2023-700362
コンクリート舗装用のメッシュを製造及び設置する方法
- 審判番号
- 2023-700362
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-203658外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7174504
- 請求日
- 2023年04月11日
- 審決日
- 2024年08月22日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.121-YAA(B21F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 26項目
第1 手続の経緯
折りたたみ中(クリックで表示)
1 特許掲載公報の発行までの経緯
特許第7174504号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成27年10月15日の出願であって、令和4年11月9日にその特許権の設定登録がされ、同月17日に特許掲載公報が発行された。
2 特許異議の申立て以降の経緯
本件特許についての特許異議の申立て以降の主な経緯は、次のとおりである。
(1)令和5年4月10日(受理日:同月11日)
特許異議申立人 望月 泰宏(以下「申立人」という。)による、本件特許の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立て(申立てのために提出された特許異議申立書を、以下単に「申立書」という。)
(2)令和5年9月29日付け(発送日:同年10月4日)
取消理由通知書による取消理由の通知
(3)令和5年12月1日(受理日:同月4日)
特許権者 株式会社藤崎商会(以下単に「特許権者」という。)による、意見書の提出
(4)令和6年3月21日付け(発送日:同月27日)
取消理由通知書<決定の予告>(以下「決定の予告」という。)による取消理由の通知
(5)令和6年5月24日
特許権者による、訂正の請求(請求された訂正を以下「本件訂正」といい、本件訂正の請求のために提出された訂正請求書を以下単に「訂正請求書」という。)、及び意見書の提出
(6)令和6年6月4日付け(発送日:同月6日)
訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)
(7)令和6年7月4日(受理日:同月5日)
申立人による、意見書(以下「申立人意見書」という。)の提出
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容について
特許権者は、本件訂正の請求により、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるところ、本件訂正の内容は、以下のとおりである(訂正箇所に下線を付して示す。)。
<訂正事項1>
特許請求の範囲の請求項1に、
「縦筋送り手段と、横筋供給手段と、溶接手段とを有する金網溶接装置」
と記載されているのを、
「縦筋送り手段と、横筋供給手段と、溶接手段とを有し、前記縦筋送り手段が、走行レールに沿って移動する平面視略直角三角形状の引出台車から構成され、前記引出台車の上流側に向いた斜辺部分には、長さの等しい複数のチャックアームが上流側に突出するように設けられており、前記チャックアームの先端を前記溶接手段から出てきたメッシュの横筋に引っ掛けた状態で前記引出台車を下流側に移動させることにより、横筋に溶接された縦筋を上流側から下流側に向けて搬送する金網溶接装置」
に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
<訂正事項1>
(1)訂正の目的について
訂正事項1は、縦筋送り手段と、横筋供給手段と、溶接手段とを有する金網溶接装置における縦筋送り手段が、「走行レールに沿って移動する平面視略直角三角形状の引出台車から構成され、前記引出台車の上流側に向いた斜辺部分には、長さの等しい複数のチャックアームが上流側に突出するように設けられており、前記チャックアームの先端を前記溶接手段から出てきたメッシュの横筋に引っ掛けた状態で前記引出台車を下流側に移動させることにより、横筋に溶接された縦筋を上流側から下流側に向けて搬送する」ものであると、その構造及び機能を限定して特定するものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(2)新規事項の有無について
本件明細書の段落【0029】~【0031】、図7~8には、金網溶接装置における縦筋送り手段に関して、次のとおり記載されている。
「【0029】(縦筋送り手段)次に、図7及び図8を参照して、縦筋送り手段を構成する引出台車10について詳細に説明する。図7は引出台車10を示す平面図であり、図8は引出台車10のチャックアーム11を示す拡大側面図である。なお、図7及び図8では、溶接機30から出てきたメッシュ1を記載している。【0030】引出台車10は、平面視略直角三角形状の台車であり、左右(図7における上下)に設置された走行レール12,12に沿って移動するようになっている。引出台車10の上流側に向いた斜辺部分には、複数(本実施形態では6本)のチャックアーム11が上流側に突出するように設けられている。複数のチャックアーム11の長さは等しく、その先端を結ぶと引出台車10の斜辺部分と平行になる。【0031】チャックアーム11の先端は鉤状に形成されており、チャックアーム11の先端を溶接機30から出てきたメッシュ1の横筋3に引っ掛けた状態で引出台車10を下流側に移動させることにより、横筋3に溶接された縦筋2を上流側から下流側に向けて搬送するようになっている。なお、引出台車10の移動は、縦筋をピッチ搬送するように制御される。」
「【図7】[図:0001416439000001.jpg]」
「【図8】[図:0001416439000002.jpg]」
