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特許拒絶査定不服審判

2024-000361

フォトニック結晶ファイバ、その作製方法、及びスーパーコンティニューム光源

審判番号
2024-000361
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-182910
請求日
2024年01月11日
審決日
2026年03月05日
公報発行日
2026年08月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】エヌケイティー フォトニクス アクティーゼルスカブ
  • 【請求人代理人】恩田 誠
  • 【請求人代理人】恩田 博宣
  • 【請求人代理人】本田 淳
審判長/審判官
  • 審判長 波多江 進
  • 審判官 横井 亜矢子
  • 審判官 小澤 尚由
分類
P18 .121-WZ (G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-182910「フォトニック結晶ファイバ、その作製方法、及びスーパーコンティニューム光源」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 3月11日出願公開、特開2021- 39360〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 1 手続の経緯 本願は、2015年(平成27年)12月15日を国際出願日とする外国語特許出願(特願2017-532646号)の一部を、令和2年10月30日に新たな外国語書面出願としたものであって(パリ条約による優先権主張 2014年12月18日(以下「優先日」という。) デンマーク)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和3年 8月31日付け:拒絶理由通知書 令和4年 3月 2日 :意見書、手続補正書の提出 同年 6月 7日付け:拒絶理由通知書 同年12月21日 :意見書、手続補正書の提出 令和5年 3月31日付け:拒絶理由通知書 同年 6月28日 :意見書、手続補正書の提出 同年 9月 6日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月12日 :原査定の謄本の送達) 令和6年 1月11日 :審判請求書、手続補正書の提出 同年 5月 2日付け:前置報告書 令和7年 6月26日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由通知書」という。) 同年 9月25日 :意見書の提出 2 本願発明について (1) 本願発明の認定 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年1月11日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 水素及び重水素のうちの少なくとも一方を添加した微細構造化光ファイバを備えるスーパーコンティニューム光源を作製する方法において、 前記微細構造化光ファイバのコア及びクラッディング領域に対するプリフォーム構造を含むプリフォームを作製する工程と、 前記コア及び前記クラッディング領域を有した前記微細構造化光ファイバを得るために前記プリフォームを延伸する工程であって、少なくとも前記クラッディング領域は前記微細構造化光ファイバの長手方向軸に沿って延びる複数の含有物を備える、前記プリフォームを延伸する工程と、 前記クラッディング領域の周りにコーティングを設ける工程であって、前記コーティングは前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方に対して温度Th以下の温度で気密性を有し、Thは少なくとも約50℃であり、前記コーティングは炭素コーティングからなる、前記クラッディング領域の周りにコーティングを設ける工程と、 前記微細構造化光ファイバへの前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方の添加を生じさせる工程であって、前記コーティングを設ける前に前記微細構造化光ファイバを前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方にさらすことからなる、前記微細構造化光ファイバへの前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方の添加を生じさせる工程と、 前記微細構造化光ファイバの気密性を有する前記コーティングを通した前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方の透過が1日当たり1%未満である前記スーパーコンティニューム光源を与えるために、前記微細構造化光ファイバに光を与えるように、前記微細構造化光ファイバの入射端をポンプ・レーザに光学的に結合する工程と、を備え、 前記クラッディング領域は内側クラッディング領域と外側クラッディング領域からなり、前記内側クラッディング領域は前記含有物を含んでなり、前記内側クラッディング領域の最も外側の含有物と前記コーティングとの間の径方向距離は少なくとも10μmであり、前記内側クラッディング領域と前記コーティングの間の材料がシリカを含むとともに、水素及び重水素のうちの少なくとも一方のリザーバを形成する、方法。」 (2) 本願発明の分説 検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Fまでに分説する。また、参考図として、本願の【図2】及び【図3】を元に部材名を記入したものを掲載する。なお、【図3】の図面における符号「25」は、本願明細書(【0126】~【0134】)の記載からみて、「26」の明らかな誤記であると認める。 <本願発明の分説> X 水素及び重水素のうちの少なくとも一方を添加した微細構造化光ファイバを備えるスーパーコンティニューム光源を作製する方法において、 A 前記微細構造化光ファイバのコア及びクラッディング領域に対するプリフォーム構造を含むプリフォームを作製する工程と、 B 前記コア及び前記クラッディング領域を有した前記微細構造化光ファイバを得るために前記プリフォームを延伸する工程であって、少なくとも前記クラッディング領域は前記微細構造化光ファイバの長手方向軸に沿って延びる複数の含有物を備える、前記プリフォームを延伸する工程と、 C 前記クラッディング領域の周りにコーティングを設ける工程であって、前記コーティングは前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方に対して温度Th以下の温度で気密性を有し、Thは少なくとも約50℃であり、前記コーティングは炭素コーティングからなる、前記クラッディング領域の周りにコーティングを設ける工程と、 D 前記微細構造化光ファイバへの前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方の添加を生じさせる工程であって、前記コーティングを設ける前に前記微細構造化光ファイバを前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方にさらすことからなる、前記微細構造化光ファイバへの前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方の添加を生じさせる工程と、 E 前記微細構造化光ファイバの気密性を有する前記コーティングを通した前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方の透過が1日当たり1%未満である前記スーパーコンティニューム光源を与えるために、前記微細構造化光ファイバに光を与えるように、前記微細構造化光ファイバの入射端をポンプ・レーザに光学的に結合する工程と、を備え、 F 前記クラッディング領域は内側クラッディング領域と外側クラッディング領域からなり、前記内側クラッディング領域は前記含有物を含んでなり、前記内側クラッディング領域の最も外側の含有物と前記コーティングとの間の径方向距離は少なくとも10μmであり、前記内側クラッディング領域と前記コーティングの間の材料がシリカを含むとともに、水素及び重水素のうちの少なくとも一方のリザーバを形成する、方法。 <参考図(【図2】)> [図:0001437670000001.jpg] <参考図(【図3】)> [図:0001437670000002.jpg] (3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。 ア 【技術分野】、【背景技術】、【発明が解決しようとする課題】 「【技術分野】 【0001】 本発明は、フォトニック結晶ファイバ(PCF)、フォトニック結晶ファイバを作製する方法、及びそのようなフォトニック結晶ファイバ、微細構造化光ファイバからなるスーパーコンティニューム光源、ならびにスーパーコンティニューム光放射源に関する。 【背景技術】 【0002】 フォトニック結晶ファイバは、背景材料内に典型的には規則的なアレイで配置された複数の含有物(クラッディング特徴又は微細構造と呼ばれることもある)を有するクラッディング領域によって取り囲まれたコアを有するファイバである。以下、フォトニック結晶ファイバをフォトニック結晶ファイバ又は微細構造化光ファイバと呼ぶ。含有物は、気体、液体、又は固体の含有物とすることができる。原則的に、含有物は空隙である可能性もあるが、実際にはそれらの空隙は通常、いくつかの気体分子を含む。 …(中略)… 【0005】 フォトニック結晶ファイバは、概して、高パワー光源での使用に適している。光ファイバ内で比較的大きいパワーを案内することは、外科用及び/又は治療用の光の案内、光学的感知、ならびに材料処理などのいくつかの商業的な応用例にとって重要となり得る。そのような応用例の中には、ファイバ内での光エネルギーの輸送及び非線形作用の利用が挙げられ、これらは一般的に、ファイバ内の光パワーがより大きい場合により顕著である。光パワーは、連続波(CW:continuous wave)、パルス波、又はそれらの混合物とすることができる。ファイバ内で光パワーが大きくなることは、比較的控えめな平均パワーを有しながら大きいピーク・パワーを得られるパルス光で、特に顕著となり得る。 【0006】 光ファイバによって搬送される平均パワー/スペクトル密度の1つの制限は、ファイバの損傷閾値である。特に、フォトニック結晶ファイバがスーパーコンティニューム生成に適用され、フォトニック結晶ファイバの入射端(入力端と呼ばれることもある)を介してフォトニック結晶ファイバへ高パワー光が送出される場合、送出される光のピーク・パワーに応じて、フォトニック結晶ファイバが時間とともに分解することが判明している。さらに、入射端に隣接又は近接するファイバ区間は、入射端からの距離が長ければ長いほど、分解により露出されることが判明している。 【0007】 特許文献4は、コア材料及び任意選択でクラッディング材料に水素及び/又は重水素を添加することによって、フォトニック結晶ファイバへ送出される高パワー光によって引き起こされる分解を軽減する方法について記載している。この添加の結果、ファイバの寿命がある程度増大することが判明した。特許文献3では、この方法は、水素及び/又は重水素の添加後にフォトニック結晶ファイバをアニーリング及び/又は高パワー放射にかけることによってさらに改善された。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0008】 【特許文献1】米国特許出願公開第2012195554号明細書 【特許文献2】米国特許第8406594号明細書 【特許文献3】米国特許出願公開第2011116283号明細書 【特許文献4】米国特許第8145023号明細書 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明の目的は、耐分解性が非常に高いスーパーコンティニューム生成に適したフォトニック結晶ファイバを提供することである。 1実施形態では、目的は、スーパーコンティニューム生成に使用されるときでも長い寿命を有するスーパーコンティニューム生成に適したフォトニック結晶ファイバを提供することである。 【0010】 さらなる目的は、高い耐分解性を有するフォトニック結晶ファイバからなるスーパーコンティニューム光源、ならびにそのようなスーパーコンティニューム光源の好適な応用例を提供することである。」 イ 【課題を解決するための手段】 「【課題を解決するための手段】 …(中略)…。 【0012】 本発明のフォトニック結晶ファイバ(PCF)は、長手方向軸を有し、長手方向軸の長さに沿って延びるコアと、コアを取り囲むクラッディング領域とからなる。少なくとも、クラッディング領域は、少なくとも微細構造化された長さ区間内でフォトニック結晶ファイバの長手方向軸に沿って延びる含有物の形の複数の微細構造を含む。フォトニック結晶ファイバは、耐分解性の長さ区間を有し、この長さ区間は、フォトニック結晶ファイバの全長さ又は単にその長さ区間とすることができる。 【0013】 「耐分解性の長さ区間」という語句は、このファイバ長さ区間が、他の従来技術のファイバ長さ区間に対して、経時的に非常に高い耐分解性を有することを示すために使用される。 【0014】 フォトニック結晶ファイバは、少なくとも前記微細構造化された長さ区間内の耐分解性の長さ区間内で、水素及び/又は重水素を含み、フォトニック結晶ファイバは、少なくとも耐分解性の長さ区間内で、クラッディング領域を取り囲む主コーティングをさらに含み、この主コーティングは、Thを下回る温度で前記水素及び/又は重水素に対して気密性があり、ここでThは少なくとも約50℃である。有利には、Thは、少なくとも使用中のフォトニック結晶ファイバの最大予想温度前後である。それによって、経時的及び/又は使用中にファイバから拡散する水素及び/又は重水素が最小になる。好適には、Thは、50℃<Th<250℃である。1実施形態では、Thは最高約150℃である。 【0015】 「気密」という用語は、本明細書では、コーティングを通る水素原子及び/又は重水素原子のあらゆる拡散が、1日当たり約1%未満であることを意味するために使用され、この拡散は、ラマン分光法を使用して、たとえば大気状態(すなわち、ファイバが空気中に1バールで配置される)において関連温度で測定され、あるいは赤外分光法によって、H2に対して約1240nmもしくは約1870nm又はD2に対して約1715nmで、H2(もしくはD2)の吸収線を測定することによって測定される。好適には、気密コーティングにより、拡散を1日当たり0.5%未満、約0.1%未満、1日当たり約0.01%未満などにすることが可能になる。 【0016】 「含有物」という用語は、背景材料中の含有物を意味し、含有物は、含有物を取り囲む背景材料とは別の屈折率を有する。