特許拒絶査定不服審判
2023-020996
情報処理システム、情報処理方法、情報処理プログラム
- 審判番号
- 2023-020996
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-053097
- 請求日
- 2023年12月08日
- 審決日
- 2024年10月03日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】グリー株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 佐藤 智康
- 審判官 松田 直也
- 審判官 木方 庸輔
- 分類
- P18 .113-Z (G06Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022- 53097「情報処理システム、情報処理方法、情報処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 6月21日出願公開、特開2022- 91892〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年12月1日に出願した特願2020-199677号の一部を令和4年3月29日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。
令和4年 3月29日 上申書の提出
令和5年 5月12日付け 拒絶理由通知書
令和5年 6月26日 意見書、手続補正書の提出
令和5年10月 2日付け 拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和5年12月 8日 審判請求書、手続補正書の提出
令和6年 4月19日 上申書の提出
第2 令和5年12月8日にされた手続補正の補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年12月8日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1についての補正を含むものであり、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである(以下、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を「本件補正発明」という。なお、下線部は、本件補正により補正された箇所を示す。)。
「【請求項1】
仮想空間を描画する空間描画処理部と、
前記仮想空間内で移動可能な移動媒体であって、複数のユーザに対応付けられる複数の移動媒体を描画する媒体描画処理部と、
前記複数のユーザのそれぞれからの入力に基づいて、通信ネットワークを介した前記複数のユーザ間の対話であって、前記複数の移動媒体のそれぞれを介した対話を可能とする対話処理部とを備え、
前記対話処理部は、前記仮想空間内における前記複数の移動媒体のそれぞれの位置又は前記複数の移動媒体間の関係に基づいて、前記複数のユーザのうちの、ユーザ間の前記対話が可能なユーザを決定し、前記複数の移動媒体間の関係は、それぞれが特定のコンテンツを提供するように前記仮想空間内に設定された複数のコンテンツ提供位置のそれぞれごとに、前記複数の移動媒体のそれぞれの位置との関連付けが可能である、情報処理システム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明
本件補正前の令和5年6月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
仮想空間を描画する空間描画処理部と、
前記仮想空間内で移動可能な移動媒体であって、複数のユーザに対応付けられる複数の移動媒体を描画する媒体描画処理部と、
前記複数のユーザのそれぞれからの入力に基づいて、通信ネットワークを介した前記複数のユーザ間の対話であって、前記複数の移動媒体のそれぞれを介した対話を可能とする対話処理部とを備え、
前記対話処理部は、前記仮想空間内における前記複数の移動媒体のそれぞれの位置又は前記複数の移動媒体間の関係に基づいて、前記複数のユーザのうちの、ユーザ間の前記対話が可能なユーザを決定し、前記複数の移動媒体間の関係は、前記複数の移動媒体のそれぞれの位置との関連付けが可能である、情報処理システム。」
2 補正の適否
上記1のとおり、本件補正は、本件補正前の請求項1の「前記複数の移動媒体間の関係は、前記複数の移動媒体のそれぞれの位置との関連付けが可能である」とあるのを、「前記複数の移動媒体間の関係は、それぞれが特定のコンテンツを提供するように前記仮想空間内に設定された複数のコンテンツ提供位置のそれぞれごとに、前記複数の移動媒体のそれぞれの位置との関連付けが可能である」とするものである。