訂正事項1は、段落【0029】~【0031】の記載及び【図7】~【図8】に図示された内容に基づくものであることは明らかであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
(3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、上記(1)のとおり、本件訂正前の請求項1において特定されていた金網溶接装置を具体的に限定するように訂正するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(4)独立特許要件について
本件特許は、請求項1のみであり、本件特許異議の申立ては、その請求項1を対象としているので、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 小括
上記2のとおり、訂正事項1に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められることから、本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】複数本の縦筋が道路の進行方向に平行に配置され、複数本の横筋が道路の進行方向に対して斜めに配置されて、舗装道路における被舗装面にコンクリート舗装用鉄筋として敷設されるコンクリート舗装用のメッシュを製造及び設置する方法であって、縦筋送り手段と、横筋供給手段と、溶接手段とを有し、前記縦筋送り手段が、走行レールに沿って移動する平面視略直角三角形状の引出台車から構成され、前記引出台車の上流側に向いた斜辺部分には、長さの等しい複数のチャックアームが上流側に突出するように設けられており、前記チャックアームの先端を前記溶接手段から出てきたメッシュの横筋に引っ掛けた状態で前記引出台車を下流側に移動させることにより、横筋に溶接された縦筋を上流側から下流側に向けて搬送する金網溶接装置を用いて、前記縦筋送り手段により所定間隔で縦筋をピッチ搬送し、ピッチ搬送される縦筋に対して前記横筋供給手段により所定間隔で横筋を前記縦筋に対して斜めに供給し、前記溶接手段により前記横筋を前記縦筋の上側に前記縦筋に対して斜めに溶接して前記メッシュを製造し、横筋が縦筋の下側になった状態に前記メッシュを裏返して被舗装面に設置することを特徴とするコンクリート舗装用のメッシュを製造及び設置する方法。」
第4 申立人が主張する申立ての理由の概要
折りたたみ中(クリックで表示)
1 申立書における申立ての理由について
申立人による申立ての理由は、以下のとおりである。
<申立ての理由>
進歩性(特許法第29条第2項、同法第113条第2号)について
本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 証拠方法
申立人による証拠方法は、書証として提出された、申立書に添付した甲第1号証~甲第4号証である。
(1)甲第1号証:「舗装設計便覧」、社団法人日本道路協会、平成18年2月24日、初版第1刷、p.200~203
(2)甲第2号証:特開2013-244532号公報
(3)甲第3号証:特開2005-290662号公報
(4)甲第4号証:特開2000-317560号公報
(「甲第1号証」~「甲第4号証」を、以下それぞれ「甲1」等という。)
第5 取消理由の概要
決定の予告における、本件訂正前の請求項1に係る特許に対する取消理由の要旨は、以下のとおりである。
(進歩性)本件特許の請求項1に係る発明は、甲2に記載された発明並びに甲1及び甲4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第6 決定の予告における取消理由について
本件訂正後の本件発明について、決定の予告にて示した取消理由を解消しているかについて、以下判断する。
1 本件発明の認定
本件発明は、上記第3の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
2 甲2に記載された発明の認定
(1)甲2には、次の記載がある(なお、下線は当審において付した、以下同様。)。
(ア)技術分野
「【0001】この発明は、たとえばコンクリート舗装路や、建築物のコンクリートスラブなどの補強材として使用される鉄筋網を能率よく製造するための鉄筋網の製造装置における横筋供給装置に関する。」
(イ)発明を実施するための形態
「【0018】以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。【0019】鉄筋網の製造装置における横筋供給装置は、横筋W1、W1・・・を1本ずつ搬入するチェーンコンベヤ10と、ガイド材21、保持部材30、規制材22とを主要部材としてなる(図1、図2)。続きを表示(全24行)【0020】ガイド材21は、チェーンコンベヤ10の前端に斜め下向きに固定されている。また、保持部材30は、縦筋W2用のガイド41とともにスポット溶接機50用の図示しないフレームに組み付けられている。スポット溶接機50は、固定の下側の電極51、昇降可能な上側の電極52を一直線状に対向させており、規制材22は、上側の電極52用のホルダ52aに対して下向きに組み付けられている。なお、スポット溶接機50は、図1の紙面に垂直方向、図2の左右方向に配設する図示しない共通の水平レール上に複数組が位置決め自在に搭載されている。また、チェーンコンベヤ10は、たとえば4組が共通の駆動軸を介して水平方向に位置決め自在に配備されており、それぞれ適切な間隔に配置する2組のスポット溶接機50、50の中間に位置するように配置して使用する。【0021】スポット溶接機50の下側の電極51は、ホルダ51aを介して上向きに支持されている。また、上側の電極52は、ホルダ52aを介して下向きに支持されており、ホルダ52aは、昇降用のシリンダ52bに連結されている。