においては、「培養微細藻類」が「海洋外で採取された」ものであることは具体的に特定されておらず、また、「統制及び管理された人工の環境で培養された、皮膚の状態に対して有益な成分を含む微細藻類であ」る「培養微細藻類」が、「海洋外で採取された」ものであることは、本願明細書の記載から自明とも、本願優先日前における技術常識であったとも認められない。
よって、本件補正1及び3は、本件補正前の請求項1及び13に記載された発明を特定するために必要な事項である、「培養微細藻類」を含むいずれかの事項を限定することにより特許請求の範囲を減縮するものとはいえない。
したがって、補正事項1及び3は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。
また、補正事項1及び3は、同1号に規定する特許請求の範囲の削除、同3号に規定する誤記の訂正、同4号に規定する明瞭でない記載の釈明のいずれを目的とするものともいえない。
イ 補正事項2について
補正事項2は、本件補正前の請求項1に記載された、「織物」について、「衣服に使用される」ものであることを限定的に減縮するものであるから、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
ウ 補正事項4について
補正事項4は、本件補正前の請求項20に記載された、「溶媒」について、「基材が溶解された」ものであることを限定的に減縮するものであるから、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
エ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、請求項1及び13についての補正(補正事項1及び3)について、次のように主張している。
「(A)本請求人は、本審判請求書と同日提出の手続補正書により以下のような補正を行った。
(a)請求項1の「前記少なくとも1つの培養微細藻類は、海洋外で採取されたものであり、」という記載を、海洋外で採取されたが人工の環境である点を明確化するため、
「前記少なくとも1つの培養微細藻類は、統制及び管理された人工の環境で培養された、」
に変更した。
この補正のサポートは、例えば段落0010である。
…(中略)…
(c)請求項13において、
-「前記繊維は、織物の繊維であり、」を、「前記繊維は、衣服に使用される織物の繊維であり、」に変更し、
-「海洋外で採取された、少なくとも1つの培養微細藻類を少なくとも5%含む基材を準備するステップ」という記載を、「少なくとも1つの培養微細藻類を少なくとも5%含む基材を準備するステップであって、前記少なくとも1つの培養微細藻類は、統制及び管理された人工の環境で培養された、皮膚の状態に対して有益な成分を含む微細藻類である、該準備するステップ」に変更した。
この補正の趣旨及びサポートは、請求項1に対する上記補正(a)及び(b)と同じである。」
しかしながら、請求人は、「人工の環境である点を明確化するため」と述べるにとどまり、補正事項1及び3に係る補正の目的について何ら主張していない。
オ 補正の目的についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項各号に掲げるいずれの目的にも合致しない補正事項1を含むものであるので適法なものではない。
(3)独立特許要件について
本件補正は、上記(2)で検討したとおり、特許法17条の2第5項各号に掲げるいずれの目的にも合致しない補正事項(補正事項1、3)を含むものの、補正事項2及び4は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、補正事項1及び3も、「海洋外で採取されたもの」であることを削除したことを除くと特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえるところ、本件補正は、全体としてみれば特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえなくもないので、念のため、本件補正が、同法17条の2第5項2項の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると仮定して、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、独立特許要件を満たすものであるか否かを、以下、判断する。
ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)の「請求項1」に記載された事項により特定されるものであって、再掲すれば次のとおりのものである。(下線は補正箇所を示すものである。なお、記号A~Dは、分説にあわせて当審が付与したものであり、各分説に対応して、以下、「構成要件A」~「構成要件D」などという。)
A 少なくとも1つの培養微細藻類を含む繊維であって、
B 前記少なくとも1つの培養微細藻類は、統制及び管理された人工の環境で培養された、皮膚の状態に対して有益な成分を含む微細藻類であり、
C 前記繊維は、衣服に使用される織物の繊維であり、
D 前記繊維が、セルロースベースの繊維、タンパク質ベースの繊維、石油ベースの繊維、及びそれらの任意の組み合わせのうちから選択される、