含有物は、たとえば、空気、窒素、もしくは任意の他のガスなどの気体含有物、背景材料及び/もしくはドープ材料(F、Ge、P、Bなどの屈折率を変化させる材料)とは別のガラス・タイプなどの固体含有物、真空含有物、又はそれらの任意の組合せとすることができる。有利には、含有物の少なくとも一部は気体又は真空の含有物である。気体含有物は、水素及び/又は重水素の貯蔵所として作用することができることが判明しており、それらの含有物は、耐分解性の長さ区間の両側で閉じられる。 【0017】 「径方向距離」という語句は、長手方向軸から径方向に求められる距離を意味する。 「実質上」という用語は、本明細書では、通常の生成物の分散及び公差が含まれることを意味すると見なされるべきである。 【0018】 クラッディング領域は、均質な背景材料を有することができ、又はそれぞれの背景材料が互いに異なるいくつかの領域を有することができることに留意されたい。背景材料は、有利には、シリカであり、任意選択でドープされる。1実施形態では、たとえば米国特許第8600207号明細書に記載されているように、クラッディング領域は、内側クラッディング領域と、内側クラッディング領域を取り囲む外側クラッディング領域とからなり、内側クラッディング領域の背景材料は、外側クラッディング領域の背景材料とは異なる。 【0019】 1実施形態では、クラッディング領域は、内側クラッディング領域と、内側クラッディング領域を取り囲む外側クラッディング領域とからなり、内側クラッディング領域の背景材料は、外側クラッディング領域の背景材料と同じ屈折率を有する。この実施形態では、内側クラッディング領域及び外側クラッディング領域が同じ背景材料を有することが有利である。内側クラッディング領域と外側クラッディング領域の違いは、たとえば、含有物のサイズ、タイプ、及び/又は数の違いである。クラッディング領域は、光をコアに閉じ込めるものであり、有利には、含有物は、平均屈折率に影響を与えて光を閉じ込めるように配置される。これは、含有物がコアに比較的近接しているべきであることを意味し、好適には、含有物の少なくとも一部とコアとの中心間距離は、最高約50μm、好適には最高約40μm、最高約30μmなど、最高約15μmなどである。 【0020】 クラッディング領域、含有物、及びコアの材料について説明するとき、水素及び/又は重水素の量は材料の一部として含まない。 1実施形態では、クラッディング領域の背景材料及びコア材料は、実質上純シリカである。 …(中略)… 【0036】 有利には、内側クラッディング領域の背景材料及び外側クラッディング領域の背景材料は同一であり、また任意選択で、コア材料とも同一である。有利には、内側クラッディング領域の背景材料及び外側クラッディング領域の背景材料、ならびに任意選択でコア材料は、実質上純シリカであり、又は任意選択で、フッ素でドープされたシリカである。 …(中略)… 【0038】 1実施形態では、少なくとも耐分解性の長さ区間内のクラッディング領域は、含有物を含む内側クラッディング領域と、内側クラッディング領域を取り囲む外側クラッディング領域とからなり、内側クラッディング領域の最も外側の含有物と主コーティングとの間の径方向距離は、少なくとも約10μmである。任意選択で、内側クラッディング領域と主コーティングとの間の材料は、水素及び/又は重水素のためのリザーバを形成する。 【0039】 内側クラッディング領域の最も外側の含有物と主コーティングとの間に比較的大きい径方向距離を有することによって、水素及び/又は重水素のためのリザーバを大きい面積で形成することができ、このリザーバは、水素及び/又は重水素がコア内で消費されるにつれて、徐々にコアへ拡散することができ、それによってコア内で比較的安定した十分な水素及び/又は重水素濃度を維持することができる。 【0040】 1実施形態では、内側クラッディング領域と主コーティングとの間の材料は、水素及び/又は重水素のためのリザーバを形成し、たとえば水素のためのリザーバは、多孔質のシリカである。 【0041】 1実施形態では、内側クラッディング領域と主コーティングとの間の水素のためのリザーバは、内側クラッディング領域の背景材料より水素及び/又は重水素に対して高い吸着容量を有するガラス又はプラスチックを含む。 …(中略)… 【0057】 主コーティングは、上記で定義した気密コーティングを提供する任意の材料から作ることができる。 主コーティングに適した材料の例には、窒化物(窒化炭素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ケイ素、及び/もしくは酸窒化ケイ素など)、炭素、アルミニウム、金属ガラス、又は上記の1つもしくは複数を含む組合せを含む材料が挙げられる。 【0058】 主コーティングに対する特に好適な材料は、炭素である。 主コーティングの厚さは、材料のタイプに応じて決定される。概して、比較的小さい厚さで気密性を有する主コーティングに対する材料を選択し、それによって、亀裂の形成という実質的なリスクをもたらすことなく、フォトニック結晶ファイバの高い可撓性及び屈曲性を確保することが望ましい。 【0059】 1実施形態では、主コーティングの厚さは、約5nm~約10μm、10nm~約5μmなど、約20nm~約1μmなどである。 1実施形態では、主コーティングの厚さは約30nmである。 【0060】 金属の主コーティングの場合、厚さは、有利には、15μm~60μmである。 1実施形態では、主コーティングは、To’を上回る温度で水素及び/又は重水素に対して開いた拡散であり、ここでToはThより大きい。それによって、コーティングを施した後、水素及び/又は重水素をフォトニック結晶ファイバに添加することができる。これにより、機械的でありかつ防塵式の取扱い中に主コーティングがファイバを保護するため、フォトニック結晶ファイバを作製する好適な実施形態が提供される。さらに、より均質かつ正確な含有量の水素及び/又は重水素を添加することができる。主コーティングがなければ、フォトニック結晶ファイバは、添加された水素及び/又は重水素を添加直後から失い始め、実際には、主コーティングを施す前に、望ましくないほど大量の水素及び/又は重水素が失われ得ることが判明している。したがって、添加後に主コーティングが施される場合、より大量の水素及び/又は重水素がフォトニック結晶ファイバにまず添加されることが望ましい。 【0061】 好適には、Toは、少なくとも約25℃であり、好適には、Toは、約50℃~約300℃の間隔、少なくとも約70℃など、少なくとも約100℃などである。1実施形態では、Toは1バールで求められる。1実施形態では、Toは100バールで求められる。 【0062】 概して、Toは、使用中のフォトニック結晶ファイバの温度(又は予想温度)より大きいことが望ましい。他方では、Toは、有利には、材料を変形させるリスクを冒してまで材料の軟化温度を増大させるべきでない。…(中略)… 【0075】 本発明はまた、フォトニック結晶ファイバを作製する方法を含み、この方法は、 ・フォトニック結晶ファイバのコア及びクラッディング領域に対するプリフォーム構造を含むプリフォームを作製する工程と、 ・プリフォームを延伸して、フォトニック結晶ファイバのコア及びクラッディング領域を得る工程と、 ・少なくともフォトニック結晶ファイバの耐分解性の長さ区間を水素及び/又は重水素の添加にかける工程と、 ・少なくともフォトニック結晶ファイバの耐分解性の長さ区間に主コーティングを施す工程とからなる。 …(中略)… 【0077】 1実施形態では、この方法は、主コーティングを施す前にフォトニック結晶ファイバを水素及び/又は重水素の添加にかける工程を含む。 主コーティングを施す前に水素及び/又は重水素の添加が実行される場合、水素及び/又は重水素の添加は、少なくとも約P1の圧力及び少なくとも約T1の温度で水素及び/又は重水素を含むチャンバ内に、フォトニック結晶ファイバを少なくともt1の持続時間にわたって配置する工程を含む。 …(中略)… 【0090】 主コーティングの材料ならびにその厚さは、上述したとおりとすることができる。 1実施形態では、化学気相成長(CVD)又は類似したもしくは修正された堆積方法によって、主コーティングをフォトニック結晶ファイバに施す。 【0091】 1実施形態では、主コーティングは炭素コーティングであり、この方法は、化学気相成長処理によって主炭素コーティングを施す工程を含む。有利には、CVD処理は、ファイバを反応器の反応器チャンバに通す工程と、反応器チャンバ内のファイバを少なくとも約700℃の温度の反応器ガスにかける工程とを含む。好適には、温度は、約700℃~約1100℃、約700℃~約900℃などの間隔である。900℃を上回る温度は、ダイヤモンド状の構造を有する炭素コーティングの形成をもたらし得る。…(後略)」 ウ 【発明を実施するための形態】 「【0114】 図1に示すフォトニック結晶ファイバは、コア1と、コア1を取り囲むクラッディング領域2、3とを有する。フォトニック結晶ファイバは、図示しない長さ及び長手方向軸を有し、この長手方向軸は、図示の実施形態では、コアの中心軸に一致する。クラッディング領域は、内側クラッディング領域2及び外側クラッディング領域3からなる。内側クラッディング領域は、含有物の形の複数の微細構造を含み、含有物は、フォトニック結晶ファイバの長手方向軸に沿って延びる。上述したように、含有物は、任意の材料を含むことができるが、有利には、空気含有物などの気体含有物である。有利には、含有物は、耐分解性の長さ区間の各端部など、ファイバの長さに沿って1つ又は複数の位置で押しつぶされており、1実施形態では、耐分解性の長さ区間は、上述したように、実質上フォトニック結晶ファイバの全長さである。 【0115】 理解されるように、フォトニック結晶ファイバの横断面図は、フォトニック結晶ファイバの耐分解性の長さ区間内の横断面図であり、耐分解性の長さ区間は、上述したように、フォトニック結晶ファイバの全長さ又はフォトニック結晶ファイバの長さの一部のみからなることができる。 【0116】 フォトニック結晶ファイバには、好適には水素分子及び/又は重水素分子(H2/D2)の形の図示しない水素及び/又は重水素が添加される。水素及び/又は重水素は通常、コア1とクラッディング領域2、3の両方に存在する。フォトニック結晶ファイバは、Thを下回る温度で水素及び/又は重水素に対して気密性がある主コーティング4を含む。様々なタイプの好適な主コーティングを上述した。 【0117】 フォトニック結晶ファイバは、機械的保護ならびに任意選択でフォトニック結晶ファイバへの所望の外観及び/又はテキスチャの提供のために、追加のコーティング5を含む。 使用の際、上述したように、フォトニック結晶ファイバが高いピーク・パワーの光にかけられるとき、この光は、コア材料内に欠陥を引き起こし得る。この作用は、様々な化学反応によって引き起こされると考えられており、光によって誘起される分解又は光黒化と呼ばれることもある。水素及び/又は重水素は、材料に化合することによって分解を緩和し、たとえば遊離基を消滅させることが判明されている。 【0118】 コア1内の水素及び/又は重水素が費やされるにつれて、新鮮な水素及び/又は重水素がクラッディング領域2、3からコア1へ移動する。水素及び/又は重水素に対して気密性がある主コーティング4のため、フォトニック結晶ファイバが使用中であるとき、又は使用前に保管されているとき、水素及び/もしくは重水素の必要とされる量を比較的低くすることができ、かつ/又はフォトニック結晶ファイバは、長時間、最高数年など、たとえば3、4、もしくはさらに5年以上にわたって、過度の分解から保護される。 【0119】 フォトニック結晶ファイバは、有利には、上述したようにシリカからできており、たとえばドープされる。 図2に示すフォトニック結晶ファイバは、コア11と、コア11を取り囲むクラッディング領域12とを有する。フォトニック結晶ファイバは、図示しない長さ及び長手方向軸を有し、この長手方向軸は、図示の実施形態では、コア11の中心軸に一致する。クラッディング領域12は、クラッディング背景材料12b内の含有物の形の複数の微細構造12aを含む。含有物12aは、フォトニック結晶ファイバの長手方向軸に沿って延びる。上述したように、含有物は、任意の材料を含むことができるが、有利には、空気含有物などの気体含有物である。有利には、含有物は、耐分解性の長さ区間の各端部など、ファイバの長さに沿って1つ又は複数の位置で押しつぶされており、1実施形態では、耐分解性の長さ区間は、上述したように、実質上フォトニック結晶ファイバの全長さである。 【0120】 複数の含有物12aは、コアを取り囲むいくつかの含有物リングを含むパターンで、クラッディング領域内に配置される。コアを取り囲む最も内側の含有物リングを、点線のリング12cで示す。 【0121】 理解されるように、フォトニック結晶ファイバの横断面図は、フォトニック結晶ファイバの耐分解性の長さ区間内の横断面図であり、耐分解性の長さ区間は、上述したように、フォトニック結晶ファイバの全長さ又はフォトニック結晶ファイバの長さの一部のみからなることができる。 【0122】 フォトニック結晶ファイバは、Thを下回る温度で水素及び/又は重水素に対して気密性がある主コーティング14を含む。様々なタイプの好適な主コーティングを上述した。 フォトニック結晶ファイバは、クラッディングとしてのあらゆる作用を有するのに十分なほどコア11から遠い追加の材料層16を含む(すなわち、材料層16の材料の屈折率は、コアの光案内に影響しない)。 【0123】 クラッディング領域の含有物12aの最も外側と主コーティング14との間の径方向距離17は、少なくとも約10μmである。 追加の材料層16は、クラッディング背景材料12bと同じ又は異なる材料とすることができる。追加の材料層16は、有利には、水素及び/又は重水素に対して高い容量を有し、それによって水素及び/又は重水素に対するリザーバとして作用するように選択される。 【0124】 フォトニック結晶ファイバには、上述したように、図示しない水素及び/又は重水素が添加される。水素及び/又は重水素は通常、コア11とクラッディング領域12の両方、ならびに追加の材料層16内に存在する。 【0125】 使用の際、上述したように、フォトニック結晶ファイバが高いピーク・パワーの光にかけられるとき、コア11内の水素及び/又は重水素が費やされるにつれて、新鮮な水素及び/又は重水素がクラッディング領域12及び材料層16からコア11へ移動する。水素及び/又は重水素に対して気密性がある主コーティング14のため、フォトニック結晶ファイバが使用中であるとき、又は使用前に保管されているとき、水素及び/もしくは重水素の必要とされる量を比較的低くすることができ、かつ/又はフォトニック結晶ファイバは、長時間、最高数年など、たとえば3、4、もしくはさらに5年以上にわたって、過度の分解から保護される。 【0126】 フォトニック結晶ファイバは、有利には、上述したようにシリカからできており、たとえばドープされる。 