なお、ホルダ51a、52aには、溶接電流を通電させるために図示しない可撓性ケーブルが接続されており、電極51、52を水冷するために図示しない冷却水ホースが連結されている。そこで、スポット溶接機50は、シリンダ52bを介して上側の電極52を下側の電極51上に下降させて溶接電流を通電させることにより、電極51、52間に位置決めされている横筋W1、縦筋W2の交差部位をスポット溶接することができる。【0022】なお、横筋W1は、互いに同期して駆動するチェーンコンベヤ10、10・・・を介して複数のスポット溶接機50、50・・・の各電極51、52間に1本ずつ共通に搬入される。また、縦筋W2、W2・・・は、図示しない共通の搬送装置を介し、各スポット溶接機50ごとに、ガイド41のガイド溝41aに挿入してガイドしながら、下側の電極51の直近上方位置を前方に向けて1ピッチずつ一斉に搬送される(図1の矢印K1方向)。【0023】チェーンコンベヤ10は、搬送用のチェーン11を前後のスプロケット12、12に巻き掛けて構成されている(図1、図3)。なお、チェーン11には、横筋W1を載せて搬送するフック状のアタッチメント11a、11a・・・が等ピッチに付設されており、前後のスプロケット12、12は、支持板13の前後両端部に装着されている。ただし、図1、図3には、斜め下向きの支持板13の前端のスプロケット12のみが図示されており、前端のスプロケット12は、チェーン11の張力調整のために、支持板13の長孔13aの範囲に移動させることができる。そこで、チェーンコンベヤ10、10・・・は、共通の駆動軸を介して前端のスプロケット12、12・・・を回転駆動することにより、アタッチメント11a、11a・・・上の横筋W1、W1・・・を1本ずつ搬送することができる(図1、図3の各矢印K2方向)。・・・【0030】かかる鉄筋網の製造装置における横筋供給装置の作動は、たとえば図5のとおりである。【0031】いま、図3のように、スポット溶接機50の上側の電極52が上昇しており、チェーンコンベヤ10は、アタッチメント11aを介して横筋W1を前端に位置させて停止しており、スポット溶接機50の電極51、52間には、停止中の縦筋W2上に溶接済みの横筋W1が存在せず、保持部材30に保持されている横筋W1のみが存在するものとする(図5の時刻t<to 、以下、単に(t<to )のように記す)。【0032】そこで、スポット溶接機50の上側の電極52を下降させ(t=to )、保持部材30に保持中の横筋W1を押し下げて縦筋W2上に溶接するとともに、チェーンコンベヤ10を駆動すると、チェーンコンベヤ10の前端に位置していた横筋W1がガイド材21上に移載されて、電極52とともに下降している規制材22によってガイド材21上に拘束されて待機させられる(t=to +Ta (ただし、Ta は、僅かの時間遅れ))。その後、チェーンコンベヤ10の1ピッチ分の駆動時間T1 が経過すると(t=to +T1 )、次の横筋W1がチェーンコンベヤ10の前端に位置するから、チェーンコンベヤ10を停止させる。【0033】つづいて、スポット溶接機50の溶接時間T2 >T1 が経過すると(t=t1 =to +T2 )、溶接電流を停止して上側の電極52を上昇させるともに、縦筋W2を1ピッチ分搬送する。このとき、電極52の上昇に伴って規制材22も上昇するため、ガイド材21上に待機中の横筋W1が保持部材30に向けて転落し、保持部材30によって保持される。そこで、縦筋W2の1ピッチ分の搬送時間T3 が経過すると(t=t2 =t1 +T3 )、元の時刻t<to の状態に復帰するので、僅かの余裕時間Td の後に次の動作サイクルを再開し(t=t3 =t2 +Td )、以下同様の動作を繰り返せばよい。・・・【0035】スポット溶接機50、50・・・に対するチェーンコンベヤ10、10・・・の組合せ形態の一例を図6に示す。各スポット溶接機50に対応する縦筋W2、W2・・・をピッチp2ごとに配列し、これら縦筋W2、W2・・・を矢印A方向にピッチp1ずつ一斉に間欠搬送するとともに、チェーンコンベヤ10、10・・・を介してスポット溶接機50、50・・・に対して矢印B方向に横筋W1、W1・・・を順に1本ずつ搬入して縦筋W2、W2・・・上にスポット溶接することにより、網目サイズp1×p2の鉄筋網Nを矢印C方向に連続的に形成して排出することができる。ただし、チェーンコンベヤ10、10・・・の各アタッチメント11a、11a・・・には、図示しない横筋供給装置により横筋W1、W1・・・を順に1本ずつ供給するものとする。」
(ウ)図面
「【図1】[図:0001416439000003.jpg]【図2】[図:0001416439000004.jpg]続きを表示(全12行)【図3】[図:0001416439000005.jpg]・・・【図5】[図:0001416439000006.jpg]【図6】[図:0001416439000007.jpg]」
(2)甲2発明
上記(1)から、甲2に記載された事項を総合して、本件発明に合わせて整理すると、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている、といえる。
「複数本の縦筋W2、W2・・・が平行に配置され、複数本の横筋W1、W1・・・が配置されて、コンクリート舗装路の補強材として使用される鉄筋網Nを製造する方法であって、搬送装置と、横筋供給装置と、スポット溶接機50とを有する鉄筋網Nの製造装置を用いて、前記搬送装置によりピッチp2の間隔で配列した複数本の縦筋W2、W2・・・をピッチp1ずつ一斉に間欠搬送し、間欠搬送される縦筋W2、W2・・・に対して前記横筋供給手段によりピッチp1の間隔で横筋W1、W1・・・を前記縦筋W2、W2・・・に対して供給し、前記スポット溶接機50により前記横筋W1、W1を前記縦筋W2、W2・・・の上側に前記縦筋W2、W2・・・に対して溶接して網目サイズp1×p2の前記鉄筋網Nを製造する方法。」
3 甲1に記載された周知技術及び発明の認定