A 繊維。
イ 引用例及び周知技術
(ア)引用例
a 引用例1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において、引用文献4として引用した、本願の優先日前に既に公知である、国際公開第2017/186725号(2017年11月2日国際公開。以下、これを「引用例1」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。なお、当審訳は、引用例1に対応する日本語の文献である、特表2019-515151号公報の記載に基づくものである。)
(a)「
[図:0001431570000001.jpg]
」(1欄2~9行)
(当審訳:
【0001】
本発明は、改変されたビスコース繊維、本発明に基づくビスコース繊維を製造するためのプロセス、およびその使用に関する。
【0002】
特に、本発明は、制限のない洗浄性に対する消費者の期待、およびそれぞれ、工業用洗浄の要件も満たす、織物用途、特にニットウェア分野における改良された使用特性を有する、藻類から取り込んだ材料を含む改変されたビスコース繊維、ヤーンおよび平面アセンブリの製造におけるその使用、ならびにそれらの繊維を製造するためのプロセスに関する。)
(b)「
[図:0001431570000002.jpg]
[図:0001431570000003.jpg]
」(1欄下から3行~2欄上から6行)
(当審訳:
【0006】
海草、特に海藻由来の材料の添加は、繊維およびセルロース成形体ならびにそれから製造した織物に特にやわらかい感触を付与し、ビタミン、微量栄養素および微量元素を濃縮させ、また藻類に含有されるアルギン酸塩は、保湿特性を有することが知られている。藻類およびそれから製造した繊維は、酸化防止特性を有することも実証されている[http://www.smartfiber.de/index.php/seacell-de/zertifizierungen、2016年4月17日に検索]。これらの理由から、海草、特に海藻由来の材料を含有する製品は、特に皮膚に優しいと考えられている。)
(c)「
[図:0001431570000004.jpg]
」(3欄8~14行)
(当審訳:
【0012】
本発明は、藻類材料を取り込んだ非フィブリル化再生セルロース系繊維を提供することによって上記の問題を解決し、これは、EP1259564と比較して改変されたビスコース法に従って製造される。本発明に基づく繊維は、それ自体が既知の藻類由来の材料が取り込まれたセルロース繊維の特定のやわらかさを特徴とするが、NMMO法に基づく溶媒紡糸繊維と比較して著しく低下した湿潤フィブリル化への傾向を呈する。)
(d)「
[図:0001431570000005.jpg]
」(4欄8~12行)
(当審訳:
【0018】
本発明に基づく繊維は、セルロースに基づいて、藻類材料の0.5重量%~6重量%、好ましくは2重量%~6重量%、特に好ましくは3重量%~4重量%を含有していてよい。
【0019】
藻類は、海水と淡水の両方から採ることができる。微細藻類ならびに大型藻類、特にさらにケルプの使用が可能である。)
(e)「
[図:0001431570000006.jpg]
」(6欄7~8行)
(当審訳:
【0030】
本発明はまた、ヤーンおよび平面織物アセンブリの製造のための本発明に基づくビスコース繊維の使用に関する。)
b 引用発明
上記aの記載事項から、引用例1には次の事項が記載されているといえる。
(a)上記a(a)の、「本発明は、…(中略)…織物用途、特にニットウェア分野における改良された使用特性を有する、藻類から取り込んだ材料を含む改変されたビスコース繊維…(中略)…に関する」(【0002】)との記載から、引用例1には、“織物用途、特にニットウェア分野における改良された使用特性を有する、藻類から取り込んだ材料を含む改変されたビスコース繊維”の発明が記載されているといえる。
(b)上記a(b)の、「海藻由来の材料の添加は、繊維およびセルロース成形体ならびにそれから製造した織物に特にやわらかい感触を付与し、…(中略)…藻類に含有されるアルギン酸塩は、保湿特性を有することが知られている…(中略)…海藻由来の材料を含有する製品は、特に皮膚に優しいと考えられている」(【0006】)との記載から、引用例1には、“海藻由来の材料の添加は、繊維およびセルロース成形体ならびにそれから製造した織物に特にやわらかい感触を付与し、藻類に含有されるアルギン酸塩は、保湿特性を有することが知られており、海藻由来の材料を含有する製品は、特に皮膚に優しいと考えられ”ていることが記載されているといえる。
(c)上記a(c)の、「藻類材料を取り込んだ非フィブリル化再生セルロース系繊維を提供することによって上記の問題を解決し…(中略)…本発明に基づく繊維は、それ自体が既知の藻類由来の材料が取り込まれたセルロース繊維の特定のやわらかさを特徴とする」(【0012】)との記載から、引用例1には、“繊維は、それ自体が既知の藻類由来の材料が取り込まれたセルロース繊維の特定のやわらかさを特徴とする藻類材料を取り込んだ非フィブリル化再生セルロース系繊維”であることが記載されているといえる。