図3に示すフォトニック結晶ファイバは、コア21と、コア21を取り囲むクラッディング領域22、23とを有する。フォトニック結晶ファイバは、図示しない長さ及び長手方向軸を有し、この長手方向軸は、図示の実施形態では、コア21の中心軸に一致する。 【0127】 クラッディング領域は、内側クラッディング領域22及び外側クラッディング領域23からなる。内側クラッディング領域22は、内側クラッディング背景材料22b内に内側含有物22aを含む。外側クラッディング領域23は、外側クラッディング背景材料22b内に外側含有物23aを含む。 【0128】 内側含有物22aは、2つの内側含有物リングを含み、外側含有物23aは、5つの外側含有物リングを含む。 含有物22a、23aは、フォトニック結晶ファイバの長手方向軸に沿って延びる。上述したように、含有物は、任意の材料を含むことができるが、有利には、空気含有物などの気体含有物である。有利には、含有物は、耐分解性の長さ区間の各端部など、ファイバの長さに沿って1つ又は複数の位置で押しつぶされており、1実施形態では、耐分解性の長さ区間は、上述したように、実質上フォトニック結晶ファイバの全長さである。 【0129】 内側クラッディング領域22の背景材料22b及び外側クラッディング領域23の背景材料23b、ならびに任意選択でコア材料は、有利には、シリカなどの同じ材料であり、任意選択でフッ素ドープされる。 【0130】 理解されるように、フォトニック結晶ファイバの横断面図は、フォトニック結晶ファイバの耐分解性の長さ区間内の横断面図であり、耐分解性の長さ区間は、上述したように、フォトニック結晶ファイバの全長さ又はフォトニック結晶ファイバの長さの一部のみからなることができる。 【0131】 フォトニック結晶ファイバは、Thを下回る温度で水素及び/又は重水素に対して気密性がある主コーティング24を含む。様々なタイプの好適な主コーティングを上述した。 フォトニック結晶ファイバは、クラッディングとしてのあらゆる作用を有するのに十分なほどコア21から遠い追加の材料層26を含む。 【0132】 追加の材料層26は、この実施形態では、クラッディング背景材料23bと同じである。 内側クラッディング領域の内側含有物22aの最も外側と主コーティング24との間の径方向距離27は、少なくとも約10μmである。 【0133】 フォトニック結晶ファイバには、上述したように、図示しない水素及び/又は重水素が添加される。水素及び/又は重水素は通常、コア21とクラッディング領域22、23の両方、ならびに追加の材料層26内に存在する。 【0134】 使用の際、上述したように、フォトニック結晶ファイバが高いピーク・パワーの光にかけられるとき、コア21内の水素及び/又は重水素が費やされるにつれて、新鮮な水素及び/又は重水素がクラッディング領域22、23及び材料層26からコア21へ移動する。 …(後略)」 3 当審拒絶理由通知書の概要 当審拒絶理由通知書で通知した本願発明に対する拒絶理由(進歩性欠如)の概要は、次のとおりである。 理由(進歩性欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 <主たる引用文献> 1.特表2010-515940号公報 <そのほかの文献> 9.特開2004-361526号公報(周知技術を示す文献) 10.特開平11-189438号公報(周知技術を示す文献) 11.特開平1-241505号公報(周知技術を示す文献) 12.John M. Dudley, et. al., "Supercontinuum generation in photonic crystal fiber", REVIEWS OF MODERN PHYSICS, 2006年12月, vol.78, p.1135-p.1184(周知技術を示す文献) 4 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定 (1) 引用文献1の記載事項 当審拒絶理由通知書の拒絶の理由において引用した文献であって、優先日前に発行された引用文献1(特表2010-515940号公報)には、次の記載がある。なお、当合議体により、後記(2)の当業者が把握できる事項の認定及び後記(3)の引用発明の認定に用いる記載に下線を付した。また、図面は、これに最も関連する記載のある段落の後に挿入して示した。 ア 特許請求の範囲 「【請求項1】 コア材からなるコアと、クラッド材からなるクラッドとを含む光ファイバであって、 前記光ファイバは、非線形の微小構造光ファイバであり、 前記微小構造光ファイバは、水素と重水素のうちの少なくとも一方によって、前記コア材と、任意で前記クラッド材とをロードするロード工程を含む製造方法によって得られる光ファイバ。」 「【請求項2】 前記ロード工程は、水素と重水素のうちの少なくとも一方を前記コア材と前記クラッド材のうちの少なくとも一方に化学的に結合させるように、ロード条件下で前記光ファイバを水素と重水素のうちの少なくとも一方に適切に置くことによって行われ、 前記ロード条件は、好ましくはa)上昇した温度T、b上昇した圧力P、c)その後に行われる照射のうち少なくとも一つを含む、請求項1記載の光ファイバ。」 「【請求項5】 前記ロード工程は、前記光ファイバの形成前、前記光ファイバの形成時、前記光ファイバの形成後、前記光ファイバの使用後のうちの少なくとも何れかで行われる、請求項1乃至4何れか一項記載の光ファイバ。」 「【請求項6】 前記光ファイバはシリカ繊維であり、 前記コアの少なくとも一部はシリカであり、好ましくは少なくとも前記コア全体が、すなわちコア全体とクラッドの一部もしくは全部がシリカである、請求項1乃至5何れか一項記載の光ファイバ。」 「【請求項29】 パルスポンプ光源と、請求項1乃至25何れか一項記載の光ファイバとを含むスーパーコンティニューム光源であって、 前記ポンプ光源は前記光ファイバ内において100W/μm2以上、あるいは500W/μm2以上、1kW/μm2以上、2.5kW/μm2以上、5kW/μm2以上、7.5kW/μm2以上、10kW/μm2以上、15kW/μm2以上、または20kW/μm2以上の最大出力密度でパルスを供給するよう構成され、および/あるいは、 前記ポンプと前記光ファイバは、少なくとも10μW/nmで少なくとも1オクターブ上の出力スパンを与えるよう構成され、および/あるいは、 前記ポンプと前記光ファイバは、最大変調不安定ゲインΩmaxが20または40超えるように構成されたスーパーコンティニューム光源。」 イ 段落【0001】~【0006】 「【技術分野】 【0001】 本発明は特に、コア材からなるコアと、クラッド材からクラッドとを含む非線形の微細構造光ファイバに関する。 【背景技術】 【0002】 最近、微細構造光ファイバ、フォトニック結晶光ファイバ(PCF)、ホーリー光ファイバと呼ばれる光ファイバが開発されている(このような光ファイバで特にフォトニックバンドギャップ光ファイバ(PBG)と呼ぶものもある)。フォトニック結晶光ファイバは、光ファイバの長手方向に沿って一連のホールが埋設された透明材からなるクラッドで構成される(非特許文献1)。ホールは、通例横方向に周期的に配列され、クラッドの他の部分よりも低い屈折率を有する材料で充填される。光ファイバの中心は、通例クラッドの周期性を中断させる透明領域を含む。この領域は、多くの場合光ファイバのコアとして機能する。しかし原理上、この領域は断面の中心になくてもよい。光ファイバの断面は通例、(任意で空気または気体で充填された)ホールを含むクラッド領域で囲まれ、コア材からなるコア領域と、クラッドの背景材に埋設された固体状または液体状の微細構造要素とを含む。いずれの領域も、光ファイバの長手方向に伸展する。コアは通例、光ファイバの動作波長の光の80%以上を案内する。一般に、コアとクラッドはいずれも純石英シリカからなり、ホールは空気で充填されている。フォトニック結晶光ファイバの変形例として、ホールの代わりに、別の材料からなるロッドを横方向に配置するものがある。このような光ファイバは、たとえば特許文献1に開示されている。特許文献1には、ホールを横方向に配置したフォトニック結晶光ファイバも幾つか開示されている。 【0003】 フォトニック結晶光ファイバ型は通常、ロッド状のユニットから製造される。ロッド状のユニットを積み重ねてプリフォームが形成され、一つまたは複数の工程を経て最終的な光ファイバが形成される。非特許文献2には、チューブを積み重ねることによって形成された毛細管のロッドからプリフォームを製造する方法が開示されている。フォトニック結晶光ファイバの製造方法は、非特許文献3にも記載されている。 【0004】 特許文献2には、微小構造光ファイバのプリフォーム製造方法が開示されている。この製造方法では、管内に複数の長尺要素を互いに平行に置き、前記管のうちの少なくとも一部をシリカ含有ゾルで充填したあと、乾燥し、焼結する。 【0005】 微細構造光ファイバは、比較的新しい技術分野であり、導波路の特性を比較的自由に設計することができる。このような光ファイバは通例、光ファイバの長手方向に伸展するパターンを有する純シリカ(ホールやドープされたガラスであることが多い)からなる。設計に自由度があるため、光ファイバ固有の非線形特性が求められる用途に興味深い光ファイバを作ることができる。このような用途の一つとして、光ファイバ光源によって広いスペクトル出力を製造可能なスーパーコンティニューム発生がある。微小構造光ファイバにおけるスーパーコンティニューム(SC)発生は、空間的にコーヒーレントな広帯域光(白色光またはスーパーコンティニューム光という)の光源として、ここ数年研究されてきた。このような光源の新用途が継続的に発見される一方、その幾つかは蛍光顕微鏡法、レーザ精密分光法、および光コヒーレンストモグラフィ(OCT)などとして分類されている。スペクトル可視部分における高輝度の照射は、共焦点蛍光顕微鏡法においては特に重要である。しかし、スペクトルの短波長部分において出力が不十分なため、この領域においてはスーパーコンティニューム光源の潜在能力が十分に発揮されないままである。本明細書に示す実験は、高出力で可視のスーパーコンティニューム発生に焦点を当てた。 【0006】 現在までのほとんどの研究は、非線形光ファイバをフェムト秒(fs)レーザでシードすることを基に行われてきたが、ナノ秒レーザやピコ秒(ps)レーザを用いたスーパーコンティニューム発生も実証されてきた。後者は、高い繰返率と効果的なスーパーコンティニューム発生を維持しながら、大幅にコストを低減し、システムを簡素化している。また、ピコ秒領域においてスペクトル的に一層均一なスーパーコンティニュームスペクトルを製造することが通常可能である。ピコ秒領域においては、より強力なシードソースが使用可能であり、そのため光ファイバの損傷閾値未満でありながら、より強力なスーパーコンティニュームが得られる。総じてピコ秒システムは、光学研究室外の現実世界での応用に魅力的であることが多い。」 ウ 段落【0009】~【0032】 「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 スーパーコンティニューム光源の平均的な出力とスペクトル密度、およびスーパーコンティニュームの幅の限界が、非線形光ファイバの損傷閾値である。最大出力またはパルスエネルギーが、バルクガラスもしくはガラスと空気との界面損傷閾値よりも大きい場合、入力の小面または光ファイバの最初の数ミリメートルが潰れることがあり、システムに突発故障を生じる。最大出力またはパルスエネルギーがこの閾値未満である時、非線形の微細構造光ファイバが時間とともに低下し得ることが、本発明者らによって観察された。この低下は通例、時間経過とともに見られる可視出力の低下として観察される。商用アプリケーションにおいて、スーパーコンティニューム光源の寿命は長いことが重要であり、通例このような光ファイバの低下は受け入れ難い。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明の目的は、上記のような低下をなくした、もしくは許容レベルまで抑えた非線形微細構造の光ファイバを提供することにある。 本発明の目的は、添付の特許請求の範囲と以下に記載される発明によって達成される。 【0011】 請求項1に定義する本発明の目的は、コア材からなるコアと、クラッド材からなるクラッドとを含む光ファイバであって、前記光ファイバは、非線形の微小構造光ファイバであり、前記微小構造光ファイバは、水素と重水素のうちの少なくとも一方によって、前記コア材と、任意で前記クラッド材とをロードするロード工程を含む製造方法で得られる光ファイバによって達成される。このような光ファイバは、高い最大出力でパルスを案内する用途において、長寿命に適した特性を有し得る。 【0012】 重水素のロードは、いわゆる水バンド(water-band)による吸収を克服するために、本技術分野において適用されることがある。水バンドとは、海底通信ケーブルなどで見られるように、水素の豊富な環境に光ファイバを置くと増加するものである。この問題は、本明細書で記載する問題とは異なる。このため、一実施形態において、光ファイバは5原子パーセント(at%)未満の、あるいは1at%未満、0.1at%未満、0.01at%未満、または0.001at%未満のH2イオンとH+イオンのうちの少なくとも一方を含有する媒質に置かれる環境に適用される。 …(中略)… 【0021】 好ましい実施形態において、光ファイバはシリカ繊維であり、コアのうちの少なくとも一部はシリカである。好ましくは、少なくともコア全体が、すなわちコア全体およびクラッドの一部もしくは全部がシリカである。微細構造光ファイバは、クラッド内で伸展するホールによって案内されるため、光ファイバは、全体が非ドープのシリカからなる(すなわち、コアとクラッドの両方がシリカからなる)ことが多い。これは、屈折率を変更するために通例ゲルマニウムでコアがドープされている標準のシングルモード通信光ファイバなどとは異なる。このため、一実施形態において、光ファイバのコアはゲルマニウムの含有が10at%以下、あるいは5at%未満、3at%未満、2at%未満、0.1at%未満、0.01at%未満、または0.001at%未満である。 …(中略)… 【0030】 一態様において、本発明は、コア材からなるコアと、クラッド材からなるクラッドとを含む微細構造光ファイバの製造方法であって、前記光ファイバは、高パルスアプリケーションにおいて延長した寿命を有し、前記製造方法は、a)水素と重水素のうちの少なくとも一方によって、前記コア材と、任意で前記クラッド材とをロードするロード工程と、b)温度Tannealで時間tannealの間、任意でアニールする工程とを含む製造方法に関する。 【0031】 このような製造方法は、本発明の光ファイバの製造に有利に適用してもよい。また、光ファイバの特性に関して記載された特性は、変更すべきところは変更して、光ファイバの製造方法に適用してもよい。 