このように、本件補正は、「前記複数の移動媒体間の関係」を、「それぞれが特定のコンテンツを提供するように前記仮想空間内に設定された複数のコンテンツ提供位置のそれぞれごとに、前記複数の移動媒体のそれぞれの位置との関連付けが可能である」と減縮するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正発明が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献1の記載、引用文献1に記載された引用発明等
ア 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された文献であって、本願の原出願の出願前である平成20年5月8日に出願公開された特開2008-107895号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は、当審で付与した。以下同じ。)。
「【実施例1】
【0053】
図2は、本実施例による仮想空間提供システムの全体構成を示す説明図である。仮想空間提供システムは、例えば、仮想空間提供サーバ10と、選手位置解析サーバ20と、番組配信サーバ30と、ウェブサーバ40と、情報発信サービスサーバ50及びクライアントコンピュータ60とを備えて構成される。これら各コンピュータ10,20,30,40,50,60は、インターネット等のような通信ネットワークCNを介して接続されている。
【0054】
仮想空間提供サーバ10は、コンピュータ内に生成された仮想空間を、複数のクライアントコンピュータ60にそれぞれ提供するものである。仮想空間提供サーバ10は、例えば、一つまたは複数のサーバコンピュータから構成することができる。仮想空間提供サーバ10を複数のサーバコンピュータから構成する場合、複数のサーバコンピュータによってクラスタを形成し、負荷を分散させることができる。仮想空間提供サーバ10の詳細は図3と共に後述する。」
「【0057】
ウェブサーバ40は、クライアントコンピュータ60との間で情報を交換するためのものである。ウェブサーバ40は、仮想空間提供サーバ10と同一のサーバコンピュータ上に設けることもできる。仮想空間提供サーバ10により生成される仮想空間は、ウェブサーバ40を介して、各クライアントコンピュータ60に提供される。従って、仮想空間は、クライアントコンピュータ60に設けられているウェブブラウザに表示される。なお、ウェブブラウザとは別の専用のソフトウェアをクライアントコンピュータ60にインストールし、この専用ソフトウェアによって仮想空間にアクセスする構成でもよい。この場合は、ウェブサーバ40を廃止することができる。」
「【0059】
クライアントコンピュータ60は、ユーザによって使用されるコンピュータであり、典型的には、パーソナルコンピュータとして構成される。これに限らず、例えば、携帯電話や携帯情報端末等のように構成することもできる。」
「【0060】
図3は、仮想空間提供サーバ10の構成を示す説明図である。仮想空間提供サーバ10は、例えば、制御部100と、記憶部120及び通信部140を備えている。制御部100は、例えば、少なくとも一つ以上のCPU(Central Processing Unit)等を備えて構成されている。制御部100は、ROM(Read Only Memory)等に予め記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより、後述の各機能101~109をそれぞれ実現する。」
「【0063】
制御部100の実現する機能を説明する。制御部100は、例えば、ユーザ管理部101と、嗜好・親密度管理部102と、選手位置管理部103と、仮想空間管理部104と、仮想空間提供部105と、番組管理部106と、広告管理部107と、ログ解析部108と、視線解析部109とをそれぞれ備えることができる。」
「【0068】
仮想空間管理部104は、仮想空間を生成し、仮想空間の状態を管理するための機能である。即ち、仮想空間管理部104は、仮想空間管理情報125に基づいて、一つまたは複数のマップを備える仮想的なスタジアムとしての仮想空間を生成し、この仮想空間内に各ユーザのアバターをそれぞれ配置する。仮想空間管理部104は、アバター管理情報126に基づいて、アバターの位置や容姿を決定し、仮想空間内に表示させる。
【0069】
また、仮想空間管理部104は、番組配信サーバ30から受信した映像を仮想空間内に表示させ、さらに、選手位置解析サーバ20から受信した選手等の位置を映像に同期させて仮想空間内に表示させる。仮想空間管理部104は、各アバターの言動を仮想空間に反映させ、仮想空間を最新状態に保つようになっている。従って、仮想空間内の各アバターの言動は、それぞれ各クライアントコンピュータ60にリアルタイムで表示される。」
「【0080】