(d)上記a(d)の、「藻類は、海水と淡水の両方から採ることができる。微細藻類ならびに大型藻類、特にさらにケルプの使用が可能である」(【0019】)との記載から、引用例1には、“藻類は、海水と淡水から採ることができ、微細藻類の使用が可能であ”ることが記載されているといえる。
(e)上記a(e)の、「本発明はまた、ヤーンおよび平面織物アセンブリの製造のための本発明に基づくビスコース繊維の使用に関する」(【0030】)との記載から、引用例1には、“ビスコース繊維は、ヤーンおよび平面織物アセンブリの製造に用いられ”ることが記載されているといえる。
(f)以上、(a)~(e)より、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「織物用途、特にニットウェア分野における改良された使用特性を有する、藻類から取り込んだ材料を含む改変されたビスコース繊維であって、
海藻由来の材料の添加は、繊維およびセルロース成形体ならびにそれから製造した織物に特にやわらかい感触を付与し、藻類に含有されるアルギン酸塩は、保湿特性を有することが知られており、海藻由来の材料を含有する製品は、特に皮膚に優しいと考えられ、
前記繊維は、それ自体が既知の藻類由来の材料が取り込まれたセルロース繊維の特定のやわらかさを特徴とする藻類材料を取り込んだ非フィブリル化再生セルロース系繊維であり、
前記藻類は、海水と淡水から採ることができ、微細藻類の使用が可能であり、
ヤーンおよび平面織物アセンブリの製造に用いられるビスコース繊維。」
(イ)周知技術
a 周知例1
本願の優先日前に既に公知である、周知技術を示すために、原査定の拒絶の理由において引用文献7として引用した、特開平6-209757号公報(平成6年8月2日公開。以下、これを「周知例1」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、微生物、特に藻類の成長装置に関する。さらに詳細には、工業的規模での微生物の屋外生産装置に関する発明である。
【0002】
【発明の背景】屋外での微生物の成長は、光がそのような微生物に有益な効果を及ぼすような多くの場合に実施される。屋外で育成される微生物は、通常、微小藻類であり、説明の便宜上、明細書を通しては微小藻類について言及するが、このことは、成長に光の条件を必要としない種を含めて他の種を成長させるための装置の発明に限定するものではないことは理解できるであろう。本発明によって成長させることができる微生物の例としては、真菌類、酵母、バクテリア、大型藻類(macroalgae)、植物細胞、線虫類などである。
【0003】
【従来の技術】微小藻類は、工業的量のバイオマス生産が望ましい場合には、成長のために日光を活用しながら屋外の池で成長せしめられるのが通常である。また、米国特許第2,732,663号、第3,955,317号、及び第4,868,123号などに開示された、種々の装置は、一般的に、工業的規模における技術的及び商業的成功に至っていないにもかかわらず、屋外での透明チューブを含む装置で微小藻類を成長させる試みがなされている。
【0004】
しかしながら、上記方法は重大な欠点をもっている。池での生産は非効率的であり、光を通しにくいこと、一日のうちでの激しい温度変化、敵対微生物による汚染、酸素の蓄積、塩水化をもたらす蒸発、などに起因する問題に直面している。透明なチューブやパイプ内での生育が提案されているが、公知の成長方法は全て、非効率的であるという重大な欠点を有するのみならず、特に、低生産性及び装置の高コスト化のために工業的規模には適用できない。」
上記記載から、周知例1には次の周知技術が記載されているといえる。
「藻類の成長装置において、微小藻類を、工業的量のバイオマス生産する場合、成長のために日光を活用しながら屋外の池で成長せしめられるのが通常であるところ、池での生産は非効率的であり、敵対微生物による汚染などの重大な欠点があること。」
b 周知例2
本願優先日前に既に公知である、Patrick Stolz and Barbara Obermayer、“Manufacturing Microalgae for Skin Care”、2013年3月15日、Cosmetics & Toiletries Magazine、Vol.120、No.3、pp.99-104(参考URL:https://www.cosmeticsandtoiletries.com/cosmetic-ingredients/actives/article/21833683/manufacturing-microalgae-for-skin-care)(以下、「周知例2」という。)には、次の事項が記載されている。
“Open cultivation systems: Most commercial processes for the production of microalga biomass take place in open cultivation systems. Due to the high contamination risk, however, processes in open systems are difficult to reproduce. For this reason, they are less suitable for the production of high-quality microalga products for cosmetic and pharmaceutical applications.”(100ページ右欄33~42行)
