特許訂正審判
2023-390041
マスク対及び両面露光装置
- 審判番号
- 2023-390041
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2022-011878
- 登録番号
- 7234426
- 請求日
- 2023年04月07日
- 審決日
- 2023年07月21日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】株式会社 アドテックエンジニアリング
- 【請求人代理人】保立 浩一
- 審判長/審判官
- 審判長 山村 浩
- 審判官 安藤 達哉
- 審判官 金高 敏康
- 分類
- P141 .852-Y (G03F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7234426号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第7234426号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2について訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7234426号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、平成29年11月30日に出願した特願2017-231298号の一部を令和4年1月28日に新たな特許出願としたものであって、令和5年2月27日に特許権の設定登録がされ、令和5年4月7日に訂正審判(以下「本件訂正審判」という。)の請求がされ、その後、令和5年6月15日に訂正審判請求書に対する手続補正書が提出されたものである。
第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、「特許第7234426号の特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、請求項2について訂正することを認める、との審決を求める。」というものである。
第3 訂正の内容
本件訂正審判の請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許請求の範囲の請求項2に「特徴とする請求項1記載の両面露光装置。」とあるのを、「特徴とする両面露光装置。」に訂正するというものである。
第4 当審の判断
1 訂正の目的について
(1)検討の順序
請求人は、訂正の目的が誤記の訂正である旨主張しているから、まずは、本件訂正に係る事項(以下「訂正事項」という。)が誤記の訂正を目的とするものといえるかどうか検討する。
ここで「誤記」というためには、訂正前の記載が誤りで訂正後の記載が正しいことが、本件特許の明細書、特許請求の範囲若しくは図面の記載又は当業者の技術常識などから明らかで、当業者であればそのことに気付いて訂正後の趣旨に理解するのが当然であるという場合でなければならないものと解される。
そこで、当審は、(i)本件特許の登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の記載に接した当業者が、訂正前の請求項2の記載になんらかの誤りがあることに気付くか、(ii)仮に上記(i)で気付くならば、当業者は、その誤りが、訂正前の請求項2の記載のうちどこにあると認識するか、(iii)当業者は、上記(ii)で認識した誤りを正したものの意味合いを何と認識するか、さらに、その意味合いが訂正後の請求項2の記載がもつ意味合いと一致することを認識するか、の順で検討を行うこととする。
(2)本件訂正前後における特許請求の範囲の記載
ア 本件訂正前(本件特許の登録時)の特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
基板の両面を露光する両面露光装置に搭載される第一のマスクと第二のマスクとから成るマスク対であって、
第一のマスクは、基板に対するアライメントのために設けられた二つの第一マスクマークと、第二のマスクに対するアライメントのために設けられた二つの第一補助マスクマークとを有しており、
第二のマスクは、基板に対するアライメントのために設けられた二つの第二マスクマークと、第一のマスクに対するアライメントのために設けられた二つの第二補助マスクマークとを有しており、
第一のマスクには、基板の一方の面に転写しようとするパターンが描かれたパターン領域が設けられているとともに、第二のマスクには、当該基板の他方の面に転写しようとするパターンが描かれたパターン領域が設けられており、
第一のマスクにおいて、二つの第一マスクマーク及び二つの第一補助マスクマークはパターン領域の外側に設けられており、
第二のマスクにおいて、二つの第二マスクマーク及び二つの第二補助マスクマークはパターン領域の外側に設けられており、
第一のマスクにおいて、二つの第一マスクマークのパターン領域までの距離は、二つの第一補助マスクマークのパターン領域までの距離よりも短い距離であり、
第二のマスクにおいて、二つの第二マスクマークのパターン領域までの距離は、二つの第二補助マスクマークのパターン領域までの距離よりも短い距離であり、
二つの第一補助マスクマークは二つの第一マスクマークと同一直線上に並んでおり、
二つの第二補助マスクマークは二つの第二マスクマークと同一直線上に並んでおり、
第一のマスクにおける二つの第一マスクマーク同士の距離は、第二のマスクにおける二つの第二マスクマーク同士の距離に等しく、第一のマスクにおける二つの第一補助マスクマーク同士の距離は、第二のマスクにおける二つの第二補助マスクマーク同士の距離に等しいことを特徴とするマスク対。