【0032】 一実施形態において、前記ロード工程は、水素と重水素のうちの少なくとも一方を前記コア材と前記クラッド材のうちの少なくとも一方に化学的に結合させるように、ロード条件下で前記光ファイバの材料を、水素と重水素のうちの少なくとも一方に適切に置くことによって行われ、前記ロード条件は、好ましくはa)上昇した温度T、b上昇した圧力P、c)その後に行われる照射のうち少なくとも一つを含む。」 エ 段落【0042】~【0057】 「【発明を実施するための形態】 …(中略)… 【0042】 一実施形態において、非線形微細構造の光ファイバは50m以下、あるいは30m以下、または10m以下である。 図1は、従来型微細構造光ファイバの初期動作時(A)と、その35動作時間後(B)とに見られる一般的なスーパーコンティニュームスペクトルを示す。約450nm~約750nmのスペクトル可視部分に見られる減少は、光ファイバの劣化を示している。この減少は、図2に示す実験で更に詳細に調べられた。図2は、光ファイバの位置を関数として、従来型非線形光ファイバの35動作時間後の減衰を示す。非線形光ファイバ(NL光ファイバ)の最初の3mでAは測定され、Bは3m~4mで、Cは4m~5mで、Dは5m~7mで測定された。この曲線は、長さ7mの参照用非線形光ファイバを差し引くことによって得られた。光ファイバが劣化するため、スペクトル可視部分において非常に大きな吸収が観察された。また、900nmと1400nmにおける下降は、非線形光ファイバのシングルモードのカットオフと、非線形光ファイバと参照用光ファイバそれぞれのO-H最大吸収の差とによるものと考えられる。出力が比較的高いポンプパルスとの相互関係によって劣化が生じるという仮定を裏付けるには、ポンプに一層近い位置で吸収されることが求められる。この傾向は、ポンプからの距離が一層遠い部位で採取した光ファイバ部分ほど吸収が落ちることから明らかである。またこの傾向は、指数への一致が見られた部分からの距離を関数として、633nmにおける吸収の測定を示す図3からも明らかである。 【図1】 [図:0001437670000003.jpg] 【図2】 [図:0001437670000004.jpg] 【図3】 [図:0001437670000005.jpg] 【0043】 図4は、実験初期(A)、視認できる下降が観察された35時間後(B)、および250°Cまで光ファイバを再度加熱した後(C)のスーパーコンティニュームを示す。加熱によって光ファイバは部分的に再生されると思われる。本発明者らは、光ファイバの再生が、ガラスの少なくとも一部の構造を変えるポンプパルスの指標となり得ると仮定した。ガラスが高温になるのを可能にすることによって、ガラスは再び定状態となることができ、光ファイバは少なくとも部分的に再生される。 【図4】 [図:0001437670000006.jpg] 【0044】 図5は、視認できる下降が観察された35時間後、250°Cまで光ファイバを加熱した後、および重水素を光ファイバにロードし、その後アニールした後のスーパーコンティニュームスペクトルを示す。重水素をロードすることによって、明らかに光ファイバは再生された。スペクトルには視認できる下降がなく、初期のスペクトル(図4を参照)と類似したものだった。 【図5】 [図:0001437670000007.jpg] 【0045】 本実施形態において、光ファイバには重水素をロードすることが好ましい。これは、1400nm付近で吸収が最大になると知られているO-H結合をなす光ファイバにおいて、水素と酸素が結合可能であるためである。このような吸収は、本実施形態には好ましくない。しかし、このような吸収が有意でない場合もしくは好ましい場合、特に水素が重水素より安価である場合の用途には好ましい。 【0046】 図6は、互いに異なる条件下で重水素をロードした結果を示す。互いに異なる条件で重水素をロードした3つの同質非線形光ファイバについて、時間を関数として可視出力を測定した。重水素をロードした光ファイバの寿命は、ロードしなかった光ファイバに比べて大幅に延長した。すべての光ファイバに対し、約100%の重水素を圧力100バール(1バール=100000Pa)でロードした。光ファイバへのロードは、ある長さの時間、特定温度で高い部分圧力を有する重水素または水素に光ファイバを置くことによって行われることが好ましい。 【0047】 図6は、160°Cで重水素をロードした場合(A)、80°Cで重水素をロードした場合(B)、および重水素をロードしなかった場合(C)の3つの同質非線形光ファイバについて、時間を関数として測定した可視出力を示す。重水素をロードした光ファイバの寿命は、ロードしなかった光ファイバに比べて、少なくとも2倍増幅した。すべての光ファイバに対し、約100%の重水素を圧力100バールでロードした。 【図6】 [図:0001437670000008.jpg] 【0048】 図7は、図6に示した寿命を、重水素をロードする3つの互いに異なる温度(A)と、測定への指数一致(B)とを関数として示す。この例において、寿命は可視における光の出力が30%減少した場合に定義したものである。用途によっては、可視における光吸収の減少が40%を超える場合、あるいは50%、70%、80%、または90%を超える場合に定義してもよい。可視光は500nm~700nmの範囲の光の整数値として定義してもよい。あるいは一つまたは複数の波長値を、650nmおよび/または633nmにおける吸収として指定してもよい。温度を関数としてロードした水素を測定した結果、ロード温度とともに指数関数的に寿命が増加することがはっきり示された。このような温度依存に基づき、光ファイバの寿命増加は材料(この場合、シリカガラス)への重水素結合によること、また、これを生じさせるのに必要な活性化エネルギーを供給する役割を温度が担っていることが推測される。あるいはこのような化学工程が誘発される場合、十分に高い圧力が発生し得る。最後に、材料への重水素の拡散と同時にもしくは拡散後に行われる照射による活性化も、重水素結合を可能にすると推測される。このため、好ましい実施形態において、光ファイバへのロードは、水素および/または重水素を前記光ファイバ材料のコア材とクラッド材のうちの少なくとも一方へ化学的に結合させるのに適切なロード条件下で、光ファイバを水素および/または重水素に置くことによって行われる。このロード条件とは、a)上昇した温度T、b)上昇した圧力P、および/またはc)その後に行われる照射のうち少なくとも一つを含むことが望ましい。これによって一実施形態において、ロードした材料は0.1原子パーセント(at%)を超える、あるいは1%、5%、10%、20%、または50%を超える結合水素および/もしくは結合重水素を含むように、光ファイバは増量の水素および/または重水素を含む。 【図7】 [図:0001437670000009.jpg] …(中略)… 【0052】 上記の照射は、大きな活性化エネルギーを与えるのに適切な照射であれば、原理上どんな照射であってもよい。好ましい実施形態において、スーパーコンティニューム発生に適切なパルス(たとえば「発明の概要」に記載のパルス)は、光ファイバにおける水素結合または重水素結合に適用される。一実施形態において、使用前に残存する未結合水素または未結合重水素が光ファイバから拡散するのを抑えるために、ロードと、任意で行われるアニールとの後、光ファイバは冷却される。光ファイバは、使用前の保管時、または保管期間のうちの少なくとも一部で冷却されることが好ましい。一度使用されると、スーパーコンティニューム光発生において光ファイバをポンプ注入することによって、残存する水素または重水素のうちの少なくとも一部を結合させるのに十分なエネルギーが与えられると推測される。 【0053】 原理上、光ファイバ形成工程のどの時点において材料をロードしてもよいと推測される。しかし、最終的に延長された光ファイバの寿命は、ロード後の各工程によっては影響されないように考慮する必要がある。このため、一実施形態において、コア材と、任意でクラッド材とのロードは、光ファイバ形成前、光ファイバ形成時、または形成後に行われる。また、図5に示すように、一実施形態において、ロードが使用後に行われるように、光ファイバは少なくとも部分的に再生されてもよい。 【0054】 上記の水バンドは幾つかの用途には不利になり得る。このため、一実施形態において、ロード後の光ファイバが、結合水素(および/または相応するイオン)に対して結合重水素を(原子で)1%以上、あるいは10%以上、100%以上、または10000%以上含むように、できるだけ少量の水素を光ファイバにロードすることが好ましい。 【0055】 重水素または水素のロード後、光ファイバ内の未結合重水素または未結合水素の拡散を高めるために、光ファイバをアニールすることが好ましい。光ファイバのアニールは、水素または重水素を再び未結合にするほどのエネルギーは与えないよう、中温で行うことが好ましい。上記に示す各図においては、80°Cでアニールした。室温で光ファイバを保管した場合、2ヶ月~3ヶ月で未結合水素または未結合重水素は外方拡散し得る。アニールによって、光ファイバを他の光ファイバに接合することができる(水素または重水素をプラズマ加熱する。たとえばこの接合は溶融では爆発の可能性がある)。また、これらの分子が原因で、アニールによって付加された感光度が低下する。約1000°Cを超える非常に高いアニール温度は、未結合水素または未結合重水素を外方拡散させることがあるため、通例望ましくない。このため、一実施形態において、光ファイバの製造方法は、ロードする工程の後に、ロードした材料をアニールする工程を含む。 【0056】 図8は、重水素をロードした非線形光ファイバについて、0時間後(A)、188時間後(B)、260時間後(C)、305時間後(D)、および450時間後(E)の測定スペクトルを示す。ロードしていない非線形光ファイバについては、500nm~700nmまでの可視スペクトルにおいて目立った下降が観察されなかった。加えて、非線形光ファイバの寿命を増加させる場合、ロードしていない光ファイバに比べ、重水素をロードすることによって動作時の光ファイバのスペクトル変化が大きく変更することが示された。ロードしていない光ファイバに比べ、劣化は可視スペクトルにおける下降としてではなく、可視出力のなだらかな減少として観察された。短波長の範囲だけが時間とともに大きく変更すると思われる。 【図8】 [図:0001437670000010.jpg] 【0057】 一実施形態において、光ファイバの寿命は、重水素と水素をロードしていない他の同質光ファイバの寿命に比べて50%以上、あるいは100%以上、200%以上、500%以上、1000%以上、または10000%以上延長される。スーパーコンティニューム発生に適切なパルスで処理されていない光ファイバの絶対寿命は、用途や、推測としてだが光ファイバコアの特定の材料によって変わり得る。このため、一実施形態において、寿命は100動作時間を超える。あるいは200動作時間、2000動作時間、20000動作時間、または50000動作時間を超える。」 (2) 引用文献1の記載事項に基づいて当業者が把握できる事項 引用文献1には、光ファイバの寿命が重水素と水素をロードしていない他の光ファイバの寿命と比べて相当程度延長される実施形態(以下「寿命延長実施形態」という。)が記載されているところ(【0057】)、この実施形態では、重水素又は水素(以下「重水素等」という。)を光ファイバにいったんロードした後に、再ロードしないにもかかわらず光ファイバの寿命が延長されるものと解されるのであり、このことは、寿命延長実施形態に対応する実施例と解される図8に係る光ファイバ(【0056】)において、重水素ロード後に再ロードをしていないと解されることからも明らかである。 そこで、再ロードしないにもかかわらず寿命が延長されるメカニズムについて、当業者がどのように理解するかについて検討する。 ア 引用文献1には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 (ア) スーパーコンティニューム光源では、出力が比較的高いポンプパルスを光ファイバに導入すると、光ファイバに劣化が生じること。(【0042】) (イ) 重水素等を光ファイバにロードすると、光ファイバが再生すること。(【0044】、【0045】) (ウ) 重水素等を光ファイバ材料であるシリカガラスに化学的に結合させると、光ファイバの寿命が増加すること。(【0011】、【0032】、【0048】) (エ) 重水素等の光ファイバへのロードは、コア材とクラッド材のうちの少なくとも一方に対して行われること。(【0011】、【0048】) (オ) 光ファイバに重水素等をロードした場合、未結合重水素等が光ファイバ内に残存しているが、室温で光ファイバを保管した場合、2~3ヶ月で未結合重水素等は外方拡散する。(【0052】、【0055】) (カ) スーパーコンティニューム光発生において光ファイバをポンプ注入することによって、残存する重水素等のうちの少なくとも一部を結合させるのに十分なエネルギーが与えられる。(【0052】) イ 次の事項は技術常識であると認められる。 (ア) スーパーコンティニューム光発生用の光ファイバにおいて、ポンプパルスは、コア内に主に存在していること。 (イ) 重水素等は、光ファイバを構成するシリカガラス内を拡散可能であること。 本願明細書(【0048】、【0052】、【0055】)に、シリカガラス内における未結合重水素又は未結合水素が光ファイバを拡散することが記載されるとおりであり、前記ア(オ)で説示した事項も、これが前提となっていることが明らかである。 ウ 前記ア及びイによれば、寿命延長実施形態において、重水素等を光ファイバにいったんロードした後に、再ロードしないにもかかわらず光ファイバの寿命が延長されるメカニズムは、次のとおりであると当業者は理解できると認められる。 重水素等を光ファイバのコア及びクラッドにロードすると、コア及びクラッド内に未結合の重水素等が室温で2~3ヶ月弱は残存する(前記ア(オ)及び同(エ))。光ファイバにポンプパルスを導入すると、主にコアが劣化することになる(前記ア(ア)及びイ(ア))が、その劣化した部分に対して上記の残存する未結合の重水素等が当該部分に化学的に結合する(その結合エネルギーはポンプパルスのエネルギーによってもたらされる)ことによって当該部分が再生する(前記ア(イ)、同(ウ)及び同(カ))。これにより、残存した重水素等が消費されるが、この消費はコア内で主に生じる(前記ア(ア)及びイ(ア))ことから、クラッド内には未結合重水素等が残存し続ける。このようにして残存したクラッド内の未結合重水素等は、コア内に拡散移動する(前記イ(イ))ので、コア内にも未結合重水素等が再び残存することになる。そして、光ファイバ内の未結合の重水素等がなくなるまでの間、上記の再生プロセスが継続する。そのため、光ファイバの寿命が延長される。 エ 寿命延長実施形態における光ファイバは、ロッド状のユニットを積み重ねてプリフォームが形成され、一つまたは複数の工程を経て形成される(【0003】)。 