(当審訳:開放系培養システム: 微細藻類バイオマスの生産に関するほとんどの商業プロセスは、開放系培養システムで行われる。しかし、高い汚染リスクのため、開放系でのプロセスは再現が難しい。このため、化粧品や製薬用途向けの高品質な微細藻類製品の生産には不向きである。)
“Closed cultivation systems: Compared to the natural environment of microalgae, the environment in artificial culture systems is different in terms of lighting conditions and many further growth-determining factors. To be able to optimize the growth of microalgae and better adapt the culture conditions to the different species-specific needs, nearly all important biological parameters have to be regulated in photobioreactors. To meet these requirements, various technical solutions and systems for the closed cultivation of microalgae have been developed.”(102ページ右欄1~15行)
(当審訳:閉鎖系培養システム: 微細藻類の自然環境と比較して、人工培養システムの環境は照明条件やその他の成長決定因子において異なる。微細藻類の成長を最適化し、培養条件を異なる種特有のニーズにより適応させるために、ほぼすべての重要な生物学的パラメータは光生物反応器で調整されなければならない。これらの要件を満たすために、微細藻類の閉鎖系培養のためのさまざまな技術的解決策とシステムが開発されている。)
上記記載より、周知例2には、次の周知技術が記載されているといえる。
「開放系培養システムは、高い汚染リスクのため、開放系でのプロセスは再現が難しいため、化粧品や製薬用途向けの高品質な微細藻類製品の生産には不向きである一方で、閉鎖系培養システムでは、微細藻類の成長を最適化し、培養条件を異なる種特有のニーズにより適応させるために、ほぼすべての重要な生物学的パラメータは光生物反応器で調整されること。」
c 周知例3
本願の優先日前に既に公知である、特表2017-506212号公報(平成29年3月2日公表。以下、「周知例3」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。
「【0089】
当業者には公知のように、および本明細書において以下に例示するように、形質転換された藻類の培養条件は、使用される藻類の種類に依存する。典型的には、藻類は、光合成が可能な条件下で増殖される。光合成には日光およびCO2が必要であり、さらに微細藻類が、適切な肥料を混合した淡水、汽水または海水のいずれかを増殖に必要とするため、微細藻類は、例えば、開放された池および湖で培養され得る。しかし、開放型システムは、閉鎖型システムよりも汚染に対して脆弱であり、さらには、開放された貯水池において増殖された遺伝子改変微細藻類は環境に対して危険であるとみなされる可能性がある。さらに、開放型システムにおいては、水温、CO2濃度、および照明条件を制御しにくい。増殖時季は、場所に大きく依存し、熱帯は別として、1年の内の温暖な月に限定される。しかし、開放型システムでは、閉鎖型システムよりも構築および/または維持が安価である。
【0090】
従って、微細藻類を増殖させる別の方法は、池またはプールを構造体で、例えば「温室型」構造体で覆うような、半閉鎖型システムの使用である。これは、より小さなシステムになる可能性があるが、開放型システムに伴う多くの問題に対処する。半閉鎖型システムの利点は、目的の微細藻類を、その増殖に必要な栄養素について、侵入生物との競合に勝たせることによって、所望の微細藻類を、侵入生物に対して優占的であるようにすることが可能である点、および増殖時季を延ばすことが可能である点である。例えば、システムが加熱または冷却される場合、微細藻類は、一年を通して増殖できる。」
上記記載から、周知例3には次の周知技術が記載されているといえる。
「微細藻類は、開放された池および湖などの開放型システムで培養されるが、開放型システムは、閉鎖型システムよりも汚染に対して脆弱であり、開放された貯水池において増殖された遺伝子改変微細藻類は環境に対して危険であり、微細藻類を増殖させる別の方法は、池またはプールを「温室型」構造体で覆うような半閉鎖型システムの使用であり、半閉鎖型システムは、目的の微細藻類を、その増殖に必要な栄養素について、侵入生物との競合に勝たせることによって、所望の微細藻類を、侵入生物に対して優占的であるようにすることが可能であるとともに、増殖時季を延ばすことが可能である利点を有すること。」