【請求項2】
ロールに巻かれたフレキシブルな基板を引き出して間欠的に送る搬送系と、
送られた基板を挟む位置に配置された請求項1記載のマスク対と、
搬送系が基板を停止させてアライメントが行われた後に基板に前記第一第二のマスクを通して光を照射して基板の両面を露光する露光ユニットと
を備えており、
基板は、露光すべき領域に対して所定の位置関係で設けられた二つのアライメントマークを有しており、
前記第一のマスクは、二つの前記第一マスクマーク及び二つの前記第一補助マスクマークが並ぶ前記同一直線が基板の幅方向になるように搭載されており、
前記第二のマスクは、二つの前記第二マスクマーク及び二つの前記第二補助マスクマークが並ぶ前記同一直線が基板の幅方向になるように搭載されており、
二つの前記第一マスクマークと二つの前記第一補助マスクマークとが並ぶ同一直線と、二つの前記第二マスクマークと二つの前記第二補助マスクマークとが並ぶ同一直線とは、各マスクに垂直な方向で見た際には重なっており、
前記各第一マスクマーク、前記各第二マスクマーク、前記各第一補助マスクマーク、前記各第二補助マスクマーク、及び基板の各アライメントマークを撮影することが可能なカメラと、
前記各第一マスクマーク、前記各第二マスクマーク及び基板の各アライメントマークを撮影したカメラからの撮影データにより前記第一第二のマスクを基板の露光すべき領域に対して位置合わせするアライメント手段とが設けられており、
カメラは、
前記第一第二のマスクを基板に対してアライメントするために一方の前記第一マスクマーク及び一方の前記第二マスクマークを撮影する基板アライメント位置と、
前記第一第二のマスク同士をアライメントするために一方の前記第一補助マスクマーク及び一方の前記第二補助マスクマークを撮影するマスクアライメント位置と、
前記第一第二のマスクを基板に対してアライメントするために他方の前記第一マスクマーク及び他方の前記第二マスクマークを撮影する基板アライメント位置と、
前記第一第二のマスク同士をアライメントするために他方の前記第一補助マスクマーク及び他方の前記第二補助マスクマークを撮影するマスクアライメント位置
にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1記載の両面露光装置。」
イ 本件訂正後の特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
基板の両面を露光する両面露光装置に搭載される第一のマスクと第二のマスクとから成るマスク対であって、
第一のマスクは、基板に対するアライメントのために設けられた二つの第一マスクマークと、第二のマスクに対するアライメントのために設けられた二つの第一補助マスクマークとを有しており、
第二のマスクは、基板に対するアライメントのために設けられた二つの第二マスクマークと、第一のマスクに対するアライメントのために設けられた二つの第二補助マスクマークとを有しており、
第一のマスクには、基板の一方の面に転写しようとするパターンが描かれたパターン領域が設けられているとともに、第二のマスクには、当該基板の他方の面に転写しようとするパターンが描かれたパターン領域が設けられており、
第一のマスクにおいて、二つの第一マスクマーク及び二つの第一補助マスクマークはパターン領域の外側に設けられており、
第二のマスクにおいて、二つの第二マスクマーク及び二つの第二補助マスクマークはパターン領域の外側に設けられており、
第一のマスクにおいて、二つの第一マスクマークのパターン領域までの距離は、二つの第一補助マスクマークのパターン領域までの距離よりも短い距離であり、
第二のマスクにおいて、二つの第二マスクマークのパターン領域までの距離は、二つの第二補助マスクマークのパターン領域までの距離よりも短い距離であり、
二つの第一補助マスクマークは二つの第一マスクマークと同一直線上に並んでおり、
二つの第二補助マスクマークは二つの第二マスクマークと同一直線上に並んでおり、
第一のマスクにおける二つの第一マスクマーク同士の距離は、第二のマスクにおける二つの第二マスクマーク同士の距離に等しく、第一のマスクにおける二つの第一補助マスクマーク同士の距離は、第二のマスクにおける二つの第二補助マスクマーク同士の距離に等しいことを特徴とするマスク対。
【請求項2】
ロールに巻かれたフレキシブルな基板を引き出して間欠的に送る搬送系と、
送られた基板を挟む位置に配置された請求項1記載のマスク対と、
搬送系が基板を停止させてアライメントが行われた後に基板に前記第一第二のマスクを通して光を照射して基板の両面を露光する露光ユニットと
を備えており、
基板は、露光すべき領域に対して所定の位置関係で設けられた二つのアライメントマークを有しており、
前記第一のマスクは、二つの前記第一マスクマーク及び二つの前記第一補助マスクマークが並ぶ前記同一直線が基板の幅方向になるように搭載されており、
前記第二のマスクは、二つの前記第二マスクマーク及び二つの前記第二補助マスクマークが並ぶ前記同一直線が基板の幅方向になるように搭載されており、
二つの前記第一マスクマークと二つの前記第一補助マスクマークとが並ぶ同一直線と、二つの前記第二マスクマークと二つの前記第二補助マスクマークとが並ぶ同一直線とは、各マスクに垂直な方向で見た際には重なっており、
前記各第一マスクマーク、前記各第二マスクマーク、前記各第一補助マスクマーク、前記各第二補助マスクマーク、及び基板の各アライメントマークを撮影することが可能なカメラと、
前記各第一マスクマーク、前記各第二マスクマーク及び基板の各アライメントマークを撮影したカメラからの撮影データにより前記第一第二のマスクを基板の露光すべき領域に対して位置合わせするアライメント手段とが設けられており、
カメラは、