(1)甲1には、次の記載がある(なお、甲1にて使用される丸付き数字は、(1)等、半角両括弧と下線を付した半角数字で示す。)。
ア 6-4-2 連続鉄筋コンクリート版の構造細目 (1)鉄筋(200~202ページ)
「(1) 連続鉄筋コンクリート版の縦方向鉄筋および横方向鉄筋は,版に発生するひび割れへの影響,および施工性等を考慮して適切に決定する。鉄筋は縦方向鉄筋が上側になるように配置し,その設置位置はコンクリート版表面から版厚の1/3程度とする。(2) 連続鉄筋コンクリート版の縦方向鉄筋は、横方向ひび割れの開きを拘束する重要な役割を果たし、鉄筋量が少ないほどひび割れの開きが大きくなる傾向がある。・・・・・・(3) 縦方向鉄筋および横方向鉄筋の径と間隔の例を表-6.4.3に示す。・・・(5) 横方向鉄筋は,縦方向鉄筋に対して斜角(60度程度)として,発生する横ひび割れが横方向鉄筋に重ならないようにすることもある。・・・(7) 鉄筋は、図-6.4.8に示すように,路盤上で組み立てる場合と鉄筋鉄網として用いる場合とがある。いずれの場合も鉄筋の重ね合わせの長さは,縦・横鉄筋とも直径の25倍程度とし,溶接または鉄線で要所を結束する。・・・」
イ 表-6.4.3(201ページ)
「[図:0001416439000008.jpg]」
ウ 図-6.4.8の(a)、(b)(201ページ)
「[図:0001416439000009.jpg]・・・[図:0001416439000010.jpg]」
(2)上記(1)から、甲1には次のことが開示されているといえる。
ア 上記(1)アの(1)、(2)、(5)及び(7)の記載、並びに、上記(1)イ及びウに示された内容を踏まえると、甲1には、「コンクリート舗装用の鉄筋鉄網の縦方向鉄筋は、横方向ひび割れの開きを拘束するよう道路進行方向に平行に配置されており、横方向鉄筋は、道路進行方向に対して直交又は斜角に配置されていること。」が開示されている、といえる。
イ 上記(1)アの(3)及び(7)の記載、並びに、上記(1)イ及びウに示された内容を踏まえると、甲1には、「コンクリート舗装用の鉄筋鉄網は、比較的狭い所定間隔(8~15cm)で複数配置された比較的大径(直径13~16mm)の縦方向鉄筋を長辺とし、比較的広い所定間隔(30~60cm)で複数配置された比較的小径(直径10~13mm)の横方向鉄筋を短辺とし、溶接により結束して製造されること。」が開示されている、といえる。
(3)甲1周知技術1~3
甲1の発行日及び文献の性質を踏まえれば、上記(1)及び(2)を総合して導出される次のア~ウの点は、本件特許の出願前において、道路舗装関連業界における周知技術であった、ということができる。
ア 甲1周知技術1
「コンクリート舗装用の鉄筋鉄網は、複数本の縦方向鉄筋が道路の進行方向に平行に配置され、複数本の横方向鉄筋が道路の進行方向に対して斜角(60度程度)に配置される場合があること。」
イ 甲1周知技術2
「コンクリート舗装用の鉄筋は、予め鉄筋鉄網として製造したものを用いる場合があり、比較的狭い所定間隔で複数配置された比較的大径の縦方向鉄筋を長辺とし、比較的広い所定間隔で複数配置された比較的小径の横方向鉄筋を短辺とし、溶接により結束して製造されること。」
ウ 甲1周知技術3
「コンクリート舗装用の鉄筋鉄網は、縦方向鉄筋が横方向鉄筋の上側になった状態で設置されること。」
(4)甲1発明
また、上記(1)~(3)から、甲1に記載された事項を総合して、本件発明に合わせて整理すると、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている、といえる。
「複数本の縦方向鉄筋が道路の進行方向に平行に配置され、複数本の横方向鉄筋が道路の進行方向に対して斜角に配置されて、舗装道路における被舗装面にコンクリート舗装用鉄筋として敷設されるコンクリート舗装用の鉄筋鉄網を製造及び設置する方法であって、複数本の前記横方向鉄筋を複数本の前記縦方向鉄筋に対して斜角をなすように溶接により結束して、比較的狭い所定間隔で複数配置された比較的大径の縦方向鉄筋を長辺とし、比較的広い所定間隔で複数配置された比較的小径の横方向鉄筋を短辺とした前記鉄筋鉄網を製造し、横筋が縦筋の下側になった状態で被舗装面に設置する、コンクリート舗装用の鉄筋鉄網を製造及び設置する方法。」
4 甲4に記載された技術的事項の認定
(1)甲4には、次の記載がある。
ア 特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】 並列配置された複数の縦線を縦線方向に任意の移動ピッチで移動させる縦線移動手段と、前記縦線に対して交差するように横線を支持する横線支持手段と、前記横線支持手段による横線の支持方向と同方向に配列され、前記縦線と前記横線との交点をそれぞれ溶接する複数の電極を備えた溶接手段と、前記横線支持手段および前記溶接手段を支持し、これら手段を回動させることによって、前記横線の支持方向および前記電極の配列方向を前記縦線方向に対して任意の交差角度に変更可能な回動支持手段とを有することを特徴とする溶接金網製造装置。」
イ 発明の属する技術分野及び従来の技術
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、縦線と横線とが所望の角度で交差された溶接金網を製造する金網製造装置に関するものである。【0002】【従来の技術】溶接金網は、金属製の線材を縦線および横線とし、各交点を溶接により接合して組み上げたものであり、この溶接金網をフェンスとして使用する場合には、通行人の錯覚防止や美観の観点から、縦線が鉛直方向であると共に横線が道路に対して平行であることが望ましい。従って、平坦な道路に敷設されるフェンスには、縦線と横線とを直交させた溶接金網が用いられ、傾斜した道路に敷設されるフェンスには、縦線と横線とを道路の傾斜角度に応じた角度で交差させた溶接金網が用いられる。」
ウ 発明の実施の形態