d 周知例4
本願の優先日前に既に公知である、特開2013-146192号公報(平成25年8月1日公開。以下、「周知例4」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。
「【0013】
さらに藻類、特に微細藻類を開放系の水域で培養する場合は意図しない別種の藻類の増殖、いわゆるコンタミネーション(汚染、コンタミ)が発生し易く、資源・エネルギーを安定的に循環させるシステムには成り得ないという問題点もあった。」
e 周知例5
本願優先日前に既に公知である、Graziella C. Zittelli et al.、“Photobioreactors for Mass Production of Microalgae”、2013年、Handbook of Microalgal Culture Mass Cultivation and Processing of Microalgae、Wiley Online Books、
pp.225-266(参考URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/9781118567166.ch13)(以下、「周知例5」という。)には、次の事項が記載されている。
“Today, microalgae and cyanobacteria for commercial exploitation are either harvested from natural habitats or obtained through more or less controlled cultivation processes in open ponds or photobioreactors (PBRs) (Tredici, 2004; Tredici et al., 2010). Commercial production of algae amounts to about 20 000 t annually (Tredici, 2012), mainly marketed as high-value human nutritional supplements, specialty animal feeds, and pharmaceutical products (Spolaore et al., 2006; Tredici et al., 2009).With few exceptions, large-scale commercial production of microalgae is limited to species (mainly belonging to the genera Arthrospira, Chlorella, and Dunaliella) that are cultivated in open ponds by taking advantage of their high growth rate or of a selective growth medium that limits contamination (Richmond, 1999). However, the majority of microalgae do not require a specific growth environment or a selective medium, and cannot be cultivated for prolonged periods in outdoor open systems because of contamination (Richmond, 1999).”(225ページ右欄3行~226ページ左欄8行)
(当審訳:今日、商業利用を目的とした微細藻類およびシアノバクテリアは、自然環境から収穫されるか、あるいはオープンポンドまたはフォトバイオリアクター(PBR)における多かれ少なかれ制御された培養プロセスによって得られている(Tredici, 2004; Tredici et al., 2010)。藻類の商業生産量は年間約20,000トンに達しており(Tredici, 2012)、主に高付加価値のヒト用栄養補助食品、特殊動物飼料、医薬品として市場に供給されている(Spolaore et al., 2006; Tredici et al., 2009)。ごく少数の例外を除き、微細藻類の大規模商業生産は、主にArthrospira、Chlorella、Dunaliella属に属する種に限定されており、これらは高い成長速度や汚染を制限する選択的培地を利用してオープンポンドで培養されている(Richmond, 1999)。しかし、大多数の微細藻類は特定の成長環境や選択的培地を必要とせず、屋外のオープンシステムでは汚染のため長期間の培養ができない(Richmond, 1999)。)