前記第一第二のマスクを基板に対してアライメントするために一方の前記第一マスクマーク及び一方の前記第二マスクマークを撮影する基板アライメント位置と、
前記第一第二のマスク同士をアライメントするために一方の前記第一補助マスクマーク及び一方の前記第二補助マスクマークを撮影するマスクアライメント位置と、
前記第一第二のマスクを基板に対してアライメントするために他方の前記第一マスクマーク及び他方の前記第二マスクマークを撮影する基板アライメント位置と、
前記第一第二のマスク同士をアライメントするために他方の前記第一補助マスクマーク及び他方の前記第二補助マスクマークを撮影するマスクアライメント位置
にそれぞれ設けられていることを特徴とする両面露光装置。」
(3)判断
ア 本件明細書等の記載に接した当業者が、訂正前の請求項2の記載になんらかの誤りがあることに気付くかについて
訂正前の請求項2(本件明細書等の請求項2)の末尾にある「特徴とする請求項1記載の両面露光装置。」の記載(以下「本件記載」という。)をみると、その引用元の請求項1の末尾には、「マスク対。」と記載されており、「両面露光装置。」とは記載されていないから、本件記載は、「請求項1記載」の文言がもつ意味合いと「両面露光装置」の文言のもつ意味合いとの間に明らかな不整合が存在する。そして、引用元の請求項1は、上記のとおり、当該請求項の末尾に「マスク対。」と記載されているところ、その全体の記載をみても、特段の矛盾があるとは認められない。
したがって、本件明細書等の記載に接した当業者は、訂正前の請求項2の記載になんらかの誤りがあることに気付くといえる。
イ 当業者は、その誤りが、訂正前の請求項2の記載のうちどこにあると認識するかについて
上記アのとおり、訂正前の請求項2の末尾にある本件記載の「特徴とする請求項1記載の両面露光装置。」においては、「請求項1記載」の文言のもつ意味合いと「両面露光装置。」の文言のもつ意味合いとが不整合となっている。
そこで、まず、当業者が「両面露光装置。」の文言に誤りがあると認識するかについてみると、訂正前の請求項2には、搬送系と、マスク対と、露光ユニットとを備え、カメラと、アラインメント手段とが設けられていることが記載されていることから、本件明細書等の記載に接した当業者は、訂正前の請求項2の記載が、全体として、両面露光装置の構成を特定しようとするものと認識するといえる。よって、当業者は、「両面露光装置。」の文言に誤りがあるとは認識しない。
そうすると、当業者は、本件記載のうち、「両面露光装置。」の文言に誤りがあるとは認識せずに、「請求項1記載」の文言に誤りがあると認識するといえる。
ウ 当業者は、本件記載の誤りを正したものの意味合いを何と認識するか、さらに、その意味合いが訂正後の請求項2の記載と一致することを認識するかについて
訂正前の請求項2には、末尾にある本件記載よりも前に、「送られた基板を挟む位置に配置された請求項1記載のマスク対・・・を備えており」と記載されていることから、本件記載中にあるもののほかにも「請求項1記載」の文言が存在することになる。そうすると、本件記載中の「請求項1記載の」の文言が不要であることが一見して明らかであって、その理解に反する本件明細書等の記載は存在しない。よって、当業者は、本件記載の誤りを正したものの意味合いが、「特徴とする両面露光装置。」であると認識する。
そして、訂正後の請求項2の記載は、「・・・特徴とする両面露光装置。」である。そうすると、当業者は、本件記載の誤りを正したものの意味合いが訂正後の請求項2の記載と一致することを認識するといえる。
エ 小括
このように、本件明細書等の記載に接した当業者は、訂正前の請求項2の記載のうち、「請求項1記載」の文言に誤りがあると認識し、誤りを正したものの意味合いが、訂正後の請求項2の記載と一致することを認識するといえるから、本件訂正は、明らかな誤記を訂正するものであって、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものである。よって、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書の規定に適合する。
2 新規事項の有無
上記1のとおり、本件訂正は、明らかな誤記を訂正するにとどまり、本件特許に係る願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。よって、本件訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合する。
3 実質上特許請求の範囲を拡張又は変更することの有無
上記1のとおり、本件訂正は、明らかな誤記を訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものには該当しない。よって、本件訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合する。
4 独立特許要件について
本件訂正は、明らかな誤記を訂正するにとどまるところ、本件訂正後の請求項2に記載された発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができないとする理由はない。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。
第5 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第5項、第6項及び第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
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