この点、【0003】の記載は、背景技術に係るものであるが、引用文献1に記載された発明は、スーパーコンティニューム光源の寿命を長くすることを課題とする(【0009】)ものであって、プリフォームの形成工程に特徴を有するものではないことから、当業者は、上記の背景技術に係る光ファイバについての記載が寿命延長実施形態にも妥当することを理解できる。 (3) 引用発明の認定 前記(2)において認定した事項及び前記(1)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1の請求項29に記載されたスーパーコンティニューム光源を製造する方法であって、光ファイバが同【0057】の重水素と水素をロードしていない他の同質光ファイバの寿命に比べて寿命が延長された光ファイバである方法について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。 <引用発明> 「パルスポンプ光源と、光ファイバとを含むスーパーコンティニューム光源を製造する方法であって、 前記ポンプ光源は前記光ファイバ内において100W/μm2以上、あるいは500W/μm2以上、1kW/μm2以上、2.5kW/μm2以上、5kW/μm2以上、7.5kW/μm2以上、10kW/μm2以上、15kW/μm2以上、または20kW/μm2以上の最大出力密度でパルスを供給するよう構成されており、(請求項29) 前記光ファイバは、コア材からなるコアと、クラッド材からなるクラッドとを含む光ファイバであって、前記光ファイバは、非線形の微小構造光ファイバであり、前記微小構造光ファイバは、水素と重水素のうちの少なくとも一方によって、前記コア材と、任意で前記クラッド材とをロードするロード工程を含む製造方法によって得られるものであり、(請求項1) 前記光ファイバはシリカ繊維であり、前記コアの少なくとも一部はシリカであり、好ましくは少なくとも前記コア全体が、すなわちコア全体とクラッドの一部もしくは全部がシリカであり、(請求項6) 光ファイバの寿命は、重水素と水素をロードしていない他の同質光ファイバの寿命に比べて50%以上、あるいは100%以上、200%以上、500%以上、1000%以上、または10000%以上延長されるものであり、(【0057】) 微細構造光ファイバは、クラッド内で伸展するホールによって案内されるため、光ファイバは、全体が非ドープのシリカからなり、すなわち、コアとクラッドの両方がシリカからなり、(【0021】) 前記光ファイバは、ロッド状のユニットを積み重ねてプリフォームが形成され、一つまたは複数の工程を経て形成される、(前記(2)エ) 方法。」 5 引用文献9~12の記載事項並びに引用文献9~11技術的事項及び周知技術1、2の認定 (1) 引用文献9~11の記載事項並びに引用文献9~11技術的事項及び周知技術1の認定 ア 引用文献9の記載事項及び引用文献9技術的事項の認定 (ア) 引用文献9の記載事項 当審拒絶理由通知書の拒絶の理由において引用した文献であって、優先日前に発行された引用文献9(特開2004-361526号公報)には、従来技術として次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、光ファイバ及びそれを用いたファイバグレーティングの製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 高エネルギーを有する紫外線を光ファイバで伝送すると、光ファイバ自体による吸収が発生して高い伝送損失が生じる。また、放射線が照射された環境下で光ファイバを使用しても、光ファイバ自体による吸収が発生して伝送する光の損失が生じる。これらに対する対策として、光ファイバに水素を含ませることが既に知られている(特許文献1~7)。 【0003】 光ファイバに水素を含有させる方法として、石英ガラス製の光ファイバを高圧水素雰囲気に保持するというものがある。ところが、水素は石英ガラスに進入しやすい一方、放置しておくと石英ガラス中に拡散した水素がすぐに抜けてしまい、その効果が長続きしない。これに対する対策として、特許文献8には、光ファイバにドープした水素の光ファイバからの逸出を防止または抑制するための手段を設け、それによって光ファイバを長期間にわたる使用に耐え得るものとすることが開示されている。具体的には、光ファイバを冷却して水素が抜けるのを抑制したり、水素散逸防止層をクラッド外周面に設けたりするものである。水素散逸防止層を形成する場合、それは水素ドープ処理前後のいずれであってもよく、また、水素散逸防止層をアルミニウム、クロム、ニッケル、鉛、銀及び金のうち1種又は2種以上の金属薄膜、あるいは、炭素、炭化物、酸窒化物及び窒化物のうち1種又は2種以上のセラミック薄膜、あるいは、厚膜シリカガラス膜とするものである。」 (イ) 引用文献9技術的事項の認定 前記(ア)より、引用文献9には、次の技術的事項(以下「引用文献9技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 <引用文献9技術的事項> 「高エネルギーを有する紫外線を光ファイバで伝送すると、光ファイバ自体による吸収が発生して高い伝送損失が生じ、また、放射線が照射された環境下で光ファイバを使用しても、光ファイバ自体による吸収が発生して伝送する光の損失が生じるので、これらに対する対策として、光ファイバに水素を含ませることが既に知られているところ、(【0002】) 水素は石英ガラスに進入しやすい一方、放置しておくと石英ガラス中に拡散した水素がすぐに抜けてしまい、その効果が長続きしないので、これに対する対策として、水素散逸防止層をクラッド外周面に設けるものであり、 水素散逸防止層を形成する場合、それは水素ドープ処理前後のいずれであってもよく、また、水素散逸防止層をアルミニウム、クロム、ニッケル、鉛、銀及び金のうち1種又は2種以上の金属薄膜、あるいは、炭素、炭化物、酸窒化物及び窒化物のうち1種又は2種以上のセラミック薄膜、あるいは、厚膜シリカガラス膜とすること。(【0003】)」 イ 引用文献10の記載事項及び引用文献10技術的事項の認定 (ア) 引用文献10の記載事項 当審拒絶理由通知書の拒絶の理由において引用した文献であって、優先日前に発行された引用文献10(特開平11-189438号公報)には、次の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、原子力発電所等のように放射線雰囲気と高温雰囲気との下で使用される光ファイバの製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 石英ガラス型の光ファイバは、放射線雰囲気の下に晒されると、屈折率を制御する目的で添加されているGe等のドーパントや光ファイバの製造工程中で除去しきれないで残存するCl等の不純物によって紫外線域及び可視光線域で光学吸収が生ずることが知られている。このような問題を解決するために、光ファイバ中のGe等のドーパントを減らしたり、製造工程中に残存するCl等の不純物を低減して光ファイバのコア部を純粋石英化することが行われている。しかし、これらの方法でも石英ガラスが放射線雰囲気の下で生じる光学吸収欠陥による伝送損失の増加を抑制するのに限界があった。 【0003】 このような欠点を改善するために、光ファイバ中に水素分子を添加し、この水素分子が光ファイバから飛散しないようにカーボンの如きハーメチック性の高い被覆を施して形成された耐放射線光ファイバ(特開平1-241505号公報参照)や水素ガス雰囲気中で光ファイバの上に金属被覆層を施することによって光ファイバ中に水素分子を添加し、その後光ファイバ中の水素分子を熱処理して形成された耐放射線光ファイバ(特願平4-342446号公報参照)が提案されている。 …(中略)… 【0005】 また、水素分子が添加された光ファイバの上に水素分子の飛散を防止するためにカーボン等の耐水素ハーメチック層が被覆されても、通常はハーメチック層上にウレタンアクリレート系樹脂等の生産性の高い材料を被覆するので、光ファイバが高温雰囲気と放射線雰囲気の下で用いられると、ハーメチック層上に設けられているウレタンアクリレート系樹脂等の被覆層が劣化し、それに伴いハーメチック層が部分的に劣化するため、水素分子飛散防止機能を喪失することになる。これを防止するために、このハーメチック層の上にシリコーン樹脂被覆を施しているが(特願平1-241505号公報)、このシリコーン樹脂被覆もウレタンアクリレート系の被覆に比べて耐熱性、耐放射線性に優れているものの、上記の雰囲気の下では徐々に劣化が進行するので、ハーメチック層を充分に保護することができなかった。 …(中略)… 【0010】 本発明の第3の課題解決手段は、水素分子が添加されたガラスファイバとこのガラスファイバから水素分子が飛散するの防止するためにガラスファイバに施された耐水素ハーメチック性の高いカーボン被覆とから成る耐放射線光ファイバを製造する方法であって、光ファイバ用プリフォームを溶融延伸する前又は溶融延伸している間にこのプリフォームに水素分子を拡散させ、このプリフォームを溶融延伸して所定外径のガラスファイバを形成した後であってガラスファイバが冷却される前に更に水素分子を拡散して溶存させ、その後直ちに耐水素ハーメチック性の高いカーボン層を被覆し、更にこのカーボン層の上に耐熱性金属層を被覆したことを特徴とする耐放射線光ファイバの製造方法を提供することにある。」 (イ) 引用文献10技術的事項の認定 前記(ア)より、引用文献10には、次の技術的事項(以下「引用文献10技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 <引用文献10技術的事項> 「光ファイバ中のGe等のドーパントを減らすなどといった方法では石英ガラスが放射線雰囲気の下で生じる光学吸収欠陥による伝送損失の増加を抑制するのに限界があり、(【0002】) このような欠点を改善するために、光ファイバ中に水素分子を添加し、この水素分子が光ファイバから飛散しないようにカーボンの如きハーメチック性の高い被覆を施して形成された耐放射線光ファイバが提案されているが、(【0003】) 通常はハーメチック層上にウレタンアクリレート系樹脂等の生産性の高い材料を被覆するので、光ファイバが高温雰囲気と放射線雰囲気の下で用いられると、ハーメチック層上に設けられているウレタンアクリレート系樹脂等の被覆層が劣化し、それに伴いハーメチック層が部分的に劣化するため、水素分子飛散防止機能を喪失することになり、(【0005】) そこで、光ファイバ用プリフォームを溶融延伸する前又は溶融延伸している間にこのプリフォームに水素分子を拡散させ、このプリフォームを溶融延伸して所定外径のガラスファイバを形成した後であってガラスファイバが冷却される前に更に水素分子を拡散して溶存させ、その後直ちに耐水素ハーメチック性の高いカーボン層を被覆し、更にこのカーボン層の上に耐熱性金属層を被覆した耐放射線光ファイバの製造方法を提供すること。(【0010】)」 ウ 引用文献11の記載事項及び引用文献11技術的事項の認定 (ア) 引用文献11の記載事項 当審拒絶理由通知書の拒絶の理由において引用した文献であって、優先日前に発行された引用文献11(特開平1-241505号公報)には、次の記載がある。 「〔技術分野] 本発明は、放射線環境下で使用される光ファイバに関するものである。(1ページ左欄13~15行)」 「前記原子力発電所で使用される光ファイバの場合、放射線環境下という特殊な環境下で使用される光ファイバも種々ある。一般に耐放射線特性に優れた光ファイバ(以下耐放射線光ファイバという)の場合、そのコア部分は純粋な石英ガラスで形成されているものが多いが、さらにより優れたものとして従来からこのコア部に水素分子を意図的に添加するとよいとの各種報告もなされ、実際にこの種の耐放射線光ファイバが既に市販されている。 ところが従来の耐放射線光ファイバの場合、光ファイバ中に水素分子(H2)をせっかく添加してもその状態を長期間保持することができず、具体的には添加したH2が経時的に光ファイバから逃げ出し、次第に耐放射線特性が劣化してくるという問題があった。(1ページ右欄2~17行)」 「〔発明の目的〕 前記問題に鑑み本発明の目的は、光ファイバ中に添加せしめたH2を長期にわたって保持でき、もって長期間安定した耐放射線特性を維持できる耐放射線光ファイバを提供することにある。 〔発明の構成〕 前記目的を達成すべく本発明の耐放射線光ファイバは、水素添加処理を施された光ファイバと、該光ファイバ上に被覆されてなるハーメチック被覆とを有することを特徴とするものである。(1ページ右欄18行~2ページ左上欄7行)」 「次に前記プリフォームロッドの残りの半分を第1図に示すような装置を用いて前記比較例のものと同じ線引速度、線引張力にて線引を行った。ここで符号3はプリフォームロッドで、これを線引炉4で加熱しながら線引速度30m/minで線引し、外径測定器5でその外径が125μmになっていることを確認しながらパイレックス容器等からなる水素処理装置6に導き、ここで該装置6内にH2を0.1l/min流しながら約1秒間水素添加処理(以下H2処理という)を施し、その内部に前記比較例のものとほぼ同一量の水素を含有せしめた。ここで符号7はH2処理雰囲気温度を制御するための加熱炉であって、前記処理にあたってはこの加熱炉7によりH2処理雰囲気を約400°Cに保持せしめた。続いて光ファイバはハーメチック被覆装置8に導かれる。該装置8内にはCH4を0.1l/min流し、装置8の外周に設けられた加熱炉9により内部雰囲気温度を約1000°Cに保つと、前記CH4は分解され炭素Cが発生し、該炭素Cは前述のごとくH2処理が施された裸の光ファイバ上に蒸着し、ハーメチック被覆10を形成した。この被覆10は非常に緻密で、その厚さは約1000Åであった。しかる後このハーメチック被覆10付の光ファイバは、シリコーン樹脂を塗布する塗布装置11に導かれて樹脂を塗布され、続いて硬化装置12により前記塗布樹脂は架橋されシリコーン樹脂被覆13が形成された。このようにして第2図に示すような耐放射線光ファイバを5km得、これを3等分した。これを本発明の実施例とする。(2頁右上欄15行~右下欄3行)」 「尚、前記本発明の実施例においては、ハーメチック被覆材料として非晶質の炭素Cについてのみ述べたが、他にもシリコンオキシナイトライド、TiC、SiC等が使用でき、これらのうちの少なくとも1つをその組成の中に有しているものであればよい。