「【0015】【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図1ないし図10に基づいて以下に説明する。本実施の形態に係る溶接金網製造装置は、図1(a)・(b)に示すように、金属製の線材からなる複数の縦線1を送給する縦線送給部2と、送給された縦線1に対して任意の交差角度で横線3をセットして両線1・3の交点を溶接する溶接部4と、溶接部4に対して横線3を供給する横線供給部5と、横線3が接合された縦線1を任意の寸法単位で引き出し可能な引出し部6と、完成された溶接金網を外部に搬出する搬出部7とを備えている。【0016】上記の縦線送給部2は、縦線方向(縦線1の進行方向)に進退移動可能に設けられた送給台車8と、送給台車8に設けられた送給装置9とを有している。送給装置9は、複数の縦線1を任意の間隔で並列配置しながら保持する保持機構10と、保持機構10を移動させることにより複数の縦線1を同時に溶接部4に送出する送出機構11とを有している。【0017】上記の溶接部4は、基台14と、基台14の中心部に固設された回動支持装置13と、回動支持装置13により水平方向に回動自在に支持された支持枠体15と、この支持枠体15に支持された溶接機構12とを有している。支持枠体15は、図2に示すように、横設フレーム15aと縦設フレーム15bとで長方形状の四辺を有するように形成されており、支持枠体15の下面中心部には、上述の回動支持装置13の回動ロッド13aが接続されている。続きを表示(全14行)・・・【0028】上述の縦線位置決め機構60等は、図1(a)・(b)に示すように、溶接部4に備えられている。溶接部4の下流側の上段部には、横線供給部5が配置されている。横線供給部5は、横線3を図7(b)の傾斜部52a・53a間に誘導する横線案内機構55と、縦線1(当審注:「横線3」の明らかな誤記と認める。)を横線案内機構55に送り出す横線供給装置56と、作業架台57とを有している。横線供給部5の下流側には、引出し部6が配置されている。引出し部6は、溶接金網製造装置の幅方向の両端部に平行配置された一対の走行レール81と、これらの走行レール81上を移動する移動台車82と、移動台車82に設けられた複数の引出装置83とを有している。【0029】上記の引出装置83は、図10(a)・(b)に示すように、移動台車82に設けられた支持台84と、支持台84に設けられ、長手方向が縦線方向に一致された長尺状の引出部材85と、引出部材85の先端部に設けられ、横線3を把持可能なチャック機構86とを有している。支持台84は、移動台車82に対して横線方向(縦線方向に対して直交する方向)の任意の位置に固定可能にされており、引出部材85は、支持台84に対して縦線方向の任意の位置に固定可能にされている。そして、このように構成された引出装置83は、図1(a)・(b)に示すように、移動台車82に対して各引出部材85の横線方向および縦線方向の位置をそれぞれ調整することによって、所定角度で供給された横線3をチャック機構86で保持し、横線3と縦線1とが溶接されたときに、移動台車82を移動させて横線3と共に縦線1を引き出すようになっている。・・・【0031】上記の構成において、溶接金網製造装置の動作について説明する。先ず、横線3が縦線1に対して所望の角度で交差するように、溶接部4の溶接機構12を設定する。即ち、図2に示すように、ナット21を緩めることによって、固定ボルト19による突設板18とレール部材20との締結を解除し、支持枠体15を回動自在な状態にする。この後、図3に示すように、支持枠体15を回動させながら、レール部材20の側面に設けられた第1目盛板22を視認し、支持枠体15が第1目盛板22の所望の角度位置に到達したときに、支持枠体15の回動を停止する。そして、ナット21を締めることによって、固定ボルト19により突設板18とレール部材20とを締結し、支持枠体15を基台14に固定する。これにより、図7(b)に示すように、支持枠体15と共に横線支持機構51が回動することによって、横線支持機構51に横線3が供給されて支持されると、横線3が支持枠体15の回動角度(所望の交差角度)でもって縦線1に対して交差した状態となる。・・・【0034】次に、図1(a)に示すように、横線供給部5において、横線案内機構55に横線3を投入し、横線案内機構55を介して溶接部4に横線3を供給する。溶接部4に供給された横線3は、図7(a)・(b)に示すように、上述の支持枠体15と共に横線支持機構51が回動されているため、横線支持機構51により横線3が供給されて支持されると、上側電極28と下側電極30との間において、横線3が支持枠体15の回動角度(所望の交差角度)でもって縦線1に対して交差した状態となる。そして、このようにして縦線1上への横線3のセットが完了すると、図6(a)・(b)に示すように、昇降シリンダ29により昇降支持部材25を下降させ、昇降支持部材25と共に上側電極28を下降させることによって、上側電極28と下側電極30とで縦線1および横線3の交点を挟み込む。これにより、溶接電源32からの溶接電流が電極28・30間の縦線1および横線3を流れることによって、両線1・3の交点が溶接される。【0035】上記のようにして溶接が完了すると、図9(a)・(b)に示すように、縦線位置決め機構60の当接部材61を回動させ、縦線1の進行径路上から退避させる。そして、図1(a)・(b)に示すように、引出装置83の載置台82を溶接部4の近傍位置まで移動させた後、移動台車82の引出部材85を縦線方向および横線方向に調整しながら、図10(a)・(b)に示すように、引出部材85の先端部に設けられたチャック機構86により横線3を保持する。この後、移動台車82を後退させることによって、横線3と共に縦線11を溶接部4の下流側に引き出す。尚、図7(b)に示すように、横線3の引き出し方向には、横線3を支持する横線支持機構51の第2支持板53が存在しているが、第2支持板53は、引き出される横線3により図示実線の姿勢から図示二点鎖線の姿勢に変化するため、横線3の引き出しの障害となることはない。