特許拒絶査定不服審判
2023-021170
熱交換器
- 審判番号
- 2023-021170
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-211323
- 請求日
- 2023年12月12日
- 審決日
- 2025年06月04日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社富士通ゼネラル
- 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 間中 耕治
- 審判官 大山 健
- 審判官 正木 裕也
- 分類
- P18 .121-WY (F28F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-211323「熱交換器」拒絶査定不服審判事件〔令和3年5月27日出願公開、特開2021-81158、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年11月22日の出願であって、主な手続の経緯は、以下のとおりである。
令和5年 3月30日付け 拒絶理由の通知
令和5年 6月2日 意見書、手続補正書の提出
令和5年 9月22日付け 拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和5年12月12日 審判請求書、手続補正書の提出(以下、この手続補正書による補正を「審判請求時の補正」という。)
第2 原査定の概要
原査定(令和5年9月22日付け拒絶査定)の理由の概要は、次のとおりである。
本願の請求項1-3に係る発明は、以下の引用文献1、2に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.実願昭49-37860号(実開昭50-127771号)のマイクロフィルム
引用文献2.特開2019-132519号公報
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
請求項1に「前記ヘッダに最も近いフィン側に位置して前記一対の伝熱管が貫通する貫通面を超えて、」という発明特定事項を追加する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記の補正及び明細書の段落【0009】に対する補正は、本願明細書の段落【0031】及び図5に基づくものであって、新規事項を追加するものではない。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-3に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
したがって、審判請求時の補正は、適法になされたものである。
第4 本願発明
本願の請求項1-3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は、令和5年12月12日に提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
互いに逆方向に流れる冷媒の流路となる一対の伝熱管と、前記一対の伝熱管それぞれに間隔を空けて設置される複数のフィンと、前記一対の伝熱管を接続して一方の伝熱管から他方の伝熱管へ冷媒を折り返すヘッダとを有する熱交換器であって、
前記ヘッダは、
前記一対の伝熱管を貫通させる第1の板状部材と、
前記第1の板状部材と接合される第2の板状部材と、
前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との間に形成され、前記一方の伝熱管から冷媒が流入可能な空間とを有し、
前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との接合面からなる接合部は、折り曲げられた折曲部を有し、
前記折曲部は、
前記接合部の前記一対の伝熱管が並ぶ方向の端部に形成され、前記ヘッダに最も近いフィン側に位置して前記一対の伝熱管が貫通する貫通面を超えて、前記ヘッダに最も近いフィンまで延びる長さを有する
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記折曲部は、
前記第1の板状部材側へ折り曲げられる
ことを特徴とする請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記折曲部は、
前記第1の板状部材を貫通する前記一対の伝熱管が延びる方向に平行な方向に折り曲げられる
ことを特徴とする請求項1または2記載の熱交換器。」
第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1の記載等について
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(なお、拗音や促音は小書きの仮名に改めた。また、「フイン」は「フィン」に改めた。さらに、下線部は当審で付した。)。
ア 「この考案はアルミニウムラジエータの取付けブラケットをラジエータ本体に固着する結合構造に関し、取付けブラケットに従来の本体補強板を兼ねさせることにより従来の如き独立の補強板を不要にする有効な構造を得させることを目的として考案されたものである。」(明細書1ページ下から2行~2ページ4行)
イ 「次に第4~8図に示した第一実施例について本案を説明する。
取り付けブラケット12には第6図のように上下に(横流式ラジエータの場合は左右に)爪13、13を打出し、ラジエータ組立て時に上タンク14の横の縁15と、チューブ端を挿通するプレート16の横縁17とを嵌合した後、爪13、13で横縁15、17を挟み折曲げて第4図のように取付けブラケット12をラジエータ本体に組付ける。
このときブラケット12の中間部12aが最外側のフィンに当接するようにブラケットの中間部12aは端部12bよりwだけ突出させておく。上タンク14、プレート16の横縁15、17の幅は、ブラケットの爪13、13が近づき過ぎてブラケット12の取付け強度が弱くならないように他の縁部分より大きくする。なお上タンク14の前後縁には爪18を形成し組付け時に折曲げてプレート16の前後縁に結合する。」(明細書4ページ9行~5ページ7行)
ウ 「取付けブラケット、上下タンク、上下のプレート、フィン、チューブ等はアルミニウムにろう材を積層したクラッド材を適宜使用し、これらの接合面の少なくとも一方がろう材になるようにする。
このように組付けしたラジエータを炉に入れてろう材を溶すと、ラジエータの各部はろう付けされる。(ブレージング)」(明細書5ページ11行~下から2行)
エ 「第4図
[図:0001423083000001.jpg]
」
オ 「第5図
[図:0001423083000002.jpg]
」
カ 「第7図、第8図
[図:0001423083000003.jpg]
」
(2)引用文献1の記載等から理解できる事項
ア 上記(1)オの図面(第5図)から、ラジエータが一対のチューブ10を有することが看取できる。そして、ラジエータを構成する一対のチューブ10に冷却液が流れることは、技術的に自明なことであるから、チューブ10は、冷却液の流路を有するといえる。
イ 上記(1)イの記載及びエ~カの各図面(第4、5、7、8図)から、プレート16と上タンク14が結合されることで、プレート16と上タンク14との間に形成された空間を有する部材(以下、便宜上「上タンク部材」という。)が形成されることが理解できる。