(3ページ左上欄10~15行)」 (イ) 引用文献11技術的事項の認定 前記(ア)より、引用文献11には、次の技術的事項(以下「引用文献11技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 <引用文献11技術的事項> 「従来の耐放射線光ファイバの場合、光ファイバ中に水素分子(H2)をせっかく添加してもその状態を長時間保持することができず、具体的には添加したH2が経時的に光ファイバから逃げ出し、次第に耐放射線特性が劣化してくるという問題があったところ、(第1頁右下欄第12行~第17行) 光ファイバ中に添加せしめたH2を長期にわたって保持でき、もって長期間安定した耐放射線特性を維持できる耐放射線光ファイバを提供するために、(第1頁右下欄第19行~第2頁左上欄第2行) 耐放射線光ファイバは、水素添加処理を施された光ファイバと、該光ファイバ上に被覆してなるハーメチック層とを有するものであり、(第2頁左上欄第4行~第7行) 耐放射線光ファイバは、水素添加処理を施し、続いて光ファイバはハーメチック被覆装置8に導かれるものであり、(第2頁右上欄第15行~右下欄第2行) ハーメチック被覆材料は非晶質の炭素Cであること。(第3頁左上欄第10行~第11行)」 エ 周知技術1の認定 前記ア~ウに摘記した引用文献9~11の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術(以下「周知技術1」という。)であったと認められる。 <周知技術1> 「光ファイバ中に水素分子(H2)を添加した耐放射線光ファイバにおいて、添加したH2が経時的に光ファイバから逃げ出すことを抑制するために、炭素Cを用いたハーメチック層を光ファイバ上に被覆するものであり、 水素分子(H2)の添加を、前記ハーメチック層を被覆する前に行うこと。」 (2) 引用文献12の記載事項及び周知技術2の認定 ア 引用文献12の記載事項 当審拒絶理由通知書の拒絶の理由において引用した文献であって、優先日前に発行された引用文献12(Supercontinuum generation in photonic crystal fiber)には、次の記載があり図1が示されている。括弧内に示す日本語訳は当合議体において作成した。 「In this section, we review the most important guidance properties of solid core PCF that are relevant to the SC generation process. We begin by showing in Fig.1a segment of the PCF used in the SC generation experiments reported by Ranka et al. (2000a). Figure 1(a) shows an electron micrograph of the full fiber cross section, clearly illustrating the presence of a central microstructure of air holes (black) embedded within a pure silica fiber strand (gray). Figure 1(b) shows a more detailed view of the central microstructure, and Fig. 1(c) presents a schematic representation of an ideal hexagonal structure with perfect regularity, defining the structural parameters Λ (the pitch) and Φ (the hole diameter).(1141ページ右欄21~33行) (このセクションでは、スーパーコンティニューム生成過程に関連する、固体コアフォトニック結晶ファイバの最も重要な導波特性を概観する。まず、Rankaら(2000a)によって報告されたスーパーコンティニューム生成実験で使用されたフォトニック結晶ファイバの一部を図1に示す。図1(a)は、ファイバ横断面全体の電子顕微鏡写真を示しており、純粋なシリカのファイバ(灰色)の中に空気孔(黒)が埋め込まれた中心微細構造が存在することを明確に示している。図1(b)は中心微細構造のより詳細なビューを示し、図1(c)は完全な規則性をもつ理想的な六角構造の模式図を示しており、構造パラメータΛ(ピッチ)およびΦ(孔径)を定義している。 )」 「The fiber consists of a uniform refractive index material in which a microstructure lattice of air holes is embedded that runs along the fiber length. The removal of an air hole in the center introduces a defect associated with a locally elevated refractive index, and guided wave propagation within this elevated-index region occurs through an equivalent total internal reflection process (Birks et al., 1997). (1141ページ右欄35~42行) (ファイバは均一な屈折率材料で構成され、その中にファイバ長に沿って空気孔の微細構造格子が埋め込まれており、中央の空気孔は除去されて局所的に屈折率が上昇する欠陥が導入され、この上昇した屈折率領域内でのガイド波伝搬は、等価的な全内部反射プロセスを通じて発生するものである(Birks ら,1997)。)」 「 [図:0001437670000011.jpg] FIG.1.Photonic crystal fiber structure.(a) Electron micrograph of the PCF used in the original supercontinuum generation experiments of Ranka et al. (2000a).(b) Detail of central microstructure and (c) ideal hexagonal structure defining parameters Λ = 1.6 μm (pitch) and Φ = 1.4 μm (hole diameter).(1142ページ左欄の図1及び図1の脚注) (図1 フォトニッククリスタルファイバ構造。(a)Rankaら(2000a)の初期のスーパーコンティニューム生成実験で使用されたPCFの電子顕微鏡写真。(b)中央部の微細構造の詳細と(c)ピッチΛ=1.6μm及びホール径Φ=1.4μmを定義する理想的な六角構造。)」 イ 引用文献12の図面から読み取れる事項の認定 引用文献12の前記アに摘記した記載を踏まえて1142ページの図1(a)及び図1(c)を参照すると、次の事項(以下「認定事項1」という。)が読み取れる。 (ア) 径方向に並ぶ空気孔の数は10個であること。(図1(a)) (イ) 空気孔が存在する領域の直径は、コア部分及び空気孔10個分のピッチ長さの合計である1.6μm×10=16μmに、端部の二つの空気孔の半径の2倍である1.4μmを加えた17.4μmであること。(前記(ア)、図1の脚注及び図1(c)) (ウ) ファイバの外径が空気孔が存在する領域の直径の少なくとも4倍であること。(図1(a)) ウ 周知技術2の認定 引用文献12はいわゆる総説論文であることを考慮すれば、前記アに摘記した引用文献12の記載事項並びに前記イ(イ)及び(ウ)の認定事項からみて、次の技術事項は、当業者にとって周知技術(以下「周知技術2」という。)であったと認められる。 <周知技術2> 「スーパーコンティニューム生成用のフォトニック結晶ファイバにおいて、 純粋なシリカのファイバの中に空気孔が埋め込まれた中心微細構造が存在しており、 ファイバは均一な屈折率材料で構成され、その中にファイバ長に沿って空気孔の微細構造格子が埋め込まれており、中央の空気孔は除去されて局所的に屈折率が上昇する欠陥が導入され、この上昇した屈折率領域内でのガイド波伝搬は、等価的な全内部反射プロセスを通じて発生するものであり、 空気孔が存在する領域の直径が17.4μm程度であり、ファイバの外径は空気孔が存在する領域の直径の少なくとも4倍であること。」 6 本願発明と引用発明の対比 (1) 対比分析 本願発明と引用発明を対比する。 ア 構成Xの観点(スーパーコンティニューム光源を作製する方法) (ア) 構成Xは、「水素及び重水素のうちの少なくとも一方を添加した微細構造化光ファイバを備えるスーパーコンティニューム光源を作製する方法」の発明であることを特定するものである。 (イ) 引用発明の「微小構造光ファイバ」及び「スーパーコンティニューム光源」は、それぞれ、本願発明の「微細構造化光ファイバ」及び、「スーパーコンティニューム光源」に相当する。そして、引用発明は、「微小構造光ファイバであ[る]」「光ファイバ」「を含むスーパーコンティニューム光源を製造する方法」の発明であるから、引用発明は,本願発明でいう「微細構造化光ファイバを備えるスーパーコンティニューム光源を作製する方法」の発明であるといえる。 (ウ) 引用発明における「微小構造光ファイバ」は、「水素と重水素のうちの少なくとも一方によって、前記コア材と、任意で前記クラッド材とをロードするロード工程を含む製造方法によって得られるもの」であるから、本願発明でいう「水素及び重水素のうちの少なくとも一方を添加した」ものといえる。 (エ) したがって、本願発明と引用発明は、「水素及び重水素のうちの少なくとも一方を添加した微細構造化光ファイバを備えるスーパーコンティニューム光源を作製する方法」の発明である点において一致する。 イ 構成Aの観点(プリフォームを作製する工程) (ア) 構成Aは、「微細構造化光ファイバのコア及びクラッディング領域に対するプリフォーム構造を含むプリフォームを作製する工程」を備えることである。 (イ) 引用発明の「コア」及び「クラッド」は、それぞれ、本願発明の「コア」及び、「クラッディング領域」に相当する。 (ウ) 引用発明の「プリフォーム」は、本願発明の「プリフォーム」に相当するから、引用発明の「ロッド状のユニットを積み重ねてプリフォームが形成され[る]」工程は、本願発明の「プリフォームを作製する工程」に相当する。 (エ) 引用発明は、「前記光ファイバは、ロッド状のユニットを積み重ねてプリフォームが形成され、一つまたは複数の工程を経て形成される」ものであるところ、引用発明において、「微小構造光ファイバであ[る]」「光ファイバ」は、「コア材からなるコアと、クラッド材からなるクラッドとを含む」ものであることからみて、引用発明の「プリフォーム」もまた、「コア材からなるコアと、クラッド材からなるクラッドとを含む」ことが理解される。したがって、引用発明の「プリフォーム」は、本願発明でいう「微細構造化光ファイバのコア及びクラッディング領域に対するプリフォーム構造を含む」ものであるといえる。 (オ) 前記(ウ)及び(エ)をまとめると、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「微細構造化光ファイバのコア及びクラッディング領域に対するプリフォーム構造を含むプリフォームを作製する工程」を備える点。 ウ 構成Bの観点(プリフォームを延伸する工程) (ア) 構成Bは、「前記コア及び前記クラッディング領域を有した前記微細構造化光ファイバを得るために前記プリフォームを延伸する工程であって、少なくとも前記クラッディング領域は前記微細構造化光ファイバの長手方向軸に沿って延びる複数の含有物を備える、前記プリフォームを延伸する工程」を備えることである。 (イ) 引用発明は、「光ファイバは、ロッド状のユニットを積み重ねてプリフォームが形成され、一つまたは複数の工程を経て形成される」ものであるところ、プリフォームから光ファイバを形成するために、プリフォームを延伸することは技術常識であるから、前記「一つまたは複数の工程」は当然にプリフォームを延伸する工程を含むものといえる。 そして、引用発明の「微小構造光ファイバであ[る]」「光ファイバ」は、「コア材からなるコアと、クラッド材からなるクラッドとを含む」ものであることも踏まえると、引用発明は、本願発明でいう「前記コア及び前記クラッディング領域を有した前記微細構造化光ファイバを得るために前記プリフォームを延伸する工程」を備えるといえる。 (ウ) 引用発明は、「微細構造光ファイバは、クラッド内で伸展するホールによって案内される」ものであるから、引用発明の「クラッド」は、本願発明でいう「前記微細構造化光ファイバの長手方向軸に沿って延びる」「含有物」を備えるものといえる。 ここで、引用発明において「ホール」が単数であるのか複数であるのか明示的に特定されていないが、「微細構造光ファイバは、クラッド内で伸展するホールによって案内される」ものであり、「ホール」による「案内」の機能を実現するために「ホール」を複数形成することは、技術常識である。 (エ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「前記コア及び前記クラッディング領域を有した前記微細構造化光ファイバを得るために前記プリフォームを延伸する工程であって、少なくとも前記クラッディング領域は前記微細構造化光ファイバの長手方向軸に沿って延びる複数の含有物を備える、前記プリフォームを延伸する工程」を備える点。 エ 構成Cの観点(コーティングを設ける工程) (ア) 構成Cは、「前記クラッディング領域の周りにコーティングを設ける工程であって、前記コーティングは前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方に対して温度Th以下の温度で気密性を有し、Thは少なくとも約50℃であり、前記コーティングは炭素コーティングからなる、前記クラッディング領域の周りにコーティングを設ける工程」を備えることである。 (イ) 引用発明は、クラッドの周りにコーティングを設ける工程を含んでいないから、本願発明と引用発明は、次の点で相違する。 本願発明においては、 「前記クラッディング領域の周りにコーティングを設ける工程であって、前記コーティングは前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方に対して温度Th以下の温度で気密性を有し、Thは少なくとも約50℃であり、前記コーティングは炭素コーティングからなる、前記クラッディング領域の周りにコーティングを設ける工程」を備えるのに対して、 引用発明においては、 クラッドの周りにコーティングを設ける工程を備えていない点。 オ 構成Dの観点(添加を生じさせる工程) (ア) 構成Dは、「前記微細構造化光ファイバへの前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方の添加を生じさせる工程であって、前記コーティングを設ける前に前記微細構造化光ファイバを前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方にさらすことからなる、前記微細構造化光ファイバへの前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方の添加を生じさせる工程」を備えることである。 (イ) 引用発明は、「微小構造光ファイバは、水素と重水素のうちの少なくとも一方によって、前記コア材と、任意で前記クラッド材とをロードするロード工程を含む製造方法によって得られる」ものであるところ、当該「ロード工程」は、本願発明における「前記微細構造化光ファイバへの水素及び重水素のうちの少なくとも一方の添加を生じさせる工程」に相当する。 そして、「水素と重水素のうちの少なくとも一方によって、前記コア材と、任意で前記クラッド材とをロードするロード工程」が、本願発明でいう「前記微細構造化光ファイバを前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方にさらすことからなる」工程であることは明らかである。 (ウ) そうすると、本願発明と引用発明の構成Dの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。 a 構成Dの観点における一致点 「前記微細構造化光ファイバへの前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方の添加を生じさせる工程であって、」「前記微細構造化光ファイバを前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方にさらすことからなる、前記微細構造化光ファイバへの前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方の添加を生じさせる工程」を備える点。 b 構成Dの観点における相違点 「前記微細構造化光ファイバを前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方にさらすこと」が、 本願発明においては、 「前記コーティングを設ける前に」さらすのに対して、 引用発明においては、 クラッドの周りにコーティングを設ける工程を備えていない点。 カ 構成Eの観点(光学的に結合する工程) (ア) 構成Eは、「前記微細構造化光ファイバの気密性を有する前記コーティングを通した前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方の透過が1日当たり1%未満である前記スーパーコンティニューム光源を与えるために、前記微細構造化光ファイバに光を与えるように、前記微細構造化光ファイバの入射端をポンプ・レーザに光学的に結合する工程」を備えることである。 (イ) 引用発明は、「ポンプ光源は前記光ファイバ内において100W/μm2以上、あるいは500W/μm2以上、1kW/μm2以上、2.5kW/μm2以上、5kW/μm2以上、7.5kW/μm2以上、10kW/μm2以上、15kW/μm2以上、または20kW/μm2以上の最大出力密度でパルスを供給するよう構成されて[いる]」ものであるところ、引用発明を開示する引用文献1の【0006】に背景技術に係る次の記載があるように、スーパーコンティニューム発生のポンプ光源としてレーザ光源を用いることは技術常識である。 「【0006】 現在までのほとんどの研究は、非線形光ファイバをフェムト秒(fs)レーザでシードすることを基に行われてきたが、ナノ秒レーザやピコ秒(ps)レーザを用いたスーパーコンティニューム発生も実証されてきた。…(後略)」 そうすると、引用発明における「パルスポンプ光源」は、その出力密度及び技術常識からみて、レーザ光源であると理解でき、本願発明の「ポンプレーザ」に相当する。 (ウ) 引用発明は「パルスポンプ光源と、光ファイバとを含むスーパーコンティニューム光源を製造する方法」であるから、引用発明における「ポンプ光源」が「微小構造光ファイバであ[る]」「光ファイバ内に」「パルスを供給する」ことは、本願発明における「前記スーパーコンティニューム光源を与えるために、前記微細構造化光ファイバに光を与える」ことに相当する。 (エ) ここで、引用発明において、「光ファイバ内に」「パルスを供給する」際には、「光ファイバ」の入射端を「パルスポンプ光源」に光学的に結合させることは明らかであるから、引用発明は、本願発明でいう「前記微細構造化光ファイバの入射端をポンプ・レーザに光学的に結合する工程」を備えるものであるといえる。 (オ) そうすると、本願発明と引用発明の構成Eの観点にける一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。 a 構成Eの観点における一致点 「前記スーパーコンティニューム光源を与えるために、前記微細構造化光ファイバに光を与えるように、前記微細構造化光ファイバの入射端をポンプ・レーザに光学的に結合する工程」を備える点。 b 構成Eの観点における相違点 「前記スーパーコンティニューム光源」が、 本願発明においては、 「前記微細構造化光ファイバの気密性を有する前記コーティングを通した前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方の透過が1日当たり1%未満である」のに対して、 引用発明においては、 クラッドの周りにコーティングを設ける工程を備えておらず、水素及び重水素の透過の程度は不明である点。 キ 構成Fの観点(リザーバの形成) (ア) 構成Fは、「前記クラッディング領域は内側クラッディング領域と外側クラッディング領域からなり、前記内側クラッディング領域は前記含有物を含んでなり、前記内側クラッディング領域の最も外側の含有物と前記コーティングとの間の径方向距離は少なくとも10μmであり、前記内側クラッディング領域と前記コーティングの間の材料がシリカを含むとともに、水素及び重水素のうちの少なくとも一方のリザーバを形成する」ことである。 (イ) 引用発明は、「微細構造光ファイバは、クラッド内で伸展するホールによって案内されるため、光ファイバは、全体が非ドープのシリカからなり、すなわち、コアとクラッドの両方がシリカからな[る]」ものであるが、引用発明において、「クラッド」が「内側クラッディング領域と外側クラッディング領域からな[る]」ものであるか不明であり、引用発明は、クラッドの周りにコーティングを設ける工程を含んでいない。 (ウ) そうすると、本願発明と引用発明は構成Fの観点において、次の点で相違する。 本願発明においては、 「前記クラッディング領域は内側クラッディング領域と外側クラッディング領域からなり、前記内側クラッディング領域は前記含有物を含んでなり、前記内側クラッディング領域の最も外側の含有物と前記コーティングとの間の径方向距離は少なくとも10μmであり、前記内側クラッディング領域と前記コーティングの間の材料がシリカを含むとともに、水素及び重水素のうちの少なくとも一方のリザーバを形成する」のに対して、 引用発明においては、 「微細構造光ファイバは、クラッド内で伸展するホールによって案内されるため、光ファイバは、全体が非ドープのシリカからなり、すなわち、コアとクラッドの両方がシリカからな[る]」が、 クラッドが内側クラッディング領域と外側クラッディング領域からなるものであるか不明であり、 クラッドの周りにコーティングを設ける工程を備えていない点。 (2) 一致点及び相違点 前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次のアに示す一致点において一致し、後記イに示す相違点において相違すると認められる。 ア 一致点 「水素及び重水素のうちの少なくとも一方を添加した微細構造化光ファイバを備えるスーパーコンティニューム光源を作製する方法において、 前記微細構造化光ファイバのコア及びクラッディング領域に対するプリフォーム構造を含むプリフォームを作製する工程と、 前記コア及び前記クラッディング領域を有した前記微細構造化光ファイバを得るために前記プリフォームを延伸する工程であって、少なくとも前記クラッディング領域は前記微細構造化光ファイバの長手方向軸に沿って延びる複数の含有物を備える、前記プリフォームを延伸する工程と、 前記微細構造化光ファイバへの前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方の添加を生じさせる工程であって、前記微細構造化光ファイバを前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方にさらすことからなる、前記微細構造化光ファイバへの前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方の添加を生じさせる工程と、 前記スーパーコンティニューム光源を与えるために、前記微細構造化光ファイバに光を与えるように、前記微細構造化光ファイバの入射端をポンプ・レーザに光学的に結合する工程と、を備える、 方法。」である点。 イ 相違点 (ア) 相違点1 本願発明においては、 「前記クラッディング領域の周りにコーティングを設ける工程であって、前記コーティングは前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方に対して温度Th以下の温度で気密性を有し、Thは少なくとも約50℃であり、前記コーティングは炭素コーティングからなる、前記クラッディング領域の周りにコーティングを設ける工程」を備えるのに対し、 引用発明においては、 クラッドの周りにコーティングを設ける工程を備えていない点。 (イ) 相違点2 「前記微細構造化光ファイバを前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方にさらすこと」が、 本願発明においては、 「前記コーティングを設ける前に」さらすのに対し、 引用発明においては、 前記相違点1のとおり、クラッドの回りにコーティングを設ける工程を備えていない点。 (ウ) 相違点3 「前記スーパーコンティニューム光源」が、 本願発明においては、 「前記微細構造化光ファイバの気密性を有する前記コーティングを通した前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方の透過が1日当たり1%未満である」であるのに対して、 引用発明においては、 前記相違点1のとおり、クラッドの回りにコーティングを設ける工程を備えておらず、水素及び重水素の透過の程度は不明である点。 (エ) 相違点4 本願発明においては、 「前記クラッディング領域は内側クラッディング領域と外側クラッディング領域からなり、前記内側クラッディング領域の最も外側の含有物と前記コーティングとの間の径方向距離は少なくとも10μmであり、前記内側クラッディング領域と前記コーティングの間の材料がシリカを含むとともに、水素及び重水素のうちの少なくとも一方のリザーバを形成する」のに対し、 引用発明においては、 「微細構造光ファイバは、クラッド内で伸展するホールによって案内されるため、光ファイバは、全体が非ドープのシリカからなり、すなわち、コアとクラッドの両方がシリカからな[る]」が、 クラッドが内側クラッディング領域と外側クラッディング領域からなるものであるか不明であり、 前記相違点1のとおり、クラッドの回りにコーティングを設ける工程を備えていない点。 7 判断 (1) 相違点の判断 相違点1~4をまとめて判断する。 ア 検討の仕方について 引用発明から出発した当業者が相違点1~4に係る本願発明の構成に至るためには、 (i)「伸展するホール」を内部に有する「クラッド」の外周に、「炭素コーティング」(前記コーティングは前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方に対して温度Th以下の温度で気密性を有し、Thは少なくとも約50℃であるものである。)を設ける工程を備えること(相違点1関係)、 (ii)水素と重水素のうちの少なくとも一方による「ロード」を、上記(i)の「炭素コーティング」を設ける前に行うこと(相違点2関係)、 (iii)上記(i)の「炭素コーティング」を通した「前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方の透過が1日当たり1%未満」とすること(相違点3関係)、 (iv)「伸展するホール」を内部に有する「クラッド」を、「ホール」を含む内側領域と、それとは別の外側領域から構成し、内側領域と外側領域の材料をいずれも「シリカ」を含むものとすること(相違点4の一部関係)、 (v)上記(iv)において、最も外側の「ホール」と外側領域の外周との間の径方向距離を「少なくとも10μm」とすること(相違点4の一部関係)、 (vi)上記(iv)において、内側領域と外側領域の外周との間の材料を、「水素及び重水素のうちの少なくとも一方のリザーバ」とすること(相違点4の一部関係)、 とすれば足りる。 イ (i)、(ii)及び(iii)について (ア) まず、引用発明が、重水素等を光ファイバにいったんロードした後に、再ロードしないにもかかわらず光ファイバの寿命が延長されるメカニズムは、前記4(2)ウで説示したとおりであって、要するに、重水素等を光ファイバのコア及びクラッドにロードした後にコア及びクラッド内に未結合の重水素等が残存しており、この残存した未結合の重水素等がクラッド内からコア内に少しずつ拡散移動することを通じて、当該重水素等が少しずつ消費されるというものである。 そして、引用発明を開示する引用文献1の【0052】には、「一実施形態において、使用前に残存する未結合水素または未結合重水素が光ファイバから拡散するのを抑えるために、ロードと、任意で行われるアニールとの後、光ファイバは冷却される。」と記載されていることから、引用発明から出発した当業者は、コア及びクラッド内に残存した未結合の重水素等を光ファイバの外部に拡散するのを抑制しようとする動機をもつといえる。この点、上記の記載では、拡散を抑制するためにロード後に光ファイバを冷却するという手段が開示されていることになるが、同一の課題を解決するために異なる解決手段を採用することは当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないことから、引用文献1に上記の手段が開示されることをもって、当業者が他の手段を採用することはないとすることはできない。 (イ) しかるに、「光ファイバ中に水素分子(H2)を添加した耐放射線光ファイバにおいて、添加したH2が経時的に光ファイバから逃げ出すことを抑制するために、炭素Cを用いたハーメチック層を光ファイバ上に被覆するものであり、水素分子(H2)の添加を、前記ハーメチック層を被覆する前に行うこと」は、周知技術(周知技術1)であるし、これらは、それぞれ、引用文献9~11技術的事項のとおり、公知技術である。これらの技術的事項は、耐放射線光ファイバに係るものではあるが、そのメカニズムに照らせば、前記(ア)で説示したコア及びクラッド内に残存した未結合の重水素等を外部に拡散するのを抑制しようとするという課題をも解決できることを、当業者は認識できるといえる。 