“In the future, the poorly investigated microbial groups, like microalgae and cyanobacteria, will play an important role as sources of new lead compounds for drug development as well as for the cosmeceutical and nutraceutical markets. The production of algae for high-value markets will be developed through the search for, isolation, and cultivation of new algal strains and deep investigations of their physiology and genetics. For these applications, new reactor designs able to provide reliable amounts of biomass with the strict criteria required by these markets are necessary.In many of these cases increasing reliability of production will be more important than decreasing cost. A countercurrent approach to the quest for cost reduction is that of Bio-Real,
a company owned by Fuji Chemical Industry Co., Ltd, that has closed down its outdoor facility for astaxanthin production in Hawaii, based on the Biodome photobioreactor (see Tredici, 1999 for a description), to increase production in Sweden (Bio-Real Sweden), where cultivation is carried out indoors with artificial light (Starling, 2011). This is expected to allow a more reliable production in terms of both quantity and quality of the product.”(257ページ左欄39行~右欄9行)
(当審訳:将来的には、微細藻類やシアノバクテリアのような十分に研究されていない微生物群が、創薬のための新たなリード化合物や、コスメシューティカルおよびニュートラシューティカル市場向けの重要な供給源として重要な役割を果たすであろう。高付加価値市場向けの藻類生産は、新規藻類株の探索、分離、培養およびその生理学的・遺伝学的な詳細な研究を通じて発展していくであろう。これらの用途には、これらの市場が要求する厳格な基準を満たしつつ、信頼性の高いバイオマス供給が可能な新しいリアクターデザインが必要である。多くの場合、コスト削減よりも生産の信頼性向上の方が重要となる。コスト削減の追求に対する逆行的なアプローチとして、富士化学工業株式会社が所有するBio-Real社は、バイオドーム型フォトバイオリアクターを用いたハワイのアスタキサンチン生産の屋外施設を閉鎖し、スウェーデン(Bio-Real Sweden)での生産を増強した。ここでは、人工光を用いて屋内で培養が行われている(Starling, 2011)。これは、製品の量と質の両面でより信頼性の高い生産を可能にすると期待されている。)
上記記載から、周知例5には次の周知技術が記載されているといえる。
「商業利用を目的とした微細藻類およびシアノバクテリアは、自然環境から収穫されるか、あるいはオープンポンドまたはフォトバイオリアクター(PBR)における多かれ少なかれ制御された培養プロセスによって得られているところ、大多数の微細藻類は屋外のオープンシステムでは汚染のため長期間の培養ができず、
将来的には、微細藻類やシアノバクテリアのような十分に研究されていない微生物群が、創薬のための新たなリード化合物や、コスメシューティカルおよびニュートラシューティカル市場向けの重要な供給源として重要な役割を果たすことが期待されていて、これらの用途には、これらの市場が要求する厳格な基準を満たしつつ、信頼性の高いバイオマス供給が可能な新しいリアクターデザインが必要であって、コスト削減よりも生産の信頼性向上の方が重要となるところ、人工光を用いて屋内で培養が行われ、製品の量と質の両面でより信頼性の高い生産を可能にすると期待されていること。」
ウ 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)「少なくとも1つの培養微細藻類を含む繊維であって、」(構成要件A)について
引用発明の「ビスコース繊維」は、本願発明の「繊維」と、“繊維”である点で共通する。
引用発明の「ビスコース繊維」は、「藻類から取り込んだ材料を含む」ものであって、当該「藻類」は、「微細藻類の使用が可能であ」ることから、後述する相違点を除いて、本件補正発明の「少なくとも1つの培養微細藻類を含む繊維」と、“少なくとも1つの微細藻類を含む繊維”である点で共通するといえる。
(イ)「前記少なくとも1つの培養微細藻類は、統制及び管理された人工の環境で培養された、皮膚の状態に対して有益な成分を含む微細藻類であり、」(構成要件B)について