図5は、クライアントコンピュータ60の画面に表示される仮想空間の様子を模式的に示す説明図である。ユーザが、クライアントソフトウェア62としてのウェブブラウザを起動させて、仮想空間提供サーバ10にログインすると、図5に示すような仮想空間G1が表示される。」
「【0082】
仮想空間G1内には、複数のアバターA1~A6が配置されている。各アバターA1~A6は、それぞれ異なるユーザによって操作されている。ユーザは、アバターを介して会話を楽しむことができる。チャット操作部G5に入力された発言内容は、アバターを介して仮想空間内に表示される。」
「【0086】
重要なことは、番組の映し出される仮想空間G1内に複数のアバターA1~A6が配置されており、ユーザは、自分のアバターを介して周囲のアバターと会話を行うことができ、アバターの動作を操作できるという点である。つまり、ユーザは、自分のアバターを用いることにより、他の多くのアバターと一緒に仮想空間G1内の番組を楽しむことができ、感想等を述べ合うことができる。」
「【0099】
交流時間比率とは、本アバターが仮想空間に滞在した全期間において、本アバターと相手方アバターとが会話可能な範囲内に存在した時間の比率を示す。少なくとも、いずれか一方のユーザが他方のユーザと親密でありたいと思う場合、一方のユーザのアバターは、他方のユーザのアバターの近くに位置する時間が長くなるものと考えられる。ここで、仮想空間の広さや会話可能範囲の設定等によっても相違するが、一般的には、仮想空間内で所定の距離内に存在するアバター同士は、いわゆるALLモードで会話可能である。ALLモードとは、アバターの発言が近接する他の全てのアバターに届けられるモードである。これに対し、アバター同士が離れている場合でも、会話相手のアバターの名称を指定することで会話できるモードも存在する。直接対話モードである。直接対話モードによる交流状態は、上述した「発言頻度」に反映される。ALLモードによる会話の状態は、「交流時間比率」に反映される。」
「【0126】
仮想空間提供サーバ10は、アバターの初期位置及び容姿について決定すると、アバターを仮想空間に配置する(S29)。仮想空間提供サーバ10は、所定周期毎に、仮想空間の最新状態をクライアントコンピュータ60に送信する(S30)。クライアントコンピュータ60のウェブブラウザには、仮想空間提供サーバ10から送信された最新状態の仮想空間が表示される(S31)。ユーザは、仮想空間に配置された自分のアバターを操作する(S32)。例えば、ユーザは、アバターを介して他のユーザのアバターと会話をしたり、自分のアバターを仮想空間内で移動させたりすることができる。
【0127】
仮想空間提供サーバ10は、クライアントコンピュータ60から操作指示を受信すると、指示された操作内容を仮想空間に反映させる(S33)。即ち、ユーザがアバターを移動させた場合には、アバターの位置をユーザの希望する位置に変化させる。アバターを介して会話する場合、クライアントコンピュータ60から受信したメッセージを仮想空間内に表示させる。」
イ 引用文献1に記載されているといえる事項
(ア)上記【0060】の「仮想空間提供サーバ10」は、「制御部100」を「備えている」との記載、【0063】の「制御部100」は、「仮想空間管理部104」を「備える」との記載、【0068】の「仮想空間管理部104」は、「仮想空間を生成し、この仮想空間内に各ユーザのアバターをそれぞれ配置する」との記載、【0069】の「仮想空間管理部104は、各アバターの言動を仮想空間に反映させ」、「仮想空間内の各アバターの言動は、それぞれ各クライアントコンピュータ60にリアルタイムで表示される」との記載から、引用文献1には、「仮想空間提供サーバ10は、仮想空間を生成し、この仮想空間内に各ユーザのアバターをそれぞれ配置し、各アバターの言動を仮想空間に反映させ、仮想空間内の各アバターの言動は、それぞれ各クライアントコンピュータ60にリアルタイムで表示される」ことが記載されているといえる。
(イ)上記【0082】全体の記載、【0086】の「仮想空間G1内に複数のアバターA1~A6が配置されており、ユーザは、自分のアバターを介して周囲のアバターと会話を行うことができ、アバターの動作を操作できる」との記載、【0126】の「ユーザは、仮想空間に配置された自分のアバターを操作する」、「ユーザは、アバターを介して他のユーザのアバターと会話をしたり」との記載から、引用文献1には、「仮想空間G1内に複数のアバターA1~A6が配置されており、ユーザは自分のアバターの動作を操作でき、ユーザは自分のアバターを介して周囲の他のユーザのアバターと会話を行うことができ、チャット操作部G5に入力された発言内容は、アバターを介して仮想空間内に表示される」ことが記載されているといえる。
ウ 引用発明1に記載された発明