そうすると、引用発明から出発した当業者が上記課題を解決するために、周知技術1、引用文献9技術的事項、引用文献10技術的事項又は引用文献11技術的事項のいずれかを採用することは当業者が容易に想到し得たことであり、そのように構成したことにより、当業者は、(i)のうち、「伸展するホール」を内部に有する「クラッド」の外周に「炭素コーティング」を設けるという構成と(ii)の構成に至る。 そして、(i)のうち「前記コーティングは前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方に対して温度Th以下の温度で気密性を有し、Thは少なくとも約50℃であるものである」ことについては、上記構成が「炭素コーティング」をハーメチック層として用いるものとなることから、当然に満たしているといえるし、仮にそうとまではいえないとしても、当該「炭素コーティング」の厚さ等を調整してそれを結果的に満たした構成を得ることは当業者が適宜設計し得たことである。 さらに、(iii)の「炭素コーティング」を「前記水素及び重水素のうちの少なくとも一方の透過が1日当たり1%未満」とすることについては、前記(ア)で説示したコア及びクラッド内に残存した未結合の重水素等を外部に拡散するのを抑制しようとするという課題を解決するために、当該「炭素コーティング」における水素及び重水素の透過をより小さくすべきことは当業者に明らかであり、引用文献1の【0057】に例示された光ファイバの寿命が100~50000動作時間であることを鑑みると、当該「透過」が「1日当たり1%未満」となるように「炭素コーティング」を構成することは、当業者であれば適宜なし得たことである。 ウ (iv)及び(v)について 次に、引用発明から出発した当業者は、「クラッド内で伸展するホールによって案内され」「全体が非ドープのシリカからなり、すなわち、コアとクラッドの両方がシリカからな[る]」光ファイバを具体化する必要があるところ、「スーパーコンティニューム生成用のフォトニック結晶ファイバ」において、「空気孔が存在する領域の直径が17.4μm程度であり、ファイバの外径は空気孔が存在する領域の直径の少なくとも4倍である」構造は周知技術(周知技術2)である。 そうすると、上記当業者は、引用発明の「伸展するホール」を内部に有する「クラッド」を周知技術2のように適宜構成するといえる。そして、そのようにして得られた構成では、「クラッド」がシリカで構成された上で、「クラッド」のうち「ホール」が存在する領域の直径が17.4μm程度であり、「光ファイバ」の外径、すなわち、「クラッド」の外径が少なくとも69.6μm程度であるところ、当該「クラッド」のうち「ホール」が存在する領域が本願発明の「内側クラッディング領域」に相当し、その余の領域が本願発明の「外側クラッディング領域」に相当することになり、このとき、最も外側の「ホール」と外側領域の外周との間の径方向距離は、少なくとも(69.6μm-17.4μm)/2=26.1μmとなる。そのため、当業者は、(iv)及び(v)の構成に至ったことになる。 エ (vi)について 前記イ及びウによれば、引用発明から出発した当業者は、光ファイバの構造として、「クラッド」がシリカで構成された上で、当該「クラッド」の外周に炭素コーティングを設け、最も外側の「ホール」と外側領域の外周(すなわち、炭素コーティング)との間の径方向距離が少なくとも26.1μmである構成に至り、その光ファイバには、水素と重水素のうちの少なくとも一方がロードされているところ、このような構成においては、次のとおり、(vi)が当然に満たされているといえる。 (ア) まず、本願発明の「水素及び重水素の少なくとも一方のリザーバ」とは、「リザーバ」という用語は一般に「貯蔵器」を意味することからみて、水素及び重水素の少なくとも一方の貯蔵器を意味するものと理解できる。この理解は、本願明細書の【0039】の「このリザーバは、水素及び/又は重水素がコア内で消費されるにつれて、徐々にコアへ拡散することができ、それによってコア内で比較的安定した十分な水素及び/又は重水素濃度を維持することができる」との記載にも沿うものである。一方で、本願発明ではリザーバが水素及び重水素の少なくとも一方を貯蔵する程度については特定されておらず、当該程度は本願明細書の記載を参酌しても明らかではない。 (イ) また、本願発明における「リザーバ」の具体的な構成についてみても、「内側クラッディング領域と前記コーティングの間の材料」であり「シリカを含む」ものであることが特定されるにとどまり、当該「間」に位置する外側クラッディング領域が、含有物を含むのか(【図3】)、含まないのか(【図2】)、含有物を含む(【図3】)場合に、内側クラッディング領域と外側クラッディング領域の境界がどのように定義されるのか、外側クラッディング領域の含有物は内側クラッディング領域と比較して含有物がどのように異なるのか、いずれも特定されていない。この結果、本願発明においては、「リザーバ」として機能する「前記内側クラッディング領域と前記コーティングの間の材料」、すなわち、「外側クラッディング領域」の水素及び重水素濃度を貯蔵する能力は、必ずしも「内側クラッディグ領域」と比較して優れていることが担保されてはいないと理解されるから、本願発明における「リザーバ」とは、その程度に関わらず、水素及び重水素の少なくとも一方の貯蔵器として機能すれば足りると解するのが相当である。 (ウ) 以上より、本願発明における「リザーバ」は、「内側クラッディング領域と前記コーティングの間」の「シリカ」を含む材料から形成され、その程度に関わらず水素及び重水素の少なくとも一方を貯蔵することができるものとしか評価できず、引用発明が、「前記微小構造光ファイバは、水素と重水素のうちの少なくとも一方によって、前記コア材と、任意で前記クラッド材とをロードする」ものであり、「コア全体とクラッドの一部もしくは全部がシリカ」であることとともに、前記4(2)イ(イ)で認定した「重水素等は、光ファイバを構成するシリカガラス内を拡散可能であること」との技術常識にも照らせば、内側領域と外側領域の外周との間の材料であるシリカが、水素及び重水素のうちの少なくとも一方のリザーバとして機能することは、(i)~(v)の構成に至れば、物理的に必然的に生じることになり、この結果、当業者は(vi)の構成にも至ることとなる。 オ 本願発明の効果について 本願発明の効果は、本願発明の構成が奏するものとして、引用発明、引用文献9~11技術的事項及び周知技術1、2に基づいて、当業者が予測し得たものであるし、格別顕著なものともいえない。 この点、本願明細書の【0039】には、内側クラッディング領域の最も外側の含有物と主コーティングとの間に比較的大きい径方向距離を有することによって、水素及び/又は重水素のためのリザーバを大きい面積で形成することができる旨記載されており、これに関連して本願発明では、「前記内側クラッディング領域の最も外側の含有物と前記コーティングとの間の径方向距離は少なくとも10μmであ[る]」ことが特定されている。しかしながら、この径方向距離は周知技術2を踏まえればごくありふれたものにすぎないし、この数値限定が何らかの臨界的意義をもつものではないことや、本願発明における「リザーバ」は、前記エ(イ)で説示したとおり、その程度に関わらず水素及び重水素の少なくとも一方を貯蔵することができるものであることを意味するにとどまることに照らせば、少なくとも格別顕著な効果とはいえない。 さらにいえば、上記のリザーバを大きい面積で形成することができるという効果は、当業者が予測可能なものでもある。すなわち、前記4(2)ウで説示したところの重水素等を光ファイバにいったんロードした後に、再ロードしないにもかかわらず光ファイバの寿命が延長されるメカニズムに照らせば、クラッド内に未結合重水素等が残存し続けることが寿命が延長される要因となっていることを当業者は認識できるから、相違点1~4に係る本願発明の構成に至った当業者であれば、「炭素コーティング」から「コア」の外周までの距離が大きくなれば寿命がより延長されることを予測可能である。そして、「炭素コーティング」から「コア」の外周までの距離が大きくなれば、通常は、本願発明で特定された「前記内側クラッディング領域の最も外側の含有物と前記コーティングとの間の径方向距離」も大きくなるのであり、このことは、「ホール」が存在する領域(本願発明の「内側クラッディング領域」に相当。)の径の大きさが、技術常識に照らせば、光をコア内に閉じ込めるといった観点から定まることからみて明らかである。そうすると、本願発明で特定された「前記内側クラッディング領域の最も外側の含有物と前記コーティングとの間の径方向距離」を大きくすれば寿命が大きくなることは、当業者にとって予測可能であるといえる。 (2) 総合評価 前記(1)において検討したとおり、本願発明は、引用発明、引用文献9~11技術的事項及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 そして、相違点1~4を総合的に勘案しても、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本願発明は、引用発明、引用文献9~11技術的事項及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 8 請求人の主張について (1) 請求人の主張内容 請求人は、令和7年9月25日提出の意見書において次の事項を主張している。 ア 主張1 本願発明は全体として検討されなければならず、相違点1~4の特徴が「協働」することにより、水素及び/又は重水素の大きなリザーバを維持してスーパーコンティニューム生成用ファイバの寿命を延長させるのに対して、引用文献には、本願発明の複数の特徴についての特定の組み合わせを提供して、本願発明の効果を奏するようにする動機付けが存在しないこと。 イ 主張2 相違点1及び2について、本願発明は未結合の水素及び/または重水素のファイバ外への拡散を抑制するだけでなく、コア内への水素の補充を行うためのリザーバを形成するものであること、引用文献1には「ロードと、任意で行われるアニールとの後、光ファイバは冷却される」との教示があり、未結合の水素及び/又は重水素の外部拡散を抑制する目的で、炭素コーティングを設けるようには動機付けられなかったであろうこと、炭素コーティングについての引用文献9~11は、スーパーコンティニューム光源における微細構造化光ファイバの寿命を延ばすことに関連せず、水素及び/又は重水素のリザーバを形成するという解決手段への示唆を提供するものではないこと。 ウ 主張3 相違点1及び2について、引用文献9には、「水素ドープ処理後に水素散逸防止層を設ける方法では、被覆されていない裸光ファイバの状態で取り扱われて水素ドープ処理が施されるので、その過程で裸光ファイバに傷が入って、裸光ファイバの機械的強度を低下させてしまうことがある。」と記載され、本願発明の、コーティングの適用前にファイバを水素及び/または重水素でロードすることの阻害要因になること。 エ 主張4 相違点4について、引用文献12はコーティングを含むファイバを開示しておらず、本願発明の「前記内側クラッディング領域の最も外側の含有物と前記コーティングとの間の径方向距離は少なくとも10μmであり」という特徴を開示しているといえないこと。 オ 主張5 相違点4について、引用発明に周知技術2(引用文献12)を適用する根拠が示されず、両者はいずれも、コアに補充を行うための水素及び/または重水素のリザーバを形成するという解決手段や、この効果を奏する構成について何らの示唆もしないこと。 カ 主張6 本願発明は個々の特徴が組み合わされて相乗効果を奏するものであるのに対して、引用文献はいずれも、コアに補充を行うための水素及び/又は重水素のリザーバを形成するという解決手段や、この効果を奏する本願発明において特定される特徴についての特定の組み合わせについて、何らの示唆も提供していないこと。 (2) 請求人の主張についての検討 当該主張については次のとおり判断する。いずれの主張も前記7の判断を左右するものではない。 ア 主張1について 相違点1~4を総合的に勘案しても、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできないことは、前記7(2)及び同(1)オにおいて説示したとおりである。 イ 主張2について リザーバがコア内への水素の補充を行うためのものであることについては、前記4(2)ウで説示したメカニズムに照らせば、前記7(1)において説示した当業者が容易になし得た構成が当然に奏する作用にすぎない。 また、同一の課題を解決するために異なる解決手段を採用することは当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないことから、引用文献1に上記の手段が開示されることをもって、当業者が他の手段を採用することはないとすることはできないことは、前記7(1)イにおいて説示したとおりであり、当業者は、同一の課題を解決するために異なる解決手段を採用するという、いわゆる作用の共通性という動機付けを有する。 ウ 主張3について 請求人が引用文献9の記載として引用しているのは【0004】の前半部分における記載であるが、【0004】の後半部分には、水素散逸防止層を設けた後に水素ドープ処理を行う方法にも問題があることが記載されているのであるから、その一方の記載のみを取り上げて阻害要因とする当該主張は失当である。また、引用文献10~11技術事項や周知技術1も考慮すれば、請求人の主張の当否は結論に影響するものではない。 エ 主張4について 引用発明において、炭素コーティングを設けること、及び、最も外側の「ホール」と外側領域の外周との間の径方向距離を少なくとも26.1μmとすることは、当業者が容易に想到し得たことであることは前記7(1)イ及びウで説示したとおりであり、この結果、当業者は、最も外側の「ホール」と炭素コーティングとの間の径方向距離が少なくとも26.1μmである構成に至ることとなることは、前記7(1)エで説示したとおりである。 オ 主張5について 引用発明において、当業者はホールの構成を具体化する必要があるところ、周知技術2に見られるようにごくありふれた構成を採用することに困難性はない。また、リザーバがコアに水素及び/又は重水素の補充を行うためのものであることについては、前記イで説示したとおりである。 カ 主張6について 請求人の主張する相乗効果、すなわち、コアに補充を行うための水素及び/又は重水素のリザーバを形成するという効果が、当業者が想到し得た構成に必然的に伴うものであり、その程度が、当業者が予測し得たものであって格別顕著なものといえないことは、前記7(1)イ~オ及び前記イにおいて説示したとおりである。 9 むすび 以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-000361

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