引用発明において、「海藻由来の材料の添加は、繊維およびセルロース成形体ならびにそれから製造した織物に特にやわらかい感触を付与し、藻類に含有されるアルギン酸塩は、保湿特性を有することが知られており、海藻由来の材料を含有する製品は、特に皮膚に優しいと考えられ」ているところ、引用発明の「藻類から取り込んだ材料を含む改変されたビスコース繊維」に含まれる当該「藻類」も、同様の性質を持つものといえるから、本件補正発明の「前記少なくとも1つの培養微細藻類は、統制及び管理された人工の環境で培養された、皮膚の状態に対して有益な成分を含む微細藻類であり、」との構成に対し、下記の点で相違するものの、“前記少なくとも1つの微細藻類は、皮膚の状態に対して有益な成分を含む微細藻類であ”る点で共通するといえる。
(ウ)「前記繊維は、衣服に使用される織物の繊維であり、」(構成要件C)について
上記(ア)の認定を踏まえると、引用発明の「織物用途、特にニットウェア分野における改良された使用特性を有する…(中略)…ビスコース繊維」が、「ヤーンおよび平面織物アセンブリの製造に用いられる」ことは、当該ビスコース繊維が衣服に使用されることを企図しているといえるから、本件補正発明の「前記繊維は、衣服に使用される織物の繊維であ」ることに相当する。
(エ)「前記繊維が、セルロースベースの繊維、タンパク質ベースの繊維、石油ベースの繊維、及びそれらの任意の組み合わせのうちから選択される、」(構成要件D)について
引用発明の「ビスコース繊維」は、セルロースベースの繊維といえるところ、本件補正発明の「前記繊維が、セルロースベースの繊維、タンパク質ベースの繊維、石油ベースの繊維、及びそれらの任意の組み合わせのうちから選択される」との構成に対し、“前記繊維が、セルロースベースの繊維”である限りにおいて一致するといえるから、上記(ア)の認定を踏まえると、引用発明の「ビスコース繊維」は、本件補正発明の「前記繊維が、セルロースベースの繊維、タンパク質ベースの繊維、石油ベースの繊維、及びそれらの任意の組み合わせのうちから選択される」ものであることに相当する。
エ 一致点および相違点
上記ウを踏まえると、本件補正発明と引用発明とは、次の点で一致ないし相違する。
〈一致点〉
少なくとも1つの微細藻類を含む繊維であって、
前記少なくとも1つの微細藻類は、皮膚の状態に対して有益な成分を含む微細藻類であり、
前記繊維は、衣服に使用される織物の繊維であり、
前記繊維が、セルロースベースの繊維、タンパク質ベースの繊維、石油ベースの繊維、及びそれらの任意の組み合わせのうちから選択される、繊維。
〈相違点1〉
本件補正発明の「繊維」に含まれる「微細藻類」が、「統制及び管理された人工の環境で培養された」ものであるのに対し、引用発明の「ビスコース繊維」に含まれる「微細藻類」は「海水と淡水から採ることができ」るものと認められるものの、培養されたものであることが特定されておらず、また「海水と淡水」がどのような環境であるのかを具体的に特定していない点。
オ 判断
上記相違点1について判断する。
植物由来の材料を安定的に供給するために統制及び管理された人工の環境で当該植物を栽培(培養)することは、特に文献を挙げるまでもなく通常行われていることにすぎず、実際、上記周知例1~5で示される周知技術にみられるように、微細藻類についてもこれを人工の環境で培養して得ることは、本願優先日前に広く行われていたところ、特に、屋外の池や解放された貯水池などで培養する場合は、汚染が問題となるため、閉鎖型システムや屋内での培養によって、当該問題を解決するよう試みられてきた(例えば、周知例2~3、5に記載された周知技術参照。)ことに鑑みれば、引用発明の「海水と淡水から採ることができ」る「微細藻類」を「統制及び管理された人工の環境で培養された」ものとすることは、当業者にとって容易というほかなく、また、そのことによる効果も格別顕著なものとはいえず、当業者であれば普通に想起する程度のことにすぎない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、仮に本件補正が特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであったとしても、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反する。
(4)むすび
本件補正は、上記(2)及び(3)で検討したとおり、特許法17条の2第5項各号に掲げるいずれの目的にも合致しない補正事項1を含むものであるので特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定により、又は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により、却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明
本件補正は、上記第2に示したとおり却下されたので、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(2)の「請求項1」に記載された事項により特定されるものである。再掲すれば次のとおり。(なお、記号A~Dは、分説にあわせて当審が付与したものであり、各分説に対応して、以下、「構成要件A」~「構成要件D」などという。)