【0036】この後、図1(a)・(b)に示すように、引出装置83により横線3および縦線1を所定の移動ピッチ分引き出した後、上述の横線3の供給操作および溶接操作を行うことによって、次の横線3を縦線1に溶接する。そして、このような横線3の引き出し操作、供給操作および溶接操作を繰り返することによって、所定本数の横線3を縦線1に溶接することにより溶接金網を完成し、搬出部7を介して装置外部に搬出する。【0037】以上のように、本実施形態の溶接金網製造装置は、図1(a)・(b)に示すように、並列配置された複数の縦線1を縦線方向に任意の移動ピッチで移動させる縦線移動手段(縦線送給部2、引出し部6)と、縦線1に対して交差するように横線3を支持する横線支持手段(図7(a)・(b)の横線支持機構51)と、横線支持手段による横線3の支持方向と同方向に配列され、縦線1と横線3との交点をそれぞれ溶接する複数の電極28・30を備えた溶接手段(溶接機構12)と、横線支持手段および溶接手段を支持し、これら手段を回動させることによって、横線3の支持方向および電極28・30の配列方向を縦線方向に対して任意の交差角度に変更可能な回動支持手段(支持枠体15、回動支持装置13等)とを有した構成にされている。」
エ 発明の効果
「【0045】【発明の効果】請求項1の発明は、並列配置された複数の縦線を縦線方向に任意の移動ピッチで移動させる縦線移動手段と、前記縦線に対して交差するように横線を支持する横線支持手段と、前記横線支持手段による横線の支持方向と同方向に配列され、前記縦線と前記横線との交点をそれぞれ溶接する複数の電極を備えた溶接手段と、前記横線支持手段および前記溶接手段を支持し、これら手段を回動させることによって、前記横線の支持方向および前記電極の配列方向を前記縦線方向に対して任意の交差角度に変更可能な回動支持手段とを有する構成である。【0046】上記の構成によれば、回動支持手段により横線支持手段および溶接手段を回動させることによって、横線支持手段における横線の支持方向と、溶接手段における電極の配列方向とを縦線方向に対して任意の交差角度に変更することができる。従って、これらの支持方向および配列方向と縦線方向とを所望の交差角度に設定すれば、この所望の交差角度でもって横線を縦線に溶接して溶接金網とすることができる。そして、交差角度を維持しながら縦線と横線との溶接を行うと、この交差角度の溶接金網を大量に製造することができる。これにより、異なる交差角度の溶接金網を1台の溶接金網製造装置でそれぞれ大量に製造することができるため、従来のように交差角度ごとに製造装置を導入する場合よりも溶接金網の製造コストを低減することができる。」
キ 図面
「【図1】[図:0001416439000011.jpg]【図6】[図:0001416439000012.jpg]【図10】[図:0001416439000013.jpg]」
(2)甲4記載の技術的事項
上記(1)を総合すると、甲4には、以下の技術的事項(以下「甲4記載の技術的事項」という。)が記載されている、といえる。
「縦線送給部2及び引き出し部6と、横線供給部5と、溶接機構12とを有し、前記引き出し部6が、一対の走行レール81に沿って移動する支持台84が設けられた移動台車82を有し、前記移動台車82の支持台84の上流側に向いた部分には、縦線方向の任意の位置に固定可能な複数の引出部材85が上流側に突出するように設けられており、前記引出部材85の先端部に設けられたチャック機構86により前記溶接機構12から出てきた溶接金網の横線3を保持した状態で前記移動台車82を下流側に移動させることにより、横線3に溶接された縦線1を上流側から下流側に向けて搬送する溶接金網製造装置を用いて、前記引き出し部6により任意の移動ピッチで縦線1を移動し、任意の移動ピッチで移動される縦線1に対して前記横線供給部5により所定間隔で横線3を前記縦線1に対して斜めに供給し、前記溶接機構12により前記横線3を前記縦線1の上側に前記縦線1に対して斜めに溶接して溶接金網を製造すること。」
5 甲3に記載された技術的事項の認定
(1)甲3には、次の記載がある。
「【0011】図1に示す実施形態の道路舗装用鉄筋金網は、一定寸法(例えば定尺)の鉄筋を縦筋として利用し、多数の縦筋1,1を、隣接するものどうしで長手方向に一定の突出寸法Yだけ交互にずらせて一定の間隔P1で平行に配置し、縦筋1,1に対して一定角度、例えば60度あるいは45度傾斜する方向に、一定の間隔P2で多数の横筋2,2を配置する。そして縦筋1,1と横筋2,2の交点を溶接することによって、全長L、全幅Wの一枚の道路舗装用鉄筋金網を完成させることができる。」
(2)上記(1)からみて、甲3には、以下の技術的事項(以下「甲3記載の技術的事項」という。)が記載されている、といえる(申立書8ページ)。
「溶接手段により横筋を縦筋に対して斜めに溶接して道路舗装用鉄筋金網を製造すること。」
6 本件発明と甲2発明との対比
本件発明と甲2発明とを対比すると、甲2発明における「コンクリート舗装路」は、その構造・機能等を踏まえると、本件発明における「舗装道路」に相当し、以下同様に、「コンクリート舗装路の補強材として使用される鉄筋網」は「被舗装面にコンクリート舗装用鉄筋として敷設されるコンクリート舗装用のメッシュ」に、「スポット溶接機50」は「溶接手段」に、「鉄筋網Nの製造装置」は「金網溶接装置」に、それぞれ相当する。
また、甲2発明における「縦筋W2」は、金網溶接装置(鉄筋網Nの製造装置)を用いた製造工程における「縦筋」である限りにおいて、本件発明における「縦筋」に相当し、以下同様に製造工程の限りにおいて、「横筋W1」は「横筋」に、「搬送装置」は「縦筋送り手段」に、「横筋供給装置」は「横筋供給手段」に、「(縦筋W2の)間欠搬送」は「(縦筋の)ピッチ搬送」に、「ピッチp2の間隔」は複数本の縦筋(縦筋W2)同士の「所定間隔」に、「ピッチp1の間隔」は複数本の横筋(横筋W1)同士の「所定間隔」に、それぞれ相当する。