さらに、上記(1)オの図面(第5図)から、プレート16に一対のチューブ10が挿通されることで、上タンク部材に、一対のチューブ10が接続されていることが理解できる。
ウ 上記(1)イの記載及びエ~カの各図面(第4、5、7、8図)から、プレート16と上タンク14との接合面からなる接合部において、プレート16及び上タンク14の前後縁(第4、5、7図で爪18が配置されている縁)が形成されていることが理解できる。
そして、上記(1)オの図面(第5図)から、当該プレート16及び上タンク14の前後縁は、一対のチューブ10が並ぶ方向の端部に形成されている。
2 引用文献1に記載された発明
上記1から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「冷却液の流路となる一対のチューブ10と、前記一対のチューブ10に設置されるフィン9と、前記一対のチューブ10を接続する上タンク部材とを有するラジエータであって、
前記上タンク部材は、
前記一対のチューブ10を挿通させるプレート16と、
前記プレート16と結合される上タンク14と、
前記プレート16と前記上タンク14との間に形成された空間とを有し、
前記プレート16と前記上タンク14との接合面からなる接合部は、前後縁を有し、
前記前後縁は、
前記接合部の前記一対のチューブ10が並ぶ方向の端部に形成されている
ラジエータ。」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「チューブ10」は、本願発明1における「伝熱管」に相当し、同様に、「ラジエータ」は「熱交換器」に、相当する。
また、引用発明の「上タンク部材」は、上記第4の1(2)イのとおり、一対のチューブ10を接続し、空間を有する部材であるから、機能や構造に照らせば、本願発明1における「ヘッダ」に相当する。
そうすると、引用発明の「冷却液の流路となる一対のチューブ10と、前記一対のチューブ10に設置されるフィン9と、前記一対のチューブ10を接続する上タンク部材とを有するラジエータ」は、本願発明1の「互いに逆方向に流れる冷媒の流路となる一対の伝熱管と、前記一対の伝熱管それぞれに間隔を空けて設置される複数のフィンと、前記一対の伝熱管を接続して一方の伝熱管から他方の伝熱管へ冷媒を折り返すヘッダとを有する熱交換器」と、「一対の伝熱管と、前記一対の伝熱管に設置されるフィンと、前記一対の伝熱管を接続するヘッダとを有する熱交換器」である限りにおいて一致する。
イ 引用発明における「挿通」は、本願発明1における「貫通」に相当し、以下同様に、「結合」は「接合」に、「プレート16」は「第1の板状部材」に、「上タンク14」は「第2の板状部材」に、それぞれ相当する。
そうすると、引用発明の「前記上タンク部材は、前記一対のチューブ10を挿通させるプレート16と、前記プレート16と結合される上タンク14と、前記プレート16と前記上タンク14との間に形成された空間とを有」することは、本願発明1の「前記ヘッダは、前記一対の伝熱管を貫通させる第1の板状部材と、前記第1の板状部材と接合される第2の板状部材と、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との間に形成され、前記一方の伝熱管から冷媒が流入可能な空間とを有」することと、「前記ヘッダは、前記一対の伝熱管を貫通させる第1の板状部材と、前記第1の板状部材と接合される第2の板状部材と、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との間に形成された空間とを有」する限りにおいて一致する。
ウ 引用発明の「前記プレート16と前記上タンク14との接合面からなる接合部」は、本願発明1の「前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との接合面からなる接合部」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。
<一致点>
「一対の伝熱管と、前記一対の伝熱管に設置されるフィンと、前記一対の伝熱管を接続するヘッダとを有する熱交換器であって、
前記ヘッダは、
前記一対の伝熱管を貫通させる第1の板状部材と、
前記第1の板状部材と接合される第2の板状部材と、
前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との間に形成された空間とを有し、
前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との接合面からなる接合部を有する、
熱交換器。」
<相違点>
(相違点1)一対の伝熱管について、本願発明1は、「互いに逆方向に流れる冷媒の流路となる」ものであり、「一方の伝熱管から他方の伝熱管へ冷媒を折り返す」ものであるのに対し、引用発明は、冷却液の流路となるものであり、上タンク部材が冷却液を折り返すものであるか不明な点。
(相違点2)フィンについて、本願発明1は、「前記一対の伝熱管それぞれに間隔を空けて設置される複数のフィン」であるのに対し、引用発明は、そのような構成ではない点。
(相違点3)ヘッダについて、本願発明1は、「一方の伝熱管から冷媒が流入可能な」空間であるのに対し、引用発明の上タンク部材の空間は、そのようなものであるか不明な点。
(相違点4)本願発明1は、接合部が「折り曲げられた折曲部を有し、前記折曲部は、前記接合部の前記一対の伝熱管が並ぶ方向の端部に形成され、前記ヘッダに最も近いフィン側に位置して前記一対の伝熱管が貫通する貫通面を超えて、前記ヘッダに最も近いフィンまで延びる長さを有する」のに対し、引用発明では、プレート16及び上タンク14との接合面は、前後縁を有する点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点4から検討する。
引用発明において、プレート16及び上タンク14は、一対のチューブ10が並ぶ方向の端部に前後縁を有するものの、この前後縁は、フィン9まで延びる長さを有していない。
他方、原査定で引用された引用文献2にも、相違点4に係る構成が記載も示唆もされていない。
したがって、引用発明に、引用文献2に記載の技術的事項を適用しても、相違点4に係る本願発明1の発明特定事項を構成することはできない。
さらに、引用発明は、「取付けブラケットに従来の本体補強板を兼ねさせることにより従来の如き独立の補強板を不要にする有効な構造を得させること」(上記第4の1(1)アを参照。)を課題とするものであり、当該課題に鑑みても、プレート16及び上タンク14の前後縁を、上タンク部材に最も近いフィンまで延びる長さを有するように設計変更して、相違点4に係る本願発明1が容易になし得たということはできない。
よって、上記相違点1-3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載の技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。
2 本願発明2、3について
本願発明2、3は、本願発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明できたものではない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-3は、引用発明及び引用文献2に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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