A 少なくとも1つの培養微細藻類を含む繊維であって、
B’ 前記少なくとも1つの培養微細藻類は、海洋外で採取されたものであり、
C’ 前記繊維は、織物の繊維であり、
D 前記繊維が、セルロースベースの繊維、タンパク質ベースの繊維、石油ベースの繊維、及びそれらの任意の組み合わせのうちから選択される、
A 繊維。
第4 原査定の概要
原査定の拒絶の理由の概要は次のとおりである。
「 この出願については、令和 5年 3月31日付け拒絶理由通知書に記載した 理由1、2によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。
備考
●理由1(特許法第29条第1項第3号)、理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項 1-5、7-21
・引用文献等 4
…(中略)…
引用文献4に記載された藻類材料は、培養方法が明記されていないものの、何らかの形で培養されたものであるから、本願発明の「培養微細藻類」であり、また淡水で生育されたものを包含することから「海洋外で採取されたもの」を包含するといえる。
仮に引用文献4に記載された藻類材料が培養された海洋外で採取されたものでないとしても、実験や研究等に用いる藻類を人工環境下で培養して用いること、海洋外で採取されたものではないものとすることは当業者が適宜行うものであり、格別の困難性は認められないし、また一般的に人工培養を行う際には培養液の配合成分を適宜調節するものであり、得られた培養物が天然のものに比べて均質性に優れることは本願出願時に周知技術であるといえ(たとえば引用文献7:[0002]-[0004])、それによって奏される各種の機能のカスタマイズの容易性、特性や機能のばらつきの少ないという効果も予測できる程度のものであり、格別であるとまではいえない。
…(中略)…
よって、請求項1-5、7-21に係る発明は、引用文献4に記載されているか、あるいは、引用文献4の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
…(中略)…
<引用文献等一覧>
4.国際公開第2017/186725号…(後略)」
第5 対比及び判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
構成要件A及びDについては、上記第2の[理由]の2(3)ウ(ア)及び(エ)のとおりである。
構成要件B’について、引用発明の「藻類は、海水と淡水から採ることができ」るものであるところ、「淡水」は“海洋外”であることが明らかであり、“海洋外で採取され”たものを含むから、上記第2の[理由]の2(3)ウ(ア)の認定も踏まえ、引用発明の「藻類から取り込んだ材料を含む改変されたビスコース繊維であって、…(中略)…前記藻類は、海水と淡水から採ることができ、微細藻類の使用が可能であ」ることと、本願発明の「前記少なくとも1つの培養微細藻類は、海洋外で採取されたものであ」ることとは、下記の点で相違するものの、“前記少なくとも1つの微細藻類は、海洋外で採取されたものであ”る点では共通する。
また、構成要件C’は、本件補正発明の構成要件Cから、「衣服に使用される」との限定事項を除いたものであるので、上記第2の[理由]の2(3)ウ(ウ)に鑑みれば、引用発明の「織物用途、特にニットウェア分野における改良された使用特性を有する…(中略)…ビスコース繊維」は、「ヤーンおよび平面織物アセンブリの製造に用いられる」ことは、本願発明の「前記繊維は、織物の繊維であ」ることに相当する。
2 一致点および相違点
上記1の対比から、本願発明と引用発明とは、次の点で一致ないし相違する。
〈一致点〉
少なくとも1つの微細藻類を含む繊維であって、
前記少なくとも1つの微細藻類は、海洋外で採取されたものであり、
前記繊維は、織物の繊維であり、
前記繊維が、セルロースベースの繊維、タンパク質ベースの繊維、石油ベースの繊維、及びそれらの任意の組み合わせのうちから選択される、繊維。
〈相違点1’〉
本願発明の「繊維」に含まれる「微細藻類」が、「培養微細藻類」であるのに対し、引用発明の「ビスコース繊維」に含まれる「藻類から取り込んだ材料」が、培養微細藻類であることが特定されていない点。
3 判断
上記相違点1’について判断する。
植物由来の材料を安定的に供給するために当該植物を栽培(培養)することは、特に文献を挙げるまでもなく通常行われていることにすぎず、実際、上記周知例1~5で示される周知技術にみられるように、微細藻類についてもこれを培養して得ることは、本願優先日前に広く行われていたことにすぎないから、引用発明の「海水と淡水から採ることができ」る「微細藻類」を培養微細藻類とすることは、当業者にとって容易というほかなく、また、そのことによる効果も格別顕著なものとはいえず、当業者であれば普通に想起する程度のことに過ぎない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例1(原査定の「引用文献4」)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-000370