上記ア、イによれば、引用文献1には、以下の発明(「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「 仮想空間提供サーバ10と、仮想空間提供サーバ10と通信ネットワークCNを介して接続されクライアントコンピュータ60とを備えて構成される仮想空間提供システムであって、(【0053】)
クライアントコンピュータ60は、ユーザによって使用されるコンピュータであり、(【0059】)、
仮想空間提供サーバ10は、
仮想空間提供サーバ10により生成された仮想空間を、複数のクライアントコンピュータ60にそれぞれ提供し、(【0054】【0057】)
この仮想空間内に各ユーザのアバターをそれぞれ配置し、各アバターの言動を仮想空間に反映させ、(上記イ(ア))
仮想空間内の各アバターの言動は、それぞれ各クライアントコンピュータ60にリアルタイムで表示され、(上記イ(ア))
ユーザが、仮想空間提供サーバ10にログインすると、クライアントコンピュータ60の画面に仮想空間G1が表示され、(【0080】)
仮想空間G1内に複数のアバターA1~A6が配置されており、(上記イ(イ))
ユーザは自分のアバターの動作を操作でき、(上記イ(イ))
ユーザは自分のアバターを介して周囲の他のユーザのアバターと会話を行うことができ、(上記イ(イ))
チャット操作部G5に入力された発言内容は、アバターを介して仮想空間内に表示され、(上記イ(イ))
仮想空間内で所定の距離内に存在するアバター同士は、いわゆるALLモードで会話可能であり、ALLモードとは、アバターの発言が近接する他の全てのアバターに届けられるモードであり、(【0099】)
ユーザは、自分のアバターを仮想空間内で移動させたりすることができ、ユーザがアバターを移動させた場合には、アバターの位置をユーザの希望する位置に変化させる(【0126】【0127】)
仮想空間提供システム。」
(3)対比
本件補正発明と、引用発明とを対比する。
ア 本件補正発明の「仮想空間を描画する空間描画処理部と」について
引用発明は、「仮想空間提供サーバ10は、仮想空間提供サーバ10により生成された仮想空間を、複数のクライアントコンピュータ60にそれぞれ提供」し、「ユーザが、仮想空間提供サーバ10にログインすると、クライアントコンピュータ60の画面に仮想空間G1が表示され」るものである。
そうすると、引用発明の「仮想空間G1」は、本件補正発明の「仮想空間」に相当し、仮想空間提供サーバ10の仮想空間を生成する機能は、これにより、クライアントコンピュータ60の画面に、生成された仮想空間を表示可能にすることから、引用発明の当該仮想空間を生成する機能を実現する手段は、本件補正発明の「仮想空間を描画する空間描画処理部」に相当する。
する。
イ 本件補正発明の「前記仮想空間内で移動可能な移動媒体であって、複数のユーザに対応付けられる複数の移動媒体を描画する媒体描画処理部と」について
引用発明は、ユーザは、自分のアバターを仮想空間内で移動させたりすることができ、ユーザがアバターを移動させた場合には、アバターの位置をユーザの希望する位置に変化させるものである。
そうすると、引用発明の「仮想空間内で移動させたりすることができる」「アバター」は、本件補正発明の「前記仮想空間内で移動可能な移動媒体」に相当する。
さらに、引用発明は、「仮想空間提供サーバ10は」、「この仮想空間内に各ユーザのアバターをそれぞれ配置し、各アバターの言動を仮想空間に反映させ」るものであって、「ユーザが、仮想空間提供サーバ10にログインすると、クライアントコンピュータ60の画面に仮想空間G1が表示され」ると、「仮想空間G1内に複数のアバターA1~A6が配置され」、「ユーザは自分のアバターの動作を操作でき」るものである。
そうすると、引用発明の、複数のアバターA1~A6を仮想空間G1に配置する機能を実現する手段は、本件補正発明の「前記仮想空間内で移動可能な移動媒体であって、複数のユーザに対応付けられる複数の移動媒体を描画する媒体描画処理部」に相当する。
ウ 本件補正発明の「前記複数のユーザのそれぞれからの入力に基づいて、通信ネットワークを介した前記複数のユーザ間の対話であって、前記複数の移動媒体のそれぞれを介した対話を可能とする対話処理部と」について
引用発明は、「仮想空間提供システム」が、「仮想空間提供サーバ10と、仮想空間提供サーバ10と通信ネットワークCNを介して接続されクライアントコンピュータ60とを備えて」おり、「仮想空間提供サーバ10により生成された仮想空間を、複数のクライアントコンピュータ60にそれぞれ提供し」、「仮想空間G1内に複数のアバターA1~A6が配置されており」、「ユーザは自分のアバターを介して周囲の他のユーザのアバターと会話を行うことができ」、「チャット操作部G5に入力された発言内容は、アバターを介して仮想空間内に表示され」るものである。