すると、本件発明と甲2発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点1~3で相違する。
<一致点>
「複数本の縦筋が配置され、複数本の横筋が配置されて、舗装道路における被舗装面にコンクリート舗装用鉄筋として敷設されるコンクリート舗装用のメッシュを製造する方法であって、縦筋送り手段と、横筋供給手段と、溶接手段とを有する金網溶接装置を用いて、前記縦筋送り手段により所定間隔で縦筋をピッチ搬送し、ピッチ搬送される縦筋に対して前記横筋供給手段により所定間隔で横筋を前記縦筋に対して供給し、前記溶接手段により前記横筋を前記縦筋の上側に前記縦筋に対して溶接して前記メッシュを製造する、コンクリート舗装用のメッシュを製造する方法。」
<相違点1>
コンクリート舗装用のメッシュの縦筋と横筋の配置に関し、
本件発明は、「道路の進行方向に」平行に配置されているものを縦筋とし、「道路の進行方向に対して斜めに」配置されているものを横筋としているのに対して、
甲2発明は、縦筋W2及び横筋W1と、道路の進行方向との関係が不明である点。
<相違点2>
縦筋送り手段と、横筋供給手段と、溶接手段とを有する金網溶接装置に関し、
本件発明は、縦筋送り手段が、「走行レールに沿って移動する平面視略直角三角形状の引出台車から構成され、前記引出台車の上流側に向いた斜辺部分には、長さの等しい複数のチャックアームが上流側に突出するように設けられており、前記チャックアームの先端を前記溶接手段から出てきたメッシュの横筋に引っ掛けた状態で前記引出台車を下流側に移動させることにより、横筋に溶接された縦筋を上流側から下流側に向けて搬送する」ものであり、横筋供給手段が縦筋に対して「斜めに」横筋を供給し、溶接手段が「斜めに」溶接しているのに対して、
甲2発明は、搬送装置(段落【0022】)が縦筋W2をどのように搬送するか不明であり、横筋供給装置が縦筋W2に対し横筋W1を「斜めに」供給し、スポット溶接機50が「斜めに」溶接しているか、不明である点。
<相違点3>
メッシュを被舗装面に設置する方法に関し、
本件発明は、「横筋が縦筋の下側になった状態にメッシュを裏返して設置する」のに対し、
甲2発明は、鉄筋網Nをどのように設置するか不明である点。
7 相違点についての判断
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。
(1)甲2発明と甲4記載の技術的事項とは、いずれも金網製造装置という共通の技術に関するものであり、また、縦線送り、横線供給、縦線と横線との溶接等の主要な機能は共通している。
そして、甲1周知技術1のとおり、「コンクリート舗装用の鉄筋鉄網は、複数本の縦方向鉄筋が道路の進行方向に平行に配置され、複数本の横方向鉄筋が道路の進行方向に対して斜角(60度程度)に配置される場合があること」は、本件特許の出願前に周知の技術である。
そうすると、甲2発明において、甲1周知技術1を踏まえて、甲4記載の技術的事項である、縦筋に対して横筋を斜めに供給し、斜めに溶接する技術を適用することについては、当業者であれば容易になし得たことである。
(2)しかしながら、甲2発明に甲4記載の技術的事項を適用したとしても、相違点2に係る本件発明のうち、縦筋送り手段が「平面視略直角三角形状の引出台車から構成される」点、及び「前記引出台車の上流側に向いた斜辺部分」に「長さの等しい複数のチャックアーム」を設ける点については、当業者であっても想到し得たものということができない。
(3)すなわち、甲2発明においては、そもそも「搬送装置」が縦筋W2をどのように搬送するか不明であり、また、横筋供給装置が縦筋W2に対し横筋W1を「斜めに」供給し、スポット溶接機50が「斜めに」溶接しているか不明であるから、「搬送装置」が、斜めに横筋が溶接された縦筋を間欠搬送するための「平面視略直角三角形状の引出台車から構成される」点や当該「引出台車の上流側に向いた斜辺部分」に「長さの等しい複数のチャックアーム」を設けるものであるとはいえない。
(4)他方、甲4記載の技術的事項は、横線供給部5により横線3を縦線1に対して斜めに供給し、溶接機構12により横線3を縦線1に対して斜めに溶接するものであって、引き出し部6が、引出部材85の先端部に設けられたチャック機構86により溶接機構12から出てきた溶接金網の横線3を保持した状態で移動台車82を下流側に移動させることにより、横線3に溶接された縦線1を上流側から下流側に向けて搬送する機能を有するものである。ただし、縦線1に対して斜めに溶接された横線3を引出部材85の先端部に設けられたチャック機構86にて保持するにあたり、当該引出部材85は、支持台84の上流側に向いた部分において、縦線方向の任意の位置に固定可能な構造を有するものである点で、本件発明とは相違する。
そして、甲4記載の技術的事項において引出部材85が当該構造を有するのは、甲4の段落【0031】に記載されるように、甲4記載の技術的事項が、縦線1に対する横線3の交差する角度を、任意の所望の角度に設定することができることを前提とするものであるからであって、どのような角度が設定された場合であっても、横線3をチャック機構86にて保持するためには、引出部材85の位置を、支持台84の上流側に向いた部分において、縦線方向の任意の位置に固定可能な構造であることは、甲4記載の技術的事項においては必須の事項である、といえる。
そのため、甲4記載の技術的事項が、縦線1に対する横線3の交差する角度を、任意の所望の角度に設定することが可能なものである以上、甲4記載の技術的事項において、移動台車82の支持台84を、「平面視略直角三角形状」として構成するとともに、移動台車82の支持台84の「上流側に向いた斜辺部分」に「長さの等しい複数の引出部材85」を設けるように改変することは、縦線に対する横線の角度を固定するものとなることから、阻害要因がある。
また、「搬送装置」が「平面視略直角三角形状の引出台車」から構成される点や当該「引出台車の上流側に向いた斜辺部分」に「長さの等しい複数のチャックアーム」を設ける点が、本件特許の出願時において公知又は周知であったことを示す証拠は、何ら示されていない。
さらに、仮に当該事項が公知又は周知であって、阻害要因を超える有利な効果があったとしても、甲2発明に甲4記載の技術的事項を適用し、さらに、移動台車82の支持台84を、「平面視略直角三角形状」として構成するとともに、移動台車82の支持台84の「上流側に向いた斜辺部分」に「長さの等しい複数の引出部材85」を設けるように改変することは、多段階の改変にあたるため、当業者にとって容易に想到し得た事項であるともいえない。
(5)また、上記相違点2に係る本件発明の構成は、甲1及び甲3にも記載されていない。
8 小括
してみると、本件発明は、他の相違点について検討するまでもなく、甲2発明並びに甲1及び甲3~甲4記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないことから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
第7 申立人が主張する申立ての理由について
折りたたみ中(クリックで表示)
申立人による申立書に記載された申立ての理由は、上記第4の1に示した、甲1に記載された事項から主引用発明を認定した、進歩性欠如(特許法第29条第2項違反)に関するものである。
甲1には、上記第6の3(4)に示した甲1発明が記載されているといえるところ、本件発明と甲1発明とを対比すると、甲1発明が、上記第6の6にて示した相違点2に係る本件発明の構成を有していない点で、少なくとも相違することは明らかである。
そして、当該構成については、甲2~甲4には記載されていないことは、上記第6の7で検討したとおりである。
したがって、本件発明は、甲1発明、並びに、甲2発明及び甲3~甲4記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないことから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
第8 申立人意見書における主張の検討
1 申立人の主張
申立人は、申立人意見書の3ページにおいて、上記相違点2に関して、次の旨の主張をする。
(1)甲4には、複数の引出部材(チャックアーム)の突出長さを調整することにより、縦筋と横筋との交差角度が異なる鉄筋網の製造を可能にしているものの、複数のチャックアームを傾斜した横筋に引っ掛ける場合に、甲4に記載されたもののように、複数のチャックアームの突出長さを調整するか、本件発明のように複数のチャックアームの基部の取付部分を傾斜させるかの選択、判断は、一定の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計変更や設計的事項の採用であり、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎず、その作用効果についても本件発明の進歩性の肯定的な判断に貢献するものでもない。
(2)本件発明において、横筋の縦筋に対する傾斜角度を変更しようとする場合に、平面視略直角三角形の引出台車の斜辺部分を横筋の傾斜角度に応じた角度に調整するとともに、チャックアームと斜辺部分との傾斜角度も調整する必要があると思われるが、具体的にどのようにして調整するか、本件特許の明細書等の記載からは不明である。
2 当審の判断
(1)上記1(1)についてみると、甲4記載の技術的事項は、段落【0002】(上記第6の4(1)イ)に記載されるように、溶接金網をフェンスとして使用することが想定されるものであって、道路の傾斜に応じて縦線に対する横線の角度を任意に変更できることが求められるものである。
そのため、上記第6の7で検討したように、甲4記載の技術的事項において、縦線に対する横線の角度を固定するようにすることについては阻害要因があるといえる。また、「搬送装置」が「平面視略直角三角形状の引出台車」から構成される点や当該「引出台車の上流側に向いた斜辺部分」に「長さの等しい複数のチャックアーム」を設ける点は、本件訂正で本件発明に新たに追加された事項であったにもかかわらず、申立人は、当該事項が当業者にとって設計的事項の範ちゅうであることを示す証拠を提示していない。さらに、甲4記載の技術的事項において、仮に当該阻害要因を超える何かしらの有利な効果があるとして、フェンス製造のために複数のチャックアームの基部の取付部分を傾斜させるとの改変が、当業者にとって容易であったとしても、本件発明の進歩性の判断は、甲1発明又は甲2発明を主引用発明としたものであるから、甲1発明又は甲2発明から出発して、甲4記載の技術的事項を適用したうえで、さらに複数のチャックアームの基部の取付部分を傾斜させるとの多段階の改変が、当業者にとって容易であるとの根拠についても見いだすことができない。
(2)上記1(2)についてみると、甲1周知技術1に示したように、本件発明により製造されるコンクリート舗装用のメッシュは、複数本の横方向鉄筋が道路の進行方向に対して特定の斜角である60度程度に配置される(上記第6の3(3)アを参照。)ものであると解するのが、申立人から提出された証拠の限りでは妥当であって、横筋の縦筋に対する傾斜角度を頻繁に変更しようとするものであるとの根拠に基づく上記主張については採用することができない。
第9 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1に係る特許は、決定の予告に示した取消理由(上記第6を参照。)、又は、申立書に記載された申立ての理由(上記第7を参照。)によっては、取り消すことはできない。また、本件特許の請求項1に係る特許を取り消すべき他の理由も発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2023-700362