そうすると、引用発明の「通信ネットワークCN」は、本件補正発明の「通信ネットワーク」に相当し、引用発明の「チャット操作部G5」の「入力」は、これにより、「発言内容」が「アバターを介して仮想空間内に表示され」、「自分のアバターを介して周囲の他のユーザのアバターと会話を行うことができ」ることから、本件補正発明の「前記複数のユーザのそれぞれからの入力」に相当し、このときの引用発明の「自分のアバターを介して周囲の他のユーザのアバターと」する「会話」は、本件補正発明の「前記複数のユーザのそれぞれからの入力に基づいて、通信ネットワークを介した前記複数のユーザ間の対話であって、前記複数の移動媒体のそれぞれを介した対話」に相当する。
そうすると、引用発明の当該会話の機能を実現する手段は、本件補正発明の「前記複数のユーザのそれぞれからの入力に基づいて、通信ネットワークを介した前記複数のユーザ間の対話であって、前記複数の移動媒体のそれぞれを介した対話を可能とする対話処理部」に相当する。
エ 本件補正発明の「前記対話処理部は、前記仮想空間内における前記複数の移動媒体のそれぞれの位置又は前記複数の移動媒体間の関係に基づいて、前記複数のユーザのうちの、ユーザ間の前記対話が可能なユーザを決定し、前記複数の移動媒体間の関係は、それぞれが特定のコンテンツを提供するように前記仮想空間内に設定された複数のコンテンツ提供位置のそれぞれごとに、前記複数の移動媒体のそれぞれの位置との関連付けが可能である」について
(ア)本件補正発明の上記「前記複数の移動媒体のそれぞれの位置」について、本願の発明の詳細な説明には次の記載がある。
「【0149】
本実施形態では、第1対話処理部1601は、ユーザアバタm1のそれぞれの位置に基づいて、対話が可能な複数の一般ユーザを決定してもよい。例えば、第1対話処理部1601は、一のユーザアバタm1と他の一のユーザアバタm1との間の距離が所定距離d1以下である場合に、当該一のユーザアバタm1と当該他の一のユーザアバタm1のそれぞれに係る一般ユーザ間の対話を可能としてもよい。所定距離d1は、仮想空間や各部屋の広さ等に応じて適宜設定されてよく、固定であってもよいし、可変とされてもよい。また、端末用画像には、所定距離d1に対応する範囲が色付け等により表現されてもよい。例えば赤エリアには、声が届くが、青エリアには、声が届かないといった態様である。」
このように、「ユーザアバタm1のそれぞれの位置」とは「ユーザアバタm1と他の一のユーザアバタm1との間の距離」を特定することができるものである。
(イ)引用発明は、「仮想空間内で所定の距離内に存在するアバター同士は、いわゆるALLモードで会話可能であり、ALLモードとは、アバターの発言が近接する他の全てのアバターに届けられるモードであ」るとするものである。
そうすると、引用発明の「仮想空間内で所定の距離内に存在するアバター同士」における「所定の距離」を得るためのこれらのアバターの位置は、本件補正発明の「前記複数の移動媒体のそれぞれの位置」に相当する。
そして、引用発明の「仮想空間内で所定の距離内に存在するアバター同士は、いわゆるALLモードで会話可能」であるとするために、会話可能なアバターを特定することは、本件補正発明の「前記対話処理部は、前記仮想空間内における前記複数の移動媒体のそれぞれの位置」「に基づいて、前記複数のユーザのうちの、ユーザ間の前記対話が可能なユーザを決定」することに相当する。
そして、上記ウのとおり、引用発明の会話の機能を実現する手段は、「ユーザは自分のアバターを介して周囲の他のユーザのアバターと会話を行うことができ」る機能を有していることから、引用発明の当該会話の機能を実現する手段によって、「仮想空間内で所定の距離内に存在するアバター同士」で「ALLモードで会話可能」とするために、会話可能なアバターを特定することは、本件補正発明の「前記対話処理部は、前記仮想空間内における前記複数の移動媒体のそれぞれの位置」「に基づいて、前記複数のユーザのうちの、ユーザ間の前記対話が可能なユーザを決定」することに相当する。
(ウ)ここで、本件補正発明における「前記対話処理部は、前記仮想空間内における前記複数の移動媒体のそれぞれの位置又は前記複数の移動媒体間の関係に基づいて、前記複数のユーザのうちの、ユーザ間の前記対話が可能なユーザを決定し」は、「前記対話処理部は、前記仮想空間内における前記複数の移動媒体のそれぞれの位置に基づいて、前記複数のユーザのうちの、ユーザ間の前記対話が可能なユーザを決定し」(以下、「構成A」という。)又は「前記対話処理部は、前記仮想空間内における前記複数の移動媒体間の関係に基づいて、前記複数のユーザのうちの、ユーザ間の前記対話が可能なユーザを決定し」(以下、「構成B」という。)のいずれか択一的なものとして特定されている。
そのため、本項エにおいて、択一的事項の一方である上記構成Aの対比を行えば、上記構成Bの対比を行う必要がないことは明らかである。
なお、本件補正発明の上記構成における「前記複数の移動媒体間の関係は、それぞれが特定のコンテンツを提供するように前記仮想空間内に設定された複数のコンテンツ提供位置のそれぞれごとに、前記複数の移動媒体のそれぞれの位置との関連付けが可能である」は、構成Bの「関係」を限定するものであるから、当該構成は、上記構成Aの対比に影響しない。
オ 本件補正発明の「情報処理システム」、「情報処理システム」が「・・・媒体描画処理部」と、「・・・媒体描画処理部」と、「・・・対話処理部」とを備えることについて
引用発明の「仮想空間提供システム」は、上記ア~エのとおりの、仮想空間を生成する機能を実現する手段、複数のアバターA1~A6を仮想空間G1に配置する機能を実現する手段、会話の機能を実現する手段を有している。
そうすると、引用発明の「仮想空間提供システム」は、「・・・媒体描画処理部」と、「・・・媒体描画処理部」と、「・・・対話処理部」とを備える「情報処理システム」に相当する。
カ 以上、上記ア~オのとおりであるから、本件補正発明の発明特定事項と引用発明の発明特定事項との間に差違はない。
キ 審判請求人の主張について
審判請求人は、令和5年6月26日提出の意見書で次のように主張する。
「補足しますと、引用文献1の「ALLモード」や「直接対話モード」では、あらかじめ設定された移動媒体に対して、両モードが二者択一的に適用され、「ALLモード」においては、「複数の移動媒体間の関係」に関係なく、決められた距離に入ってきた移動媒体と対話可能であり、「直接対話モード」においては、「複数の移動媒体のそれぞれの位置」に関係なく、特定の関係のある移動媒体と対話可能と理解されます。」
しかしながら、上記エ(ウ)のとおり、本件補正発明において、「前記対話処理部は、前記仮想空間内における前記複数の移動媒体のそれぞれの位置又は前記複数の移動媒体間の関係に基づいて、前記複数のユーザのうちの、ユーザ間の前記対話が可能なユーザを決定し」は、「前記対話処理部は、前記仮想空間内における前記複数の移動媒体のそれぞれの位置に基づいて、前記複数のユーザのうちの、ユーザ間の前記対話が可能なユーザを決定し」(構成A)又は「前記対話処理部は、前記仮想空間内における前記複数の移動媒体間の関係に基づいて、前記複数のユーザのうちの、ユーザ間の前記対話が可能なユーザを決定し」(構成B)と、択一的なものとして特定されており、構成Aについて対比すれば、構成Bについての対比を要しないことは明らかであるから、請求人の主張する引用発明の「直接対話モード」に関する事項について検討をする必要がないことは明らかである。
よって、請求人の主張に理由はない。
(4)小括
以上によれば、本件補正発明は引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、上記「第2」のとおり却下されたので、本件補正前の本願の請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2」の[理由]1(2)に記載したとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
本願発明についての原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
1.(新規性)この出願の請求項1、2、9、10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2008-107895号公報
3 引用文献の記載、引用発明等
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載及び引用発明は、上記「第2」の[理由]2(2)のとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記「第2」の[理由]2のとおりの「それぞれが特定のコンテンツを提供するように前記仮想空間内に設定された複数のコンテンツ提供位置のそれぞれごとに、」との限定事項を、本件補正発明から削除したものである。
他方、上述した限定事項の削除した構成は、上記「第2」の[理由]2(3)エ(ウ)における構成Bに対応するものである。そして、本願発明の「前記対話処理部は、前記仮想空間内における」「前記複数の移動媒体間の関係に基づいて、前記複数のユーザのうちの、ユーザ間の前記対話が可能なユーザを決定し、前記複数の移動媒体間の関係は、前記複数の移動媒体のそれぞれの位置との関連付けが可能である」との構成は、上記「第2」の[理由]2(3)エ(ウ)で述べたとおり、対比を行う必要がないことは明らかである。このため、当該構成を考慮しない本願発明と本件補正発明とは同一である。
そうすると、本願発明と引用発明の対比・判断は、前記「第2」の[理由]2(3)、(4)のとおりであるから、本願発明の発明特定事項と引用発明の発明特定事項との間に差違はない。
よって、本願発明は引用発明である。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-020996